(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(1)に示すケイ素含有官能基を1分子中に平均して1.27個以上有し、分子鎖が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)と、
−SiX3 (1)
(Xは水酸基または加水分解性基であり、3つとも同一でも異なっていても良い)
一般式(2):
−Si(R13−a)Ya (2)
(式中、R1は炭素数1から10のアルキル基、炭素数6から10のアリール基または炭素数7から10のアラルキル基を示し、Yは水酸基または加水分解性基を示す。aは1、2または3を示す。R1またはYが2個以上ある場合は、それぞれ同一であってもよく異なっていても良い。)に示すケイ素官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)とを含有する室温硬化性組成物であって、
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の式
1/(Tg(K))=Σ(Mi/Tgi)
(式中、Miは重合体を構成する単量体i成分の重量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。)
から計算より求められるTgが20℃以上100℃以下であり、
硬化性組成物中の重合体(A)と重合体(B)との重量比が30/70〜90/10であることを特徴とする室温硬化性組成物。
ポリオキシアルキレン系重合体(B)が直鎖状で、GPCによって求められる数平均分子量が21,000以上となり、かつaが3であるケイ素官能基を1分子あたり1.5個以下有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の室温硬化性組成物。
ポリオキシアルキレン系重合体(B)が、アルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体とトリエトキシシランを反応させた後、エトキシ基をメトキシ基に変換する工程を経て得られる請求項1〜5のいずれかに記載の室温硬化性組成物。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)のGPCによって求められる数平均分子量が500以上500,000以下である請求項1〜6のいずれかに記載の室温硬化性組成物。
(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル系重合体が、炭素数1〜2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−1)と、炭素数7〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)とを含有する共重合体であり、a−1とa−2の重量比(a−1/a−2)が60/40〜90/10である請求項1〜7のいずれかに記載の室温硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書中において、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基のことを「反応性ケイ素基」ともいう。
【0011】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、炭素数が1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位および/またはメタクリル酸アルキルエステル単量体単位を有する重合体であり、一般式(1)で表されるシロキサン結合を形成することによって架橋しうる反応性ケイ素基を含有するアクリル系重合体である。また、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を表すこととする。
−SiX
3 (1)
(Xは水酸基または加水分解性基であり、3つとも同一でも異なっていても良い)
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)が有する反応性ケイ素基は、一般式(1)で表される、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シラノール縮合用触媒によって加速される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。
【0012】
一般式(1)中Xで表される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が好ましい。
【0013】
一般式(1)で表される反応性ケイ素基の具体的な例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、メトキシジエトキシシリル基、エトキシジメトキシシリル基が挙げられる。活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0014】
反応性ケイ素基は(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)1分子中に1.7個以上5.0個以下、さらに好ましくは2.0個以上3.0個以下含有するのが、ポリマーの強靭性を高めるためには好ましい。上記一分子中のケイ素基の計算方法は、GPCにより求められる数平均分子量と使用したモノマー単位により求められる。
【0015】
本発明に用いるアクリル酸アルキルエステル単量体単位としては、従来公知のものが広く使用でき、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ミリスチル、アクリル酸セチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸ビフェニル等を挙げることができる。またメタクリル酸アルキルエステル単量体単位としては、従来公知のものが
広く使用でき、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸セチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ビフェニル等を挙げることができる。上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位が、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)中に50重量%以上
存在するのが好ましく、70重量%以上存在することがさらに好ましい。
【0016】
好ましくは、分子鎖が実質的に炭素数1〜2のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位および/またはメタクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−1)と、炭素数7〜9のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位および/またはメタクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)を有するアクリル系共重合体であることが、(B)成分との相溶性のバランスの観点から好ましい。上記の単量体単位(a−1)(a−2)が、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)中に70重量%以上存在することが好ましい。また、(a−1)と(a−2)の比は任意の比で混合可能で
あるが、強度と接着性のバランスから、(a−1)/(a−2)の重量比は40/60〜90/10であることが好ましい。炭素数1〜2のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位および/またはメタクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−1)としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが好ましい。炭素数7〜9のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位および/またはメタクリル酸アルキルエステル単量体単位(a−2)としては、アクリル酸2−エチルヘキシルやメタクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)にはアクリル酸アルキルエステル単量体単位および/またはメタクリル酸アルキル単量体単位の他に、これらと共重合性を有する単量体単位が含有されていてもよい。たとえばアクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含む単量体;ポリオキシエチレンアクリレート、ポリオキシエチレンメタクリレート等が挙げられる。ポリオキシエチレンアクリレート、ポリオキシエチレンメタクリレートは、湿分硬化性、内部硬化性の点で共重合効果が期待できる。その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位などがあげられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の単量体組成は、用途、目的により選択するのが当業者の間では一般的であるが、強度を必要とする用途では、軟化点Tgが比較的高いものが好ましく、0℃以上200℃以下、より好ましくは20℃以上100℃以下の軟化点を有するものがよい。軟化点が0℃未満であると、強度向上効果が低く好ましくない。尚Tgは下記Foxの式より求めた。
【0019】
Foxの式:
1/(Tg(K))=Σ(Mi/Tgi)
(式中、Miは重合体を構成する単量体i成分の重量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。)(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の主鎖構造は特に限定されず、直鎖状、または分岐状をしていてもよい。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の分子量には特に制限はないが、GPCにおけるポリスチレン換算での重量平均分子量が500から100,000であるものが重合時の難易度の点から好ましい。さらには1,000〜30,000のものが強度、粘度のバランスより好ましく、1,500〜10,000のものが、作業性等取り扱いの容易さと接着性の点から好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、通常のビニル重合の方法によって得ることができる。たとえば、ラジカル反応による溶液重合法や塊状重合法などによって重合させることで得ることができるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。反応は、通常前記単量体およびラジカル開始剤や連鎖移動剤、溶剤などを加えて50〜150℃で反応させることにより行われる。
【0022】
前記ラジカル開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなど、連鎖移動剤の例としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類や含ハロゲン化合物などがあげられる。溶剤としては、たとえばエーテル類、炭化水素類、エステル類のごとき非反応性の溶剤を使用するのが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)に反応性ケイ素基を導入する方法には種々の方法があるが、たとえば、(I)重合性不飽和結合と反応性ケイ素基を有する化合物を、単量体とともに共重合させる方法、(II)連鎖移動剤として反応性ケイ素基を含有するメルカプタンの存在下、共重合させる方法、(I)と(II)の組み合わせとして、連鎖移動剤として反応性ケイ素基を含有するメルカプタンの存在下、重合性不飽和結合と反応性ケイ素基を有する化合物を、単量体とともに共重合させる方法をとることも可能である。
【0024】
(I)記載の重合性不飽和結合と反応性ケイ素基を有する化合物としては、たとえば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等があげられる。
【0025】
(II)記載の反応性ケイ素基を含有するメルカプタン化合物としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン類が挙げられる。
【0026】
本発明の(B)成分は、一般式(2)に示すケイ素官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体であり、ケイ素官能基を1分子あたり平均0.5個以上3.0個以下有し、GPCによって求められる数平均分子量が3,000以上60,000以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の(B)成分における重合主鎖を構成するオキシアルキレン系重合体としては、一般式(3):
−(−R
2−O−)
n− (3)
(式中、R
2は炭素数1〜4の2価のアルキレン基)で表わされるものが使用でき、例えば−CH
2O−、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH(C
2H
5)O−、−CH
2C(CH
3)
2O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−などを挙げることができる。入手容易の点からオキシプロピレン重合体が好ましい。
【0028】
このオキシプロピレン重合体は、直鎖状である物が硬化物の伸びの観点から好ましい。上記一般式(3)に表わされる単量体単位が、重合体中に50重量%以上、好ましくは80重量%以上存在することが好ましい。
【0029】
本発明の(B)成分である重合体の分子量は、3,000〜500,000が好ましく、さらに5,000から40,000である方が作業性の点から好ましく、特に10,000から35,000が好ましい。分子量分布は小さい方が粘度の点から好ましく、1.5以下が良い。
【0030】
本発明の(B)成分である重合体は、一般式(2)のaが3となるケイ素官能基を用いた場合、速硬化性が発現する。また、この場合、ポリオキシアルキレン系重合体(B)が直鎖状で、GPCによって求められる数平均分子量が21,000以上であり、かつaが3となるケイ素官能基を1分子あたり1.5個以下有することが接着性の観点から好ましい。さらに好ましくは、GPCによって求められる数平均分子量が25,000以上であることが接着性の観点から好ましい。
【0031】
本発明の(B)成分を得る方法としては、公知の方法を用いることができ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、メタリルアルコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ポリブタジエンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコール又は水酸基を有する各種の重合体を開始剤として触媒の存在下プロピレンオキサイドを開環重合させる方法が挙げられ、生成物の貯蔵安定性の観点からも、この製法が好ましい。
【0032】
粘度、接着性等の特性から、高分子量で分子量分布が狭く官能基を有するオキシアルキレン系重合体が分子設計上有利な場合が多く、特殊な重合法であるセシウム金属触媒、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号に例示されるポルフィリン/アルミ錯体触媒、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等に例示される複合金属シアン化錯体触媒、特開平10−273512に例示されるポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いた方法等により得ることができる。実用上、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる方法が好ましい。
【0033】
複合金属シアン化物錯体触媒としては、Zn
3[Fe(CN)
6]
2、Zn
3[Co(CN)
6]
2、Fe[Fe(CN)
6]、Fe[Co(CN)
6]などが挙げられる。より好ましくはZn
3[Co(CN)
6]
2(すなわち、亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体)を触媒骨格として、有機配位子が配位した構造を有するものが好ましい。
【0034】
このような触媒は、例えば水中でハロゲン化金属塩とアルカリ金属シアノメタレートとを反応させて得られる反応生成物に有機配位子を配位させて製造できる。ハロゲン化金属塩の金属としては、Zn(II)又はFe(II)が好ましく、Zn(II)が特に好ましい。ハロゲン化金属塩としては特に塩化亜鉛が好ましい。アルカリ金属シアノメタレートのシアノメタレートを構成する金属としては、Co(III)又はFe(III)が好ましく、Co(III)が特に好ましい。アルカリ金属シアノメタレートとしては、カリウムヘキサシアノコバルテートが好ましい。有機配位子としては、アルコール及び/又はエーテルが好ましい。tert−ブチルアルコール、エタノ−ル、sec−ブチルアルコ−ル、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール及びイソプロピルアルコールなどのアルコール、並びに、エチレングリコールジメチルエーテル(以下、グライム)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、ジオキサン、及び数平均分子量が150〜5,000のポリエーテルなどのエーテルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。なかでもtert−ブチルアルコール、及びまたはグライムが特に好ましい。
【0035】
ポリオキシアルキレン系重合体を得るためのアルキレンオキシドとしては、アルキレンオキシドであれば構わず、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルへキシレングリシジルエーテル、トリフルオロプロピレンオキシドなどが挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上併用してもよい。これらのうちプロピレンオキシドが、重合活性および得られる重合体の物性の点から特に好ましい。
【0036】
本発明のポリオキシアルキレン系重合体(B)が有する反応性ケイ素基は、一般式(2)で表される、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基、もしくは炭化水素基を有し、シラノール縮合用触媒によって加速される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。−Si(R
13−a)Y
a (2)
(式中、R
1は炭素数1から10のアルキル基、炭素数6から10のアリール基または炭素数7から10のアラルキル基を示し、Yは水酸基または加水分解性基を示す。aは1、2または3を示す。R
1またはYが2個以上ある場合は、それぞれ同一であってもよく異なっていても良い。)
一般式(2)中Yで表される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が好ましい。また、R
1は炭素数1から10のアルキル基、炭素数6から10のアリール基または炭素数7から10のアラルキル基であれば特に限定されず、従来公知のものであれば良いが、合成の観点からメチル基、エチル基が好ましい。
【0037】
一般式(2)で表される反応性ケイ素基の具体的な例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、メトキシジエトキシシリル基、エトキシジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基が挙げられる。活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基が特に好ましい。 反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)のケイ素基は多すぎると硬化物が硬くなり、破断時に接着剤と基材の界面で破壊しやすくなり、強度が低下するため1分子中に平均して1.5個以下が好ましい。また、反応性ケイ素基は1分子中に平均して0.5個以上存在することが硬化物を形成する観点から好ましい。
【0038】
本発明の(B)成分である反応性ケイ素基含有オキシアルキレン系重合体は、官能基を有するオキシアルキレン系重合体に反応性ケイ素基を導入することによって得るのが好ましい。
【0039】
上記反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行なえばよい。すなわち、例えば、以下の方法が挙げられる。
(i)末端に水酸基等の官能基を有するオキシアルキレン系重合体と、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させるか、もしくは不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により、不飽和基含有オキシアルキレン系重合体を得る。次いで、得られた反応生成物に一般式(4)で表される反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法。
HSi(R
13−a)Y
a (4)
(式中、R
1は炭素数1から10のアルキル基、炭素数6から10のアリール基または炭素数7から10のアラルキル基を示し、Yは水酸基または加水分解性基を示す。aは1、2または3を示す。R
1またはYが2個以上ある場合は、それぞれ同一であってもよく異なっていても良い。)
(ii)(i)法と同様にして得られた不飽和基を含有するポリエーテル系重合体にメルカプト基及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
(iii)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基(以下、Z官能基という)を有するオキシアルキレン系重合体に、このZ官能基に対して反応性を示す官能基(以下、Z′官能基という)及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0040】
(i)に示す反応性ケイ素基を有するヒドロシランとしては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシランなどのようなアルコキシシラン類、トリクロルシランなどのようなハロゲン化シラン類、トリアセトキシシランのようなアシロキシシラン類、トリイソプロペニルオキシシランのようなアルケニルオキシシラン類等が挙げられる。
【0041】
(ii)に示すメルカプト基及び反応性ケイ素基を有する化合物としてはγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン類が挙げられる。
【0042】
(iii)に示すZ′官能基を有するケイ素化合物としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのようなアミノ基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのようなエポキシシラン類;ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのようなビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのような塩素原子含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのようなイソシアネート含有シラン類などが具体的に例示されうるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体としては、貯蔵安定性の点から(i)の方法で得られたトリメトキシシリル基もしくはメチルジメトキシシリル基を有する反応性ケイ素基含有オキシアルキレン系重合体が特に好ましい。
【0044】
(i)の方法で、トリメトキシシリル基を有する反応性ケイ素基含有オキシアルキレン系重合体を得るためにはトリメトキシシランを用いる方法が有るが、トリメトキシシランは安全性上の問題があるため、トリメトキシシランより安全性の高いトリエトキシシランを反応させた後、触媒存在下、メタノールを添加し、エトキシ基をメトキシ基に変換する方法が好ましい。
【0045】
エトキシ基をメトキシ基に変換するための触媒としては、一般的に酸、塩基、金属アルコキシドなどが知られており、具体例としては、塩化水素、臭化水素などのブレンステッド酸、トリエチルアミンなどの低級アミンなどの塩基などが挙げられるが、これらに限定されない。高活性であり副反応が少ないという点から、好ましくは塩化水素、臭化水素などのハロゲン化水素であり、特に好ましくは塩化水素である。
【0046】
塩化水素の添加量は、量が多くなると反応中にポリマーが硬化したり、得られたポリマーが貯蔵中に増粘したりするため、1ppmから100ppmが好ましく、2ppmから30ppmがより好ましい。メタノールの使用量は、目的とするトリメトキシシリル基を末端に有する有機重合体のメトキシ交換率に応じて任意に変量することが可能である。すなわち、メトキシ交換率の高いトリメトキシシリル基を末端に有する有機重合体を得るには、多くのメタノールを使用し、メトキシ交換率の低いトリメトキシシリル基を末端に有する有機重合体を得るには、メタノールの使用量を減量すればよい。メタノールの使用量は特に限定はないが例えば、メトキシ交換反応中の粘性および/またはメトキシ交換後のメタノール回収時間および/またはメトキシ交換反応速度の点から、メタノールの使用量は有機重合体100重量部に対して、3部から30部が好ましく、より好ましくは5部から25部、さらに好ましくは10部から20部である。また、メトキシ交換反応速度の安定化および/またはトリメトキシシリル基を末端に有する有機重合体の貯蔵中の粘度上昇を抑えるためにメタノールの変量に応じて用いる触媒量を変量することも可能である。
【0047】
本発明においては、エトキシ基を末端に有するオキシアルキレン系重合体とメタノールを反応させた後、触媒を除去および/または中和することが必須である。触媒の残存量が多いと貯蔵安定性が悪くなるため、触媒を除去および/または中和して残存量を低減する必要がある。
【0048】
触媒を有機重合体から除去する方法の具体例としては減圧脱揮や、加熱により気相部へ揮散した触媒蒸気を気相部で中和するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
触媒を中和する方法の具体例としてはエポキシ化合物との反応、塩基との反応などが挙げられるが、これらに限定されない。メトキシ基以外の加水分解性基を少なくとも1つ含んだ加水分解性基が1つの珪素原子に3つ結合した珪素基を末端に有する有機重合体を製造する工程および該有機重合体とメタノールとを反応させる工程を同一反応器中で行う場合、加水分解性基含有珪素基を末端に有する有機重合体製造時に用いるVIII族遷移金属を失活させないという点から、エポキシ化合物との反応により中和することが好ましい。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物における(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とオキシアルキレン系重合体(B)との比率は、相溶性、粘度、硬化物の強度の観点から(A)/(B)の重量比が30/70〜60/40の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは40/60〜50/50である。
【0051】
本発明における硬化性組成物を硬化させる際には反応性ケイ素基の反応を促進するシラノール縮合用触媒が用いられる。この様な硬化促進剤の具体例としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチルスズジアセチルアセトナート等の有機スズ化合物類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルア
セトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ビスマス−トリス(2−エチルヘキソエート)、ビスマス−トリス(ネオデカノエート)等のビスマス塩と有機カルボン酸との反応物等;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクチル酸鉛等の有機鉛化合物;有機バナジウム化合物;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリ
レンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジフェニルグアニジン、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、等のアミン系化合物;又はそれらのカルボン酸等との塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物等を挙げることができる。これらの中で、有機スズ化合物とアミン系化合物が硬化速度と物性のバランスの点で好ましく、ジブチル錫ジラウレートが特に好ましい。これらは単独でも2種以上併用して用いてもよい。
【0052】
これらの硬化促進剤の使用量は、通常、目的とする用途、性能に応じて選択すればよいが、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対し、0.001〜20部が好ましく、さらには0.05〜10部がより好ましい。
【0053】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、可塑剤が添加される。
【0054】
可塑剤としては特に限定されず、たとえば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシルなどの非芳香族2塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ぺンタデカンスルホン酸フェニル、ヘキサデカンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル類;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤などがあげられる。
【0055】
また、高分子可塑剤としては、たとえば、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;ポリアルキレングリコールのエステル類;ポリエステル系可塑剤;分子量500以上、さらには1000以上のポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール類;ポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテンなどがあげられる。高分子可塑剤の数平均分子量は、500〜15000が好ましい。高分子可塑剤は、反応性ケイ素基を有する高分子可塑剤を添加した場合は、高分子可塑剤が硬化反応に取り込まれ、得られた硬化物からの可塑剤の移行を防止できることから好ましい。 可塑剤は、1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0056】
可塑剤を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して5〜150重量部が好ましく、10〜120重量部がより好ましく、20〜100重量部が特に好ましい。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなる傾向があり、150重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する傾向がある。
【0057】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤が添加される。シランカップリング剤としては、特に限定されず、たとえばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシランなどのアミノシラン類;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのケチミン型シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、等のエポキシシラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類;などがあげられる。また、上記アミノシラン類とエポキシシラン類の反応物、アミノシラン類とイソシアネートシラン類の反応物なども使用できる。シランカップリング剤を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対し、0.01〜20重量部が好ましい。
【0058】
本発明の硬化性組成物中には必要に応じて、接着性付与効果を持たせるために、たとえば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネートなどが添加される。これらの樹脂を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して、5重量部以下が好ましい。
【0059】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて充填剤が添加される。充填剤としては、特に限定されず、たとえば、フュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックなどの補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末などの有機粉末;石綿、ガラス繊維およびフィラメントなどの繊維状充填剤があげられる。充填剤を添加する場合、その添加量は(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して1〜250重量部が好ましく、10〜200重量部がより好ましい。
【0060】
高級感のある意匠性を得るため、本発明の硬化性組成物中には、鱗片状または粒状の物質が添加される。鱗片状または粒状の物質としては、特に限定されず、たとえば特開平9−53063号に開示されているものがあげられ、直径としては外壁の材質、模様などに合わせ適宜選択されるが0.1mm以上が好ましい。鱗片状または粒状の物質の添加量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して、1〜200重量部が好ましい。
【0061】
鱗片状または粒状の物質の材質としては、特に限定されず、たとえば、ケイ砂、マイカなどの天然物、合成ゴム、合成樹脂、アルミナなどの無機物があげられる。
【0062】
また、同様の目的で硬化性組成物中にバルーン(好ましくは平均粒径が0.1mm以上のもの)を添加することも可能である。
【0063】
本発明の硬化性組成物中にシーリング材硬化物粒子を含む場合も、得られる硬化物は表面に凹凸を形成し意匠性を向上させることができる。シーリング材硬化物粒子の好ましい直径、配合量、材料などは特開2001−115142号に開示されている。
【0064】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、シリケートが添加される。シリケートとしては、特に限定されず、たとえば、テトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物があげられ、より具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エトキシトリメトキシシランなどのテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)、および、それらの部分加水分解縮合物があげられる。シリケートを添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。
【0065】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、粘着性付与剤が添加される。粘着性付与樹脂としては、常温で固体、液体を問わず通常使用されるものであれば特に限定されず、たとえば、スチレン系ブロック共重合体、その水素添加物、フェノール系樹脂、変性フェノール系樹脂(たとえば、カシューオイル変性フェノール系樹脂、トール油変性フェノール系樹脂など)、テルペンフェノール系樹脂、キシレン−フェノール系樹脂、シクロペンタジエン−フェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂、キシレン系樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、石油樹脂(たとえば、C5炭化水素系樹脂、C9炭化水素系樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂など)、水添石油樹脂、テルペン系樹脂、DCPD樹脂石油樹脂などがあげられる。粘着性付与剤を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して、5〜1,000重量部が好ましい。
【0066】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、溶剤または希釈剤が添加される。溶剤及び希釈剤としては、特に限定されず、たとえば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、脂環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類などがあげられる。これらは1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0067】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、物性調整剤が添加される。物性調整剤としては、特に限定されず、たとえば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシランなどのアルキルイソプロペノキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどの官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類などがあげられる。
【0068】
物性調整剤の中でも、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成するものは、得られる硬化物の表面のべたつきを悪化させずにモジュラスを低下させる作用を有することから好ましい。
【0069】
加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特に限定されず、たとえば特開平5−117521号に開示されている化合物、また、アルキルアルコールの誘導体であって、加水分解によりトリメチルシラノールなどのR
3SiOHで示される有機ケイ素化合物を生成する化合物、特開平11−241029号に開示されている1分子中に水酸基を3個以上有する多価アルコールの誘導体であって、加水分解によりトリメチルシラノールなどのR
3SiOHで示される有機ケイ素化合物を生成する化合物などがあげられる。
【0070】
さらに、特開平7−258534号に開示されているオキシプロピレン重合体の誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのR
3SiOHで示される有機ケイ素化合物を生成する化合物、さらに特開平6−279693号に開示されている架橋可能な加水分解性ケイ素を有する基と加水分解により1価のシラノール基を有する化合物を生成しうるケイ素基を持つ化合物があげられる。
【0071】
物性調整剤を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましい。
【0072】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じてチクソ性付与剤(垂れ防止剤)が添加される。チクソ性付与剤としては特に限定されず、たとえば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸類などがあげられる。さらに、特開平11−349916号などに開示されている粒子径10〜500μmのゴム粉末や、特開2003−155389号などに開示されている有機質繊維があげられる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。チクソ性付与剤を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましい。
【0073】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、1分子中にエポキシ基を有する化合物が添加される。エポキシ基を有する化合物を添加することにより、得られる硬化物の復元性を高めることができる。
【0074】
エポキシ基を有する化合物としては、特に限定されず、たとえば、エポキシ化不飽和油脂類;エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類;脂環式エポキシ化合物類;エピクロルヒドリン誘導体などの化合物;及びそれらの混合物などがあげられる。エポキシ化合物を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して、50重量部以下が好ましい。
【0075】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、光硬化性物質が添加される。光硬化性物質としては、特に限定されず、有機単量体、オリゴマー、樹脂或いはそれらを含む組成物など公知のものがあげられ、たとえば、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂などがあげられる。光硬化性物質を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。
【0076】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、酸素硬化性物質が添加される。酸素硬化性物質としては、空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物有する化合物であれば特に限定されず、たとえば、キリ油、アマニ油などの乾性油や、該化合物を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂;1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5〜C8ジエンの重合体などの液状重合体;これらジエン系化合物と共重合可能なアクリロニトリル、スチレンなどのビニル系化合物と、ジエン系化合物を、ジエン系化合物が主成分となるように共重合させて得られるNBR、SBRなどの液状共重合体などがあげられる。酸素硬化性物質を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。
【0077】
本発明の硬化性組成物中には必要に応じて、酸化防止剤が添加される。酸化防止剤としては、特に限定されず、たとえば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系の酸化防止剤があげられる。このなかでもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。また、チヌビン622LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製);サノールLS−770(三共ライフテック(株)製)などのヒンダードアミン系光安定剤も好ましい。なお、酸化防止剤の具体例は特開平4−283259号や特開平9−194731号にも開示されている。酸化防止剤を添加する場合、その添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。
【0078】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、光安定剤が添加される。光安定剤としては、特に限定されず、たとえば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物などがあげられる。このなかでもヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。光安定剤を添加する場合、その添加量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。なお、光安定剤の具体例は特開平9−194731号にも開示されている。
【0079】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて紫外線吸収剤が添加される。紫外線吸収剤としては、特に限定されず、たとえば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物などがあげられる。紫外線吸収剤を添加する場合、その添加量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。
【0080】
本発明の硬化性組成物中には、必要に応じて、エポキシ樹脂が添加される。エポキシ樹脂の添加により、得られた硬化物の接着性が改善され、エポキシ樹脂を添加した硬化性組成物は、接着剤として、特に外壁タイル用接着剤として好ましく使用される。
【0081】
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、たとえばエピクロルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などの不飽和重合体のエポキシ化物などがあげられる。
【0082】
エポキシ樹脂を添加する場合、その添加量は、硬化性組成物の使用用途などにより異なり、たとえばエポキシ樹脂硬化物の耐衝撃性、可撓性、強靱性、剥離強度などを改善する場合には、エポキシ樹脂100重量部に対して(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)を1〜100重量部添加するのが好ましい。一方、重合体(A)および重合体(B)の硬化物の強度を改善する場合には、重合体(A)および重合体(B)の合計100重量部に対してエポキシ樹脂を1〜200重量部添加するのが好ましい。
【0083】
本発明の硬化性組成物中にエポキシ樹脂を添加する場合、エポキシ樹脂用の硬化剤を併用添加するのが好ましい。
【0084】
エポキシ樹脂用の硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させる働きを有する化合物であれば特に制限はなく、たとえば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペリジン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、アミン末端ポリエーテルなどの一級、二級アミン類;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリプロピルアミンなどの三級アミン類、及び、これら三級アミン類の塩類;ポリアミド樹脂類;イミダゾール類;ジシアンジアミド類;三弗化硼素錯化合物類;無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ドデシニル無水琥珀酸、無水ピロメリット酸、無水クロレン酸などの無水カルボン酸類;アルコール類;フェノール類;カルボン酸類;アルミニウム又はジルコニウムのジケトン錯化合物などの化合物があげられる。
【0085】
エポキシ樹脂用の硬化剤のなかでも、1液型の硬化組成物が得られることより、ケチミン化合物を用いることが好ましい。ケチミン化合物は、水分のない状態では安定に存在し、水分によって一級アミンとケトンに分解され、生じた一級アミンがエポキシ樹脂の室温硬化性の硬化剤となる性質を有する。ケチミン化合物としては、アミン化合物とカルボニル化合物との縮合反応により得られる化合物があげられる。
【0086】
本発明の硬化性組成物中には、硬化性組成物又は得られる硬化物の諸物性を調整することを目的に、必要に応じて前記以外の各種添加剤が添加される。このような添加剤としては、たとえば、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、防蟻剤、防かび剤などがあげられる。これらの具体例としては、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開2001−72854号の各公報などに開示されている。また、これらの添加剤は、1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0087】
硬化性組成物が1液型の場合、すべての配合成分が予め配合されているため、配合物中に水分が存在すると貯蔵中に硬化が進行することがある。そこで、水分を含有する配合成分を予め脱水乾燥してから添加するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。
【0088】
硬化性組成物が2液型の場合、反応性ケイ素基を有する有機重合体を含む主剤に硬化触媒を配合する必要がないので配合物中には若干の水分が含有されていても硬化の進行(ゲル化)の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性が必要とされる場合は、脱水乾燥するのが好ましい。
【0089】
脱水、乾燥方法としては配合物が粉体などの固体物の場合は加熱乾燥法または減圧脱水法、液体物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、生石灰、酸化マグネシウムなどを使用した脱水法が好ましい。さらに、n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物;3−エチル−2−メチル−2−(3−メチルブチル)−1,3−オキサゾリジンなどのオキサゾリジン化合物;または、イソシアネート化合物を硬化性組成物中に添加して、配合物中に含まれる水と反応させることによってなされる脱水方法も好ましい。このように、アルコキシシラン化合物やオキサゾリジン化合物、および、イソシアネート化合物の添加により、硬化性組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0090】
ビニルトリメトキシシランなど水と反応し得るアルコキシシラン化合物を、乾燥目的に使用する際の添加量としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とポリオキシアルキレン系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましい。
【0091】
本発明の硬化性組成物の調製法としては、特に限定はなく、たとえば、前記した配合成分を調合し、ミキサーやロールやニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練する方法、適した溶剤を少量使用して配合成分を溶解させたのち混合する方法など公知の方法が採用されうる。
【0092】
本発明の硬化性組成物は、大気中に暴露されると水分の作用により、三次元的な網状構造を形成し、ゴム状弾性を有する固体へと硬化する。
【実施例】
【0093】
本発明をより一層明らかにするために、以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
尚、下記合成例中の分子量はGPC(送液システムとして東ソー製HLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK−GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)によりもとめ、ケイ素基数については、
1H−NMR(日本電子製JNM−LA400)により求められるケイ素基の量から算出した。TgはFoxの式より計算した。その際に用いた各(メタ)アクリル単量体のホモポリマーのTgは次のようである:メチルメタクリレート 378K、2−エチルヘキシルメタクリレート 223K、アクリル酸ブチル 218K、メタクリル酸ステアリル 208K、γ−メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン 316K、γ−メタクリオキシプロピルメチルジメトキシシラン 303K。
【0095】
(合成例1)
105℃に加熱したIBA(イソブチルアルコール)200g中に、メチルメタクリレート300g、2−エチルヘキシルメタクリレート115g、γ−メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン46g、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン37g、およびIBA
200gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル
11.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(ポリマーA−1)を得た。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0096】
(合成例2)
105℃に加熱したIBA(イソブチルアルコール)200g中に、メチルメタクリレート300g、メタクリル酸ステアリル115g、γ−メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン46g、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン37g、およびIBA
200gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル
11.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(ポリマーA−2)を得た。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0097】
(合成例3)
105℃に加熱したIBA(イソブチルアルコール)200g中に、メチルメタクリレート300g、2−エチルヘキシルメタクリレート115g、γ−メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン88.9g、n−ドデシルメルカプタン37g、およびIBA
200gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル
11.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(ポリマーA−3)を得た。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0098】
(合成例4)
105℃に加熱したIBA(イソブチルアルコール)200g中に、メチルメタクリレート300g、2−エチルヘキシルメタクリレート115g、γ−メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン73.7g、n−ドデシルメルカプタン37g、およびIBA
200gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル
11.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(ポリマーA−4)を得た。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0099】
(合成例5)
105℃に加熱したIBA(イソブチルアルコール)200g中に、メチルメタクリレート300g、2−エチルヘキシルメタクリレート115g、γ−メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン59.9g、n−ドデシルメルカプタン37g、およびIBA
200gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル
11.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(ポリマーA−5)を得た。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0100】
(合成例6)
105℃に加熱したIBA(イソブチルアルコール)200g中に、メチルメタクリレート300g、2−エチルヘキシルメタクリレート115g、γ−メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン46g、n−ドデシルメルカプタン37g、およびIBA
200gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル
11.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(ポリマーA−6)を得た。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0101】
(合成例7)
105℃に加熱したIBA(イソブチルアルコール)200g中に、メチルメタクリレート300g、2−エチルヘキシルメタクリレート115g、γ−メタクリオキシプロピルメチルジメトキシシラン46g、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン37g、およびIBA
200gからなる混合物に重合開始剤としてアゾビス−2−メチルブチロニトリル
11.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(ポリマーA−7)を得た。得られたポリマーの物性を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
(合成例8)
数平均分子量が約2,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、分子量28,500のポリオキシプロピレングリコールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレングリコールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン500g に対し白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量% のイソプロパノール溶液)50μlを加え、撹拌しながら、TES(トリエトキシシラン)6.0gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のTESを減圧下留去した。さらにメタノール100g、HCl12ppmを添加して末端のエトキシ基をメトキシ基に変換する事により、末端がトリメトキシシリル基であり1分子あたりのケイ素基が平均1.3個である反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(B−1)を得た。
【0104】
(合成例9)
数平均分子量が約3,000のポリオキシプロピレントリオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、分子量26,000のポリオキシプロピレングリコールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレントリオールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン500gに対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)50
μlを加え、撹拌しながら、DMS(メチルジメトキシシラン)6.7gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のDMSを減圧下留去する事により、末端がメチルジメトキシシリル基であり1分子あたりのケイ素基が平均2.4個である反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(B−2)を得た。
【0105】
(合成例10)
数平均分子量が約3,000のポリオキシプロピレントリオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、分子量26,000のポリオキシプロピレングリコールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレントリオールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン500gに対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)50
μlを加え、撹拌しながら、TES(トリエトキシシラン)8.5gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のTESを減圧下留去した。さらにメタノール100g、HCl12ppmを添加して末端のエトキシ基をメトキシ基に変換する事により、末端がトリメトキシシリル基であり1分子あたりのケイ素基が平均2.0個である反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(B−3)を得た。
【0106】
(合成例11)
数平均分子量が約2,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、分子量14,000のポリオキシプロピレングリコールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレングリコールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン500gに対し白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)50μlを加え、撹拌しながら、DMS(メチルジメトキシシラン)9.1gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のDMSを減圧下留去する事により、末端がメチルジメトキシシリル基であり1分子あたりのケイ素基が平均1.6個である反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(B−4)を得た。
(合成例12)
数平均分子量が約2,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、分子量28,500のポリオキシプロピレングリコールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレングリコールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン500g に対し白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量% のイソプロパノール溶液)50μlを加え、撹拌しながら、TES(トリエトキシシラン)7.2gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のTESを減圧下留去した。さらにメタノール100g、HCl12ppmを添加して末端のエトキシ基をメトキシ基に変換する事により、末端がトリメトキシシリル基であり1分子あたりのケイ素基が平均1.6個である反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(B−5)を得た。
(合成例13)
数平均分子量が約2,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、分子量14,000のポリオキシプロピレングリコールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレングリコールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン500gに対し白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)50μlを加え、撹拌しながら、TES(トリエトキシシラン)11.5gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のTESを減圧下留去した。さらにメタノール100g、HCl12ppmを添加して末端のエトキシ基をメトキシ基に変換する事により、末端がトリメトキシシリル基であり1分子あたりのケイ素基が平均1.3個である反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(B−6)を得た。
【0107】
(合成例14)
合成例1〜4で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体溶液(ポリマーA−1〜4)を(メタ)アクリル酸エステル系重合体が固形分で40部になるように、B−1〜6の反応性シリル基含有ポリオキシプロピレン60部に混合し、均一に混合した後、ロータリーエバポレーターでIBAを留去しアクリル・変成シリコーン樹脂(C−1〜9)を得た。
【0108】
(合成例15)
合成例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体溶液(ポリマーA−1)を(メタ)アクリル酸エステル系重合体が固形分で60〜50部になるように、B−1の反応性シリル基含有ポリオキシプロピレン40〜50部に混合し、均一に混合した後、ロータリーエバポレーターでIBAを留去しアクリル・変成シリコーン樹脂(C−10〜C−11)を得た。
【0109】
(合成例16)
合成例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体溶液(ポリマーA−1)を(メタ)アクリル酸エステル系重合体が固形分で30部になるように、B−1の反応性シリル基含有ポリオキシプロピレン70部に混合し、均一に混合した後、ロータリーエバポレーターでIBAを留去しアクリル・変成シリコーン樹脂(C−12)を得た。
【0110】
(比較合成例1)
合成例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体溶液(ポリマーA−1)を(メタ)アクリル酸エステル系重合体が固形分で20〜10部になるように、B−1の反応性シリル基含有ポリオキシプロピレン80〜90部に混合し、均一に混合した後、ロータリーエバポレーターでIBAを留去しアクリル・変成シリコーン樹脂(C−13〜C−14)を得た。
【0111】
(比較合成例2)
合成例5,6,7で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体溶液(ポリマーA−5,6,7)を(メタ)アクリル酸エステル系重合体が固形分で40部になるように、B−1の反応性シリル基含有ポリオキシプロピレン60部に混合し、均一に混合した後、ロータリーエバポレーターでIBAを留去しアクリル・変成シリコーン樹脂(C−15〜17)を得た。
【0112】
【表2】
【0113】
(実施例1)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)100部に対してジブチル錫ジラウレート2.0部混合し、ポリエチレン製の型枠に気泡が入らないように充填し、23℃50%RHで3日間、さらに50℃で4日間養生させて厚さ約3mmのシートを作製した。シートを3号ダンベル型に打ち抜き、23℃50%RHで引っ張り強度試験を行い50%モジュラス、100%モジュラス、破断時の強度を測定した。引っ張り強度は(株)島津製オートグラフ(AGS−J)を用い200mm/minの引張り速度で測定を行った。結果を表3に示す。
【0114】
(実施例2)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−2)100部に対してオクチル酸錫0.44部、水0.6部混合し、ポリエチレン製の型枠に気泡が入らないように充填し、23℃50%RHで3日間、さらに50℃で4日間養生させて厚さ約3mmのシートを作製した。シートを3号ダンベル型に打ち抜き、23℃50%RHで引っ張り強度試験を行い50%モジュラス、100%モジュラス、破断時の強度を測定した。引っ張り強度は(株)島津製オートグラフ(AGS−J)を用い200mm/minの引張り速度で測定を行った。結果を表3に示す。
【0115】
(実施例3)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−3)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0116】
(実施例4)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−2)の代わりに(C−4)を使用した以外は実施例2と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0117】
(実施例5)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−5)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0118】
(実施例6)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−7)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0119】
(実施例7)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−8)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0120】
(実施例8)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−9)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0121】
(実施例9)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−10)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0122】
(実施例10)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−11)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0123】
(実施例11)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−12)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0124】
(比較例1)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−13)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0125】
(比較例2)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−14)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0126】
(比較例3)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−15)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0127】
(比較例4)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−16)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0128】
(比較例5)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−17)を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。結果を表3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
M100の値が0.5MPa以上となるものを高モジュラス、TBの値が2.0MPa以上となるものを高強度と判断し、両方の物性を含むものを高硬度と判定した。
【0131】
(実施例1,9,10,11と比較例1,2の比較)
重合体(A)と重合体(B)の重量比((A)/(B))に着目すると、ポリマーA−1とポリマーB−1の重量比が、10/90、20/80、30/70、40/60、50/50、60/40と増加するにつれて、M100が、0.23、0.28、0.60、2.30、6.42、2.92(M50)MPaと、著しく向上することが分かる(比較例2、比較例1、実施例11、実施例1、実施例10、実施例9)。
【0132】
(実施例7,8と比較例3,4の比較)
重合体(A)のケイ素官能基含有量に着目すると、ケイ素官能基含有量が
0.80、
1.06、
1.27、
1.49mol/molと増加するにつれて、M100が、0.15、0.27、0.63、1.90と著しく向上することが分かる(比較例4、比較例3、実施例8、実施例7)。
【0133】
(実施例1と比較例5の比較)
比較例5で使用している重合体(A−7)のケイ素官能基は、メチルジメトキシシランであり、実施例1とはケイ素官能基の種類のみが異なる。しかしながら、M100モジュラスの値は著しく低くなることが分かる(実施例1:2.30MPa、比較例5:0.21MPa)。
【0134】
表3に示す通り、実施例番号1〜11では高モジュラス・高強度が発現しているのに対し、比較例1〜5のように、重合体(A)と重合体(B)の重量比、トリメトキシシリル基の量、シリル基の種類、いずれかが本発明を満たさない(メタ)アクリル酸エステル系重合体を用いた場合、モジュラス・強度のどちらか、もしくは両方が低い物性を示した。
【0135】
(実施例12)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)100部に対して炭酸カルシウム(白石工業(株)製CCR)50部、ビニルトリメトキシシラン3部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン2部、ジブチルスズジラウレート0.15部を混合した配合物を、アルミニウム板A−1050P(100x25x2mmの試験片)、アクリル板(100x25x2mmの試験片)、ABS樹脂板(100x25x2mmの試験片)に0.02mm厚に塗布し、その上から9号綿帆布(100x25mm)を接着させた。得られた基材を23℃3日50℃4日養生させた後、基材と帆布を180℃方向に引張り、剥離強度の平均値、および破壊状態を確認した。結果を表4に示す。剥離強度は(株)島津製オートグラフ(AGS−J)を用い200mm/minの引張り速度で測定を行った。
【0136】
(実施例13)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−3)を使用した以外は実施例12と同様な操作を行った。結果を表4に示す。
【0137】
(実施例14)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−5)を使用した以外は実施例12と同様な操作を行った。結果を表4に示す。
【0138】
(実施例15)
アクリル・変成シリコーン樹脂(C−1)の代わりに(C−6)を使用した以外は実施例12と同様な操作を行った。結果を表4に示す。
【0139】
【表4】
【0140】
接着性の評価は凝集破壊率80%以上を◎、凝集破壊率80〜50%を○、凝集破壊率50〜10%を△、凝集破壊率10%以下を×とした。凝集破壊率が高いほど接着性が優れていることを示す。
【0141】
表4に示されているように、重合体(B)の分子量が21,000以上であり、かつ1分子中の末端数が2であり、1分子中のケイ素基数が1.5個以下である場合には、優れた基材接着性を有することが分かった。