(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の内部電極の面のうちの互いに対向する面に、一方の前記内部電極から他方の前記内部電極に向かって延びて櫛歯状にかみ合う枝葉部が形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックコンデンサ。
前記第1のセラミック誘電体を充填するステップの後に、前記第1の内部電極上に、絶縁層、第2のシード層及び所定パターンの第2の厚膜マスク層を順次形成するステップと、
前記第2のシード層のメッキをおこない、前記第2の厚膜マスクから露出する部分の前記第2のシード層上に、前記基板の基板面に対して略垂直方向に壁状に延び、櫛歯状にかみ合う一対の第2の内部電極を形成するステップと、
前記第2の厚膜マスクを除去するステップと、
前記第2の厚膜マスクの除去により形成された前記一対の前記第2の内部電極の間隙に、第2のセラミック誘電体を充填するステップと
をさらに含み、
前記第1の内部電極及び前記第2の内部電極に接続されるように前記一対の外部電極を形成する、請求項5記載のセラミックコンデンサの製造方法。
前記絶縁層、前記第2のシード層及び所定パターンの前記第2の厚膜マスク層を順次形成するステップ、前記第2の内部電極を形成するステップ、前記第2の厚膜マスクを除去するステップ及び前記第2のセラミック誘電体を充填するステップを複数回繰り返して多層化する、請求項6記載のセラミックコンデンサの製造方法。
前記内部電極の幅を拡げるステップとして、イオンビームエッチングにより、前記内部電極の間隙から露出する前記シード層材料を前記内部電極の側面に再付着させる、請求項9記載のセラミックコンデンサの製造方法。
前記一対の内部電極の面のうちの互いに対向する面に、一方の前記内部電極から他方の前記内部電極に向かって延びて櫛歯状にかみ合う枝葉部が形成されている、請求項5〜11のいずれか一項に記載のセラミックコンデンサの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックコンデンサの一つとして、積層セラミックコンデンサが知られている。この積層セラミックコンデンサ1は、
図23に示すような構造を有しており、セラミック誘電体層2と内部電極層4とが上下方向において交互に積層された積層体6と、その積層体6を左右方向から挟むように形成された一対の電極8A、8Bとによって構成されている。なお、このコンデンサ1の内部電極層4は、
図23の(b)部分において詳しく示されているとおり、隣接する内部電極層4同士が異なる電極8A、8Bに接続されるように形成されている。
【0003】
上述したような積層セラミックコンデンサを製造する方法として、シート方式と印刷方式とが知られている。これらの製造方法はいずれも、誘電体層を構成するセラミック誘電体の粉末からなる層と、内部電極層を構成する電極ペースト(導電性ペースト)からなる層とを交互に複数層重ねた積層体を形成し、この積層体を焼成した後、外部電極を設けるという方法により積層セラミックコンデンサを作製する。
【0004】
この誘電体層の形成には、セラミック誘電体粉末と有機バインダ及び有機溶剤等とを混合してスラリー化した誘電体ペーストをドクターブレード法などの方法でシート状にし、適宜乾燥して作製されたセラミック成形体(いわゆる、グリーンシート)が用いられる。一方、内部電極層の形成に用いられる電極ペーストは、ニッケル等の金属粉末を有機バインダ及び有機溶剤等に分散させてペースト状にしたものである。
【0005】
そして積層セラミックコンデンサは、通常、上述したような電極ペーストをグリーンシート表面にスクリーン印刷し、電極ペーストに含まれる有機溶剤を乾燥させた後、この成形体を複数枚重ねて加圧成形して得られた積層体をチップ化及び焼成することにより作製される。チップ化された積層体の端面には複数の内部電極層が露出し、これらの内部電極層と電気的に接続されるように外部電極が端面に形成される。
【0006】
以上で説明した積層セラミックコンデンサは、近年の電子機器の軽薄短小化の進行に伴ってより一層の小型化が要求されており、さらに高容量化の観点から、セラミック誘電体層及び内部電極層を可能な限り薄くし(薄型化)、且つそれらを可能な限り多く積層する(多層化)ことが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した従来のセラミックコンデンサにおいては、次のような課題が存在している。すなわち、製造工程の中に、セラミック誘電体層となるべきグリーンシートの積層体を加圧成形する工程やその積層体を焼成する工程などが含まれているため、セラミック誘電体層の厚さ寸法に大きな変化が生じやすく、その厚さ寸法を精度よく制御することが困難であった。すなわち、内部電極層間隔の精密な寸法制御が困難であったため、静電容量等のデバイス特性にばらつきが生じてしまう。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、内部電極間隔の寸法制御が容易なセラミックコンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るセラミックコンデンサは、基板上に、その基板面に対して垂直に立設され、所定の間隙を介して櫛歯状にかみ合う一対の第1の内部電極と、一対の第1の内部電極の間隙に充填された第1のセラミック誘電体と、一対の第1の内部電極に接続された一対の外部電極とを備える。
【0011】
このセラミックコンデンサにおいては、櫛歯状の一対の内部電極は基板面に対して垂直に立設されており、セラミック誘電体はその一対の内部電極の間隙に充填されている。そのため、内部電極の寸法はセラミック誘電体が形成される前後において実質的に変化せず、内部電極形成時の寸法が維持される。このように、このセラミックコンデンサによれば、内部電極の寸法を容易に制御することができるため、内部電極間隔の寸法制御についても容易におこなうことができる。
【0012】
また、第1の内部電極上に形成された絶縁層と、絶縁層上に、基板面に対して垂直に立設され、所定の間隙を介して櫛歯状にかみ合う一対の第2の内部電極と、一対の第2の内部電極の間隙に充填された第2のセラミック誘電体とをさらに備え、一対の外部電極のうち、一方が第1の内部電極に接続され、他方が第2の内部電極に接続されている態様であってもよい。この場合、静電容量の増大が図られる。
【0013】
また、絶縁層、第2の内部電極及び第2のセラミック誘電体を含む構造体を複数備える態様であってもよい。この場合、静電容量のさらなる増大が図られる。
【0014】
また、一対の内部電極の面のうちの互いに対向する面に、一方の内部電極から他方の内部電極に向かって延びて櫛歯状にかみ合う枝葉部が形成されている態様であってもよい。この場合、一対の内部電極の対向する面の面積が拡大するため、静電容量の増大が図られる。
【0015】
本発明に係るセラミックコンデンサの製造方法は、表面に第1のシード層が形成された基板表面に、所定パターンの第1の厚膜マスクを形成するステップと、第1のシード層のメッキをおこない、第1の厚膜マスクから露出する部分の第1のシード層上に、基板の厚さ方向に延び、櫛歯状にかみ合う一対の第1の内部電極を形成するステップと、第1の厚膜マスクを除去するステップと、第1の厚膜マスクの除去により形成された一対の第1の内部電極の間隙に、第1のセラミック誘電体を充填するステップと、一対の第1の内部電極に接続される一対の外部電極を形成するステップとを含む。
【0016】
このセラミックコンデンサの製造方法においては、基板上にメッキによって一対の内部電極が形成され、その一対の内部電極の間隙にセラミック誘電体が充填される。そのため、内部電極の寸法はセラミック誘電体を充填するステップの前後において実質的に変化せず、内部電極形成時の寸法が維持される。このように、このセラミックコンデンサの製造方法によれば、内部電極の寸法を容易に制御することができるため、内部電極間隔の寸法制御についても容易におこなうことができる。
【0017】
また、第1のセラミック誘電体を充填するステップの後に、第1の内部電極上に、絶縁層、第2のシード層及び所定パターンの第2の厚膜マスク層を順次形成するステップと、第2のシード層のメッキをおこない、第2の厚膜マスクから露出する部分の第2のシード層上に、基板の基板面に対して略垂直方向に延び、櫛歯状にかみ合う一対の第2の内部電極を形成するステップと、第2の厚膜マスクを除去するステップと、第2の厚膜マスクの除去により形成された一対の第2の内部電極の間隙に、第2のセラミック誘電体を充填するステップとをさらに含み、第1の内部電極及び第2の内部電極に接続されるように一対の外部電極を形成する態様であってもよい。この場合、静電容量の増大が図られる。
【0018】
また、絶縁層、第2のシード層及び所定パターンの第2の厚膜マスク層を順次形成するステップ、第2の内部電極を形成するステップ、第2の厚膜マスクを除去するステップ及び第2のセラミック誘電体を充填するステップを複数回繰り返して多層化する態様であってもよい。この場合、静電容量のさらなる増大が図られる。
【0019】
また、内部電極を形成するステップの際に用いるメッキ材料が、Ni、Cu、Cr及びRuのいずれかである態様であってもよい。
【0020】
また、内部電極の幅を拡げるステップをさらに含む態様であってもよい。この場合、内部電極の間隔が狭小化されるため、静電容量の増大が図られる。なお、内部電極の幅を拡げるステップとして、イオンビームエッチングにより、内部電極の間隙から露出するシード層材料を内部電極の側面に再付着させる態様であってもよく、内部電極に対して再メッキをおこなう態様であってもよい。
【0021】
また、一対の内部電極の面のうちの互いに対向する面に、一方の内部電極から他方の内部電極に向かって延びて櫛歯状にかみ合う枝葉部が形成されている態様であってもよい。この場合、一対の内部電極の対向する面の面積が拡大するため、静電容量の増大が図られる。その上、厚膜マスクを除去した後における内部電極の姿勢安定性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、内部電極間隔の寸法制御が容易なセラミックコンデンサ及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの内部電極のパターンを示した平面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係るセラミックコンデンサの概略構成図である。
【
図12】
図12は、セラミックコンデンサの製造方法の異なる態様を示した図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの概略構成図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの第1の内部電極のパターンを示した平面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの第2の内部電極のパターンを示した平面図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの第1の内部電極パターンと第2の内部電極とが重なる状態を示した図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一工程を示した図である。
【
図23】
図23は、従来技術に係るセラミックコンデンサを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
(第1実施形態)
【0025】
本発明の第1実施形態に係るセラミックコンデンサを作製する際には、まず、
図1に示すように、基板10(例えば、シリコン基板)の上に、Al
2O
3絶縁層12、Niシード層(第1のシード層)14、厚膜のフォトレジストマスク層16を順次積層する。シード層14の厚さは1000Å、マスク層16の厚さは6μmである。
【0026】
次に、
図2に示すように、公知のフォトレジスト技術を用いて、マスク層16のパターニングをおこない厚膜マスク(第1の厚膜マスク)17を形成する。厚膜マスク17は、基板10の基板面に対して垂直に延びる幅0.4〜0.6μmの複数のマスク片17aを複数含んでおり、例えば離間距離0.6〜0.8μmで規則的に配置されている。
【0027】
そして、
図3に示すように、シード層14のNiメッキをおこない、メッキ層18Aを形成する。このメッキ層18Aは厚さ5.5μmで形成され、マスク片17aの頂部はメッキ層18Aの表面から露出する。メッキ層18Aは、マスク片17aが形成された領域の残余領域の全体に亘って形成され、隣り合うマスク片17aの間隙にもメッキが充填される。
【0028】
続いて、
図4に示すように厚膜マスク17を除去し、内部電極18a,18b,18cを得る。この内部電極18a,18b,18cは、隣り合うマスク片17aの間隙において形成された電極片19を複数含む。各電極片19は、マスク片17a同様、基板10の基板面に対して垂直に延びるように立設されている。
【0029】
ここで、
図5を参照しつつ、内部電極18a、18b、18cのパターンについて説明する。
【0030】
上述したとおり、内部電極18a、18b、18cは、厚膜マスク17によるメッキ層18Aのパターニングによって成形されるが、これにより、内部電極は、
図5に示すように、その櫛歯が互いにかみ合うように向かい合った櫛歯形状となる。
【0031】
より具体的には、内部電極18bは、
図5において上下方向に平行に並ぶ均一長さの複数の電極片19を有し、それらの各端部(
図5の右側端部)において一体的に接続された櫛歯状の電極パターンとなっている。内部電極18aも、
図5において上下方向に平行に並ぶ均一長さの複数の電極片19を有しており、内部電極18aの電極片19と内部電極18bの電極片19とは、後述するセラミック誘電体が充填されるべき溝状の間隙G(例えば、0.5μm幅)を介して並列している。内部電極18aの複数の電極片19は、各端部(
図5の左側端部)において一体的に接続された櫛歯状の電極パターンとなっており、さらに、内部電極18bの周囲を取り囲むように形成されている。それにより、内部電極18bの周囲は上記間隙によって完全に取り囲まれ、その間隙自体は閉回路を形成している。内部電極18cは、上下方向に延びる溝状の間隙gを介して内部電極18aの右側に配置されており、上下方向に延在している。
【0032】
上述した内部電極18a、18b、18cは、内部電極18aと、後段の工程において互いに接続される内部電極18b、18cとに区別される。そして、内部電極18a、18b、18cは全体として、一方がアノード電極18aとして機能し、他方がカソード電極18b、18cとして機能する一対の内部電極を構成している。
【0033】
なお、内部電極18a、18bの各電極片19の幅は、必ずしも均一にする必要はなく、電極内部を流れる電流密度やその他の特性を調整する目的で意図的に不均一にしてもよい。例えば、最大幅寸法2.0〜5.0μmの電極片19と最小幅寸法0.6〜0.8μmの電極片19とを併存させてもよい。なお、Deep−UV露光を利用することで、深さ5μm、幅0.6〜0.8μm、メッキ層スペース0.4〜0.6μmを実現することができる。
【0034】
上述した電極片19の形状は、微視的には、
図6に示すような形状となっている。つまり、隣り合う電極片19の互いの対向面には、一対の内部電極18a、18b、18cの一方(例えば、アノード電極18a)の電極片19から他方(例えば、カソード電極18b、18c)の電極片19に向かって平行に延びる長さ5μmの枝葉部19aが形成されている。この枝葉部19a同士も互いにかみ合うような櫛歯状になっている。このような枝葉部19aを形成することにより電極片19の拡面化が図られている。その上、
図4に示しているように比較的高さの高い電極片19が基板面に対して垂直に立設されている場合、厚膜マスク17を除去する際に脱落したり倒壊して剥離したりといった事態が生じやすいが、電極片19に枝葉部19aを設けて姿勢安定性を向上させることにより、上記事態を効果的に予防することができる。
【0035】
次に、
図7に示すように、メッキ層18Aに対してNiイオンビームを照射する。このイオンビームは基板面に対して垂直に(すなわち、傾斜角0度で)照射され、内部電極18a、18b、18cの間に含まれる間隙G、gから露出する部分のシード層14をエッチング除去する。このイオンビームエッチング(IBE)により、その部分のシード層14が除去されて、この時点で内部電極18a、18b、18cが電気的に互いに絶縁される。なお、このイオンビームエッチングによってはじき飛ばされる(すなわち、スパッタされる)シード層14のNi原子は、そのシード層14の部分を囲む電極片19の側壁に再付着する。このようにして電極片19には例えば厚さ0.1μmの再付着部19bが形成され、その再付着部19bの分だけ電極片19の幅が増大する。一方、電極片19の間に介在する間隙Gは、両側の電極片19の側面が近づいてくるため、その再付着部19bの分だけ狭小化されることとなる。例えば、間隙Gの幅(すなわち、電極片19の離間距離)が0.5μmである場合には、電極片19に厚さ0.1μmの再付着部19bが形成されることで0.2μmだけ狭小化され、0.3μmとなる。
【0036】
さらに、上記イオンビームエッチングにより、電極片19の鋭利な上端面縁部(トップエッジ)が曲面化されるため、コンデンサ動作時における電界集中が緩和されるという効果も得られる。
【0037】
続いて、メッキ層18Aの全面を覆うように、誘電体スラリーをスピンコートにより塗布する。このスラリーとしては、BaTiO
3のSOG(SpinOn Glass)スラリーが用いられる。BaTiO
3のSOGスラリーは、例えば、固相法、シュウ酸法、水熱法、ゾルゲル法のいずれかを用いて微細なBaTiO
3粉末を形成し、その粉末をアルコール等に溶解させて形成される。このようなスラリーを、スピンコートすることによって、内部電極18a、18bの電極片19の狭小な間隙Gにも誘電体スラリーが充填される。内部電極18a、18bの間隙Gは、上述したとおり閉回路となっているため、内部に誘電体スラリーが貯留され、誘電体スラリーの間隙外部への漏洩が防止される。一方、内部電極18aと内部電極18cとの間の間隙gは閉回路となっていないため、間隙g内には誘電体スラリーは貯留されない。
【0038】
本実施形態におけるSOGスラリー用のBaTiO
3粉末は、ゾルゲル法によって合成した。このゾルゲル法は、通常、アルコキシドの加水分解反応を用いた液相合成法のことを示す。反応がアルコール溶液中でおこなわれることから、結晶中に水酸基を取り込みにくいという利点があり、高品質のBaTiO
3粉末を得ることができる。実際に合成したBaTiO
3のナノ粉末は、結晶性の高い5nm程度の粒子と、結晶性の低い3nm以下の粒子とで構成されていた。
【0039】
そして、上述の誘電体スラリーを、約800℃の温度で熱処理(アニール処理)して硬化させる。その結果、
図8に示すように、メッキ層18Aの表面に厚さ500nmの誘電体薄膜20が形成されると共に、電極片19の間隙Gに形成された誘電体片21aを含むセラミック誘電体(第1のセラミック誘電体)21が形成される。つまり、一対の内部電極18a、18b、18cの隣り合う電極片19の間にはセラミック誘電体21の誘電体片21aが介在し、電極片19と誘電体片21aとが基板10の面方向において交互に重なり合う。なお、上述したとおり、内部電極18aと内部電極18cとの間の間隙gには、誘電体スラリーは存在しないため、この熱処理後においても間隙gは空のまま保持される。
【0040】
なお、誘電体スラリーが電極片19の間隙Gに十分に充填されず、例えば少量の気泡が生じている場合であっても、気泡内の空気によって電極片19同士の絶縁が実現される。そのため、たとえ誘電体スラリーの不十分な充填が生じたとしても、作製されるセラミックコンデンサ1Aの特性に実質的な影響はない。
【0041】
その後、メッキ層18Aの表面に形成された誘電体薄膜20を除去する。なお、この工程を省略し、誘電体薄膜20を残したまま後段の工程に進んでもよい。
【0042】
続いて、
図9に示すように、内部電極18a、18b、18cを含むメッキ層18A上に、厚さ0.2〜0.5μmでAl
2O
3絶縁層22を形成する。このとき、Al
2O
3が内部電極18aと内部電極18cとの間の間隙gに充填される。さらに、絶縁層22に所定のスルーホールを形成した後、
図10に示すように導通部Dを形成して、カソード電極として機能する内部電極18bと内部電極18cとを導通部Dを介して接続する。なお、導通部Dを形成した後、絶縁層22及び導通部Dを一体的に覆うAl
2O
3絶縁層23を形成する。
【0043】
以上で説明した工程を経て得られる構造の積層体Lは、実際には、一枚の基板上に同様の構造を有する積層体が並列して複数形成される。そのため、絶縁層23を形成した時点では、一枚の基板10上において、積層体Lは、同様の構造を有する両隣の積層体L1、L2とつながっている。
【0044】
そこで、積層体Lの両端を基板10ごと切断して、積層体Lの対向する端面(切断面)S1、S2それぞれから内部電極18a,18b,18cの端面を露出させる。すなわち、積層体Lの一方の端面S1からは内部電極18aの端面を露出させ、もう一方の端面S2からは内部電極18cの端面を露出させる。
【0045】
最後に、
図11に示すように、一対の外部電極24A、24Bを、一対の内部電極18a、18b、18cに接続するように形成して、第1の実施形態に係るセラミックコンデンサ1Aの作製が終了する。一対の外部電極24A、24Bのうち、アノードとして機能する外部電極24Aは、積層体Lの端面S1にメッキ形成されて、アノード電極18aと電気的に接続される。一方、カソードとして機能する外部電極24Bは、積層体Lの端面S2にメッキ形成されて、内部電極18cと電気的に接続され、カソード電極18b、18cとの導通が図られる。
【0046】
以下では、上記製造方法によって作製されるセラミックコンデンサ1Aについて説明する。
【0047】
セラミックコンデンサ1Aは、上述したとおり、櫛歯状の一対の内部電極18a,18b,18cが基板10の基板面に対して垂直に立設されており、セラミック誘電体21はその一対の内部電極18a、18b、18cの間隙Gに充填されている。そのため、内部電極18a,18b,18cとセラミック誘電体21とが、基板10の基板面に対して直交する方向に延在すると共に、その基板面に対して平行な方向に内部電極18a、18b、18cの電極片19が並列する。従って、このセラミックコンデンサ1Aにおいては、その厚さ方向に沿う応力に対する機械的強度の向上が実現されている。一方、従来技術に係る
図23の積層セラミックコンデンサ1は、セラミック誘電体2及び内部電極層4の薄型化により、その厚さ方向に沿う応力が加わった場合には割れや欠けといった破壊が生じてしまう。すなわち、セラミックコンデンサ1Aは、従来技術に比べて厚さ方向における機械的強度の向上が実現されることで、そのような破壊が有意に抑制される。
【0048】
また、セラミックコンデンサ1Aにおいては、内部電極18a、18b、18cの電極片19及びセラミック誘電体21の誘電体片21aが、基板10の基板面に対して垂直に立設されているため、複数の電極片19と複数の誘電体片21aとは基板面に対して平行な方向に沿って交互に配列される。すなわち、電極片19と誘電体片21aとは基板面に対して平行な方向に沿って多層化されている。そのため、公知のパターニング技術によって容易にセラミックコンデンサの多層化が実現される。一方、従来技術に係る
図23の積層セラミックコンデンサ1は、多層化を実現するためには、電極ペーストが塗布されたグリーンシートを何度も繰り返し積層する必要があり、多大な手間と時間を要していた。すなわち、セラミックコンデンサ1Aは、従来技術に比べて多層化を容易におこなうことができる。
【0049】
さらに、セラミックコンデンサ1Aを作製する際には、基板10上にメッキによって一対の内部電極18a、18b、18cが形成され、その一対の内部電極18a、18b、18cの間隙Gにセラミック誘電体21が充填される。つまり、その製造工程の中に、従来技術で必要であったグリーンシートの積層体を加圧成形する工程やその積層体を焼成する工程などが含まれていない。そのため、その製造工程中において、セラミック誘電体21の幅寸法に大きな変化が生じにくく、その厚さ寸法が精度よく制御される。また、内部電極18a、18b、18cについても高い寸法精度で形成することができると共に、製造工程が終了するまでその寸法が保持される。つまり、上述した製造方法によってセラミックコンデンサ1Aを作製することで、セラミック誘電体21及び内部電極18a、18b、18cの寸法を容易に制御することができるため、内部電極18a,18b,18cの間隙Gの寸法制御についても容易におこなうことができる。その結果、静電容量等のデバイス特性の均一化が図られる。
【0050】
その上、セラミックコンデンサ1Aの内部電極18a、18b、18cは、基板10の基板面に対して垂直に立設され、複数の電極片19それぞれが櫛歯状に一体成型された形状を有している。そして、そのような内部電極18a、18b、18cを立設した後、その内部電極18a、18cのそれぞれの端面を露出させ、その露出した端面に一対の外部電極24A、24Bを形成する。このように、内部電極18a、18cの端面を露出させた上でその端面に外部電極24A、24Bを形成することで、確実かつ容易に外部電極24A、24Bを形成することができる。従来技術に係る
図23の積層セラミックコンデンサ1においては、外部電極8A、8Bと複数の内部電極層4とが確実に接続されない場合には、接続されていない内部電極層4はキャパシタとして機能しないため、素子全体としての静電容量の低下が招かれてしまうが、内部電極層4の薄型化及び多層化により、外部電極8A、8Bに全ての内部電極4に確実に接続することが困難になってきていた。すなわち、上述した製造方法によってセラミックコンデンサ1Aを作製することで、外部電極24A、24Bを確実かつ容易に形成することができる。
【0051】
なお、上述した製造工程のうち、内部電極18a、18bの電極片19の幅を拡げる工程の際には、以下のような方法を利用することができる。すなわち、
図12に示すように、イオンビームエッチングによってメッキ層18Aの各内部電極18a、18b、18c同士の絶縁を図った後、Niによる再メッキ処理をおこなう。それにより、内部電極18a、18b、18cの間隙G、gの側面及び内部電極18a、18b、18cの表面に所定厚さ(例えば、0.1μm)の再メッキ層が形成される。それにより、上端面及び側面に再メッキ層が形成されて幅が拡げられた電極片19Aが形成される。この再メッキ層の厚さは、メッキ時間を時間を調整することによって自在に調整可能である。
(第2実施形態)
【0052】
続いて、本発明の第2実施形態に係るセラミックコンデンサ1Bについて説明する。このセラミックコンデンサ1Bは、
図13に示すように、1段目の内部電極18a、18b、18cと2段目の内部電極38a、38b、38cとを備える二段タイプのセラミックコンデンサとなっている。
【0053】
以下、セラミックコンデンサ1Bを作製する手順について説明する。
【0054】
セラミックコンデンサ1Bを作製する際には、まず、第1の実施形態と同様の手順により、基板10上にパターニングされた内部電極18a、18b、18cを形成する。すなわち、基板10の上に、Al
2O
3絶縁層12、Niシード層(第1のシード層)14、厚膜のフォトレジストマスク層16を順次積層した後、公知のフォトレジスト技術を用いて、マスク層16のパターニングをおこない厚膜マスク17を形成する。そして、シード層14のNiメッキをおこない、メッキ層18Bを形成した後、厚膜マスク17を除去することにより、所定パターンの内部電極18a,18b,18cが得られる。
【0055】
第2実施形態における内部電極18a,18b,18cのパターンは、
図15に示すとおりである。つまり、第2の実施形態のパターンは、第1の実施形態のパターンに対し、一対の接続領域50a、50bが形成されている点で異なっている。一対の接続領域50a、50bは、櫛歯パターンを挟むようにしてメッキ層18Bの左右に分かれて配置されており、一方の接続領域50aは内部電極18aに設けられており、他方の接続領域50bは内部電極18bに設けられている。
【0056】
次に、
図16に示すとおり、イオンビームエッチング、誘電体スラリーの塗布及び熱硬化アニール処理、絶縁層22の形成を、第1の実施形態と同様の手順によりおこなう。なお、本実施形態においては、後段の工程において、誘電体スラリーの熱硬化アニール処理をおこなうため、この時点における熱硬化アニール処理は省略することができる。
【0057】
その後、
図17に示しように、メッキ層18A上面の接続領域50a、50bに対応する領域の絶縁層22に、開口(スルーホール)22aを形成する。続いて、
図18に示すように、絶縁層22の上にNiシード層(第2のシード層)34を形成すると共に、そのシード層34上に厚膜のフォトレジストマスク層(図示せず)を用いて厚膜マスク(第2の厚膜マスク)37をパターニング形成する。この厚膜マスク37は、厚膜マスク17同様、基板面に対して垂直に延びる複数のマスク片37aを含んでいる。
【0058】
そして、シード層34のNiメッキをおこない、メッキ層38を形成する。このメッキ層38は、メッキ層18A同様、マスク片37aの頂部がメッキ層38の表面から露出するように形成される。メッキ層38は、マスク片37aが形成された領域の残余領域の全体に亘って形成され、隣り合うマスク片37aの間隙にもメッキが充填される。
【0059】
そして、
図19に示すように厚膜マスク17を除去し、内部電極38a、38b、38cを得る。この内部電極38a、38b、38cは、隣り合うマスク片37aの間隙において形成された電極片39を複数含む。各電極片39は、マスク片37a同様、基板10の基板面に対して垂直に延びるように立設されている。
【0060】
ここで、
図20を参照しつつ、内部電極38a、38b、38cのパターンについて説明する。
【0061】
上述したとおり、内部電極38a、38b、38cは、厚膜マスク37によるメッキ層38のパターニングによって成形されるが、これにより、内部電極は、
図20に示すように、その櫛歯が互いにかみ合うように向かい合った櫛歯形状となる。
【0062】
より具体的には、内部電極38aは、
図20において上下方向に平行に並ぶ均一長さの複数の電極片39を有し、それらの各端部(
図20の左側端部)において一体的に接続された櫛歯状の電極パターンとなっている。内部電極38bも、
図20において上下方向に平行に並ぶ均一長さの複数の電極片39を有しており、内部電極38aの電極片39と内部電極38bの電極片39とは、セラミック誘電体が充填されるべき溝状の間隙Gを介して並列している。内部電極38bの複数の電極片39は、各端部(
図20の右側端部)において一体的に接続された櫛歯状の電極パターンとなっており、さらに、内部電極38aの周囲を取り囲むように形成されている。それにより、内部電極38aの周囲は上記間隙によって完全に取り囲まれ、その間隙自体は閉回路を形成している。内部電極38cは、上下方向に延びる溝状の間隙gを介して内部電極18bの左側に配置されており、上下方向に延在している。
【0063】
上述した内部電極38a、38b、38cは全体として、内部電極38aがアノードとして機能し、内部電極38bがカソードとして機能する一対の内部電極を構成している。
【0064】
内部電極38a、38b、38cには、1段目の内部電極18a、18b、18cの接続領域50a、50bに対応する領域に、同様の接続領域50a、50bが設けられている。接続領域50aは内部電極38aに設けられており、接続領域50bは内部電極38bに設けられている。従って、メッキ層38が形成されて、
図21に示すように1段目の内部電極18a、18b、18cと2段目の内部電極38a、38b、38cとが重なり合った場合には、接続領域50a、50bを介して、1段目の内部電極18aと2段目の内部電極38aとが電気的に接続され、1段目の内部電極18bと2段目の内部電極38bとが電気的に接続される。
【0065】
上述した電極片39の形状は、第1実施形態において説明した電極片19の形状と同様、隣り合う電極片39の互いの対向面に、一方の電極片39から他方の電極片39に向かって互いに平行に延びる枝葉部が形成されている態様であってもよい。
【0066】
図19に示すとおり、メッキ層38に対しても、第1実施形態と同様、Niイオンビームを照射して、内部電極38a、38b、38cの間に含まれる間隙G、gから露出する部分のシード層34をエッチング除去する。このイオンビームエッチングにより、その部分のシード層34が除去されて、この時点で内部電極38a、38b、38cが電気的に互いに絶縁される。なお、このイオンビームエッチングによってはじき飛ばされるシード層34のNi原子は、そのシード層34の部分を囲む電極片39の側壁に再付着し、再付着部39aの分だけ電極片39の幅が増大する。
【0067】
そして、誘電体スラリーの塗布及び熱硬化アニール処理、絶縁層42の形成を、第1の実施形態と同様の手順によりおこなう。その結果、
図22に示すように、電極片39の間隙Gに形成された誘電体片41aを含むセラミック誘電体(第2のセラミック誘電体)41が形成される。つまり、一対の内部電極38a、38b、38cの隣り合う電極片39の間にはセラミック誘電体41の誘電体片41aが介在し、電極片39と誘電体片41aとが基板10の面方向において交互に重なり合う。なお、内部電極38bと内部電極38cとの間の間隙gには、誘電体スラリーは貯留されないため、この間隙gは空のまま保持される。
【0068】
続いて、
図22に示すように、内部電極38a、38b、38cを含むメッキ層38上に、厚さ0.2〜0.5μmでAl
2O
3絶縁層42を形成する。このとき、Al
2O
3が内部電極38bと内部電極38cとの間の間隙gに充填される。
【0069】
以上で説明した工程を経て得られる構造の積層体Lは、実際には、一枚の基板上に同様の構造を有する積層体が並列して複数形成される。そのため、絶縁層42を形成した時点では、一枚の基板10上において、積層体Lは、同様の構造を有する両隣の積層体L1、L2とつながっている。
【0070】
そこで、積層体Lの両端を基板10ごと切断して、積層体Lの対向する端面(切断面)S1、S2それぞれから1段目の内部電極18a,18b,18c及び2段目の内部電極38a、38b、38cを露出させる。すなわち、積層体Lの一方の端面S1からは内部電極18aの端面を露出させ、もう一方の端面S2からは内部電極38bの端面を露出させる。
【0071】
最後に、
図13に示したように、一対の外部電極24A、24Bを、二対の内部電極18a、18b、18c、38a、38b、38cに接続するように形成して、第2の実施形態に係るセラミックコンデンサ1Bの作製が終了する。一対の外部電極24A、24Bのうち、アノードとして機能する外部電極24Aは、積層体Lの端面S1にメッキ形成されて、露出するアノード電極18aと電気的に接続され、アノード電極18a、38aとの導通が図られる。一方、カソードとして機能する外部電極24Bは、積層体Lの端面S2にメッキ形成されて、カソード電極38bと電気的に接続され、カソード電極18b、38bとの導通が図られる。
【0072】
上記製造方法によって作製されたセラミックコンデンサ1Bは、第1実施形態において詳しく説明したセラミックコンデンサ1Aの効果に加え、内部電極を2段構成にしたことに伴う静電容量の増大が実現される。
【0073】
なお、第2実施形態における1段目の内部電極18c及び2段目の内部電極38cは、電極片19、39に接続されない。これらの内部電極18c、38cは、メッキ層18B、38の高さを全体に亘って均一に保つ嵩上げ部としての機能を有する。すなわち、これらの内部電極18c、38cが形成されない場合には、メッキ層18B、38の平坦性が悪化し、製造工程中におけるパターニング等の精度劣化を招いてしまう。特に、1段目の内部電極18cは、2段目の内部電極38a、38b、38cの平坦性を確保するため、予め形成しておくことが好ましい。
【0074】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、第1の実施形態で示したセラミックコンデンサが、絶縁層、第2の内部電極及び第2のセラミック誘電体を含む構造体をさらに備える第2実施形態のセラミックコンデンサを示したが、このような構造体を複数備える多層化されたセラミックコンデンサとする態様も可能である。それにより、内部電極の数及び表面積が増えるため、セラミックコンデンサの静電容量のさらなる増大が図られる。その作製時には、絶縁層、第2のシード層及び第2の厚膜マスク層を順次形成するステップ、第2の内部電極を形成するステップ、第2の厚膜マスクを除去するステップ及び第2のセラミック誘電体を充填するステップを複数回繰り返すこととなる。
【0075】
また、Niにより内部電極を形成するセラミックコンデンサの製造方法のみを示したが、その他のメッキ材料、例えば、Cu、Cr及びRuのいずれかで代用することもできる。