【文献】
Sebastian Wagner et al.,Optimal Training in Large TDD Multi-User Downlink Systems under Zero-Forcing and Regularized Zero-Forcing Precoding,Global Telecommunications Conference (GLOBECOM 2010), 2010 IEEE,2010年12月10日
【文献】
田中 利幸,ランダム行列の広がり,数理科学 第45巻 第2号 MATHEMATICAL SCIENCES,日本,株式会社サイエンス社,2007年 2月 1日,pp.50-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送信機におけるM個のアンテナとK個のユーザ装置(UE)とを備えるMU−MIMO通信システムの送信機のためのプリコーディング方法であって、
前記プリコーディングは、以下のタイプ、
の正規化ゼロフォーシング(R−ZF)線形プリコーディングに基づいており、
Hは、K×M個のチャネル推定値を代表する複素行列であり、前記H行列は、相関を有する複数のチャネル係数であって、対応する相関係数が相関行列Θ
Tに含まれるエントリである、複数のチャネル係数を含み、I
K及びI
Mは、それぞれサイズK×K及びM×Mの単位行列であり、αは、正規化パラメータであり、
前記αは、
a)前記相関行列Θ
Tを計算するステップ(110)と、
b)2つのパラメータα
max及びα
minを初期化するステップ(120)と、
c)α=1/2(α
max+α
min)を計算するステップ(130)と、
d)λを前記相関行列Θ
Tの固有値、μをΘ
Tの固有値の経験分布関数、及び、βをM/Kとして、z=−αについて、固定小数点の式
を解く
の値を判定するステップ(140)と、
e)z=−αについて、固定小数点の式
を解く
の値を判定するステップ(150)と、
f)式
を計算するステップ(160)と、
g)Pを利用可能な総送信電力として、F−P<0である場合には、α
max=αを計算し(180)、それ以外の場合には、α
min=αを計算する(190)ことによって、区間[α
min,α
max]を適応させるステップ(170, 180, 190)と
に従って計算され
、
F−Pの絶対値(ABS(F−P))が予め定められた値εよりも大きい限り、前記ステップcから前記ステップgが繰り返し実行されることによって、前記正規化パラメータαが計算されることを特徴とするプリコーディング方法。
【背景技術】
【0002】
MIMO(多入力・多出力)は、データの伝送のために、通信システムの送信機及びユーザ装置(UE)の両方において複数のアンテナを使用する、有望な無線技術である。MIMOは、追加的な帯域幅または送信電力を必要とすることなく、データ・スループット及びリンク・レンジの増大を、有利に達成する。
【0003】
複数の独立したUEの利用可能性を生かすために、MU−MIMO(マルチユーザMIMO)と称される進化型のMIMO技術が、今日、広く使用されている。MU−MIMOは、各UEの能力を更に向上させる。
【0004】
MIMO及びそれに対応するMU−MIMO無線システムの特性は、通信システムの送信機において実行されるプリコーディング動作に依存する。具体的には、プリコーディングは、MIMOシステムのマルチレイヤ伝送をサポートするビームフォーミング技術である。プリコーディングでは、受信機(UE)出力においてリンク・スループットが最大化され、かつ、ストリーム間の干渉が最小化されるように、アンテナごとに独立かつ適切な重み付けを用いて、複数の信号ストリームが送信機の複数のアンテナから放射される。
【0005】
MU−MIMOにおいて使用されるプリコーディング・アルゴリズムは、
非線形プリコーディング・タイプと
線形プリコーディング・タイプとに分けられる。
【0006】
非線形プリコーディング技術の1つは、電力の不利益を何ら伴うことなく、送信機によって送信される信号の干渉を事前にキャンセルする、いわゆるダーティ・ペーパ符号化(DPC:Dirty-Paper Coding)である。当該送信機は、チャネル状態情報の知識に関係なく、干渉信号を知っているものと想定されている。しかし、この技術の使用は、そのコスト及び複雑度によれば不都合であり、そのため、通常は線形プリコーディングが好まれる。
【0007】
実際、線形プリコーディングは、非線形プリコーディングと比較して、より低い複雑度及びコストで、適度なスループット特性を達成できる。線形プリコーディングには、ゼロフォーシング(ZF:Zero-Forcing)及び正規化ゼロフォーシング(R−ZF:Regularized Zero-Forcing)が含まれる一方で、非線形プリコーディングには、ダーティ・ペーパ符号化(DPC)が含まれる。
【0008】
ゼロフォーシング(ZF)技術は、高複雑度及び高コストの欠点に対処し、システム容量に近い性能を達成する。しかし、送信機は、下りリンクのチャネル状態情報を知ることが必要である。したがって、チャネル状態情報が制限されている、または不正確である場合、システム・スループットの著しい損失が発生しうる。
【0009】
正規化ゼロフォーシング(R−ZF)プリコーディングは、正規化パラメータαを計算することによって、ゼロフォーシング(ZF)よりも有利に、好ましくないチャネル状態を何とか補償する。この計算は、(受信機によって実行される)チャネル推定ごとに、送信機において実行されるとともに、総送信電力の電力制約条件を満足しなければならない。残念ながら、αの計算は、送信機における下りリンクチャネルの知識を必要とし、そのため、劣化状態にあるチャネル推定値の場合、システム・スループットは低下する。
【0010】
このような状況においては、正規化パラメータαについての十分な計算を提供し、かつ、チャネル推定に依存しない簡易な解決策を、提案することが強く望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】E. Wigner, "Random Matrices in Physics," SIAM Review, vol. 9, no. 1, January 1967
【非特許文献2】J. W. Silverstein and Z.D Bai, "On the empirical distribution of eigenvalues of a class of large dimensional random matrices," Journal of Multivariate Analysis, vol. 54, issue 2, pp. 175 192, 1995
【非特許文献3】A.M. Tulino, A. Lozano, and S. Verdu, "Impact of correlation on the capacity of multi-antenna channels," IEEE Trans. on Information Theory, vol. 51, no. 7, pp. 2491 2509, 2005
【非特許文献4】C. Chuah, D.N.C. Tse, J.M. Kahn, R.A.V. Valenzuela, "Capacity Scaling in MIMO Wireless Systems Under Correlated Fading," IEEE Trans. On Information Theory, vol. 48, no. 3, pp. 637 650, 2002
【非特許文献5】A. M. Tulino, S. Verdfi, "Random Matrix Theory and Wireless Communications," Now Publishers, vol. 1, issue 1, 2004"
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、正規化パラメータαを計算するための簡易な方法であって、チャネル推定に依存しない方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、正規化パラメータαを計算するための方法であって、送信機における送信アンテナ間の空間相関に依存し、かつ、総送信電力の制約条件を満足する方法を提供することである。
【0014】
本発明についてのこれらの目的及びその他の目的は、送信機におけるM個のアンテナとK個のユーザ装置(UE)とを備えるMU−MIMO通信システムの送信機のためのプリコーディング方法によって達成され、当該プリコーディングは、以下のタイプ、
の正規化ゼロフォーシング(R−ZF)線形プリコーディングに基づいており、
‐Hは、K×M個のチャネル推定値を代表する複素行列であり、H行列は、相関を有する複数のチャネル係数であって、対応する相関係数が相関行列Θ
Tに含まれるエントリである、複数のチャネル係数を含み、I
K及びI
Mは、それぞれサイズK×K及びM×Mの単位行列であり、αは、正規化パラメータである。
本プリコーディング方法は、
a)相関行列Θ
Tを計算するステップと、
b)2つのパラメータα
max及びα
minを初期化するステップと、
c)α=1/2(α
max+α
min)を計算するステップと、
d)λを相関行列Θ
Tの固有値、μをΘ
Tの固有値の経験分布関数、及び、βをM/Kとして、z=−αについて、固定小数点の式
を解く
の値を判定するステップと、
e)z=−αについて、固定小数点の式
を解く
の値を判定するステップと、
f)式
を計算するステップと、
g)Pを利用可能な総送信電力として、F−P<0である場合には、α
max=αを計算し、それ以外の場合には、α
min=αを計算することによって、区間[α
min,α
max]を適応させるステップと
を含む。
【0015】
特定の一実施形態において、正規化パラメータαは、F−Pの絶対値(ABS(F−P))が予め定められた値εよりも大きい限り実行されるWHILEループに基づいて計算される。
【0016】
好ましくは、プリコーディングは、2つの連続するFORループに基づく。
【0017】
第1のFORループは、N回にわたって実行され、
‐Sを予め定められた値(例えば、0)に初期化するステップと、
‐n=1からn=Nまでについて、以下の式
を実行するステップと
を含む。
【0018】
第2のFORループは、
‐S
dを予め定められた値に初期化するステップと、
‐n=1からn=Nまでについて、以下の式
を実行するステップと
を含む。
【0019】
好ましくは、送信機は、UEの数(K)に等しいアンテナ数(M)を備える。
【0020】
また、本発明は、送信機におけるM個のアンテナとK個のユーザ装置(UE)とを備えるMU−MIMO通信システムのための送信機を実現し、プリコーディングが、上述したタイプの正規化ゼロフォーシング(R−ZF)線形プリコーディングに基づく。
【0021】
送信機は、具体的には、
‐相関行列Θ
Tを計算する手段と、
‐2つのパラメータα
max及びα
minを初期化する手段と、
‐α=1/2(α
max+α
min)を計算する手段と、
‐z=−αについて、固定小数点の式
を解く
の値を判定する手段と、
‐z=−αについて、固定小数点の式
を解く
の値を判定する手段と、
‐式
を計算する手段と、
‐Pを利用可能な総送信電力として、F−P<0である場合には、α
max=αを計算し、それ以外の場合には、α
min=αを計算する手段と
を備える。
【0022】
一実施形態において、送信機は、正規化パラメータαを計算するための、WHILEループと2つのFORループとを実行する手段を備える。
【発明を実施するための形態】
【0025】
正規化ゼロフォーシング・アルゴリズムについての現実的な1つの特定の実施形態を説明する(II)前に、本発明の本質を十分に理解するのに適した、ある程度の理論検討を示す(I)。
【0026】
I.理論検討
<1.ランダム行列理論ツール>
正規化パラメータαの計算のための本発明の提案アルゴリズムは、以下の理論的な背景知識に基づいている。
【0027】
ランダム・エルミート行列についての漸近固有値分布(asymptotic eigenvalue distribution)に関する、Wigner(非特許文献1)の先駆的な研究によって、ランダム行列理論は、理論物理学及び応用確率における新たな研究分野に成長している。電気通信分野に対する主な応用は、大規模な行列に関する漸近的な結果の導出にある。具体的には、大規模なエルミート行列の固有値分布が、多くの現実的なケースにおいて、ランダム行列についての経験分布(empirical distribution)と称される、一定の確率分布に収束する。本研究における様々な場面で、ランダム・エルミート行列Xのレゾルベント(resolvent)である(X−zI)
-1のトレースを計算する必要があり、これは、スティルチェス(Stieltjes)変換S
X、
によって与えられ、μ
X(x)は、Xの経験分布である。
【0028】
Silverstein(非特許文献2)は、以下の定理における左側相関(left-sided correlation)及び右側相関(right-sided correlation)を有する、互いに独立で同一の分布に従う(i.i.d.)ランダム行列についての、スティルチェス変換の固定小数点表現を導出した。
【0029】
定理1
N×K行列Wのエントリを、平均0、分散1/Kのi.i.d.とする。X及びQを、μ
X及びμ
Qにほぼ確実に単調に収束する、固有値の経験分布関数を有する、N×Nの決定論的なエルミート行列とする。Yを、Xと同一の固有ベクトルを有するN×Nのエルミート行列とし、fを、Xの固有値をYの固有値にマッピングする何らかの関数とする。この場合、N/K→αで一定であるとき、K,N→∞で、H=X
1/2WQW
HX
1/2+Yのスティルチェス変換S
H(z)は、
に収束し、ここで、Τ
Hは、固定小数点の式の一意の解、
である。
【0030】
系2(非特許文献2)
N×K行列Wのエントリを、平均0、分散1/Kのi.i.d.とする。Yを、μ
Y(x)にほぼ確実に単調に収束する、固有値の経験分布関数を有する、N×Nの決定論的なエルミート行列とする。さらに、Qを、K→∞で分布がほぼ確実に確率分布関数μ
Qに収束する経験分布関数を有する、K×Kの実対角ランダム行列とする。この場合、ランダム行列
H=WQW
H+Y (4)
の、固有値の経験分布は、N/K→αで一定となる一方でK,N→∞となると、スティルチェス変換が
を満足する一意の分布関数に、ほぼ確実に収束する。
【0031】
<2.システムモデル>
以下では、M個のアンテナを有する基地局が、K個の単一アンテナ端末と通信し、更にM/K≧1であるシナリオを検討する。狭帯域な通信システムの受信信号ベクトル
は、送信ベクトル
チャネル行列
雑音ベクトル
を有する、
y=Hx+n (6)
を示す。
【0032】
更に、ユーザkのチャネルベクトル
は、Hの第k行である(kは、ユーザ1からユーザKまでをアドレスするインデックスである)。
【0033】
送信信号ベクトルxは、シンボルベクトル
から、線形プリコーディング
によって得られ、
x=Gs (7)
であり、ここで、E[ss
H]=I
kであり、Gは、Pを利用可能な総送信電力とした場合の総送信電力の制約条件
を満足する。ユーザkによって受信されるシンボルは、
によって与えられる。
【0034】
更に、チャネルHが、広く使用されている(非特許文献3、非特許文献4)クロネッカー・モデル(Kronecker model)に従うものとする。
ここで、
は、標準i.i.d.ガウシアン(白色)エントリを有する行列である。送信機及び受信機における相関行列
及び
は、それぞれエルミート正定値である。MIMOブロードキャストチャネルにおいて、ユーザ間の距離は、信号の波長と比較して十分に大きいものと想定され、即ち、
である。また、
及び
と表記する。
【0035】
<3.正規化ゼロフォーシング・プリコーディング>
R−ZFプリコーディングの場合、プリコーディング行列は
によって与えられ、(α)は、逆行列の補助定理(MIL)から得られ、αは、式(8)の送信電力の制約条件を満足するために使用する。正規化項MαI
Kは、(K,M)が増加するにつれて、tr(HH
H) 及び tr(MαI
K) の両方が、同一のオーダで増加することを保証するための係数Mを含む。(K,M)が大きい場合、制約条件(8)によって、αは以下のように決定される。
ここで、スティルチェス変換の古典的な結果(非特許文献5)から、
である。
は、固定小数点の式(19)、
を満足し、(19)から、
となり、(19)を微分すると、
となる。
【0036】
II.正規化ゼロフォーシング・アルゴリズムの特定の実施形態
以下では、送信機と複数のユーザ装置とを備えるMU−MIMO(マルチユーザ多入力・多出力)通信システムについての特定の一実施形態について説明する。
【0037】
検討する特定の実施形態では、MU−MIMOシステムの送信機は、K個のユーザ装置(UE)に対してデータを送信するM個のアンテナを備える。
図1では、4個(K=4)のユーザ装置(セル)にデータを送信するMアンテナの送信機(eNB)の例を示している。
図1において分かるように、M×K個の異なるチャネルを介した通信間で、データの損失につながりうる干渉が発生する。当該干渉を低減し、かつ、あらゆる損失を補償するために、以下で説明する本実施形態では、正規化ゼロフォーシング(R−ZF)に基づくプリコーディング方法を用い、当該プリコーディング方法は、以下の式、
に従った、正規化パラメータαの計算を含む。ここで、Hは、アンテナ数M及びUE数Kにそれぞれに対応する、K×M個のチャネル推定値を含む複素行列である。行列Hに含まれる複数のチャネル係数は、相関を有し、対応する相関係数は、送信機における相関行列Θ
Tのエントリである。MU−MIMO通信システムにおいて、UEは無相関であり、そのため、式(10)において適用される、受信機における相関行列Θ
Rは、単位行列I
Kに等しい。式(10)によれば、MU−MIMOについての相関行列Hは、
H=H
WΘ
T(1/2)
となる。
【0038】
本明細書の第1章で説明したように、H
Wは、互いに独立で同一の分布に従う、標準的なガウシアン(白色)エントリを有する行列である。
【0039】
更に、上記の正規化ゼロフォーシング(R−ZF)線形プリコーディング・タイプのK
K及びI
Mは、大きさK×K及びM×Mの単位行列を表し、αは、プリコーディング行列Gを計算するために使用される正規化パラメータである。
【0040】
本願の発明者は、チャネル推定に依存せずにαの計算を可能にする新たな方法を設計した。正規化パラメータαは、
図2に示し、かつ、以下のステップを含む方法を用いることによって計算される。
【0041】
本方法の
ステップ110において、送信機は、固有ベクトルΛとΘ
Tの固有値λとを判定することによって、相関行列Θ
Tを計算する。この判定は、当業者には既知の標準的なアルゴリズムを使用することによって行われうる。
(参考:Gene H. Golub and Charles F. Van Loan “Matrix Computations”, Johns Hopkins University Press, 1996)
【0042】
ステップ120において、本方法は、正規化パラメータαを計算するために使用される最大及び最小の限度値にそれぞれ相当する、パラメータα
max及びα
minを初期化する。
【0043】
ステップ130において、本方法は、α=1/2(α
max+α
min)の計算に、処理を進める。
【0044】
更なるステップ140において、本方法は、z=−αについて、以下の式を解くSの判定に、処理を進める。
ここで、λは、相関行列Θ
Tの固有値であり、μは、Θ
Tの固有値の経験分布関数であり、最後に、βは、M/Kである。
【0045】
ステップ140において判定されるこのような値Sは、第1章における式(19)の
の値に相当するという事実に留意されたい。
【0046】
ステップ150において、本方法は、z=−αについて、以下の式を解くS
dの値の判定に、処理を進める。
【0047】
ステップ150において判定されるこのような値S
dは、式(21)の
の値に相当するという事実に留意されたい。
【0048】
ステップ160において、本方法は、送信機の送信電力を表す変数Fの計算に処理を進める。Fは、以下の式を用いることによって計算される。
【0049】
最後に、ステップ170、180及び190は、新たな繰り返し処理に更に進む前に、区間[α
min,α
max]を適応させるために使用される3つのステップである。
【0050】
実際には、
ステップ170は、送信電力Fを、利用可能な総送信電力Pと比較するテストに相当する。
【0051】
具体的には、ステップ170においてF−P<0である場合には、
ステップ180において、本方法は、α
max=αの計算に処理を進める。
【0052】
それ以外の場合、即ち、F−P>0の場合には、本方法は、
ステップ190に処理を進め、α
min=αを計算する。
【0053】
図2を参照して説明した本方法は、当業者によって、多数の異なる実施の対象となりうる。
【0054】
図3は、1つのWHILEループと2つのFORループとの使用に基づく代替的な実施形態を示している。
【0055】
実際には、本プリコーディング方法の正規化パラメータαの計算に、WHILEループが使用され、当該ループは、F−Pの絶対値(ABS(F−P))が最大送信電力の制約条件εよりも大きい限り実行される。本発明の特定の実施形態では、εは、10
-3程度に設定される。
【0056】
図3の実施形態は、固定小数点の式(19)を解くために、第1のFORループが、本プリコーディング方法の
ステップ140において使用され、当該第1のFORループは、N回(n=1からn=Nまで)にわたって実行される。
【0057】
第1のFORループは、特定の一実施形態において0に設定されうる予め定められた値への、Sの初期化を含む。
【0058】
また、第1のFORループは、以下のタイプを使用することによって、n=0からn=NまでについてSを計算する第2のステップを含む。
【0059】
実際には、送信相関行列の固有値の数Lは、送信アンテナの数Mに相当する。
【0060】
ここで、λ
iは、相関行列Θ
Tの固有値であり、ベータは、M/Kに等しい。上記のタイプは、第1章の式(19)に相当する。
【0061】
また
図3について、固定小数点の式(21)を解くために、本方法の
ステップ150において、第2のFORループが使用されることが示されている。第2のFORループも、N回(n=1からn=Nまで)にわたって実行される。
【0062】
上記の第2のFORループは、特定の実施形態において0に設定されうる予め定められた値へS
dを初期化する、第1のステップを含む(S
d=0)。
【0063】
更に、第2のFORループは、以下のタイプを使用することによって、n=0からn=NまでについてS
dを計算する第2のステップに処理を進める。
【0064】
ここで、λ
iは、相関行列Θ
Tの固有値であり、ベータは、M/Kである。上記のタイプは、第1章の式(21)に相当する。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、MU−MIMOシステムの、UEの数Kと送信機におけるアンテナ数Mとは、等しくてもよい(K=M)。
【0066】
図4は、送信機において実行され、かつ、上述の正規化ゼロフォーシング(R−ZF)プリコーディングに基づく、より包括的な方法における発明の適用を示している。
【0067】
方法の全体には、以下のステップが含まれる。
【0068】
本方法の
ステップ210において、送信機は、データが送信されることが必要な複数のUEのセットを決定する。送信機及び複数のUEとは、同期され、MU−MIMOモードに設定される。
【0069】
本方法の
ステップ220において、UEは、例えば、送信機によって送信される、既知の(プリコーディングされていない)従来の基準シンボルを介して、チャネルを測定する。
【0070】
ステップ230において、UEは、チャネル推定値の量子化に、処理を進める。
【0071】
ステップ240において、UEは、チャネル推定値の送信機への送信に、処理を進める。
【0072】
本方法の
ステップ250において、送信機は、選択された複数のUEからのチャネル情報を受信する。
【0073】
本方法の
ステップ260において、送信機は、選択した複数のUEについての利用可能なすべてのチャネル情報を使用して(過去のチャネル情報も使用されうる)、複数のUEについてのチャネル間の相関を計算する。これは、例えば、複数のUEについてのチャネル間の相互相関を計算することによって行われる。
【0074】
本方法の
ステップ270において、送信機は、前のステップにおいて計算した相関係数を使用して、相関行列Θ
Tの固有値Λを計算する。当該固有値は、標準的なアルゴリズムによって計算されうる。
【0075】
本方法の
ステップ280において、送信機は、正規化パラメータαを、
図2に示した方法を使用して計算する。
【0076】
本方法の
更なるステップ290において、送信機は、式(11)に従ってプリコーディング行列Gを計算するために、正規化パラメータαを、チャネル行列Hとともに使用する。
【0077】
本方法の
ステップ300において、送信機は、データ、具体的にはデータシンボルのプリコーディングを行う。本方法は、プリコーディング行列Gを使用して、式
x=Gs (7)
を用いる。式(7)において、xは、送信信号ベクトルであり、sは、送信されるデータのシンボルベクトルである。
【0078】
本方法の
ステップ310において、複数のUEは、例えば、eノードBによって送信される専用パイロット(即ち、特定のUEについてのビームフォーミング・ベクトルでプリコーディングされている既知の基準シンボル)を介して、または、量子化されたビームフォーミング・ベクトルの明示的なフィードバックを用いて、対応するプリコーディングベクトルxを推定する。
【0079】
ステップ320において、複数のUEは、シンボルによって表現された、対応するデータを復号する。
【0080】
図5及び
図6は、上述した提案方法によって計算された正規化パラメータαの収束の様子と、最適な正規化パラメータαとを示している。
【0081】
具体的には、
図5は、少ない数のアンテナとUEと(M=K=4)を有する4×4MIMO通信システムにおける収束を示している。この場合では、収束に小規模の残留誤差が観察される。
【0082】
最適なαは、送信機において、完全なチャネル知識を用いて、網羅的な検索アルゴリズムによって計算される正規化パラメータである。繰り返し回数は、WHILEループが実行される回数に相当する。中間相関は、3GPP UMTSリリース8標準規格における所定の相関行列に相当する。最後に、SNRは、10dBに設定された場合の信号対雑音比である。
【0083】
一方で、
図6は、多数のアンテナとUEと(M=K=32)を有する32×32MIMOシステムにおける収束を示している。この場合、収束の残留誤差が最小化されている。この最小化の理由は、本方法が、アンテナ数が多くなった場合、漸近的な結果に基づくためである。更に、
図5及び
図6によれば、本方法は、8〜10回程度の繰り返しで収束することがわかる。
【0084】
本例では、送信機が半径rの等間隔円形アレー(UCL:Uniform Circular Array)を採用している場合に生じる(送信機における)相関行列を使用した。複数のアンテナは、この円形アレー上で等間隔で配置され、そのような近い間隔に起因して生じる相関を有する。