特許第5666886号(P5666886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666886
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/16 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   G01D5/16 M
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2010-260152(P2010-260152)
(22)【出願日】2010年11月22日
(65)【公開番号】特開2012-112707(P2012-112707A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】有賀 英吉
(72)【発明者】
【氏名】倉本 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】森山 克也
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−311053(JP,A)
【文献】 特開2001−004405(JP,A)
【文献】 特開平11−094512(JP,A)
【文献】 特開2008−046104(JP,A)
【文献】 特開平05−141984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
G01P 3/00−3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体に対する回転体の回転を検出するロータリエンコーダであって、
前記固定体および前記回転体のうちの一方側部材には、N極とS極とが周方向において1極ずつ着磁された着磁面を回転軸線方向の一方側に向ける第1マグネットと、該第1マグネットに対して径方向の外側で離間する位置でN極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面を回転軸線方向の一方側に向ける第2マグネットと、径方向において前記第1マグネットと前記第2マグネットとの間に位置する環状のシールド部材と、が設けられ、
前記固定体および前記回転体のうちの他方側部材には、前記第1マグネットに対して回転軸線方向の一方側で対向する第1感磁素子と、前記第2マグネットに対して回転軸線方向の一方側で対向する第2感磁素子と、が設けられ、
前記シールド部材は、前記第1マグネットおよび前記第2マグネットより回転軸線方向の一方側に向かって突出し
前記第1感磁素子は、前記第1マグネットの位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相の磁気抵抗パターンとB相の磁気抵抗パターンとを備えた第1磁気抵抗素子であり、当該第1磁気抵抗素子において、前記A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+a相の磁気抵抗パターンおよび−a相の磁気抵抗パターンを備え、前記B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+b相の磁気抵抗パターンおよび−b相の磁気抵抗パターンを備え、
前記第2感磁素子は、前記第2マグネットの位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相の磁気抵抗パターンとB相の磁気抵抗パターンとを備えた第2磁気抵抗素子であり、当該第2磁気抵抗素子において、前記A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+a相の磁気抵抗パターンおよび−a相の磁気抵抗パターンを備え、前記B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+b相の磁気抵抗パターンおよび−b相の磁気抵抗パターンを備え、
前記一方側部材には、前記第1マグネットに対向する位置に、第1ホール素子と、該第1ホール素子に対して周方向において機械角で90°ずれた箇所に位置する第2ホール素子と、が設けられ、
前記第1磁気抵抗素子での検出結果、前記第1ホール素子での検出結果、および前記第2ホール素子での検出結果に基づいて前記回転体の第1絶対角度位置情報が生成され、
前記第2磁気抵抗素子での検出結果、および前記第1絶対角度位置情報に基づいて、前
記第1絶対角度位置情報より高分解能の前記回転体の第2絶対角度位置情報が生成されることを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項2】
前記第2マグネットの着磁面では、周方向においてN極とS極とが交互に多極に着磁されたトラックが径方向で複数、並列し、
前記複数のトラックにおいて、隣接するトラック間ではN極およびS極の位置が周方向でずれており、
前記第2感磁素子は、隣接するトラックの境界部分に回転軸線方向で重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリエンコーダ。
【請求項3】
前記第2マグネットと前記第2感磁素子との回転軸線方向における離間距離は、前記第1マグネットと前記第1感磁素子との回転軸線方向における離間距離より小であることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリエンコーダ。
【請求項4】
前記第1感磁素子と前記第2感磁素子とは、回転軸線方向において同一の位置にあって、
前記第2マグネットは、前記第1マグネットより回転軸線方向の一方側に位置していることを特徴とする請求項3に記載のロータリエンコーダ。
【請求項5】
前記シールド部材は、径方向において前記第1マグネットおよび前記第2マグネットのうちの少なくとも一方から離間していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のロータリエンコーダ。
【請求項6】
前記シールド部材と前記第1マグネットとの径方向における間隔は、前記シールド部材と前記第2マグネットとの径方向における間隔より小であることを特徴とする請求項5に記載のロータリエンコーダ。
【請求項7】
前記シールド部材は、径方向において前記第1マグネットに隣接し、径方向において前記第2マグネットから離間していることを特徴とする請求項6に記載のロータリエンコーダ。
【請求項8】
前記第1マグネットおよび前記第2マグネットは、一体の磁性体の互いに異なる部分に着磁してなることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のロータリエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットと感磁素子とを用いた磁気式のロータリエンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定体に対する回転体の回転を検出するロータリエンコーダでは、例えば、回転体の側には、N極とS極とが周方向において交互に複数着磁された第1着磁面を回転軸線方向の一方側に向ける第1マグネットと、第1マグネットに対して径方向の外側で離間する位置でN極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の第2着磁面を回転軸線方向の一方側に向ける第2マグネットとが用いられ、第2マグネットは、第1マグネットに比して極数が多く形成されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載のロータリエンコーダでは、第1マグネットに対して回転軸線方向の一方側で第1感磁素子を対向させ、第2マグネットに対して回転軸線方向の一方側で第2感磁素子を対向させることにより、1回転当たりのパルス数が異なる信号を得るようになっている。
【0004】
また、特許文献1に記載のロータリエンコーダでは、第1マグネットと第2マグネットの径方向の隙間を埋めるように環状のシールド部材が設けられており、第1マグネット、シールド部材および第2マグネットは回転軸線方向において同一箇所に位置している。また、第1感磁素子および第2感磁素子も、回転軸線方向において同一箇所に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3200361号の図1および図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、第1マグネット、シールド部材および第2マグネットは回転軸線方向において同一箇所に位置しているため、第1マグネットから第2感磁素子への磁気的な干渉や、第2マグネットから第1感磁素子への磁気的な干渉を十分に回避できない。このため、第2マグネットの磁極数を増やしてロータリエンコーダの高分解能化を図ることが困難であるという問題点がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、マグネットと感磁素子とからなる対を複数組、回転軸線方向の一方側に設けた場合でも高い分解能を得ることのできるロータリエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、固定体に対する回転体の回転を検出するロータリエンコーダであって、前記固定体および前記回転体のうちの一方側部材には、N極とS極とが周方向において1極ずつ着磁された着磁面を回転軸線方向の一方側に向ける第1マグネットと、該第1マグネットに対して径方向の外側で離間する位置でN極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面を回転軸線方向の一方側に向ける第2マグネットと、径方向において前記第1マグネットと前記第2マグネットとの間に位置する環状のシールド部材と、が設けられ、前記固定体および前記回転体のうちの他方側部材には、前記第1マグネットに対して回転軸線方向の一方側で対向する第1感磁素子と、前記第2マグネットに対して回転軸線方向の一方側で対向する第2感磁素子と、が設けられ、前記シールド部材は、前記第1マグネットおよび前記第2マグネットより回転軸線方向
の一方側に向かって突出し、前記第1感磁素子は、前記第1マグネットの位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相の磁気抵抗パターンとB相の磁気抵抗パターンとを備えた第1磁気抵抗素子であり、当該第1磁気抵抗素子において、前記A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+a相の磁気抵抗パターンおよび−a相の磁気抵抗パターンを備え、前記B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+b相の磁気抵抗パターンおよび−b相の磁気抵抗パターンを備え、前記第2感磁素子は、前記第2マグネットの位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相の磁気抵抗パターンとB相の磁気抵抗パターンとを備えた第2磁気抵抗素子であり、当該第2磁気抵抗素子において、前記A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+a相の磁気抵抗パターンおよび−a相の磁気抵抗パターンを備え、前記B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+b相の磁気抵抗パターンおよび−b相の磁気抵抗パターンを備え、前記一方側部材には、前記第1マグネットに対向する位置に、第1ホール素子と、該第1ホール素子に対して周方向において機械角で90°ずれた箇所に位置する第2ホール素子と、が設けられ、前記第1磁気抵抗素子での検出結果、前記第1ホール素子での検出結果、および前記第2ホール素子での検出結果に基づいて前記回転体の第1絶対角度位置情報が生成され、前記第2磁気抵抗素子での検出結果、および前記第1絶対角度位置情報に基づいて、前記第1絶対角度位置情報より高分解能の前記回転体の第2絶対角度位置情報が生成されることを特徴とする。
【0009】
本発明では、第1マグネットの着磁面および第2マグネットの着磁面はいずれも、回転軸線方向の一方側に向いており、かかる回転軸線方向の一方側に第1感磁素子および第2感磁素子が配置されているが、径方向において第1マグネットと第2マグネットとの間にシールド部材が配置され、かかるシールド部材は、第1マグネットおよび第2マグネットより回転軸線方向の一方側に向かって突出している。このため、第1マグネットから第2感磁素子への磁気的な干渉や、第2マグネットから第1感磁素子への磁気的な干渉を回避することができる。それ故、第2マグネットの磁極数を増やしても、第2感磁素子は第2マグネットの磁極を確実に検出するので、ロータリエンコーダの高分解能化を図ることができる。
【0010】
本発明において、前記第1感磁素子は、前記第1マグネットの位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相の磁気抵抗パターンとB相の磁気抵抗パターンとを備えた第1磁気抵抗素子であり、当該第1磁気抵抗素子において、前記A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+a相の磁気抵抗パターンおよび−a相の磁気抵抗パターンを備え、前記B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+b相の磁気抵抗パターンおよび−b相の磁気抵抗パターンを備え、前記第2感磁素子は、前記第2マグネットの位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相の磁気抵抗パターンとB相の磁気抵抗パターンとを備えた第2磁気抵抗素子であり、当該第2磁気抵抗素子において、前記A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+a相の磁気抵抗パターンおよび−a相の磁気抵抗パターンを備え、前記B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって前記回転体の移動検出を行う+b相の磁気抵抗パターンおよび−b相の磁気抵抗パターンを備えている。このため、第1磁気抵抗素子での検出結果に基づいて回転体の第1角度位置情報が生成され、第2磁気抵抗素子での検出結果、および第1角度位置情報に基づいて、第1角度位置情報より高分解能の回転体の第2角度位置情報を生成することができる。
【0011】
本発明において、前記一方側部材には、前記第1マグネットに対向する位置に、第1ホール素子と、該第1ホール素子に対して周方向において機械角で90°ずれた箇所に位置する第2ホール素子と、が設けられ、前記第1磁気抵抗素子での検出結果、前記第1ホー
ル素子での検出結果、および前記第2ホール素子での検出結果に基づいて前記回転体の第1絶対角度位置情報が生成され、前記第2磁気抵抗素子での検出結果、および前記第1絶対角度位置情報に基づいて、前記第1絶対角度位置情報より高分解能の前記回転体の第2絶対角度位置情報が生成される。このため、第1磁気抵抗素子での検出結果、第1ホール素子での検出結果、および第2ホール素子での検出結果に基づいて回転体の第1絶対角度位置情報が生成されるので、ロータリエンコーダにアブソリュート動作を行わせることができる。また、第2磁気抵抗素子での検出結果、および第1絶対角度位置情報に基づいて、第1絶対角度位置情報より高分解能の回転体の第2絶対角度位置情報が生成されるので、ロータリエンコーダに高分解能のアブソリュート動作を行わせることができる。
【0012】
本発明において、前記第2マグネットの着磁面では、周方向においてN極とS極とが交互に多極に着磁されたトラックが径方向で複数、並列し、前記複数のトラックにおいて、隣接するトラック間ではN極およびS極の位置が周方向でずれており、前記第2感磁素子は、隣接するトラックの境界部分に回転軸線方向で重なる位置に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、各磁気抵抗パターンは、各磁気抵抗パターンの抵抗値の飽和感度領域以上の磁界強度でトラックの面内方向で向きが変化する回転磁界を検出することができる。従って、回転体の角度位置等を精度良く検出できる。
【0013】
本発明において、前記第2マグネットと前記第2感磁素子との回転軸線方向における離間距離は、前記第1マグネットと前記第1感磁素子との回転軸線方向における離間距離より小であることが好ましい。かかる構成によれば、第2マグネットの磁極数を増やしても、第2感磁素子は第2マグネットの磁極を確実に検出するので、ロータリエンコーダの高分解能化を図ることができる。
【0014】
本発明において、前記第1感磁素子と前記第2感磁素子とは、回転軸線方向において同一の位置にあって、前記第2マグネットは、前記第1マグネットより回転軸線方向の一方側に位置していることが好ましい。かかる構成によれば、第1感磁素子と第2感磁素子とを同一基板上に配置した場合でも、第2マグネットと第2感磁素子との回転軸線方向における離間距離を、第1マグネットと第1感磁素子との回転軸線方向における離間距離より小とすることができる。
【0015】
本発明において、前記シールド部材は、径方向において前記第1マグネットおよび前記第2マグネットのうちの少なくとも一方から離間していることが好ましい。かかる構成によれば、第1マグネットと第2マグネットとの径方向における離間距離や、シールド部材の厚さ寸法にばらつきがあっても、シールド部材を第1マグネットと第2マグネットとの間に容易に配置することができる。
【0016】
本発明において、前記シールド部材と前記第1マグネットとの径方向における間隔は、前記シールド部材と前記第2マグネットとの径方向における間隔より小であることが好ましい。シールド部材とマグネットとを近接させると、磁力線がシールド部材の側に向かう分、感磁素子での磁極検出の感度が低下するおそれがあるが、磁極数の少ない第1マグネットの側にシール部材を近接させれば、第2感磁素子での磁極検出の感度低下を回避することができる。
【0017】
本発明において、前記シールド部材は、径方向において前記第1マグネットに隣接し、径方向において前記第2マグネットから離間していることが好ましい。かかる構成によれば、第1マグネットを基準にシールド部材の位置決めを行うことができる。
【0018】
本発明において、前記第1マグネットおよび前記第2マグネットは、一体の磁性体の互いに異なる部分に着磁してなることが好ましい。かかる構成によれば、第1マグネットと第2マグネットとを別体とした場合に比してロータリエンコーダの組み立てを効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、第1マグネットの着磁面および第2マグネットの着磁面はいずれも、回転軸線方向の一方側に向いており、かかる回転軸線方向の一方側に第1感磁素子および第2感磁素子が配置されているが、径方向において第1マグネットと第2マグネットとの間にシールド部材が配置され、かかるシールド部材は、第1マグネットおよび第2マグネットのうちの少なくとも一方のマグネットより回転軸線方向の一方側に向かって突出している。このため、第1マグネットから第2感磁素子への磁気的な干渉や、第2マグネットから第1感磁素子への磁気的な干渉を回避することができる。それ故、第2マグネットの磁極数を増やしても、第2感磁素子は第2マグネットの磁極を確実に検出するので、ロータリエンコーダの高分解能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダの外観等を示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダの固定体の一部を切り欠いて示す側面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダにおけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダにおける原理を示す説明図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダに用いた感磁素子の磁気抵抗パターンの電気的な接続構造の説明図である。
図6】本発明の実施の形態2に係るロータリエンコーダにおけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図である。
図7】本発明の実施の形態3に係るロータリエンコーダにおけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態4に係るロータリエンコーダにおけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態5に係るロータリエンコーダにおけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図である。
図10】本発明の実施の形態6に係るロータリエンコーダにおけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したロータリエンコーダの実施の形態を説明する。なお、ロータリエンコーダにおいて、固定体に対する回転体の回転を検出するにあたっては、固定体にマグネットを設け、回転体に感磁素子を設けた構成、および固定体に感磁素子を設け、回転体にマグネットを設けた構成のいずれの構成を採用してもよいが、以下の説明では、固定体に感磁素子を設け、回転体にマグネットを設けた構成を中心に説明する。また、以下に参照する図面において、マグネットおよび感磁素子等の構成について模式的に示してあり、第2マグネットにおける磁極についてはその数を減らして模式的に示してある。また、第2感磁素子における磁気抵抗パターンと第2マグネットの磁極との位置関係についても互いの位置をずらして模式的に示してある。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダの外観等を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、ロータリエンコーダを回転軸線方向の一方側かつ斜め方向からみた斜視図、および回転軸線方向の一方側からみた平面図である。図2は、本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダの固定体の一部を切り欠いて示す側面図である。
【0023】
図1および図2に示すロータリエンコーダ1は、固定体10に対する回転体2の軸線周り(回転軸線周り)の回転を磁気的に検出する装置であり、固定体10は、モータ装置のフレーム等に固定され、回転体2は、モータ装置の回転出力軸等に連結された状態で使用される。
【0024】
固定体10は、センサ基板15と、センサ基板15を支持する複数の支持部材11とを備えており、本形態において、支持部材11は、円形の開口部122が形成された底板部121を備えたベース体12と、ベース体12に固定されたセンサ支持板13とからなる。本形態において、センサ支持板13は、ベース体12において開口部122の縁部分から回転軸線方向Lの一方側L1に向けて突出した略円筒状の胴部123にネジ191、192等により固定されている。なお、センサ支持板13からは、回転軸線方向Lの一方側L1に向けて複数本の端子16が突出している。また、胴部123において回転軸線方向Lの一方側L1に位置する端面には、突起124や穴125等が形成されており、かかる穴125等を利用して、胴部123にはセンサ基板15がネジ193等により固定されている。その際、センサ基板15は、突起124等により所定位置に位置決めされた状態で精度よく固定される。センサ基板15において、回転軸線方向Lの一方側L1の面にはコネクタ17が設けられている。
【0025】
回転体2は、胴部123の内側に配置される円筒状の部材であって、その内側にはモータの回転出力軸(図示せず)が嵌合等の方法で連結されている。従って、回転体2は、軸線周りに回転可能である。
【0026】
(マグネットおよび感磁素子等のレイアウト等)
図3は、本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダ1におけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図であり、図3(a)、(b)は、マグネット等の平面的なレイアウトを示す説明図、およびマグネット等の回転軸線方向Lにおけるレイアウトを示す説明図である。図4は、本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダ1における原理を示す説明図であり、図4(a)、(b)、(c)は感磁素子に対する信号処理系の説明図、感磁素子から出力される信号の説明図、およびかかる信号と回転体2の角度位置θ(電気角)との関係を示す説明図である。図5は、本発明の実施の形態1に係るロータリエンコーダ1に用いた感磁素子の磁気抵抗パターンの電気的な接続構造の説明図である。なお、図3(a)および図4(a)では、マグネットおよび感磁素子等の構成を模式的に示してあり、第2マグネット30における磁極についてはその数を減らして模式的に示してある。また、第2感磁素子60における磁気抵抗パターンと第2マグネット30の磁極との位置関係についても互いの位置をずらして模式的に示してあり、第2感磁素子60の磁気抵抗パターンは、周方向において極めて狭い範囲に形成されている。
【0027】
図1図4に示すように、本形態のロータリエンコーダ1において、回転体2の側には、N極とS極とが周方向において1極ずつ着磁された着磁面21を回転軸線方向Lの一方側L1に向ける第1マグネット20と、第1マグネット20に対して径方向の外側で離間する位置でN極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面31を回転軸線方向Lの一方側L1に向ける第2マグネット30とが保持されている。かかる第1マグネット20および第2マグネット30は回転体2と一体に回転軸線周りに回転する。
【0028】
本形態において、第1マグネット20は円盤状の永久磁石からなる。第2マグネット30は円筒状であり、第1マグネット20に対して径方向の外側で離間する位置に配置されている。第1マグネット20および第2マグネット30はボンド磁石等からなる。本形態において、第2マグネット30の着磁面31には、周方向においてN極とS極とが交互に多極に着磁されたトラック310が径方向で複数、並列している。本形態では、トラック310が2列形成されている。かかる2つのトラック310の間ではN極およびS極の位置が周方向でずれており、本形態では、2つのトラック310の間においてN極およびS極は周方向に1極分ずれている。
【0029】
また、回転体2には、環状の磁性部材からなるシールド部材70が保持されており、かかるシールド部材70は、径方向において第1マグネット20と第2マグネット30との間に配置されている。
【0030】
固定体10には、第1マグネット20の着磁面21に対して回転軸線方向Lの一方側L1で対向する第1感磁素子40と、第2マグネット30の着磁面31に対して回転軸線方向Lの一方側L1で対向する第2感磁素子60とが設けられている。本形態において、第1感磁素子40は、センサ基板15の回転軸線方向Lの他方側L2の面に保持され、第2感磁素子60は、センサ支持板13の回転軸線方向Lの他方側L2の面に保持されている。ここで、センサ支持板13の回転軸線方向Lの他方側L2の面は、センサ基板15の回転軸線方向Lの他方側L2の面より回転軸線方向Lの一方側L1に位置している。
【0031】
また、固定体10には、第1マグネット20に対向する位置に、第1ホール素子51と、第1ホール素子51に対して周方向において機械角で90°ずれた箇所に位置する第2ホール素子52とが設けられている。本形態において、第1ホール素子51および第2ホール素子52は、センサ基板15の回転軸線方向Lの他方側L2の面に保持されており、第1マグネット20に対して回転軸線方向Lの一方側L1で対向している。
【0032】
図3および図4に示すように、第1感磁素子40は、第1マグネット20の位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相(SIN)の磁気抵抗パターンとB相(COS)の磁気抵抗パターンとを備えた第1磁気抵抗素子である。かかる第1感磁素子40(第1磁気抵抗素子)において、A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+a相(SIN+)の磁気抵抗パターン43および−a相(SIN-)の磁気抵抗パターン41を備えており、B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+b相(COS+)の磁気抵抗パターン44および−b相(COS-)の磁気抵抗パターン42を備えている。
【0033】
ここで、+a相の磁気抵抗パターン43および−a相の磁気抵抗パターン41は、図5(a)に示すブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+a相の磁気抵抗パターン43の中点位置には、+a相が出力される端子(+a)が設けられ、−a相の磁気抵抗パターン41の中点位置には、−a相が出力される端子(−a)が設けられている。また、+b相の磁気抵抗パターン44および−b相の磁気抵抗パターン42も、+a相の磁気抵抗パターン44および−a相の磁気抵抗パターン41と同様、図5(b)に示すブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+b相の磁気抵抗パターン44の中点位置には、+b相が出力される端子(+b)が設けられ、−b相の磁気抵抗パターン42の中点位置には、−b相が出力される端子(−b)が設けられている。
【0034】
第2感磁素子60は、第2マグネット30の位相に対して、互いに90°の位相差を有するA相(SIN)の磁気抵抗パターンとB相(COS)の磁気抵抗パターンとを備えた第2磁気抵抗素子である。かかる第2感磁素子60(第2磁気抵抗素子)において、A相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+a相(SIN+)の磁気抵抗パターン64および−a相(SIN-)の磁気抵抗パターン62を備えており、B相の磁気抵抗パターンは、180°の位相差をもって回転体2の移動検出を行う+b相(COS+)の磁気抵抗パターン63および−b相(COS-)の磁気抵抗パターン61を備えている。
【0035】
ここで、+a相の磁気抵抗パターン64および−a相の磁気抵抗パターン62は、第1感磁素子40と同様、図5(a)に示すブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+a相の磁気抵抗パターン64の中点位置には、+a相が出力される端子(+a)が設けられ、−a相の磁気抵抗パターン62の中点位置には、−a相が出力される端子(−a)が設けられている。また、+b相の磁気抵抗パターン63および−b相の磁気抵抗パターン61は、+a相の磁気抵抗パターン64および−a相の磁気抵抗パターン62と同様、図5(b)に示すブリッジ回路を構成しており、一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+b相の磁気抵抗パターン63の中点位置には、+b相が出力される端子(+b)が設けられ、−b相の磁気抵抗パターン61の中点位置には、−b相が出力される端子(−b)が設けられている。
【0036】
かかる構成の第2感磁素子60は、図3および図4(a)に示すように、第2マグネット30において隣接するトラック310の境界部分に回転軸線方向Lで重なる位置に配置されている。このため、第2感磁素子60の磁気抵抗パターン61〜64は、各磁気抵抗パターン61〜64の抵抗値の飽和感度領域以上の磁界強度でトラック310の面内方向で向きが変化する回転磁界を検出することができる。すなわち、第2マグネット30は、複数のトラック310を備えているので、隣接するトラック310の境界線部分では、各磁気抵抗パターン61〜64の抵抗値の飽和感度領域以上の磁界強度でトラック310の面内方向の向きが変化する回転磁界が発生する。ここで、飽和感度領域とは、一般的に、抵抗値変化量kが、磁界強度Hと近似的に「k∝H2」の式で表すことができる領域以外の領域をいう。また、飽和感度領域以上の磁界強度で回転磁界(磁気ベクトルの回転)の方向を検出する際の原理は、強磁性金属からなる磁気抵抗パターン61〜64に通電した状態で、抵抗値が飽和する磁界強度を印加したとき、磁界と電流方向がなす角度θと、磁気抵抗パターン61〜64の抵抗値Rとの間には、下式
R=R0−k×sin2θ
R0:無磁界中での抵抗値
k:抵抗値変化量(飽和感度領域以上のときは定数)
で示す関係があることを利用するものである。このような原理に基づいて回転磁界を検出すれば、角度θが変化すると抵抗値Rが正弦波に沿って変化するので、波形品質の高いA相およびB相を得ることができる。
【0037】
かかる構成のロータリエンコーダ1において、第1感磁素子40、第1ホール素子51、第2ホール素子52、および第2感磁素子60には、増幅回路91〜96や、これらの増幅回路91〜96から出力される正弦波信号sin、cosに補間処理や各種演算処理を行うCPU90(演算回路)等が構成されており、第1感磁素子40、第1ホール素子51、第2ホール素子52、および第2感磁素子60からの出力に基づいて、固定体10に対する回転体2の回転角度位置が求められる。
【0038】
より具体的には、ロータリエンコーダ1において、回転体2が1回転すると、第1感磁素子40(第1磁気抵抗素子)からは、図4(b)に示す正弦波信号sin、cosが2周期分、出力される。従って、正弦波信号sin、cosを増幅回路91、92により増幅した後、CPU90において、図4(c)に示すように、正弦波信号sin、cosからθ=tan-1(sin/cos)を求めれば、回転出力軸の角度位置θが分かる。また、本形態では、第1マグネット20の中心からみて90°ずれた位置に第1ホール素子51および第2ホール素子52が配置されている。このため、現在位置が正弦波信号sin、cosのいずれの区間に位置するかが分かる。従って、ロータリエンコーダ1は、第1感磁素子40での検出結果、第1ホール素子51での検出結果、および第2ホール素子52での検出結果に基づいて回転体2の第1絶対角度位置情報を生成することができ、アブソリュート動作を行うことができる。
【0039】
また、本形態のロータリエンコーダ1では、N極とS極とが周方向において交互に複数着磁された環状の着磁面31を備えた第2マグネット30が用いられており、かかる第2マグネット30に対向する第2感磁素子60(第2磁気抵抗素子)からは、回転体2が第2マグネット30の磁極の1周期分を回転する度に、図4(b)に示すような正弦波信号sin、cosが出力される。従って、第2感磁素子60から出力された正弦波信号sin、cosを増幅回路91、92により増幅した後、CPU90において、パルス信号等に変換すれば、第2マグネット30の磁極に対応する信号が得られる。従って、CPU90において、第1感磁素子40での検出結果、第1ホール素子51での検出結果、および第2ホール素子52での検出結果に基づいて得られた回転体2の第1絶対角度位置情報と、第2感磁素子60での検出結果とを用いれば、回転体2の第2絶対角度位置情報を得ることができ、かかる第2絶対角度位置情報は、第1絶対角度位置情報に比して分解能が高い。すなわち、第1感磁素子40での検出結果、第1ホール素子51での検出結果、および第2ホール素子52での検出結果に基づいて回転体2の第1絶対角度位置情報を検出し、かかる第1絶対角度位置情報、および第2感磁素子60での検出結果を用いて、回転体2のさらに高い精度の絶対角度位置(第2絶対角度位置情報)を得る。従って、例えば、第1感磁素子40での検出結果、第1ホール素子51での検出結果、および第2ホール素子52での検出結果に基づいて得られた回転体2の第1絶対角度位置情報での分解能は、機械角で±0.2°であったが、かかる第1絶対角度位置情報と第2感磁素子60での検出結果とを用いて得た第2絶対角度位置情報での分解能は、機械角で±0.02°である。
【0040】
(シールド部材70の構成)
再び図3において、本形態のロータリエンコーダ1では、径方向において第1マグネット20と第2マグネット30との間に環状の磁性部材からなるシールド部材70が回転体2に設けられており、第1マグネット20、シールド部材70、および第2マグネット30は、径方向の内側から外側に向かってこの順に同心状に配置されている。かかるシールド部材70は、SPCC材やSPCE材等からなる。
【0041】
ここで、シールド部材70は、第1マグネット20および第2マグネット30より回転軸線方向Lの一方側L1に向かって突出している。より具体的には、第1マグネット20の着磁面21および第2マグネット30の着磁面31は、回転軸線方向Lの一方側L1に向かって同一の位置にあるが、シールド部材70の回転軸線方向Lの一方側L1の端部は、第1マグネット20の着磁面21および第2マグネット30の着磁面31より寸法s1だけ、回転軸線方向Lの一方側L1に位置する。
【0042】
また、本形態において、シールド部材70は、径方向において第1マグネット20および第2マグネット30の少なくとも一方に対して離間している。本形態において、シールド部材70は、径方向において第1マグネット20および第2マグネット30の双方と離間しており、シールド部材70と第1マグネット20との間隔r1は、シールド部材70と第2マグネット30との間隔r2より大である。
【0043】
また、本形態においては、第1マグネット20の着磁面21および第2マグネット30の着磁面31は、回転軸線方向Lの一方側L1に向かって同一の位置にある一方、第1感磁素子40は、センサ基板15の回転軸線方向Lの他方側L2の面に保持され、第2感磁素子60は、センサ支持板13の回転軸線方向Lの他方側L2の面に保持されている。このため、第2感磁素子60と第2マグネット30との回転軸線方向Lの離間距離t2は、第1感磁素子40と第1マグネット20との回転軸線方向Lの離間距離t1より小である。例えば、第2感磁素子60と第2マグネット30との回転軸線方向Lの離間距離t2は0.2〜0.3mmであり、第1感磁素子40と第1マグネット20との回転軸線方向Lの離間距離t1は1〜1.5mmである。
【0044】
なお、第1ホール素子51および第2ホール素子52は、第1感磁素子40と同様、センサ基板15の回転軸線方向Lの他方側L2の面に保持されている。このため、第1感磁素子40と第1マグネット20との回転軸線方向Lの離間距離t1と、第1ホール素子51および第2ホール素子52と第1マグネット20との回転軸線方向Lの離間距離とは略等しくなっている。
【0045】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のロータリエンコーダ1では、第1マグネット20の着磁面21および第2マグネット30の着磁面31はいずれも、回転軸線方向Lの一方側L1に向いており、かかる回転軸線方向Lの一方側L1に第1感磁素子40および第2感磁素子60が配置されている。但し、径方向において第1マグネット20と第2マグネット30との間にシールド部材70が配置され、かかるシールド部材70は、第1マグネット20および第2マグネット30より回転軸線方向Lの一方側L1に向かって突出している。このため、第1マグネット20から第2感磁素子60への磁気的な干渉や、第2マグネット30から第1感磁素子40への磁気的な干渉を回避することができる。それ故、第2マグネット30の磁極数を増やしても、第2感磁素子60は第2マグネット30の磁極を確実に検出するので、ロータリエンコーダ1の高分解能化を図ることができる。
【0046】
また、本形態において、シールド部材70は、径方向において第1マグネット20および第2マグネット30から離間しているため、第1マグネット20と第2マグネット30との径方向における離間距離や、シールド部材70の厚さ寸法にばらつきがあっても、シールド部材70を第1マグネット20と第2マグネット30との間に容易に配置することができる。また、シールド部材70は、径方向において第1マグネット20および第2マグネット30から離間しているため、第1マグネット20および第2マグネット30から磁力線がシールド部材70の側に向かう量を低く抑えることができるので、第1感磁素子40および第2感磁素子60での磁極検出の感度が低下することを抑えることができる。
【0047】
また、第2感磁素子60と第2マグネット30との回転軸線方向Lの離間距離t2は、第1感磁素子40と第1マグネット20との回転軸線方向Lの離間距離t1より小であるため、第2マグネット30の磁極数を増やしても、第2感磁素子60は第2マグネット30の磁極を確実に検出するので、ロータリエンコーダ1の高分解能化を図ることができる。
【0048】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の形態2に係るロータリエンコーダ1におけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図であり、図6(a)、(b)は、マグネット等の平面的なレイアウトを示す説明図、およびマグネット等の回転軸線方向Lにおけるレイアウトを示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、本形態のロータリエンコーダ1でも、実施の形態1と同様、径方向において第1マグネット20と第2マグネット30との間には環状の磁性部材からなるシールド部材70が回転体2に設けられており、第1マグネット20、シールド部材70、および第2マグネット30は、径方向の内側から外側に向かってこの順に同心状に配置されている。また、シールド部材70は、実施の形態1と同様、径方向において第1マグネット20および第2マグネット30の双方と離間しており、シールド部材70と第1マグネット20との間隔r1は、シールド部材70と第2マグネット30との間隔r2より大である。
【0050】
ここで、シールド部材70は、第1マグネット20および第2マグネット30より回転軸線方向Lの一方側L1に向かって突出している。より具体的には、本形態において、第2マグネット30の着磁面31は、第1マグネット20の着磁面21より回転軸線方向Lの一方側L1に向かって突出しているが、シールド部材70は、第2マグネット30の着磁面31よりさらに寸法s1だけ、回転軸線方向Lの一方側L1に突出している。従って、第1マグネット20から第2感磁素子60への磁気的な干渉や、第2マグネット30から第1感磁素子40への磁気的な干渉を回避することができるので、第2マグネット30の磁極数を増やしても、第2感磁素子60は第2マグネット30の磁極を確実に検出する等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0051】
ここで、第2マグネット30の着磁面31は、第1マグネット20の着磁面21より回転軸線方向Lの一方側L1に向かって突出している一方、第1感磁素子40、第2感磁素子60、第1ホール素子51および第2ホール素子52は、回転軸線方向Lにおいて略同一の位置にある。このため、第2感磁素子60と第2マグネット30との回転軸線方向Lの離間距離t2は、第1感磁素子40と第1マグネット20との回転軸線方向Lの離間距離t1より小である。従って、第2マグネット30の磁極数を増やしても、第2感磁素子60は第2マグネット30の磁極を確実に検出するので、ロータリエンコーダ1の高分解能化を図ることができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0052】
また、第1感磁素子40、第2感磁素子60、第1ホール素子51および第2ホール素子52は、回転軸線方向Lにおいて略同一の位置にあるため、本形態において、第1感磁素子40、第2感磁素子60、第1ホール素子51および第2ホール素子52は、共通のセンサ基板15に保持されている。このため、実施の形態1で説明したセンサ支持板13を省略することができる等、部品点数の削減を図ることができる。
【0053】
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の形態3に係るロータリエンコーダ1におけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図であり、図7(a)、(b)は、マグネット等の平面的なレイアウトを示す説明図、およびマグネット等の回転軸線方向Lにおけるレイアウトを示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、本形態のロータリエンコーダ1でも、実施の形態1と同様、径方向において第1マグネット20と第2マグネット30との間には環状の磁性部材からなるシールド部材70が回転体2に設けられており、第1マグネット20、シールド部材70、および第2マグネット30は、径方向の内側から外側に向かってこの順に同心状に配置されている。
【0055】
本形態でも、実施の形態2と同様、本形態において、第1感磁素子40、第2感磁素子60、第1ホール素子51および第2ホール素子52は、共通のセンサ基板15に保持されているため、第1感磁素子40、第2感磁素子60、第1ホール素子51および第2ホール素子52は、回転軸線方向Lにおいて略同一の位置にある。これに対して、第2マグネット30の着磁面31は、第1マグネット20の着磁面21より回転軸線方向Lの一方側L1に向かって突出している。このため、第2感磁素子60と第2マグネット30との回転軸線方向Lの離間距離t2は、第1感磁素子40と第1マグネット20との回転軸線方向Lの離間距離t1より小である。従って、第2マグネット30の磁極数を増やしても、第2感磁素子60は第2マグネット30の磁極を確実に検出するので、ロータリエンコーダ1の高分解能化を図ることができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0056】
また、シールド部材70は、第1マグネット20および第2マグネット30より回転軸線方向Lの一方側L1に向かって突出している。従って、第1マグネット20から第2感磁素子60への磁気的な干渉や、第2マグネット30から第1感磁素子40への磁気的な干渉を回避することができるので、第2マグネット30の磁極数を増やしても、第2感磁素子60は第2マグネット30の磁極を確実に検出する等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0057】
ここで、シールド部材70は、実施の形態1と同様、径方向において第1マグネット20および第2マグネット30の双方と離間しているが、シールド部材70と第1マグネット20との間隔r1は、シールド部材70と第2マグネット30との間隔r2より小である。すなわち、シールド部材70と第2マグネット30との間隔r2は、シールド部材70と第1マグネット20との間隔r1より大である。かかる構成によれば、第1マグネット20の磁力線がシールド部材70の側に向かう分、第1感磁素子40での磁極検出の感度が低下するおそれがあるが、第2マグネット30の磁力線については、シールド部材70の側に向かう量を低く抑えることができる。従って、第2感磁素子60での磁極検出の感度低下を回避することができる。
【0058】
[実施の形態4]
図8は、本発明の実施の形態4に係るロータリエンコーダ1におけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図であり、図8(a)、(b)は、マグネット等の平面的なレイアウトを示す説明図、およびマグネット等の回転軸線方向Lにおけるレイアウトを示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0059】
図8に示すように、本形態のロータリエンコーダ1でも、実施の形態1と同様、径方向において第1マグネット20と第2マグネット30との間には環状の磁性部材からなるシールド部材70が回転体2に設けられており、第1マグネット20、シールド部材70、および第2マグネット30は、径方向の内側から外側に向かってこの順に同心状に配置されている。ここで、シールド部材70は、径方向において第1マグネット20および第2マグネット30のうちの少なくとも一方とは離間しているが、他方とは接している。より具体的には、シールド部材70と第1マグネット20とは接している。従って、第1マグネット20を基準にシールド部材70の位置決めを行うことができる。その他の構成は実施の形態1〜3等と同様である。
【0060】
かかる構成の場合、第1マグネット20の磁力線がシールド部材70の側に向かう分、第1感磁素子40での磁極検出の感度が低下するおそれがあるが、第2マグネット30の磁力線については、シールド部材70の側に向かう量を低く抑えることができる。従って、第2感磁素子60での磁極検出の感度低下を回避することができる。
【0061】
[実施の形態5]
図9は、本発明の実施の形態5に係るロータリエンコーダ1におけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図であり、図9(a)、(b)は、マグネット等の平面的なレイアウトを示す説明図、およびマグネット等の回転軸線方向Lにおけるレイアウトを示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0062】
図9に示すように、本形態のロータリエンコーダ1でも、実施の形態1と同様、径方向において第1マグネット20と第2マグネット30との間には環状の磁性部材からなるシールド部材70が回転体2に設けられており、第1マグネット20、シールド部材70、および第2マグネット30は、径方向の内側から外側に向かってこの順に同心状に配置されている。
【0063】
ここで、第1マグネット20および第2マグネット30は、一体の磁性体80の互いに異なる部分に着磁してなり、磁性体80には、シールド部材70を保持する周溝85が形成されている。より具体的には、磁性体80は、第1マグネット20を構成する円柱状部分81と、第2マグネット30を構成する円筒状部分82と、円柱状部分81と円筒状部分82とを回転軸線方向Lの他方側L2で連結する円盤状部分83とを備えており、円盤状部分83には、回転軸線方向Lの一方側L1に開口する周溝85が円筒状部分82や円柱状部分81と同心状に形成されている。その他の構成は実施の形態1〜4等と同様である。
【0064】
かかる構成によれば、第1マグネット20と第2マグネット30とを別体とした場合に比してロータリエンコーダ1の組み立てを効率よく行うことができる。また、周溝85を基準にシールド部材70の位置決めを行うことができる。
【0065】
[実施の形態6]
図10は、本発明の実施の形態6に係るロータリエンコーダ1におけるマグネットおよび感磁素子等のレイアウトを示す説明図であり、図9(a)、(b)は、マグネット等の平面的なレイアウトを示す説明図、およびマグネット等の回転軸線方向Lにおけるレイアウトを示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0066】
図10に示すように、本形態のロータリエンコーダ1でも、実施の形態1と同様、径方向において第1マグネット20と第2マグネット30との間には環状の磁性部材からなるシールド部材70が回転体2に設けられており、第1マグネット20、シールド部材70、および第2マグネット30は、径方向の内側から外側に向かってこの順に同心状に配置されている。
【0067】
ここで、第1マグネット20および第2マグネット30は、実施の形態5と同様、一体の磁性体80の互いに異なる部分に着磁してなり、磁性体80には、シールド部材70を保持する周溝85が形成されている。より具体的には、磁性体80は、第1マグネット20を構成する円柱状部分81と、第2マグネット30を構成する円筒状部分82と、円柱状部分81と円筒状部分82とを回転軸線方向Lの他方側L2で連結する円盤状部分83とを備えており、円盤状部分83には、回転軸線方向Lの一方側L1に開口する周溝85が円筒状部分82や円柱状部分81と同心状に形成されている。
【0068】
ここで、円筒状部分82に径方向外側で隣接する箇所には環状の段部84が円筒状部分82や円柱状部分81と同心状に設けられており、かかる段部84は着磁されていない。また、周溝85は、段部84に径方向外側で隣接するように円筒状部分82や円柱状部分81と同心状に形成されている。その他の構成は実施の形態1〜5等と同様である。
【0069】
かかる構成によれば、第1マグネット20と第2マグネット30とを別体とした場合に比してロータリエンコーダ1の組み立てを効率よく行うことができる。また、周溝85および環状の段部84を基準にシールド部材70の位置決めを行うことができる。
【0070】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、第2マグネット30の着磁面31において、隣接するトラック310間でN極およびS極の位置が周方向で1極分ずれていたが、隣接するトラック310間でN極およびS極の位置が周方向でずれていればよく、必ずしも周方向で1極分ずらす必要はない。また、本発明は、着磁面31において1つのトラック310が形成されているようなロータリエンコーダに適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1・・ロータリエンコーダ
2・・回転体
10・・固定体
15・・センサ基板
20・・第1マグネット
30・・第2マグネット
40・・第1感磁素子
51・・第1ホール素子
52・・第2ホール素子
60・・第2感磁素子
70・・シールド部材
図2
図5
図1
図3
図4
図6
図7
図8
図9
図10