特許第5666725号(P5666725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5666725
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】関心領域検証技術
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   G01T1/161 D
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-7478(P2014-7478)
(22)【出願日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年8月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】村田 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】玉村 直之
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−220406(JP,A)
【文献】 特開2008−237747(JP,A)
【文献】 特開2013−180009(JP,A)
【文献】 特開2014−000351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161
A61B 5/055
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の処理手段がプログラム命令を実行することにより前記装置が遂行する方法であって、
(a)脳の三次元核医学画像データを読み込むことと;
(b)前記三次元核医学画像データに対して設定された関心領域及び参照領域のデータを読み込むことと;
(c)前記三次元核医学画像データから、前記脳の特定の断面に対応する2次元画像データを取り出すことと;
(d)前記2次元画像データ中の前記関心領域に対応する部分及び前記参照領域に対応する部分の各々について、画素値に関する指標を計算することと;
(e)前記(c)および(d)の処理を、それぞれ位置は異なるが互いに平行な複数の断面に対して行うことと;
(f)前記断面の位置と前記指標との関係を可視化することと;
を含み、
前記関心領域は、脳実質中で関心構造を囲むように設定される領域であり、前記参照領域は、脳実質中で前記関心構造を含まないように設定される領域であり、
前記可視化は、少なくとも前記関心領域の一端部の付近の前記断面の位置から他端部の付近の前記断面の位置までの範囲について行われる、方法。
【請求項2】
前記関心構造は線条体であり、前記関心領域は左右の線条体に各々対応して2つ設定される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記断面は水平横断面に平行である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記指標は画素値の平均に関する、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記可視化は、前記断面の位置に関係する値を横軸に取り、前記画素値に関する値を縦軸にとって、前記関心領域に対応する部分から計算した指標と、前記参照領域に対応する部分から計算した指標とをグラフに描くことにより行われる、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
システムの処理手段に実行されると前記システムに請求項1からのいずれかに記載の方法を遂行させるプログラム命令群を備える、コンピュータプログラム。
【請求項7】
処理手段と記憶手段とを有するシステムにおいて、前記記憶手段が、前記処理手段により実行されると前記システムに請求項1からのいずれかに記載の方法を遂行させるプログラム命令群を格納する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳の三次元核医学画像データについて、データの解析を行うために設定する関心領域の妥当性を検証する技術に関する。
【発明の背景】
【0002】
パーキンソン症候群およびレビー小体型認知症は、脳内の線条体におけるドパミンの減少を伴うことが知られている。そこで、核医学の手法を用いて黒質線条体ドパミン神経の終末部に存在するドパミントランスポーターの分布を画像化し、ドパミン神経の変性・脱落を評価することが、これらの脳疾患の診断上有用である。この画像化に適した放射性トレーサーとしては123Iで標識されたイオフルパン(123I-FP-CIT)が知られており、出願人も「ダットスキャン静注」との商品名で販売を行っている。(なお「ダットスキャン」は登録商標である。)
【0003】
非特許文献1には、123I-FP-CITを放射性トレーサーとして用いて作成した脳の三次元SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography;単一光子放射断層撮影法)画像を用いて、上記の疾患の有無を判定する手法が記載されている。この手法では、SPECT画像データ中で線条体を含む領域を水平横断面に垂直な方向に加算して2次元加算画像を作成すると共に、その加算画像を用いて左右の線条体の各々にROI(Region of Interest)を設定する。本願の図7は、非特許文献1のfig.3をコピーしたものである。この図に描かれるように、ROIの形状は、水平横断面上で、線条体を囲むように5角形状を呈しており、左右の線条体それぞれに対して設定される。実際のデータ解析で用いられる関心領域は、断面がこの5角形となる5角柱状のVOI(Volume of Interest)となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Livia Tossici-Bolt1 et al., "Quantification of [123I]FP-CIT SPECT brain images: an accurate technique for measurement of the specific binding ratio", European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging Vol. 33, No. 12, December 2006, pp. 1491-1499
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VOIの高さ、すなわち水平横断面に垂直な方向の広がりは、線条体の全てを含むように設定される。しかし、非特許文献1では関心領域の設定を2次元画像上で行うため、水平横断面に垂直な方向の広がりが正しく設定されているかを判断する術がない。本発明は、このような課題に鑑みて生まれた発明であって、一般的に、脳の三次元核医学画像データについて、データの解析を行うために設定する関心領域の妥当性を検証することを可能とすべく生まれた発明である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な実施形態は、
(a)脳の三次元核医学画像データを読み込むことと;
(b)前記三次元核医学画像データに対して設定された関心領域及び参照領域のデータを読み込むことと;
(c)前記三次元核医学画像データから、前記脳の特定の断面に対応する2次元画像データを取り出すことと;
(d)前記2次元画像データ中の前記関心領域に対応する部分及び前記参照領域に対応する部分の各々について、画素値に関する指標を計算することと;
(e)前記(c)および(d)の処理を、それぞれ位置は異なるが互いに平行な複数の断面に対して行うことと;
(f)前記断面の位置と前記指標との関係を可視化することと;
を含む。
【0007】
各断面位置において前記(d)で計算される指標を、当該断面位置との関係が分かるように可視化することにより、関心領域が適切に設定されているかどうかを検証することが可能になる。
【0008】
好適な実施形態の一例において、前記関心領域は脳実質中で関心構造を囲むように設定される領域であり、前記参照領域は脳実質中で前記関心構造を含まないように設定される領域であることができる。
【0009】
好適な実施形態の一例において、前記関心構造は線条体であり、前記関心領域は左右の線条体に各々対応して2つ設定されることができる。
【0010】
好適な実施形態の一例において、前記断面は水平横断面に平行であることができる。
【0011】
好適な実施形態の一例において、前記指標は画素値の平均に関することができる。
【0012】
好適な実施形態の一例において、前記可視化は、前記断面の位置に関係する値を横軸に取り、前記画素値に関する値を縦軸にとって、前記関心領域に対応する部分から計算した指標と、前記参照領域に対応する部分から計算した指標とをグラフに描くことにより行われることができる。
【0013】
本発明は、上記の手法の少なくともいずれかを含む方法や、上記の手法の少なくともいずれかをシステム又は装置に遂行させるためのプログラム、上記の手法の少なくともいずれかを遂行する手段を備えるシステム又は装置として実施されることができる。
【0014】
本発明の好適な具現化形態のいくつかを、特許請求の範囲に含まれる請求項に特定している。しかしこれらの請求項に特定される構成が、本明細書及び図面に開示される新規な技術思想の全てを含むとは限らない。出願人は、現在の請求項に記載されているか否かに関わらず、本明細書及び図面に開示される新規な技術思想の全てについて、特許を受ける権利を有することを主張するものであることを記しておく。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書で開示される様々な処理を実行しうる機械の例である、装置又はシステム100の主な構成を説明するための図である。
図2】本明細書で開示される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図3A】関心領域及び参照領域の例を説明するための図である。
図3B】関心領域及び参照領域の例を説明するための図である。
図4A】本明細書で開示される特徴的な表示の例を説明するための図である。
図4B図4Aの表示に対応する関心領域の様子を説明するための図である。
図5A】本明細書で開示される特徴的な表示の例を説明するための図である。
図5B図4Aの表示に対応する関心領域の様子を説明するための図である。
図6A】本明細書で開示される特徴的な表示の例を説明するための図である。
図6B図4Aの表示に対応する関心領域の様子を説明するための図である。
図7】非特許文献のfig.3をコピーしたものである。
【好適な実施形態の説明】
【0016】
次に、本発明をより深く理解してもらうために、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態の例を説明する。
【0017】
図1は、本明細書で開示される様々な処理を実行しうる機械の例である、装置又はシステム100の主な構成を説明するための図である。図1に描かれるように、システム100は、ハードウェア的には一般的なコンピュータと同様であり、CPU102,主記憶装置104,補助記憶装置106,ディスプレイ・インターフェース107,周辺機器インタフェース108,ネットワーク・インターフェース109などを備えることができる。一般的なコンピュータと同様に、主記憶装置104としては高速なRAM(ランダムアクセスメモリ)を使用することができ、補助記憶装置106としては、安価で大容量のハードディスクやSSDなどを用いることができる。システム100には、情報表示のためのディスプレイを接続することができ、これはディスプレイ・インターフェース107を介して接続される。またシステム100には、キーボードやマウス、タッチパネルのようなユーザインタフェースを接続することができ、これは周辺機器インタフェース108を介して接続される。ネットワーク・インターフェース109は、ネットワークを介して他のコンピュータやインターネットに接続するために用いられることができる。
【0018】
補助記憶装置106には、オペレーティングシステム(OS)110や、本明細書で開示される特徴的な処理を提供するための関心領域検証プログラム120などが格納されていることができる。システム100の最も基本的な機能は、OS110がCPU102に実行されることにより提供される。また、本明細書で開示される新規な処理は、関心領域検証プログラム120がCPU102に実行されることにより提供される。関心領域検証プログラム120を構成するプログラム命令群は、C++やJAVAなど、既存の如何なるプログラム言語でプログラムされたものでもよく、好適なコンパイラにより実行可能形式にコンパイルされて補助記憶装置106に格納されることができる。
【0019】
補助記憶装置106には、関心領域検証プログラム120による検証の対象となる関心領域の情報を含むデータ132や、当該関心領域が設定された画像データ130、当該関心領域に対応して設定される参照領域のデータ134なども格納されていることができる。画像データ130は脳の三次元核医学画像データであり、各画素が、放射能カウント値に関係する値を画素値として有するデータである。本例における画像データ130は、黒質線条体ドパミン神経に存在するドパミントランスポーターの分布を画像化するために使用可能な放射性トレーサーを使って得られた画像データである。この目的に適当なトレーサーとしては、前述のように例えば123I-FP-CITが知られており、画像データ130は、123I-FP-CITを使ってSPECT装置で信号収集を行うことにより得られた脳の三次元SPECT画像であることができる。ただし、本明細書に開示される技術思想は、そのような画像データに対してしか適用できないわけではない。
【0020】
この画像データ130に対する関心領域の設定は、例えば非特許文献1に記載のように、画像データ130を可視化しながらマウスやキーボードを使って手動で行うことができる。また、特願2014−6367に開示された、本願出願人による自動化された関心領域設定手法により設定してもよい。設定された関心領域のデータは、データ132として補助記憶装置106や別の記憶装置に格納され、プログラム120により読み込まれて使用されてもよい。関心領域の具体的な形状は、非特許文献1のfig.3や本願の図7に関連して説明されている通りであるが、図2を用いて後で改めて具体例を紹介する。上記参照領域は、上記関心領域と対比するために設定される領域であるが、その具体例についても図2を用いて後に説明する。関心領域や参照領域の設定に関与するプログラム命令群は、プログラム120には含まれないものであることができる。しかしながら、実施形態によっては、関心領域や参照領域の設定に関与するプログラム命令群が、プログラム120に含まれていてもよい。
【0021】
システム100は、図1に描かれた要素の他にも、電源や冷却装置など通常のコンピュータシステムが備える装置と同様の構成を備えることができる。コンピュータシステムの実装形態には、記憶装置の分散・冗長化や仮想化、複数CPUの利用、CPU仮想化、DSPなど特定処理に適したプロセッサの使用、特定の処理をハードウェア化してCPUに組み合わせることなど、様々な技術を利用した様々な形態のものが知られている。本明細書に開示される事項は、どのような形態のコンピュータシステム上に搭載されてもよく、コンピュータシステムの形態によって本発明の範囲が限定されることはない。本明細書に開示される事項は、一般的に、(1)処理手段に実行されることにより、当該処理手段を備える装置またはシステムに、本明細書で説明される各種の処理を遂行させるように構成される命令を備えるプログラム、(2)当該処理手段が当該プログラムを実行することにより実現される装置またはシステムの動作方法、(3)当該プログラム及び当該プログラムを実行するように構成される処理手段を備える装置またはシステムなどとして具現化されることができる。
【0022】
また、システム100の製造販売時や起動時には、データ130〜134は、補助記憶装置106の中に記憶されていない場合が多いことに注意されたい。これらのデータは、例えばネットワーク・インターフェース109を介して外部のSPECT装置からシステム100に転送されてきたデータであってもよい。実施例によっては、画像データ130は、図示されない別の処理手段によって整形や補間、位置合わせ、ノイズ低減処理などが施されたものであってもよい。実施例によっては、これら整形・位置合わせ等の処理は、プログラム120や図示されない別のプログラムがCPU102に実行されることを通じて行われるものであってもよい。実施例によっては、データ132および134は、プログラム120や他のプログラムがCPU102に実行されることを通じて形成され、記憶されたものであってもよい。また、プログラム120やOS110の実装形態によっては、データ132〜136は補助記憶装置106に格納されず、主記憶装置104にしか格納されない場合もある。本発明の範囲は、データ130〜136の存在の有無によって限定されるものではないことを、念のために記しておく。
【0023】
次に図2のフローチャートを用いて、本発明による関心領域検証処理の好適な実施形態の一例である処理200を説明する。処理200は、関心領域検証プログラム120に含まれるプログラム命令群がCPU102に実行されることにより、システム100が遂行する処理であってもよい。
【0024】
ステップ202は処理の開始を示す。ステップ204では、関心領域検証プログラム120による検証の対象となる関心領域が設定された、画像データ130がロードされ、その少なくとも一部が主記憶装置104へコピーされる。本実施例では、画像データ130は、123I-FP-CITを使ってSPECT装置で信号収集を行うことにより得られた脳の三次元SPECT画像である。ステップ206では、関心領域検証プログラム120による検証の対象となる関心領域のデータ132と、当該関心領域に対応して設定される参照領域のデータ134とがロードされ、その少なくとも一部が主記憶装置104へコピーされる。
【0025】
図3Aおよび図3Bを用いて、上記の画像データや関心領域、参照領域の具体例を示す。図3Aは、画像データ130のうち、設定された関心領域が存在する水平横断面の画像データを重ね合わせて表示したものである。符号302で示した灰色の領域は、脳実質が存在する領域を示し、符号304,306で示された、明るく表示されている領域は、123I-FP-CITの集積度が高い部分、すなわち線条体が存在する領域を表している。符号304で表した部分が右半球の線条体を表し、符号306で表した部分が左半球の線条体を表す。関心領域は、図7と同様に、すなわち非特許文献1に記載の手法と同様に、この重ね合わせ画像上で線条体が存在する領域を囲むように、左右それぞれに対して設定される。符号308で示した線の内側が右半球における関心領域を示し、符号310で示した線の内側が左半球における関心領域を示す。図示されるように、重ね合わせ画像上の関心領域の断面は5角形状となる。
【0026】
本実施例における参照領域は次のように設定されている。まず、脳実質の輪郭が自動で抽出される。符号312で示す白線が自動抽出した脳実質の輪郭を表している。輪郭の自動抽出は、例えば画素値に基づいて容易に行うことができ、例えば、画像全体の画素値の最大値や平均値等の基準値に基づいて閾値を設定し、画像中心から放射状に画素値の走査を行って、画素値が閾値にほぼ等しくなる画素のうち、画像中心から最も遠い画素を、脳実質の輪郭とするなどとすることができる。符号314で示す白線は、脳実質の輪郭を所定の距離だけ脳の内側に移動した線である。水平横断面に平行な面において、白線314より内側に位置する領域であって、関心領域308,310には含まれない領域が、本実施例における参照領域である。
【0027】
図3Bは、3次元脳SPECT画像データ130を水平横断面で輪切りにし、そのいくつかのスライスを表示したものである。各スライスの左上に、23から43までの数字が表示されているが、これは、順番に並んだ水平横断面スライスの番号を表しており、番号が小さくなるほど頭頂部側に位置する水平横断面であり、番号が大きくなるほど小脳側に位置する水平横断面であることを表している。スライス25から45には、濃い灰色で表された5角形の線が2つと、脳実質を囲むように白色で表された線が1つ表示されている。これらの線は、それぞれ図3Aに示した線308,310,314に対応する線である。念のため、スライス33のみに符号308,310,314を入れてある。スライス25−45に対して線308,310,314が表示されていることは、上記の関心領域や参照領域が、スライス25から45までの範囲に設定されていることを示している。すなわち、関心領域や参照領域の、水平横断面に垂直な方向の拡がりが、スライス25から45に対応する範囲であることが示されている。
【0028】
かかる関心領域や参照領域を表す情報を含むデータ132,134は、前述のように、他のプログラムによって作成され、補助記憶装置106に格納されて、関心領域検証プログラム130によって読み込まれて使用されることができる。しかし、実施形態によっては、関心領域検証プログラム130自体にデータ132,134を作成する機能が含まれていてもよい。
【0029】
画像データ130から、図3Aのような重ね合わせ画像を作成して表示することを容易にするために、画像データ130は、冠状断面を表示させたときに正中線が視野中心を通る線に一致するように、予め傾きが補正されていることが好ましい。また、水平横断面に対する位置関係も予め揃えられていることが好ましい。例えばAC−PCラインやOMラインが水平横断面に平行になるように傾き補正を行うなどのように、傾きの標準化が行われていることが好ましい。
【0030】
なお水平横断面や冠状面との表現は、よく知られているように、脳の解剖学的表現で一般的に用いられる表現である。水平横断面は、おおよそ、立位状態で地面に平行な方向の断面であると考えればよい。すなわち、だいたい脊髄に垂直な方向の断面と考えればよい。水平横断面との表現の他に、水平面、横断面、Axial面のようにも称される。冠状断面は、立位状態でおおよそ地面に垂直な方向の断面であって、前頭部側と後頭部側を分けるような断面であると考えればよい。なお、立位状態でおおよそ地面に垂直な方向の断面であって、左右に分けるような断面を、矢状断面という。
【0031】
図2に戻り、処理200の説明を続ける。符号208から214のループでは、関心領域が設定されている水平横断面スライスの画像データが一枚一枚選択され、それぞれ所定の情報が計算される。すなわち、例えば図3Bの例では、ループが208に戻るたびに、スライス番号25〜45のスライスのいずれかが順番に選択される。ステップ210では、現在のループで選択されたスライスの画像データについて、右半球の線条体に対応する関心領域308に含まれる画素群の平均値と、左半球の線条体に対応する関心領域310に含まれる画素群の平均値とが、それぞれ計算される。ステップ212では、参照領域314に含まれる画素群の平均値が計算される。従って、符号208から214のループを抜けると、スライス番号25〜45の各々について、右半球の線条体に対応する関心領域308に含まれる画素群の平均値と、左半球の線条体に対応する関心領域310に含まれる画素群の平均値と、参照領域314に含まれる画素群の平均値とが計算されている。これらの計算で得られたデータは、データ136として補助記憶装置106や主記憶装置104に格納されてもよい(ステップ216)。
【0032】
ステップ218では、符号208から214のループで計算された情報の表示が行われる。この情報の表示は、水平横断面スライスの位置と、当該位置においてステップ210及び212で計算された値との関係が理解されうるように行われる。この関係が理解できるのであれば、表示の態様は様々なものであってよく、その表示の態様によって本発明の範囲が限定されることはない。
【0033】
図4図6を用いて、ステップ218で行われる表示の一例を説明する。図4Aは、図3A図3Bに例示したものと同じデータを用いて、水平横断面スライスの番号を横軸に取り、各スライスにおける、左半球線条体関心領域310の平均画素値と参照領域314の平均画素値をグラフに描いたものである。前述のように、スライス番号が若いほど、頭頂側に位置する水平横断面を表している。従って図4Aは、断面位置と、関心領域及び参照領域の平均画素値の関係を表している。なお、縦軸の値が「平均カウント値」と表示されている理由は、SPECT画像データの画素値は、通常、カウント値を画素値として有しているからである。
【0034】
図4Aのグラフにおいて、曲線402は各断面位置における関心領域の平均画素値を表し、曲線404は各断面位置における参照領域の平均画素値を表している。曲線402,404がスライス番号25〜45の範囲にしか描かれていないのは、上述のように、関心領域が設定されている範囲が、スライス番号25〜45の範囲であるからである。図4Aのグラフを見ると、関心領域の端部、すなわちスライス番号25や44の付近において、曲線402と曲線404の縦軸の値があまり違わなくなっている。すなわち、関心領域の両端において、関心領域の水平横断面における平均カウント値と、参照領域の水平横断面における平均カウント値とが、だいたい同じ値になっている。このようなグラフの形状は、少なくとも水平横断面に垂直な方向においては、関心領域が適切に設定されていることを示していることが判明している。
【0035】
関心領域が適切に設定されていないと、図4Aのようなグラフにはならない。図5Aは、関心領域が適切に設定されていない場合の一例である。図5Aのグラフは、図4Aのグラフと同様に、曲線502が各断面位置における左線条体関心領域310の平均画素値を表し、曲線504が各断面位置における参照領域314の平均画素値を表している。曲線502及び504が存在する範囲は、スライス番号が19から39の範囲であるが、これは、水平横断面に垂直な方向において、関心領域がスライス番号19〜39の範囲に設定されていることを示している。図5Aのグラフは、図4Aのグラフと異なり、スライス番号が大きい側の端部において、曲線502と曲線504の縦軸の値が大きく異なっている。これは、関心領域が頭頂部側に不適切に偏っていることを示している。
【0036】
図4Aのようなグラフが描かれる場合と、図5Aのようなグラフが描かれる場合とを、図4Bおよび図5Bを用いて説明する。図4Bは、図4Aのグラフが得られた画像データおよび関心領域データについて、矢状断面像と冠状断面像とを用いて、水平横断面に垂直な方向の関心領域の拡がりを示したものである。図示されるように、左側に描かれている断面像が矢状断面像であり、右側に描かれている断面像が冠状断面像である。当業者には直ちに理解されうるように、S,I,A,P,R,Lとの記号は方向を示しており、それぞれ頭頂側、脳低側、頭部の前面側、頭部の背面側、右側、左側を示している。矢状断面像において、25,45との数値および対応する直線は、上述の水平横断面スライスの番号25および45を示している。また、番号35の水平横断面スライスに対応する点線と、番号53で表される冠状断面スライスに対応する点線とが描かれており、その交点付近では画素が明るく表示されている。この画素が明るい領域が、左半球の線条体を表している。表示されている矢状断面像の左肩には72との数値が描かれているが、これは、画像データ130を矢状断面像スライスの集合と見た場合の、72番目のスライスであることを示している。
【0037】
同様に、図4Bの右側に描かれている冠状断面像においても、上述のスライス番号25および45に対応する水平横断面の位置が直線で表されている。また、番号35の水平横断面スライスに対応する点線と、番号72で表される矢状断面スライス(すなわち図4Bの左側に描かれているスライス)に対応する点線とが描かれており、その交点付近では画素が明るく表示されている。どうように、この画素が明るい領域が、左半球の線条体を表している。表示されている冠状断面像の左肩には53との数値が描かれているが、これは、画像データ130を冠状断面像スライスの集合と見た場合の、53番目のスライスであることを示している。
【0038】
図4Bに描かれているように、図4Aのようなグラフが描かれる場合、すなわち、関心領域の水平横断面における平均カウント値と、参照領域の水平横断面における平均カウント値とが、関心領域の両端においてだいたい同じ値になるようなグラフが描かれる場合は、関心領域が設定されている範囲に線条体がきれいに入っている。
【0039】
一方、図5Bは、図5Aのグラフが得られた画像データおよび関心領域データを用いて、図4Bと同様の表示を行ったものである。上述のように、関心領域は、水平横断面に垂直な方向において、スライス番号19から39の範囲に設定されており、図5Bには対応する直線が示されている。この図をみると、線条体が関心領域の下側に偏って位置しており、関心領域が頭頂側に不適切に偏って設定されていることがわかる。
【0040】
関心領域が適切に設定されていない別の例を、図6A及び図6Bを用いて紹介する。図6Aに示すグラフも、図4A図5Aのグラフと同様に、曲線602が各断面位置における左線条体関心領域310の平均画素値を表し、曲線604が各断面位置における参照領域314の平均画素値を表している。曲線602及び604が存在する範囲はスライス番号30から50の範囲であるが、これは、水平横断面に垂直な方向において、関心領域がスライス番号30から50の範囲に設定されていることを示している。図6Aのグラフは、スライス番号が小さい側の端部において、曲線602と曲線604の縦軸の値が大きく異なっている。これは、関心領域が小脳側に不適切に偏っていることを示している。
【0041】
図6Bは、図5Aのグラフが得られた画像データおよび関心領域データを用いて、図4Bと同様の表示を行ったものである。上述のように、関心領域は、水平横断面に垂直な方向において、スライス番号30から50の範囲に設定されており、図6Bには対応する直線が示されている。この図をみると、線条体が関心領域の上側に偏って位置しており、関心領域が小脳側に不適切に偏って設定されていることがわかる。
【0042】
このように、図4Aや5A,6Aに例示したような表示を行うと、関心領域が適切に設定されているかどうかを検証することが可能になる。
また、図4Aや5A,6Aに例示したような表示を行うと、参照領域が適切に設定されているか否かを評価できる場合がある。図4Aにおいて、各断面位置における参照領域の平均画素値を表す曲線404は、図示されるように、曲線とはいえ、かなり直線に近い線となっている。これに対して、参照領域中に線条体部分を含んでいたり、脳実質外のブランク部分を含んでいたりすると、直線性が悪化する。このため、参照領域のグラフの直線性を評価することにより、参照領域の設定の適切性を評価できる場合がある。
【0043】
なお、図4A等の表示は、ステップ218で行われることが可能な可視化手法の単なる一例に過ぎない。たとえば図4A等では、左半球の線条体に対して設定された関心領域310に関するグラフしか表示していないが、右半球の線条体に対して設定された関心領域308に関するグラフを表示してもよいし、左右の線条体にそれぞれ対応する二本の曲線を含むグラフを表示してもよい。左右線条体で集積ピークが同様の位置に存在している症例に対しては、線条体ROIのピーク位置の重なり具合から、断層像の傾き具合が推定できる場合がある。
【0044】
また、図4A等の表示では、関心領域に対応する曲線と参照領域に対応する曲線との2本の曲線を表示していたが、実施形態によっては、各スライス位置において、ステップ210で計算した値とステップ212で計算した値との比を取り、それに関連する値をグラフ表示してもよい。たとえば、各スライス位置において、(当該スライス位置における左線条体関心領域の平均画素値)/(当該スライス位置における参照領域の平均画素値)との値を計算し、その値を、スライス位置との関係が分かるようにグラフ化してもよい。または、{(当該スライス位置における左線条体関心領域の平均画素値)−(当該スライス位置における参照領域の平均画素値)}との値を計算し、これをスライス位置との関係が分かるようにグラフ化してもよい。グラフに表示する値は、画像全体の平均画素値や最大画素値など、適当な値を用いて規格化してもよい。実施形態によっては、ステップ210で計算した値とステップ212で計算した値とを、スライス番号と共に、単に数値で表示してもよい。要は、各断面における関心領域及び参照領域の情報を、各断面の位置との対応が分かるように可視化すればよい。
【0045】
なお、これまで紹介した例においては、ステップ210やステップ212で計算した値は、関心領域又は参照領域の平均画素値であったが、実施形態によっては、平均画素値の代わりに当該領域の最大値や中央値を用いてもよい。
【0046】
そのほか、これまで紹介した例においては、ステップ208〜214のループで切り出す断面は水平横断面であったが、実施形態によっては、冠状断面や矢状断面など、他の断面であってもよい。一般的に、それぞれ位置は異なるが互いに平行な任意の断面を複数用いて、ステップ208〜214のループを実施することが可能である。
【0047】
以上、本発明の実施形態を好適な例を用いて説明してきたが、これらの例は本発明の範囲を限定するために紹介されたわけではなく、特許法の要件を満たし、本発明の理解に資するために紹介されたものである。本発明は様々な形態で具現化されることができ、本発明の実施形態には、ここに例示した以外にも多くのバリエーションが存在する。説明された各種の実施例に含まれている個々の特徴は、その特徴が含まれることが直接記載されている実施例と共にしか使用できないものではなく、ここで説明された他の実施例や説明されていない各種の具現化例においても、組み合わせて使用可能である。特にフローチャートで紹介された処理の順番は、必ず紹介された順番で実行しなければならないわけではなく、実施するものの好みに応じて、順序を入れ替えたり並列的に同時実行したり、さらに複数のブロックを一体不可分に実装したり、適当なループとして実行したりするように実装してもよい。これらのバリエーションは全て本発明の範囲に含まれるものである。請求項に特定される処理の記載順も、処理の必須の順番を特定しているわけではなく、例えば処理の順番が異なる実施形態や、ループを含んで処理が実行されるような実施形態なども、請求項に係る発明の範囲に含まれるものである。現在の特許請求の範囲で特許請求がなされているか否かに関わらず、出願人は、本発明の思想を逸脱しない全ての形態について、特許を受ける権利を有することを主張するものであることを記しておく。
【符号の説明】
【0048】
100 システム
102 CPU
104 主記憶装置
106 補助記憶装置
107 ディスプレイ・インターフェース
108 周辺機器インタフェース
109 ネットワーク・インターフェース
120 関心領域検証プログラム
130 画像データ
【要約】
【課題】脳の三次元核医学画像データについて、データの解析を行うために設定する関心領域の妥当性を検証する
【解決手段】本発明の好適な実施形態は、脳の三次元核医学画像データを読み込むことと;前記三次元核医学画像データに対して設定された関心領域及び参照領域のデータを読み込むことと;前記三次元核医学画像データから、前記脳の特定の断面に対応する2次元画像データを取り出すことと;前記2次元画像データ中の前記関心領域に対応する部分及び前記参照領域に対応する部分の各々について、画素値に関する指標を計算することと;前記断面の位置と前記指標との関係を可視化することと;を含む。
【選択図】図2
図1
図2
図4A
図5A
図6A
図3A
図3B
図4B
図5B
図6B
図7