(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クラッチレリーズ機構を作動させ、前記クラッチレリーズ機構に連動したダイヤフラムスプリングの変位によってクラッチの断接及び伝達トルクを制御するクラッチ制御装置に於いて、
電気駆動されて往復作動が可能なるアクチュエータと、
前記アクチュエータの往復作動によって、前進限となる終端位置と後退限となる退避位置との間で進退作動が可能なカムと、
前記カムの進退作動に連動して一方向に往復作動可能であり、前記カムの変位を前記クラッチレリーズ機構に伝達するカム従動子と、
前記アクチュエータを駆動制御して、前記カムを進退作動及び停止させる制御部と、
を備え、前記制御部は、
初期化動作時に、前記アクチュエータを駆動して、前記カムを任意の停止位置から後退作動させ、制限部材によって後退作動が制限された位置を前記カムの退避位置に設定し、その後、前記カムを前進作動させ、前記カム従動子の押圧を開始した位置を前記カムの初期位置に設定して、前記アクチュエータを停止し、
クラッチ作動時に、前記アクチュエータを駆動して、前記カムを前記初期位置から前記初期位置に対応する切断位置へ前進作動させて前記クラッチを接続状態から切断状態とし、前記切断位置から前記初期位置へ後退作動させて前記クラッチを接続状態とすることを特徴とするクラッチ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明によるクラッチ制御装置を備えたクラッチの一実施形態を示す説明図であり、クラッチディスクが新品時(摩耗していない状態)の、クラッチが接続された状態を示している。
【0030】
図1において、クラッチ10は、エンジン出力軸4と一体に回転するフライホイール6から変速機入力軸8へのトルク伝達を断接する装置であり、クラッチディスク組立部12、クラッチカバー組立部18、クラッチレリーズ機構30、クラッチ制御装置40で構成されている。
【0031】
クラッチディスク組立部12は、変速機入力軸8の先端部にスプライン連結したクラッチハブ14と、クラッチハブ14に設けられたクラッチディスク16を備え、変速機入力軸8の軸方向に進退作動可能である。
【0032】
クラッチカバー組立部18は、フライホイール6と一体に回転するクラッチカバー20と、クラッチカバー20に設けたガイドピン22にガイドされエンジン出力軸4の軸方向に作動可能なプレッシャープレート24と、ピボットリング26を支点にしてクラッチカバー20に支持されたダイヤフラムスプリング28を備えている。
【0033】
ダイヤフラムスプリング28の外周部28aが、ピボットリング26を支点とする弾性によって、プレッシャープレート24を介してクラッチディスク16をフライホイール6に押圧し、クラッチ10は、プレッシャープレート24とフライホイール6とでクラッチディスク16を挟み込むことで発生する摩擦力によって、エンジン出力軸4のトルクをクラッチハブ14を介して変速機入力軸8に伝達する。
【0034】
クラッチレリーズ機構30は、変速機入力軸8にスプライン連結したレリーズスリーブ32と、レリーズスリーブ32の外周部に内輪を嵌合したレリーズベアリング34と、クラッチハウジング(図示していない)に設けたフォークサポート38に支持されたレリーズフォーク36と、先端をレリーズフォーク36の下端部36bに係合すると共に他端にローラ56を設けたプッシュロッド58を備えている。
【0035】
レリーズフォーク36は、レリーズスリーブ32側が二股になっており、その先端部36aが、各々レリーズスリーブ32に設けた係合部32aに当接している。また、プッシュロッド58は、支持部(図示していない)によって、レリーズフォーク36を揺動させる方向に直進可能に支持されている。
【0036】
レリーズフォーク36は、スプリング等(図示していない)によって反時計方向に弱く付勢されているため、先端部36aが係合部32aを介してレリーズスリーブ32をクラッチハブ14の方向に移動させようとするが、レリーズベアリング34の外輪端面がダイヤフラムスプリング28の内周部28bに当接し、レリーズスリーブ32の移動は抑止されている。
【0037】
クラッチ制御装置40は、電動アクチュエータであるモータ42、モータ42が駆動するカム44、カム44の変位をクラッチレリーズ機構30に伝達するローラ56(カム従動子)、カム44の作動位置を検出するためのエンコーダ54、エンコーダ54からの信号に基づいてモータ42を駆動制御するECU(制御部)60を備えている。
【0038】
カム44は、モータ42の駆動軸42aに連結したコネクティングプレート46と、コネクティングプレート46と同軸に回転自在に軸支したカムプレート48と、コネクティングプレート46とカムプレート48との間に張ったカムスプリング52とで構成されている。
【0039】
ここで、ローラ56は、カム44の変位としてカムプレート48の径方向変位をプッシュロッド58に円滑に伝達し、エンコーダ54は、カム44の作動位置としてカムプレート48の回転に応じて信号をECU60に出力する。
【0040】
カムプレート48は、カムスプリング52の張力によって時計方向に弱く付勢されているが、カムプレート48に設けたストッパピン50がコネクティングプレート46のストッパホール46aによって規制される範囲内で、コネクティングプレート46に対して回転可能であり、規制範囲外ではコネクティングプレート46に従動して一体に回転する。
【0041】
また、カムプレート48は、時計方向回転時(カムの前進時)にローラ56を作動させる方向に押圧可能なカム形状のストローク部48aと、反時計方向回転時(カムの後退時)にローラ56を作動できない方向、すなわち、プッシュロッド58の作動可能方向に直交する方向に押圧可能なストップ部48bと、ストローク部48aとストップ部48bとの間でローラ56を押圧しないカム形状のアプローチ部48cと、時計方向の作動限界(カムの終端位置)となるリミット部48dを有する。
【0042】
図1においては、クラッチ制御装置40が待機状態であるため、カム44は退避位置にある。カム44は、カムプレート48がコネクティングプレート46のストッパホール46aにストッパピン50が係合した状態で、ストップ部48bがローラ56に当接する位置で停止している。
【0043】
本実施形態において、カムプレート48は周縁カムとして形成されているが、他のカム形式、例えば円筒カム等でも構わない。モータ42は、減速機構を備えたサーボモータユニットの使用を想定しているが、他の形式の電動アクチュエータを使用することも可能である。
【0044】
エンコーダ54は、クラッチ制御に必要な分解能を得ることができれば、磁気方式や光学方式等どのようなものでもよく、また、本実施形態のようにカムプレート48側に設ける構成ではなく、コネクティングプレート46側やモータ42側に設けることも可能であり、その場合、減速前のモータ42の回転角度に応じた信号を出力する構成にすれば、更に精細な分解能を得ることができる。
【0045】
ECU60は、エンコーダ54からの信号に基づいて、カムプレート48の作動角度や回転速度を検出可能であり、所定のタイミング、例えばエンジンの始動時や停止時にカム44を駆動し、カムプレート48がローラ56に当接した際の負荷によるモータ42の状態変化、例えばモータ42やカムプレート48の回転速度や加速度、あるいはモータ42に流れる電流の変化を検出して、クラッチ10のレリーズ動作(クラッチの切断動作)の開始位置となるカム44の初期位置を設定する。
【0046】
また、ECU60は、クラッチディスク16の摩耗に起因するカム44の初期位置の移動とタッチポイントの移動との対応関係を定義した特性情報を、例えば数値表や計算式として予め記憶しており、設定した初期位置と特性情報に基づいて、タッチポイントに対応するカム44の作動角度を設定する。
【0047】
なお、タッチポイントとは、クラッチ接続時に接続開始状態(エンゲージ状態)となる位置、すなわち、プレッシャープレートがクラッチディスクと接触する位置であり、クラッチ切断時にはクラッチの切断位置となる。
【0048】
更に、ECU60は、カム44の作動位置と伝達トルクとの関係をタッチポイントの移動に対応して定義した補正情報を、例えば数値表や計算式として予め記憶しており、レリーズ動作に際して、算出したタッチポイントに対応した補正情報に基づいてカム44の作動角度を補正することができる。
【0049】
変速機の変速段切り換え時に、大きなショックを伴わないようにクラッチ10を断接するには、断接時のクラッチ10の伝達トルクを適切に制御する必要があるため、ECU60は、設定したカムの初期位置から導き出したタッチポイントに対応するカム44の作動角度やその補正値に基づいて、モータ42を制御する。
【0050】
図2は、
図1のレリーズ動作の開始状態を示す説明図であり、初期位置にあるカム44以外、すなわち、カムプレート48とコネクティングプレート46、及びカムスプリング52の伸張状態以外は
図1と同じである。
【0051】
図2において、カムプレート48は、ストッパピン50がコネクティングプレート46のストッパホール46aに係合していないため、カムスプリング52の張力によって時計方向に付勢され、ストローク部48aに当接したローラ56を介してプッシュロッド58をレリーズフォーク36の方向に押圧している。
【0052】
しかし、カムプレート48は、カムスプリング52のバネ定数がダイヤフラムスプリング28のバネ定数より遥かに小さいため、ダイヤフラムスプリング28によってレリーズスリーブ32の移動を阻止された状態で保持されている。
【0053】
この状態から、ECU60がモータ42を駆動してコネクティングプレート46を時計方向に回転させ、ストッパホール46aがストッパピン50に係合してカムプレート48を時計方向に回転させることでレリーズ動作を開始する。
【0054】
レリーズ動作が開始されると、
図2の状態からカムプレート48が時計方向に回転し、ストローク部48aがローラ56を押すことでプッシュロッド58、レリーズフォーク36、レリーズスリーブ32を介してレリーズベアリング34がダイヤフラムスプリング28の内周部28bをクラッチハブ14の方向に押す。
【0055】
レリーズベアリング34の押圧によって、ダイヤフラムフラムスプリング28は、ピボットリング26を支点として内周部28bがクラッチハブ14方向に変位する。この変位が外周部28aを反転させる(内周部28bと反対側に変位させる)ように作用することでプレッシャープレート24への押圧力が減少し、クラッチ10は、接続状態から半クラッチ状態を経由して切断状態に移行する。
【0056】
図3は、
図1のレリーズ動作の終了状態を示す説明図であり、
図2の状態からカム44の前進に伴いレリーズフォーク36がフォークサポート38を支点にして反時計方向に揺動し、先端部36aがレリーズスリーブ32及びレリーズベアリング34を前進(クラッチハブ14方向に移動)させた状態を示している。
【0057】
この時点で、プレッシャープレート24のクラッチディスク16への押圧が解除されクラッチ10は完全に切断されているため、ストローク部48aがローラ56に当接した状態でカムプレート48の作動を停止するが、更にカムプレート48を前進させた場合は、リミット部48dがローラ56に当接し、その位置が作動限界となる。
【0058】
図4は、クラッチディスク摩耗時のカムの初期位置設定の開始状態を示す説明図であり、クラッチディスク16が摩耗限界、あるいは摩耗限界に近い状態であること、それに伴うダイヤフラムスプリング28及びクラッチレリーズ機構30の位置関係以外は
図1と同じである。
【0059】
図4において、摩耗したクラッチディスク16は、
図1に示す新品状態から厚さが減少しており、クラッチ10が完全に接続された状態(フルエンゲージ状態)で、
図1の状態からプレッシャープレート24はエンジン出力軸4側に、レリーズスリーブ32及びレリーズベアリング34は変速機入力軸8側に移動している。
【0060】
また、カムプレート48は、ストップ部48bがローラ56に当接した位置にあるが、ローラ56は、
図1のクラッチディスク16が摩耗していない場合よりもカムプレート48の中心方向のアプローチ部48cに近接した位置に移動している。なお、アプローチ部48cは、クラッチディスク16が摩耗限界の場合でも、ローラ56との間に隙間ができるような形状となっている。
【0061】
図4は、例えばエンジンが停止している場合のクラッチ制御装置40の待機状態であり、エンジンの始動操作を行うと、クラッチ制御装置40は、この状態から初期化動作としてモータ42を駆動し、コネクティングプレート46を時計方向に回転させることでカムプレート48を前進させ、カム44の初期位置設定を実行する。
【0062】
図5は、
図4の初期位置設定及びレリーズ動作の開始状態を、クラッチ制御装置40を取り出して示す説明図であり、モータ42及びECU60は省略している。また、
図5(A)(B)(C)において、各々のカムプレート48の角度は同じであるが、カムプレート48に対するコネクティングプレート46の位置が異なる。
【0063】
図5(A)は、初期位置設定動作においてストローク部48aがローラ56に当接してカムプレート48の回転が停止し、カム44の初期位置が設定された状態、
図5(B)は、初期位置設定動作が終了してコネクティングプレート46が停止した状態、
図5(C)は、レリーズ動作が開始されコネクティングプレート46のストッパホール46aがストッパピン50に当接してカムプレート48が前進を開始する状態を示している。
【0064】
図5(A)に示すように、
図4の状態からモータ軸42aに固定されたコネクティングプレート46が時計方向に回転すると、カムスプリング52の張力によって、カムプレート48も追従して前進する。
【0065】
コネクティングプレート46の回転開始時には、モータ42にはほとんど負荷が掛からないが、ストローク部48aがローラ56に当接してカムプレート48の回転が抑止されると、カムスプリング52の張力がモータ42への負荷として作用し、モータ42に流れる電流が増加する。
【0066】
ECU60は、この電流の増加を検出するとモータ42の駆動を停止し、エンコーダ54からの信号によって検出したカムプレート48の作動角度をカム44の初期位置に設定するが、ストローク部48aがローラ56に当接してからモータ42の回転が停止するまでのタイムラグによって、コネクティングプレート46は、
図5(B)に示す状態で停止する。
【0067】
その後、変速機の変速操作に同期してクラッチ10を切断する場合に、クラッチ制御装置40は、ECU60がモータ42の駆動を開始し、コネクティングプレート46はカムスプリング52の張力に抗して時計方向の回転を始める。
【0068】
図5(C)に示すように、コネクティングプレート46のストッパホール46aがカムプレート48のストッパピン50に係合すると、カムプレート48は、ダイヤフラムスプリング28の弾性力に抗してローラ56を押圧し、プッシュロッド58をレリーズフォーク36の方向に押し込むことで、クラッチ10のレリーズ動作が開始される。
【0069】
このように、モータ42が直接的にカムプレート48を作動するのではなく、カムスプリング52を介して作動することで、コネクティングプレート46の停止位置のばらつきをストッパホール46aで吸収でき、たとえモータ42の停止位置がばらついたとしても、カムプレート48はカム44の初期位置に停止するため、クラッチレリーズ機構30への所定の初期荷重を安定して与えることができる。
【0070】
なお、初期荷重は、レリーズベアリング34の与圧として作用し、レリーズ動作開始時のレリーズベアリング34への衝撃を軽減するが、初期荷重が必要以上に大きいと、クラッチ10接続時のクランプ力が減少してしまうため、適切な値にする必要がある。
【0071】
このモータ42の停止位置のばらつきは、ECU60が電流の増加を検出して直ちにモータ42への電力供給を停止しても、モータ42の回転部位が慣性によって過回転してしまうために発生し、コネクティングプレート46に設けたストッパホール46aは、カムプレート48に設けたストッパピン50に対して、このモータ42の過回転を吸収可能な最小範囲に形成されている。
【0072】
また、エンコーダ54をモータ42側に設けた構成の場合は、予め算出してある、
図5(A)の状態から
図5(C)の状態までのエンコーダ54が出力するパルス数から、
図5(A)の状態から
図5(B)の状態までのモータ42の過回転時に出力したパルス数を減算し、その値を
図5(B)の状態から
図5(C)の状態までのモータ42の駆動を開始してからカムプレート48が前進を開始するまでの補正値とすればよい。
【0073】
図6は、
図4のクラッチディスクが摩耗した場合におけるレリーズ動作の終了状態を示す説明図であり、ダイヤフラムスプリング28及びクラッチレリーズ機構30の位置関係、カム44の位置及び状態以外は
図4と同じである。
【0074】
図6に示すレリーズ動作の終了状態は、
図3に示すクラッチディスク16が摩耗していない場合のレリーズ動作の終了状態と同様に、プレッシャープレート24のクラッチディスク16への押圧が解除されクラッチ10は完全に切断されているため、ストローク部48aがローラ56に当接した状態でカムプレート48の回転が停止しているが、クラッチディスク16の摩耗状態の違いによってダイヤフラムスプリング28及びクラッチレリーズ機構30の位置が異なっている。
【0075】
図7は、クラッチディスクが摩耗していない場合のカムの作動範囲を示す説明図、
図8は、クラッチディスクが摩耗した場合、特に、摩耗限界に達した場合のカムの作動範囲を示す説明図であり、
図7及び
図8において、クラッチディスク16の摩耗によるカムの作動範囲の変化を示している。
【0076】
図7において、カムプレート48は、ストップ部48bにローラ56が当接している退避位置Qsから時計方向に回転してレリーズ動作開始位置(初期位置)Q3となる。このアプローチ範囲α1においてローラ56は、カムプレート48のアプローチ部48cに接触しないため、作動開始位置P3から移動しない。
【0077】
カムプレート48は、レリーズ動作開始位置Q3からレリーズ動作を開始し、時計方向に回転してレリーズ動作終了位置Q6となる。このストローク範囲α2においてローラ56は、カムプレート48のストローク部48aに押され、作動開始位置P3から作動終了位置P6まで、距離S1移動する。
【0078】
またカムプレート48は、レリーズ動作終了位置Q6からリミット部48dがローラ56に当接する終端位置Qtまで回転できる余裕を残しているが、通常のレリーズ動作においてこの作動許容範囲α3を使用することはない。
【0079】
なお、クラッチ10を切断した状態が長時間継続するような場合は、ダイヤフラムスプリング28の弾性に抗してローラ56の押圧を続けるために、モータ42へ通電したままでカムプレート48を静止させなければならず、この場合、モータの電力消費や発熱が多くなってしまう。
【0080】
これを防止するには、作動許容範囲α3に対応するストローク部48aの終端領域に、カムプレート48の回転軸が中心となる円弧形状とすることでカム面とローラ56との圧力角を0度にした停留部を設け、ローラ56が停留部に位置する時には、ローラ56を介したダイヤフラムスプリング28の弾性力によってカムプレート48にモーメントが作用しないようにしすればよい。
【0081】
すなわち、クラッチ10を長時間切断する時には、このように構成した作動許容範囲α3を使用することで、モータ42への通電を止めてもクラッチの切断状態が維持され、モータの電力消費や発熱が多くなることを回避できる。
【0082】
図8においては、ローラ56の作動開始位置P1は、
図7の作動開始位置P3より、クラッチディスク16の厚さの減少に対応する距離だけ、カムプレート48のアプローチ部48cに接近している。
【0083】
カムプレート48は、ストップ部48bにローラ56が当接している退避位置Qsから時計方向に回転してレリーズ動作開始位置(初期位置)Q1となる。このアプローチ範囲β1においてローラ56は、カムプレート48のアプローチ部48cに接触しないため、作動開始位置P1から移動しない。
【0084】
カムプレート48は、レリーズ動作開始位置Q1からレリーズ動作を開始し、更に時計方向に回転してレリーズ動作終了位置Q4となる。このストローク範囲β2においてローラ56は、カムプレート48のストローク部48aに押され、作動開始位置P1から作動終了位置P4まで、距離S2移動する。
【0085】
またカムプレート48は、レリーズ動作終了位置Q4からリミット部48dがローラ56に当接する終端位置Qtまで回転できる余裕を残しているが、通常のレリーズ動作においてこのアローアンス範囲β3を使用することはない。
【0086】
ここで、カムプレート48のストローク部48aは、
図7のストローク範囲α2と
図8のストローク範囲β2が等しく、又は略等しくなるようなカム形状を有しているため、
図7のローラ56の作動距離S1と
図8のローラ56の作動距離S2は等しく、又は略等しくなる。
【0087】
更にこのカム形状は、ストローク範囲α2及びβ2において、カムプレート48の作動角度とローラ56の作動量の関係が一定、又は略一定となるように設定されているため、カムの初期位置が移動した場合でも、カムプレート48の作動角度とローラ56の作動量の関係が維持される。
【0088】
従って、カムプレート48のレリーズ動作開始位置、すなわち、カム44の初期位置が設定されれば、ECU60は、クラッチディスク16の摩耗状態にかかわらず、所定の特性でモータ42を駆動してクラッチ10の断接制御が可能となる。
【0089】
本実施形態(
図1〜
図8に示す実施形態)においては、モータ42が直接カムプレート48を作動するのではなく、コネクティングプレート46とカムスプリング52を介して作動することで、モータ42の停止位置がばらついた場合でも、カムプレート48はカム44の初期位置に停止するように構成しているが、モータ42の停止位置のばらつきが、クラッチレリーズ機構30への初期荷重が許容範囲に収まる程度に小さい場合は、コネクティングプレート46やカムスプリング52を介さずに、モータ42が直接カムプレート48を作動するように構成することも可能である。
【0090】
また、本実施形態においては、カム44を退避位置に設定する際にカム44の後退を制限する制限部材としてローラ56を使用し、ストップ部48bをローラ56が移動できない方向に当接させてカム44の後退を制限するように構成しているが、制限部材として専用のストッパを設け、カムプレート48のストップ部をそのストッパに当接するように構成することも可能である。
【0091】
図9は、
図4の状態から
図5(B)の状態までの、クラッチ制御装置の初期位置設定手順の一例を示すフローチャートである。
図9において、ECU60は、ステップS1でエンジンの停止指示があったか否かを判別し、停止指示を判定した場合はステップS2でモータ42を逆転(反時計方向に回転)してカム44を後退させる。
【0092】
その後、ステップS3でモータ42の電流が所定値に達したか否かを判別し、電流が所定値に達していることを判定した場合はステップS4でモータ42を停止する。エンジン停止時には、クラッチ制御装置40は、
図4に示すように、待機状態を維持する。
【0093】
次に、ステップS5でエンジンの始動指示があったか否かを判別し、始動指示を判定した場合はステップS6でモータ42を正転(時計方向に回転)してカム44を前進させる。その後、ステップS7でモータ42の電流が所定値に達したか否かを判別し、電流が所定値に達していることを判定した場合は、ステップS8でモータ42を停止する。
【0094】
モータ42を停止したら、ステップS9でカム44の位置をエンコーダ54からの信号によって検出し、
図5(B)に示すように、その位置をカムの初期位置に設定する。続いて、ステップS10でカムの初期位置が、予め設定してあるクラッチディスク16の摩耗限界に対応する位置に達したか否かを判別し、クラッチディスク16が摩耗限界に達したことを判定した場合は、ステップS11でクラッチディスク16の摩耗警報を出力し、ステップS1に戻る。
【0095】
クラッチ制御装置40は、エンジンの停止指示を判定するまでは、ステップS9で設定したカムの初期位置を維持し、変速機の変速操作に同期してクラッチ10の断接及び伝達トルクの制御を行う。
【0096】
図9に示す制御フローの例において、カム44は、エンジン停止時に
図4に示す退避位置にあり、エンジン始動のタイミングで初期位置設定を実施しているが、エンジン停止時やエンジン始動時、あるいはその他のタイミングで、カム44を退避位置に後退させてから初期位置に前進させる一連の動作を行ってもよく、その場合、カム44は、エンジン停止時に初期位置に停止した状態が維持される。
【0097】
図10は、ダイヤフラムスプリングの荷重−撓み特性とカムの作動範囲との関係を示す説明図であり、
図10(A)は、横軸に撓み、縦軸に荷重をとったグラフにダイヤフラムスプリングの荷重−撓み特性を表し、
図10(B)(C)は、それに対応させたローラとカムの作動範囲(ローラストローク及びカムストローク)を表している。
【0098】
図10(A)において、特性線Daは、プレッシャープレート24を押圧するダイヤフラムスプリング28の外周部28aにおける荷重Fと撓みγを、特性線Dbは、レリーズベアリング34に押圧されるダイヤフラムスプリング28の内周部28bにおける荷重Fと撓みδを表している。なお、この場合の外周部28aの撓みγと内周部28bの撓みδは、実際には互いに逆方向であるが、ここでは同方向に変換して示している。
【0099】
特性線Daで示すように、クラッチディスク16の新品時において、クラッチ10が完全に接続された状態のダイヤフラムスプリング28の外周部28aは撓みγ3であり、その時のプレッシャープレート24への荷重はF4となる。
【0100】
クラッチディスク16の摩耗時においては、クラッチ10が完全に接続された状態のダイヤフラムスプリング28の外周部28aは撓みγ1であり、その時のプレッシャープレート24への荷重はF3となる。
【0101】
また、特性線Dbで示すように、レリーズ動作開始時のダイヤフラムスプリング28の内周部28bは、クラッチディスク16の新品時において撓みδ3であり、クラッチディスク16の摩耗時においてはδ1である。
【0102】
図10(B)においては、ダイヤフラムスプリング28の内周部28bの撓みδ、すなわち、レリーズベアリング34の移動位置をローラ56の位置Pに変換して表しており、
図7及び
図8に示すローラ56の作動位置及び作動範囲に対応している。
【0103】
クラッチディスク16の新品時において、レリーズ動作の開始位置P3から終了位置P6がローラ56の作動範囲S1となり、クラッチディスク16の摩耗時においては、レリーズ動作の開始位置P1から終了位置P4がローラ56の作動範囲S2となる。
【0104】
図10(C)においては、ローラ56の位置Pに対応するカム44の位置Qを表しており、
図7及び
図8に示すカム44の作動位置及び作動範囲に対応している。
【0105】
クラッチディスク16の新品時において、カム44の退避位置Qsからレリーズ動作の開始位置となる初期位置Q3までがカム44の初期位置設定の作動範囲α1、初期位置Q3から終了位置Q6までがカム44のレリーズ動作の作動範囲α2、終了位置Q6から終端位置Qtまでがレリーズ動作後の作動許容範囲α3となる。
【0106】
また、クラッチディスク16の摩耗時においては、カム44の退避位置Qsからレリーズ動作の開始位置となる初期位置Q1までがカム44の初期位置設定の作動範囲β1、初期位置Q1から終了位置Q4までがカム44のレリーズ動作の作動範囲β2、終了位置Q4から終端位置Qtまでがレリーズ動作後の作動許容範囲β3となる。
【0107】
ここでレリーズベアリング34は、クラッチのレリーズ動作においてダイヤフラムスプリング24の内周部28bを、クラッチディスク16の新品時には撓みδ3から撓みδ6までの範囲R1で、クラッチディスク16の摩耗時には撓みδ1から撓みδ4までの範囲R2で押圧するが、カム44のカム形状によって、この範囲R1と範囲R2に対応するカム44の作動範囲α2と範囲β2が等しく、又は略等しくなるようになっている。
【0108】
しかし、レリーズ動作開始位置からタッチポイントまでの撓みの変化量は、クラッチディスク16新品時の撓みδ3から撓みδ5までの範囲R3より、クラッチディスク16摩耗時の撓みδ1から撓みδ2の範囲R4までの方が大きくR3<R4の関係となる。この関係をカムストロークに対応させるとα4<β4となる。
【0109】
このように、クラッチディスク16の摩耗度によってタッチポイントまでのストロークが異なってしまう理由は、クラッチレリーズ機構30とクラッチ制御機構40の機械的剛性に起因している。
【0110】
本実施形態においては、撓みδ5の荷重F1より撓みδ2の荷重F2の方が大きく、F1<F2の関係となっているため、タッチポイント近辺において、レリーズベアリング34への荷重がより大きなクラッチディスク16摩耗時の方が、新品時よりもクラッチレリーズ機構30とクラッチ制御機構40の機械的撓みが大きく、タッチポイントまでのプレッシャープレート24のストロークが深くなる。
【0111】
そのため、クラッチ制御装置40は、クラッチディスク16新品時のカム44の初期位置Q3から切断位置Q5まで(レリーズ開始位置の撓みδ3からタッチポイントの撓みδ5までに対応する)の作動範囲α4と、摩耗時の初期位置Q1からから切断位置Q2まで(レリーズ開始位置の撓みδ1からタッチポイントの撓みδ2までに対応する)の作動範囲β4の違いを考慮して、クラッチ10の断接を制御する必要がある。
【0112】
図11は、カムの初期位置の移動とカムの切断位置の移動との対応関係を示す説明図であり、横軸にカムの初期位置、縦軸にカムの切断作動量(カムの初期位置から切断位置までの作動量)をとったグラフとして、カムの初期位置−切断作動量特性を、
図10に示すカムの初期位置及び切断位置までの作動量に対応させて表している。
【0113】
図11において、クラッチディスク16の新品時に設定されたカム44の初期位置Q3における切断作動量を作動範囲α4、クラッチディスク16の摩耗限界時に設定されたカム44の初期位置Q1における切断作動量を作動範囲β4とし、初期位置Q3から初期位置Q1の間の初期位置−切断作動量特性の一例を、特性線Eで表している。
【0114】
このカム44の初期位置−切断作動量特性を定義した特性線Eの情報は、例えばダイヤフラムスプリング28の荷重−撓み特性とクラッチレリーズ機構30の剛性等に基づく計算式や、予めクラッチ10の作動実験や耐久試験等で求めた数値表を特性情報としてECU60が記憶しており、ECU60は、カム44の初期位置設定時に、この特性情報からカム44の初期位置に対応する切断作動量を設定し、クラッチ10の断接制御を行う。
【0115】
なお、ダイヤフラムスプリング28の荷重−撓み特性が本実施形態と異なる場合には、クラッチディスク16の摩耗度による範囲R3と範囲R4の関係が逆転する事もあり、その際には、カム44の作動範囲α4と作動範囲β4も変化して本実施形態とは異なる特性線Eになる。
【0116】
また、クラッチディスク16の摩耗に伴うカム44の初期位置の移動は、カムの初期位置から切断位置までの作動量の変化だけではなく、カム44の初期位置から半クラッチの開始位置までの作動量も変化するため、クラッチ10の伝達トルクを制御する際には、この作動量の変化も考慮する必要がある。
【0117】
図12は、カムの作動位置とクラッチの伝達トルクとの関係を示す説明図であり、横軸にカム位置Q、縦軸にクラッチの伝達トルクTをとったグラフとして、クラッチ特性を、
図10に示すカムの初期位置及び切断位置までの作動量に対応させて表している。
【0118】
図12において、カム44の位置Qとクラッチの伝達トルクTによって示すクラッチ特性を特性線Cで表し、特に、クラッチディスク16の新品時を特性線Ca、摩耗時を特性線Cbで表している。また、特性線の四角印はクラッチ10のレリーズ動作の開始位置、丸印はタッチポイントを示している。
【0119】
図12に示すように、クラッチ特性は、クラッチディスク16の摩耗によって、特性線Caから特性線Cbに移動するが、これは単なる平行移動ではなく、特性線Cの傾きや形状の変化も伴っている。
【0120】
クラッチの伝達トルクTは、基本的に、プレッシャープレート24に作用するダイヤフラムスプリング28の荷重Fとクラッチディスク16の摩擦係数μとの積として求められ、また、半クラッチ状態が開始するクラッチ10の伝達トルクThが、クラッチディスク16の摩耗度に関わらず略一定であるため、特性線Cの傾きや形状が異なれば、カム44の初期位置から半クラッチの開始位置までの作動量も異なってくる。
【0121】
すなわち、クラッチディスク16の新品時の半クラッチの開始位置までのカム44の作動量α5と、クラッチディスク16の摩耗時の半クラッチの開始位置までのカム44の作動量β5とは異なり、本実施形態においては、α5<β5の関係となる。
【0122】
クラッチ特性を定義した特性線Cの情報は、例えば
図10に示すダイヤフラムスプリング28の荷重−撓み特性や、
図11に示すカム44の初期位置−切断作動量特性に基づく計算式や、予めクラッチ10の作動実験や耐久試験等で求めた、初期位置の移動に対応する複数の数値表を補正情報としてECU60が記憶しており、ECU60は、クラッチ10の断接時に、この特性線Cからカム44の作動位置を補正し、クラッチ10のトルク伝達を制御する。
【0123】
図13及び
図14は、本発明によるクラッチ制御装置を備えたクラッチの他の実施形態を示す説明図であり、
図13はクラッチディスクが摩耗していない場合、
図14はクラッチディスクが摩耗した場合におけるレリーズ動作の開始状態である。
【0124】
図1〜
図8に示す実施形態のクラッチ10はプッシュタイプ、すなわち、レリーズスリーブ32を変速機側からエンジン側に押すことでクラッチを切断する方式であったが、本実施形態のクラッチ110はプルタイプ、すなわち、レリーズスリーブ32をエンジン側から変速機側に引くことでクラッチを切断する方式となっている。
【0125】
プルタイプは、プッシュタイプに対してクラッチレリーズ機構の作動方向が逆であるため、本実施形態においては、
図1〜
図8に示す実施形態に対し、レリーズフォーク136に対するカム144の配置と変位方向が逆になっているが、カムの作動方向を同じにした構成となっている。
【0126】
また、
図1〜
図8に示す実施形態のカム44は、モータ42に連結したコネクティングプレート46がカムスプリング52を介してカムプレート48を作動し、カムプレート48の後退を制限する制限部材としてローラ56を使用する構成であったが、本実施形態のカム144においては、カムプレート148が中間部材を介さずに直接モータ142に連結し、カムプレート148の後退を制限する制限部材としてストッパピン150を設けている。
【0127】
更に、
図1〜
図8に示す実施形態において、ローラ56はレリーズフォーク36に係合するプッシュロッド58に設けられているが、本実施形態においては、プッシュロッドを用いずにローラ156はレリーズフォーク136に設けられている。
【0128】
図13において、クラッチ110は、エンジン出力軸4と一体に回転するフライホイール6から変速機入力軸8へのトルク伝達を断接する装置であり、クラッチディスク組立部112、クラッチカバー組立部118、クラッチレリーズ機構130、クラッチ制御装置140で構成されている。
【0129】
クラッチディスク組立部112は、変速機入力軸8の先端部にスプライン連結したクラッチハブ114と、クラッチハブ114に設けられたクラッチディスク116を備え、変速機入力軸8の軸方向に進退作動可能である。
【0130】
クラッチカバー組立部118は、フライホイール6と一体に回転するクラッチカバー120と、クラッチカバー120に設けたガイドピン122にガイドされエンジン出力軸4の軸方向に作動可能なプレッシャープレート124と、ピボットリング126を支点にしてクラッチカバー120に支持されたダイヤフラムスプリング128を備えている。
【0131】
ダイヤフラムスプリング128の中間部128aが、ピボットリング126を支点とする弾性によって、プレッシャープレート124を介してクラッチディスク116をフライホイール6に押圧し、クラッチ110は、プレッシャープレート124とフライホイール6とでクラッチディスク116を挟み込むことで発生する摩擦力によって、エンジン出力軸4のトルクをクラッチハブ114を介して変速機入力軸8に伝達する。
【0132】
クラッチレリーズ機構130は、変速機入力軸8にスプライン連結したレリーズスリーブ132と、レリーズスリーブ132の外周部に内輪を嵌合したレリーズベアリング134と、クラッチハウジング(図示していない)に設けたフォークサポート138に支持されたレリーズフォーク136を備えている。
【0133】
レリーズフォーク136は、レリーズスリーブ132側が二股になっており、その先端部136aが、各々レリーズスリーブ132に設けた係合部132aに当接しており、他端部にはローラ156を設けている。
【0134】
レリーズフォーク136は、スプリング等(図示していない)によって時計方向に弱く付勢されているため、先端部136aが係合部132aを介してレリーズスリーブ132をクラッチハブ114から離れる方向に移動させようとするが、レリーズベアリング134の外輪フランジ部がダイヤフラムスプリング128の内周部128bに当接し、レリーズスリーブ132の移動は抑止されている。
【0135】
クラッチ制御装置140は、電動アクチュエータであるモータ142、モータ142が駆動するカム144、カム144の位置を検出するためのエンコーダ154、エンコーダ154からの信号に基づいてモータ142を駆動制御するECU(制御部)160を備えている。
【0136】
ここで、カム144は、モータ142の駆動軸142aに連結したカムプレート148のみで構成され、ローラ156は、カム144の変位としてカムプレート148の径方向変位をレリーズフォーク136に円滑に伝達し、エンコーダ154は、カム144の位置としてモータ142の回転に応じて信号をECU60に出力する。
【0137】
カムプレート148は、時計方向回転時(カムの前進時)にローラ156を作動させる方向に押圧可能なカム形状のストローク部148aと、反時計方向回転時(カムの後退時)にモータ142に設けたストッパピン150に当接して後退を制限するストップ部148bと、ローラ156を押圧しないカム形状のアプローチ部148cと、時計方向の作動限界(カムの終端位置)となるリミット部148dを有する。
【0138】
図13において、カムプレート148は、ストローク部148aにローラ156が当接した状態、すなわちカム144は初期位置にあり、この状態からECU160がモータ142を駆動してカムプレート148を時計方向に回転させることでレリーズ動作を開始する。なお、カム144が退避位置にある場合のカムプレート148sを想像線で示している。
【0139】
レリーズ動作が開始されると、
図13の状態からカムプレート148が時計方向に回転し、ストローク部148aがローラ156を押すことで、レリーズフォーク136、レリーズスリーブ132を介してレリーズベアリング134がダイヤフラムスプリング128の内周部128bをクラッチハブ144から離れる方向に引く。
【0140】
レリーズベアリング134の押圧によって、ダイヤフラムフラムスプリング128は、ピボットリング126を支点として中間部128aがクラッチハブ114から離れる方向に変位することで、中間部128aのプレッシャープレート124への押圧力が減少し、クラッチ110は、接続状態から半クラッチ状態を経由して切断状態に移行する。
【0141】
図14においては、摩耗したクラッチディスク116は、
図13に示す新品状態からの厚さが減少しており、クラッチ110が完全に接続された状態で、
図13の状態からプレッシャープレート124、レリーズスリーブ132及びレリーズベアリング134はフライホイール6側に移動している。
【0142】
また、カムプレート148は、ストローク部148aがローラ156に当接した位置にあるが、ローラ156が
図13のクラッチディスク116が摩耗していない場合よりもカムプレート148の中心方向にあるため、レリーズ動作の開始位置は
図13に対して手前側、すなわち、反時計方向側となっている。
【0143】
本実施形態においても、
図1〜
図8に示す実施形態と同様に、
図9のフローチャートに示す手順で、クラッチ制御装置140は初期値設定を実行し、設定したカムの初期位置に基づいてクラッチ110の断接及び伝達トルクを制御する。
【0144】
本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値等による限定は受けない。