(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666701
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】UZM−45アルミノケイ酸塩ゼオライト、UZM−45の調製方法およびそれを用いたプロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20150122BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20150122BHJP
C10G 35/06 20060101ALI20150122BHJP
C10G 45/12 20060101ALI20150122BHJP
C10G 45/64 20060101ALI20150122BHJP
C10G 50/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/70 M
C10G35/06
C10G45/12
C10G45/64
C10G50/00
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-518707(P2013-518707)
(86)(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公表番号】特表2013-536145(P2013-536145A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2011042589
(87)【国際公開番号】WO2012003313
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2013年2月20日
(31)【優先権主張番号】61/360,586
(32)【優先日】2010年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,グレゴリー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,マーク・エイ
【審査官】
山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−060613(JP,A)
【文献】
特表2007−533446(JP,A)
【文献】
特表2007−533590(JP,A)
【文献】
特表2008−515760(JP,A)
【文献】
特開2009−126740(JP,A)
【文献】
特表2009−545511(JP,A)
【文献】
米国特許第06419895(US,B1)
【文献】
米国特許第07575737(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0031810(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0081775(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/039431(WO,A2)
【文献】
Knight, L.M. et al.,Studies in Surface Science and Catalysis,2004年,Vol.154,pp.171-179
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
B01J21/00−38/74
C10G1/00−99/00
CAplus(STN)
WPIX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Scopus
CiNii
J−STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともAlO
2およびSiO
2の四面体単位の三次元骨格を有し、かつ合成されたままの形態の無水物基準で以下の実験式:
M
mn+R
rP+Al
1−xE
xSi
yO
z
[式中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの交換性陽イオンであり;“m”は、Mの(Al+E)に対するモル比で、0〜4.0の範囲であり;Rは、コリン、エチルトリメチルアンモニウム(ETMA)、ジエチルジメチルアンモニウム(DEDMA)、テトラエチルアンモニウム(TEA)、テトラプロピルアンモニウム(TPA)、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、ジメチルジエタノールアンモニウム、ヘキサメトニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される有機アンモニウム陽イオンであり;“r”は、Rの(Al+E)に対するモル比で、0.25〜4.0の値を有し;“n”は、Mの加重平均価数で、1〜3の値を有し;“p”は、Rの加重平均価数で、1〜2の値を有し;Eは、ガリウム、鉄、ホウ素およびこれらの混合物からなる群から選択される元素であり;“x”は、Eのモル分率で、0〜1.0の値を有し;“y”は、Siの(Al+E)に対するモル比で;3より大きく20までの範囲であり;“z”は、Oの(Al+E)に対するモル比で、式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
で決定される値を有する]で表される実験組成を有し、少なくとも、表A:
【表1】
に示されたd間隔および強度を有するX線回折パターンを有し、
少なくとも400℃の温度まで熱的に安定であることを特徴とする微孔性結晶質ゼオライト。
【請求項2】
Mが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のゼオライト。
【請求項3】
Rがコリンであり、Mが、K、Srおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のゼオライト。
【請求項4】
少なくともAlO
2およびSiO
2の四面体単位の三次元骨格を有し、かつ合成したままの形態の無水物基準で以下の実験式:
M
mn+R
rP+Al
1−xE
xSi
yO
z
[式中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの交換性陽イオンであり、“m”は、Mの(Al+E)に対するモル比で、0〜4.0の範囲であり;Rは、コリン、エチルトリメチルアンモニウム(ETMA)、ジエチルジメチルアンモニウム(DEDMA)、テトラエチルアンモニウム(TEA)、テトラプロピルアンモニウム(TPA)、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、ジメチルジエタノールアンモニウム、ヘキサメトニウム陽イオンおよびこれらの混合物からなる群から選択される有機アンモニウム陽イオンであり;“r”は、Rの(Al+E)に対するモル比であり、0.25〜4.0の値を有し;“n”は、Mの加重平均価数で、1〜3の値を有し、“p”は、Rの加重平均価数で、1〜2の値を有し;Eは、ガリウム、鉄、ホウ素およびこれらの混合物からなる群から選択される元素であり;“x”は、Eのモル分率で、0〜1.0の値を有し、“y”は、Siの(Al+E)に対するモル比であり、3より大きく20までの範囲であり;“z”は、Oの(Al+E)に対するモル比で、式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
によって決定される値を有する]で表される実験組成を有し、少なくとも表A:
【表2】
に示されるd間隔および強度を少なくとも備えるX線回折パターンを有し、かつ、少なくとも400℃の温度まで熱的に安定であることを特徴とする微孔性結晶質ゼオライトを調製する方法であって、
M、R、Al、Si、および所望によりEの反応源を含む反応混合物を形成する工程と、前記反応混合物を60℃〜175℃の温度でゼオライトを形成するのに十分な時間加熱する工程とを含み、前記反応混合物が、酸化物のモル比に関し以下の式:
aM
2/nO:bR
2/PO:1−cAl
2O
3:cE
2O
3:dSiO
2:eH
2O
[式中、“a”は0.0〜8.0の値を有し、“b”は1.5〜40の値を有し、“c”は0〜1.0の値を有し、“d”は4〜50の値を有し、“e”は25〜4000の値を有する]で表される組成を有する、微孔性結晶質ゼオライトを調製する方法。
【請求項5】
Mがリチウム、セシウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ストロンチウム、バリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Rがコリンであり、Mが、K、Srおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の微孔性結晶質ゼオライトの種結晶を前記反応混合物に添加する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
炭化水素転化条件において炭化水素流を触媒と接触させて、転化生成物を得る工程を含む炭化水素転化方法であって、
前記触媒が微孔性結晶質ゼオライトUZM−45を含み、ここで、UZM−45が、少なくともAlO
2およびSiO
2の四面体単位の三次元骨格と、合成されたままの形態の無水物基準で以下の実験式:
M
mn+R
rP+Al
1−xE
xSi
yO
z
[式中、Mはアルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの交換性陽イオンであり、“m”は、Mの(Al+E)に対するモル比で、0〜4.0の範囲であり、Rは、コリン、ETMA、DEDMA、TEA、TPA、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、ジメチルジエタノールアンモニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される有機アンモニウム陽イオンであり、“r”は、Rの(Al+E)に対するモル比で、0.25〜4.0の値を有し、“n”は、Mの加重平均原子で、1〜3の値を有し、“p”は、Rの加重平均価数で、1〜2の値を有し、Eは、ガリウム、鉄、ホウ素およびこれらの混合物からなる群から選択される元素であり、“x”は、Eのモル分率で、0〜1.0の値を有し、“y”は、Siの(Al+E)に対するモル比で、3より大きく20までの範囲であり、“z”は、Oの(Al+E)に対するモル比で、以下の等式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
で求められる値を有する]で表される実験組成とを有し、以下の表Aに示されるd間隔および強度を少なくとも備えるX線回折パターンを有し、
【表3】
かつ、少なくとも400℃の温度まで熱的に安定であることを特徴とする、炭化水素転化方法。
【請求項9】
前記炭化水素転化方法が、アルキル化、異性化、オレフィンの二量化およびオリゴマー化、および脱ろうからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年7月1日に出願された米国特許出願第61/360,586号の優先権を主張し、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、UZM−45と称される新規な一群のアルミノケイ酸塩ゼオライトに関する。これらは以下の実験式で表される:
M
mn+R
rp+Al
1−xE
xSi
yO
z
式中、Mはカリウムまたはストロンチウムなどの交換性陽イオンであり、Rはコリンなどの有機アンモニウム陽イオンであり、Eはガリウムなどの骨格元素である。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、微孔性であって、AlO
2およびSiO
2四面体が頂点を共有して形成される結晶質アルミノケイ酸塩組成物である。天然産、および合成で調製される多くのゼオライトは、様々な工業プロセスで用いられている。合成ゼオライトは、Si、Alの適切な供給源と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミンまたは有機アンモニウム陽イオンなどの構造規定剤とを用いた水熱合成で調製される。構造規定剤は、ゼオライトの細孔内に残存し、最終的に形成される特定の構造に大きく影響する。これらの化学種は、アルミニウムに関連する骨格電荷の平衡を保ち、また空間充填剤としての役割も果たす。ゼオライトは、寸法の均一な細孔開口部を有し、大きなイオン交換容量を有し、また、永久ゼオライト結晶構造を構成する原子のいずれもが大幅に変位することなく、結晶の内部空洞の全体にわたって分散される吸着相を可逆的に脱着することができるという特徴がある。ゼオライトは、外表面で、また細孔内の内表面で起こる炭化水素転化反応の触媒として用いることもできる。
【0003】
UZM−22と称される特定のゼオライトは、2010年にMillerによって初めて開示された(米国特許第7,744,850号を参照)。この特許には、構造規定剤であるコリンとLi、Srの陽イオンの一方または両方とを組み合わせてUZM−22を合成することが記載されている。このUZM−22の合成では、米国特許第7,578,993号に記載されるように、ゼオライト合成に対する電荷密度不整合(CDM:Charge Density Mismatch)法が用いられる。ゼオライトUZM−22は、Database of Zeolite Structures、http://www.iza-structure.org/databasesで明らかにされているとおり、MEI構造を有する。MEI構造とは、7Åの開口部を備える1次元の12員環細孔と、この12員環細孔面に対して垂直な7員環細孔とからなる系のことである。構造規定剤であるコリンとアルカリ金属陽イオンおよびアルカリ土類金属陽イオンの様々な組み合わせとに関するさらなる研究が、CDM法に加えて、組み合わせ高生産性合成法を用いて実施された。コリン−アルカリ金属−アルカリ土類金属アミノケイ酸塩のスクリーニングから、OFF、ERI、LTL、FAU、FER、LTA、CHA、BPH、MEIなどを含む多くの公知のゼオライト構造が生み出された。UZM−45と名付けられた新規なゼオライト構造も作り出された。
【0004】
本出願人らは、UZM−45と称される新しい一群の材料の調製に成功した。UZM−45のトポロジーは特有であり、X線回折で測定されるとおりのものである。この材料は、水酸化コリン、即ち、[HO(CH
2)
2NMe
3]
+OH
−などの市販の単純な構造規定剤を、少量のSr
2+およびK
+と一緒に使用し、さらにゼオライト合成のためのCDM法を用いて調製される。
【発明の概要】
【0005】
上述のように、本発明は、UZM−45と称される新規なアルミノケイ酸塩ゼオライトに関する。したがって、本発明の一態様は、少なくともAlO
2およびSiO
2の四面体単位の三次元骨格と、合成されたままの形態の無水物基準で、以下の実験式で表される実験組成とを有する微孔性結晶質ゼオライトである。
【0006】
M
mn+R
rp+Al
1−xE
xSi
yO
z
式中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの交換性陽イオンであり、“m”は、Mの(Al+E)に対するモル比で、0〜4.0の範囲であり、Rは、コリン、エチルトリメチルアンモニウム(ETMA
+)、ジエチルジメチルアンモニウム(DEDMA
+)、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、ジメチルジエタノールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム(TEA
+)、テトラプロピルアンモニウム(TPA
+)、ヘキサメトニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される有機アンモニウム陽イオンであり、“r”はRの(Al+E)に対するモル比で、0.25〜4.0の値を有し、“n”はMの加重平均価数で、1〜3の値を有し、“p”は、Rの加重平均価数で、1〜2の値を有し、Eは、ガリウム、鉄、ホウ素およびこれらの混合物からなる群から選択される元素であり、“x”はEのモル分率で、0〜1.0の値を有し、“y”は、Siの(Al+E)に対するモル比で、3より大きく20までの範囲であり、“z”は、Oの(Al+E)に対するモル比で、以下の式で求められる値を有する。
【0007】
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
上述の微孔性結晶質ゼオライトは、以下の表Aに示されるd間隔および強度を少なくとも備えるX線回折パターンを有し、400℃より高い温度まで熱的に安定であることを特徴とする。
【0009】
本発明の別の態様は、上述の結晶質微孔性ゼオライトの製造方法である。この方法は、M、R、Al、Si、および所望によりEの反応源を含む反応混合物を形成する工程と、この反応混合物を、60〜175℃の温度で、ゼオライトを形成するのに十分な時間加熱する工程を含み、酸化物のモル比に関し以下の式で表される組成を有する。
【0010】
aM
2/nO:bR
2/pO:1−cAl
2O
3:cE
2O
3:dSiO
2:eH
2O
ここで、“a”は、0.0〜8の値を有し、“b”は、1.5〜40の値を有し、“c”は、0〜1.0の値を有し、“d”は、4〜50の値を有し、“e”は、25〜4,000の値を有する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、上述のゼオライトを用いた炭化水素転化方法である。この方法は、転化炭化水素を得る転化条件で、炭化水素を上記ゼオライトと接触させる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願人は、新規な位相構造を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトを調製し、これをUZM−45と称した。本発明の微孔性結晶質ゼオライトUZM−45は、合成されたままの形態の無水物基準で、以下の実験式で表される実験組成を有する。
【0013】
M
mn+R
rp+Al
1−xE
xSi
yO
z
式中、Mは少なくとも1つの交換性陽イオンで、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類金属からなる群から選択される。陽イオンMの具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、イッテルビウムおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。Rは有機アンモニウム陽イオンであり、その例としては、コリン陽イオンである[(CH
3)
3N(CH
2)
2OH]
+、ETMA
+、DEDMA
+、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、ジメチルジエタノールアンモニウム、TEA
+、TPA
+、ヘキサメトニウムおよびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。“r”は、Rの(Al+E)に対するモル比で、0.25〜4.0の範囲であり、一方、“p”の値は、Rの加重平均価数で、1〜2の範囲である。“n”の値はMの加重平均価数で、1〜3の範囲であり、一方“m”は、Mの(Al+E)に対するモル比で、0.0〜4の範囲である。シリコンの(Al+E)に対する比は“y”で表され、その値は3〜20の範囲である。Eは、四面体配位の元素で、ゼオライトの骨格中に存在し、ガリウム、鉄、およびホウ素からなる群から選択される。Eのモル分率は、“x”で表され、0〜1.0の値を有し、一方、“z”はOの(Al+E)に対するモル比であり、以下の式で与えられる。
【0014】
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
式中、Mが唯一の金属である場合は、平均加重価数は、その1種類の金属の価数、すなわち+1または+2である。しかしながら、2種類以上の金属Mが存在する場合、M
mn+は以下の式で与えられる。
【0015】
M
mn+=M
m1(n1)++M
m2(n2)++M
m3(n3)++…
加重平均価数“n”は、以下の式で与えられる。
【0017】
同様に、ここで、Rが唯一の有機アンモニウム陽イオンである場合、加重平均価数は、この1種類の有機アンモニウム陽イオンの価数、すなわち+1または+2である。しかしながら、2種類以上の有機アンモニウム陽イオンRが存在する場合、R
rp+は以下の式で表される。
【0018】
R
rp+=R
r1(p1)++R
r2(p2)++R
r3(p3)++…
加重平均価数“p”は、以下の式で与えられる。
【0020】
微孔性結晶質ゼオライトUZM−45は、M、R、アルミニウム、シリコン、および場合によってはEの反応源を結合させることで調製した反応混合物の水熱結晶化により調製される。アルミニウムの供給源としては、アルミニウムアルコキシド、沈降アルミナ、アルミニウム金属、アルミニウム塩およびアルミナゾルが挙げられるが、これらに限定されない。アルミニウムアルコキシドの具体例としては、アルミニウムオルトsec−ブトキシドおよびアルミニウムオルトイソプロポキシドが挙げられるが、これらに限定されない。シリカの供給源としては、テトラエチルオルトケイ酸塩、コロイダルシリカ、沈降シリカおよびアルカリケイ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。E元素の供給源としては、アルカリホウ酸塩、ホウ酸、沈降オキシ水酸化ガリウム、硫酸ガリウム、硫酸第二鉄、および塩化第二鉄が挙げられるが、これらに限定されない。金属Mの供給源としては、それぞれのアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、および水酸化物が挙げられる。Rは、コリン、ETMA、DEDMA、 TEA、TPA、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、ジメチルジエタノールアンモニウム、ヘキサメトニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される有機アンモニウム陽イオンで、これらの供給源としては、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物およびフッ化物化合物が挙げられる。具体例としては、限定はされないが、水酸化コリンおよび塩化コリン、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウムが挙げられる。
【0021】
この反応混合物は、所望の成分の反応源を含み、酸化物のモル比に関して以下の式で表される。
aM
2/nO:bR
2/pO:1−cAl
2O
3:cE
2O
3:dSiO
2:eH
2O
式中、“a”は、0.0〜8.0の範囲で、“b”は、1.5〜40の範囲で、“c”は、0〜1.0の範囲で、“d”は、4〜50の範囲で、“e”は、25〜4000の範囲である。アルコキシドを用いる場合は、アルコール加水分解生成物を除去するための蒸留または蒸発工程を含むことが好ましい。反応混合物は、60℃〜175℃、好ましくは100℃〜150℃の温度で1日〜3週間、好ましくは3日〜14日の間、密閉反応容器内において自生圧下で反応させる。結晶化が完了した後、固体生成物を、濾過または遠心分離などの手段で不均一混合物から単離する。次いで、この生成物を脱イオン水で洗浄し、空気中で、周囲温度から100℃までの温度で乾燥する。なお、UZM−45種結晶を必要に応じて反応混合物に添加して、ゼオライトの形成を促進することができる。
【0022】
UZM−45を製造するのに好適な合成法は、米国特許7,578,993号明細書およびStudies in Surface Science and Catalysis,(2004), Vol. 154A, 364-372に開示されているように、電荷密度不整合という概念を利用する。米国特許第7,578,993号明細書に開示されている方法は、アルミノケイ酸塩種を可溶化するために水酸化第4級アンモニウムを用いる一方、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、並びにより高電荷の有機アンモニウム陽イオンなどの結晶化誘起剤を別の工程にしばしば導入している。UZM−45調製のために市販のコリンを用いることにより、その合成は経済的に魅力的なものとなる。
【0023】
UZM−45アルミノケイ酸塩ゼオライトは上記の方法で得られ、下記表Aに示すd間隔と相対強度を少なくとも有するX線回折パターンで特徴付けられる。
【0025】
実施例に詳細に示すように、UZM−45材料は少なくとも400℃まで熱的に安定である。
合成したままの状態では、UZM−45材料は、交換性陽イオンまたは電荷平衡陽イオンの一部をその細孔内に含有する。これらの交換性陽イオンは別の陽イオンに交換することができ、また有機陽イオンの場合は制御条件で加熱除去することができる。UZM−45ゼオライトは、様々な方法で変性することで、特定の用途に合わせて使用することができる。変性方法としては、焼成、イオン交換、蒸気処理、種々の酸抽出、ヘキサフルオロケイ酸塩処理、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。これらの変性方法は、UZM−4の場合について米国特許第6,776,975号(B1)で概説されているものと同様であり、その全体を参照により本明細書に組み込む。変性された特性としては、空隙率、吸着特性、Si/Al比、酸性度、熱安定性などが挙げられる。
【0026】
ゼオライト出発物質の割合またはゼオライト生成物の吸着能などを述べる際、本明細書では、別段の指定がなければ、ゼオライトの「無水状態」を意図する。「無水状態」という用語は、本明細書では物理吸着水および化学吸着水のどちらも実質的に含有しないゼオライトを指すのに用いられる。
【0027】
本発明の結晶性UZM−45ゼオライトを使用することで、複数の分子種の混合物の分離、イオン交換による汚染物の除去、及び様々な炭化水素転化方法を触媒することができる。分子種の分離は、分子サイズ(動的直径)または分子種の極性度のいずれかに基づいていると考えられる。
【0028】
本発明のUZM−45ゼオライトは、様々な炭化水素転化方法における触媒または触媒担体として使用することもできる。炭化水素転化方法は、当該技術分野で周知であり、クラッキング、水素化分解、芳香族化合物とイソパラフィン双方のアルキル化、異性化、重合、改質、水素化、脱水素化、アルキル交換、脱アルキル化、水和、脱水、水素処理、水素化脱窒素、水素化脱硫、メタン化および合成ガスシフト工程を含む。これらの工程で用いることのできる具体的な反応条件や供給原料の種類は、米国特許第4,310,440号および米国特許第4,440,871号に記載されており、その内容が参照により本明細書に組み込まれる。好適な炭化水素転化方法は水素を構成要素とするものであり、そのような方法には水素処理または水素化精製、水素化、水素化分解、水素化脱窒素、水素化脱硫などがある。
【0029】
水素化分解条件は、一般に400°F〜1,200°F(204℃〜649℃)の範囲、好ましくは600°F〜950°F(316℃〜510℃)の間の温度を含む。反応圧力は、大気圧から3,500psig(24,132kPa・g)の範囲、好ましくは200psig〜3,000psig(1,379kPa・g〜20,685kPa・g)の間である。接触時間は、通常は0.1hr
−1〜15hr
−1の範囲、好ましくは0.2hr
−1〜3hr
−1の間の液空間速度(liquid hourly space velocities:LHSV)に相当する。水素循環速度は、装填量1バレル当たり1,000〜50,000標準立方フィート(standard cubic feet:scf)(178〜8,888標準m
3/m
3)の範囲、好ましくは装填量1バレル当たり2,000〜30,000(scf)(355〜5,333標準m
3/m
3)の間である。好適な水素処理条件は、通常は上記に設定した広範囲の水素化分解条件内にある。
【0030】
反応領域の流出物は、通常は触媒床から除去され、分縮および気液分離にかけられ、次いで分画されてその種々の成分が回収される。水素と、必要に応じてより重質の未転換物質の一部または全部は反応器に再循環される。あるいは、2段階フローを採用して未転換物質を第2の反応器に送ってもよい。本発明の触媒は、このような工程の1段階だけで、あるいは両反応段階で使用してもよい。
【0031】
接触分解法は、好ましくはUZM−45組成物とともに軽油、重質ナフサ、脱れき原油残留物などの供給原料を用いて実施され、ガソリンが主な所望の生成物である。温度条件は850°F〜1,100°Fが好適であり、LHSV値は0.5〜10、圧力条件は0〜50psigが好適である。
【0032】
芳香族化合物のアルキル化は通常、芳香族化合物(C
2〜C
12)、特にベンゼンをモノオレフィンと反応させて、直鎖アルキル置換芳香族化合物を生成する工程を含む。この方法は、芳香族化合物:オレフィン(例えばベンゼン:オレフィン)比を5:1と30:1の間、LHSVを0.3hr
−1〜6hr
−1、温度を100℃〜250℃、圧力を200psig〜1,000psigにして実施される。装置のさらなる詳細は米国特許第4,870,222号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
イソパラフィンをオレフィンでアルキル化して自動車燃料の成分に好適なアルキラートを生産するには、温度を−30℃〜40℃、圧力を大気圧から6,894kPa(1,000psig)、重量空間速度(weight hourly space velocity:WHSV)を0.1〜120にしてアルキル化を実施する。パラフィンのアルキル化の詳細は、米国特許第5,157,196号および第5,157,197号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
以下の実施例は本発明の実例として示すものであり、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の概して広い範囲を不当に限定することを意図するものではない。
本発明のUZM−45ゼオライトの構造はX線分析で決定された。以下の実施例に示すX線パターンは、標準的なX線粉末回折技術を用いて得られた。放射線源は、45kVおよび35maで作動する高強度X線管であった。銅K−α線の回折パターンは、コンピュータを利用した適切な技術を用いて得られた。平坦な圧縮粉末試料が2°〜70°(2θ)の範囲にわたって連続的に走査された。オングストローム単位の格子面間隔(d)が、θで表される回折ピーク位置から得られた。ここでθは、デジタル化されたデータから観察したときのブラッグ角である。強度は、バックグラウンドを差し引いた後の回折ピークの積分面積から測定された。ここで“I
o”は、最強線または最強ピークの強度であり、“I”は、その他の各ピークの強度である。高スループットの試料のために、様々な回折パターンが、面検出器(検出範囲2θ=3°〜38°)を備えた回折装置(Bruker-AXS GADDS diffractometer)にて集められた。
【0035】
当業者であれば分かるように、パラメータ2θの測定は人や機械による誤差の影響を受けやすい。そのため、両方の誤差を含む2θの各報告値には±0.4°の誤差が生じるおそれがある。この誤差は、当然ながら2θの値から算出するd間隔の報告値にも現れる。この不正確さは当該技術を通じて一般的なものであるが、本発明の結晶質材料相互の区別、ならびに本発明の結晶質材料と従来技術の組成物との区別を妨げる程のものではない。報告されたX線パターンのいくつかでは、d間隔の相対強度は、記号vs、s、m、およびwで示され、これらはそれぞれ、非常に強い(vs)、強い(s)、中位(m)、および弱い(w)を表す。100×I/I
oに関しては、上記の記号は次のように定義される。
【0036】
w=0〜15、m=15〜60、s=60〜80、およびvs=80〜100
場合によっては、合成物の純度はそのX線粉末回折パターンを参照して算出してもよい。したがって、例えば、純粋であるとされた試料のX線パターンが結晶性不純物に起因する線を含まないからといって、非晶質物質が存在しないことを意味するわけではない。
【0037】
本発明をより十分に説明するために以下の実施例を記載する。当然ではあるが、以下の実施例は実例として示すものであり、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の広い範囲を不当に限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0038】
実施例1および2
以下の反応組成物を得るために、2種のアルミノケイ酸塩溶液を調製した。
2.5水酸化コリン:2SiO
2:1Al(OH)
3:40H
2O(溶液1)
8水酸化コリン:20SiO
2:1Al(OH)
3:350H
2O(溶液2)
これらの溶液は、Al(OH)
3(80重量%、Pfaltz and Bauer社製)を水酸化コリン(50重量%、Sigma-Aldrich社製)に高速ミキサーで溶解しながら混合して調製した。次いで、これらの溶液に適量の水を加え、続いてルドックス(Ludox)AS−40(40重量%のSiO
2)を添加した。この反応混合物を高速撹拌機で均質化してからテフロン(登録商標)ボトルに充填し、このボトルを密封した。透明溶液が得られるまで、反応混合物を95℃で蒸解した。結果として生じた溶液を分析したところ、次の配合組成が得られた。
【0039】
Ch
2.502Si
2.085AlO
6.92*40.03H
2O(溶液1)
Ch
8.15Si
20.26AlO
46.10*346.79H
2O(溶液2)
この2つの溶液を、実施例1および2のSi供給源とAl供給源に対する組み合わせ実験に用いた。両溶液を適量混合することにより、中間的なSi/Al比(5、8および12)が得られた。両実施例の反応混合物に、水酸化コリン(50重量%)、KCl
*13.78H
2O、およびSr(NO
3)
2*40H
2Oを添加してさらに調整した。反応混合物を形成するために、これらの溶液を自動ピペットで48ウェルのテフロン(登録商標)ブロックに分注し、激しく撹拌しながら試薬を添加した。ピペットで試薬を加えてすぐにテフロン(登録商標)ブロックを密封し、ペイントシェイカーで30分間激しく撹拌した。この均質化工程の後、テフロン(登録商標)ブロックを金属ケースに密封し、100℃または150℃いずれかのオーブン内に置いた。用いた各試薬の添加順序およびその量を表1に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
実施例1および2で得られた配合組成は:
実施例1:4ChOH:5SiO
2:Al(OH)
3:0.5KCl:0.25Sr(NO
3)
2:111H
2O
実施例2:5.24ChOH:8SiO
2:1Al(OH)
3:0.5KCl:0.25Sr(NO
3)
2:164H
2O
この2つの反応混合物を100℃で11日間蒸解した。生成物を遠心分離で洗浄し凍結乾燥させ、粉末X線回折で分析した。各生成物の回折線を表2に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
実施例3
Al(OsecBu)
3(97重量%)11.94gを水酸化コリン(46重量%)130.12gに溶解したものを高速撹拌機で攪拌してアルミノケイ酸塩溶液を調製し、次に脱イオン水150.0gをこの溶液に加えた。さらにオルトケイ酸塩テトラエチル(TEOS、98重量%)100gの半量を数分間かけて添加し、混合物を攪拌した。30分間の撹拌後、脱イオン水100.72gを加えた。数分後、TEOS100gの残りを5分間かけて添加した。30分間の撹拌後、脱イオン水の残り105.0gを加えた。反応混合物を3時間均質化してエタノールを蒸発させた。翌日、溶液をエバポレータにかけ、エタノールの残りを除去した。溶液の最終重量は498.4gであった。この溶液(溶液3)は、Si/Al比が20であり、Al含有量は0.25重量%であった。
【0044】
溶液3を用いてUZM−45を作製した。溶液3(150.0g)をビーカーに入れ、高速撹拌機で撹拌した。水酸化コリン(46重量%、18.64g)を反応混合物に添加した。次いで、2.11gのKClと2.91gのSr(OAc)
2をともに脱イオン水15.0gに溶解して溶液を調製した。この溶液を40分かけて徐々に反応混合物に加えると、その間に反応混合物は溶液から白色ゾルに変化した。反応混合物をさらに3時間均質化した。反応混合物を、7台のテフロン(登録商標)加工オートクレーブに充填し、自生圧力下で、125℃、150℃、および175℃で蒸解した。生成物を洗浄し、遠心分離で単離し、乾燥させた。粉末X線回折の結果から、125℃および150℃の試料は、他の相を常に含むにせよUZM−45を含有することが示された。最も多くのUZM−45を含有する試料は、150℃で8日間蒸解した反応に由来するものであった。この試料は、RUT型ゼオライト不純物と少量のSrCO
3を含有していた。この生成物のX線回折線を、不純物ピークの値を記録した下記表3に示す。生成物を分析した結果、生成物が次の元素組成比:Si/Al=16.4、K/Al=0.25、Sr/Al=0.57およびN/Al=1.95を含むことが示された。C/N比4.7は、コリン(C/N=5)の分解によるテトラメチルアンモニウム(C/N=4)生成の可能性を示唆し、RUT型ゼオライト不純物の生成と一致する。従って、試料中のUZM−45のRUT型ゼオライトに対する比が2:1であることが示唆される。この試料を525℃で5時間、空気中で焼成した。焼成した試料の表面積は133m
2/gと減少したが、微孔のないRUT型ゼオライトとSrCO
3に由来する不純物によるものである。
【0045】
【表5】