(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666579
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】弦楽器、キット及びギター
(51)【国際特許分類】
G10D 3/14 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
G10D3/14
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-519853(P2012-519853)
(86)(22)【出願日】2010年3月18日
(65)【公表番号】特表2012-533093(P2012-533093A)
(43)【公表日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】CA2010000401
(87)【国際公開番号】WO2011006232
(87)【国際公開日】20110120
【審査請求日】2013年3月15日
(31)【優先権主張番号】61/225,907
(32)【優先日】2009年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512007465
【氏名又は名称】ダンウッディ,デイヴィッド
【氏名又は名称原語表記】DUNWOODIE,David
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ダンウッディ,デイヴィッド
【審査官】
上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04151778(US,A)
【文献】
特開昭61−038995(JP,A)
【文献】
実開平02−102593(JP,U)
【文献】
特公昭38−001288(JP,B1)
【文献】
実開昭57−030793(JP,U)
【文献】
実開昭61−171098(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が周囲に楽器の弦の一部が巻かれる回転可能な円柱部を有する複数のチューニングペグを具える弦楽器において、各チューニングペグの1の回転単位が関連する弦の等しい又は実質的に等しい音の遷移をもたらすように、前記複数のチューニングペグの少なくとも幾つかの円柱部の直径が異なることを特徴とする弦楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の楽器が、E、B、G、D、A、およびEの弦を有するギターであり、前記G弦に関連するチューニングペグの円柱部の直径に対する、様々な弦に関連するチューニングペグの円柱部の直径の比が:
弦 比
E 3.2
B 1.8
G 1.0
D 1.7
A 1.6
E 1.0
であることを特徴とする楽器。
【請求項3】
請求項2に記載の楽器において、前記ギターのナットとサドル間の距離が64cmであり、いずれかの前記チューニングペグを1/8回転させると、関連する弦に4半音の音の遷移をもたらすことを特徴とする楽器。
【請求項4】
弦楽器に取り付ける複数のマシンヘッドのキットであって、各マシンヘッドが前記弦楽器の特定の弦に関連しており、各マシンヘッドが伝達比を規定するギア機構に連結された回転可能なハンドルを具え、前記ギア機構は弦の一部が周囲に巻かれ直径を規定する回転可能な円柱部に連結され、
前記複数のマシンヘッドが前記弦楽器に動作可能に取り付けられ、各円柱部に動作可能に巻いた関連する弦を有するときに、各マシンヘッドのハンドルの回転の一単位が、関連する弦の等しい又は実質的に等しい音の遷移をもたらすように、前記複数のマシンヘッドの少なくとも幾つかの:
a.前記円柱部の直径
b.前記ギア機構の伝達比
のいずれか又は組み合わせが異なることを特徴とするキット。
【請求項5】
E、B、G、D、A、およびEの弦を有するギターに取り付ける複数のマシンヘッドのキットであって、各マシンヘッドがギア機構に連結された回転可能なハンドルを具え、前記ギア機構は弦の一部が周囲に巻かれ直径を規定する回転可能な円柱部に連結され、
前記複数のマシンヘッドが前記ギターに動作可能に取り付けられ、前記円柱部に動作可能に巻いた関連する弦を有するときに、各マシンヘッドのハンドルの回転の一単位が、関連する弦の等しい又は実質的に等しい音の遷移をもたらすように、前記G弦に関連するマシンヘッドの円柱部の直径に対する、E、B、D、A、およびEの弦に関連する複数のマシンヘッドの円柱部の直径の比が:
弦 比
E 3.2
B 1.8
G 1.0
D 1.7
A 1.6
E 1.0
であることを特徴とするキット。
【請求項6】
複数のマシンヘッドを具える弦楽器であって、各マシンヘッドが、周囲に楽器の弦の一部が巻かれる回転可能な円柱部に連結されたギア機構に連結された回転可能なハンドルを具え、
各マシンヘッドのハンドルの回転の一単位が、関連する弦の等しい又は実質的に等しい音の遷移をもたらすように、前記複数のマシンヘッドの少なくとも幾つかの:
a.前記円柱部の直径
b.前記ギア機構の伝達比
のいずれか又は組み合わせが異なることを特徴とする弦楽器。
【請求項7】
E、B、G、D、A、およびEの弦と、それぞれの弦に関連するマシンヘッドとを具えるギターであって、各マシンヘッドが、周囲に弦の一部が巻かれる回転可能な円柱部に連結されたギア機構に連結された回転可能なハンドルを具え、
各マシンヘッドのハンドルの回転の一単位が、関連する弦の等しい又は実質的に等しい音の遷移をもたらすように、
前記G弦に関連するマシンヘッドの円柱部の直径に対する、マシンヘッドの円柱部の直径の比が:
弦 比
E 3.2
B 1.8
G 1.0
D 1.7
A 1.6
E 1.0
であることを特徴とするギター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギター等の弦楽器の弦を引っ張る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器は通常、各弦の一方の端部に固定の留め具があり、他方の端部にユーザが弦のテンションを選択できる機構が設けられている。弦が振動する周波数は、例えば弦の振動長、テンション、直径、構成素材など幾つかのパラメータに依存する。弦の芯の周りに他の弦を巻くような詳細構成(バス弦でよく見られる)もまた影響するが、主に高調波成分に寄与する。物理学で知られるように、振動周波数と弦のテンションの関係は線形ではなく、弦テンションの平方根に比例する。
【0003】
弦のテンション設定に用いる機構はしばしば「チューニングペグ」、「チューニング装置」、「マシンヘッド」と呼ばれる。簡単な例は、楽器の適切な部分、典型的にはギターやバンジョのネックに設けられたチューニングペグ等である。ペグの発展形は、周囲に弦が数回巻かれた円柱部を含む。ペグを回転させると円柱部が回転し、弦のテンションが変わり、振動周波数が変わって弦のチューニングが変化する。
【0004】
チューニングを固定するには、ペグと楽器本体の締まりばめがある。次に、ペグを逆に駆動する弦のテンションに抵抗する摩擦力が発生する。弦のテンションから得られる摩擦力が、ペグに半径方向の力を引き起こし、これがペグの材料と楽器本体の材料の間に適用しうる摩擦係数を介して、接戦方向の力が生じ、これが円柱部の半径に作用する弦のテンションの結果としてのトルクを平衡させる。これにより、ペグの故意の回転がなければ、相殺力が生じるまで弦のテンションは保持される。これは、例えば、楽器が製造された材料の経年による収縮からくるものである。「相殺力」には、楽器本体の材料の経年があり、これにより締まりばめが緩んでしまう。
【0005】
別の種類のチューニング機構は、チューニング装置又はマシンヘッドであり、これはギア機構やワームギア構造を用いるもので、設計により、低ピッチ又は高伝送比のワームギアが実装されている場合に自己詰まり(self-jamming)を起こす。これらの構造は当分野でよく知られている。ワームギア構造を有するマシンヘッドが
図1に示されており、これはワームシャフト4の端部にチューニングハンドル2が設けられ、これがマシンヘッド本体6を通って延在している。本体6内でワームホイール8がワームシャフト4のワーム10に歯合しており、円柱部12がワームホイール8に連結され、ワームホイール8の回転軸に整列している。この円柱部12はギターのネックの弦があるのと同じ側に延び、その軸が弦と直交するよう設けられる。利用時に、チューニングハンドル2(したがってワームシャフト4)が回転すると、ワームホイール8が回転され、これにより円柱部12が回転する。これにより、円柱部に規定されたギター弦挿入穴14に通されたギター弦が円柱部12に巻かれるか緩められ、したがってギター弦がチューニングされる。
【0006】
弦楽器および従来技術において、マシンヘッド又はチューニングペグにおける弦が固定され巻かれる円柱部の直径、およびマシンヘッドの場合のギア比は、与えられた楽器に用いられるすべての弦で同じである。結果として、チューニングの感度あるいは円柱部の角度変位ごとの弦の合計変化量は、弦ごとに異なる。例えば、円柱部の直径(マシンヘッドの場合はギア比)が等しい従来型のチューニング装置を搭載するいくつかのギターでは、D弦のチューニングペグ又はチューニングハンドルを1/4回すと、合計8半音変わり、一方でG弦のチューニングペグ又はチューニングハンドルを同じく1/4回すと、合計14半音変わる。この例では、チューニングペグやマシンヘッドといった従来技術のチューニング装置に内在する弦ごとのチューニング感度に有意の差が目立つ。
【0007】
弦楽器における弦ごとのチューニング感度の違いは、これらの弦のチューニング感度が高く、目標を簡単に行き過ぎてしまうため弦のテンションを緩めたり締めたりを繰り返すことが必要となり、演奏者が演奏の前又は途中で楽器をチューニングする際に重大な挑戦となる。したがって、同じ楽器ではすべての弦で等しいか実質的に等しいチューニング感度のマシンヘッド又はチューニング装置を有することが利点となる。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、各チューニングペグ又は装置の1の回転単位が関連する弦に実質的に等しい音の遷移を提供するようにして、同じ楽器のすべての弦が等しいか実質的に等しいチューニング感度を具えるようにしたチューニングペグ又はマシンヘッドを提供することにより、従来技術のチューニング装置の欠点に対処する。本書で音の遷移手段に関する「実質的に等しい」とは、2本の弦の音の変化が、互いの半音以内であることをいう。
【0009】
複数の単純ペグからなるチューニング装置(しばしばバイオリン、チェロ、ウクレレ、いくつかのアコースティックギターなどに見られる)用に、本発明は、円柱部の直径が異なるチューニングペグを提供するものであり、これにより異なるペグでも角度変位量が同じであればそれぞれの弦のピッチ変化が事実上等しくなる。換言すれば、G弦のチューニングペグを1/4回転すると、8の半音の音の遷移が生じ、D弦のチューニングペグを1/4回転すると、同様に8の半音か、(比較時の基準の弦となる)G弦の8の半音の遷移の2半音以内の音の遷移と実質的に等しい音の遷移が生じることになる。
【0010】
例えばワームギアといったギア機構を具えるチューニング装置又はマシンヘッドでは、(ワームギアなどの)ギア機構の伝達比を変えることにより、チューニング感度に対する追加の制御手段が得られる。この状況では、(a)円柱部の直径を変えるだけでチューニング感度に影響を与えること、(b)ワームギア比を変えるだけでチューニング感度に影響を与えること、(c)円柱部の直径とワームギア比の組み合わせを用いてチューニング感度を制御するもの、の3つの選択肢が存在する。
【0011】
ギター用の標準化したチューニング装置の実施例では、チューニングヘッドを1/8回すと合計で4の半音のチューニング変化又は音の遷移となり、各弦は以下の通りである。G弦のチューニングヘッドの円柱部の直径に対する様々な弦のチューニングヘッドの円柱部の直径の比として表す。
【0012】
表1
弦 比 スプール/円柱部の直径例(mm)
E 3.2 12.2
B 1.8 6.9
G 1.0 3.8
D 1.7 6.6
A 1.6 5.9
E 1.0 3.9
【0013】
上記の比は、弦の振動長(ナットとサドル間の距離)を640mmとし、以下の弦の特性を仮定したものである:
表2
弦 弦の直径 弦の芯の直径(mm)
E 0.254 0.254
B 0.330 0.330
G 0.432 0.432
D 0.660 0.356
A 0.914 0.381
E 1.168 0.406
【0014】
図2では、円柱部は対応する弦の文字でラベル付けされている(番号1の弦に対応するE弦がE’とラベル付けされる)。このように、本発明にかかるマシンヘッドは、異なる直径の円柱部を有し、各弦においてチューニングヘッドの特定量の回転が、実際(実質的に)等し合計シフトをもたらすようになっている。例えば表1の比によると、円柱部E’は円柱部Gの直径の約3.2倍あり、円柱部Bは円柱部Gの直径の約1.8倍あり、円柱部Dは円柱部Gの直径の約1.7倍あり、円柱部Aは円柱部Gの直径の約1.6倍あり、円柱部Eは円柱部Gの直径とほぼ等しい。
【0015】
G弦のチューニングペグ又はマシンヘッドの円柱部の直径に対する、様々な弦のチューニングペグ又はマシンヘッドの円柱部の上記の直径の比は、上記特性を有し弦の振動長が640mmの関連する弦について、チューニングヘッドを1/8回転させると4半音のチューニング変化をもたらす。弦の振動長が異なる場合、あるいは弦の特性が異なる場合は、チューニングヘッドを1/8回転させると、4半音とは異なるチューニング変化が生じることになるが、各弦におけるチューニング変化は他の弦のチューニング変化と実質同一であり、演奏者が自身の楽器をチューニングするのが楽になる。チューニングヘッドの円柱部の直径は、チューニングヘッドの特定の回転量に対し所望のチューニング変化をもたらすよう寸法調整され、表1の比と実質的に同じである限り、回転量に対する各弦のチューニング変化はすべての弦で実質的に等しくなる。
【0016】
上記実施例では、チューニングヘッドの円柱部の直径を異ならせることによりギターの標準的なチューニング装置を提供するが、ワームギアチューニング構造におけるワームギアとワームホイールのギア比を変えることにより同じ目的を達成することができる。
【0017】
本発明はまた、各チューニング装置の1の回転単位が関連する弦の所望の音の遷移をもたらすように、チューニング装置の円柱部の直径を異ならせたチューニング装置を提供して、弦の組み合わせのなかのそれぞれの弦で等しいかほぼ等しい音の遷移を得られる方法を提供することにより、従来技術の欠点に対処している。ギターの弦用の円柱部の直径は、表1の比とすることができる。代替的に、ワームギア構成などのギア機構に基づく装置では、(a)円柱部の直径を変えてチューニング感度に作用させる、(b)ワームギアの比を変えてチューニング感度を制御する、(c)円柱部の直径とワームギア比の組み合わせを用いてチューニング感度を制御する、ことにより弦の組み合わせの中の各弦の等しいか実質的に等しい音の遷移を得ることができる。
【0018】
本書に記載され説明された実施例は、単に本発明の実施例を説明するものである。当業者であれば他の実施例を実現することができ、これらは本発明の範囲に含まれる。したがって、本書に記載され説明された実施例は、添付の特許請求の範囲で解釈される本発明を限定するものと解すべきではない。