特許第5666809号(P5666809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディッケル マホ プロンテン ゲーエムベーハーの特許一覧

特許5666809加工品を機械加工するための工作機械および方法
<>
  • 特許5666809-加工品を機械加工するための工作機械および方法 図000002
  • 特許5666809-加工品を機械加工するための工作機械および方法 図000003
  • 特許5666809-加工品を機械加工するための工作機械および方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666809
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】加工品を機械加工するための工作機械および方法
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/12 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   B23F23/12
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-26270(P2010-26270)
(22)【出願日】2010年2月9日
(65)【公開番号】特開2010-188518(P2010-188518A)
(43)【公開日】2010年9月2日
【審査請求日】2013年1月9日
(31)【優先権主張番号】10 2009 008 120.8
(32)【優先日】2009年2月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506381599
【氏名又は名称】ディッケル マホ プロンテン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】ニューマイヤー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ロハビハラー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン ウヴェ‐カルステン
【審査官】 足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−111851(JP,A)
【文献】 特開2001−030112(JP,A)
【文献】 特開2003−236720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時に制御可能な少なくとも5本の軸を含み、加工品(200;300)をクランプするためのクランプ手段(120)と、1つ以上の工具(130)のうちの1つを支持するための支持手段(111)を有する制御手段(110)とを備え、制御手段(110)は、前記支持手段(111)内に支持された前記工具(130)を制御データにより工具パスに沿って制御し、前記クランプ手段(120)内にクランプされた加工品(200、300)から材料を除去するようになっている、制御データによって制御される1つ以上の工具(130)により加工品(200;300)を機械加工するための工作機械(100)であり、
前記工作機械(100)は、第1加工品(200)を機械加工し、前記第1加工品(200)に第1ギア(210)を設けるようになっており、前記第1加工品(200)は、第2ギア(310)を有する第2加工品(300)のカウンター部品であり、前記第1ギア(210)の第1の歯のフランクは、前記第2ギア(310)の第2の歯のフランクのうちの噛み合いフランクを形成し、
前記工作機械(100)は、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の現在の幾何学的形状、前記第1加工品(200)の前記ギア(210)の目標とする歯の幾何学的形状と異なるかどうかを、前記工作機械(100)上での前記第1加工品(200)の機械加工中および/またはその機械加工後に判断するようになっているテストシステムを更に備え
前記工作機械(100)の前記支持手段(111)は、前記第2加工品(300)を支持するとともに、前記工作機械(100)が、前記支持手段(111)内に支持された前記第2加工品(300)と前記クランプ手段(120)内にクランプされた前記第1加工品(200)との間の相互の関係を制御し、よって前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)と前記第2加工品(300)の前記第2ギア(310)とを噛合させ、前記第1ギア(210)の少なくとも1つの第1フランクと前記第2ギア(310)の少なくとも1つの第1噛み合いフランクとを協働させるようになっていることを特徴とする、工作機械。
【請求項2】
目標とするギアの幾何学的形状、仕上げられる第1加工品および/または第2加工品に付与されるギアの品質によって決定されることを特徴とする、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第1加工品(200)は、内歯を有する平ギア、外歯を有する平ギア、歯付きラックまたはベベルギアであり、前記第2加工品(300)は、内歯を有する平ギア、外歯を有する平ギア、歯付きラックまたはベベルギアであり、よって前記第2加工品(300)は、前記第1加工品(200)に対するカウンター部分となっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工作機械(100)の前記テストシステムは、検出要素(140)により、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の歯のフランクの側面を機械的にスキャニングすることにより、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の前記現在のギアの幾何学的形状と、前記第1加工品(200)の第1ギア(210)の目標とするギアの幾何学的形状とが、異なっているかどうかを判断するようになっている第1検出要素を備えることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工作機械(100)の前記テストシステムは、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の歯のフランクの側面を光学的に、および/または誘導的にスキャニングすることにより、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の前記現在の幾何学的形状と、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の前記目標とするギアの幾何学的形状、異なっているかどうかを判断するようになっている第2検出要素を備えることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記工作機械(100)の前記テストシステムは、前記第1ギア(210)の前記第1フランクと、前記第2ギア(310)の第1噛み合いフランクとの間の歯の接触パターンをスポッティングにより、判断するようになっている歯の接触パターン検出デバイスを備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第1または第2加工品(200;300)は歯付きラックであり、前記工作機械(100)は、前記支持手段(111)に支持された前記第2加工品(300)と前記クランプ手段(120)内にクランプされた前記第1加工品(200)との相互の関係を制御するための前記工作機械(100)の1本以上のリニア軸を制御するようになっていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項8】
前記第1加工品(200)および/または前記第2加工品(300)は、ギアホイールあり、前記工作機械(100)は、前記支持手段(111)に支持された前記第2加工品(300)と前記クランプ手段(120)内にクランプされた前記第1加工品(200)との相互の関係を制御するための前記工作機械(100)の1本以上の回転軸を制御するようになっていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項9】
前記第1加工品(200)は、ギアホイールあり、
前記工作機械(100)は、この工作機械(100)の前記クランプ手段(120)を回転駆動するようになっている第1回転軸により、前記第1加工品(200)の中心軸(M1)を中心として前記第1加工品(200)を回転駆動するようになっており、および/または前記工作機械(100)は、この工作機械(100)の前記支持手段(111)を回転駆動するようになっている第2回転軸により、前記第2加工品(300)の中心軸(M2)を中心として前記第2加工品(300)を更に回転駆動するようになっていることを特徴とする、請求項1,6,8のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)と前記第2加工品(300)の前記第2ギア(310)とが噛合し、少なくとも前記第1ギア(210)の第1フランクが前記第2ギア(310)の第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するように、前記第1加工品(200)と前記第2加工品(300)とが相互に制御される間、前記工作機械(100)の前記テストシステムは前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)の共通作動特性が前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)の目標とする作動特性と異なっているかどうかを判断するようになっている作動特性テスト手段を更に備えることを特徴とする、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記作動特性テスト手段は、1つ以上の音響検出器を備え、この作動特性テスト手段は、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)と前記第2加工品(300)の前記第2ギア(310)とが噛合し、少なくとも前記第1ギア(210)の第1フランクが前記第2ギア(310)の第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するように、前記第1加工品(200)と前記第2加工品(300)とが相互に制御される間、前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)が駆動されるときに生じる作動ノイズを、1つ以上の音響検出器により検出することにより、前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)の共通作動特性と前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)の目標とする作動特性とが異なるかどうかを判断するようになっていることを特徴とする、請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記作動特性テスト手段は、1つ以上の振動検出器を備え、この作動特性テスト手段は、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)と前記第2加工品(300)の前記第2ギア(310)とが噛合し、少なくとも前記第1ギア(210)の第1フランクが前記第2ギア(310)の第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するように、前記第1加工品(200)と前記第2加工品(300)とが相互に制御される間、前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)が駆動されるときに生じる振動を、1つ以上の振動センサにより検出することにより、前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)の共通作動特性と前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)の目標とする作動特性とが異なるかどうかを判断するようになっていることを特徴とする、請求項10または11に記載の工作機械。
【請求項13】
前記工作機械(100)上での前記第1加工品(200)の機械加工中、および/またはその後に、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の現在の幾何学的形状、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の目標とするギアの幾何学的形状が、異なることをテストシステムが検出したとき、前記工作機械は支持手段(111)により前記制御手段(110)内に支持されている工具(130)によって、前記工作機械上の前記クランプ手段にクランプされている前記第1加工品(200)を再機械加工するか、または仕上げるようになっていることを特徴とする、請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項14】
請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の工作機械(100)上で、制御データによって制御される1つ以上の工具により加工品を機械加工するための方法であって、
前記加工品(200)の前記第1ギア(210)の目標とするギアの幾何学的形状決定するステップと、
所定の目標とするギアの幾何学的形状により、第1ギア(210)を前記第1加工品(200)に設けるよう、前記工作機械(100)の前記クランプ手段(120)内にクランプされた第1加工品(200)を機械加工するステップとを備え、前記第1加工品(200)は、前記第1ギア(210)の前記第1の歯のフランクが前記第2ギア(310)の第2の歯のフランクの噛み合いフランクを形成するよう、第2ギア(310)を有する第2加工品(300)に対するカウンター部品となっている、加工品を機械加工するための方法において、
この方法は、
前記工作機械(100)上での前記第1加工品(200)の機械加工中、および/またはその後に、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の現在の幾何学的形状、第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の所定の目標とするギアの幾何学的形状が、異なっているかどうかを判断するステップと、
前記工作機械(100)の前記支持手段(111)内に、前記第2加工品を支持するステップと、
前記工作機械(100)が、前記支持手段(111)内に支持された前記第2加工品(300)と前記クランプ手段(120)内にクランプされた前記第1加工品(200)との相互の関係を制御し、よって前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)と前記第2加工品(300)の前記第2ギア(310)とを噛合させ、前記第1ギア(210)の少なくとも1つの第1フランクと前記第2ギア(310)の少なくとも1つの第1噛み合いフランクとを協働させるステップと、
を更に備えることを特徴とする、加工品を機械加工するための方法。
【請求項15】
前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の現在のギアの幾何学的形状と前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の前記目標とするギアの幾何学的形状とが異なるかどうかを判断するよう、検出要素(140)により前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の歯のフランクの側面を機械的にスキャニングするステップと
前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の現在のギアの幾何学的形状と前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の前記目標とするギアの幾何学的形状とが異なるかどうかを判断するよう、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の歯のフランクの側面を光学的にスキャニングするステップと、
前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の現在のギアの幾何学的形状と前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の前記目標とするギアの幾何学的形状とが異なるかどうかを判断するよう、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の歯のフランクの側面を誘導スキャニングするステップのうちの1つ以上のステップを特徴とする、請求項14に記載の、加工品を機械加工するための方法。
【請求項16】
スポッティングにより前記第1ギア(210)の前記第1フランクと前記第2ギア(310)の前記第1噛み合いフランクとの間の歯の接触パターンを決定するステップを特徴とする、請求項14または15に記載の、加工品を機械加工するための方法。
【請求項17】
前記工作機械(100)の前記支持手段(111)内に、前記第2加工品を支持するステップと、
前記支持手段(111)内に支持された前記第2加工品(300)と前記クランプ手段(120)内にクランプされた前記第1加工品(200)との相互の関係を制御し、よって前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)と前記第2加工品(300)の前記第2ギア(310)とを噛合させ、前記第1ギア(210)の少なくとも1つの第1フランクと前記第2ギア(310)の少なくとも1つの第1噛み合いフランクとをローリング状態で協働させるステップと、
前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)と前記第2加工品(300)の前記第2ギア(310)とが噛合し、少なくとも前記第1ギア(210)の第1フランクが前記第2ギア(310)の第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するように、前記第1加工品(200)と前記第2加工品(300)とが相互に制御される間、前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)の共通作動特性と前記第1加工品(200)および前記第2加工品(300)の目標とする作動特性とが異なるかどうかを判断するステップとを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の加工品を機械加工する方法。
【請求項18】
前記工作機械(100)上での前記第1加工品(200)の機械加工中、および/またはその後に、前記第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の現在の幾何学的形状第1加工品(200)の前記第1ギア(210)の所定の目標とするギアの幾何学的形状が、異なっていると判断された時に、前記工作機械(100)の前記クランプ手段(120)内にクランプされた前記第1加工品(200)を再機械加工するか、または仕上げるステップを特徴とする、請求項1417のうちのいずれか1項に記載の、加工品を機械加工する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御データにより制御される1つ以上の工具を使って加工品を機械加工するための工作機械および方法に関する。
【0002】
特に本発明は、少なくとも5本の同時に制御可能な軸を含み、加工品をクランプするためのクランプ手段と、1つ以上の工具のうちの1つを支持するための支持手段を有する制御手段とを備え、制御手段は、支持手段内に支持された工具を制御データにより工具パスに沿って制御し、クランプ手段内にクランプされた加工品から材料を除去するようになっている、制御データによって制御される1つ以上の工具により加工品を機械加工するための工作機械に関する。
【0003】
特に本発明は、第1加工品に第1ギアを提供するよう、特にブランクから第1ギアを有する仕上げ部品となるように加工品を機械加工するよう、加工品をプログラム制御で機械加工するための工作機械および方法に関し、この場合、第1加工品は、第1ギアの第1の歯のフランクが第2ギアの第2の歯のフランクの噛み合いフランクを形成するように第2ギアを有する第2加工品に対するカウンター部品となっている。
【0004】
特に本発明は、少なくとも5本の軸を含むプログラム制御された工作機械、特に少なくとも5本の軸を含むCNC工作機械で、ブランク(素材)から、ギア特にギアホイール、例えば内歯を有する平ギア、外歯を有する平ギアまたはベベルギア、更に歯付きラックを有する仕上げ部品となるように、工作機械上で1つ以上の加工品を製造するための工作機械および方法に関する。特に本発明は、CNC工作機械上で、ブランクを、ギアを有する仕上げ部品に完全に機械加工することに関する。
【背景技術】
【0005】
従来技術は、少なくとも5本の軸を含み、加工品から材料を除去するよう、空間内を通過する5の自由度で、工具の自由運動を可能にする、CNC制御された工作機械を開示している。ここで、5の運動自由度は、少なくとも3本のリニア軸によって制御できる、少なくとも3の空間自由度(従来は特にx軸、y軸およびz軸と称される3の直角方向に制御可能な空間自由度)と、任意の工具の配向を可能にする少なくとも2の回転角方向の自由度、すなわち回転自由度とを含む。ここで、回転角方向の自由度および回転自由度は、工作機械の2つ以上の回転軸により制御できる。
【0006】
少なくとも5本の軸を有する今日のCNC工作機械は、クランプされた加工品に対する、特に複雑で、かつ効率的な工具のパスを可能にするよう、5の自由度の同時制御を可能にしている。更に、従来技術は、3本のリニア軸および3本の回転軸を同時に制御できる6本の軸を有するCNC工作機械を開示している。
【0007】
上記CNC工作機械では、機械加工により複雑な幾何学的形状を有する仕上げ部品を効率的かつ精密に製造するための工具構造体がユニバーサルに使用されている。機械工学、特に造船工学、環境技術、(例えば風力発電プラントの場合の)航空工学および工作機製造において、出力が最も異なっている伝達装置も提供しなければならず、表面仕上げ、歯の接触パターンおよび作動特性および/またはローリング特性に対して求められる異なる要求に従って、上記伝達装置用のギアホイール、特に平ギアおよびベベルギアを製造しなければならない。ここで、多数の物品を得ることが必ずしも必要でないことが多いが、特に複雑なフランクの幾何学的形状および複雑な歯のフランクの形状を含む個々の幾何学的形状に関して、広い範囲のタイプに関して高いフレキシビリティを得なければならない。
【0008】
ギア、特にギアホイール、例えば平ギアまたはベベルギア、更に歯付きラックを有する仕上げ部品を製造するために、従来技術は、ギアホイール、例えば平ギアまたはベベルギアの歯のプロフィルを製造するための特殊な工具が設けられた特殊な工作機械を異なる実施形態で開示している。特に従来技術は、ギアホイールまたは歯付きラックのギアを製造するための特殊な機械として、ホブ工具によりホビング方法でギアを加工品に設けるようになっているホブ盤を開示している。
【0009】
かかる特殊な機械、特に上記ホブ盤は、購入およびメンテナンスに関してコスト集約的であり、個々のフランクのプロフィルの製造は、達成可能な、または製造可能な歯およびフランクの幾何学的形状を既にあらかじめ定めている、特殊工具の形状、例えばホブ盤のホブ工具のカッターの特殊形状によって限定されている。更に、上記特殊な機械でも、個々のフランクプロフィルの製造は、加工品と工具の間の可能な相対運動における自由度が限られていることによって制限されている。
【0010】
高度な表面仕上げを得るには、上記特殊な機械での、例えば追加された別の特殊な機械での機械加工の後でも、加工品を所望する場合に再機械加工するか、仕上げなければならない。
【0011】
ギアホイール、特に平ギアまたはベベルギア、もしくは歯付きラックを製造するための、上記特殊な機械、特にホブ盤の問題を解決するためには、少なくとも5本の軸を含むCNC制御式工作機械で、かかるギアホイール、特に平ギアまたはベベルギアを製造することが有効である。
【0012】
今日まで知られている特殊な機械での可能性を超える最も複雑な幾何学的形状、特に最も複雑なフランクのプロフィルが、少なくとも5の自由度で制御される工作機械の高いフレキシビリティおよび広範な応用範囲により、ギアホイール、例えば平ギアまたはベベルギアで可能になったので、このことによって、標準的な工具を使用し、これら仕上げ部品を製造できるようになっている。
【0013】
ハンス−ピーター・ショシヒ著の論文「良好な歯への容易な道−標準的工作機械での高品質のギアホイールのフライス加工」(雑誌:ベルクシュタットウントベトリープ、カールハンザ出版、ドイツ、ミュンヘン、2007年版、第4/28号、28〜32ページ、ISSN0043−2792で発表)には、少なくとも5本の軸を含む工作機械で、所定のギアホイールを製造するための、加工品を機械加工する方法が記載されている。
【0014】
この上記論文は、特にDIN3965に従ったギア品質6の表面仕上げを有するベベルギアのペアを製造するためのテスト作動における、5本の軸を含む工作機械によってギアホイールを製造するための方法について述べている。上記方法では、まずDIN規格によるギアのすべての必要なパラメータを最初に入力する。これらパラメータは、仕上げ部品の幾何学的形状の基本的幾何学的形状のパラメータに対応している。この目的のために、所定の、または必要な、歯の形状の場合の所望する歯の接触パターンに関する定量的データ、または個々の領域もしくは歯のフランク全体にわたるか、歯のフランクのプロフィル全体にわたる所望する凸度に関する別のデータ、または曲率に関する別のデータも入力することができる。ここで、実際に機械加工する前にギアの目標とする幾何学的形状、特に所望する歯のフランクの幾何学的形状および/または所望する歯のギャップの幾何学的形状が与えられるか、または決定される。
【0015】
これら基本的な幾何学的形状のパラメータは、コンピュータのターミナルでタイプ入力され、次に数学的計算および/または数値計算により、コンピュータ内で所望する歯の幾何学的形状が数学的に記述される。コンピュータの計算結果に基づき、CAD/CAMシステムにより、NCプログラムが発生され、このプログラムに基づき、5軸工作機械は標準的工具、特に公知のエンドフライスを用いて、所望する仕上げ部品を製造できる。国際特許出願第WO2008/133517A1号にも同様な方法が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
少なくとも5本の軸を含む工作機械での、かかるギアを有する仕上げ部品のための上記製造方法、特にギアホイールの製造方法には、工作機械での機械加工後に、所定のギアの品質、所望する表面仕上げ、所望する歯のフランクの幾何学的形状、所望する歯のギャップの幾何学的形状、特に所望する歯のフランクのプロフィルおよび/または別の所定の品質の条件が得られているかどうか、またはCNC工作機械で実行される機械加工によって満たすことができるかどうかを判断しなければならないという問題がある。
【0017】
この目的のためには、CNC工作機械での機械加工の作業後、工作機械のクランプ手段から機械加工された加工品をアンクランプ(クランプを解除)し、その後、テストシステムにおいて上記所定の品質の条件が得られているか、または満たされているかどうかをチェックしなければならない。CNC工作機械で行われた機械加工作業で、所望する目標のギアの幾何学的形状が得られなかったことが判明した場合、別の工作機械で加工品を再機械加工したり、仕上げたりしなければならないか、または加工品をCNC工作機械に再びクランプした後に再度機械加工しなければならない。
【0018】
従って、本発明の目的は、少なくとも5本の軸を含む工作機械で制御データによって制御される1つ以上の工具を用いて加工品を機械加工し、更にギアを有する仕上げ部品の製造のための上記方法の問題を解消するための工作機械を提供することにある。
【0019】
本発明の更に別の目的は、別の工作機械での品質検査を不要にし、特に再機械加工または仕上げ作業のために、製造すべき加工品の時間のかかるクランプ作業およびアンクランプ作業を解消するよう、特に品質検査に関して製造方法を最適にすることにより、上記従来の方法と比較して、少なくとも5本の軸を含む工作機械でのギアを有する仕上げ部品の製造を最適にする、制御データによって制御される1つ以上の工具を使用し、ギアを有する加工品を機械加工するための工作機械および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の上記目的は、請求項1記載の同時に制御可能な少なくとも5本の軸を有する加工品を機械加工するための工作機械および請求項16記載の工作機械により加工品を機械加工するための方法によって達成される。従属項には好ましい実施形態が記載されている。
【0021】
本発明に従い、制御データによって制御される1つ以上の工具により加工品を機械加工するための、特にプログラム制御式機械加工するための、本発明に係わる工作機械は、同時に制御可能な少なくとも5本の軸を含み、更に加工品をクランプするためのクランプ手段と、工作機械の1つ以上の工具のうちの1つを支持するための支持手段を有する制御手段とを備え、制御手段は、支持手段内に支持された工具を制御データにより工具パスに沿って制御し、クランプ手段内にクランプされた加工品から材料を除去するようになっている。
【0022】
本発明によれば、工作機械は、第1加工品を機械加工し、第1加工品に第1ギアを設けるようになっており、第1加工品は、第2ギアを有する第2加工品のカウンター部品であり、第1ギアの第1の歯のフランクは、第2ギアの第2の歯のフランクのうちの噛み合いフランクを形成するようになっている。
【0023】
本発明に係わる工作機械は、第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状、特に現在の歯のフランクの幾何学的形状および/または現在の歯のギャップの幾何学的形状が、第1加工品のギャップの目標とする歯のフランクの幾何学的形状および/または目標とする歯のギャップの幾何学的形状と異なるかどうかを、工作機械上での第1加工品の機械加工中および/またはその機械加工後に判断するようになっているテストシステムを更に備えることを特徴とする。
【0024】
このことによって、第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状、すなわちテストシステムによる検査中にそのときに機械加工状態にある現在の幾何学的形状、特に少なくとも1つの歯のフランクの、または少なくとも2つの歯のフランクの間の、この作動状態に属す現在の歯のフランクの幾何学的形状および/または現在の歯のギャップの幾何学的形状と、第1加工品の第1ギアの、工作機械で機械加工作業を受け、特に機械加工作業前にあらかじめ決定された所望する目標のギアの幾何学的形状とが、異なるかどうかを、工作機械上での第1加工品の機械加工作業中、および/または機械加工作業後に特に決定するようになっているという利点が得られる。
【0025】
あらかじめ決定される目標とするギアの幾何学的形状は、例えば与えられるギアのタイプ、例えば直線ギア、ヘリカルギア、ダブルヘリカルギアまたはヘリンボーンギア、円弧ギア、スパイラルギア、インボリュートギアまたは別のギアの形状を指定することが好ましい。更に、あらかじめ決定される目標とするギアの幾何学的形状は、例えば製造すべき仕上げ部品のあらかじめ決定された歯のフランクのプロフィルを定めるパラメータ値、特に例えば歯の幅、歯の高さ、凸度および/または歯のフランクのあらかじめ決定された曲率、例えばインボリュート歯の形状、トロコイド状歯の形状、または別の歯の形状に関するパラメータを示すことが好ましい。
【0026】
少なくとも5本の軸を含むCNC工作機械では、工具制御において好ましく与えられるフレキシビリティを考慮し、少なくとも5の自由度で、ほとんどの任意の自由フォームの表面を製造できる。従って、あらかじめ決定される目標とするギアの幾何学的形状が、この目的のために、例えば歯のフランクの表面の数学的記述も含むことができるので、任意の歯のフランクを有するギア歯の製造が可能である。
【0027】
本発明は、好ましくは工作機械のクランプ手段内のクランプ位置から加工品をアンクランプすることなく、工作機械での機械加工作業中および/または機械加工作業後に、加工品および/または加工品の現在のギアの幾何学的形状を決定できるようにするテストシステムを更に含む工作機械を提供するものである。従って、本発明は、達成されるギアの形状の質をチェックするのに別の工作機械を使用する必要がないように、加工品の機械加工があらかじめ決定された目標のギアの幾何学的形状からの偏差の検査および質の検査を更に可能にするような工作機械を提供できる。
【0028】
仕上げられた第1加工品および/または第2加工品に対して付与されるギアの品質、特に所定の表面仕上げにより、第1加工品の第1ギアの上記目標とするギアの幾何学的形状、特に目標とする歯のフランクの幾何学的形状および/または目標とする歯のギャップの幾何学的形状、および所望する場合に第2の加工品の第2ギアの対応する目標とするギアの幾何学的形状を、決定することも好ましい。
【0029】
このことによって、工作機械での加工品、特にギア歯の機械加工作業で得るべき、あらかじめ決定された目標とするギアの幾何学的形状が、あらかじめ決定されたギアの品質、特に歯のフランクのあらかじめ決定された表面仕上げにより、自ら正しく定まり、あらかじめ決定された目標とするギアの幾何学的形状からの、第1加工品の第1ギアの現在のあらかじめ決定されたギアの幾何学的形状の検出された偏差により、工作機械のクランプ手段にクランプされた第1加工品および/または第1加工品の第1ギアが、現在の機械加工の状態において、達成すべきギアの幾何学的形状、特に達成すべきギアの質または表面の仕上げに関する条件を満たしているかどうか、または所望するギアの質または表面仕上げを得るのに、所望する場合にプログラム制御により、好ましくは、工作機械で加工品を再機械加工する必要が好ましいかどうかを判断できるという利点が得られる。
【0030】
工作機械で行われた機械加工の後の、特に仕上げられた状態にある第1加工品は、好ましくは、内歯を有する平ギア、外歯を有する平ギア、歯付きラックまたはベベルギアであり、特に工作機械上で行われた機械加工により仕上げられた状態にある第2加工品は、好ましくは、内歯を有する平ギア、外歯を有する平ギア、歯付きラックまたはベベルギアであり、よって好ましくは、第2加工品は、第1加工品に対するカウンター部分となっている。
【0031】
これによって、内歯を有する平ギア、外歯を有する平ギア、歯付きラックまたはベベルギアを工作機械で製造でき、これらギアは、所望する場合に第1加工品の機械加工作業前、機械加工作業中、または機械加工後に、工作機械で所望する場合に製造できる、内歯を有する平ギア、外歯を有する平ギア、歯付きラックまたはベベルギアとすることができる第2加工品と共に、ギアのペア、すなわちギアホイールのペアを形成できるという利点が得られる。
【0032】
工作機械のテストシステムは、検出要素により、第1加工品の第1ギアの歯のフランクの側面を機械的にスキャニングすることにより、第1加工品の第1ギアの現在のギアの幾何学的形状と、第1加工品の第1ギアの目標とするギアの幾何学的形状とが、異なっているかどうかを判断するかまたは検出するようになっている第1検出要素を備えることが好ましい。
【0033】
これによって、検出要素を使用した機械式スキャニングにより、現在存在するギアの幾何学的形状を判断し、この幾何学的形状と第1ギアのあらかじめ決定された目標とするギアの幾何学的形状とを比較するよう、検出要素により第1加工品の第1ギアの歯のフランクの側面の機械的スキャニングが可能となる。従って、生じ得る偏差を決定または検出できる。この目的のために、検出要素は機械的スキャニングにより第1ギアの1つ以上の歯のフランクの側面の現在の幾何学的形状を決定できるよう、加工品に対する異なる回転角方向位置で、加工品をスキャニングするようになっていることが好ましい。ここで、この検出要素は、第1ギアの歯のフランクの側面の機械的スキャニングのために、制御デバイスにより、検出要素を制御できるよう、工作機械の加工品と同じように、工作機械の制御装置の支持手段に支持されるようになっていることが好ましい。従って、工作機械の少なくとも5本の軸により、クランプされた加工品に対して5の自由度で、工作機械の工具と同じように、検出要素も制御できる。
【0034】
工作機械のテストシステムは、第1加工品の第1ギアの歯のフランクの側面を光学的に、および/または誘導的にスキャニングすることにより、第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状と、第1加工品の第1ギアの目標とするギアの幾何学的形状、特に目標とする歯のフランクの幾何学的形状および/または目標とする歯のギャップの幾何学的形状とが、異なっているかどうかを判断するかまたは検出するようになっている第2検出要素を備えることが好ましい。
【0035】
このことは、歯のフランクの側面の上記機械的スキャニングの他に、またはそれに加え、第1ギアの歯のフランクの側面の光学的スキャニングおよび/または電磁誘導的スキャニングにより、第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状を決定するようになっている第2検出要素を設けるという別の方法により、第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状を決定できるという利点が得られる。ここで、工作機械の光学的スキャニング手段により、加工品に対し、好ましくは回転角方向のいくつかの位置にて、1本以上のレーザービームにより、歯のフランクの側面の光学的スキャニングを任意で行うことができる。ここで、光学的スキャニングなる用語は、可視波長レンジに限定されると解してはならない。
【0036】
工作機械の支持手段は、第2加工品も支持するようになっていることが好ましい。
【0037】
これによって、工作機械の1つ以上の工具、上記検出要素または他の工具の支持と共に、第2加工品の支持を可能にする支持手段を、工作機械の制御装置に含む工作機械を提供できるという利点が得られ、この場合、第2加工品は、上記のように、外歯を有する平ギア、内歯を有する平ギア、歯付きラックまたはベベルギアであることが好ましい。従って、工作機械のクランプ手段だけでなく、制御装置の支持手段でも、加工品を工作機械で支持することが可能となり、所望する場合に工作機械の少なくとも5本の軸の1つ以上により、工作機械の制御装置によって加工品を制御することが可能である。
【0038】
工作機械は、第1加工品の第1ギアと第2加工品の第2ギアとが噛合し、第1ギアの少なくとも1つの第1フランクと第2ギアの少なくとも1つの第1噛合フランクとが協働するように、支持手段に支持されている第2加工品およびクランプ手段にクランプされている第1加工品を相互に制御するようになっていることが好ましい。
【0039】
これによって、工作機械は特に、ギアのペアを構成する第1加工品および第2加工品を互いに制御し、第1加工品の第1ギアの歯と第2加工品の第2ギアの歯とを、それぞれ選択されたギア形状に従って互いに噛合させ、よって第1ギアの第1フランクと第2ギアの少なくとも1つの第1噛合フランクとを協働させるようになっているという利点が得られる。このことは、第1加工品と第2加工品のその後の所望する場合に作動時に、ギアのペアとして生じるか、または生じなければならない第1加工品と第2加工品との係合を確立するように働く。
【0040】
工作機械のテストシステムは、第1ギアの第1フランクと、第2ギアの第1噛み合いフランクとの間の歯の接触パターンをスポッティングにより、判断するようになっている歯の接触パターン検出デバイスを備えることが好ましい。
【0041】
これによって工作機械のクランプ手段および工作機械の制御装置の支持手段内に各々がクランプされている第1加工品と第2加工品とを係合させ、スポッティングにより第1ギアの第1フランクと第2ギアの第1噛み合いフランクとの間の歯の接触パターンを検出できるという利点が得られる。ここで、歯の接触パターン検出装置は、第1ギアの第1フランクと第2ギアの第1噛み合いフランクとが協働したときに、第1フランクからのペイントが第1噛み合いフランクに移されるか、または第1噛み合いフランクから第1フランクへ移されるように、第1ギアおよび第2ギアのうちの少なくとも1つのギアへのペイントの塗布を可能にするような手段を含むことが好ましく、この歯の接触パターン検出装置は更に、光学的検出により、特に第1噛み合いフランクと第1フランクとが協働するときにペイントが移される第1フランクまたは第1噛み合いフランクの表面の光学的検出により、歯の接触パターンを決定するようになっている手段も含むことが好ましい。
【0042】
これによって工作機械は、工作機械上の歯の接触パターン、特に工作機械で実行される機械加工作業の後および/または機械加工作業中の第1加工品のギアの現在の幾何学的形状に従う歯の接触パターンを所望する場合に自動的に検出できる、歯の接触パターン検出装置を特に提供できるという利点が得られる。従って、現在のギアの歯の接触パターンを検出するために、所望する場合にマニュアルまたは外部の工作機械にて、歯の接触パターンを決定するよう、工作機械のクランプ手段から第1加工品をアンクランプする必要はない。
【0043】
第1加工品または第2加工品が歯付きラックである場合、工作機械は支持手段内に支持された第1加工品とクランプ手段内にクランプされた第1加工品を互いに制御するよう、工作機械の1本以上のリニア軸を制御するようになっていることが好ましい。
【0044】
これによって、第1加工品または第2加工品の実際の移動は、工作機械の少なくとも1つまたはそれ以上のリニア軸、および所望する場合に工作機械の1本以上の回転軸によって行われるので、特に歯が噛み合うときに第1加工品と第2加工品とを互いに制御できるという利点が得られる。この場合において、第1加工品または第2加工品が歯付きラックである場合、カウンター部品は、外歯を有する平ギア、ベベルギア、特に中心軸を中心として工作機械の回転軸により回転駆動できることが好ましいピニオンとなる。
【0045】
第1加工品および/または第2加工品が、ギアホイール、特にベベルギアまたは平ギアである場合、工作機械は、支持手段に支持された第2加工品とクランプ手段内にクランプされた第1加工品との相互の関係を制御するための工作機械の1本以上の回転軸を制御するようになっていることが好ましい。
【0046】
これによって、歯が噛み合うときに第1加工品と第2加工品とを互いに制御できるという利点が得られる。第1加工品および/または第2加工品がギアホイールである場合、工作機械は好ましくはギアホイールの中心軸を中心として、工作機械の回転軸の少なくとも1つにより、ギアホイールを駆動するようになっている。第1加工品と第2加工品とが1つのギアホイールのペアを形成するように、第1加工品と第2加工品の双方がギアである場合、工作機械は第1加工品と第2加工品を係合するギアホイールのペアとして駆動するようになっていることが好ましく、各ケースにおいて、それぞれの第1加工品および第2加工品は、ギアホイールのそれぞれの中心軸を中心として回転軸により駆動されることが好ましい。
【0047】
第1加工品が、ギアホイール、特にベベルギアまたは平ギアであり、第2加工品が、ギアホイール、特にベベルギアまたは平ギアである場合、工作機械は、この工作機械のクランプ手段を回転駆動するようになっている第1回転軸により、好ましくは、第1加工品の中心軸を中心として第1加工品を回転駆動するようになっており、工作機械は、この工作機械の支持手段を回転駆動するようになっている第2回転軸により、好ましくは、第2加工品の中心軸を中心として第2加工品を更に回転駆動するようにもなっていることが好ましい。
【0048】
これによって、ギアホイールペアのその後の作動のためにあらかじめ決定されるか、または所望するように、ギアホイールペアの歯が噛み合うときに、工作機械はギアホイールペアを駆動するようになっているという利点が得られる。従って、工作機械の少なくとも5本の軸が、ギアホイールの間、特にギアホイールと対応するピニオンの間の回転張力を、所望する場合に工作機械のNC機能により調節できるよう、ギアホイールペアの相互の正確な位置決めの制御を可能にできるので、ギアホイールのそれぞれの中心軸を中心として工作機械の回転軸によりギアホイールの各々を回転駆動できる。従って、NC回転テーブル、NC部分装置または完全一体化NCクランプ装置によりギアホイールを駆動でき、工作機械のワークスピンドルを介し、特に工作機械の制御装置内のワークスピンドルを介し、他のギアホイールを更に駆動できるので、工作機械のNC5軸を介し、ギアホイールペアのうちのギアホイールの相互の位置、特にギアホイールと対応するピニオンとの相互の位置を調節することができる。
【0049】
第1加工品の第1ギアと第2加工品の第2ギアとが噛合し、好ましくは、少なくとも第1ギアの第1フランクが第2ギアの第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するように、第1加工品と第2加工品とが好ましくは、相互に制御される間、工作機械のテストシステムは、第1加工品および第2加工品の共通作動特性が第1加工品および第2加工品の目標とする作動特性と異なっているかどうかを判断するようになっている作動特性テスト手段を更に備えることが好ましい。
【0050】
これにより、ギアペアの歯が噛み合う間に、第1加工品と第2加工品とが駆動されるときに、ギアペアの作動特性をチェックまたは決定できるという利点が得られる。従って、工作機械のクランプ手段内に第1加工品がクランプされており、工作機械の制御装置の支持手段内に第2加工品がクランプされているときに、機械加工すべき第1加工品を工作機械のクランプ手段からアンクランプしなくても、工作機械上でギアペアの作動特性をチェックまたは決定できる。
【0051】
作動特性テスト手段は、1つ以上の音響検出器を備えることが好ましく、この作動特性テスト手段は、第1加工品の第1ギアと第2加工品の第2ギアとが噛合し、好ましくは、少なくとも第1ギアの第1フランクが第2ギアの第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するように、好ましくは、第1加工品と第2加工品とが相互に制御される間、第1加工品および第2加工品が駆動されるときに生じる作動ノイズを、好ましくは、1つ以上の音響検出器により検出することにより、第1加工品および第2加工品の共通作動特性と第1加工品および第2加工品の目標とする作動特性とが異なるかどうかを判断するようになっていることが好ましい。
【0052】
このことによって、工作機械は作動特性テスト手段を含むという利点を提供でき、この作動特性テスト手段は、第1加工品の第1ギアの第1フランクとギアのペアのその後の作動時に設けられる第2加工品の第2ギアの第1噛み合いフランクとがローリング状態で協働するように、歯が係合状態にあるギアのペアとして第1加工品と第2加工品を制御できるときに生じる作動ノイズを特に検出または記録することによって、第1加工品が工作機械にクランプされているときにギアペアの作動特性を決定できるよう、工作機械の制御装置の、特に1つ以上の音響検出器、所望する場合に好ましくは制御装置のワークスピンドルおよび/または支持手段上の少なくとも1つの音響検出器を有する。これによって、ギアペアの作動特性の検査またはギアペアの作動ノイズのテストを工作機械で決定できるという利点が得られる。
【0053】
作動特性テスト手段は、1つ以上の振動検出器を備えることが好ましく、この作動特性テスト手段は、第1加工品の第1ギアと第2加工品の第2ギアとが噛合し、好ましくは、少なくとも第1ギアの第1フランクが第2ギアの第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するように、好ましくは、第1加工品と第2加工品とが相互に制御される間、第1加工品および第2加工品が駆動されるときに生じる振動を、好ましくは、1つ以上の振動センサにより検出することにより、第1加工品および第2加工品の共通作動特性と第1加工品および第2加工品の目標とする作動特性とが異なるかどうかを判断するようになっていることが好ましい。
【0054】
これによって、音響検出器による作動特性の決定の代わりに、またはその決定の他に、振動、特に歯が噛み合っているときに第1加工品と第2加工品を相互に制御する間、噛み合いフランク上のフランクの作動特性またはローリング特性から生じる振動を、1つ以上の振動センサによって検出することにより、ギアペアの作動特性を検出することも可能である。
【0055】
第1加工品および第2加工品の双方の作動特性の上記テストにより、作動特性または作動ノイズのノイズレベルが所望する場合に時々目標とするギアの幾何学的形状に対応するノイズレベルを上回ったとき、または目標とするギアの幾何学的形状に従ったフランク形状が得られていないか、またはまだ得られていないことを示す振動が発見されたときに、目標とするギアの幾何学的形状からの変位の検出が全体として可能となる。
【0056】
この工作機械は、好ましくは第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状、特に現在の歯のフランクの幾何学的形状および/または現在の歯のギャップの幾何学的形状が、第1加工品の第1ギアの目標とするギアの幾何学的形状、特に目標とする歯のフランクの幾何学的形状および/または目標とする歯のギャップの幾何学的形状と異なることを、工作機械での第1加工品の機械加工作業後および/または機械加工作業中にテストシステムが検出したときに、支持手段により、工作機械の上のクランプ手段にクランプされている第1加工品を制御手段内に保持されている工具により、再機械加工するようになっていることが好ましい。
【0057】
これによって、所定の目標とするギアの幾何学的形状からの現在のギアの幾何学的形状の偏差が決定されたときに、第1加工品をクランプしたり、アンクランプしなくても、クランプ手段内にクランプされている第1加工品を工作機械が再機械加工できるという利点が得られる。
【0058】
従って、工作機械は、この工作機械上の加工品を、ブランクから仕上がった部品に機械加工することにより、ギアを有する加工品の完全な機械加工作業をすることが可能となっており、この完全な機械加工は所望する場合に予備的製造を含み、第1加工品に歯の形状を設けることを更に含む。この工作機械は、工作機械での第1加工品の機械加工作業中および/または機械加工作業後に、加工品の必要なクランプまたはアンクランプを行わなくても、目標とするギアの幾何学的形状による歯の形状のテストを実行し、更に所望する場合に、希望する表面仕上げ、希望するギアの質、特に希望する目標のギアの幾何学的形状を得るための再機械加工作業を所望する場合に実行するようになっている。ここで特に、第1加工品の第1ギアの現在のギアの幾何学的形状が、希望する目標のギアの幾何学的形状に対応していることが分かった場合、または現在のギアの幾何学的形状と目標とするギアの幾何学的形状との間の偏差が所定の最大偏差値を下回っていることが検出された場合、このことは第1加工品または第1加工品上の第1ギアが目標とするギアの幾何学的形状により求められている条件に対応することを示す。
【0059】
本発明によれば、上記のように工作機械上で、制御データによって制御される1つ以上の工具により加工品を機械加工するための本発明の方法は、
加工品の第1ギアの目標とするギアの幾何学的形状、特に目標とする歯のフランクの幾何学的形状および/または目標とする歯のギャップの幾何学的形状を決定するステップと、
所定の目標とするギアの幾何学的形状により、第1ギアを第1加工品に設けるよう、工作機械のクランプ手段内にクランプされた第1加工品を機械加工するステップとを備え、第1加工品は、第1ギアの第1の歯のフランクが第2ギアの第2の歯のフランクの噛み合いフランクを形成するよう、第2ギアを有する第2加工品に対するカウンター部品となっている。
【0060】
本発明に係わるこの方法は、
工作機械上での第1加工品の機械加工中、および/またはその後に、第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状、特に現在の歯のフランクの幾何学的形状および/または現在の歯のギャップの幾何学的形状と、第1加工品の第1ギアの所定の目標とするギアの幾何学的形状、特に目標とする歯のフランクの幾何学的形状および/または目標とする歯のギャップの幾何学的形状とが、異なっているかどうかを判断するステップを更に備えることを特に特徴とする。
【0061】
更に本発明に係わる方法は、
第1加工品の第1ギアの現在のギアの幾何学的形状と第1加工品の第1ギアの目標とするギアの幾何学的形状とが異なるかどうかを判断するよう、検出要素により第1加工品の第1ギアの歯のフランクの側面を機械的にスキャニングするステップと、
第1加工品の第1ギアの現在のギアの幾何学的形状と第1加工品の第1ギアの目標とするギアの幾何学的形状とが異なるかどうかを判断するよう、第1加工品の第1ギアの歯のフランクの側面を光学的にスキャニングするステップと、
第1加工品の第1ギアの現在のギアの幾何学的形状と第1加工品の第1ギアの目標とするギアの幾何学的形状とが異なるかどうかを判断するよう、第1加工品の第1ギアの歯のフランクの側面を誘導スキャニングするステップのうちの1つ以上を含むことも好ましい。
【0062】
更に本発明に係わる方法は、
好ましくは工作機械の支持手段内に、第2加工品を支持するステップと、
支持手段内に支持された第2加工品とクランプ手段内にクランプされた第1加工品との好ましくは、相互の関係を制御し、よって第1加工品の第1ギアと第2加工品の第2ギアとを好ましくは、噛合させ、好ましくは第1ギアの少なくとも1つの第1フランクと第2ギアの少なくとも1つの第1噛み合いフランクとを協働させるステップと、
好ましくは、スポッティングにより第1ギアの第1フランクと第2ギアの第1噛み合いフランクとの間の歯の接触パターンを決定するステップとを含むことが好ましい。
【0063】
更に本方法は、
好ましくは、工作機械の支持手段内に第2加工品を支持するステップと、
支持手段内に支持された第2加工品とクランプ手段内にクランプされた第1加工品との好ましくは、相互の関係を制御し、よって第1加工品の第1ギアと第2加工品の第2ギアとを好ましくは、噛合させ、好ましくは、第1ギアの少なくとも1つの第1フランクと第2ギアの少なくとも1つの第1噛み合いフランクとをローリング状態で協働させるステップと、
第1加工品の第1ギアと第2加工品の第2ギアとが好ましくは、噛合し、少なくとも第1ギアの第1フランクが第2ギアの第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するように、好ましくは、第1加工品と第2加工品とが相互に制御される間、第1加工品および第2加工品の共通作動特性と第1加工品および第2加工品の目標とする作動特性とが異なるかどうかを判断するステップとを含むことが好ましい。
【0064】
更に本方法は、
好ましくは、工作機械上での第1加工品の機械加工中、および/またはその後に、第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状、特に現在の歯のフランクの幾何学的形状および/または現在の歯のギャップの幾何学的形状と第1加工品の第1ギアの所定の目標とするギアの幾何学的形状、特に目標とする歯のフランクの幾何学的形状および/または目標とする歯のギャップの幾何学的形状とが、異なっていると判断された時に、好ましくは、工作機械のクランプ手段内にクランプされた第1加工品を再機械加工するか、または仕上げるステップを含む。
【0065】
このように、第1加工品の必要なクランプまたはアンクランプを行うことなく、加工品上で現在のギアの幾何学的形状の品質検査を含み、更に現在のギアの幾何学的形状が所定の目標とするギアの幾何学的形状と異なることが検出されたときに、可能な再機械加工をすることを含み、特に第1加工品での第1ギアの仕上げを工作機械で実行される機械加工作業が可能にする、本発明に係わる工作機械での、第1加工品の完全な機械加工をするための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明の一実施例に係わる第1加工品を機械加工するための工作機械を示す。
【0067】
図2】本発明の一実施例に係わる第1加工品を機械加工するための工作機械を示す。
【0068】
図3】本発明の一実施例に係わる第1加工品を機械加工するための工作機械を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、図面により、少なくとも5本の軸を含む、制御データにより制御される1つ以上の工具を使用し、加工品を機械加工するための工作機械の実施形態により、本発明について詳細に記載し、説明し、更にかかる工作機械で加工品を機械加工するための本発明に係わる方法の対応する実施形態についても説明する。
【0070】
図1には、略図により、少なくとも5本の軸を含む工作機械100の第1実施形態が示されている。この工作機械100は、支持手段111を有する制御装置110を備える。制御装置110の支持手段111は、工作機械100の工具130を支持するようになっている。ここで、支持手段111を有する制御装置110は、工具130の回転軸を中心として工具130が回転するように、工作機械100の工具130を駆動し、機械加工により工作機械100内で機械加工すべき加工品200から材料を除去するようになっている。この目的のために、工作機械100は、制御装置110により、あらかじめ決定された工具パスに沿って工具130を制御データに従って移動させることにより、加工品200から材料を特に除去するようになっている。
【0071】
更に、この工作機械100は、加工品200を制御することにより、制御装置110によって加工品200を機械加工できるように、機械加工すべき加工品200を工作機械100へクランプするようになっているクランプ手段120を備える。この目的のために、本発明のこの実施形態に係わるクランプ手段120は、クランプ手段120内にクランプされた加工品200を、工作機械100の回転軸を介して加工品200の中心軸線Mを中心として少なくとも回転駆動するようになっている。
【0072】
一般に、本発明のこの実施形態に係わる工作機械は、少なくとも5本の軸を含む工作機械であるが、この工作機械100は、工作機械100の少なくとも5本の軸により、少なくとも5の運動自由度で、加工品200に対して工具130を同時に制御するようになっている。ここで、駆動は工作機械100の5本の軸、特に少なくとも3本のリニア軸と少なくとも2本の回転軸を介して少なくとも実行される。
【0073】
図1に示された加工品200は、クランプ手段120内にクランプされた第1加工品200となっており、本発明のこの実施形態に係わる第1加工品は、特に工作機械100上でブランクから仕上げ部品に機械加工すべき加工品となっており、工作機械100(およびそれに対応して説明する方法)のこの実施形態によれば、工作機械100上での仕上げ工程の後の目標とする仕上げ部品は、仕上げ部品としてのベベルギアとなっており、図1に示された第1加工品200は、現在仕上がっている状態か、または機械加工状態にある加工品であり、この状態ではその後のベベルギアの頂部部分に対応する基本的本体だけがクランプ手段120内にクランプされている。図1では、第1加工品200は、工作機械100上のブランクから所望する場合に既に製造されているものか、または機械加工されたものとなっている。
【0074】
工作機械100内で希望する場合に自動的またはプログラム制御された工具の交換の後に、制御装置110によって制御される工具130および希望する場合には別の工具により、あらかじめ決定された目標とするギアの幾何学的形状に従って、加工品200に対してギア、特に第1ギアを形成するよう、工作機械100上で第1加工品200を機械加工する。
【0075】
特に工具130と第1加工品200との間の制御可能な5の相対運動自由度を考慮すると、工作機械100上で任意の複雑なギア形状、特に任意の歯のフランクの幾何学的形状および歯のギャップの幾何学的形状を有する第1加工品200を、機械加工によって提供することが可能である。
【0076】
特に、プログラム制御されているCNC工作機械100での加工品200に対する工具を高いフレキシビリティで制御できることにより、希望する場合に自動化された、プログラム制御された工具の交換、および/または自動化された、プログラム制御された加工品の変更をしながら、ギアを有する加工品、特に内歯および/または外歯、歯付きラックを有する平ギアまたはベベルギアの自動化され、プログラム制御された製造が可能となっている。
【0077】
図2には、略図により、本発明の一実施形態が示されている。図2は、支持手段111を有する制御装置110を含む工作機械100を示しており、この工作機械100は、図1の工作機械100と同じようにクランプ手段120を更に含み、このクランプ手段には、第1ギア210を有する第1加工品200がクランプされている。例えば、図2内の第1加工品200は、工具130により図1の加工品200を機械加工した後の図1の加工品200となっている。クランプ手段120は、第1ギア210を含む第1加工品200を軸Mにより示される第1加工品200の中心軸を中心として回転駆動するようになっている。第1加工品200の中心軸Mは、例えば図2でベベルギアとなっている第1加工品200がその後の作動で回転するときの回転軸に対応し、よってベベルギアの歯が対応する噛み合いギアホイールの歯と噛み合うときに、第1ギア210に対して噛み合いするギアを有する仕上げ部品、例えばベベルギアに対する噛み合いギアホイールと協働するようになっている。
【0078】
図2において、工作機械100の支持手段111には検出要素140が支持されている。この検出要素140は、第1加工品200に対する異なる回転角位置にある表面の任意の数ポイントで機械的スキャニングすることにより、第1加工品200の表面を測定するようになっている。特にこの検出要素140は、異なる回転角位置において、制御装置110による適当な制御により、図2に示された現在の機械加工状態にある第1加工品200の第1ギア210の1つ以上のフランクまたはフランクの側面を機械的にスキャニングし、第1ギア210の現在のギアの幾何学的形状、特に歯のフランクまたは歯のギャップの幾何学的形状が、径方向に所望する歯のフランクコースを有する歯のフランクの必要な凸部または必要な曲率に一致するか、または現在のギアの幾何学的形状が所定の目標とするギアの幾何学的形状と異なるかどうかを判断する。この目的のために、検出要素140は、工作機械100を少なくとも5本の軸、特に少なくとも3本のリニア軸および少なくとも2本の回転軸のうちの1本以上を介して、制御装置110および/またはクランプ手段120を駆動し、工作機械100上の検出要素140に対し、第1加工品200を制御することによって、異なる回転角方向の位置にて第1加工品200の表面をスキャニングできるようになっている。
【0079】
従って、工作機械100は、第1加工品200の第1ギア210の現在の幾何学的形状が、目標とする所定のギアの幾何学的形状と異なっているかどうかを判断するようになっているテストシステムを備える。この実施例では、工作機械100上で第1加工品200を機械加工している間、および/またはその後に、第1加工品200の現在の機械加工状態にあるそのときのギアの幾何学的形状が、所定の目標とするギアの幾何学的形状に対応しているのか、異なっているのかを、検出要素140を使用した機械的スキャニングによりチェックまたは判断することが可能となっている。
【0080】
しかしながら、本発明は、検出要素140を使った機械的スキャニングによる現在のギアの幾何学的形状を検出することだけに限定されず、加工品の第1ギアの歯のフランクの側面の光学的または誘導的スキャニングにより、第1加工品の第1ギアの現在の幾何学的形状が、第1加工品200の第1ギア210の目標とするギアの幾何学的形状と異なっているかどうかを判断するようになっている検出要素を含む、本発明に係わるテストシステムを備える工作機械100を提供することも可能である。更に、第1ギア210の歯のフランクの側面の機械的、光学的および/または誘導的スキャニングを組み合わせることにより、所定の目標とするギアの幾何学的形状に対する偏差を検出できるようにする検出要素を含む工作機械100を提供することもできる。ここで、例えば加工品に対する異なる回転角位置にて、レーザービームにより光学的スキャニングを実行することもできる。
【0081】
特に第1ギア210の現在のギアの幾何学的形状が、目標とするギアの幾何学的形状と異なっていると判断されるか、またはそのように検出されたときに、自動的に工具の交換を実行できる。すなわち図2に示された支持手段11に支持された検出要素140を、図1に示された工具130または工作機械100の工具マガジンのうちの別の工具に置換し、第1加工品200の現在のギアの幾何学的形状が目標とするギアの幾何学的形状に対応するか、または目標とするギアの幾何学的形状と少なくとも所定の最大偏差値より少ない値しか異ならないようになるまで、第1加工品200の現在のギアの幾何学的形状を、目標とするギアの幾何学的形状に近似させるよう、クランプ手段120内にクランプされた第1加工品200をオプションで更に機械加工または仕上げをする。
【0082】
本発明の更に別の実施形態では、クランプ手段120に対する第1加工品200のクランプを解除することなく、第1加工品200の作動特性をチェックまたは判断できる工作機械100を提供できる。ここで、図3は、第1ギア200を有する第1加工品200としてクランプ手段120内にクランプされたベベルギアを例として示し、このクランプ手段120は、ベベルギア200の回転軸に対応する中心軸Mを中心としてベベルギア200を回転駆動するようになっている。
【0083】
本発明の一実施形態に係わる、図3に示された工作機械100は、制御装置110の支持手段111により、ギア310を有する第2加工品300を支持し、この第2加工品300の中心軸Mを中心として、この第2加工品300を回転駆動するようになっている。例えば図3における第2加工品300は、ベベルギアまたはピニオンであり、このピニオンはベベルギア200と共にギアホイールのペアを形成するか、または少なくともベベルギア200の第1ギア210が、目標とするあらかじめ決定されたギアの幾何学的形状に実質的に一致するとの、この実施形態に対する例であると仮定した条件下で、ギアホイールのペアを形成すべきである。従って、ここで、以下ピニオン300として述べるベベルギア300は、所望する場合に、工作機械100でプログラム制御により以前に製造または機械加工されたテストピニオンまたは加工品となっている。
【0084】
工作機械100の制御装置110およびクランプ手段120は、工作機械100の少なくとも5本の軸を同時に制御し、よってベベルギア200の第1ギアとピニオン300の第2ギア310とを噛合または係合させ、よって第1ギア210の第1フランクと第2ギア310の対応する第1噛み合いフランクとを協働させることにより、5の運動自由度で自由モビリティおよび/または制御性によって、ピニオン300とベベルギア200の相互の噛合を可能にしている。
【0085】
本発明の一実施形態に係わる工作機械100は、制御装置110がピニオン300とベベルギア200とを噛合させるときに、スポットとして第2ギア310の少なくとも第1噛み合いフランクまたは第1ギア210の少なくとも1つの第1フランクにペイントを塗布できるようにする手段も含み、これにより第2ギア310の第1噛み合いフランクと第1ギア210の第1フランクとが協働し、よって第1噛み合いフランクから第1フランクへ、または第1フランクから第1噛み合いフランクへペイントを移すようになっており、工作機械100の光学的検出手段は、第1フランク上、または第1噛み合いフランク上の移されたペイントの形状を考慮して、光学的検出により歯の接触パターンを決定するようになっている。
【0086】
本発明の別の実施形態の後で、図3の工作機械100は更に、この工作機械100の少なくとも5本の軸により、ピニオン300とベベルギア200とを同時に制御し、ピニオン300の歯とベベルギア200の歯とを噛合するようになっている。この場合、ピニオン300は、ピニオン300の中心軸M2を中心として、制御装置110の回転軸により回転駆動され、ベベルギア200は、ベベルギア200の中心軸M1を中心とし、クランプ手段120の回転軸により回転駆動され、ピニオン300とベベルギア200とは、その後の作動に従って1つのギアホイールのペアとして制御される。各ケースにおいて、(例えば歯のフランクのプロフィルの最適曲率により)目標とするギアの幾何学的形状が得られ、実際のローリング運動が生じた場合に限り、ベベルギア200の第1ギア210の少なくとも1つの第1フランクは、ピニオン300の第2ギア310の第1噛み合いフランクとローリング状態で協働するか、またはローリング状態に実質的に協働する。
【0087】
本発明のこの実施形態によれば、工作機械100または工作機械100のテストシステムは、音響検出器および振動センサ、特に制御装置110上に設けられた少なくとも1つの音響検出器および振動センサも備え、よってピニオン300とベベルギア200とが互いに駆動されたときの作動ノイズを、テストシステムの音響検出器により検出し、希望する場合に目標とするノイズレベルにより、これらノイズと、希望する場合にあらかじめ決定された目標とする作動ノイズとを比較することによって、ベベルギア200およびピニオン300から形成されたギアホイールペアの作動特性をチェックまたは決定できる。更に振動センサは、ベベルギア200とピニオン300から成るギアホイールペアが駆動されるときの第1フランク上の第1噛み合いフランクのローリング運動中の振動を測定するようになっており、この振動は、現在存在する表面の仕上げまたはギアの質、または現在のギアの幾何学的形状と目標とするギアの幾何学的形状との偏差を決定するように働く。
【0088】
本発明のこの実施形態では、第1ギア210の現在のギアの幾何学的形状が目標とするギアの幾何学的形状とは異なることが、上記のような作動特性の検査または歯の接触パターンの決定により示されたとき、工作機械100の上でピニオン300を工具130に交換することも可能である。
【0089】
しかしながら、本発明は上記実施形態だけに限定されるものではない。むしろその逆に、上記実施形態の個々の様相または個々の特徴を組み合わせ、本発明の別の実施形態、特に本発明に係わる工作機械100の別の実施形態または本発明に係わる方法を提供できる。
【0090】
上記のように、本発明は特にブランクから、ギアを有する最終部品となるように加工品を完全に機械加工できるようにする工作機械100および工作機械100で加工品200を機械加工するための方法を提供するものであり、更にこの工作機械は、現在のギアの幾何学的形状が所定の目標とするギアの幾何学的形状と異なるかどうかに関し、工作機械での加工品の機械加工中、および/または機械加工後に、加工品の現在のギアの幾何学的形状を更にチェックできるようにするものであり、偏差が検出されたときに希望する場合に自動的に、またはプログラム制御により、再機械加工作動が希望する場合に可能である。特にここでは、ギアの質または表面の仕上げ、または現在のギアの幾何学的形状をチェックするための検査を外部テストシステムで行うために、特に好ましいことに、工作機械100のクランプ手段210から加工品のアンクランプ(クランプの解除を)する必要はない。
図1
図2
図3