(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の小型アンテナにおける好適な実施の形態について、
図1から
図12を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
図13に示した従来のSRRを用いた小型アンテナ(以下SRR小型アンテナという)がスプリット部270を中心として破断環状部260が左右対称に形成されているのに対して、本実施形態では、スプリット部の左右いずれか一方の側でアンテナを形成することで、横幅約1/2のサイズ(面積1/2サイズ)の小型アンテナを実現している。
【0011】
アンテナでは、電波の位相速度v、周波数f、波長λとすると、v=f×λの関係にある。そのため、
図13のSRR小型アンテナのサイズを小さくすると、周波数fは大きくなることが一般に予想される。
これに対して、本願発明者は、
図13に示した従来のSRR小型アンテナの試作、実験課程において、スプリット部270を中心とする破断環状部260の左右において、交互に位相が180度反転しながら動作していることを発見した。
そこで、スプリット部を中心とする左右いずれか一方の側だけで環状破断部を形成し、より小型化したアンテナの実現が可能であることを確認した。
具体的には、3層からなる絶縁層11〜13の表裏面と間に、4層からなる第1SRRパターン21から第4SRRパターン24を形成し、各層をビア接続する。
各層のSRRパターン21〜24は、破断部が形成された方形の破断環状部26と、破断環状部26の破断部を形成する端部の一方と連続し、内側方向に延設された第1スプリット部27aと、端部の他方と連続し、第1スプリット部27aに対して所定間隔で並行して形成された第2スプリット部27bとからなるスプリット部27と、第3層の破断環状部26に接続された給電ラインとからアンテナを形成する。
そして、破断環状部26の破断部が、方形の破断環状部26の角に形成されることで、アンテナを小型化することができる。
また、1/2形状のSRR小型アンテナにおいて所望の周波数と出力を得るために調整可能なパラメータを求めた。
【0012】
(2)実施形態の詳細
図1はSRR小型アンテナにおける第1実施形態の構成を表した斜視図である。
図1(a)は、小型アンテナモジュール1の全体を表したもので、第1絶縁層11、第2絶縁層12、第3絶縁層13からなる多層基板において、SRR小型アンテナ2が形成されている。
第1絶縁層11〜第3絶縁層13は、縦30mm、横50mmの方形であり、SRR小型アンテナ2の内側にも第1絶縁層11〜第3絶縁層13が存在している。
本実施形態におけるSRR小型アンテナ2は、後述する各種パラメータ値の選択により、共振周波数が2.4GHzに設定されている。
SRR小型アンテナ2は、
図1(b)に示されるように、第1層から第4層に同寸法の第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24が上面視で重なるように形成されている。
なお、第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24は、ビア接続(後述)することで1つのSRRとして機能している。
【0013】
第1層の第1SRRパターン21と第4層の第4SRRパターン24は、グランド(GRD)プレーンと一体に形成されている。
SRR小型アンテナ2は、
図1(b)に示すように、方形形状で角部が破断した破断環状部26と、破断環状部26の一部と共に平行結合線路を形成するスプリット部27とから構成されている。この破断環状部26は、破断部が存在しない場合(破断部の両端が接続している場合に)にその形状が環状となり、形状としては方形であるが、後述するように半円形、D字状、三角形、その他の多角形、等でもよい。
給電ライン25は、第3SRRパターン23に接続されている。
【0014】
図2(a)〜(d)は、第1〜第4層の各層における第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24の各形状を表したものである。
第1層の第1SRRパターン21と、第4層の第4SRRパターン24は、同一形状であり、上述したようにグランドプレーンと一体形成されている。
各層のSRRパターン21〜24は、方形の破断環状部26とスプリット部27を備えている。
【0015】
破断環状部26は、直線部26a〜26dの順に、互いに直角方向に連続する4つの直線部で方形状に構成されている。直線部26aと直線部26dとは、所定幅で破断されていて連続していない。直線部26aは、方形の基板(第1絶縁層11〜第3絶縁層13)の一辺(端部)と一致するように形成される。
破断環状部26の内側サイズは直線部26b、26dに対応する縦方向が3.5mmで、直線部26a、26cに対応する横方向が6.5mmである。
各直線部26a〜26dの幅は0.5mmに形成されている。ただし、第1SRRパターン21と第4SRRパターン24の直線部26b〜26dはグランドプレーンと一体形成されているため、直線部26aが0.5mm幅となっている。
【0016】
直線部26aの破断部側の端部には、直線部26aと連続して、破断環状部26の内側に張り出して、直線部26dと所定間隔で平行に第1スプリット部27aが形成されている。
この第1スプリット部27aと対向している直線部26dは、破断環状部26の一部を形成すると共に、第2スプリット部27bとして機能している。
第1スプリット部27aの長さは2.6mmで、幅は0.5mmである。
第1スプリット部27aと第2スプリット部27b(直線部26d)間のギャップ(所定間隔)は0.1mmである。
【0017】
第1スプリット部27aと第2スプリット部27bにより、平行結合線路として機能するスプリット部27が形成される。
本実施形態のSRR小型アンテナ2では、ループ電流が流れることで破断環状部26による誘導性とスプリット部27による容量性の双方を装荷している。
【0018】
図2(c)に示されるように、第3SRRパターン23には、電源を供給する給電ライン25が直線部26aに直接接続されている。給電ライン25の幅は、アンテナ回路と基準インピーダンス(例えば50Ω)でインピーダンス整合させるための幅Hが選択される。本実施形態では、基準インピーダンス50Ωに対して、幅H=1.45mmが選択されている。
第3SRRパターン23の直線部26cには、給電ライン25を通すための破断部261が形成されている。破断部261の幅は、給電ライン25の幅H+f1+f2=2.45mmで、本実施形態ではf1=f2=0.5mmとしている。
ここで、破断部261における、給電ライン25の左側(スプリット部27が配置されていない側)の幅がf1で、右側の幅がf2である。
【0019】
なお、給電ライン25と、スプリット部27が配設されている側の反対側の破断環状部26(=直線部26b)との間隔Fは、後述するようにSRR小型アンテナの共振周波数を決定する1パラメータであり、給電ライン25の左側の幅f1はF以下(f1≦F)である必要がある。
本実施形態では、F=f1=0.5であるため、破断部261は、直線部26cの左端(直線部26b側の端)から形成されている。
【0020】
給電ライン25の長さPはSRR小型アンテナ2の外部まで延設されていれば任意である。本実施形態では、SRR小型アンテナ2のサイズから、P(>3.5mm)=15mmとなっている。
給電ライン25の一端は破断環状部26の直線部26aに接続され、外部のアンテナ回路に接続されるようになっている。給電ライン25における、アンテナ回路との接続部については後述する。
【0021】
図2(a)〜(d)に示すように、第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24の各破断環状部26には、給電ライン25に対向する位置を避けて、上面視で同一の位置に複数のビアホール(Via Hole)30が形成されている。
各層のビアホール30は、第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24間に配設される第1絶縁層11〜第3絶縁層13にも同一位置に形成され、全体として貫通孔を形成すると共に、その貫通孔の内周面がメッキされている。これにより第1SRRパターン21〜第4SRRパターンがビア接続されている。
これにより、第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24がビアホール30で接続され、1のSRRとして機能する。
また、第1SRRパターン21のグランドプレーンと、第4SRRパターン24のグランドプレーンも同様にしてビアホール30で接続されている。
なお、ビアホール30による接続は内周面のメッキ以外に、導電性ペーストを充填することで行うようにしてもよい。
【0022】
第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24の各第1スプリット部27aには、ビアホールは形成されていない。
これは、ビアホールが形成されていない27aと、ビアホールが形成されている隣接素子(隣接導体)との間のキャパシタンス(C)値の制御に、ビアホールを形成していない27aの構成のほうが有効に作用するからである。すなわち、ビア接続しないために
図2(a)〜(d)の27aが多層コンデンサを形成するため、キャパスタンス(C)値が増加する効果がある。このことにより、SRR小型アンテナ2の、共振周波数の周波数制御が容易となるものと考える。
【0023】
図3は、外部のアンテナ回路に接続される給電ライン25の端部側の各種形状を表した断面図である。
図3(a)は、小型アンテナモジュール1の第1SRRパターン21と連接するグランドプレーン側に給電端子25aを形成した場合の第1の例である。
すなわち、給電ライン25の給電端部に対応する位置で、第1絶縁層11と第2絶縁層12にスルーホール31を形成するとともに、第1SRRパターン21と連接するグランドプレーンに設けた開口部に給電端子25aが形成される。
そして、スルーホールの内周面がメッキされ、又はスルーホール内に導電ペーストが充填されることで、給電端子25aと給電ライン25の端部とがビア接続される。
【0024】
図3(b)は、第1の例とは逆の面、すなわち、第4SRRパターン24側に給電端子25bを形成した場合の第2の例である。
この例では、給電ライン25の給電端部に対応する位置で、第3絶縁層13にスルーホール32を形成するとともに、第4SRRパターン24と連接するグランドプレーンに設けた開口部に給電端子25bが形成される。
そして、スルーホールの内周面がメッキされ、又はスルーホール内に導電ペーストが充填されることで、給電端子25bと給電ライン25の端部とがビア接続される。
【0025】
図3(c)は、 第3絶縁層13の給電ライン25の長さ方向の長さを、第1絶縁層11と第2絶縁層12よりも長くし、給電ライン25も第1絶縁層11、第2絶縁層12よりも長く形成したものである。
この場合、給電ライン25の端部が給電端子25cとして機能する。
なお、
図3(c)では、第3絶縁層13を第1絶縁層11等よりも大きくしたことにあわせて、第3絶縁層13のグランドプレーンも、第1絶縁層11のグランドプレーンよりも大きく形成しているが、第3絶縁層13のグランドプレーンを第3絶縁層13よりも小さく(給電ライン25の長さ方向を短く)することで第1絶縁層11のグランドプレーンと同じ大きさに形成するようにしてもよい。
【0026】
図3(d)は、スルーホールなどを作成せず、アンテナへの給電ライン25を、そのままメイン回路基板に一体として形成し、メイン回路基板の他の電気素子33(他の回路パターン)に接続するようにしたものである。
【0027】
図4は、小型アンテナモジュール1を構成する各部の材料や材料定数について表したものである。
図4(a)は、各層の厚さと材料を表したものである。
第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24の材料は銅で、その厚さ(所定厚T)は、例えば18μmや35μmが採用されるが、後述する特性解析においては、ほぼゼロとしている。
一方、第1絶縁層11〜第3絶縁層13の材料としては、はガラスエポキシが使用される。第1絶縁層11の厚さが0.4mm、第2絶縁層12の厚さが0.6mm、第3絶縁層13の厚さが0.4mmである。
なお、基板の総厚は、第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24の厚さをほぼゼロとしているので、全体で1.4mmで特性解析を行っている。
【0028】
図4(b)は材料定数を表したもので、第1SRRパターン21〜第4SRRパターン24の材料である銅の導電率σ=5.977×10
7[S/m]である。
第1絶縁層11〜第3絶縁層13の材料であるガラスエポキシは、比誘電率εr=4.25、誘電正接(損失)tanδは1×10
-2である。
また、特性解析では小型アンテナモジュール1の周囲を空気で取り囲むものとし、その比誘電率は1.000517とした。
【0029】
以上説明したように本実施形態によれば、
図1〜4に示した各構成のサイズや材料により、縦a=3.5mm、横b=6.5mmで、共振周波数2.4GHzのSRR小型アンテナ2を構成することができる。
例えば、共振周波数2.4GHzにおいて、通常のスロットアンテナのサイズが縦a=6mm、横b=63mmであるのに比べて十分に小型化することができる。
また、
図13で説明した従来のSRR小型アンテナに比べても、面積比約50%とさらに小型化されたSRR小型アンテナを提供することができる。
【0030】
図5は、
図1〜4で説明した本実施形態のSRR小型アンテナ2についての特性を表したものである。
図5(a)は、共振周波数と反射損失について表したもので、中心周波数が2.430GHzで、−10dB以下の周波数範囲は2.381GHz〜2.484GHzであり、無線LANの2.4GHz帯を十分カバーすることができる。
図5(b)はアンテナの指向特性を表したものである。各方向については、
図1に示したように、SRR小型アンテナ2の縦方向(給電ライン25の長さ方向)をZ軸、横方向をX軸、厚さ方向をY軸としている。
図5(b)に示されるように、水平方向、垂直方向ともに一様な放射指向特性が得られている。
最大利得は2dBi、放射効率は89%である。
【0031】
次に、本実施形態におけるSRR小型アンテナ2を設計する上で、所望の共振周波数を得るためのパラメータについて説明する。
図6は、本実施形態におけるSRR小型アンテナ2における共振周波数に影響を与えるパラメータについて表したものである。
図6に示すように、本実施形態におけるSRR小型アンテナ2の縦方向(給電ライン25の長さ方向)の長さをa、横方向の長さをb、給電ライン25と直線部26b(給電ライン25に対してスプリット部27が存在しない側の破断環状部26)との間隔をF、スプリット部27の長さをLとした場合、これら各値の変化により共振周波数が次のように変化する。
【0032】
図7は、スプリット部27の長さ(パラメータL)と、共振周波数、放射効率(%)の関係を表したものである。
この
図7に示されるように、パラメータLを長くすることで共振周波数fを小さくすることが可能である。
【0033】
図8は、給電ライン25と直線部26bとの間隔(パラメータF)と、共振周波数、放射効率(%)の関係を表したものである。
この
図8に示されるように、パラメータFを小さくすることで、共振周波数fを小さくすることが可能である。
【0034】
図9は、SRR小型アンテナ2の開口縦横比(パラメータa/b)と、共振周波数、放射効率(%)の関係を表したものである。
この
図9に示されるように、開口縦横比a/bを小さくするほど、すなわち、横方向に細長くするほど、共振周波数fを小さくすることが可能である。
【0035】
以上を纏めると、各パラメータの値を変更することにより、共振周波数fが次のように変化する。
(1)スプリット部の長さLが長いほど共振周波数fが小さくなる。
(2)間隔Fが狭いほど共振周波数fが小さくなる。
(3)縦横の比a/bが小さくなるほど(横方向に細長くなるほど)共振周波数fが小さくなる。
【0036】
これらのパラメータL、F、a/bを適宜変更することで、所望の共振周波数fのSRR小型アンテナを得ることが可能となる。
特に特許文献で記載されているパラメータLだけでなく、共振周波数を決定するパラメータとしてF、a/bの発見により、設計の自由度が高く、より小型のSRR小型アンテナ2を提供することができる。
【0037】
図10は、SRR小型アンテナ2における第2実施形態について表したものである。
説明した第1実施形態では、スプリット部27を破断環状部26の内側に形成する場合について説明したが、第2実施形態では、スプリット部27を破断環状部26の外側に形成したものである。
第2実施形態のSRR小型アンテナ2におけるスプリット部27の形成箇所以外については、
図10(a)〜(d)に示されるように第1実施形態と同様である。
なお、第1実施形態ではスプリット部27を内側に形成することで、破断環状部26の一部が第2スプリット部27bとして機能するが、第2実施形態では第1スプリット部27a、第2スプリット部27bをそれぞれを破断環状部26の両端部から連続して外側に形成している。
【0038】
スプリット部27の形成方向については、
図10に示されるように、方形の基板(第1絶縁層11〜第3絶縁層13)の、SRR小型アンテナ2が形成される側面(辺)の長手方向に形成され、直線部26aと連続する第1スプリット部27aとが、方形の基板の一辺(端部)と一致するように形成される。
このように基板の一辺と一致するようにスプリット部27を形成することで、第1実施形態においてグランドプレーンとなる部分に配設されることになる。このためスプリット部27を破断環状部26の外側に形成しても、小型アンテナモジュール1のサイズを大きくすることはない。
【0039】
図11は、SRR小型アンテナ2における他の実施形態の形状について表したものである。ただし、第1、第2実施形態と同様に、この実施形態も4層のSRRパターン21〜24で構成されるが、その形状を除いて第1実施形態、第2実施形態と同様であるため、第2SRRパターン22を表している。
なお、
図11において、第3SRRパターン23に接続形成される給電ライン25については点線で表示している。給電ライン25の幅Hについては、他の実施形態と同様に、アンテナ回路と基準インピーダンス(例えば50Ω)でインピーダンス整合させるための幅Hとして、例えば、基準インピーダンス50Ωに対して、幅H=1.45mmが選択される。
また、第1実施形態と同様に、4層のSRRパターン21〜24の各層間には第1〜第3絶縁層が配設され、図示しないが各層は第1実施形態と同様にビアホールでビア接続されている。
【0040】
図11(a)に示した例は、半円形又はD型の破断環状部を備え、直線部の一方の端部が破断した形状のSRR小型アンテナ2の例である。ここで直線部は図に示されるように、半円形状の場合には半円弧の両端を結ぶ直線の部分で、D型の場合には縦線に該当する部分である。
スプリット部27は、破断部につながる直線部分の第2スプリット部27bと、これと平行に破断部の他方から内側に延設した第1スプリット部27aとで形成されている。
なお、他の例を含め、左右反転した形状にすることも可能である。
【0041】
図11(b)は、破断環状部が(a)と同様に半円形又はD型である一方、
図10で示した第2実施形態と同様にスプリット部27が破断環状部の外側に形成される場合の例を示したものである。
スプリット部27の形成する方向については第2実施形態と同様に、方形の基板(第1絶縁層11〜第3絶縁層)の、SRR小型アンテナ2が形成される側面(辺)の長手方向に形成される。
【0042】
なお、図示しないが、半円形状又はD型の破断環状部を有し、外側にスプリット部を形成する場合、破断環状部の直線部分を、方形基板(第1絶縁層11〜第3絶縁層)の一辺(端部)と一致する方向に形成してもよい。
この場合、破断環状部の直線部に連続して破断環状部の外側に第1スプリット部27aが形成され、これと平行に第2スプリット部27bが形成される。
なお、給電ライン25については、直線部の、スプリット部27と反対側に形成される。
【0043】
図11(c)〜
図11(f)の例は、三角形状でいずれかの頂点部分に破断部が形成された破断環状部の例である。
図11(c)、(d)は、破断環状部の内側にスプリット部が形成されている場合の例で、(e)、(f)は、破断環状部の外側にスプリット部が形成されている場合の例である。
また、
図11(c)、(e)、(f)は、他の実施形態と同様に、給電ライン25が、方形基板のSRRパターンが形成される側面(辺)と直角方向に形成されている例である。一方、
図11(d)は、方形基板のSRRパターンが形成される側面(辺)から傾斜方向に給電ライン25を形成した例で、傾斜方向は(スプリット部27と反対側の)破断環状部と平行になるように形成されている。
また、三角形状の破断環状部の例(c)〜(f)のうち、スプリット部27と反対側の破断環状部と平行に給電ライン25が形成されている例が
図11(d)、(f)で、平行に形成されていない例が
図11(c)、(e)である。
【0044】
図12は、さらに他の実施形態のSRR小型アンテナ2を表したものである。
図1〜
図11までの各実施形態が第1層〜第4層のSRRパターン21〜24で構成したのに対し、
図12に示した実施形態では、第1SRRパターン211と第2SRRパターン221の2層で構成されている。
本実施形態の第1SRRパターン211と第2SRRパターン221は、図示しないが、1枚の絶縁層の両面に形成されている。絶縁層の形状及び材質については第1実施形態と同様である。
【0045】
図12に示されるように、破断環状部26とスプリット部27の形状については第1実施形態と同様であるが、給電ライン25が第1SRRパターン211に接続形成されている点が異なっている。
本実施形態の給電ライン25はマイクロストリップラインを形成している。この給電ライン25の形成に伴い、第1SRRパターン211の破断環状部26に連続形成されるグランドプレーンには、給電ライン25の長手方向からみて左右にはスリット262a、262bが形成されている。給電ライン25の端部にも同様にスリットが形成される。
この給電ライン25は、絶縁層の一方の面に形成されることから、第1実施形態において
図3で説明したようなスルーホール31、32は形成されない。
ただし、給電ライン25が形成されている面と反対側の面に給電端子を形成する場合には、
図3(b)と同様にスルーホール32及び給電端子25bを形成する。
【0046】
なお、
図10、
図11で説明した他の実施形態においても、
図12で説明した実施形態と同様に、1層の絶縁層の両面に第1層と第2層のSRRパターンを形成することで、SRR小型アンテナを構成するようにしてもよい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のSRR小型アンテナによれば、破断環状部26における所定方向の端部に破断部を形成し、スプリット部27を破断環状部26の破断部と連続して形成したので、破断環状部の中央部に破断部及びスプリット部を形成する従来のSRR小型アンテナに比較して、さらに小型のアンテナ(面積比約1/2)を提供することができる。
【0048】
また、本実施形態のSRR小型アンテナでは、SRRパターンの多層化(並列)によりスプリット部27のキャパシタンス(C)値を増やすことでも小型化が実現されている。
さらに、SRRパターンのプリンテッドアンテナであるため、安価で高機能のアンテナとすることができる。
【0049】
また、本実施形態のSRR小型アンテナの設計では、共振周波数を変更するためのパラメータとして、従来から知られているループ長の他に、スプリット部27の長さL、スプリット部27が形成されている側の反対側の破断環状部26と給電ライン25との間隔F、縦横の比a/b、が存在することを究明した。
これらの各パラメータを適宜選択することで、所望共振周波数のSRR小型アンテナの形状やサイズの選択幅を広げることができ、設計が容易になる。