特許第5666818号(P5666818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666818
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】磁気共鳴実験時の生体監視用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   A61B5/05 390
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-75439(P2010-75439)
(22)【出願日】2010年3月29日
(65)【公開番号】特開2010-234054(P2010-234054A)
(43)【公開日】2010年10月21日
【審査請求日】2012年8月2日
(31)【優先権主張番号】10 2009 001 984.7
(32)【優先日】2009年3月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591148048
【氏名又は名称】ブルーカー バイオシュピン アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュミッグ
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/047966(WO,A1)
【文献】 特開昭63−011173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI断層撮影装置における磁気共鳴(MRI)実験時の生体監視用装置であって、試験対象の生体の夫々に導電接続されかつ信号線を介して監視装置に接続された1つ以上の電極を備え、前記信号線は夫々、インピーダンス回路を介して互いに電気的に接続されたライン部分を個別に備え、前記生体監視用装置は、これらのライン部分の固有周波数がNMR測定周波数より高く、かつ前記ライン部分はインピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路を通じて互いに電気的に接続され、前記信号線は、MRI受信システムのRFアンテナの領域内において、前記RFアンテナのハウジングに機械的に取り付けられることを特徴とする生体監視用装置。
【請求項2】
前記ライン部分の固有周波数が、NMR測定周波数の2倍を超えることを特徴とする請求項1に記載の生体監視用装置。
【請求項3】
前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路のリアクタンスが前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路のオーム抵抗より大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の生体監視用装置。
【請求項4】
前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路のリアクタンスは前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路のオーム抵抗の少なくとも2倍大きいことを特徴とする請求項3記載の生体監視用装置。
【請求項5】
前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路のリアクタンスは前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路のオーム抵抗の10倍大きいことを特徴とする請求項4に記載の生体監視用装置。
【請求項6】
前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路において、
NMR共鳴周波数に対しては、|Zn|>500Ω
100KHz未満の周波数に対しては、|Zn|<50Ω
となるインピーダンス|Zn|が適用されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の生体監視用装置。
【請求項7】
前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路の少なくとも1部分として除波回路が用いられ、その共振周波数はNMR測定周波数に調整されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の生体監視用装置。
【請求項8】
前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路は少なくとも1部分としてインダクタを有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の生体監視用装置。
【請求項9】
前記インピーダンスZnを有する周波数依存インピーダンス回路の少なくとも1部分は、次々に配設されかつそれらの内部に前記電極への前記信号線を含む「バズーカバラン」であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の生体監視用装置。
【請求項10】
前記信号線の前記RFアンテナのハウジング上の位置として、前記RFアンテナと前記信号線の間の電磁結合が最小になる位置を選択することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の生体監視用装置。
【請求項11】
同じ配分のライン部分を有する複数の信号線が設けられ、前記信号線は、対応するライン部分が隣り合わせに配設されるように配置されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の生体監視用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI断層撮影装置における磁気共鳴(MRI)実験時の生体監視用装置に関するものであって、この装置は、試験対象の生体の夫々に導電接続されかつ信号線を介して監視装置に接続された1つ以上の電極を備えており、この信号線は夫々、インピーダンス回路を介して互いに電気的に接続されたライン部分を個別に備える。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、特許文献[7]に開示されているMRIシステムであって、広く用いられている医療および診断装置である。MRIシステムの主な構成要素は、安定で非常に強い磁場(B0)を発生する磁石、付加的な可変磁場を発生する傾斜磁場コイル、および測定対象内にエネルギーを送信すると共にその測定対象からNMR信号を受信するために用いられるRFアンテナである。コンピュータは全体的な処理を制御しており、また、上記受信した情報を処理するためにも必要である。
【0003】
MRI測定の対象を、以下患者と呼ぶ。この用語にはまた、明示的に動物が含まれる。
【0004】
場合によっては、MRI試験時に患者を監視する必要がある。これは、(呼吸、血中酸素、体温等を監視するという)医学的な理由で必要となったり、またMRI実験における個々のスキャンを(ECG,EEG、または呼吸等の)患者の生理的変化と同期させたりするために必要となることがある。
【0005】
何らかの形で患者を監視して行うMRI実験を、以下「監視MRI実験」と呼ぶ。
【0006】
監視MRI実験の場合、監視電極が患者の身体に通常取り付けられる。電極は信号線を介して監視装置に接続されており、この電極からの信号が処理され表示される監視装置は、電磁的に遮蔽されたMRI領域の外側にしばしば配置される。
【0007】
MRI測定時には、患者を監視し、MRI実験を開始する。これはRFパルスまたは傾斜磁場パルスにより、信号線に電流を誘起できることを意味する。これは特にこの信号線が、RFアンテナや傾斜磁場の中に直接敷設されているときに起こるものであり、このような敷設は多くの場合不可避である。
【0008】
傾斜磁場と信号線の間の結合
可変傾斜磁場がかかっている導体ループ(たとえば第1の電極−患者の身体−第2の電極−信号線の等価インピーダンス回路)内に電流が誘起されると、この電流により(たとえば電極と身体の接触点で)発熱が生じ、患者を火傷させ得る。
【0009】
RFアンテナと信号線の間の結合
信号線はそれら自体で、RFアンテナの電磁場を受信するアンテナとして直接働く。これを、信号線とRFアンテナの間の結合と呼ぶ。信号線の長さと位置により、この結合の強さは変化する。送信時、すなわちRFアンテナを用いた送信の間、すなわち電力がシステム内へ放射されるときに、RFアンテナと信号線の間の結合が強いと、信号線内に大きな電流の誘導が引き起こされ、この結果、信号線が発熱し、最悪の場合は患者を火傷させるという結果となる。
【0010】
従来の公報では配慮されることがなかった事実の一つに、RFアンテナと信号線の間の結合によりその信号線の近傍でB1磁場の歪が引き起こされると、MRI画像内にアーチファクトが生じたり、極端な場合は患者を火傷させたりすることもあるということがある。これはたとえばB1磁場の歪が、患者の身体内にさらなる局所磁場を発生するときに起こり、その結果、過度のRF電力がその場所に集中し、それによって過度の量の熱を発生する。受信時、すなわちRFアンテナが励起された核スピンからの信号を受信するときは、RFアンテナと信号線の間の結合は、結果として不均一な明るさを生じる。フェーズドアレイコイルがRFアンテナとして用いられるような特別な場合は、個々のアレイコイルと信号線との結合は、個々のRFチャネル間のクロストークを増加させ、したがってMRI測定の信号対雑音比を悪化させる。
【0011】
従来技術
ファン・ゲンデリンゲン等は、非特許文献1において、ECG線としての炭素繊維の使用について述べている。この主な目的は、金属ECGケーブル使用時の傾斜磁場の磁場擾乱や付随するアーチファクトを減少させることである。現状では、炭素繊維のECG線の使用は、一般的な方法となっている。炭素繊維からなる導線の抵抗は、1メートル当たり数百Ωの範囲となる。このような抵抗は、傾斜磁場の磁場干渉による画像アーチファクトを減少させるが、RF電流によるECG線の発熱を防止や、RFアンテナとECG線の間の結合を確実に防止するには不十分である。
【0012】
かかる見解に追随し、何らかの方法によって信号線のオーム抵抗の増加が試みられている複数の公報がある。
【0013】
たとえば特許文献1〜3には、薄膜技術によって製造された信号線であって、10,000Ω/ftの抵抗を有するものが記載されている。しかし、これは信号線の直流の分布抵抗を扱っているだけである。
【0014】
特許文献4にも、MRI用途向けに特に設計されたECG線であって、そのECG線または電極の発熱の防止を目的するものが記載されている。この場合のECG線は、螺旋状に巻かれた、7.5〜30 KΩ/mの抵抗を有するニッケルクロム(ニクロム)線である。この特許は、高いオーム抵抗がECG線に用いられるときは、ECG装置のコモンモードノイズを除去しなければならないという問題が生じないようにするために、これらは互いに正確に整合しなければならないという問題について述べている。したがって記載のECGケーブルは、非常に複雑で高価である。
【0015】
特許文献5〜7では、信号線への1つ以上の個別オーム抵抗を導入することについて記載されている。特許文献7では、図1に示されるように、MRI用途向けに特に設計されたECG線であって、そのECG線または電極の発熱を防止するものが記載されている。特許文献7では、この目的のためにはECG線は高いDC抵抗をもたなければならない点が主張されており、どのようにして33〜100 KΩの大きさの抵抗を電極またはECGケーブル内に組み込むかについて記載されている。この特許文献7では、所望の抵抗をより小さな抵抗に分割し、ECGケーブルの長さにわたってそれらを分散させることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0247509(A1)号明細書(MRIで用いるためのECGケーブル)
【特許文献2】国際公開第2006/116677(A2)号明細書
【特許文献3】国際調査報告第2006/116677(A3)号(米国特許出願公開第2006/0247509(A1)号明細書(MRIで用いるためのECGケーブル)に関する「調査報告書」)
【特許文献4】米国特許第6,032,063号明細書(磁気共鳴イメージング時の生理学的監視用の抵抗分散型リード線ハーネスアセンブリ)
【特許文献5】特開2004−71536号明細書
【特許文献6】米国特許第4,173,221号明細書(ECGケーブル監視システム)
【特許文献7】米国特許第4,951,672号明細書(インピーダンス制御型監視リード線)
【非特許文献1】Radiology、1989年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、特許文献7では、抵抗を配設しなければならない位置および距離間隔という最も重要な点の認識がされていない。さらにこの特許文献では、ECG線とRFアンテナの間の結合メカニズムの把握がされていない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の装置
本発明の装置は、MRI断層撮影装置におけるMRI実験時に生体を監視するために用いられ、この装置は、電気的に導通するように試験対象の生体に接続されかつ信号線を通じて監視装置に接続された1つ以上の電極を備えており、この信号線は夫々、インピーダンス回路を介して互いに電気的に接続されたライン部分を個別に備える。
【0019】
本発明の目的は、RFアンテナおよび傾斜磁場コイルから信号線への電磁結合を最小にすることである。
【0020】
この目的は、これらのライン部分の固有周波数をNMR測定周波数より高くなるように、好ましくは2倍を超えるように選択し、且つこれらのライン部分を、インピーダンスZを有する周波数依存インピーダンス回路を介して互いに電気的に接続することで、驚くほど簡単でまた効果的に実現される。
【0021】
RFアンテナと信号線の間の電磁結合を最小にすることにより、以下の効果が生じる。
・RFアンテナによって放射されるRF電力による、信号線および電極の発熱が低減され、それにより試験対象の生体が火傷してしまうことを防止し、また試験対象の生体の発熱を低減する。
・B1送受信磁場の磁場一様性が劣化するのを抑止し、これにより発生される付加的な画像アーチファクトが少なくなる。
・RFアンテナによって発生し、生体の発熱や火傷を引き起こし得る、試験対象の生体の体内での過度のRF磁場が低減される。
・信号線によって引き起こされ、受信システムの信号対雑音比を悪化させ得る、個々のフェーズドアレイコイル間のクロストークが少なくなる。
【0022】
MRI実験によって信号線に誘起される信号(RFパルス、傾斜磁場パルス)であって、監視信号にアーチファクトを生ずる信号をなくすことは、本発明の主な目的ではない。この問題は、信号線を遮蔽し撚り合わせることによって容易に解決することができる。一方、以下に述べる構成要素は、信号線上のRF電流を減衰させると同時に信号線を外部信号から遮蔽する。
【0023】
信号線とRFアンテナの間の結合の問題は、単に信号線の周囲に遮蔽を取り付けることでは解決されない。これでは、単に不要な電流が遮蔽に流れるからである。
【0024】
定義
ω: ω=2πf ただし、fは核磁気共鳴周波数
L: コイルのインダクタンス
RFアンテナと信号線の間の結合を最小にする目的は、電極と監視装置の間の信号線を分断したライン部分を形成し、それらのライン部分がインピーダンス回路を介して互いに接続することにより達成される。従って、このライン部分の共振周波数がNMR共鳴周波数より大幅に大きい、好ましくは2倍超となる長さであって、かつこのライン部分を接続するインピーダンス回路のインピーダンスが上記周波数に依存するように、このライン部分の長さを選択する。
【0025】
周波数に依存するように上記インピーダンスを選択することにより、NMR共鳴周波数(10から1000MHz)では非常に高いが、監視信号として注目される周波数(<100KHz)では短絡が事実上生じるようなインピーダンス回路を選択することが可能となる。
【0026】
信号線とRFアンテナの間の結合は、上記ライン部分の長さと、周波数依存インピーダンス回路とを正しく選択することで最小にすることができる。
【0027】
本発明の他の利点は、説明および図面から導出できる。上記および以下で述べる特徴は、本発明の任意の組み合わせにおいて個別にまたは一括して用いることができる。図示され、および説明される実施形態は、網羅的な列挙であると理解されるべきではなく、本発明を説明するための例示的な性質のものである。
【0028】
本発明は図面内に示され、実施形態に関連してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来技術による、監視信号用の信号ケーブルを示す図である。
図2】複数のライン部分で構成されるケーブルを示す図であり、(a)は、ライン部分の長さが50cm(300MHzにてλ/2)の場合、(b)は、ライン部分の長さが25cm(300MHzにてλ/4)の場合、(c)は、ライン部分の長さが16.6cm(300MHzにてλ/6)の場合を示す。
図3a】実験(2a)によるMRIコイルの共振回路のS11(反射係数)を示す図である。
図3b】実験(2c)によるMRIコイルの共振回路のS11(反射係数)を示す図である。
図3c】実験(2d)によるMRIコイルの共振回路のS11(反射係数)を示す図である。
図3d】実験(2e)によるMRIコイルの共振回路のS11(反射係数)を示す図である。
図4】集積された複数の信号線を有するRFアンテナを示す図である。
図5】信号ケーブルを個々のライン部分に分割する、周波数依存インピーダンス回路としての除波回路を示す図である。
図6】信号ケーブルを個々のライン部分に分割する、周波数依存インピーダンス回路としてのインダクタを示す図である。
図7】信号ケーブルを個々のライン部分に分割する、周波数依存インピーダンス回路としての短縮されたバズーカバランを示す図である。
図8】信号ケーブルを個々のライン部分に分割する、周波数依存インピーダンス回路としてのバズーカバランアレイを示す図である。
図9】複数のECGケーブル、および上記個々のライン部分夫々に対する配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に記載される簡単な実験により、上述した内容を説明・実証する。
【0031】
このため、無負荷状態で300MHzのMRIコイル共振回路を50Ωに最適に調整した。その後に、信号線を構成する複数の部分(以下、「ライン部分」という。)であって自由な(接地がされていない)ものを、異なる種類、MRIコイル内に導入し、MRIコイルの共振回路の不整合を記録した(この目的のために、共振回路のS11(反射係数)が測定された)。その後に、ライン部分を用いて負荷を与えたMRIコイルを最適に調整し、そのMRIコイルの共振回路のQ値を求めた。
【0032】
無負荷状態と負荷状態の間のQ値の減少は、MRIコイルと同コイル内の信号線との間の結合、またはMRIコイルの外部すなわち信号線の内部をまたは信号線を介して消費される電力により直接測定される。
1.個々のライン部分の長さによる影響
以下の3つのケーブルは、順々に、MRIコイル内の同じ位置に正確に保持される。したがって各信号線のライン部分は、お互いに、電気的な接続はしない。
【0033】
(1a)長さが50cm(300MHzにてλ/2)のライン部分からなるケーブル(図2(a)参照)
(1b)長さが25cm(300MHzにてλ/4)のライン部分からなるケーブル(図2(b)参照)
(1c)長さが16.6cm(300MHzにてλ/6)のライン部分からなるケーブル(図2(c)参照)
【0034】
【表1】
【0035】
無負荷のコイルのQ値は、300MHzにて測定した結果、125となった。MRIコイルと信号線の間の結合はライン部分の長さに決定的に依存することが明らかとなった。これは、ライン部分の間のインピーダンス回路について所望のインピーダンス|Z|(この場合は∞)を選択することができ、ライン部分の長さが過度に長いときは、MRIコイルと信号線の間の結合は大きいままとなることを意味する。
2.各ライン部分の間のインピーダンス回路のインピーダンスZによる影響
図2(c)に対応する、長さが16.6cm(λ/6)のライン部分からなるケーブルが、MRIコイル内に保持される。これにより、各ライン部分が以下のインピーダンスZをもつインピーダンス回路で接続される。
(2a)電気的に分断(図3aに示される反射曲線)
(2b)オーム抵抗47Ω
(2c)インダクタ1.5μH(図3bに示される反射曲線)
(2d)除波回路(L=28nH、Q=100)(図3cに示される反射曲線)
従来の炭素繊維ライン(DC抵抗:180Ω/m)の影響も、基準として示す。
(2e)炭素繊維ライン(図3dに示される反射曲線)
【0036】
【表2】
【0037】
MRIコイルと信号線の間の結合は、分断部分にあるインピーダンス回路の、MRIコイルの共振周波数におけるインピーダンス|Z|に大きく依存することが明らかに示されている。DC抵抗Rは結合に対して大きな影響は与えない。
【0038】
図4は、磁気共鳴測定実行時に患者を監視する、本発明に係る生体監視用装置を示す図である。これにより、患者はRFアンテナ内のMRI磁石内に配置される。RFアンテナの磁場内においては、信号線は何カ所かが周波数依存インピーダンス回路によって分断され、この結果、信号線は長さl<λ/2、好ましくはl<λ/4のライン部分に分かれる。
【0039】
このような周波数依存インピーダンス回路の様々な実施形態が、図5〜8に示される。
【0040】
上述の記載に基づく装置は、信号線上のRF電流を少なくするために重要であり、インピーダンスZを有するインピーダンス回路は、そのリアクタンスがオーム抵抗より大幅に大きい。具体的には、それらのオーム抵抗より少なくとも2倍であり、好ましくは10倍を超える。これにより、高周波電流に対する影響は大きくなるが、低周波の監視信号がこのインピーダンスZによって変化することはない。
【0041】
上述の記載に基づく装置は、信号線上のRF電流を少なくするために特に重要であり、NMR共鳴周波数ではインピーダンスZを有する周波数依存インピーダンス回路の皮相抵抗|Z|は大きくなり(|Z|>500Ω)、100KHz未満の周波数では小さくなる(|Z|<50Ω)。
【0042】
したがって信号線のオーム抵抗は、たとえば追加の純粋なオーム抵抗を信号線に導入するか、または信号線自体を適当な材料(たとえば炭素繊維)から製造することにより、上記インピーダンスZとは無関係に制御することができる。
【0043】
図5に示される一実施形態では、いわゆる除波回路がインピーダンスZを有するインピーダンス回路の少なくとも一部分として用られ、その共振周波数をNMR測定周波数に調整する。
【0044】
この実施形態においては、並列に接続されたインダクタとキャパシタを備える除波回路が一例として示される。使用される構成要素のQ値が十分大きいと仮定すると、この実施形態では、RF電流は|Z|≒QωLの大きさのインピーダンスをもつ。オーム抵抗は、単にそのインダクタのオーム抵抗に相当する。これらの除波回路は、それ自体がNMR共鳴周波数で共振状態となるので、除波回路自体がMRIコイルと結合する危険性がある。これを防止するため、除波回路を遮蔽するか、MRIコイルの磁場と除波回路の磁場が直交する方向に除波回路の向きを合わせなければならない。
【0045】
図6に示される、より直接的な実施形態では、簡単なインダクタがインピーダンスZを有するインピーダンス回路の少なくとも一部分として用いられる。このインダクタは、RF電流に対しては|Z|=ωLの大きさのインピーダンス回路として働く。オーム抵抗は、単にそのインダクタを巻くための線材のオーム抵抗に相当する。
【0046】
図7に示される他の一実施形態では、「バズーカバラン」がインピーダンスZを有するインピーダンス回路の少なくとも一部分として用いられる。このバズーカバランは次々に配設されるものであって、信号線を包含する。これの利点は、信号線を外被の内部において長い距離にわたって延長することにより、信号線への信号の結合に対する遮蔽を追加的に行うことにある。この結果、複数のバズーカバランを次々に配設することによって信号線を実質的に完全に遮蔽することができる(図8参照)。
【0047】
上述のすべてのRF構成要素は、信号線上のRF電流を減衰させ、それによってRFアンテナと信号線の間の結合を防止する。
【0048】
ひいては、本発明の装置内で、MRI受信システムのRFアンテナの領域内において信号線をRFアンテナのハウジング上に機械的に取り付けやすくなる。これにより、RFアンテナに対する信号線の残りの影響を一定のままとなり、RFアンテナの範囲内で補償することができる。RFアンテナのハウジング上の信号線の位置は、さらにRFアンテナと信号線の間の電磁結合が最小になるような選択を実験的に行うことができる。
【0049】
図4は、信号線がRFアンテナのハウジング上に取り付けられたときに、患者または監視装置からの信号線を、RFアンテナのハウジング上に取り付けられた信号線に電気的に接続するためのプラグを用いることができることを示す。その結果として、もはや信号線をRFアンテナを通して導く必要がなくなるので、患者の準備がしばしば大幅に簡単になる。
【0050】
通常、患者には2つ以上の信号線が接続される。この場合、同じ配分のライン部分を有する信号線が用いられるように注意が払われなければならず、これらの信号線は、対応するライン部分が隣り合わせに配設されるように配置される。そうでない場合はケーブルのインピーダンス回路が、RF電流に対して別の信号線のケーブルによって短絡され、したがって効果がなくなる可能性がある。信号線の隣接するライン部分は、信号線への信号の結合を最小にするために撚り合わされるべきである。図9は、2つの信号線の特別な場合に対する、上述したインピーダンス回路と信号線のライン部分との構成を示す。
【符号の説明】
【0051】
1 RFアンテナと監視装置の間の信号ケーブル
2 患者とRFアンテナの間の信号ケーブル
3 RFアンテナ
4 監視装置
5 監視電極と監視装置の間の信号ケーブル
6 監視電極
7 監視電極−信号ケーブル接触点
8 監視電極と監視装置の間の信号ケーブルのライン部分
9 個々のライン部分間を隔てるオーム抵抗
10 2つのインピーダンス回路の間の距離
11 信号ケーブルプラグ
12 インダクタ
13 キャパシタ
14 バズーカバラン
15 信号ケーブルとバズーカバランの外部導体の間の導電接触点
16 バズーカバランの長さ
17 バズーカバランの外部導体
18 バズーカバランの外部導体と内部導体の間の誘電体
19 2つのバズーカバランの間の距離間隔
20 患者
21 RFアンテナのハウジング
22 RFアンテナのハウジングに取り付けられた信号ケーブル
23 信号線の各ライン部分間を隔てるインピーダンス回路
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8
図9