特許第5666793号(P5666793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666793
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】インターナルポンプ及び沸騰水型原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 15/243 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   G21C15/243 510E
   G21C15/243GDC
   G21C15/243 520
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-215248(P2009-215248)
(22)【出願日】2009年9月17日
(65)【公開番号】特開2011-64563(P2011-64563A)
(43)【公開日】2011年3月31日
【審査請求日】2011年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 いづみ
(72)【発明者】
【氏名】松村 清一
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/011469(WO,A1)
【文献】 特開昭62−287192(JP,A)
【文献】 特開平01−102393(JP,A)
【文献】 特開平01−210897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/243
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータケーシングと、前記モータケーシング内に設置されたモータと、前記モータケーシング内に配置され、前記モータによって回転されるシャフトと、前記モータケーシングの外で前記シャフトに取り付けられたインペラと、前記モータケーシングと前記シャフトの間に配置されて前記シャフトを取り囲む筒状のストレッチチューブとを備え、
前記ストレッチチューブの、前記インペラ側の端部に、インターナルポンプ内に供給されるパージ水が導かれ、前記シャフトを支持する水中軸受を設け、
環状間隙が前記ストレッチチューブの内面と前記シャフトの間に形成され、
前記水中軸受が、前記ストレッチチューブの内面に形成されて周方向に配置され、前記環状間隙に開放されて前記シャフトの外面に向き合っている複数の窪み部を含んでおり、
前記モータケーシングに接続された前記パージ水を供給するバージ水供給管に連絡される第1パージ水供給通路が、前記窪み部よりも下方で前記ストレッチチューブを貫通し、且つ前記環状間隙に連絡されており、
前記水中軸受が、前記モータケーシングと前記ストレッチチューブの間に形成されて前記パージ水が流れる間隙と前記窪み部を連絡し、前記ストレッチチューブ内に形成された、前記第1パージ水供給通路とは別の第2パージ水供給通路を含んでいることを特徴とするインターナルポンプ。
【請求項2】
モータケーシングと、前記モータケーシング内に設置されたモータと、前記モータケーシング内に配置され、前記モータによって回転されるシャフトと、前記モータケーシングの外で前記シャフトに取り付けられたインペラと、前記モータケーシングと前記シャフトの間に配置されて前記シャフトを取り囲む筒状のストレッチチューブと、前記ストレッチチューブと前記シャフトの間に配置されて前記シャフトを取り囲み、前記ストレッチチューブの、前記インペラ側の端部に設けられた筒状の軸受部材とを備え、
前記ストレッチチューブの、前記インペラ側の端部に、インターナルポンプ内に供給されるパージ水が導かれ、前記シャフトを支持する水中軸受を設け、
環状間隙が前記ストレッチチューブの内面及び前記軸受部材の内面のそれぞれと前記シャフトの間に形成され、
前記水中軸受が、前記軸受部材の内面に形成されて周方向に配置され、前記環状間隙に開放されて前記シャフトの外面に向き合っている複数の窪み部を含んでおり、
前記モータケーシングに接続された前記パージ水を供給するバージ水供給管に連絡される第1パージ水供給通路が、前記窪み部よりも下方で前記ストレッチチューブを貫通し、且つ前記環状間隙に連絡されており、
前記水中軸受が、前記モータケーシングと前記ストレッチチューブの間に形成されて前記パージ水が流れる間隙と前記窪み部を連絡し、前記ストレッチチューブ及び前記軸受部材内に形成された、前記第1パージ水供給通路とは別の第2パージ水供給通路を含んでいることを特徴とするインターナルポンプ。
【請求項3】
原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器の底部に設けられたインターナルポンプと、前記原子炉圧力容器の底部に設けられた複数の制御棒駆動機構ハウジング内に設けられた制御棒駆動機構と、前記制御棒駆動機構ハウジングに連絡されて前記制御棒駆動機構ハウジング内に供給する冷却水を導く冷却水配管とを備え、
前記インターナルポンプが請求項1または2に記載されたインターナルポンプであり、
前記冷却水配管に接続されて前記冷却水である前記パージ水を導くパージ水供給管を前記モータケーシングに接続したことを特徴とする沸騰水型原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターナルポンプ及び沸騰水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
改良型沸騰水型原子炉(ABWR)では、複数のインターナルポンプが原子炉圧力容器の底部に設けられている。インターナルポンプのインペラが、原子炉圧力容器と原子炉圧力容器内に設置された炉心シュラウドの間に形成された環状のダウンカマ内に配置される。炉心シュラウドの内側に、複数の燃料集合体が装荷された炉心が配置されている。
【0003】
インターナルポンプは、モータケーシング、モータ、シャフト及びインペラを有する(特開昭64−11837号公報参照)。モータケーシングが、原子炉圧力容器の底部に設けられ、下方に向って伸びている。モータがモータケーシング内に設置され、モータによって回転されるシャフトが上方に向って伸びて原子炉圧力容器内に達し、シャフトの上端部にインペラが取り付けられる。シャフトは、下部ラジアル軸受で下端部を支持され、上部ラジアル軸受で中央部を支持されている。これらの軸受は、回転時におけるシャフトの半径方向の振動を抑制している。
【0004】
原子炉の運転中に、原子炉圧力容器内の高温の冷却水がモータケーシング内に流入することを防ぐために、パージ水を、モータの上端より上方でモータケーシングに接続されたパージ水供給管からモータケーシング内に供給している。このパージ水は、シャフトとシャフトの周囲を取り囲んでいるストレッチチューブの間に形成される環状通路を上昇して原子炉圧力容器内に導かれる。
【0005】
ストレッチチューブの内面にはラビリンスが設けられている。このラビリンスは、パージ水の流れを遅くし、パージ水の温度を高める機能を有している。このため、温度が十分に上昇したパージ水が原子炉圧力容器内に導かれるので、インターナルポンプのシャフトの下部に接触しているパージ水の温度とそのシャフトの上部に接触しているパージ水の温度の温度勾配を緩やかにすることができる。これにより、シャフトの熱疲労を低減することができる。
【0006】
パージ水の温度を上昇するために、ストレッチチューブの内面に螺旋溝を形成することが特開平1−210897号公報に提案されている。また、同じ目的で、シャフトの外面に螺旋溝を形成することが特開平1−182597号公報で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭64−11837号公報
【特許文献2】特開平1−210897号公報
【特許文献3】特開平1−182597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インターナルポンプではシャフトの上部にラジアル軸受に設けていないので、インターナルポンプの回転体の上部がオーバーハングしやすい構造になっている。このため、回転体の危険速度を高くするために、インターナルポンプでは、回転体の下部の質量が大きくなる構造が採用されている。
【0009】
このようなインターナルポンプでは、インターナルポンプの容量を増加させるためにインペラを大型化する場合には、回転体の下部の質量も併せて増加させる必要がある。このため、インターナルポンプ全体が大型化してしまう。
【0010】
本発明の目的は、危険速度を高めることができるインターナルポンプ及び沸騰水型原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、モータケーシング内に設置されたモータと、モータケーシング内に配置され、モータによって回転されるシャフトと、モータケーシングの外でシャフトに取り付けられたインペラと、モータケーシングとシャフトの間に配置されてシャフトを取り囲む筒状のストレッチチューブとを備え、
ストレッチチューブの、インペラ側の端部に、インターナルポンプ内に供給されるパージ水が導かれ、シャフトを支持する水中軸受を設けたことにある。
【0012】
ストレッチチューブの、インペラ側の端部に、インターナルポンプ内に供給されるパージ水が導かれる水中軸受を設けたことにより、シャフトが、ストレッチチューブのインペラ側の端部の位置で水中軸受で支持されるので、インペラ側の端部でのシャフトの偏心を抑制することができる。このため、インターナルポンプの危険速度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インターナルポンプの危険速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のインターナルポンプの縦断面図である。
図2図1のII部の拡大図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4図1のIV−IV断面図である。
図5】実施例1のインターナルポンプのシャフトが偏心した状態を示す説明図である。
図6】本発明の他の実施例である実施例2におけるインターナルポンプのシャフト上端部付近の縦断面図である。
図7図6のVII−VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の好適な一実施例であるインターナルポンプを、図1図2図3及び図4を用いて説明する。本実施例のインターナルポンプ4は、ABWRに適用され、モータケーシング5、モータ6、シャフト7及びインペラ8を備えている。
【0017】
モータケーシング5は、原子炉圧力容器1の底部にノズル11を介して取り付けられ、原子炉圧力容器1から下方に向って伸びている。モータ6がモータケーシング5内に設置される。モータ6によって回転されるシャフト7が、上方に向って伸びており、原子炉圧力容器1の底部を貫通している。ディフューザ9が、原子炉圧力容器1と原子炉圧力容器1内に設置された炉心シュラウド2の間に形成された環状のダウンカマ3内に配置される。インペラ8は、ディフューザ9内に配置されてシャフト7の上端部に取り付けられる。ストレッチチューブ10が、シャフト7を取り囲んでおり、シャフト7とモータケーシング5の間に配置される。ストレッチチューブ10は、ディフューザ9を原子炉圧力容器1、直接的にはノズル11に固定する機能を有する。
【0018】
シャフト7は、下部ラジアル軸受12で下端部を支持され、上部ラジアル軸受13で中央部を支持されている。パージ水供給管14が、上部ラジアル軸受13の上方でモータケーシング5に接続される。
【0019】
円筒状の軸受部材16がストレッチチューブ10の上端部とシャフト7の間に配置され、軸受部材16の上端部がストレッチチューブ10上に設置される。軸受部材16はシャフト7を取り囲んでいる。水中軸受25が、ストレッチチューブ10のインペラ8側の端部に配置され、軸受部材16に設けられる。軸受部材16がストレッチチューブ10に設けられているので、水中軸受25はストレッチチューブ10に設けられているとも言える。水中軸受25は複数のポケット部17及びそれぞれ複数の貫通孔15,18を有している。窪み部であるポケット部17が、シャフト7の内面に向かい合っており、軸受部材16の周方向で90°置きに軸受部材16の内面に4個形成されている。4個の貫通孔18が半径方向において軸受部材16に形成され、各貫通孔18は各ポケット部17に別々に連絡されている。4個の貫通孔15が、ストレッチチューブ10の周方向において90°置きにストレッチチューブ10に形成されている。それぞれの貫通孔15が各貫通孔18に別々に連絡される。パージ水供給管14に連絡された環状間隙20が、ノズル6及びモータケーシング5のそれぞれの内面とストレッチチューブ10の外面の間に形成される。
【0020】
ストレッチチューブ10は上端部に段差部22を形成している。このため、ストレッチチューブ10及び軸受部材16の内径を実質的に同じくすることができ、軸受部材16をストレッチチューブ10内に収納することができる。軸受部材16の下端が段差部22の上面に接触する。段差部22より上方でのストレッチチューブ10の肉厚は、段差部22より下方でのその肉厚よりも厚くなっている。
【0021】
環状間隙21が、軸受部材16及びストレッチチューブ10のそれぞれの内面とシャフト7の外面の間に形成される。各ポケット部17が環状間隙21に開放されている。4本の溝19が、シャフト7の周方向において、軸受部材16及びストレッチチューブ10のそれぞれの内面に形成され、シャフト7の軸方向に伸びている。これらの溝19は、シャフト7の周方向において、ポケット部17の間に配置される。溝19及び環状間隙21の上端は、原子炉圧力容器1内に連絡される。
【0022】
ラビリンス部23が、ストレッチチューブ10の下端部でストレッチチューブ10の内面に形成される(図4参照)。貫通孔24が、ラビリンス部23よりも下方でストレッチチューブ10の周方向に、ストレッチチューブ10に形成される。これらの貫通孔24は、環状間隙20と溝19を連絡し、パージ水供給管14に連絡される。パージ水供給管14から供給されるパージ水の大部分が貫通孔24を流れるように環状間隙20の流路抵抗を高くするために、環状間隙20が、貫通孔24よりも上方において絞られている。パージ水供給管14が環状間隙20に連絡されている。
【0023】
複数の制御棒駆動機構ハウジング(以下、CRDハウジングという)(図示せず)が、原子炉圧力容器1の底部を貫通し、原子炉圧力容器1に設置される。各CRDハウジング内に、制御棒駆動機構(以下、CRDという)(図示せず)が設置される。CRDは、原子炉圧力容器1内に配置されて原子炉出力を制御する制御棒(図示せず)に連結される。原子炉圧力容器1内の高温の冷却水がCRDハウジング内に流入してCRDと接触することを防ぐために、ABWRは、CRDハウジング内にパージ水を供給するCRDパージ水系(図示せず)を備えている。このCRDパージ水系はそのパージ水を導くパージ水配管(図示せず)を有しており、このパージ水配管がCRDハウジングに接続される。パージ水供給管14がCRDパージ水系のパージ水配管に接続されている。
【0024】
ABWRの運転中、インターナルポンプ4が駆動される。すなわち、モータ6が駆動されてシャフト7が回転し、インペラ8が回転する。ダウンカマ3内の冷却水が、インペラ8の回転によって昇圧されてディフューザ9から排出され、炉心シュラウド2内に導かれる。この冷却水は、炉心シュラウド2によって取り囲まれた、複数の燃料集合体が装荷された炉心に供給される。冷却水は、燃料集合体内に存在する核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。炉心から排出された、この蒸気を含む気液二相流が原子炉圧力容器1内の気水分離器に導かれ、蒸気が分離される。分離された蒸気は原子炉圧力容器1から排気されてタービン(図示せず)に供給される。上記の気液二相流のうち、分離された冷却水が、原子炉圧力容器1に供給された給水と共にダウンカマ3を下降し、インターナルポンプ4によって昇圧される。
【0025】
インターナルポンプ4の駆動中において、CRDハウジング内に供給されるパージ水が、CRDパージ水系のパージ水配管によってCRDハウジング内に導かれる。CRDハウジング内に供給されたパージ水は原子炉圧力容器1内に排出されるため、このパージ水は、CRDパージ水系のパージ水配管に設けられたポンプ(図示せず)によって、原子炉圧力容器1内の冷却水の圧力よりも高い圧力に昇圧される。CRDパージ水系のパージ水配管内を流れるパージ水の一部が、インターナルポンプ4用のパージ水として、パージ水供給管14から環状間隙20内に供給される。このパージ水は、原子炉圧力容器の底部に設けられたCRDハウジング(図示せず)内に供給されるパージ水の一部である。環状間隙20内に供給されたパージ水の大部分は、貫通孔24を通って溝19内に導かれる。このパージ水は、各溝19及び環状間隙21を上昇して原子炉圧力容器1内に流入する。各溝19及び環状間隙21を上昇するパージ水の流速がラビリンス部23において減速され、パージ水の上昇速度が低下する。パージ水は、ラビリンス部23を通過する間に温度が上昇し、前述したように、シャフト7の熱疲労を低減することができる。各溝19及び環状間隙21を上昇するパージ水は、原子炉圧力容器1内の高温の冷却水がモータケーシング5内に流入するのを阻止するシール水としての機能している。
【0026】
環状間隙20内に供給されたパージ水の一部は、環状間隙20内を上昇し、それぞれの貫通孔15,18を通って各ポケット部17に導かれる。貫通孔15,18は、ポケット部17にパージ水を供給するパージ水供給通路である。
【0027】
シャフト7の軸心がストレッチチューブ10及び軸受部材16のそれぞれの軸心と一致している場合には、シャフト7の外面と軸受部材16の内面の間に形成される環状間隙21の、シャフト7の半径方向における幅は、シャフト7の周方向で同じ幅になっている。このため、シャフト7の周方向に存在する4個のポケット部17に該当する貫通孔15,18から供給されるパージ水の流量、及び各ポケット部17の圧力が等しくなる。
【0028】
しかしながら、図5に示すように、回転しているシャフト7が矢印Aの方向に偏心した場合には、シャフト7がポケット部17bからポケット部17aの方向に移動する。ポケット部17a側でのシャフト7の外面と軸受部材16の内面の間の間隙の幅は、ポケット部17b側でのシャフト7の外面と軸受部材16の内面の間の間隙の幅よりも狭くなる。このため、該当する貫通孔15,18からポケット部17a内に供給されるパージ水の流量が減少してポケット部17a内の圧力が上昇する。該当する貫通孔15,18からポケット部17b内に供給されるパージ水の流量が増加してポケット部17b内の圧力が低下する。ポケット部17a内の圧力が高くなり、ポケット部17b内の圧力が低下することによって、ポケット部17a内の圧力がポケット部17b内の圧力よりも高くなる。これらの圧力の差は、偏心しているシャフト7を、矢印Aとは逆方向に、すなわち、圧力の低いポケット部17bに向って移動させる。シャフト7の矢印Aとは逆方向への移動は、ポケット部17a内の圧力とポケット部17b内の圧力が等しくなる位置で停止する。
【0029】
このように、シャフト7が偏心した場合には、シャフト7を挟んで対向する2つのポケット部17のうちの一方のポケット部17内の圧力が他方のポケット部17の圧力よりも低下した場合には、シャフト7は圧力が低くなったポケット部17に向って移動し、シャフト7の偏心が抑制される。シャフト7の、ストレッチチューブ10の上端部の位置でシャフト7が水中軸受25によって支持されるので、シャフト7の上端部での偏心を抑制できる。これにより、インターナルポンプ4の危険速度を高くすることができる。
【0030】
本実施例は、4つのポケット部17が周方向で内面に形成された軸受部材16を、モータケーシング5が取り付けられたノズル11付近に配置するので、シャフト7の上端部において半径方向での制振が行われる。このため、インターナルポンプ4は、回転体の下部の質量を増加させる必要がなく、小型化することができる。
【0031】
本実施例において、シャフト7の上端部を支持する水中軸受25は、複数のポケット部17、及びこれらのポケット部17に一部のパージ水を供給する貫通孔15,18によって構成される。複数のポケット部17を有する軸受を構成することによって、シャフト7が、ストレッチチューブ10及び軸受部材16に接触しないため、これらの部材の、磨耗による交換頻度を低減することができる。
【0032】
各ポケット部17に供給されるパージ水は、前述したように、CRDハウジング内に供給されるパージ水である。このため、このパージ水が、CRDパージ系のパージ水配管に設けられたポンプによって、原子炉圧力容器1内の冷却水の圧力よりも高い圧力に昇圧される。このようなCRDハウジング内に供給される高圧のパージ水の一部を、パージ水供給管14及び環状間隙20を通し、さらに、貫通孔15,18を経てポケット部17に供給することができる。このような本実施例では、軸受部材16に複数のポケット部17及び複数の貫通孔18を形成し、さらに、ストレッチチューブ10に貫通孔15を形成した単純な構成の、半径方向においてシャフト7の上端部を支持する水中軸受25を設けることができる。そのような単純な構成の水中軸受25をシャフト7の上端部付近でインターナルポンプ4に形成することができるので、インターナルポンプ4の上端部の構成を単純化することができる。
【0033】
もし、パージ水をポケット部17に供給するのではなく、インペラ8で昇圧された冷却水をそれぞれのポケット部17に供給することも考えられる。この場合には、インペラ8で昇圧された冷却水をポケットに導く通路を、溝19及び間隙20,21と交差することなく、インターナルポンプ4内に形成する必要がある。このような通路の形成は困難である。このような通路が形成できた場合には、インターナルポンプの上端部の形状が複雑化する。また、インペラ8で昇圧された冷却水の温度は、パージ水の温度よりも著しく高温であり、このような高温の冷却水をポケット部17に供給してモータ6に接近させることは、モータ6への入熱量を増大させることになる。本実施例は、CRDハウジング内に供給されるパージ水の一部をポケットプ17に供給しているので、このパージ水によるモータケーシング5内への原子炉圧力容器1内の冷却水の流入を防ぐことができると共に、モータ6への入熱量を著しく低減することができる。
【0034】
また、シャフト7の下端部を支持するラジアル軸受によって、シャフト7の上端部を支持することも考えられる。水中軸受25のポケット部17等を形成する替りに、ポケット部17が配置された位置にラジアル軸受を配置した場合には、以下のような問題が生じる。(1)ポケット部17の形成位置が原子炉圧力容器1に近いため、(a)このラジアル軸受周辺の温度をラジアル軸受が耐えられる温度まで下げる必要がある、及び(b)そのラジアル軸受周辺の温度を下げるためにシャフト7とストレッチチューブ10の間に供給するパージ水の温度を下げた場合には、シャフト7の上部で急激な温度勾配が生じ、シャフト7の熱疲労のポテンシャルが増大する。(2)ラジアル軸受は定期的に交換するので、線量が高い原子炉圧力容器1の付近にラジアル軸受を設置することは好ましくない。これに対して、水中軸受25は、交換する頻度は少なく、耐熱温度も高いので、水中軸受25周辺の温度を下げる必要もない。
【実施例2】
【0035】
本発明の他の実施例であるインターナルポンプを、図6及び図7を用いて説明する。本実施例のインターナルポンプ4Aは、実施例1のインターナルポンプ4において軸受部材16を削除してストレッチチューブ10をストレッチチューブ10Aに替え、水中軸受25を水中軸受25Aに替えた構成を有する。インターナルポンプ4Aの他の構成はインターナルポンプ4と同じである。インターナルポンプ4AもABWRに適用される。インターナルポンプ4Aの、インターナルポンプ4と異なる部分、すなわち、水中軸受を中心に説明する。
【0036】
水中軸受25Aはストレッチチューブ10Aに設けられる。水中軸受25Aは複数のポケット部17及び複数の貫通孔15を有する。4つのポケット部17が、シャフト7の外面に向かい合っており、ストレッチチューブ10Aの内面に形成される。4つのポケット部17は、実施例1と同様に、ストレッチチューブ10Aの周方向に90°置きに配置される。それぞれのポケット部17に別々に連絡された各貫通孔15は環状間隙20に連絡されている。本実施例では、ストレッチチューブ10Aが実施例1のインターナルポンプ4の軸受部材16の機能も有している。
【0037】
ABWRの運転中に、インターナルポンプ4が駆動される。環状間隙20内を上昇するパージ水が、各貫通孔15を通ってそれぞれのポケット部17内に供給される。本実施例においても、図5に示すようにシャフト7が偏心した場合には、ポケット部17aの圧力がポケット部17bの圧力よりも高くなるので、実施例1と同様に、シャフト7の偏心を抑制することができる。
【0038】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、軸受部材16を設置する必要がないので、実施例1よりもインターナルポンプの構造を単純化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、沸騰水型原子炉に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…原子炉圧力容器、4,4A…インターナルポンプ、5…モータケーシング、6…モータ、7…シャフト、8…インペラ、10…ストレッチチューブ、15,18,24…貫通孔(パージ水供給通路)、16…軸受部材、17…ポケット部、20,21…環状間隙、23…ラビリンス部、25,25A…水中軸受。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7