(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車両のためのサスペンション用衝撃スラスト装置であって、下側支持カバー(20;120)と、前記自動車両のシャーシに取り付けられるように構成されている上側弾性軸受座(18;180)と、前記下側支持カバーと前記上側弾性軸受座との間においてアキシアル方向に配設されているアキシアル方向スラストを形成する転がり軸受(22;122)とを備えているサスペンション用衝撃スラスト装置において、
前記転がり軸受が、下側リングと、上側リングと、前記下側リングと前記上側リングとの間に配置された少なくとも1列の転がり要素とを備えており、
前記上側弾性軸受座が、前記上側弾性軸受座のスカート(34c;126c)に配置された下側支持カバーのアキシアル方向保持手段(34d;126d)であって、前記下側支持カバーの相補的なアキシアル方向保持手段(50e;140d)と相互作用する前記アキシアル方向保持手段(24d;126d)を備えており、
前記上側弾性軸受座を補剛するための補剛カップ(36;124)が、前記転がり軸受の前記上側リングを形成しており、
前記補剛カップ(36;124)が、前記上側弾性軸受座のスカート(34c;126c)に接触しているアキシアル方向部分(36a;124e)と、前記アキシアル方向部分をラジアル方向内向きに延在させているラジアル方向部分(36b;124d)とを備えており、
前記アキシアル方向部分と前記ラジアル方向部分とが、前記下側支持カバーに対して所定の位置で前記アキシアル方向保持手段(34d;126d)を保持可能なことを特徴とするサスペンション用衝撃スラスト装置。
前記補剛カップの前記アキシアル方向部分(36a;124e)が、前記下側支持カバーをラジアル方向において部分的に囲んでいることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
前記ラジアル方向部分(36b;124d)が、前記転がり要素のための軌道を形成する前記補剛カップの案内部分(36c;124c)から延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
前記アキシアル方向部分(36a;124e)のアキシアル方向下側端部が、前記案内部分(36c;124c)に対してアキシアル方向下方にオフセットされていることを特徴とする請求項3に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
前記補剛カップの前記アキシアル方向部分(36a,124e)と前記ラジアル方向部分(36b;124d)とが環状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
可撓性を有している合成材料から成る前記ブロックが、高剛性な前記補剛カップにオーバーモールドされていることを特徴とする請求項6に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
上側弾性軸受座が、前記下側支持カバー又は前記転がり軸受の前記下側リングと摩擦接触しているシールリップ(34e;132b)を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
少なくとも1つの前記アキシアル方向保持手段が、ラジアル方向内方に延在しているフックを備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
前記下側支持カバーが、懸架バネのための支持表面(56;145)を配置しているフィルター要素(54;144)を備えていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
前記フィルター要素が、前記下側支持カバーを越えてアキシアル方向に延在している部分(54c;114c)であって、ショックアブソーバロッドのための保護用蛇腹部を形成するように構成されている前記部分(54c;114c)を備えていることを特徴とする請求項10に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
前記フィルター要素(54)が、前記転がり軸受の前記上側リングを形成する前記補剛カップ(36)と摩擦接触しているシールリップ(60c)を備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
前記下側支持カバー(120)と前記転がり軸受の前記上側リングを形成する前記補剛カップ(124)との間においてラジアル方向に配設されたラジアル方向スラストを形成している、滑り軸受(146)を備えていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のサスペンション用衝撃スラスト装置。
【背景技術】
【0002】
従来においては、サスペンション用衝撃スラスト装置は、上側リング及び下側リングと共にアキシアル方向におけるスラスト力を形成する転がり軸受を備えている。上側リングと下側リングとの間には、少なくとも一列の転がり要素、例えば玉やローラが配設されている。上側リング及び下側リングは、通常、例えばカップやカバーのような上側支持部品及び下側支持部品と接触した状態で取り付けられている。上側カバー及び下側カバーは、転がり軸受のためのハウジングを形成し、上側カバー及び下側カバーとこれらに隣接する要素とを接続可能とする。
【0003】
サスペンション用衝撃スラスト装置は、車両ボディと懸架バネとの間においてサスペンション用ストラットの上側部分に配設されている。バネが、ショックアブソーバピストンを囲んで据え付けられており、ショックアブソーバピストンの端部が、振動を除去する弾性座を介して車両本体に接続されている。弾性座は、可撓性を有している合成材料から成るブロックと、ブロックを補剛又は高剛性化するための1つ以上のカップとを備えている。上側軸受カバーが、振動を吸収するための弾性座と接触した状態で取り付けられている。懸架バネは、下側軸受カバーにおいてアキシアル方向に指示するようになっている。この下側軸受カバーは、車両本体に対して部分的に固定されている。具体的には、このことは、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0004】
このようなサスペンション用衝撃スラスト装置によって、車両の操向輪の回転に起因する、及び/又は、懸架バネの圧縮に起因する、下側軸受カバーと振動を除去するための弾性座との間における回転運動が可能となる一方、懸架バネと車両本体との間においてアキシアル方向力が伝達される。
【0005】
振動を吸収するための弾性座、弾性座に対して取り付けられている上側軸受カバーと、転がり軸受と、転がり軸受を支持していると共に懸架バネがアキシアル方向に立設されている下側軸受カバーとが存在するために、サスペンション用衝撃スラスト装置全体のアキシアル方向のスペースに対する要求は比較的大きい。
【0006】
さらに、下側軸受カバー及び上側軸受カバーが、格納、輸送、運搬、及び取付を独立して実施される2つの異なる組立体を形成しており、下側軸受カバーと上側軸受カバーとの間には、転がり軸受と振動を除去するための弾性座とが収容されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、これら欠点を解消させることである。
【0009】
より具体的には、本発明の目的は、アキシアル方向において占有するスペースが小さく且つ軽量で堅牢なサスペンション用衝撃スラスト装置であって、懸架バネが発生させる力に耐え、単純な構造で経済的なサスペンション用衝撃スラスト装置を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、当該装置を形成する要素がアキシアル方向において分離する危険性が比較的低く、収納、輸送、取り扱い、及び取り付けが容易な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一の実施例では、自動車両のためのサスペンション用衝撃スラスト装置であって、下側支持カバーと、自動車両のシャーシに取り付けられるように構成されている上側弾性軸受座と、下側支持カバーと上側弾性軸受座との間においてアキシアル方向に配設されているアキシアル方向スラストを形成する転がり軸受とを備えている。転がり軸受が、下側リングと、上側リングと、下側リングと上側リングとの間に配置された少なくとも1列の転がり要素とを備えている。上側弾性軸受座が、上側弾性軸受座のスカートに配置された下側支持カバーのアキシアル方向保持手段であって、下側支持カバーの相補的なアキシアル方向保持手段と相互作用するアキシアル方向保持手段を備えている。上側弾性軸受座を補剛するための補剛カップが、転がり軸受の上側リングを形成している。
【0012】
補剛カップが、上側弾性軸受座のスカートに接触しているアキシアル方向部分と、アキシアル方向部分をラジアル方向内向きに延在させているラジアル方向部分とを備えている。アキシアル方向部分とラジアル方向部分とが、下側支持カバーに対して所定の位置でアキシアル方向保持手段を保持可能とされる。
【0013】
また、自動車両のシャーシに取り付けられた上側弾性軸受座を高剛性化するために設けられている補剛カップが、転がり軸受の上側リングを形成している。この点において、補剛カップは、転がり軸受の転がり要素のための軌道を形成している。言い換えれば、転がり軸受の上側リングが、上側弾性軸受座を補剛又は高剛性化するためのカップを形成している。
【0014】
これにより、サスペンション用衝撃スラスト装置には、通常、転がり軸受の上側リングと上側弾性軸受座との間に設けられている上側弾性カバーが設ける必要が無くなるので、サスペンション用衝撃スラスト装置のアキシアル方向スペースに対する要求が低減される。さらに、単一要素が、上側弾性軸受座のために高剛性化するように機能すると同時に、転がり軸受の転がり要素のための上側転がりトラック又は軌道として機能する。従って、これにより、製造、保管、取り扱い、及び組み立てすべき部品の数量を減らすことができ、サスペンション用衝撃スラスト装置全体の重量が低減される。
【0015】
さらに、下側支持カバーが、相補的な保持手段と相互作用する下側支持カバーをアキシアル方向において保持するための手段の上側弾性軸受座のスカートに設けることによって、上側弾性軸受座、転がり軸受、及び下側支持カバーを一体的に組み立て可能となり、当該組立体は、収納、輸送、取り扱い、及び取り付け可能となるので、当該組立体を構成する要素がアキシアル方向において分離する危険性を比較的低くすることができる。
【0016】
さらに、アキシアル方向保持手段を備えている上側軸受座のスカートの剛性を高める補剛カップのアキシアル方向部分及びラジアル方向部分によって、サスペンション用衝撃スラスト装置が懸架バネと自動車両のシャーシとの間に取り付けられる前に、スカートが外方に向かって変形することによって、上側軸受座と支持カバーとの分離が制限される。補剛カップのラジアル方向部分及びアキシアル方向部分によって、軸受座のスカートのラジアル方向における変形に対する機械的抵抗が高められ、これにより装置を形成する要素がアキシアル方向において分離する危険性が低減される。補剛カップのアキシアル方向部分及びラジアル方向部分は、上側軸受座の良好な剛性を得る点において有効である。
【0017】
一の実施例では、補剛カップのアキシアル方向部分が、下側支持カバーをラジアル方向において部分的に囲んでいる。
【0018】
好ましくは、ラジアル方向部分が、転がり要素のための軌道を形成する補剛カップの案内部分から延在している。アキシアル方向部分のアキシアル方向下側端部が、案内部分に対してアキシアル方向下方にオフセットされている。
【0019】
優位には、補剛カップのアキシアル方向部分とラジアル方向部分とが環状である。
【0020】
上側弾性軸受座が、可撓性を有している合成材料から成るブロックを備えており、ブロックが、高剛性な補剛カップに接触している。高剛性な補剛カップは、可撓性を有している合成材料から成るブロックに対して直接取り付けられている。優位には、可撓性を有している合成材料から成るブロックが、高剛性な補剛カップにオーバーモールドされている。
【0021】
好ましくは、上側弾性軸受座が、下側支持カバー又は転がり軸受の下側リングと摩擦接触しているシールリップを備えている。
【0022】
従って、上側弾性軸受座の材料は、サスペンション用衝撃スラスト装置内部に動的シールを形成するために利用される。“動的シール(dynamic seal)”は、相対運動可能な2つの部品同士の間におけるシールを意味する。従って、上側弾性軸受座によって、転がり軸受の上側リングと、転がり軸受を保護するためのシールとを製造することができる。
【0023】
アキシアル方向保持手段のうち少なくとも1つのアキシアル方向保持手段が、ラジアル方向内方に延在しているフックを備えている。
【0024】
一の実施例では、下側支持カバーが、懸架バネのための支持表面を配置しているフィルター要素を備えている。フィルター要素が、下側支持カバーを越えてアキシアル方向に延在している部分であって、ショックアブソーバロッドのための保護用蛇腹部を形成するように構成されている部分を備えている。また、フィルター要素が、転がり軸受の上側リングを形成する補剛カップと摩擦接触しているシールリップを備えている。これによって、サスペンション用衝撃スラスト装置のシール効果が高められる。
【0025】
このようなシール効果を高めるために、シールリップは、転がり軸受の下側リングから延在しており、転がり軸受の上側リングを形成している補剛カップに接触している。
【0026】
一の実施例では、サスペンション用衝撃スラスト装置は、下側支持カバーと転がり軸受の上側リングを形成する補剛カップとの間においてラジアル方向に配設されたラジアル方向スラストを形成している、滑り軸受を備えている。
【0027】
これにより、下側支持カバーと上側弾性軸受座との間における摩擦トルクが制限されるので、操向輪を転向させた場合に、特に下側支持カバー上の懸架バネがラジアル方向力を発生させた場合であっても、車両の運転手によって発生されるトルクを略一定に維持することができる。
【0028】
滑り軸受が、下側支持カバーと上側弾性軸受座との間において滑り接触状態になっている場合がある。また、滑り軸受は、環状体から成り、潤滑材を充填可能なアキシアル方向溝を備えている。この滑り軸受は、熱可塑材料から作られている場合がある。
【0029】
また、本発明は、ショックアブソーバと上述のサスペンション用衝撃スラスト装置とを備えているマクファーソン式ストラットに関する。
【0030】
本発明について、非限定的な例示として添付図面に図解された実施例の詳細な説明を読むことによって、より良く理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、自動車両のシャーシの一の構成部品と螺旋状の懸架バネとの間に取り付けられるように構成されている、サスペンション用衝撃スラスト装置10を表す。サスペンション用衝撃スラスト装置10は、垂直であると仮定される軸線16を有しているショックアブソーバロッド14を囲んだ状態で配設されており、ショックアブソーバロッド14は、円筒状の形態で軸線方向に延在している。懸架バネ12は、ショックアブソーバロッド14を囲んだ状態で取り付けられている。
【0033】
軸線16を有しているサスペンション用衝撃スラスト装置10は、車両のシャーシに取り付けられるように構成された上側弾性軸受座18と、下側支持カバー20と、下側支持カバー20と上側弾性軸受座18との間に軸線方向に配設されていると共に軸線方向におけるスラスト軸受を形成している転がり軸受22とを備えている。
【0034】
サスペンション用衝撃スラスト装置10によって、下側支持カバー20と上側弾性軸受座18との間において回転運動が可能となるので、軸線方向において必要なスペースを低減した状態であっても、サスペンション用衝撃スラスト装置10は、懸架バネ12と車両のシャーシとの間において軸線方向力を伝達することができる。
【0035】
上側弾性軸受座18は、2つの同一の金属製カップ26,28から形成されている環状の内側接続要素24を備えており、ショックアブソーバロッド14の上側端部が、ナット30によってカップ26,28に取り付けられている。また、上側弾性軸受座18は、軸線16を中心として配設されていると共に当該上側弾性軸受座を車両のシャーシに固定するために利用される、環状の外側接続要素32を備えている。
【0036】
また、上側弾性軸受座18は、可撓性又は弾性を有している合成材料から成るブロック34であって、外側接続要素32に部分的に結合されていると共にカップ26,28の間に固定されているブロック34を備えている。ブロック34は、アキシアル方向においてショックアブソーバロッド14と車両のシャーシとを弾性的に又は可撓的に接続しており、これにより振動が除去される。外側接続要素32は、ブロック34の外側に部分的に延在しているラジアル方向部分32aを備えており、ラジアル方向部分32aは、例えばボルト35のような締結部材によって上側弾性軸受座18を車両のシャーシに取り付けるために利用される。ラジアル方向部分32aは、ラジアル方向部分32aの下側端部からアキシアル方向部分32bを経由して、アキシアル方向下方に延在しており、アキシアル方向部分32bは、アキシアル方向部分32bの下側端部において、外側に向いているラジアル方向部分32cに至るまで延在している。ラジアル方向部分32aの一部分、アキシアル方向部分32b、及びラジアル方向部分32cが、ブロック34の環状中実部分34aに埋設されている。
【0037】
ブロック34は、環状中実部分34aの外面からラジアル方向外方に向かって延在している、環状のラジアル方向カラー34bを備えている。ラジアル方向カラー34bは、外径側の縁部から、下側支持カバー20をラジアル方向において部分的に囲んでいるあまり厚肉でない環状の外側スカート34cに至るまで、アキシアル方向下方に向かって延在している。
【0038】
以下において詳述するように、外側スカート34cの内側縁部は、外側スカート34cの下側端部に、ラジアル方向内方に向いている連続又は不連続な円状のフック34dを備えている。さらに、フック34dは、下側支持カバー20を上側弾性軸受座18にアキシアル方向において結合するために、下側支持カバー20と相互作用するように構成されている。
【0039】
また、ブロック34は、フック34dの下側端部から内方に傾斜して突出した状態で延在している、比較的薄肉の環状シールリップ34eを備えている。シールリップ34eは下方に湾曲しており、下側支持カバー20と摩擦接触しているので、汚染粒子がラジアル方向において上側弾性軸受座18の外側スカート34cと下側支持カバー20との間に侵入することを制限することができる。シールリップ34eが湾曲していることは優位である。シールリップの湾曲が、水及び他の汚染粒子の飛散を跳ね返す能力を高めるからである。さらに、このように跳ね返している際には、動的シールリップ34eと下側支持カバー20との間における接触圧力が大きくなるので、シールリップ34eが汚染粒子等を跳ね返す効果をさらに高めることができる。
【0040】
この領域におけるサスペンション用衝撃スラスト装置10のフィルター性能を高めるために、下側支持カバー20と上側弾性軸受座18との間に侵入する可能性がある汚染粒子の移動方向を考慮して、フック34dが下側支持カバー20の外面直近においてラジアル方向に配設されており、フック34dと下側支持カバー20とが共働することによって、シールリップ34eの下流に配置されている幅狭の通路の近傍にシールを形成する。
【0041】
また、下側支持カバー20と上側弾性軸受座18との間において良好なシール性能を得るために、ブロック34は、下側表面からアキシアル方向下方に延在していると共に下側支持カバー20のボアの近傍においてラジアル方向に配設されている、短い環状内側スカート34fを備えており、これによりブロック34と下側支持カバー20とが、幅狭の通路の近傍にシールを形成している。
【0042】
また、上側弾性軸受座18は、ブロック34を補剛又は高剛性化するためのカップ36を備えている。ブロック34は、優位には可撓性又は弾性を有している合成材料、例えばゴムのような弾性材料を内側接続要素24、外側接続要素32、及び補剛カップ36にオーバーモールディングすることによって、単一部品として作られている。優位には、補剛カップ36は、打ち抜き加工及び圧縮成形加工することによって、比較的低コストで薄肉金属シートブランクから製造されている。この場合には、補剛カップ36がブロック34に対して直接接触しているので、中間要素が存在しない。
【0043】
補剛カップ36は、ブロック34の外側スカート34cのボアに当接している外側環状アキシアル方向部分36aを備えている。外側環状アキシアル方向部分36aは、ラジアル方向カラー34bの下側表面に対して接触した状態において、環状ラジアル方向部分36bを介してアキシアル方向上側端部に至るまでラジアル方向内方に延在している。環状ラジアル方向部分36bの内径側の縁部は、環状中実部分34aの形状に適合するトロイダル状下側表面38に対して接触した状態において、環状のトロイダル状部分36cに至るまで内方に延在している。トロイダル状部分36cの内径側の縁部は、ブロック34の環状ラジアル方向部分40に当接していると共にトライダル状下側表面38からラジアル方向内方に延在している、環状ラジアル方向部分36dを介して内方に延在している。外側環状アキシアル方向部分36aのアキシアル方向下側端部が、トロイダル状部分36cに対して相対的にアキシアル方向下方にオフセットされている。ブロック34の環状ラジアル方向部分40は、環状アキシアル方向部分42を介してアキシアル方向下方に延在している。環状アキシアル方向部分42は、内側接続要素24のカップ28が当接している環状ラジアル方向部分44を介してラジアル方向内方に延在している。環状内側スカート34fは、環状アキシアル方向部分42をアキシアル方向下方に延在させるように、環状ラジアル方向部分44からアキシアル方向に延在している。
【0044】
補剛カップ36は、環状ラジアル方向部分40とトロイダル状部分38とラジアル方向カラー34bの下側表面とによって形成されている、ブロック34の下側表面に結合されている。当該補剛カップは、外側スカート34cのボアに結合されており、フック34dは、外側環状アキシアル方向部分36aのボアの一部分を覆っている。また、外側環状アキシアル方向部分36aのボアの一部分は、ブロック34の材料によって覆われている。上述のように、補剛カップ36によって、上側弾性軸受座18のブロック34を高剛性化することができる。さらに、外側環状アキシアル方向部分36a及び環状ラジアル方向部分36bによって、フック34d及びシールリップ34eを下側支持カバー20に対して正確に且つ確実に位置決め及び保持することができる。環状ラジアル方向部分36b,36dの下側表面とトロイダル状部分36cの下側表面とによって形成されている、補剛カップ36の下側表面は、ブロック34の材料によって覆われていない。
【0045】
軸線16を有している転がり軸受22は、転がり軸受22の上側リングを形成している補剛カップ36と下側リング46とによって形成されている。当該実施例では、玉の形態で作られている一列の転がり要素48が、補剛カップ36と下側リング46との間に収容されている。また、ケージが、転がり要素48同士の間における周方向の間隙を一定に維持するために設けられている。転がり要素48は、下側リング46と上側リングを形成する補剛カップ36とによって形成されている軌道同士の間に配設されている。
【0046】
下側リング46は、内側に凹部を有した四分円状断面を有していると共に転がり要素48のためのトロイダル状の軌道を形成可能な、環状のトロイダル状部分46a備えている。トロイダル状部分46aは、トロイダル状部分46aの上側縁部から延在しているラジアル方向部分に至るまで外方に延在している。優位には、下側リング46は、打ち抜き加工及び圧縮成形加工することによって、薄肉金属シートブランクから経済的な方法で製造される。
【0047】
また、補剛カップ36のトロイダル状部分36cの下側表面は、内側に凹部を有した四分円状断面を有しており、上側弾性軸受座18の補剛カップ36に直接接触した状態で滑動する転がり要素48のためのトロイダル状の軌道を形成している。
【0048】
従って、単一の要素によって、傾斜した状態で接触している上側弾性軸受座18のブロック34と転がり軸受22の上側リングとの両方を補剛又は高剛性化することができる。転がり要素48は、中間上側軸受カバーを介在させることなく、補剛カップ36に対して直接取り付けられている。転がり軸受に特有の上側リングは、従来技術における衝撃スラスト装置の場合と同様に、中間上側軸受カバーの内側に収容されている。
【0049】
言い換えれば、上側リングが上側弾性軸受座の補剛カップを形成するように転がり軸受22の上側リングを上側弾性軸受座18内に組み込むことによって、サスペンション用衝撃スラスト装置10を形成する部品の数量を制限することができる。また、アキシアル方向の間隙に関する要件を緩和し、サスペンション用衝撃スラスト装置10の重量を低減することができる。
【0050】
優位には、軸線16を有した下側支持カバー20は、例えばポリアミドPA6.6のような熱可塑材料をモールディングすることによって製造された単一ピース部品から構成されている。ポリアミドPA6.6は、ガラス繊維によって強化されていても強化されていなくても良い。下側支持カバー20は、環状且つ中実のラジアル方向部分50を備えている。ラジアル方向部分50の外径は、上側弾性軸受座18の補剛カップ36のアキシアル方向部分36aの外径より小さく、ラジアル方向部分50は、内径側の内側縁部から下方に延在している環状のアキシアル方向部分52に至るまで延在している。
【0051】
ラジアル方向部分50は、上側弾性軸受座18の補剛カップ36の環状ラジアル方向部分36bから所定距離で離隔した状態で環状ラジアル方向部分36bに面している、環状のラジアル方向上側表面50aを備えている。ラジアル方向上側表面50aは、下側リング46が当接している環状のトロイダル状表面50bを介して、内径側の縁部からアキシアル方向下方に延在している。トロイダル状表面50bは、下側リングのトロイダル状部分46aの形状に適合しており、ラジアル方向に延在している環状の段付表面50cに至るまで内方に延在している。
【0052】
また、ラジアル方向部分50は、環状のラジアル方向間隙をアキシアル方向外側表面50dとフック34dとの間に形成するために、上側弾性軸受座18のフック34dの内径よりも小さな直径を有しているアキシアル方向外側表面50dを備えている。アキシアル方向外側表面50dは、アキシアル方向上側端部において、上側弾性軸受座18の補剛カップ36の外側環状アキシアル方向部分36aに向かって外方に延在している環状のラジアル方向リブ50eを備えている。ラジアル方向リブ50eは、上側弾性軸受座18のフック34dの上方においてアキシアル方向に配設されており、錐台状の下側表面を有している。錐台状の下側表面は、サスペンション用衝撃スラスト装置10が車両の本体と懸架バネ12との間に取り付けられる前に、フック34dと干渉し、下側支持カバー20と上側弾性軸受座18との分離を防止するように構成されている。このような分離を実現するために、ラジアル方向リブ50eの直径はフック34dの直径より大きく、これにより直径の干渉が、上側弾性軸受座18と下側支持カバー20との間に存在する。従って、フック34dは、上側弾性軸受座18上に配置されていると共に下側支持カバー20の相補的なアキシアル方向保持手段すなわちラジアル方向リブ50eと相互作用する、アキシアル方向保持手段を形成している。さらに、フック34d及びラジアル方向リブ50eは、異物すなわち汚染粒子がフック34dとラジアル方向リブ50eとの間に侵入することを防止するために、幅狭の通路を介してシールを形成している。
【0053】
アキシアル方向部分52は、アキシアル方向ボア52aを備えており、アキシアル方向ボア52aの上側端部は、段付表面50cの内径側の縁部に接続されている。アキシアル方向部分52は、ラジアル方向部分50の環状のラジアル方向下側表面50fを介して上側端部に向かって外方に延在している環状外側表面52bを備えている。ラジアル方向部分50の外径側の縁部が、アキシアル方向外側表面50dの下側端部に接続されている。
【0054】
また、下側支持カバー20は、懸架バネ12の振動を吸収するために下側支持カバー20と懸架バネ12との間においてアキシアル方向に挿置されている、フィルター要素54を備えている。フィルター要素54は、下側支持カバー20のラジアル方向下側表面50fに当接していると共に円筒状外側表面50dと略共平面とされる、環状ラジアル方向部分54aを備えている。環状ラジアル方向部分54aは、内径側の縁部から、下方に延在していると共に下側支持カバー20の環状外側表面52bに当接している環状アキシアル方向部分54bを介して、アキシアル方向に延在している。環状ラジアル方向部分54aには、懸架バネ12の最上部の巻きを受けるための環状ラジアル方向支持表面56が形成されている。環状ラジアル方向支持表面56は、懸架バネ12を中心に配置させることを確実にする環状アキシアル方向表面58を介して内方に延在している。環状アキシアル方向表面58は、環状アキシアル方向部分54bの外側表面によって形成されている。環状アキシアル方向部分54bの下側端部は、下側支持カバー20を越えてアキシアル方向に延在している部分54cを介して、アキシアル方向下方に延在しており、ショックアブソーバロッド14及びショックアブソーバロッド14を囲んで取り付けられた部品をラジアル方向において囲んでいる保護用蛇腹部を形成するように形成されている。従って、フィルター要素54も、ショックアブソーバロッド14のための保護用蛇腹部を形成している。
【0055】
フィルター要素54は、下側支持カバー20上にオーバーモールドされている。フィルター要素54は、可撓性を有している合成材料、例えばゴム、ポリウレタンや熱可塑性エラストマーのような弾性材料から作られている。
【0056】
フィルター要素54がオーバーモールドされている場合には、充填グランド60(packing gland)が形成されている。この点において、環状アキシアル方向チャネル62は、下側支持カバー20の厚さ方向において形成されている。オーバーモールド加工の際には、溶融した可撓性を有する材料が、充填グランド60を形成するために、環状アキシアル方向チャネル62を横切って延在している。充填グランド60は、環状アキシアル方向チャネル62内部に形成されている環状リング60aを備えており、環状リング60aは、環状ラジアル方向部分54aから、環状リング60aが下側支持カバー20の段付表面50cに当接するに至るまで、アキシアル方向に延在している。
【0057】
また、充填グランド60は、環状リング60aをラジアル方向内方に延在させている環状ヒール60bと、転がり軸受22の上側リングを形成している補剛カップ36の環状ラジアル方向部分36dと摩擦接触するように、斜め内方に突出した環状ヒール60bから延在している比較的薄肉のシールリップ60cとを備えている。シールリップ60cは、上側弾性軸受座18と共に動的シール機能を発揮する。この場合には、シールリップ60cは、金属製補剛カップ36と相互作用することによって、良好なシール性能の発揮を促進させる。シールリップ60cは、斜め上方且つ内方に湾曲している。水又は他の汚染物質の起こり得る飛散を跳ね返すシールリップ60cの能力が高められるので、このような湾曲は優位である。従って、シールリップ60cは、特に効果的なデフレクターを形成している。さらに、このような飛散の際には、シールリップ60cと補剛カップ36との接触圧力が高まるので、シールカップ60cの飛散防止効果が高められる。
【0058】
図2は、ショックアブソーバロッド14を囲んで取り付けられていると共に懸架バネ12が当接している、第2の実施例におけるサスペンション用衝撃スラスト装置100を表わす。
【0059】
軸線を有しているサスペンション用衝撃スラスト装置100は、上述の実施例に類似している態様で、上側弾性軸受座118と、下側支持カバー120と、上側弾性軸受座118の補剛カップ124によって形成されている上側リングと共に、上側弾性軸受座118と下側支持カバー120との間においてアキシアル方向に配設されている転がり軸受122とを備えている。
【0060】
上側弾性軸受座118は、可撓性又は弾性を有している合成材料から成るブロック126を備えており、ブロック126は、ブロック126を補剛又は高剛性化するための補剛カップ124に結合されている。ブロック126は、優位には例えばゴムのような弾性材料をオーバーモールドすることによって単一ピース部品として作られている。補剛カップ124は、ショックアブソーバロッド14の通路のためのボア128の境界を形成している環状ラジアル方向部分124aを備えている。環状ラジアル方向部分124aは、外径側の縁部において、環状アキシアル方向部分124bに至るまでアキシアル方向上方に延在している。環状アキシアル方向部分124bの上側端部は、環状アキシアル方向部分124cに至るまでラジアル方向外方に延在しており、環状アキシアル方向部分124cには、アキシアル方向下方に向いている共に内側が凹状の断面を有している、円状チャネル又は円状溝130が形成されている。環状ラジアル方向部分124cの外側縁部は、外側に膨出している短い錐台状部分に至るまで外方に延在しており、錐台状部分は、環状ラジアル方向部分124dに至るまで延在している。環状ラジアル方向部分124dの外側縁部は、下側支持カバー120をラジアル方向において部分的に囲んでいる外側環状アキシアル方向部分124eに至るまで、アキシアル方向に延在している。外側環状アキシアル方向部分124eのアキシアル方向下側端部は、環状ラジアル方向部分124cに対して相対的にアキシアル方向下方にオフセットされている。変形例として、補剛カップ124の環状ラジアル方向部分124aの内側縁部が、ブロック126の上側表面に当接しているラジアル方向部分に至るまで延在しているアキシアル方向部分を介して、アキシアル方向上方に延在しており、サスペンション用衝撃スラスト装置100を車両のシャーシに固定するために利用可能とされる場合がある。
【0061】
ブロック126は、補剛カップ124の環状ラジアル方向部分124aの上側表面に及び補剛カップ124の環状アキシアル方向部分124bの内側表面に結合されている環状中実部分126aを備えている。環状中実部分126aは、外径側の縁部において、補剛カップ124の環状ラジアル方向部分124c,124dの形状に適合している環状ラジアル方向部分126bに至るまで延在している一方、環状ラジアル方向部分124c,124dの上側表面に結合されている。環状ラジアル方向部分126bの外径側の縁部は、補剛カップ124の外側環状アキシアル方向部分124eの外側表面に固定されている環状スカート126cに至るまで、アキシアル方向下方に延在している。環状スカート126cの内側縁部は、連続又は不連続なフック126dに至るまで、ラジアル方向内方に延在している。フック126dは、補剛カップ124の外側環状アキシアル方向部分124eの自由端を円状に囲んでおり、下側支持カバー120と相互作用することによって下側支持カバー120を上側弾性軸受座118にアキシアル方向において結合するために、ラジアル方向内方に向いている。
【0062】
また、ブロック126は、外側環状アキシアル方向部分124eのボアと補剛カップ124の環状ラジアル方向部分124d,124cの下面とを覆っている、環状固定部分132aを有している充填グランド132を備えている。環状固定部分132aは、環状ラジアル方向部分124cに形成された溝130の近傍に至るまで延在している。環状固定部分132aの内縁部は、下側支持カバー120と摩擦接触するように斜方向に延在していると共に外方に向かって下向きに突出している、比較的薄肉の環状シールリップ132bに至るまで延在している。環状シールリップ132bは、下側支持カバー120と共に動的なシール機能を発揮する。環状シールリップ132bの向きが、水又は他の汚染粒子の起こり得る飛散を跳ね返すという当該環状シールリップの機能を高める。環状シールリップ132bは、特に効果的なデフレクターを形成している。さらに、このような飛散の際に、当該環状シールリップと下側支持カバー120との接触に起因する圧力が高められるので、その効果も高められる。
【0063】
軸線16を有している転がり軸受122は、当該転がり軸受の上側リングを形成している補剛カップ124と下側リング134とによって形成されている。補剛カップ124と下側リング134との間には、この場合には玉の形態をした、一列の転がり要素136が収容されている。また、ケージは、転がり要素136同士の間における周方向間隙を等間隔に維持するために設けられている。転がり要素136は、下側リング134によって形成された軌道と補剛カップ124の溝130によって形成された軌道との間に配設されている。
【0064】
下側リング134の形状は略環状であり、下側リング134は、金属製シート状ブランクを打ち抜き型押しすることによって、低コストで製造可能である。下側リング134の内断面は、アキシアル方向上方に向いている凹状断面であり、転がり要素136のための軌道を形成することができる。また、補剛カップの溝130の内断面は、アキシアル方向下方に向いている凹状断面であり、転がり要素136のための軌道を形成することができる。
【0065】
従って、上述の第1の実施例に類似した方法によって、補剛カップ124は、転がり軸受122の上側リングを形成することによって、上側弾性軸受座118のブロック126を補剛すると共に転がり要素136を案内することができる。
【0066】
下側支持カバー120は、軸線16を有しており、優位には、例えばポリアミドPA6.6のような熱可塑材料をモールディングすることによって製造された単一ピース部品から構成されている。熱可塑材料は、ガラス繊維によって強化されていてもされていなくても良い。下側支持カバー120は、環状中実ラジアル方向部品140を備えている。環状中実ラジアル方向部品140の外径は、上側弾性軸受座118の充填グランド132の環状固定部分132aの外径より小さく、環状中実ラジアル方向部品140は、内径側の内縁部から、下方に延在している環状アキシアル方向部分142を介して延在している。
【0067】
環状中実ラジアル方向部分140は、上側弾性軸受座118の補剛カップ124の環状アキシアル方向部分124bから所定距離で離隔して環状アキシアル方向部分124bに面している環状ラジアル方向上側表面140aを備えている。環状シールリップ132bは、環状ラジアル方向上側表面140aに接触している。代替的には、環状シールリップ132bの動作中の効果を高めるために、環状シールリップ132bを下側リング134に接触させることができる。環状ラジアル方向上側表面140aは、内径側の縁部から、ラジアル方向において上側弾性軸受座118の補剛カップ124の環状アキシアル方向部分124bに面した状態で配設されているアキシアル方向内側表面140bを介して、アキシアル方向下方に延在している。また、環状中実ラジアル方向部分140は、上側弾性軸受座118のフック126dの内径より小さな直径を有しているアキシアル方向外側表面140cを備えているので、フック126dとアキシアル方向外側表面140cとの間には、環状のラジアル方向空間が介在している。アキシアル方向外側表面140cは、アキシアル方向上側端部において、上側弾性軸受座118の充填グランド132の環状固定部分132aに向かって外方に延在している環状リブ140dを備えている。環状リブ140dは、上側弾性軸受座118のフック126dの上方においてアキシアル方向に配設されている。上述の第1の実施例に類似した態様で、上側弾性軸受座118の直径と下側支持カバー120の直径とが上側弾性軸受座118及び下側支持カバー120の位置において干渉するように、環状リブ140dの直径はフック126dの直径より大きくなっている。フック126dは、上側弾性軸受座118に配設されていると共に下側支持カバー120に配設されている相補的なアキシアル方向保持手段と相互作用する、アキシアル方向保持手段を形成している。また、異物又は汚染粒子がフック126dと環状リブ140dとの間に侵入することを防止するように、フック126dと環状リブ140dとが狭い通路に介してシールを形成する。
【0068】
環状アキシアル方向部分142は、アキシアル方向ボア142aを備えており、アキシアル方向ボア142aの上側端部は、環状ラジアル方向表面142bに至るまで延在しており、環状ラジアル方向表面142bは、内方に延在していると共に、環状中実ラジアル方向部分140のアキシアル方向内側表面140bの下側端部に接続している。環状アキシアル方向部分142は、上側端部においてラジアル方向部分50のラジアル方向下側表面140eに至るまで外方に延在しているアキシアル方向外側表面142cを備えており、ラジアル方向部分50の外径側の縁部は、アキシアル方向外側表面140cの下側端部に接続している。
【0069】
また、下側支持カバー120は、懸架バネ12の振動を吸収するために下側支持カバー120と懸架バネ12との間に挿置されているフィルター要素144を備えている。フィルター要素144は、下側支持カバー20のラジアル方向下側表面140eに接触している環状ラジアル方向部分144aを備えており、ラジアル方向下側表面140eは、内径側の縁部からアキシアル方向部分144bに至るまでアキシアル方向に延在しており、アキシアル方向部分144bは、下方に延在していると共に、下側支持カバー20のアキシアル方向外側表面142cに接触している。アキシアル方向部分144bの下側部分は、部分144cに至るまでアキシアル方向下方に延在しており、部分144cは、下側支持カバー120を越えてアキシアル方向に延在しており、ショックアブソーバロッドと該ショックアブソーバロッドを囲んで取り付けられた要素とをラジアル方向において囲んでいる、保護用蛇腹部を形成するように適合されている。フィルター要素144の部分144a〜144cは、上述の第1の実施例におけるフィルター要素54の部分54a〜54cと同一である。環状ラジアル方向部分144aは、最上部の巻きのためのラジアル方向支持表面145を形成しており、アキシアル方向部分144bが、懸架バネ12を芯出しする。フィルター要素144は、下側支持カバー20にオーバーモールドされており、優位には可撓性を有する合成材料、例えばゴム、ポリウレタン、熱可塑性エラストマーのような弾性材料から作られている。
【0070】
当該実施例では、サスペンション用衝撃スラスト装置100は、軸線16を有していると共に下側支持カバー20と上側弾性軸受座18との間においてラジアル方向に配置されている、滑り軸受146も備えている。より具体的には、当該すべり軸受は、上側弾性軸受座118の補剛カップ124の環状アキシアル方向部分124bの外側表面と下側支持カバー120の環状中実ラジアル方向部分140のアキシアル方向内側表面140bとの間においてラジアル方向に配設されているので、当該外側表面とアキシアル方向内側表面140bとがラジアル方向において接触している。滑り軸受146は、下側支持カバーの環状ラジアル方向表面142bにアキシアル方向において接触した状態で取り付けられている。
【0071】
図3に表わすように、滑り軸受146は、その内側表面及び外側表面において複数のアキシアル方向溝150,152を有している、略環状の形態をした中間滑りリング又はボディ148を備えている。アキシアル方向溝150,152が、中間滑りボディ148の内側表面及び外側表面に形成されている一方、周方向において互いから均等に離隔して配置されている。
【0072】
外側のアキシアル方向溝152それぞれが、周方向を考慮すると内側のアキシアル方向溝150と位置合わせされている。
【0073】
図示の典型的な実施例では、アキシアル方向溝150,152の総数量はそれぞれ24本である。アキシアル方向溝の総数量が他の数量であっても良いこと、及び、アキシアル方向溝150の数量がアキシアル方向溝152の数量と相違しても良いことは言うまでもない。代替的には、中間滑りボディ148の外側表面又は内側表面のみに溝が形成されていても良い。
【0074】
アキシアル方向溝150,152は、中間滑りボディ148のラジアル方向上側表面から、中間滑りボディ148の反対側に位置するラジアル方向下側表面の近傍に至るまで、アキシアル方向に延在している。これらアキシアル方向溝は、優位には例えばグリースのような潤滑材で充填されている。中間滑りボディ148の底端部において閉じているアキシアル方向溝150,152を設けることによって、中間滑りボディにおいて潤滑材を保持することが促進され、これにより滑り軸受146と下側支持カバー120と上側弾性軸受座118との間における摩擦が制限される。
【0075】
図2を参照すると、中間滑りボディ148の内側表面は、補剛カップ124の環状アキシアル方向部分124bに接触しており、中間滑りボディ148の外側表面は、下側支持カバー20のアキシアル方向内側表面140bに接触している。滑り軸受146の内側表面と補剛カップ124とが滑り接触状態にある一方、滑り軸受146の外側表面と下側支持カバー20とが滑り接触状態にある。滑り軸受146は、優位には高剛性な熱可塑材料、例えばポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)のようなポリエステル、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィンをモールディングすることによって作られている。
【0076】
下側支持カバー120と上側弾性軸受座118との間において滑り軸受146をラジアル方向に配置することによって、滑り軸受146は、運転手が自動車両の操向輪を回転させるために作用させるトルクを略一定に維持するために下側支持カバー120と上側弾性軸受座118との間における摩擦トルクを高めることなく、懸架バネ12によって作用されるラジアル方向の力に耐えることができる。
【0077】
滑り軸受146を利用することによって、線接触する転がり軸受122を提供することができる。
【0078】
さらに、下側支持カバー120のアキシアル方向内側表面140bと補剛カップ124の環状アキシアル方向部分124bとの間に滑り軸受146を配置させることによって、この領域において、転がり軸受122に向かって飛来する外部からの汚染粒子の侵入を制限することができる。言い換えれば、滑り軸受146は、転がり軸受122のためのシール手段を形成している。従って、単一の部材によって、転がり軸受122を密封又は保護するための機能、及び懸架バネ12によって作用されるラジアル方向の力を吸収するための機能が発揮される。
【0079】
変形例として、周方向における連続又は不連続なラジアル方向突起を中間滑りボディ148の内側表面に設けることができ、ラジアル方向突起は、下側支持カバー120を上側弾性軸受座118にアキシアル方向において保持するために、補剛カップ124の環状アキシアル方向部分124bの外側表面に形成された対応するハウジング内に取り付けられるように構成されている。保持フックを形成しているこのようなラジアル方向突起が、上側弾性軸受座118のフック126dに加えて、又はその代りに設けられている場合がある。
【0080】
上述の実施例では、上側弾性軸受座の補剛カップが、転がり軸受のための上側リングを形成している部分を備えており、これにより転がり軸受に特有の上側リングを利用する必要がなくなり、転がり軸受と上側弾性軸受座と間に取り付けられている上側カバーを利用する必要もなくなる。これにより、サスペンション用衝撃スラスト装置を取り付ける場合において組立に必要な部品の数量、並びに、保管、輸送、及び管理すべき部品の数量を減らすことができる。アキシアル方向の隙間に関する要件を軽減し、サスペンション用衝撃スラスト装置全体の重量も減らすことができる。第2の実施例では、転がり要素のための軌道を形成する補剛カップが、上側弾性軸受座の唯一の補剛要素である。
【0081】
また、上側弾性軸受座の補剛カップが、スカートのラジアル方向外方への移動が下側支持カバーによって防止されるようにアキシアル方向保持手段が配置されている、スカートにおいて上側弾性軸受座を強化する。これにより、サスペンション用衝撃スラスト装置を形成する要素が分離する危険が制限される。
【0082】
さらに、第1の実施例では、下側支持カバー又は転がり軸受の内側リングに設けられた上側弾性軸受座及びシールリップによって、転がり軸受の転がり要素を収容する密閉された空間が形成される。この密閉された空間は、シールリップの環状接触領域によって密封されており、潤滑材が転がり軸受から漏出すること、及び汚染物質が侵入することを防止する。第2の実施例では、この密封された空間は、上側弾性軸受座のシールリップと、下側支持カバーと上側弾性軸受座の補剛カップとの間に配設された滑り軸受とによって形成される。