特許第5666906号(P5666906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5666906フィターゼを高レベルで分泌する胆汁耐性バチルス組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666906
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】フィターゼを高レベルで分泌する胆汁耐性バチルス組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20150122BHJP
   A23K 1/18 20060101ALI20150122BHJP
   A23K 1/16 20060101ALI20150122BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20150122BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20150122BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20150122BHJP
   C12R 1/125 20060101ALN20150122BHJP
【FI】
   C12N1/20 A
   A23K1/18 D
   A23K1/18 B
   A23K1/18 Z
   A23K1/18 A
   A23K1/18 102A
   A23K1/16 304B
   C12N1/00 T
   C12N1/02
   C12Q1/04
   C12N1/20 A
   C12R1:125
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-513838(P2010-513838)
(86)(22)【出願日】2008年6月11日
(65)【公表番号】特表2010-532161(P2010-532161A)
(43)【公表日】2010年10月7日
(86)【国際出願番号】EP2008057296
(87)【国際公開番号】WO2009007192
(87)【国際公開日】20090115
【審査請求日】2011年6月10日
(31)【優先権主張番号】07111939.0
(32)【優先日】2007年7月6日
(33)【優先権主張国】EP
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 19489
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 19466
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 19467
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】クナップ,インゲ
(72)【発明者】
【氏名】クナレボルウ,アネ
(72)【発明者】
【氏名】レーサ,トーマス ディルマン
(72)【発明者】
【氏名】ルン,ベンテ
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−507670(JP,A)
【文献】 特表平11−510397(JP,A)
【文献】 国際公開第97/033976(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/015084(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/039260(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2002−0035395(KR,A)
【文献】 国際公開第2004/080200(WO,A1)
【文献】 CHR. HANSEN,GALLIPRO [ONLINE],2007年12月10日,URL,http://www.chr-hansen.com/gallipro.html
【文献】 SANDERS M E,COMPREHENSIVE REVIEWS IN FOOD SCIENCE AND FOOD SAFETY,2003年,V2,P101-110
【文献】 CENCI G,JOURNAL OF APPLIED MICROBIOLOGY,2006年12月,V101 N6,P1208-1215
【文献】 HONG,FEMS MICROBIOLOGY REVIEWS,2005年 9月,V29 N4,P813-835
【文献】 XIAOHUA GUO,ANTONIE VAN LEEUWENHOEK,2006年 7月 4日,V90 N2,P139-146
【文献】 CARVALHO N,FEED INTERNATIONAL [ONLINE],2005年11月,V26 N10,URL,http://www.stocarstvo.com/ishrana/probiotics_in_broilers.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A23K 1/16
A23K 1/18
C12N 1/00
C12N 1/02
C12Q 1/04
C12R 1/125
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規バチルス芽胞細胞をスクリーニング及び単離する方法であり、以下の工程:
(a):4mMの胆汁酸塩を含む胆汁酸塩培地の存在下で、及び6mMの胆汁酸塩を含む胆汁酸塩培地の存在下で、18時間及び19時間以内に0.4OD630の栄養細胞増殖点(vegetative cell growth point)に達する速さで発芽及び菌体形成することが可能な新たなバチルス芽胞細胞の個々のバチルス芽胞細胞のプールから選択及び単離し、ここで前記栄養細胞増殖点とは、増殖曲線上で、ODの値が持続的な形で(栄養細胞の増殖により)増大し始め、OD630が0.4に達した点であり
(b):工程(a)の単離された芽胞細胞から栄養バチルス細胞を作製し、続いて当該新たに選択及び単離された細胞を突然変異させ、新たな個々のバチルス栄養細胞群のプールを得て;
(c):工程(b)の新たな個々のバチルス栄養細胞群のプールから、非選択的心臓滲出倍溶液(Heart Infusion Broth(HIB))培地中で、37℃で4時間増殖した場合に、DSM登録番号19467として供託される参照バチルス細胞よりも、少なくとも1.25倍の量のフィターゼを生産することが可能な新たなバチルス栄養細胞を選択及び単離し、ここで、フィターゼの生産量は、フィターゼ酵素単位の定量により測定され、当該フィターゼ酵素単位の定量は、以下の工程により実施される:
(i):富栄養培養培地中でバチルス栄養細胞を一昼夜培養し;続いて
(ii):前記一昼夜培養物から1%の接種材料(inoculum)をHIB培地に移し(これをゼロ時間とする)、フィターゼ活性を測定するまで37℃でインキュベートする;更に
(d):工程(c)の高生産性栄養バチルス細胞を解析して、それが工程(a)の迅速な発芽及び菌体形成を維持していることを確認し、選択したバチルス細胞を単離する、
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
前記バチルス細胞が、バチルス・スブチリス(B. subtilis)細胞である、請求項1に記載の新規バチルス細胞をスクリーニング及び単離する方法。
【請求項3】
バチルス細胞であり:
(a):登録番号DSM19467のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;
(b):登録番号DSM19489のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;及び
(c):登録番号DSM19466のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;又は
それらの突然変異株
からなる群から選択され、当該突然変異株が、開始材料として前記供託株の一種を使用することにより収得され、そして当該突然変異株が、前記供託株の本質的特徴を保持しており、ここで、(a)のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞の突然変異の場合、前記本質的特徴は:
(i)請求項1の項目(a)の迅速な発芽及び菌体形成;及び
(ii)少なくともDSM19467のレベルでのフィターゼの生産であり;
そして、(b)及び(c)のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞の突然変異の場合、前記本質的特徴は:
(i)請求項1の項目(a)の迅速な発芽及び菌体形成;及び
(ii)請求項1の項目(c)の量のフィターゼ生産である;
前記細胞。
【請求項4】
動物への給餌方法であり、請求項に記載のバチルス細胞を含有する組成物を、他の動物飼料含有物と併せて動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
前記動物が、家禽、反芻動物(ruminant)、子牛(calf)、ブタ、ウサギ、ウマ、魚類、及びペットからなる群から選択される動物である、請求項に記載の動物への給餌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁酸塩(擬似的な消化管環境)中で迅速に発芽及び菌体形成(outgrowth)し、フィターゼを高レベルで分泌することを特徴とする、バチルス組成物に関する。当該バチルス組成物は、動物の飼料の添加物として使用され得て、その使用によりプロバイオティック(健康及び増殖の増進)効果が生じ、更に動物の飼料の消化及び栄養の吸収性が向上する。
【背景技術】
【0002】
バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)等のプロバイオティック細菌は、動物飼料の産業において、飼料の添加物として使用される。それらの使用は、抗生物質の使用の代替となり、又は減少させるバチルスの能力に関連しており、それらは動物飼料の産業において、成長促進剤として使用される。
【0003】
デンマークのChristian Hansen A/Sは、例えば、製品名をGalliPro(登録商標)(DSM17231として供託されている)というそのようなプロバイオティック成長促進製品を販売している。GalliPro(登録商標)は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)芽胞細胞組成物である。
【0004】
主張される作用機序(例えば、免疫調節、腸管内菌叢の変更等)の他に、プロバイオティックバチルスは、動物飼料の混合物として使用されたとき、多くの有益な成分、例えば胃腸管(GIT)中で分泌される酵素等を生産することが出来る。フィターゼ等の酵素が分泌され、動物飼料の消化及び吸収を改善する(消化率の向上)。前記飼料は、殆どの場合、穀物、トウモロコシ、ダイズ、大豆油、及びアミノ酸等の植物由来材料で構成される。これらの作用は、全体として、コスト効率の良好な畜産物の生産に寄与する。
【0005】
動物飼料産業において広く使用されている酵素の一つは、フィターゼである。フィターゼは、動物飼料中のリンの消化率を改善するのに利用される。フィチン酸塩は、全粒穀物、脂肪種子、及びマメ中のリンの優勢な形態である。しかしながら、ブタ、及び魚類等の単胃動物は、このリン酸資源を利用し難い。なぜなら、それらはフィチン酸塩の有機複合体からリン酸を放出させるのに必要な胃腸管酵素を欠いているからである。従って、摂取された飼料中のフィチン酸塩の大部分は、胃腸管を通過して堆肥中に排出される。土壌及び水性環境において、リン酸の触媒的な放出が起こる場合があり、堆肥中のフィチン酸塩は、深刻なリン汚染問題を引き起こし、表層水の富栄養化に関与し得る。加えて、生産者は、動物の栄養的な要求に応じて、高価なリン酸添加飼料を使用しなければならない。更に、フィチン酸塩は、タンパク質及び二価カチオンとの複合体形成を含む抗栄養特性(anti-nutritive property)を有するため、それらの生体利用効率を減少させる。
【0006】
フィターゼの補給が単胃生産動物(monogastric production animal)のリン酸使用を改善し、ミネラルの生体利用効率に正の作用をもたらすことは、従来から知られていた。
【0007】
バチルス芽胞は、動物の酸性胃障壁を通過し、胃腸管(GIT)中で発芽及び菌体形成する。バチルス芽胞のこの特性は、多大な利点をもたらすものである。なぜなら、摂取されたバチルス芽胞は、例えばバクテリオシン等の様々な種類の有益な成分を分泌し、また、フィターゼ等の有用な酵素をも分泌し得るからである。更に、それらのバチルス芽胞は、飼料をペレット化する間は熱安定性であるので、GIT内にバクテリオシン及び酵素を供給する優れた輸送システムである。
【0008】
GIT中のバチルスの生存及び増殖プロセスにおいて、胆汁の役割は重要である。胆汁は肝臓中で生産され、胆嚢に保管される。胆汁は、水、レシチン、ビリルビン、及びビリベルディン、並びに胆汁酸塩を含有する。
【0009】
論文によると、胆汁は、動物のGITにおいて、バチルス芽胞細胞の生存並びに発芽及び栄養細胞への菌体形成に対する幾つかの負の作用を有する。故に、プロバイオティック胆汁耐性のバチルス株を発見する研究が進められている。
【0010】
前記論文(Antonie Van Leeuwenhoek. 2006 Aug; 90(2) : 139-46. Epub 2006 JuI 4)には、ニワトリ小腸から多くのバチルスサンプル/細胞を単離する技術が記載されている。それらの単離されたバチルス細胞は、プロバイオティック活性の試験に付された。最も高いプロバイオティック活性を有する6つのバチルスが胆汁酸塩耐性試験に付されたところ、特定の高プロバイオティックバチルスが、相対的に高い胆汁酸塩耐性を有することが判明した。
【0011】
この論文においては、胆汁酸塩耐性の試験に対して特に焦点をあてて時間をとっていない。実験の記載部分において、バチルス芽胞細胞は、単純に、胆汁酸塩中に5日間置いた後に耐性が試験されている(141ページの"Simulated small intestinal fluid tolerance test"のパラグラフを参照されたい)。
【0012】
US2003/0124104Aは、従来のプロバイオティックバチルス内生芽胞が、低濃度の胆汁酸塩に感受性である、即ち、低濃度の胆汁酸塩が存在するだけでも、芽胞の発芽及び/又は補水(rehydration)が阻害されることを記載している。これは、E. coli又はS. aureusのような腸内病原体等の他の細菌とは対照的である(段落[0014]〜[0015]を参照されたい)。これを考慮すると、胆汁酸塩の阻害作用に耐性を有し、それにより栄養細胞に菌体形成し、更に大腸内に定着するバチルス芽胞をスクリーニング/選択する必要がある([0019]を参照されたい)。
【0013】
実施例は全て進行中のものであり、スクリーニングされた特定のバチルス細胞の実際の実験データは前記明細書に提供されていない。更に、前記胆汁酸塩スクリーニング条件は、相対的に、一般的に記載されている。特に、胆汁耐性の選択のための時間的な示唆が存在しない。言い換えると、前記文献の広範囲の/一般的な示唆のみに基づいて選択できるのは、緩慢に菌体形成(発芽)する即ち、適切な量の胆汁酸塩の存在下で、例えば20時間後に芽胞から発芽して栄養細胞となることが可能なバチルス細胞のみである。
【0014】
前記文献は、関連する量の胆汁酸塩の存在下で、迅速に菌体形成(発芽)可能(芽胞が発芽して所定の期間内に栄養細胞の特定の増殖点に達する)なバチルス細胞を菌体形成(発芽)することが出来るバチルス細胞を選択するための開示も示唆もされていない。
【0015】
要するに、胆汁耐性バチルス細胞の選択/スクリーニングに関する従来の参照技術は、芽胞細胞から栄養バチルス細胞への迅速な菌体形成/発芽に重点を置くものではなかった。
【0016】
前記従来技術は、フィターゼ酵素を生産するバチルス株を選択する多くの試験/スクリーニング系を記載している。
【0017】
例えば、US6255098は、フィターゼ酵素を生産するバチルス株の同定を記載している。しかし、同定されたバチルス株の胆汁酸塩耐性に言及しているものは無い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明により解決されるべき課題は、動物の胃腸管(GIT)中で多量のフィターゼを分泌するバチルス組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本解決策は、発明者らによる、新規に改良されたバチルス組成物を特定するための、新規な選択方法の開発を基礎とする。
【0020】
本明細書中に記載される新規な選択方法の新たに重要となる工程は、胆汁酸塩の存在下で、芽胞から栄養細胞に至る発芽及び菌体形成の速度が改善され、迅速化されたバチルス芽胞細胞を特異的にスクリーニング/選択する点である。
【0021】
上記のように、従来技術には、胆汁酸塩の存在下で増殖が可能なバチルス細胞を選択する方法を記載していたが、それらの従来技術のスクリーニング/選択方法は、胆汁酸塩の存在下での発芽及び菌体形成の速度に重点を置くものではなかった。従って、前記従来技術により選択される胆汁耐性バチルス細胞は、本明細書中で記載される発芽及び菌体形成の速度の基準を満たすのに十分な速度で発芽及び増殖するものではない。例えば、ニワトリ等の小腸から直接単離(上記で議論したAntonie Van Leeuwenhoekの論文の記載と同様に)した腸内環境中のバチルス細胞は、(天然の選択圧下で)小腸中で迅速に発芽及び菌体形成するように選択されたものではない。
【0022】
本明細書中の実施例において示されるように、市販のバチルス組成物であるGalliPro(登録商標)も、極めて緩慢に発芽及び菌体形成し、生理的レベルの胆汁酸塩の存在下で、最初の20時間以内で特定の増殖点に達するという、本明細書中に記載の発芽及び菌体形成の基準を満たさないのも事実である。GalliPro(登録商標)は、商業的に成功したバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)組成物である。
【0023】
本明細書中に記載の新規DSM19467は、開始株としてGalliPro(登録商標)を使用し、並びに本明細書中に記載の胆汁酸塩存在下において芽胞から栄養細胞に至る迅速な発芽及び菌体形成を示す株を単離するための選択圧手法及びその後の単離手法を使用することにより選択された。例えば、表1にて更なる詳細を参照されたい(GalliPro(登録商標)は、本明細書中では、DSM17231とも称される)。本明細書中の図1には、これが模式的に図示されている。
【0024】
要するに、従来技術のいずれも、105〜1012CFU/gのバチルス細胞を含む単離されたバチルス組成物であり、その細胞が、胆汁酸塩の存在下で本明細書中に記載の迅速な発芽及び増殖速度の基準を満たすものである前記組成物を記載していないと思われる。
【0025】
理論に限定されるものではないが、本発明者らは、迅速な発芽及び菌体形成が本発明の非常に重要な側面であることを認識している。なぜなら、胆汁に耐性であるが十分に迅速に発芽及び菌体形成しないバチルス芽胞は、栄養バチルス細胞内で多量に生産され得るフィターゼ生産等の何らかの正の特性を示す前に排出されることが考えられるからである。バチルス芽胞の発芽が余りにも遅いと、それらの細菌が顕著な量のフィターゼ等を何ら生産しないうちに胃腸管(GIT)を通じて素通りしてしまうだろう。
【0026】
多くの詳細な試験及び解析の後、本発明者らは、20時間という時間制限を採用し、高い生理的濃度の胆汁の存在下で、この時間内で最も迅速に発芽及び菌体形成するものを選択することにした。理論に制限されるものではなく、かつ本明細書中に開示される詳細な実験作業に基づいて、本発明者らは、4mM及び6mMの胆汁酸塩の存在下で、それぞれ最初の18時間及び19時間以内に迅速な発芽及び菌体形成を示すことが重要であることを認識した。更に、本発明者らは、一旦胆汁酸塩中で迅速な発芽及び菌体形成を有することが確認されたバチルス細胞が、フィターゼ生産能力が改善された新たな細胞を収得するための突然変異生成の開始細胞として大いに有用であることを認識した。
【0027】
図1及び表2に示すように、迅速な菌体形成及び胆汁耐性で選択された株であるDSM19467が、古典的な突然変異の開始株として使用され、その結果、高いフィターゼ生産能力を有するDSM19489が選択された。同様に、開始株としてDSM19467を使用して、遺伝子組換え生物(GMO)であるDSM19466株が作製された。表2及び実施例4の関連する説明において認められるように、DSM19489及びDSM19466は、DSM19467及びGalliPro(登録商標)よりも顕著に多くのフィターゼを生産する。フィターゼ生産か亢進されたDSM19489及びDSM19466株は、本明細書に記載の迅速な発芽及び菌体形成能力について再チェックされ、迅速な菌体形成及び胆汁耐性で選択された株であるDSM19467の迅速な菌体形成及び胆汁耐性を維持しているかが確認された(本明細書中の実施例5を参照されたい)。本明細書中の図1において、これを模式的に図示している。
【0028】
本明細書中に記載の新規プロバイオティックバチルス細胞は、胆汁耐性であり、発芽及び菌体形成が迅速であり、及び多量のフィターゼを分泌するものである。前記収得された株は、動物飼料に添加するプロバイオティックバチルス組成物として極めて有用である。動物の腸内(胆汁酸塩が高濃度で存在する)での生存及び増殖、病原性細菌の阻害(バクテリオシンの生産)、並びに追加的に、フィチン酸塩から供給されるリンの消化及び吸収に有益かつ有用なフィターゼの多量の分泌等は、プロバイオティック細菌の全ての有益な能力を組み合わせたものである。
【0029】
従って、本発明の第一の側面は、105〜1012CFU/gのバチルス芽胞細胞を含むバチルス組成物に関し、ここで、そのバチルス組成物が:
(i):前記バチルス芽胞が、4mM及び6mMの胆汁酸塩を含む胆汁酸塩培地の存在下で、芽胞から栄養細胞への迅速な発芽及び菌体形成を呈し、当該菌体形成が、前記バチルス芽胞がそれぞれ18時間及び19時間以内に0.4OD630の栄養細胞増殖点(vegetative cell growth point)に達することで定義付けられ、ここで、前記栄養細胞増殖点とは、増殖曲線上で、ODの値が持続的な形で増大(栄養細胞の増殖により)し始め、OD630が0.4に達した点であり;
(I):ここで、前記胆汁酸塩培地は、実施例1の標準的な公知の非選択的子牛滲出培養液(Veal Infusion Broth; VIB)に、共役胆汁酸塩タウロデオキシコレート及びグリコデオキシコレート、並びに脱共役(deconjugated)胆汁酸塩デオキシコレートを、タウロデオキシコレートが60%、グリコデオキシコレートが30%、及びデオキシコレートが10%となる比率で含む胆汁酸塩混合物を添加したものであり;続いて、
(II):前記ODアッセイ解析は、以下の工程により実施される:
(a):マイクロタイタープレートのウェルに1mlあたり108のバチルス芽胞を含む胆汁酸塩培地を0.150ml注入し(これをゼロ時間とする);続いて
(b):大気条件下、37℃で、前記プレートをインキュベートし、その後、分光光度計を使用してOD630値を測定して(各読取り前に攪拌を行う)、代表的な経時増殖曲線を取得する;
並びに
(ii):前記バチルス栄養細胞が、参照バチルス細胞DSM19467の少なくとも1.25倍の量のフィターゼを生産しており、ここでフィターゼの生産量が、本明細書中の実施例2に記載の標準的な公知の非選択的心臓滲出培養液(Heart Infusion Broth(HIB))培地中で、37℃で4時間増殖後に行う、実施例2に記載の標準的なフィターゼアッセイにより測定され;ここでフィターゼアッセイの解析は、以下の工程により実施される:
(a):富栄養培養培地中でバチルス栄養細胞を一昼夜培養し;続いて
(b):前記一昼夜培養から1%の接種材料(inoculum)をHIB培地に移し(これをゼロ時間とする)、フィターゼ活性を測定するまで37℃でインキュベートする
ことを特徴とする。
【0030】
上記で論じたように、参照バチルス細胞DSM19467は、GalliPro(登録商標)を開始株として使用することにより、胆汁酸塩の存在下で迅速な発芽及び菌体形成を呈するように選択される。DSM19467は、改善されたフィターゼ生産には選択されない。理論に限定されるものではないが、本明細書中のDSM19467のフィターゼ生産能力は、GalliPro(登録商標)に対応すると考えられる。
【0031】
項目(i)において、GalliPro(登録商標)の栄養細胞増殖点は、4mM及び6mMの胆汁酸塩中でインキュベートした後少なくとも20時間であり、一方、本明細書中に記載の新規DSM19489株は、4mM及び6mMの胆汁酸塩中でそれぞれ14時間及び15時間である(本明細書中の図2及び実施例3を参照されたい)。
【0032】
ここで、本発明者らは、第一の側面の項目(i)の条件下で、栄養細胞増殖点を決定するのに、市販品であるCALSPORIN(登録商標) (Calpis Co., Ltd., Japan)をも試験したことをここに付け加えておく。GalliPro(登録商標)と同様に、市販品のCALSPORIN(登録商標)は、プロバイオティック飼料添加物として使用されるバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)組成物である。CALSPORIN(登録商標)における第一の側面の項目(i)の条件下の栄養細胞増殖点は、胆汁酸塩が4mM及び6mMのそれぞれの場合において、20時間を越えていた。これは、項目(i)において求められるところの18〜19時間よりも明らかに長く、これは、従来の市販の製品が、迅速な発芽及び菌体形成において選択されたものではないことを明示する。上記で論じたように、「天然の」バチルス細胞とは、迅速な発芽及び菌体形成能力を取得するべく選択圧が加えられていないバチルス細胞である。故に、理論に限定されるものではないが、「天然の」バチルス細胞は、第一の側面の項目(i)の条件を満たさないと考えられる。
【0033】
胆汁酸塩耐性(項目(i)の)及びフィターゼアッセイ(項目(ii)の)のいずれも、公知の、市販の標準的な構成要素(例えば、標準的な培地、胆汁酸塩;標準的なOD測定装置及び標準的な試験)に基づいてなされる。参照バチルス細胞は、DSM19467として供託されており、故に公的に入手可能である。バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞であるGalliPro(登録商標)は、DSM17231(「バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)」と名づけられている)として供託されており、故に公的に入手可能である。
【0034】
従って、本明細書中の詳細なアッセイの説明(例えば、胆汁耐性アッセイに関する本明細書の実施例1、及びフィターゼアッセイに関する本明細書の実施例2を参照されたい)に基づいて、当業者は、関心のある特定のバチルス細胞が、本発明の第一の側面の胆汁耐性(項目(i)の)及びフィターゼレベル(項目(ii)の)を満たすか否かを、客観的に決定するアッセイを、日常的に繰り返すことが出来る。
【0035】
本明細書に記載される新規バチルス組成物は、動物飼料のプロバイオティック添加物として使用され得る。用量及び投与手段は、例えば、従来技術のGalliPro(登録商標)バチルス組成物においてなされるのと同様にしてなされ得る。
【0036】
従って、本発明の第二の側面は、動物に対する給餌方法に関し、第一の側面のバチルス組成物及び本明細書中に記載される関連する態様に係る組成物を、他の動物飼料含有物と併せて動物に投与することを含む。
【0037】
本発明の第三の側面は、新規バチルス芽胞細胞をスクリーニング及び単離する方法に関し、:
(a):前記選択及び単離を、前記第一の側面の項目(i)の条件下で、18時間及び19時間以内に栄養細胞増殖点に達する程度の速さで発芽及び菌体形成することが可能な新たなバチルス芽胞細胞の、個々のバチルス芽胞細胞のプールから行い;
(b):工程(a)の単離された芽胞細胞から栄養バチルス細胞を作製し、続いて当該新たに選択及び単離された細胞を突然変異させ、新たな個々のバチルス栄養細胞群のプールを得て;
(c):工程(b)の新たな個々のバチルス栄養細胞群のプールから、第一の側面の項目(ii)の条件下で、DSM登録番号19467として供託される参照バチルス細胞よりも少なくとも1.25倍の量のフィターゼを生産することが可能な新たなバチルス栄養細胞を選択及び単離し;更に
(d):工程(c)の高生産性栄養バチルス細胞を解析して、それが工程(a)の迅速な発芽及び菌体形成を維持していることを確認し、選択したバチルス細胞を単離する
工程を含む、前記方法に関する。
【0038】
本明細書中で、発明者らが、関連する試験アッセイ(特に、実施例1の迅速な発芽及び菌体形成におけるアッセイ)、及びこれに加えて参照株のDSM19467を既に開示したことは、当業者にとって明白であり、本明細書中の第一の側面の基準を満たす他の新たなバチルス細胞を選択することは、当業者にとって慣用的な作業であり得る。
【0039】
本明細書中で論じているように、本明細書中に記載される新規スクリーニング/選択方法を使用することにより、本発明者らは、多くの新たに改善されたバチルス細胞を選択及び単離し、それらを供託した。
【0040】
従って、本発明の第四の側面は:
(a):登録番号DSM19467のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;
(b):登録番号DSM19489のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;及び
(c):登録番号DSM19466のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;又は
それらの突然変異株
からなる群から選択されるバチルス細胞に関し、ここで、当該突然変異株は、開始材料として前記供託株の一種を使用することにより収得され、そして当該突然変異株は、前記供託株の本質的特徴を保持している。
【0041】
本発明の態様は以下に記載されているが、これは単に例示を目的とするものに過ぎない。
【0042】
定義
本明細書中の用語の定義は、本明細書の技術的背景との関連で、当業者により理解されるべきものに従う。
【0043】
本明細書中、「バチルス細胞」という用語は、バチルス芽胞細胞及びバチルス栄養細胞のいずれにも関する。
【0044】
本明細書中、バチルス芽胞細胞の「バチルス芽胞」という用語は、本技術分野においては、バチルス細菌により生産される、休眠様態の、頑丈な、非生殖性構造を特徴とする芽胞に関する。芽胞の第一の機能は、一般に、環境的ストレスに晒されている期間中にバチルスを生存させることである。従って、それらは、紫外線及びガンマ線、乾燥、リゾチーム、温度、飢餓、並びに化学殺菌剤等に耐性を有する。通常、芽胞は、土壌や水中等で認められ、そこで長期間生存し得る。芽胞の被膜は、多くの毒性分子に対して不浸透性であり、また、発芽に関与する酵素を含有する。核は、DNA及びリボソーム等の通常の細胞構造を有するが代謝的に不活性である。環境条件が悪化しつつあることを細菌が認識すると、芽胞形成(sporulation)のプロセスが開始され、これは約8時間程かかる。
【0045】
「バチルス栄養細胞」という用語は、機能的な栄養バチルス細胞に関し、分裂して更なる栄養細胞を生じる。
【0046】
「発芽及び菌体形成」という用語は、バチルス芽胞が発芽及び菌体形成して、バチルス栄養細胞を生じることに関する。当業者に公知であるが、芽胞の再活性化は、環境条件が好転したときに起こり、発芽及び菌体形成を含む。発芽は、休眠芽胞が、代謝活性の動作を開始することにより、冬眠状態を破ることを含む。通常、芽胞の被膜の破壊又は吸収、芽胞の膨張、代謝活性の増大、及び環境ストレスに対する耐性の喪失を特徴とする。発芽の後に菌体形成が起こり、菌体形成は、新たな化学成分を生産し、古い芽胞被膜を脱ぎ捨てた芽胞のコアが、分裂により更なる細胞を生産し得る機能的な栄養細菌細胞に変容することを含む。
【0047】
バチルス細胞の増殖曲線(時間対OD)は、明確な増殖相を示す。芽胞が富栄養培地に移されると、発芽が開始され、続いてODが一時的に減少する(相I)。これは、ジピコリン酸が放出され、それにより芽胞被膜が水和するためである。第二の相(相II=菌体形成期)において、ODの変化が比較的小さい期間が存在し、これは、芽胞が機能的栄養細菌細胞に変容するまで続き、その後は分裂により更なる細胞が生産されるため、ODの値は持続的に増大する。OD値が持続的な増大を開始して、ODが0.4に達したとき、その点を、本明細書中では「栄養細胞増殖点」と称する。
【0048】
「光学的濃度(optical density)」という用語は、分光光度計を使用した吸光度の測定値として定義される。光学的濃度(OD)は、単位距離あたりの所定の波長λにおける光学素子の吸収率である。例えば、波長630nmで測定された場合、OD630と称され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】この図において、本明細書中に記載の新規な改善された株を得るための工程が図示されている。本明細書中の実施例は、DSM17231(GalliPro(登録商標))から開始され、古典的な手法で突然変異され、続いて胆汁酸塩の存在下で、迅速な発芽及び菌体形成を示すものがスクリーニング/選択され、その結果、新規な選択された株のDSM19467を得た。DSM19467は、古典的な突然変異手法の開始株として使用され、その結果、フィターゼを高効率で生産するDSM19489株が選択された。同様に、DSM19467を開始株として使用することにより、遺伝子組換え生物(GMO)のDSM19466株が作製された。
【0050】
図2図2a及び2bは、DSM17231と比較して、4mM及び6mMの胆汁酸塩の存在下での本発明のDSM19489バチルス芽胞の迅速な発芽及び菌体形成が改善していることを明示している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
バチルス組成物:
「バチルス組成物」という用語は、本技術分野に従って理解されるべきである。本明細書においては、所望の特性を有する多数のバチルス芽胞細胞を含むバチルス組成物と理解される。
【0052】
バチルス組成物は、様々な種類のバチルス細胞(例えば、バチルス・スブチリス(B. subtilis)及びバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)等)を含んでいてもよい。本質的に、その組成物は、本明細書中の第一の側面に定められた量のバチルス芽胞細胞を含むべきであり、ここで、そのバチルス細胞は、前記第一の側面に定められる基準を満たすものである。
【0053】
当業者に既知のことであるが、本明細書中の商業的に関連するバチルス芽胞細胞組成物は、一般に、発酵により生産される。取得された芽胞細胞は、一般に、濃縮され、乾燥され、担体と混合され、続いて適切な容器中に包装される。
【0054】
当業者に既知の商業的な形態の前記組成物中には、例えば、105〜1012CFU/gのバチルス細胞が存在する。
【0055】
従って、一つの態様において、前記組成物中の105〜1012CFU/gのバチルス芽胞細胞は、乾燥(例えば噴霧乾燥)細胞、又は凍結芽胞細胞として存在する。
【0056】
一つの好ましい態様において、バチルス組成物は、106〜1012CFU/gのバチルス芽胞細胞を含み、より好ましくは107〜1012CFU/gのバチルス芽胞細胞を含む。
【0057】
「CFU/g」という用語は、前記組成物のグラム重量に関し、その組成物中に存在する適切な添加剤を含む。バチルス組成物の包装に使用される適切な容器の重量は含まれない。
【0058】
一つの態様は、前記バチルス組成物が適切な容器中に包装されることに関する。
【0059】
当業者に公知のように、一般に、商業的な形態の細菌組成物は、他の添加剤を含み、添加剤としては、例えば、ホエー、ホエー透過液、炭酸カルシウム/石灰石、並びに抗凝結剤、例えばケイ酸アルミニウム及びkieselgur(珪藻土)に属する群の1つ以上の担体/含有物が挙げられる。
【0060】
本組成物は、本明細書に関するバチルス細胞以外に、例えば、必要な乳酸菌等の、必要な他の微生物を含む場合もある。
【0061】
バチルス細胞
バチルス細胞は、関心のある関連するバチルス細胞のいずれであってもよい。
【0062】
一つの好ましい態様において、バチルス細胞は:バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ユニフラゲラツス(Bacillus uniflagellatus)、Bacillus lateropsorus)、バチルス・ラテロスポルスBOD(Bacillus laterosporus BOD)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ポリマイキサ(Bacillus polymyxa)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、及びバチルス・ステロテルモフィルス(Bacillus sterothermophilus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・テルモフィルス(Bacillus thermophilus)、バチルス・マイコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、及びバチルス・シルクランス(Bacillus circulans)
からなる群から選択されるバチルス種から選択される少なくとも1つのバチルス細胞である。
【0063】
より好ましい態様において、バチルス細胞は、バチルス・スブチリス(B. subtilis)細胞、又はバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)である。
【0064】
最も好ましくは、バチルス細胞は、バチルス・スブチリス(B. subtilis)細胞である。
【0065】
胆汁酸塩の存在下で迅速な発芽及び菌体形成を呈する株を選択するアッセイ
上記で論じたように、第一の側面の項目(i)の胆汁耐性アッセイは、公知の市販の標準的構成要素(例えば、標準培地、胆汁酸塩;標準的なOD測定装置等)を用いて行われる。
【0066】
従って、本明細書中の詳細なアッセイの記載(例えば、本明細書中の実施例Iを参照されたい)に基づいて、当業者は、関心のある特定のバチルス芽胞細胞が、項目(i)に記載される、芽胞から栄養細胞に至る迅速な発芽及び菌体形成の基準を満たすか否かを、客観的に決定するアッセイを、日常的に繰り返すことが出来る。
【0067】
項目(i)において、栄養細胞増殖点は、OD値0.2〜0.3付近に相当する108芽胞/mlから開始する増殖曲線において、OD値が(栄養細胞の増殖により)持続的に増大して0.4に達するまでの時間の点である。これは、本明細書中で説明されているように、±30分の範囲内に限定されるが、そのような栄養細胞増殖点を当業者がどのように理解するかに従い、そしてその当業者が慣習的にこれを決定し得る増殖曲線に基づく。
【0068】
本明細書中の実施例1は、胆汁酸塩の存在下で迅速に発芽及び菌体形成する株を選択するのに適した胆汁耐性アッセイの詳細な説明を提供する。この実施例1の詳細な説明は、本明細書中で、関心のある芽胞細胞が第一の側面の項目(i)の基準を満たすか否かを決定するのに好ましいアッセイである。
【0069】
「胆汁酸塩」という用語は、胆汁酸の塩に関する。胆汁酸は、哺乳類の胆汁中に優勢に認められるステロイド酸である。それらはコレステロールの酸化により肝臓中で生産され、胆嚢中に蓄えられ、塩の形態で小腸中に分泌される。それらは界面活性剤として作用し、脂質を乳化し、それらの吸収及び消化を補助する。実施例1において使用された胆汁酸塩は、生理的濃度を模して調製されており、ブタ胆汁酸塩の組成物である。当業者に公知のように豚胆汁酸塩組成物は、本明細書中で、鳥類の胆汁酸塩と比較して、相対的に「厳しい(harsh)」条件とみなされている。
【0070】
「胆汁酸塩培地」という用語は、適切な栄養素等の適切なバチルス増殖成分及び胆汁酸塩を含む培地に関する。
【0071】
胆汁酸塩アッセイにおける、第一の側面の項目(i)の栄養細胞増殖点
上記のように、第一の側面の項目(i)に関連して、本明細書中に記載のバチルス芽胞細胞は、4mM及び6mMの胆汁酸塩の存在下で、それぞれ18時間及び19時間以内にOD値0.4の栄養細胞増殖点に達する程度の速さで芽胞から栄養細胞へて発芽及び菌体形成する。
【0072】
上記のように、新規DSM19467株は、4mM及び6mMの胆汁酸塩の存在下で、それぞれ14時間及び15時間のインキュベーションで栄養細胞増殖点に達する。
【0073】
従って、一つの好ましい態様において、バチルス芽胞は、第一の側面の項目(i)の条件下、4mM及び6mMの胆汁酸塩の存在下で、17時間及び18時間のインキュベーションで栄養細胞増殖点に達し、より好ましくは、バチルス芽胞は、第一の側面の項目(i)の条件下、4mM及び6mMの胆汁酸塩の存在下で、15時間及び16時間のインキュベーションで栄養細胞増殖点に達する。
【0074】
上記で説明したように、及び図1で模式的に示したように、突然変異生成の開始株として市販のGalliPro(登録商標)を使用し、続いて本明細書中に記載の胆汁酸塩の存在下で迅速な菌体形成を示す株を選択することにより、本明細書中に記載の新規DSM19467株が選択された。
【0075】
GalliPro(登録商標)は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞を含む組成物であり、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)は、DSM17231として供託されている。従って、GalliPro(登録商標)は、本明細書中で、参照株として扱われ得る。
【0076】
上記のように、GalliPro(登録商標)の栄養細胞増殖点は、第一の側面の項目(i)の条件下、4mM及び6mMの胆汁酸塩の存在下で、インキュベーション後20時間の時点である。従って、一つの態様において、前記選択されたバチルス芽胞は、第一の側面の項目(i)の条件下、DSM17231として供託される参照バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)芽胞細胞(「GalliPro(登録商標)」)よりも少なくとも3時間早く栄養細胞増殖点に達し、より好ましくは、前記選択されたバチルス芽胞は、第一の側面の項目(i)の条件下、DSM17231として供託される参照バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)芽胞細胞(「GalliPro(登録商標)」)よりも少なくとも4時間早く栄養細胞増殖点に達し、そして最も好ましくは、前記選択されたバチルス芽胞は、第一の側面の項目(i)の条件下、DSM17231として供託される参照バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)芽胞細胞(「GalliPro(登録商標)」)よりも少なくとも5時間早く栄養細胞増殖点に達する。
【0077】
フィターゼアッセイ
上記で論じたように、第一の側面の項目(ii)のフィターゼアッセイは、標準的な公知の市販の構成要素(例えば、標準培地、標準的な試験)を用いて行われる。
【0078】
従って、本明細書中の詳細なアッセイの説明(例えば、本明細書中の実施例2)を参照されたい)に基づいて、当業者は、関心のある特定のバチルス栄養細胞が、項目(ii)に記載のフィターゼ生産量の基準を満たすか否かを客観的に決定する本アッセイを、日常的に繰り返すことが出来る。
【0079】
本明細書中の実施例2は、フィターゼアッセイの詳細な記載を提供する。この実施例2の詳細な条件に基づき行われるフィターゼアッセイは、関心のあるバチルス栄養細胞が第一の側面の項目(ii)の基準を満たすか否かを決定するのに好ましい。
【0080】
第一の側面の項目(ii)のフィターゼ生産量
上記のように、第一の側面の項目(ii)との関係において、前記バチルス栄養細胞は、第一の側面の項目(ii)の条件下、参照細胞のDSM19467の少なくとも1.25倍の量のフィターゼを生産している。
【0081】
一つの好ましい態様において、前記バチルス栄養細胞は、第一の側面の項目(ii)の条件下、参照細胞のDSM19467の少なくとも1.5倍の量のフィターゼを生産しており、より好ましくは、前記バチルス栄養細胞は、第一の側面の項目(ii)の条件下、参照細胞のDSM19467の少なくとも1.75倍の量のフィターゼを生産している。
【0082】
バチルス芽胞を動物に給餌/投与する方法
上記のように、本発明の第二の側面は、第一の側面及び本明細書に記載の関連する態様のバチルス組成物を、他の動物飼料含有物と併せて動物に投与することを含む、動物への給餌方法に関する。
【0083】
前記動物は、関心のあるいずれの動物であってもよい。好ましくは、その動物は、家禽、反芻動物(ruminant)、子牛(calf)、ブタ、ウサギ、ウマ、魚類、及びペットからなる群から選択される動物である。
【0084】
当該技術分野において、GalliPro(登録商標)は、通常、およそ104〜108CFU/飼料g、一般に105〜106CFU/飼料gの用量で投与され、又は前記用量を、通常の飼料摂取量/動物生体重kgで補正して投与される。
【0085】
あるいは、前記バチルス芽胞は、以下の方法:
(1):動物の飲み水に投入する;
(2):動物に噴霧する;又は
(3):ペースト、ゲル、若しくはボーラスの形態で適用する;
のいずれか1つにより、動物に投与され得る。
【0086】
新規バチルス細胞のスクリーニング及び単離方法
上記のように、第三の側面は、新規バチルス細胞のスクリーニング及び単離方法に関する。
【0087】
第三の側面の方法において、前記第一の側面の項目(i)及び(ii)の条件を満たすことが可能なバチルス細胞が選択される。
【0088】
当業者が理解しているように、本明細書中で詳細に説明されている胆汁耐性アッセイ及びフィターゼ定量アッセイ(例えば、胆汁耐性アッセイにおいて本明細書中実施例1を、及びフィターゼアッセイにおいて本明細書中実施例2を参照されたい)の具体的なパラメーターは、本明細書中に記載される主要な目的、即ち第一の側面の項目(i)及び(ii)の条件を満たすことが出来るバチルス細胞の取得という目的を依然として達成できる、代替的なスクリーニング手法を創作するように変化され得る。
【0089】
一つの好ましい態様において、実施例1の胆汁耐性アッセイは、第三の側面のスクリーニング方法の工程(a)において使用され、そして実施例2のフィターゼアッセイは、第三の側面のスクリーニング方法の工程(c)において使用される。
【0090】
第三の側面のスクリーニング方法の工程(d)において、栄養バチルス細胞が単離される。この栄養バチルス細胞は、バチルス芽胞形態を作製するのに使用され得る。
【0091】
従って、一つの態様において、第三の側面のスクリーニング方法には、追加工程(e)、即ち、工程(d)の単離されたバチルス栄養細胞から、発酵(ferment)により105〜1012のバチルス栄養細胞を生産し、続いてこれらの105〜1012のバチルス栄養細胞を使用して105〜1012のバチルス芽胞細胞を作製し、それらを105〜1012CFU/gのバチルス芽胞細胞を含むバチルス組成物を提供するために単離する工程が続く。
【0092】
工程(e)を実行することにより、105〜1012CFU/gのバチルス芽胞細胞を含むバチルス組成物が収得され、含有されるバチルス細胞は、前記第一の側面の項目(i)及び(ii)の条件を満たすことが出来る。
【0093】
従って、本発明の別の側面は、105〜1012CFU/gのバチルス芽胞細胞を含むバチルス組成物であり、含有される細胞が前記第一の側面の項目(i)及び(ii)の条件を満たすことが出来て、第三の側面のスクリーニング方法及びその後の追加工程(e)により収得され得る、前記バチルス組成物に関する。
【0094】
第三の側面のスクリーニング方法の工程(b)は、工程(c)においてフィターゼ高生産細胞を選択するために、既に選択された胆汁耐性バチルス細胞から突然変異体を作製することである。当業者に理解されるように、これは、例えば特定の遺伝子を改変していわゆる遺伝子組換え生物(GMO)を作製する古典的な突然変異(例えば、化学処理又はUV等)による。
【0095】
例えば、本明細書中に記載の新規GMO株であるDSM19467はGalliPro(登録商標)に由来し、これは、DSM19467収得の実施例に記載したように、最初に作製された胆汁耐性株であった。DSM19467株のフィターゼプロモーターを別のバチルスプロモーターに入れ替えて、この株をフィターゼ酵素高生産株に形質転換し、こうしてDSM19466を収得した。同様に、DSM19467から開始して、古典的な突然変異技術を使用して、新規フィターゼ高生産株のDSM19489を作製した。例えば、図1を参照されたい。
【0096】
供託された株
上記のように、本発明の第四の側面は:
(a):登録番号DSM19467のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;
(b):登録番号DSM19489のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;及び
(c):登録番号DSM19466のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞;又は
それらの突然変異株
からなる群から選択されるバチルス細胞であり、開始材料として前記供託株の一種を使用することにより収得され、そして当該突然変異株が、前記供託株の本質的特徴を保持している、前記バチルス細胞に関する。
【0097】
本発明の第四の側面は、本明細書中に記載の新規株、又は「その突然変異体」に関する。
【0098】
供託株を開始材料として使用することは当業者にとって明白な事項であり、当該技術分野の読者であれば、従来の突然変異生成技術、又は再単離(re-isolation)技術により、本明細書に記載の必要な特徴及び利点を保持した、それらの更なる突然変異体又は派生物(derivative)を、日常的に収得することが出来る。従って、前記第一の側面の「その突然変異体」という用語は、供託株を開始材料として使用することにより収得された突然変異体に関する。
【0099】
あるいは、これは、開始株として本明細書中の供託株の一種を使用して、その供託株を突然変異させ、そして新規株を単離することを含む、株を収得する方法として策定される。ここで、前記変異体は、前記供託株の本質的特徴を保持している。
【0100】
一種のバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)株のサンプルは、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Maschroder Weg Ib, D- 38124 Braunschweig)に、受入番号DSM19467として2007年6月27日に供託されている。この供託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条件に従い作製されている。
【0101】
一種の新規バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)のサンプルは、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Maschroder Weg Ib, D- 38124 Braunschweig)に、受入番号DSM19489として2007年6月27日に供託されている。この供託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条件に従い作製されている。
【0102】
一種の新規バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)のサンプルは、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Maschroder Weg Ib, D- 38124 Braunschweig)に、受入番号DSM19466として2007年6月27日に供託されている。この供託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条件に従い作製されている。
【実施例】
【0103】
実施例1:胆汁耐性アッセイ
培地:
培地は、標準的な市販の非選択的培地の子牛滲出培養液(VIB)(Difco, 234420)であった。本出願日において、供給元であるBD Diagnostic Systems (www.bd.com)が発行する製品カタログ("Difco(商標)/BBL(商標) Manual)は子牛滲出培養液に関して、以下のように記載している。
【0104】
曰く、「子牛滲出培養液中の子牛赤身の浸出物及びペプトンにより、窒素、ビタミン、炭素及びアミノ酸が供給される。塩化ナトリウムにより、本製剤の浸透圧バランスが維持されている」。
【0105】
この培地は、取扱説明書に従い、1Lの精製水に25gの子牛滲出培養液の粉末を懸濁し(2.5%溶液)、続いて頻繁に攪拌しながら加熱し、1分間煮沸して粉末を完全に溶解させた。2.5%子牛滲出培養液1リットルには:
子牛赤身滲出物:10g
プロテオースペプトン:10g
塩化ナトリウム:5g
が含まれていた。
【0106】
前記培地は滅菌ビンに分注され、15分間121℃でオートクレーブにかけられた。
【0107】
胆汁酸塩溶液/培地:
ブタ胆汁中の胆汁酸塩の生理的組成及び濃度を模倣して、胆汁酸塩の混合物を調製した。この胆汁酸塩を上記の如く調製した子牛滲出培養液に溶解し、最終的な胆汁酸塩の濃度を8mMとした。
【0108】
共役胆汁酸塩は、タウロデオキシコレート(Sigma T-0875, U.S.)及びグリコデオキシコレート(Sigma G-9910, U.S.)であり、脱共役(deconjugated)胆汁酸塩は、デオキシコレート(Sigma D-5670 U.S.)であり、最終濃度8mMの胆汁酸塩溶液には、タウロデオキシコレートが60%、グリコデオキシコレートが30%、デオキシコレートが10%含まれる。
【0109】
15分間121℃のオートクレーブの前に、前記溶液は、水酸化ナトリウムによりpH7.4に調製された。調製された8mM胆汁酸塩培地は、胆汁酸塩濃度が0、1、2、3、4、6、及び8mMとなるように希釈された。
【0110】
前記胆汁酸塩は、前記子牛滲出培養液中に濃縮状態で添加された。従って、子牛赤身滲出物、プロテオースペプトン、及び塩化ナトリウムの最終的な濃度は、実質的に、胆汁酸塩が添加される前の2.5%子牛滲出培養液における濃度と変わらなかった。
【0111】
芽胞懸濁物
栄養細胞と芽胞細胞とを区別して純粋な接種用芽胞製品であることを保証するために、80℃で10分間の加熱処理の有無により、バチルス製品の芽胞数を決定した。加熱処理の後室温まで冷却し、その製品の食塩ペプトン水中の連続的10倍希釈系列を作製した。トリプトース血液寒天プレート(Difco 0232-01)に、適切な小数希釈(decimal dilution)から取られた0.1mlの前記希釈物が接種された。それらのプレートは、翌日まで37℃でインキュベートされた。この、本製品の芽胞計数結果に基づいて、前記芽胞懸濁物は、滅菌蒸留水中に、最終的に計数される芽胞の濃度が108CFU/mlとなるように調製された。最終的な接種材料中の栄養細胞の数は、上記の方法を使用して決定された。108CFU/mlの最終濃度は、開始OD630にして0.2〜0.3に対応していた。
【0112】
増殖測定:光学的濃度測定
滅菌平底96ウェルマイクロタイタープレートを使用した(Greiner Bio-one GmbH, Germany)。各ウェルに、芽胞を接種(1mlあたり〜108個の芽胞、開始OD630にして〜0.2〜0.3と同等/相当する)した0.150mlのVIBを注入し、続いてそれらのプレートを、37℃で20時間インキュベートした。各測定に先立ち、プレートを、強度4(高)のサイクルで1分間攪拌した。
【0113】
プレートカバー内側での濃縮を避けるため、蓋はTriton X-100の希釈溶液に晒された。
【0114】
バチルス株の発芽及び菌体形成の動態は、波長630nm OD630)の分光光度計(Bio-tek Instruments, Inc. VE)を使用して測定された。10分間隔で読取りが実行され、KC4(商標)ソフトウェア(Bio-tek Instruments, Inc., USA)を使用して解析された。20時間後、Excel(登録商標)表計算ソフトで更に解析を行い、更にSASバージョン9.0に取り込み、統計解析を行った。
【0115】
実施例2:フィターゼ活性アッセイ
本研究において使用されたバチルスにより生産されるフィターゼ酵素単位を測定及び定量するために、Walsh et al. 2004, Biochemistry &Molecular Biology Education vol. 32 no 5 (336- 340)に記載の方法を採用した。本質的に、増殖動態のための方法を標準化するためになされた唯一の重要な変更は、分光光度計を使用して波長600における光学濃度(OD)を測定し(必要に応じて、細胞を水で4倍に希釈し)、生存バチルス細胞数に対するフィターゼ活性を測定したことである。この方法を使用することにより、相対的に限定された標準偏差を得られる。
【0116】
バチルス細胞の増殖
バチルス細胞は、富栄養バチルス増殖培地に接種され、37℃で増殖され、24時間に亘り一定間隔ごとのそのバチルス株の増殖及びフィターゼ活性が追跡された。
【0117】
前記バチルス芽胞は、心臓滲出培養液(HIB)を基礎とした培地に:
HIB(Bacto 238400):25g/l
0.5% Bacto酵母Extract(Difco 212750):5g/l
2mM CaCl2(Merck 1.02382):0.294g/l
の組成を加えたものをを15分間121℃でオートクレーブにかけ、更に濾過滅菌した1%マンノース及び1%グルコースを添加したものを用いて増殖させる。
【0118】
HIBは、周知の市販の非選択的培地である。供給元であるBD Diagnostic Systems (www.bd.com)が発行する本発明の出願日の製品カタログには、1リットルあたりのBacto(商標)心臓滲出培養液には:
ウシ心臓500gからの抽出物:10.0g
トリプトース:10.0g
塩化ナトリウム:5.0g
の組成/製剤が含まれると記載されていた。
【0119】
HIBが添加された培地は、リン酸含有率が低く、そのためフィターゼアッセイに適している。一昼夜の培養の後、1%の接種材料が新鮮なHIB培地に添加され、活性測定までの間(例えば、4、6、8、及び24時間後)、37℃でインキュベートされた。
【0120】
前記培地のインキュベーションは、十分な通気のもと、青い蓋のNunc50mlで、又はより小さい量(0.15ml)にあっては96ウェルELISAプレート中で行われた。
【0121】
フィターゼアッセイ
フィターゼアッセイは、フィターゼが培地中に分泌されることから、細胞上澄において行われる。前記マイクロタイタープレートを、15分間3600rpmで遠心分離する。より大きな体積については、Eppendorf遠心チューブ中で、15分間2400〜3600rpmで遠心分離する。フィターゼアッセイ系に細胞が入らないように、注意深く上澄を抜き取るべきである。
【0122】
溶液
・0.1M Tris/マレイン酸塩 pH7.0
・溶液A:0.1M Tris/マレイン酸塩 pH7.0+トウモロコシ由来0.1w/vフィチン酸ナトリウム塩(sigma P8810)+2mM CaCl2(用事調製)=基質
溶液B:8gモリブデン酸アンモニウム(Sigma A7302)+50ml H2O+27ml 10M H2SO4+H2O ad 100ml
・溶液C:5g FeSO4(sigma F7002)+90ml H2O(溶解するまで攪拌する)+10ml溶液B(用事調製)
・0.5M TCA(Merck 1.00807.1000)8%w/v
・1mM KH2PO4
【0123】
0.020mlのバチルス上澄を注入した96ウェルマイクロタイタープレート中でアッセイを行った。このプレートに、0.1%フィチン酸及び2mM CaCl2を含有する0.1M Tris/マレイン酸塩 pH7.0緩衝溶液(溶液A)を0.080ml添加した。このプレートを50℃で30分インキュベートした(蒸発防止のためプレートを被覆して行った)。
呈色反応:
0.5M トリクロロ酢酸TCAを添加する。
0.100ml Fe++溶液(溶液C)を添加する。
室温で5分間静置する。青の呈色が見出される。
600nmの吸光度を読み取る。
【0124】
このアッセイは、前記上澄中の遊離リン酸塩の総量を測定している。遊離リン酸塩のバックグラウンド量を決定するために、フィターゼ酵素の基質(フィチン酸)非存在の条件下においても、前記フィターゼアッセイを実行する。これは、本アッセイにおける溶液A(上記)を単なる0.1M Tris/マレイン酸塩緩衝剤 pH7.0に置き換えたものである。
【0125】
フィターゼ活性の算定
前記アッセイで測定された吸光度は、培地中の遊離リン酸塩及びフィターゼの作用により放出されたリン酸塩を示すところ、培地中の遊離リン酸塩は差し引かれるべきである。そのために、フィチン酸を含有するサンプルと含有しないサンプルについて測定を行い、両者を差し引いて、フィターゼ活性の数値のみを抽出する。細胞密度(OD600)に対して補正された培養バチルスのフィターゼ活性は、本ケースで行ったように、活性(単位吸光度)として表現される。
【0126】
【化1】
【0127】
実施例3:胆汁耐性バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞株DSM19467の選択
開始バチルス細胞に、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞のGalliPro(登録商標)を使用した。
【0128】
GalliPro(登録商標)は、突然変異により、新たな個別のバチルス細胞のプールを構成した。芽胞が形成され、上記実施例1で記載したように、4mM及び6mMの胆汁を含む胆汁酸塩培地の存在下での芽胞から栄養細胞に至る発芽及び菌体形成の迅速なものが選択された。
【0129】
バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞のDSM19467が選択された。
【0130】
下記の表1は、発芽及び菌体形成のデータを示す。
【0131】
欄内に記載されている時間(時間)は、OD0.2〜0.3に対応する108CFU/mlのサンプルがOD0.4に達する(3回複製したことを意味する)までの時間を表す。
【0132】
【表1】
【0133】
胆汁耐性及びフィターゼ過剰発現DSM19489の選択は、下記実施例4に記載される。DSM19467は、DSM19489と概ね同程度の発芽及び菌体形成能力を有する。
【0134】
結論
DSM19467及びDSM19489は、胆汁耐性株であり、かつGalliPro(登録商標)よりも発芽及び菌体形成が明らかに迅速である。
【0135】
実施例4:フィターゼ高生産バチルス細胞のDSM19489(古典的)及びDSM19466(GMO)の選択
開始バチルス細胞は、実施例3で選択したバチルス・スブチリス(bacillus subtilis)細胞のDSM19467であった。
【0136】
DSM19467を古典的突然変異形成手法により突然変異させ、新たな個別のバチルス栄養細胞のプールを得た。この栄養細胞から、上記実施例2に記載のフィターゼアッセイを使用して、多量のフィターゼを生産するものを選択した。フィターゼ高生産バチルス・スブチリス細胞(bacillus subtilis)、DSM19489(古典的)を選択した。
【0137】
フィターゼ酵素を高生産するように、DSM19467株のフィターゼプロモーターを他のバチルスプロモーターに改変して、DSM(19466)(GMO)を収得した。
【0138】
フィターゼ測定の結果

・DSM19489
胆汁耐性かつフィターゼ高生産バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)。
・DSM19467
胆汁耐性バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)であり、DSM19489の親株。
・DSM19466
胆汁耐性かつ改変フィターゼ酵素コード遺伝子保有(フィターゼ高生産)バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)。
【0139】
【表2】
【0140】
DSM19489株は2.68ユニットのフィターゼを生産し、一方、DSM19467株(参照胆汁耐性親株)は1.10ユニットのフィターゼを生産する。胆汁耐性DSM19466遺伝子改変株も、DSM19489に近いレベルのフィターゼ生産を達成する(2.30)ので、これもフィターゼ高生産株である。
【0141】
結論
DSM19489は、胆汁耐性かつフィターゼ高生産性細胞であり、本実施例において、前記培地中で培養後4時間で、DSM19467と比較して2倍のフィターゼを生産する。
【0142】
DSM19466(GMO)は、胆汁耐性株であり、そのフィターゼ遺伝子が、フィターゼを高生産するよう改変されているため、DSM19489と同様に、前記培地中で培養後4時間で、親株(DSM19467)の2倍の量のフィターゼを生産する。
【0143】
DSM19467は、GalliPro(登録商標)を起源とし、フィターゼ高生産をもって選択されたものではない。従って、GalliPro(登録商標)のフィターゼ生産量は、DSM19467と概ね同程度と考えられる。
【0144】
実施例5:フィターゼ高生産バチルス細胞のDSM19489(古典的)及びDSM19466(GMO)の胆汁耐性「チェック」
実施例4で選択されたフィターゼ高生産バチルス細胞のDSM19489(古典的)及びDSM19466(GMO)は、実施例1に記載の、芽胞から栄養細胞に至る迅速な発芽及び菌体形成能力を再チェックされた。
【0145】
その結果は、DSM19489及びDSM19466のいずれも、それらを収得するために使用された開始細胞のDSM19467と概ね同程度に迅速な発芽及び菌体形成を担持していた。
【0146】
参考文献
1. Antonie Van Leeuwenhoek. 2006 Aug; 90(2) : 139-46. Epub 2006 JuI 4
2. US2003/0124104A
3. US6255098
図1
図2