(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666775
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ポリシロキサン系組成物およびそれから得られる成形体、オプトデバイス部材
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20150122BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20150122BHJP
C08G 77/50 20060101ALN20150122BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
!C08G77/50
【請求項の数】17
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2008-525898(P2008-525898)
(86)(22)【出願日】2007年7月19日
(86)【国際出願番号】JP2007064233
(87)【国際公開番号】WO2008010545
(87)【国際公開日】20080124
【審査請求日】2010年5月20日
(31)【優先権主張番号】特願2006-199514(P2006-199514)
(32)【優先日】2006年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2006-325555(P2006-325555)
(32)【優先日】2006年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2007-29064(P2007-29064)
(32)【優先日】2007年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2007-51291(P2007-51291)
(32)【優先日】2007年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2007-133292(P2007-133292)
(32)【優先日】2007年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2007-143514(P2007-143514)
(32)【優先日】2007年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智史
(72)【発明者】
【氏名】情野 真
【審査官】
前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−067290(JP,A)
【文献】
特開2007−031619(JP,A)
【文献】
特開2006−299149(JP,A)
【文献】
特開2006−299150(JP,A)
【文献】
特開平06−329687(JP,A)
【文献】
特開2002−363414(JP,A)
【文献】
特開2003−137944(JP,A)
【文献】
特開2004−123936(JP,A)
【文献】
特開2006−022207(JP,A)
【文献】
特開2000−154252(JP,A)
【文献】
特開2005−290352(JP,A)
【文献】
特開平11−071462(JP,A)
【文献】
特開2000−265066(JP,A)
【文献】
特開2006−265514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00− 83/16
C08G 77/00− 77/62
H01L 33/00− 33/64
G02B 1/00− 1/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中にSi原子6〜24個から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に、少なくとも1つの、直接または間接的に結合したアルケニル基を有することを特徴とするポリシロキサン、
(B)ヒドロシリル基を有するポリシロキサン、及び、
(C)ヒドロシリル化触媒
を可溶な溶剤に溶解させ、(A)成分のアルケニル基の一部と(B)成分のヒドロシリル基の一部とを反応させたあと、溶剤を留去して、液状樹脂組成物としたのち、硬化することを特徴とするポリシロキサン系組成物の成形方法。
【請求項2】
(A)成分において、多面体骨格を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合していることを特徴とする、請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
(A)成分のアルケニル基が、ビニル基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の成形方法。
【請求項4】
(B)成分が、直鎖構造を有するポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項5】
(B)成分が、分子末端にヒドロシリル基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項6】
(B)成分の重合度が2以上300以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項7】
(B)成分が、ヒドロシリル基を有する環状シロキサン化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項8】
(B)成分は、ヒドロシリル基を少なくとも2個有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項9】
(B)成分が、ヒドロシリル基を含有するポリシロキサンと、アルケニル基を有する有機化合物とをヒドロシリル化反応させて得られる反応物であって、該反応物の分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項10】
(A)〜(C)成分と併せて、(D)硬化遅延剤を溶剤に溶解させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項11】
(D)成分が、プロパルギルアルコール類および/またはマレイン酸エステル類であることを特徴とする請求項10に記載の成形方法。
【請求項12】
上記液状樹脂組成物は、(E)接着性付与剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項13】
(E)成分がシランカップリング剤であることを特徴とする、請求項12記載の成形方法。
【請求項14】
(E)成分が分子内にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1つの官能基と加水分解性のケイ酸基を有するシランカップリング剤である、請求項13記載の成形方法。
【請求項15】
(E)成分がエポキシ基含有化合物であることを特徴とする、請求項12記載の成形方法。
【請求項16】
(E)成分が分子内にエポキシ基を有する多面体骨格を有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項15に記載の成形方法。
【請求項17】
上記液状樹脂組成物は、(F)アルケニル基を有する環状シロキサン化合物を含有することを特徴とする請求項7、10〜16のいずれか1項に記載の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い波長領域および温度領域で高い透明性を維持し、さらには、耐熱性、低誘電特性、加工性等に優れポリシロキサン系組成物、および、それから得られる成形体、オプトデバイス部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン系組成物は、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐光性、化学的安定性、電気特性、難燃性、耐水性、透明性、着色性、非粘着性、非腐食性に優れており、様々な産業で利用され、その充填剤として、シリカを配合することが一般的である。しかしながら、シリカとポリシロキサンの屈折率の違いから、得られる硬化物は、不透明となることが多い。
【0003】
上記の課題を解決するべく、ポリシロキサンのSi原子上にフェニル基を導入することで、屈折率を調整し、シリカとの複合材料の透明性を向上させる技術が知られている。しかしながら、ポリシロキサンとシリカの複合材料は、ポリシロキサンとシリカの屈折率の温度依存性の違いにより、例えば、常温で透明であっても、高温条件下では、白濁する傾向を見せ、広い温度領域で透明性を維持することは大きな課題とされていた。また、フェニル基を導入することにより、耐熱性・耐光性が低下する等の課題も併せて抱えていた。
【0004】
一方、多面体骨格を有するポリシロキサンを含有することを特徴とする樹脂組成物は公知である。
例えば、多面体骨格を有する官能基含有シルセスキオキサンのヒドロシリル化硬化性組成物について、開示されている。該技術では、具体的には、ビニル基含有シルセスキオキサンとヒドロシリル基含有シルセスキオキサンから構成される例が示されているが、剛直で非常に脆い材料となり、また、成形加工性に劣る(例えば、非特許文献1)。
【0005】
また、炭素−炭素2重結合を有する多面体骨格シルセスキオキサンとラジカル開始剤とを含有する樹脂組成物についても開示されている(特許文献1)。該技術においては、多面体骨格を有するポリシロキサン化合物は、熱可塑性樹脂への添加剤的な利用であり、その特長を十分に発現するには至っていない。また、マトリクス成分とはならないため、限定的な改質効果に留まっている。
【0006】
さらに、最近になって、エポキシ基を含有する多面体骨格を有するポリシロキサンを用いた硬化性組成物が開示されている(特許文献2、3)。該技術によれば、エポキシ基と多面体骨格を形成するポリシロキサン骨格との間に多くの炭化水素単位(アルキレン鎖によるスペーサー)が存在するため、耐熱性・耐光性が十分とは言えない。
【0007】
その他に、多面体骨格を有していない例として、特定の構造を有するシルセスキオキサンとポリシロキサンとのハイブリッド材料が開示されている(特許文献4)。該技術によれば、実質的にシルセスキオキサン単位あたり2つの反応点で直鎖状ポリシロキサンとの結合しているのみであり、十分な特性は得られない。また、ポリシロキサン骨格を構成するSi原子上の置換基として、実質的にフェニル基のみが開示されており、耐熱性・耐光性の観点で不十分となる恐れがある。
【0008】
また、多面体骨格を有するシルセスキオキサンとビニル基含有化合物とを反応させる共重合体とを反応させて得られる共重合体についても開示されている。該技術においては、多面体構造を有するシルセスキオキサンが主鎖を構成するポリマーにグラフトした構造であり、一定の改質効果を示すものの、その効果としては、不十分となる場合があった(例えば、特許文献5)。
【0009】
その他にも、これらポリシロキサン組成物は、熱膨張率が高く、加熱による寸法安定性が低いといった問題点を有しているが、エポキシ基、アミノ基を含有する多面体骨格を有するポリシロキサンから構成された樹脂組成物が開示され、樹脂組成物内に多面体構造を有するポリシロキサンを導入することによって、熱膨張率を抑制できることが報告されている(特許文献6、非特許文献2)。しかしながら、該当技術では、組成物内に、エポキシ基、アミノ基、フェニレン基を含む、多くの炭化水素単位が存在し、これらは加熱や光照射により着色するため、フィルムや封止剤などの透明性材料として用いるには不十分になる恐れがある。すなわち、透明性を維持し、加熱による寸法安定性に優れ、熱膨張率を抑えた材料の例は見られない。
【0010】
また、近年、次世代DVDなどの大容量記録媒体において、青紫色レーザー(波長405nm前後)と呼ばれる短波長のレーザーが使用されている。この青紫色レーザーは、従来のDVD等に用いられる赤色レーザー(波長650nm程度)に比べて、高エネルギーであるため、オプトデバイスに使用される樹脂の劣化が大きな課題となっている。
【0011】
耐青紫色レーザー性を有する樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂(例えば、非特許文献3、特許文献7、特許文献8)、シリコーン系樹脂(例えば、特許文献9)が開示されている。しかしながら、耐久性が十分とは言えない。
【0012】
上記のように、多面体骨格を有するポリシロキサン化合物を用いた材料の開示は見られるが、十分な物性や加工性・成形性を持ち合せた材料の例は見られず、新たな材料の開発が望まれていた。
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.1998,120,8380−8391
【非特許文献2】Macromolecules,2006,39,5167−5169
【非特許文献3】日本ゴム協会誌 2006年 第79巻第4号 244頁
【特許文献1】特開2002−363414号公報
【特許文献2】特表2004−529984号公報
【特許文献3】特開2004−359933号公報
【特許文献4】特開2006−22207号公報
【特許文献5】米国特許第5484867号明細書
【特許文献6】特表2004−529984号公報
【特許文献7】特開2004−204018号公報
【特許文献8】特開2003−270401号公報
【特許文献9】特開2006−202952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題が解決された、広い波長領域および温度領域で高い透明性を維持し、さらには、耐熱性、耐光性、低誘電特性、加工性等に優れるポリシロキサン系組成物およびこれから得られる成形体を提供することを目的とする。また、波長領域350〜450nmのレーザーを光源として用いるオプトデバイス部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分子中にSi原子を6〜24個から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に、少なくとも1つの、直接または間接的に結合したアルケニル基を有することを特徴とするポリシロキサン、ヒドロシリル基を有するポリシロキサン、ヒドロシリル化触媒、とからなるポリシロキサン系組成物が広い波長領域および温度領域で透明性を損なうことなく、耐熱性、低誘電特性、加工性等に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成によるものである。
【0015】
1). (A)分子中にSi原子を6〜24個から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に、少なくとも1つの、直接または間接的に結合したアルケニル基を有することを特徴とするポリシロキサン、
(B)ヒドロシリル基を有するポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化触媒、
とからなるポリシロキサン系組成物。
【0016】
2). (A)成分において、多面体骨格を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合していることを特徴とする、1)に記載のポリシロキサン系組成物。
【0017】
3). (A)成分のアルケニル基が、ビニル基であることを特徴とする、1)または2)に記載の組成物。
【0018】
4). (B)成分が、直鎖構造を有するポリシロキサンであることを特徴とする、1)〜3)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0019】
5). (B)成分において、分子末端にヒドロシリル基を有することを特徴とする1)〜4)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0020】
6). (B)成分の重合度が2以上300以下であることを特徴とする1)〜5)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0021】
7). (B)成分が、ヒドロシリル基を有する環状シロキサン化合物であることを特徴とする1)〜3)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0022】
8). (F)成分として、アルケニル基を有する環状シロキサン化合物、を含有することを特徴とする7)記載のポリシロキサン系組成物。
【0023】
9). (B)成分であるポリシロキサンのヒドロキシル基が少なくとも2個であることを特徴とする1)〜7)いずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0024】
10). (B)成分が、ヒドロシリル基を含有するポリシロキサンとアルケニル基を有する有機化合物とをヒドロシリル化反応させて得られる反応物であって、該反応物の分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有することを特徴とする1)〜7)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0025】
11). (D)硬化遅延剤、を含有することを特徴とする1)〜10)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0026】
12). (D)成分が、プロパルギルアルコール類および/またはマレイン酸エステル類であることを特徴とする11)に記載のポリシロキサン系組成物。
【0027】
13). (E)接着性付与剤、を含有することを特徴とする1)〜12)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0028】
14). (E)成分がシランカップリング剤、であることを特徴とする、13)記載のポリシロキサン系組成物。
【0029】
15). (E)成分が分子内にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1つの官能基と加水分解性のケイ酸基を有するシランカップリング剤である、14)記載のポリシロキサン系組成物。
【0030】
16). (E)成分がエポキシ基含有化合物であることを特徴とする、13)記載のポリシロキサン系組成物。
【0031】
17). (E)成分が分子内にエポキシ基を有する多面体骨格を有するポリシロキサンであることを特徴とする16)に記載の硬化性組成物。
【0032】
18). 1)〜16)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物を硬化させて得られる硬化物。
【0033】
19). (A)〜(C)成分、(D)成分を含有する場合は、必要に応じて(D)成分も可溶な溶剤に溶解させ、(A)成分のアルケニル基と(B)成分のヒドロシリル基の一部を反応させたあと、溶媒を留去して、液状樹脂組成物としたのち、成形することを特徴とする、1)〜16)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物の成形方法。
【0034】
20). 19)に記載のポリシロキサン系組成物の成形方法によって得られる成形体。
【0035】
21). 厚さ3mmでの波長400nmにおける光線透過率が80%以上の成形体であって、200±5℃での試験後(空気下にて24時間)、および、メタリングウェザーメーターを用いた試験後(ブラックパネル温度120±5℃、放射照度0.53±0.05kW/m
2、積算照射光量50MJ/m
2)での、波長400nmでの光線透過率の変化がそれぞれ試験前の5%以下であることを特長とする18)記載の硬化物。
【0036】
22). 波長領域350〜450nmのレーザーを光源として用いるオプトデバイス用部材であって、室温にてトルエン中に72時間浸漬後のゲル分率が95%以上のシリコーン系樹脂を主成分とすることを特徴とするオプトデバイス部材。
【0037】
23). 室温にてトルエン中に72時間浸漬後のゲル分率が95%以上のシリコーン系樹脂が、
(A)少なくとも1つのアルケニル基を有するポリシロキサン、
(B)少なくとも2つのヒドロシリル基を有するポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化触媒、
とを必須成分としてなるポリシロキサン系組成物から得られることを特徴とする請求項22記載のオプトデバイス部材。
【0038】
24). ポリシロキサン系組成物が シリコーン系樹脂が、1)〜17)のいずれか1項に記載のポリシロキサン系組成物を硬化させて得られることを特徴とする23)に記載のオプトデバイス部材。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、広い波長領域および温度領域で高い透明性を維持し、耐熱性、耐光性、低誘電特性、加工性等に優れるポリシロキサン系組成物および成形体を提供することができる。また、波長領域350〜450nmのレーザーを光源として用いるオプトデバイス部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明は、(A)分子中にSi原子を6〜24個から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に、少なくとも1つの、直接または間接的に結合したアルケニル基を有することを特徴とするポリシロキサン、(B)ヒドロシリル基を有するポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒、とからなるポリシロキサン系組成物に関する。
【0041】
<(A)多面体骨格を有するポリシロキサン>
本発明における(A)成分は、分子中にSi原子を6〜24個から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に、少なくとも1つの、直接または間接的に結合したアルケニル基を有することを特徴とするポリシロキサン、である。
【0042】
本発明においては、多面体骨格に含有されるSi原子の数は6〜24であることが好ましく、具体的に、例えば、以下の構造で示される多面体構造を有するシルセスキオキサンが例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。
【0043】
【化1】
【0044】
上記式中R
1〜R
8は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基を含有する有機基、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の1価の炭化水素基である。ただし、R
1〜R
8のうちの少なくとも1つは、アルケニル基である。前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基以外の基が選択される場合は、耐熱性の観点からメチル基が好ましい。
【0045】
上記、多面体構造を有するシルセスキオキサンは、例えば、RSiX
3(式中Rは、上述のR
1〜R
8を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、RSiX
3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより、閉環し、多面体骨格を有するシルセスキオキサンを合成する方法も知られている。
【0046】
本発明において、さらに好ましい例としては、以下の構造で示されるような多面体構造を有するシリカが例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。該化合物においては、多面体骨格を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合していることから、得られる硬化物の剛直になり過ぎず、良好な成形体を得ることができる。
【0047】
【化2】
【0048】
上記、構造中、R
9〜R
32は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基を含有する有機基、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の有機基である。ただし、これらR
9〜R
32のうち、少なくとも1つはアルケニル基である。前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基以外の基が選択される場合も、耐熱性の観点からメチル基が好ましい。
【0049】
多面体構造を有するシリカの合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成される。前記合成方法としては、具体的に、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合したポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカ含有する物質からも、同様の多面体構造を有するシリカを得ることが可能である。
【0050】
本発明においては、多面体骨格に含有されるSi原子の数として、6〜24、さらに好ましくは、6〜10のものを好適に用いることが可能である。また、Si原子数の異なる多面体骨格を有するポリシロキサンの混合物であってもよい。
また、本発明においては、1分子中に含まれるアルケニル基の数は、少なくとも1つ、より好ましくは、少なくとも2つ、さらに好ましくは、少なくとも3つ含有することが望ましい。
【0051】
<(B)ヒドロシリル基を有するポリシロキサン>
本発明における(B)成分としては、ヒドロシリル基(Si原子に直結した水素原子)を有するものであるが、1分子中に少なくとも2個含有するものが好ましく、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとアルケニル基を有する有機化合物とをヒドロシリル化反応させて得られる反応物であって該化合物の分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する反応物、などを好適に使用できる。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0053】
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH
3)
2SiO
1/2単位)とSiO
2単位、SiO
3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0054】
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0055】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子およびメチル基から構成されることが好ましい。また、熱膨張率を抑制したい場合には、環状シロキサン化合物を好適に用いることができる。
【0056】
また、本発明における(B)成分としては、上記ヒドロシリル基を含有するポリシロキサンと、アルケニル基を有する有機化合物とをヒドロシリル化反応させて得られる反応物であって、該反応物の分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有することを特徴とする反応物も好適に使用することができる。
【0057】
前記アルケニル基を有する有機化合物としては、アルケニル基を有する脂環式炭化水素化合物、アルケニル基を有するイソシアヌル酸骨格を有する化合物、分子末端に炭素−炭素2重結合を有するジエン類、ジアリルエーテル類、ジシクロペンタジエン類等を好ましい化合物としてあげることができる。
【0058】
アルケニル基を有する脂環式炭化水素化合物としては、具体的にはビニルシクロヘキセン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン等をあげることができる。
【0059】
アルケニル基を有するイソシアヌル酸骨格を有する化合物としては、具体的にはトリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等をあげることができる。
【0060】
分子末端に炭素−炭素2重結合を有するジエン類としては、具体的にはデカジエン、オクタジエン等をあげることができる。
【0061】
ジアリルエーテル類としては、具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテルをあげることができる。
【0062】
特に、耐熱性・耐光性の観点から、アルケニル基を有するイソシアヌル酸骨格を有する化合物が特に好ましく、具体的にはトリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートをあげることができる。
前記、アルケニル基を有する有機化合物としては、単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0063】
前記アルケニル基を有する有機化合物と反応させるヒドロシリル基含有ポリシロキサンとしては、上述の直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンなどを好適に使用することができるが、工業的入手性および反応させる場合の反応性が良好であるという観点から、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンが好ましく、具体的には1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0064】
(B)成分の添加量は、(A)成分のアルケニル基に対してSi原子に直結した水素原子が30〜240モル%、好ましくは50〜200モル%となる割合であることが望ましい。(B)成分の添加量が多すぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、少なすぎると、硬化物の強度が不十分となる。
【0065】
<(C)ヒドロシリル化触媒>
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、特に制限はなく、任意のものが使用できる。具体的に例示すれば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カ−ボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
n、Pt〔(MeViSiO)
4〕
m;白金−ホスフィン錯体例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4;白金−ホスファイト錯体例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)
2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0066】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2等が好ましい。
【0067】
(C)成分の触媒量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10
-1〜10
-10molの範囲で用いるのがよい。好ましくは10
-2〜10
-7molの範囲で用いるのがよい。また、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で腐食性であり、また、水素ガスを大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので10
-1mol以上用いない方がよい。
【0068】
<(D)硬化遅延剤>
本発明における(D)成分は、ポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整することができる。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0069】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0070】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0071】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0072】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2'−ビピリジン等が例示できる。
【0073】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0074】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0075】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10
-1〜10
3モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜300モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0076】
<(E)接着性付与剤>
(E)成分である接着性付与剤は本願発明の組成物の基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものであれば特に制限はないが、シランカップリング剤、あるいは、エポキシ基含有化合物が好ましい物として例示できる。
【0077】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0078】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0079】
シランカップリング剤の添加量としては、(A)成分および(B)成分の合計重量の0.05〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜6重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0080】
本発明におけるエポキシ基含有化合物としては、エポキシ樹脂として広く一般的に用いられているものを使用することができ、グリシジル基、脂環式エポキシ基、脂肪族エポキシ基などのエポキシ基を分子中に1つ以上、好ましくは2つ以上有する化合物を使用することができる。
【0081】
具体的に、例えば、エピクロルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸−グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、III −アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式系エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンなどのごとき多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、エポキシ基を有するポリシロキサン、石油樹脂などのごとき不飽和重合体のエポキシ化物などが例示されるが、これらに限定されるものではなく、エポキシ基を分子中に1つ以上含有する化合物であれば使用することができる。
【0082】
上記、エポキシ基含有化合物のうち、特に、耐熱性・耐光性や他成分との相溶性の観点から、エポキシ基を有するポリシロキサンを好適に使用することができ、さらには、
[XSiO
3/2]
y
(Xは同一もしくは異なっていてもよい任意の官能基であるが、少なくとも1つは、エポキシ基を含有する基である;yは6〜12の整数)
で示されるエポキシ基を有する多面体骨格を有するポリシロキサンを好適に使用することができる。
【0083】
エポキシ基含有化合物の添加量としては、(A)および(B)成分併せて100重量部に対して、好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは0.02〜50重量部、さらに好ましくは、0.05〜20重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0084】
本発明においては、接着性付与剤を、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0085】
本発明においては、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることができる。接着性促進剤としては、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
<(F)アルケニル基を有する環状シロキサン化合物>
本発明における(F)成分として、アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物を配合することができる。この(F)成分を配合することにより、得られる成形体の熱膨張率が小さくて熱寸法安定性が優れるので好ましい。(F)成分としては、アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物であれば特に制限はないが、1分子中に少なくともアルケニル基を2個含有するものが好ましい。アルケニル基を有する環状シロキサン化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0088】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、メチル基およびビニル基から構成されることが好ましい。
【0089】
(F)成分の添加量は種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して1〜50重量部が好ましく、2〜25重量部がさらに好ましい。添加量が少ないと熱膨張率改良効果が表れず、添加量が多いと硬化組成物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0090】
<組成物>
本発明においては、(A)〜(C)成分を各成分が可溶な溶剤に溶解させ、(A)成分のアルケニル基と(B)成分のヒドロシリル基のそれぞれ一部を反応させたあと、溶剤を留去することにより、液状樹脂組成物としてハンドリングすることが可能となる。このような取り扱いにより、通常固体で、取り扱い、加工、成形の難しい(A)成分を液状樹脂組成物として取り扱うことができる。
【0091】
溶剤の留去方法としては当該溶剤の沸点以上に加熱する方法、減圧の状態と加熱を併用する方法により留去することができる。残存溶剤の減少の点からは減圧状態を、さらには加熱と併用することが好ましい。
【0092】
また、本組成物を製造する前に、あらかじめ、(A)成分および/または(B)成分に含まれる低分子量成分・未架橋成分等を留去させても良い。前記、低分子量成分・未架橋成分は、ゲル分率低下の原因となりうる成分であり、耐青色レーザー性の低下につながる恐れがある。
【0093】
上記(A)成分のアルケニル基と(B)成分のヒドロシリル基を反応させる場合、(A)成分のアルケニル基と(B)成分のヒドロシリル基のそれぞれ一部を反応させてアルケニル基やヒドロシリル基が残った組成物とし、その後さらに硬化することでハンドリング性が良好となりまた、高いゲル分率となるシリコーン系樹脂組成物が得られやすいので好ましい。
(A)成分のアルケニル基と(B)成分のヒドロシリル基の一部を反応させる温度としては、(C)成分の存在下、温度10〜90℃、さらに好ましくは、20℃〜80℃とすることが好ましい。温度が低すぎると、反応が進行せず、温度が高くなりすぎると、必要以上の反応が進行してゲル化し、液状の組成物としてハンドリングできなくなる。
【0094】
本発明のポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、(D)成分である硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもかまわない。
【0095】
また、(E)成分を添加し、加熱して硬化させることで成形体を得ることができる。(E)成分の添加により、硬化物の接着性、密着性を向上することが可能となる。硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、50〜400℃、さらに好ましくは60〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。例えば、100℃未満の温度、次に100℃以上〜130℃未満、次に130℃以上、具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
【0096】
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量その他、本願組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜4時間、好ましくは10分〜2時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
本発明に用いるポリシロキサン系組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ増量剤として粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0097】
また、本発明のポリシロキサン系組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0098】
また、本発明のポリシロキサン系組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe
2O
3、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0099】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
本発明のポリシロキサン系組成物は、成形体として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。
【0100】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる成形体は、耐熱性に優れ、広い波長領域および温度領域において、高い透明性すなわち光線透過率を発現する。また、低誘電材料や低屈折率材料としても好適である。
【0101】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる成形体は、耐熱性、耐光性に優れ、400nm程度の紫外領域の波長の光に対しても、高い光線透過率を有している。この特性によりオプトデバイス部材(光学材料)として用いることが可能である。
【0102】
本発明のポリシロキサン系組成物は、光学材料用組成物として用いることができ、硬化等によりオプトデバイス用部材として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。ここで、光学材料として用途を想定する場合、具体的に、例えば、厚さ3mmでの波長400nmにおける光線透過率が80%以上、さらには、85%以上であることが望ましい。
【0103】
近年、光学材料においては、高い耐熱性や耐光性が要求されており、特に、これらの試験後での光線透過率の変化(低下することが多い)が小さいもの(変化率が試験前の透過率の5%以下、好ましくは3%以下、さらには2%以下、特には1.5%以下、場合により0/3%以下)が望まれる。
【0104】
次に、本発明における耐熱性および耐光性の評価について、具体的に述べる。
耐熱性評価としては、例えば3mm厚のサンプルを熱重量測定装置を用い、窒素気流下、20℃/分の昇温速度で120℃から400℃に至る熱重量減少挙動を分析し、1%の重量減少が見られる温度を評価する方法を用いることができる(耐熱性試験1)。
【0105】
また、3mm厚のサンプルを、熱風循環式オーブンに、空気下で、200±5℃にて24時間保存した後、試験前後での400nmでの光線透過率を比較し、評価する方法をも用いることができる(耐熱性試験2)。その結果、耐熱性試験前後で、光線透過率の低下が5%以下、好ましくは3%以下、さらには2%以下となることが好ましい。
【0106】
また、簡便な方法として、例えば3mm厚のサンプルを150℃のオーブン内に30分間静置したのち、サンプルを取り出し、オーブンでの加熱前に比べて目視で透明性の低下を評価し、例えば透明性の低下が見られないものを○、着色したものあるいは白濁して透明性の低下が見られたものを×と評価する方法も用いることができる(耐熱試験3)(透明性の温度依存性とも言う)。
【0107】
本発明における耐光性評価としては、3mm厚のサンプルをメタリングウェザーメーターにて、ブラックパネル温度120±5℃、放射照度0.53±0.05kW/m
2で、積算放射照度50MJ/m
2まで照射し、試験前後の光線透過率を測定することができる。本発明においては、耐光性試験前後で、光線透過率の低下が5%以下、さらには3%以下となることが好ましい(耐光性試験1)。なお、本発明でいう光線透過率とは、直線光の透過率をさし、散乱光の透過率は含まない。
【0108】
本発明によって得られる成型体は、短波長領域のレーザー光への耐久性に優れるため、成型体を長寿命化することが可能となり、例えば、405nm±10nm、80mW/mm
2の青紫色レーザー光を60℃の環境下、100時間照射してもレーザー光線透過率の変化率が3%未満、さらには1.5%以下、特には0.3%以下となり、オプトデバイス部材が好ましい態様として得ることができる(耐光性試験2)。
【0109】
また、本願発明のオプトデバイス部材は耐レーザー試験後の部材の表面性の変化が少ないものも好ましい態様として得ることができる。
【0110】
本発明のポリシロキサン系組成物の用途としては、より具体的には、液晶ディスプレイ分野における基板材料、カラーフィルタ、層間絶縁膜、導光板、プリズムシート、偏向板、TFT平坦化膜、カラーフィルタ保護膜、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0111】
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0112】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0113】
さらに具体的には、次世代DVD等の光ピックアップ用の部材、例えば、ピックアップレンズ、コリメータレンズ、対物レンズ、センサレンズ、保護フィルム、素子封止剤、センサー封止剤、グレーティング、接着剤、プリズム、波長板、補正板、スプリッタ、ホログラム、ミラー等に好適に用いることができる。
【0114】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0115】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0116】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0117】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0118】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0119】
本発明においては、特に、室温にてトルエン中に72時間浸漬後のゲル分率が95%以上のポリシロキサン系組成物(シリコーン系樹脂)をオプトデバイス部材の主成分として好適に用いることができる。前記ポリシロキサン系組成物(シリコーン系樹脂)をオプトデバイス用部材として用いることで、優れた耐青紫色レーザー性を有するオプトデバイス部材を提供することが可能となる。
【0120】
本発明においては、20±5℃の条件下において、1gのサンプルをステンレス製の金網に包み、トルエンに72時間浸漬した後100℃x5時間の条件で乾燥させた際の、試験前後のサンプル重量を測定し、ゲル分率を算出することができる。具体的には、(ゲル分率)=[(試験後の重量)/(試験前の重量)]x100
の計算式にて算出することができる。
【0121】
本発明においては、ゲル分率が95%以上、さらには、97%以上であることが好ましい。ポリシロキサン系組成物(シリコーン系樹脂)は、本来、耐光性に優れているが、波長領域350〜450nmのレーザーに対する耐久性には、必ずしも優れておらず、ゲル分率が95%未満の場合、レーザー透過部の屈折率変化が起こり、スジが発生したり、また、表面に凹凸を生じたりする。
【0122】
オプトデバイス部材に用いることができるポリシロキサン系組成物(シリコーン系樹脂)は、分子内に、シロキサン結合の繰り返し単位を有し、室温にてトルエン中に72時間浸漬後のゲル分率が95%以上となるものであれば特に限定はないが、具体的に、例えば、(A)少なくとも1つのアルケニル基を有するポリシロキサン、(B)少なくとも2つのヒドロシリル基を有するポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒、とを必須成分としてなる硬化性組成物を硬化させて得られるポリシロキサン系樹脂が好ましいものとして例示される。
【0123】
前記(A)少なくとも1つのアルケニル基を有するポリシロキサンとしては、広く公知のものを使用できる。ここで、高いゲル分率を発現するために、未架橋成分となりうるアルケニル基を含有しないポリシロキサン、特に、低分子量ポリシロキサンの共存量を、出来る限り少なくすることが好ましい。
【0124】
特に、好ましい(A)成分として、前記している分子中にSi原子を6〜24個から形成される多面体骨格を有するポリシロキサン化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に、少なくとも1つの、直接または間接的に結合したアルケニル基を有することを特徴とするポリシロキサンが例示される。この場合においても、本発明においては、未架橋成分となりうるヒドロシリル基を含有しないポリシロキサン、特に低分子量ポリシロキサン成分の共存量を出来る限り少なくすることが好ましい。
【0125】
また、前記(B)少なくとも2つのヒドロシリル基を有するポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒、としては、前記している(B)成分、(C)成分を好適に用いることができる。
【0126】
本発明においては、組成物を製造する前に、あらかじめ、各成分に含まれる低分子量成分・未架橋成分等を留去させることが好ましい。前記、低分子量成分・未架橋成分は、ゲル分率低下の原因となりうる成分であり、耐青紫色レーザー性の低下につながる恐れがある。特に(B)成分の未架橋成分となりうるヒドロシリル基を含有しないポリシロキサン、特に低分子量ポリシロキサン成分の共存量をできる限り少なくすることが好ましい。
【0127】
本発明においては、熱膨張率(CTE)を抑制することも可能となる。前記CTEは熱機械分析装置(TMA)を用いて測定することができる。具体的に、例えば、熱機械分析装置(TMA−50:島津製作所製)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で、40℃から250℃まで測定し、代表値として、150℃の値を用いて評価することができる。
【0128】
本発明における前記CTE値としては、300ppm/K以下、さらには250ppm/K以下、特には200ppm/K以下であることが好ましい。熱膨張率が小さいと熱寸法安定性が良好になり、本発明により得られる硬化物が加熱または冷却された際に発生する応力によるクラック等を抑制することが可能となるため、好ましい。本発明の実施例においては熱寸法安定性試験により測定した。
【0129】
本発明においては、特に各種封止剤や接着剤などの高い接着性が求められる用途へ適用することができる。その場合、例えば本願実施例で測定した接着性試験(ダイシェア接着試験)において、接着強度が0.4kg以上、さらには0.8kg以上であることが好ましい。
【実施例】
【0130】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0131】
<試験方法>
(誘電率)
Qメータ(目黒電波測器製)を用い、温度20℃/湿度50%条件下、1MHzでの比誘電率を測定した。
【0132】
(耐熱性試験1)
熱重量測定装置TGA−50(島津製作所製)を用い、窒素気流下、20℃/分の昇温速度で120℃から400℃に至る熱重量減少挙動を分析し、1%の重量減少が見られる温度を評価した。
【0133】
(光線透過率)
紫外可視分光光度計V−560(日本分光株式会社製)を用い、温度20℃/湿度50%の条件下、波長400nmあるいは波長400nmおよび700nmでの光線透過率を測定した。
【0134】
(透明性の温度依存性)
150℃のオーブン内に30分間静置したのち、サンプルを取り出し、オーブンでの加熱前に比べて、目視で透明性の低下が見られないものを○、白濁して透明性の低下が見られたものを×と評価した。
(耐熱性試験2)
200℃に温度設定した熱風循環オーブン内にて、3mm厚板状成形体を24時間養生し、養生後の光線透過率を測定した。
【0135】
(耐光性試験)
スガ試験機(株)社製、メタリングウェザーメーター(形式M6T)を用いた。ブラックパネル温度120℃、放射照度0.53kW/m
2で、積算放射照度50MJ/m
2まで照射後、光線透過率を測定あるいは目視により透明性の低下が見られないものを○、着色が見られたものを×と評価した。
【0136】
(接着性試験)
ガラスチップ(2mm角)の片面に硬化性組成物(150g/m
2)を塗布し、アルミニウム板(A−1050P)に積層し、150℃で1時間加熱した。室温まで冷却後、ボンドテスターSERIES4000(テイジ社製)を用いて、ガラスチップとアルミニウム
板との接着強度を測定した
。
【0137】
(耐熱性試験3)
150℃のオーブン内に30分間静置したのち、サンプルを取り出し、オーブンでの加熱前に比べて、目視で透明性の低下が見られないものを○、着色が見られたものを×と評価した。
【0138】
(熱寸法安定性試験)
島津熱機械分析装置TMA−50(島津製作所)を用いた。サンプルの熱膨張率(CTE、単位ppm/K)は、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で、40℃から250℃まで測定し、150℃の値を用いた。
【0139】
(ゲル分率)
20±5℃の条件下において、1gのサンプルをステンレス製の金網に包み、トルエンに72時間浸漬した後、100℃x5時間の条件で乾燥させた。試験前後のサンプル重量を測定し、下記計算式にて、ゲル分率を算出した。
(ゲル分率)=[(試験後の重量)/(試験前の重量)]×100。
【0140】
(耐青紫色レーザー試験)
レーザーダイオード(Oxxius社製、製品名:Oxxius Violet 405nm)を用いて、405nm±10nm、80mW/mm2の青紫色レーザー光を60℃の環境下、100時間照射した。このときの、レーザー照射開始時と終了時のレーザー透過量をパワーメータ(コヒレント製、製品名:LM−2VIS)で観察し、レーザー透過率変化を以下の式にて算出した。
【0141】
(レーザー透過率変化)=[(試験開始時のレーザー透過量)−(試験終了時のレーザー透過量)]x100/(試験開始時のレーザー透過量)
併せて、レーザー照射後のサンプルについて、レーザー照射箇所の外観変化の有無を目視にて確認し、全く変化が見られないものを○、明らかに表面の凹凸や照射箇所にスジが生じているものを×、と評価した。さらに、前記評価が○となったものについて、さらに、光学顕微鏡にて観察を行い、軽微な表面凹凸や照射箇所のスジが生じて見られたものについては、△に評価を下げた。
【0142】
(実施例1)
多面体骨格を有するポリシロキサン(シリカ)であるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Mayaterials製)10gをトルエン10gに溶解させ、これに、ジメチルマレート30μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール40μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)40μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)15gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを40μL加えた。
【0143】
このようにして得られた反応溶液について、トルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表1に示す。
【0144】
(実施例2)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Mayaterials製)10gをトルエン10gに溶解させ、これに、ジメチルマレート30μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール40μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)40μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(MHD6MH、クラリアントジャパン製)20gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を50℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを40μL加えた。
【0145】
このようにして得られた反応溶液について、トルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分で加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表1に示す。
【0146】
(比較例1)
実施例1におけるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Mayaterial製)の代わりに、多面体構造を有していないビニル基含有シリカとして、MQV7(クラリアントジャパン製)を用い、あとは同様にして、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表1に示す。
【0147】
(比較例2)
実施例1において、オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Mayaterial製)の代わりに末端ビニルポリジメチルシロキサンDMS−V31(ゲレスト製)を10g、直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)の代わりにメチルHシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーHMS−301(ゲレスト製)を0.4g用い、あとは実施例1と同様にして、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表1に示す。
【0148】
(比較例3)
比較例2における配合に、煙霧状シリカであるゲレスト社製SIS6962(カタログ値粒径0.02μm)を0.5g追加し、あとは同様に、3mm厚の評価用成形体を得た。
評価結果を表1に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
(製造例1)
5Lのセパラブルフラスコにトルエン1.8kg、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.44kgを加えて、内温が104℃になるように加熱した。そこに、トリアリルイソシアヌレート200g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mL、トルエン200gの混合物を滴下した。120℃のオイルバス中で7時間加熱還流させた。1−エチニル−1−シクロヘキサノール1.7gを加えた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。
1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(化合物Aと称す、SiH価:8.2mmol/g、アリル価:0.12mmol/g)であることがわかった。
【0151】
(実施例3)
多面体骨格を有するポリシロキサンであるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン10gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.1μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.2μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)5.9gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、ジメチルマレートを0.1μL加えた。
【0152】
(実施例4)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.4μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール0.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.4μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、化合物Aを1.6gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で2時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを0.1μL加えた。
【0153】
(実施例5)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.2μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.2μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)を1.8gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で2時間加温したのち、室温まで冷却し、ジメチルマレートを0.2μL加えた。
【0154】
このようにして得られた反応溶液について、トルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分で加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
(実施例6)
多面体骨格を有するポリシロキサンであるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン2.5gをトルエン2.5gに溶解し、これに、ジメチルマレート0.1μL、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)0.12μL、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン3.43gを加えて得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、ジメチルマレートを0.1μL加えた。
【0157】
このようにして得られた反応溶液について、トルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分加熱して3mm厚の評価用成形体を得た。
【0158】
(実施例7)
多面体骨格を有するポリシロキサンであるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン2.0gをトルエン2.0gに溶解しさせ、これに、ジメチルマレート0.54μL、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)1.08μL、製造例1にて得た化合物A2.0gを加えて得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール1.27μL加えた。
【0159】
このようにして得られた反応溶液について、トルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分加熱して3mm厚の評価用成形体を得た。
【0160】
(実施例8)
多面体骨格を有するポリシロキサンであるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン2.0gをトルエン2.0gに溶解し、これに、ジメチルマレート0.1μL、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)0.12μL、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.85g、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン0.2gを加えて得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、ジメチルマレートを0.1μL加えた。
【0161】
このようにして得られた反応溶液について、トルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分加熱して3mm厚の評価用成形体を得た。
【0162】
(実施例9)
多面体骨格を有するポリシロキサンであるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン5.0gをトルエン5.0gに溶解し、これに、ジメチルマレート0.2μL、白金ビニルシロキサン錯体(ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)0.24μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)9.91gを加えて得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、ジメチルマレートを0.2μL加えた。
【0163】
このようにして得られた反応溶液について、トルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分加熱して3mm厚の評価用成形体を得た。
【0164】
得られた成型体について、熱寸法安定性試験(CTEと表示)、耐熱性試験3、耐光性試験を実施した。評価結果を表3に示す。
【0165】
【表3】
【0166】
(実施例10)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.4μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール0.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.4μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)1.2g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)1.8gを加え、溶解させた。
【0167】
得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを0.1μL加えた。得られた反応溶液から、トルエンを留去した液状樹脂組成物1.0gに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.025gを加え、硬化性組成物を調整した。
【0168】
耐熱・耐光性試験用成型体(3mm厚)は、硬化性組成物を型枠に流し込み、60℃で20分、100℃で20分、130℃で20分、150℃で20分間、加熱して硬化させることにより作成した。耐熱性試験3、耐光性試験の結果、ともに○の評価であった。
【0169】
(実施例11)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.4μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール0.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.4μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)1.2g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)1.8gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを0.1μL加えた。得られた反応溶液から、トルエンを留去し、硬化性組成物を調整した。
【0170】
【表4】
【0171】
(実施例12)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.4μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール0.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(Pt−VTSC−3.0x、エヌイーエムキャット製)0.4μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)1.2g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)1.8gを加え、溶解させた。得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを0.1μL加えた。得られた反応溶液から、トルエンを留去した液状樹脂組成物0.5gに、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂0.0125g(ジャパン エポキシレジン株式会社製)を加え、硬化性組成物を調整した。このようにして得られた硬化性組成物を接着性試験に供した。結果を表5に示した。
【0172】
(実施例13)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.4μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール0.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(Pt−VTSC−3.0x、エヌイーエムキャット製)0.4μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)1.2g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)1.8gを加え、溶解させた。得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを0.1μL加えた。得られた反応溶液から、トルエンを留去した液状樹脂組成物0.5gに、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂0.0125g(ジャパン エポキシレジン株式会社製)を加え、硬化性組成物を調整した。このようにして得られた硬化性組成物を接着性試験に供した。結果を表5に示した。
【0173】
(実施例14)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.4μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール0.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(Pt−VTSC−3.0x、エヌイーエムキャット製)0.4μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)1.2g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)1.8gを加え、溶解させた。得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを0.1μL加えた。得られた反応溶液から、トルエンを留去した液状樹脂組成物0.5gに、フェノールノボラック型エポキシ樹脂0.0125g(ジャパン エポキシレジン株式会社製)を加え、硬化性組成物を調整した。このようにして得られた硬化性組成物を接着性試験に供した。結果を表5に示した。
【0174】
(実施例15)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.4μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール0.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(Pt−VTSC−3.0x、エヌイーエムキャット製)0.4μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)1.2g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)1.8gを加え、溶解させた。得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを0.1μL加えた。得られた反応溶液から、トルエンを留去した液状樹脂組成物0.5gに、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂0.0125g(ジャパン エポキシレジン株式会社製)、トリメトキシボラン0.003gを加え、硬化性組成物を調整した。
【0175】
耐熱・耐光性試験用成型体(3mm厚)は、硬化性組成物を型枠に流し込み、60℃で20分、100℃で20分、130℃で20分、150℃で20分間、加熱して硬化させることにより作成した。このようにして得られた硬化性組成物を接着性試験に供した。結果を表5に示した。
【0176】
(製造例2)
多面体骨格を有するオクタ(ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン5.0gをトルエン15.0gと
アリルグリシジルエーテル6.73gに溶解させ、これに、白金ビニルシロキサン錯体(Pt−VTSC−3.0x、エヌイーエムキャット製)0.29μLを加え、80度で3時間反応させた。反応終了後、トルエンと過剰量加えた
アリルグリシジルエーテルを留去することにより、エポキシ基含有の多面体骨格を有するオクタシルセスキオキサン7.56gを得た。
【0177】
(実施例16)
上記オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン2gをトルエン2gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.08μL、白金ビニルシロキサン錯体(Pt−VTSC−3.0x、エヌイーエムキャット製)0.1μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)2.1g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)0.8g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)1.2gを加え、溶解させた。得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、ジメチルマレート0.08μL加えた。次に、反応溶液からトルエンを留去した液状樹脂組成物1.0gに、上記製造例に合成したエポキシ基含有の多面体骨格を有するオクタシルセスキオキサン0.025gを加え、硬化性組成物を調整した。このようにして得られた硬化性組成物を接着性試験に供した。結果を表5に示した。
【0178】
(実施例17)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.4μL、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール0.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(Pt−VTSC−3.0x、エヌイーエムキャット製)0.4μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)1.2g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)1.8gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールを0.1μL加えた。得られた反応溶液から、トルエンを留去し、硬化性組成物を調整した。このようにして得られた硬化性組成物を接着性試験に供した。結果を表5に示した。
【0179】
【表5】
【0180】
(実施例18)
多面体骨格を有するポリシロキサンであるオクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.1μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.2μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)5.9gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で1時間加温したのち、室温まで冷却し、ジメチルマレートを0.1μL加えた。
【0181】
このようにして得られた反応溶液について、30℃x1時間、減圧条件にてトルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表6に示す。
【0182】
(実施例19)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.2μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.2μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.1g、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H21、ゲレスト製)1.2gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で2時間加温したのち、室温まで冷却した。
【0183】
その後、反応溶液に、ヒドロシリル基を末端に有するポリシロキサン(クラリアント製、商品名MQH−8)を150℃x7時間で減圧乾燥したものを1.8g、さらに、ジメチルマレートを0.2μL加えたのち、30℃x1時間、減圧条件にてトルエンを留去して液状樹脂組成物を作成した。得られた組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で20分、150℃で20分、180℃で20分加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表6に示す。
【0184】
(
参考例20)
ビニル基含有ポリシロキサン(MQV−7、クラリアント社製)10g、ジメチルマレート2.9μL、白金ビニルシロキサン錯体(白金として3%含有、キシレン溶液)2.6μL、ヒドロシリル基含有ポリシロキサン(MQH−8、クラリアント社製)を150℃x7時間で減圧乾燥したもの5.6gを加え、混合して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、60℃で20分、80℃で20分、100℃で20分、120℃で10分、150℃で10分加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成型体を得た。各種評価結果を表6に示す。
【0185】
(比較例4)
ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(DMS−V31、ゲレスト製)10g、ジメチルマレート1.4μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)1.3μL、ヒドロシリル基含有ポリシロキサン(HMS−301、ゲレスト製)0.4gを加え、混合した。
【0186】
このようにして得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表6に示す。
【0187】
(比較例5)
ビニル基含有ポリシロキサン(MQV−7、クラリアント製)10g、ジメチルマレート2.9μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)2.6μL、ヒドロシリル基含有ポリシロキサン(MQH−8、クラリアント製)5.6gを加え、混合した。
【0188】
このようにして得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で10分、150℃で10分加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表6に示す。
【0189】
(実施例21)
オクタ(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン3gをトルエン3gに溶解させ、これに、ジメチルマレート0.2μL、白金ビニルシロキサン錯体(3%白金、キシレン溶液)0.2μL、ヒドロシリル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−H03、ゲレスト製)3.0g、ヒドロシリル基を末端に有するMQレジン(クラリアント製、商品名MQH−8)を1.8gを加え、溶解させた。このようにして得られた溶液を60℃で2時間加温したのち、室温まで冷却し、ジメチルマレートを0.2μL加えた。
【0190】
このようにして得られた反応溶液について、トルエンを留去して得られた液状樹脂組成物を型枠に流し込み、70℃で30分、120℃で20分、150℃で20分、180℃で20分加熱して硬化させ、3mm厚の評価用成形体を得た。各種評価結果を表6に示す。
【0191】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明は、広い波長領域および温度領域で高い透明性を維持し、さらには、耐熱性、低誘電特性、加工性等に優れポリシロキサン系組成物と、その組成物から得られる成形体、オプトデバイス部材に関する。