(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、適正な資金量を管理するために、過去の時系列パターンを検索して予測期間の必要資金量を予測し、必要資金量を圧縮するようにしている。しかし、過去の時系列パターンからの類推では、通常では発生しない不規則な資金取引量の変動があった場合には、必要資金量の予測が現実に必要とされる資金量と大きく乖離する可能性があり、適切な予測をすることができない。
【0007】
また、予め登録された時系列パターンが取引状況等の変化により変動したときには、その変動を適時に必要資金量の予測に反映させることができず、必要資金量の予測が現実の必要資金量と大幅に乖離することになる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑み、あらかじめ規定された変動要因によらない資金取引量全体の変動や当該変動要因により規定される取引パターン自体の変動に対しても予測を適時に適合させ、資金予測を的確に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、資金取引の時系列属性を取引要因に対応付けて記憶する記憶部と、資金取引量の入力を受け付ける受付部と、資金取引量と資金取引の時系列属性に基づき
口座残高の予想分布を算出する算出部とを備える情報処理装置が提供される。
【0010】
資金取引の時系列属性は、特定期間を構成する特定時間の資金取引割合であってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、算出部において、算出された
口座残高の予想分布を表示する表示部をさらに備えていてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、資金取引に符合する取引要因を選択する選択部をさらに備え、算出部は、選択部において選択された取引要因に基づき記憶部より読み出された時系列属性により
口座残高の予想分布を算出してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、記憶部において、相異なる複数の時系列属性と相異なる複数の取引要因とをそれぞれ一意に対応付けて記憶し、算出部は、選択部において取引要因が複数選択されたとき、選択された取引要因に対応する時系列属性を記憶部より読み出し、複数の該時系列情報に基づき
口座残高の予想分布を算出してもよい。
【0014】
口座残高の予想分布は一定範囲の誤差を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、資金取引量が
口座残高の予想分布より乖離したときに、該
口座残高の予想分布を修正する入力を受け付ける修正入力受付部を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、算出部が、修正入力受付部により受け付けられた修正入力に基づき、読み出された時系列属性を該修正入力に適合するように修正し、記憶部が、修正された時系列属性を取引要因に対応付けて記憶してもよい。
【0017】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、算出部が、取引開始当初の資金残高に基づいて、
口座残高の予想分布の当初見込みを算出してもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、算出部が、修正時点での資金残高に基づいて、
口座残高の予想分布の修正値を算出してもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、算出部に
口座残高の予想分布と資金取引量の推移を比較する比較部を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、算出部に、比較部が
口座残高の予想分布に対して資金取引量が乖離していると判断したとき、乖離原因を分析する分析部を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、記憶部に、資金取引の変動要因データを記憶する要因データ記憶部と、資金取引の変動パターンを記憶するパターンデータ記憶部とを含み、分析部が、要因データ記憶部とパターンデータ記憶部からデータを読み出して乖離原因を分析してもよい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、
口座残高の予想分布と資金取引量の推移を時系列にして重ねて表示する表示制御部を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、コンピュータを、資金取引の時系列属性を取引要因に対応付けて記憶する記憶部と、資金取引量の入力を受け付ける受付部と、資金取引量と資金取引の時系列属性に基づき
口座残高の予想分布を算出する算出部とを備える情報処理装置として機能させるプログラムが提供される。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、時系列属性を取引要因に対応付けられた資金取引分布を記憶部から読み出し、資金取引量を受付部から取得し、算出部が資金取引量と資金取引の時系列属性に基づき
口座残高の予想分布を算出する情報処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態によれば、時間の経過とともに変動する口座残高を効率的にコントロールし、資金効率を高めるための情報を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の内容について、同一部分または同様な機能を有する部分については同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その場合において特段の事情が無い限り繰り返しの説明は省略する。
【0028】
[システムの構成]
本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成を
図1に示す。この情報処理装置は、資金取引の時系列属性を取引要因に対応付けた資金取引量の分布が記憶されている記憶部102と、資金取引量に関するデータが入力される受付部104と、所定の期間内における資金取引量の分布を予測する算出部106を含んで構成されている。
【0029】
記憶部102に記憶される資金取引量の分布は、所定の期間内(例えば、1日の取引時間内)における取引資金の変動を確率密度分布で表したものであってもよく、以下の説明ではこのような資金取引量の分布を単に「資金取引分布」ともいうものとする。資金取引分布は、特定期間を構成する特定時間の資金取引割合を含んでいる。例えば、資金取引分布は、特定日のある時間(例えば午前9時)における資金取引割合に関する情報を含んでいる。本発明の一実施形態では、予想取引量分布を算出するために資金取引量の変動を確立密度によってパターン化したデータを用いることで、汎用性と予測可能性を高めるようにしている。
【0030】
情報処理装置は、さらに他の構成要素が含まれていてもよい。他の構成要素として、特定の資金取引に符合する取引要因を選択する選択部110、資金取引量が予想取引量分布より乖離したときに、該予想取引量分布を修正する入力を受け付ける修正入力受付部112が含まれていてもよい。また、算出部106で計算された予想取引量分布を表示する表示部108が設けられていてもよい。
【0031】
情報処理装置は、所定の期間内でなされる資金取引の推移を管理し、その管理のために有用な情報を提供するために用いられる。例えば、当日の資金取引を管理し、取引終了時に口座残高が目標額と一致又は近接するように管理し、あるいは管理者に資金を効率的にコントロールし、資金効率を高めるための情報を提供する。情報処理装置は、記憶部から読み出した時系列属性の資金取引分布を用いて予想取引量分布を算出する。予想取引量分布は、例えば資金取引予想量を時系列で表したデータである。予想取引量分布は一定範囲の誤差を含んでいてもよい。すなわち、予想取引量分布は過去の実績でもある資金取引分布から算出されるものであり、一定範囲の誤差を許容することで資金取引量の見込み値に一定の幅を持たせることができる。予想取引量分布に許容される誤差の範囲は、例えば、プラス・マイナス5%乃至10%と設定することができる。
【0032】
記憶部102には、資金取引の時系列属性を取引要因に対応付けた資金取引分布が記憶されている。資金取引分布には、例えば、過去の日次別の資金変動分布ないし資金変動パターンが含まれている。また、資金取引分布は、取引要因と対応付けられているものが含まれている。資金取引分布は、随時新しいデータが追加され、記憶部102に蓄積される。記憶部102に記憶される資金取引分布は、例えば、過去10年分の資金量の変動に関する時系列データである。少なくとも複数年の過去データを蓄積することによって、該当期間(例えば、当日1日分の取引期間)の予想取引量分布を算出するときに、その精度を高めることができる。
【0033】
また、資金取引分布は、算出部106で算出された予想取引量分布と実際の資金量の変動との間に乖離があったとき、乖離原因が特定され、その原因に基づいて修正される場合がある。実際の資金量の変動は、個々の資金取引の総計として表れる。そのため、乖離原因を調べるには実際の資金量の変動を個々の取引に分解して、どの取引で乖離が発生するのかを分析する。この分析に当たっては、取引ごとに資金変動量を調べて乖離原因を特定してもよいし、取引要因ごとにデータを抽出して乖離原因を特定するようにしてもよい。
【0034】
乖離原因が特定されたとき、資金取引分布を修正する必要があるか否かを判断するようにしてもよい。乖離原因が予定外の単発的な取引に起因している場合には資金取引分布を修正せず、当該単発的な取引を考慮しない措置をとることができる。一方、乖離原因となる取引の要因を今後の資金量の予測に反映させるため、当初の資金取引分布を修正するようにしてもよい。資金取引分布に修正のあったときは、修正後の情報が記憶部102に記憶され、更新される。修正された資金取引分布は、修正された時系列属性が取引要因と対応付けられて記憶される。資金取引分布が修正され更新されることで、資金取引推移をシミュレーションするときの精度を高めることができる。それにより、口座残高を管理するときに提供する情報の質を高めることができる。
【0035】
受付部104には資金取引量に関するデータが入力される。資金取引量に関するデータには、決済の実績値、決済予定データが含まれる。決済の実績値には、入金及び出金の実績値が含まれ、日付、時刻、勘定コードなど決済の内容を示す明細のデータが含まれている。受付部104には、決済の実績値及び決済予定データは時系列のデータを含むとき、一定時間毎又はデータの更新毎に新たなデータが入力される。
【0036】
受付部104は、資金取引量に関するデータが入力されるように、他の勘定系システム又は決済システムと電気通信回線で接続されていてもよいし、資金取引量に関するデータを記憶する特定のデータベースと接続されていてもよい。このように、決済の実績値、決済予定データを入力可能とすることで、予想取引量分布の計算値と現実の決済値とを比較することができる。
【0037】
算出部106は、記憶部102から読み出される資金取引分布に基づいて取引量の推移を予測する。算出部106が予想取引量の分布を算出するために、記憶部102から資金取引分布を読み出す。算出部106は、資金取引分布に基づいて資金取引量の分布を算出する。例えば、ある一日の取引開始時から終了時まで、日中の資金変動分布をシミュレーションする。算出部106が算出する資金取引量分布は、前日末の残高(当日決済開始時の残高)を基準にした資金取引量分布が含まれる。また、現在残高(照会時点の残高)を基準にした資金取引量分布が含まれる。さらに、現在残高(照会時点の残高)を基準に、現在把握している決済予定データを用いた口座残高の予測が含まれる。
【0038】
算出部106は、資金取引分布に基づいて算出された予想取引量分布と、受付部104で取得した決済予定データ及び/又は決済の実績値とを比較する。そして、算出された予想取引量分布が、実際の決済予定データ若しくは決済データと乖離しているか否かを比較評価する。この比較評価の処理は、常時実行されてもよいし、一定期間ごとに間欠的に実行されてもよい。比較評価の結果、データの乖離が認められた場合には、乖離原因を分析し特定する処理が実行され、予想取引量分布の再計算を行うようにする。このように、予想取引量分布を取引の経過と共に適時修正していくことで、最終的に口座残高を着地目標額に収束させることができる。
【0039】
選択部110は、資金取引の符合する取引要因を選択する。選択部110は、現実の決済の実績値又は決済予定データが、予想取引量分布から乖離しているとき、現実の決済の実績値又は決済予定データがどの取引要因によって変動しているのかを把握し特定する。取引要因としては、委託振替、受託振替、一般振替、海外送金、大口外為及び大口内為などがある。これらの取引要因を選択し、決済の実績値又は決済予定データの中から特定の取引要因を抽出することで、変動要因を特定することができる。
【0040】
資金取引の内容は、取引要因と対応付けられており、特定の取引要因を選択すると、その要因に対応付けられた資金取引の一覧を閲覧できるように表形式で情報が提供されるようになっていてもよい。選択部110は、取引要因別の資金取引分布を提供し、変動要因を解析するのに有用なデータを提供する機能を有していてもよい。
【0041】
記憶部102に記憶されている資金取引分布が複数の時系列属性と複数の取引要因とがそれぞれ一意に対応付けられている場合、選択部110は、取引要因を複数個選択することもできる。この場合、算出部106は選択された取引要因に対応する資金取引分布の時系列属性を記憶部より読み出し予想取引量分布を算出するようにしてもよい。
【0042】
修正入力受付部112は、資金取引量が予想取引量分布より乖離しているとき、予想取引量分布を修正する入力を受け付ける。予想取引量分布を修正するデータは、過去の資金取引分布に基づいて作成された特定期間の取引分布を示すパターンデータが含まれる。例えば、月次の特定日(給与支給日、月末決算日など)、年末や年度末などの決算集中日における日中の資金取引量の分布を示すデータがこれに相当する。このような、過去の資金取引量の変動パターンを、現在の資金取引量分布の推移に当てはめることで、資金取引量の分布の予測を、過去の実績に基づいて予測し、修正することができる。
【0043】
表示部108は、算出部106において算出された予想取引量分布を表示する。また、表示部108は、当該予想取引量分布と決済の実績値及び/又は決済予定データを重ねて表示する。表示部108は、時間軸を横軸にとりこれらのデータを重ねて表示する。表示部108に、これらのデータを視覚化して表示することで、予測値と実績値の一致又は不一致を確認することができ、口座残高を着地目標額に収束する否かを把握することができる。
【0044】
このように、
図1に示す情報処理装置によれば、資金取引の時系列属性を取引要因に対応付けた資金取引分布に基づいて予想取引量分布を求め、これを決済の実績値及び/又は決済予定データと比較評価して管理することで、余剰資金量を把握し、これを活用しつつ、口座残高を着地目標額に近づけることが可能となる。すなわち、時間の経過とともに変動する口座残高を効率的にコントロールし、資金効率を高めるための情報を提供することが可能となる。
【0045】
[システムの機能的構成]
図2は、本実施形態に係る情報処理装置を機能的に見た場合の構成を示す。
図2に示す情報処理装置は、記憶部102、算出部106、受付部104を含んで構成されている。また、算出部106で計算された予想取引量分布を修正する、選択部110、修正入力受付部112が含まれている。
【0046】
記憶部102は、資金取引分布記憶部114、要因データ記憶部116及びパターンデータ記憶部118を含んでいる。資金取引分布記憶部114は、資金取引量を時系列のデータとして記憶する機能を有している。また、資金取引分布記憶部114に記憶される資金取引量は、取引要因と対応付けて記憶されている。
【0047】
要因データ記憶部116は、算出部106で計算された予想取引量分布と決済の実績値又は決済予定データとが乖離しているとき、その要因を特定する情報が記憶されている。変動要因となり得る情報としては、月次の1日、20日、25日、月末日など決済や送金が集中する可能性のある特定日、曜日、祝日の情報などが含まれる。パターンデータ記憶部118は、過去の資金取引量の変動パターンを記憶する機能を有している。変動パターンとしては、年末や年度末など、特定のときにおける過去の実績に基づく特定日の資金変動パターンなどが含まれる。
【0048】
算出部106は、計算部120、比較部122、分析部124、補正部126及び更新部128を含んで構成されている。また、受付部104は、決済予定データ入力部130及び決済データ入力部132を含んで構成されている。
【0049】
計算部120は、資金取引分布記憶部114の中の該当する資金取引分布と、決済予定データ入力部130に入力された決済予定データから該当する期間の予想取引量分布を算出する機能を有している。比較部122は、計算部120で計算された予想取引量分布と決済データ入力部132に入力された決済の実績値若しくは決済予定データとを比較する機能を有する。そして、比較部122は、予想取引量分布と決済の実績値及び/又は決済予定データとが乖離しているか否かを判断するための情報を提供する。比較部122は、予想取引量分布と決済の実績値及び/又は決済予定データとの比較を、常時又は所定の期間ごとに行う機能を有する。
【0050】
分析部124は、比較部122において予想取引量分布が決済の実績値若しくは決済予定データから乖離していると判断された場合、その原因の分析を行う。分析部124は、選択部110に変動要因に関する情報を提供する。また、分析部124は、実際の決済の実績値若しくは決済予定データの変動パターンと一致若しくは近似するパターンデータが登録されているか否かを、パターン記憶部118を検索して調べる。そして、パターン記憶部118に適当なパターンデータが存在する場合には、その情報を選択部110に提供する。
【0051】
選択部110は、要因データの中から特定の決済要因を選択し、資金変動パターンデータの中から該当するものを選択する機能を有する。或いは、要因データ及び資金変動パターンデータの中から特定のデータを、管理者が選択可能となるように
インターフェースとしての機能を有する。
【0052】
析部124は、変動要因を自ら分析する機能を有していてもよい。この場合、分析部124は、記憶部102における要因データ記憶部116から、資金繰りが変動する要因となる情報を読み出し、またパターンデータ記憶部118から、過去の資金繰り変動パターンを読み出す。分析部124は、要因データ記憶部116から取引要因を選択し、過去の資金取引パターンを当てはめて、分析対象となる該当日の予想取引量分布が決済の実績値から乖離している原因の分析を行う機能を有していてもよい。
【0053】
修正入力受付部112は、資金取引量が予想取引量分布より乖離したときに、該予想取引量分布を修正する入力を受け付け、補正部126に資金取引分布を補正するか否かの指示を出す。
【0054】
補正部126は、修正入力受付部112からの命令を受けたとき、分析部124で特定された原因に基づいて当初算出されていた予想取引量分布を修正する、または修正しない機能を有する。例えば、変動要因が予定外の単発的な取引に起因している場合には資金取引分布を修正せず、当該単発的な取引を考慮しないようにする。一方、変動要因を今後の資金量の予測に反映させるため、当初の資金取引分布を修正する場合には、補正部126が現在の資金データに基づいて予想取引量分布を再計算する。このとき、過去の資金変動パターンデータの中に、現在(当日)の資金変動パターンと類似するデータがある場合、その変動パターンに基づいて計算の基となる資金取引分布を修正する。
【0055】
補正部126は、資金取引分布を修正せず、当該単発的な取引を考慮しないようにする場合には、決済予定データ又は決済の実績値に反映された資金取引を消去する処理をするようにしてもよい。このとき、当初の資金取引分布には修正を加えない。一方、補正部126は、資金取引分布を修正するとき、特定された取引要因に基づいて資金取引分布を新たな確率密度が表されるように計算する。更新部128は、補正部126で補正された資金取引分布を記憶部102の資金取引分布記憶部114に書き込んで内容を更新する。
【0056】
表示制御部138は、計算部120で求めた当初の予想取引量分布、データ修正部で求めた現在の資金データに基づく資金取引量分布、決済の実績値及び決済予定データ等を表示部108に表示に所定のフォーマットで表示するように制御する機能を有する。表示制御部138は、これらのデータを、表示部108において時間軸を横軸にとりこれらのデータを重ねて表示するように表示を制御する。
【0057】
このように、本実施形態に係る情報処理装置は、複数の機能が一体となって、口座残高を着地目標額に収束するようにコントロールするための情報を提供することができる。
【0058】
[資金の管理方法]
本実施形態に係る資金管理方法は、過去の資金取引分布に基づいて、該当期間(該当日)の資金取引量の分布(推移)を予測し、その予測値と実際の決済の実績値との間に乖離がないか比較し、乖離があった場合には資金取引分布を補正し、その補正値に基づいて該当日の取引量分布を再計算し、口座残高を着地目標額に収束するように管理する。
【0059】
図1で示す情報処理装置の動作を
図3に示すフローチャートを参照して説明する。情報処理装置は、記憶部102から資金取引分布を読み出して、算出部106において当初の予想取引量分布を算出する(S202)。
【0060】
算出部106は、決済予定データを受付部104から取り込み、計算で求められた当初の予想取引量分布と決済予定データとをモニタリングする(S204)。参照は算出部106の内部で行われる他、表示部108にその値を表やグラフ等の視覚化したグラフを通して管理者によって行われてもよい。
【0061】
算出部106は、予想取引量分布と決済予定データを適時比較して、両者の値が一致しているか否かを比較する。そして不一致の場合にはどの程度乖離しているのかを比較評価する(S206)。例えば、決済所定データの残高値に対して予想取引量分布の値のズレが当初規定した範囲内であれば予測範囲内にあるものとし、「乖離なし」と判断する(S206)。一方、規定範囲外であると判断される場合には、乖離有りと判断して原因特定を行う(S208)。
【0062】
なお、規定範囲は適宜設定される値であり、例えば、決済予定データの残高値に対して予想取引量分布の値が10%以上ずれている場合には「乖離あり」と判断するようにしてもよい。この範囲は、求められる資金の着地目標値が許容する範囲に応じて適宜設定すればよい。許容範囲を狭くすれば、それだけ取引を終了したときの着地金額と着地目標金額とのズレは小さくなるが、後述するように乖離時の原因特定及び資金取引分布の修正及び更新の処理回数が増えることになる。
【0063】
ステップ206で「乖離有り」と判断された場合には、乖離原因の特定を行う(S208)。そして、原因が特定された場合には、その特定原因を反映させつつ、現在残高に基づく予想取引量分布を計算する(S210)。その後、予想取引量分布と決済予定データの残高とをモニタリングする処理(S204)へ戻る。
【0064】
一方、両者の値が規定範囲内であれば、乖離なしと判断しモニタリングを継続する場合には(S212)、モニタリングの処理(S204)へ戻る。モニタリングを終了する場合には、この処理を終了する(S212)。
【0065】
図4は、ステップ208において、乖離時の原因を特定するときに実施される処理の一例を説明するフローチャートを示す。まず、予想取引量分布と決済予定データとを対比する(S302)。例えば、ある時点における予想取引量分布と決済予定データを比較する。また、比較時点から過去に遡って、取引量分布と決済予定データの時間変化が近似しているか否かの評価を合わせて行うようにしてもよい。
【0066】
この対比において、特殊要因で乖離しているのか否かの判断をする(S304)。算出部106は、記憶部102から要因データを読み出し、想定可能な要因によってデータが乖離しているのか否かを調べる。また、資金取引の変動パターンデータを読み出して、過去の変動パターンに対応するものがあるか否かを評価するようにしてもよい。その結果、予想取引量分布が決済予定データから特殊要因で乖離していると判断された場合には、決済予定データに反映された当該取引の消去を行う(S306)。そして、
図3で説明したように、シミュレーション残高と決済予定残高のモニタリングに戻る(S204)。
【0067】
特殊要因としては、例えば、当初の予定にない大口の外国為替が入った場合などがこれに該当する。
【0068】
ステップ304で特殊要因によって乖離していないと判断された場合には、どのような変動要因で乖離しているか否かの評価を行う(S308)。算出部106は、記憶部102から過去の実績に基づく過去の資金変動パターンを読み出し、類似するパターンを検索する。現在の決済予定データ(決済予定残高曲線)が、過去の資金変動パターンと同一又は類似するものが存在した場合、その変動パターンに基づいて資金取引分布の修正を行い、現在値に基づく予想取引量分布を再度算出する(S310)。そして、
図3で説明したように、予想取引量分布と決済予定データのモニタリングに戻る(S204)。
【0069】
現在の決済予定データ(決済予定残高曲線)が、過去の資金変動パターンとの対比は、例えば、相関係数を求めることによって行ってもよい。決済予定データ(決済予定残高曲線)に対し、特定の過去における資金変動パターンのデータを選択し、両者のデータを規格化して得られるグラフから、各点(例えば、各所定の時刻)における相関係数を求め、各時間の相関係数の平均値が一定以上の場合に、両者が類似していると判断するようにしてもよい。例えば、決済予定データ(決済予定残高曲線)と、対比のために選択された金変動パターンのデータの相関係数が1である場合には、両者は一致しており、相関係数が0.8以上であれば類似すると判断するようにしてもよい。また、決済予定データと資金変動パターンのデータを規格化して得られるグラフを用いて差分をとり、その差分の標準偏差からデータの類似性を判断するようにしてもよい。
【0070】
一方、解析の結果、過去のパターンに該当するものがない場合には、他の要因調査を行う(S312)。そして、
図3で説明したように、シミュレーション残高と決済予定残高のモニタリングに戻る(S204)。
【0071】
特定の変動パターンとしては、1日、20日、25日などの月次の決算や企業の給与等が支給される特定日、年末、年始及び年度末などの決算が集中する日などがある。これらの変動要因は、概略同じ変動パターンが繰り返されるので。過去のパターンから容易に想定可能である。
【0072】
予想取引量分布が決済予定データから乖離しているときに、その乖離の原因を調べるための取引要因を特定するためのデータ解析が必要となる。以下に、要因解析をするときに用いるデータの一例を示す。
【0073】
図7で示す表は、要因・時間別状況照会データの一例を示し、一定時間帯毎(例えば、30分毎)に、入出金の総計額、出金、入金の金額及び件数が表示されている。この表には、入出金の総計額、出金及び入金のデータとして、実績値、決済予定値、当初の予想取引量の値、現在の残高に基づいた予想取引量の値が示されている。取引要因としては、例えば、委託振替、受託資金、一般振替、海外資金、国内の送金決による大口内為などが含まれている。これらは要因コードとして記号で表されていてもよい。この表を参照することで、決済取引の種類ごとに、どの時間帯に、どの程度の金額が変動するのかを数値で把握することができる。
【0074】
図8で示すように、指定した時間帯における取引要因を参照することができる、要因・時間別状況照会データを示す。
図8で示す表によれば、指定した要因コード・時間帯毎に、入出金額の総計、出金額及び入金額が表示される。この表では、資金取引ごとに、どの時間帯(指定時間)に、どの程度の金額が変動するのかを数値で把握することができる。
【0075】
また、
図8で示す表を要因コードごとに作成するようにすれば、乖離の原因を特定することができる。例えば、どの取引で乖離が生じているのかが判明した後、なぜ乖離が発生しているのかを特定することができる。例えば、ある取引Aで、予想取引量分布と決済予定データの間に、数時間後に特定金額の乖離が発生することが判明した場合、実際の取引Aについて確認を行う。そして、当初より遅れた特定時刻に大口の決済予定があることが判明すると、この乖離は決済の時刻がずれたことが原因であると判断することができる。
【0076】
図9は追加情報登録を示す表の一例を示す。例えば、大口の取引情報を把握したときに、その内容を予測に反映するために用いる。
図9で示す表では、時刻、受払、金額、要因、受払先などの登録情報が示される。また、この登録情報を、予想取引量分布を計算或いは再計算するときのデータに反映させるか否かを選択することができるようにしてもよい。このデータは、当日、急遽発生した予測できないような資金取引を情報として付加するために用いることができ、付加した情報が不要となった場合(発生しなかった、他の情報で代替できるようになったなど)に当該情報を削除するために用いることができる。
【0077】
図10は、「変動要因」の一例を示す表である。「変動要因」とは、特定日において決済・残高傾向が変化する要因をいう。この表に基づいて、日次で「今日はどの変動要因を使用するか」を決定することができる。当日営業日の日中決済額が予想値から大きくずれている場合は、予測値を求めた前提条件が誤っている可能性がある。その場合、この変動要因表に基づいて要因を特定することができる。
【0078】
本実施形態において、表示部108には
図7で示す時間表示による要因・時間別状況照会表、
図8で示す要因コード表示による要因・時間別状況照会表、
図9で示す追加情報登録表、
図10で示す着地目標額・変動要因一覧表、などを表示し、また表示画面上からデータの分析に必要な項目を選択できるようにして乖離時の原因特定を行うようにしてもよい。
【0079】
このように、
図3及び
図4を参照して説明される情報処理方法によれば、資金取引の時系列属性を取引要因に対応付けた資金取引分布に基づいて予想取引量分布を求め、これを決済の実績値及び/又は決済予定データと比較評価して管理することで、余剰資金量を把握し、口座残高を着地目標額に近づけることが可能となる。すなわち、時間の経過とともに変動する口座残高を効率的にコントロールし、資金効率を高めるための情報を提供することが可能となる。
【0080】
[画面表示]
図5は、表示部108に表示される表示画面の一例を示す。表示部108に表示されるグラフは、時間軸を横軸にとり、縦軸は資金量、すなわち金額を示す。このグラフには、当初の資金残高(当日決済開始時の残高)を基準にした予想取引量分布140、現在の資金データに基づく予想取引量分布142、決済予定データ144、決済の実績値146が示される。また、着地目標額線148、共通担保線150が合わせて表示されるようになっていてもよい。
図7において、グラフに表示される各データの詳細は以下の通りである。
【0081】
実績線146は、預金残高を示す。例えば、銀行の中央銀行当座預金残高を表示する。従ってこの場合には、この残高は当該銀行の本店と地方店の残高の合計が表示される。実績線146を表示することで、預金残高の推移を知ることができる。また、当初残高による予想取引量分布140や現在残高起点の予想取引量分布142と実績線146とが乖離する場合、分析データの妥当性を確認する一助とすることができる。
【0082】
当初残高による予想取引量分布140は、資金取引分布に基づいて前日末の残高(当日決済開始時の残高)を基準に算出される予想取引量を時間軸で示したデータである。このデータからは、該当日の資金残高の最小値及び最終着地残高を予測することが可能となる。このデータを用いて、該当日の取引開始時点での当日の資金繰り予測を行うことができる。また、実績線146との乖離から、資金取引分布の妥当性を確認することができる。
【0083】
現在残高起点の予想取引量分布142は、資金取引分布に、現在の決済予定データ144を組み合わせて求められた資金残高の時間推移を示すデータである。計算の起点は、照会時点の資金残高である。このデータからは、現在の資金残高の最小値及び最終着地残高を予測することが可能となる。決済予定データから予測される取引については、予定時刻と実際の決済時刻にずれがある取引を確認することができる。
【0084】
現在残高に基づく決済予定データ144は、決済予定明細をもとに、決済残高の時間推移グラフを示す。このデータを用いることで、決済予定を基にした最終着地残高を把握することが可能となる。また、資金取引分布に基づく予想取引量分布との差違を確認することができる。現在残高起点の決済予定データ142と、当初残高による予想取引量分布140若しくは現在残高起点の予想取引量分布142とを比較評価することで、予想外の取引(大口取引等)が発生した場合に原因を把握することが可能となる。
【0085】
着地目標額線148は、当日の着地目標金額を表示する。着地目標額線148は設定の変更がない限り表示額に変更はなく、一定である。このデータを表示することで、当日の着地目標額が明確になる。また、当日の着地目標額と実際の残高状況の乖離を視覚的に確認することができる。
【0086】
共通担保線150は、共通担保の空枠を、実績をもとに表示する。このデータを用いると、現在までの共通担保(空枠)の推移を確認することができる。そして、日中の口座残高の(真に利用可能な担保枠)を把握することができる。
【0087】
図6は、利用者の端末装置に表示される表示画面の一例を示し、当初の資金残高(当日決済開始時の残高)を基準にした予想取引量分布140、現在の資金データに基づく予想取引量分布142、決済予定データ144、決済の実績値146が示される。また、着地目標額線148、共通担保線150が時間軸で重ねて表示されている。
【0088】
このように、時間軸を共通にして各データを重ねて示すことで、予測に基づくデータと実際の決済データが乖離しているか否か、着地目標額に収束できるか否かを、管理者は視覚的に把握することができる。それにり、先を見越した適切な資金管理をすることができる。
【0089】
[プログラム]
図3及び
図4で説明した資金管理方法を実行するプログラムは、コンピュータを、資金取引の時系列属性を取引要因に対応付けて記憶する記憶部と、資金取引量の入力を受け付ける受付部と、資金取引量と資金取引の時系列属性に基づき予想取引量分布を算出する算出部とを備える情報処理装置として機能させることができる。
【0090】
プログラムは、コンピュータを、算出部において算出された予想取引量分布を表示する表示部、資金取引に符合する取引要因を選択する選択部をさらに備える情報処理装置として機能させ、算出部で、選択部において選択された取引要因に基づき記憶部より読み出された時系列属性により予想取引量分布を算出させることができる。
【0091】
プログラムは、記憶部で、相異なる複数の時系列属性と相異なる複数の取引要因とをそれぞれ一意に対応付けて記憶させ、算出部で、選択部において取引要因が複数選択されたとき、選択された取引要因に対応する時系列属性を記憶部より読み出し、複数の該時系列情報に基づき予想取引量分布を算出させことができる。
【0092】
プログラムは、コンピュータを、資金取引量が予想取引量分布より乖離したときに、該予想取引量分布を修正する入力を受け付ける修正入力受付部をさらに含む情報処理装置として機能させることができる。
【0093】
プログラムは、算出部が、修正入力受付部により受け付けられた修正入力に基づき読み出された時系列属性を該修正入力に適合するように修正し、記憶部が、修正された時系列属性を取引要因に対応付けて記憶するように機能させる。算出部は、取引開始当初の資金残高に基づいて、予想取引量分布の当初見込みを算出し、また、修正時点での資金残高に基づいて、予想取引量分布の修正値を算出する。
【0094】
プログラムは、コンピュータを、予想取引量分布と資金取引量の推移を比較する比較部をさらに含む情報処理装置として機能させることができる。プログラムは、コンピュータを、比較部が予想取引量分布に対して資金取引量が乖離していると判断したとき、乖離原因を分析する分析部をさらに含む情報処理装置として機能させることができる。プログラムは、コンピュータを、資金取引の変動要因データを記憶する要因データ記憶部と、資金取引の変動パターンを記憶するパターンデータ記憶部とをさらに含む情報処理装置として機能させることができる。プログラムは、コンピュータを、予想取引量分布と資金取引量の推移を時系列にして重ねて表示する表示制御部をさらに含む情報処理装置として機能させることができる。
【0095】
以上のように、本発明の一実施形態によれば、過去の資金取引分布を蓄積し、予想したい資金取引期間(例えば、予想したい日)の資金変動推移を予測し、この予測値と実績値とを比較評価して両者が許容範囲内で一致しているか、許容範囲から乖離しているかを判断する情報を提供することで、時間の経過とともに変動する口座残高を効率的にコントロールし、資金効率を高めるための情報を提供することが可能となる。
【課題】あらかじめ規定された変動要因によらない資金取引量全体の変動や当該変動要因により規定される取引パターン自体の変動に対しても予測を適時に適合させ、資金予測を的確に行うことを目的とする。
【解決手段】資金取引の時系列属性を取引要因に対応付けて記憶する記憶部と、資金取引量の入力を受け付ける受付部と、資金取引量と資金取引の時系列属性に基づき予想取引量分布を算出する算出部とを備える情報処理装置を提供する。資金取引の時系列属性は、特定期間を構成する特定時間の資金取引割合であり、算出部において算出された予想取引量分布を表示する表示部が備えられていてもよい。