特許第5666917号(P5666917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5666917難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666917
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20150122BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20150122BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20150122BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20150122BHJP
   H01B 7/29 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08L75/04
   C08K3/32
   C08K5/521
   H01B7/34 A
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-545998(P2010-545998)
(86)(22)【出願日】2009年2月5日
(65)【公表番号】特表2011-511149(P2011-511149A)
(43)【公表日】2011年4月7日
(86)【国際出願番号】US2009033236
(87)【国際公開番号】WO2009100232
(87)【国際公開日】20090813
【審査請求日】2012年2月3日
(31)【優先権主張番号】61/027,221
(32)【優先日】2008年2月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591123001
【氏名又は名称】ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】イートン,ロバート
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−302602(JP,A)
【文献】 特開2004−238568(JP,A)
【文献】 特開平07−307115(JP,A)
【文献】 特開2007−063346(JP,A)
【文献】 特開平09−316250(JP,A)
【文献】 特開2000−063841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C08L 75/00
C08K 3/00
C08K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオレフィン、
(b)熱可塑性ポリウレタン、及び
(c)膨張性のポリホスファート難燃剤組成物
を含む難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物であって、
前記膨張性のポリホスファート難燃剤組成物が、膨張性の窒素含有ポリホスファートを含み、
前記膨張性の窒素含有ポリホスファートが、ポリリン酸アンモニウム及びピペラジンポリホスファートからなる群より選択され、
前記ポリオレフィンが15〜45重量パーセントの量で存在し、熱可塑性ポリウレタンが15〜45重量パーセントの量で存在し、
前記難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物が、513%以上の破断点伸びを有する、難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項2】
ハロゲン非含有である、請求項1に記載の難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンが極性である、請求項1又は2に記載の難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記極性ポリオレフィンがエチレン及び非飽和エステルのコポリマーである、請求項3に記載の難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物が、3,140kPa(456psi以上の引張り強さを有する、請求項1に記載の難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記膨張性のポリホスファート難燃剤組成物が、0.1〜70重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
前記膨張性の窒素含有ポリホスファートがピペラジンポリホスファートである、請求項1に記載の難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項8】
1つ又はそれ以上の電気導体、或いは、1つ又はそれ以上の電気導体からなるコアを含み、それぞれの導体又はコアが、請求項1から7のいずれか一項に記載される難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物を含む難燃性の層によって取り囲まれているケーブル。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載される難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物を含む押出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ及びケーブルでの適用のための難燃性配合物に関する。具体的には、本発明は、ワイヤ用外被、ケーブル用外被、押出シーチング(sheeting)及び押出異形材のための、ハロゲンを含有しない難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属水和物に基づくポリオレフィン化合物、及び、膨張剤に基づくポリオレフィン化合物は、産業によって要求される火炎特性及び機械的特性を同時に達成しない。注目すべきことに、難燃性充填剤を、良好な燃焼試験成績を達成するために40重量パーセント〜50重量パーセントの負荷量で添加することは、得られたポリオレフィン化合物が不良な機械的特性を有することを引き起こす。そのようなものとして、優れた燃焼成績と同様に、優れた機械的特性(例えば、大きい伸び、大きい柔軟性(低い弾性率)、良好な引張り強さ及び改善された変形温度など)を有するポリオレフィン組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決するための課題】
【0003】
そのために、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン及び膨張性のポリホスファート難燃剤を含む本発明の組成物が提供される。具体的には、本発明は、400%を超える伸び、及び、1500psiを超える引張り強さを達成し、一方、同じポリオレフィンは100%の伸び及び1000psi未満の引張り強さを達成しただけである。同様にまた、本発明は、TPUのみの同等な組成物に対する改善されたテープ押出成績を示し、このことは、押出適用のための改善された溶融レオロジー/製造能を示している。本発明は、ワイヤ及びケーブルの外被、並びに、他の押出成形品(例えば、シーチング及び異形材など)の調製において特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の組成物は、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン及び膨張性のポリホスファート難燃剤組成物を含む。好ましくは、本発明において記載される組成物はハロゲン非含有である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ポリオレフィンは、極性、非極性、又は、それらの混合であり得る。ポリオレフィンは約5重量パーセント〜約90重量パーセントの量で存在する。
【0006】
好適な極性ポリオレフィンには、(i)エチレン及び不飽和エステルのコポリマー、(ii)エチレン及び不飽和酸(例えば、アクリル酸又はメタクリル酸など)のコポリマー、(iii)エチレン及びビニルシラン化合物(例えば、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランなど)のコポリマー、及び、(iv)これらのコモノマーのいずれかのインターポリマーが含まれる。好ましくは、ポリオレフィンは、エチレン及び不飽和エステルの極性コポリマーである。
【0007】
コポリマーの、エステルコモノマーに起因すると考えられる部分が、コポリマーの重量に基づいて約5重量パーセント〜約50重量パーセントの範囲で可能であり、好ましくは、約15重量パーセント〜約40重量パーセントの範囲で可能である。エチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスが約0.5グラム/10分〜約50グラム/10分の範囲で可能である。
【0008】
不飽和エステルがアルキルアクリラート又はアルキルメタクリラートであるとき、アルキル基は1個〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは、1個〜4個の炭素原子を有することができる。そのようなアクリラート及びメタクリラートの例が、エチルアクリラート、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、t−ブチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート及び2−エチルヘキシルアクリラートである。
【0009】
不飽和エステルがビニルカルボキシラートであるとき、カルボキシラート基は2個〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは、2個〜5個の炭素原子を有することができる。そのようなビニルカルボキシラートの例が、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート及びビニルブタノアートである。
【0010】
好適な非極性ポリオレフィンには、(i)エチレンのホモポリマー、(ii)エチレンと、1つ又はそれ以上のα−オレフィンと、必要な場合にはジエンとのコポリマー、(iii)一酸化炭素、プロピレン及びブテンとのエチレンコポリマー、(iv)プロピレンのホモポリマー、(v)プロピレン及び他のオレフィンのコポリマー、及び、(vi)プロピレン、エチレン及びジエンのターポリマーが含まれる。
【0011】
様々な熱可塑性ポリウレタンポリマーが当分野では公知であり、これらは典型的には、線状のヒドロキシル末端ポリオール、有機ジイソシアナート及び鎖延長剤の反応によって得られる。本発明において有用な熱可塑性ポリウレタン(TPU)には、ポリエステルTPU及びポリエーテルTPUが含まれる。
【0012】
注目すべきことに、そのようなポリエステルTPUは、アジピン酸のような二酸と、エチレングリコール、プロパンジオール及びブタンジオールのようなジオールとを用いて作製することができ、一方、そのようなポリエーテルTPUは、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドのポリオールを用いて作製することができる。TPUは約0.1重量パーセント〜95重量パーセントの量で存在する。
【0013】
膨張性のポリホスファート難燃剤組成物は、(i)膨張性の窒素含有ポリホスファート、及び、(ii)メラミン系又はメラミン誘導体の共添加物のブレンド配合物である。好ましくは、膨張性の窒素含有ポリホスファートは、ポリリン酸アンモニウム、ピペラジンポリホスファート、又は、それらの誘導体である。より好ましくは、膨張性の窒素含有ポリホスファートはピペラジンポリホスファートである。膨張性難燃剤として、窒素含有ポリホスファートは、炎にさらされたとき、膨潤し、炭化するという特徴を有する。膨張性のポリホスファート難燃剤組成物は約0.1重量パーセント〜約70重量パーセントの量で存在する。
【0014】
本発明の組成物はさらに、他の非ハロゲン難燃剤を含むことができ、例えば、金属酸化物、金属酸化物の水和物、金属炭酸塩、炭酸塩+酸又は酸生成物質、セメント、尿素及びポリアルコールなどを含むことができる。
【0015】
本発明の組成物はさらに、他のポリマーを含むことができ、例えば、非オレフィンポリマー、ポリビニルクロリド、エステル−エーテルブロックコポリマー、エステル/アミドブロックコポリマー、オレフィンブロックコポリマー及びエンジニアリングプラスチック(例えば、ポリカーボナート、ポリスルホン及びポリイミドなど)などを含むことができる。組成物はまたさらに、他の添加物を含むことができ、例えば、鉱物及び過酸化物を含むことができる。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、1つ又はそれ以上の電気導体、或いは、1つ又はそれ以上の電気導体からなるコアを含み、それぞれの導体又はコアが、本明細書中に記載される難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物を含む難燃性の層によって取り囲まれるケーブルである。
【0017】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書中に記載される難燃性のポリオレフィン/熱可塑性ポリウレタン組成物を含む押出成形品である。
【実施例】
【0018】
下記の非限定的な実施例により、本発明が例示される。
試験
(1)降伏強さ(psi);
(2)ピーク時引張り強さ(psi);
(3)破断点引張り強さ(psi);
(4)破断点伸び(%);
(5)1%割線モジュラス(psi);
(6)2%割線モジュラス(psi);
(7)5%割線モジュラス(psi);及び
(8)燃焼特性、非燃焼旗;
(9)旗に燃え移る時間(秒);
(10)燃焼特性、総時間(秒);
(11)完全燃焼せず;
(12)炭化せず(mm、旗の下方);
(13)有炎滴下がない;
(14)大きい溶融流れ、但し、1:流れがない(最も良い)、5:大きい流れ;及び
(15)総合評価**;最も良い(1)>>最も悪い(5)、但し、#1、有炎滴下がない;#2、炭化部分の長さ;#3a、溶融流れがない;#3b、旗に燃え移らない;#3c、旗に燃え移る時間。
【0019】
燃焼試験
燃焼試験を、45秒垂直UL94底部着火のための垂直短冊(strip)試験によって行った。試験試料片を、ワイヤが埋め込まれた、長さが8”である75ミル板状試料片(plaque)の100ミル短冊であるように調製した。
【0020】
例示組成物
試験試料片を、下記の成分を使用して調製した:
(1)PELLETHANE(商標)2102−75Aカプロラクトンポリエステル熱可塑性ポリウレタン、これは、ショアA硬度が77Aであり、比重が1.17であり、The Dow Chemical Companyから入手可能である;
(2)PELLETHANE(商標)2103−80AEポリエーテル熱可塑性ポリウレタン、これは、ショアA硬度が82Aであり、比重が1.13であり、The Dow Chemical Companyから入手可能である;
(3)ELVAX(商標)40L−03エチレン/ビニルアセタートコポリマー、これは、ビニルアセタート含有量が40パーセントであり、190℃及び2.16kgで測定されるメルトインデックスが3dg/mであり、E.I.du Pont de Nemours and Companyから入手可能である;及び
(4)FP−2100(商標)膨張性窒素含有ポリホスファート系難燃剤、これは、ピペラジンポリホスファート及びリン酸化合物のブレンド配合物であり、Amfine Chemical Corporation又はAdeka Corporationから入手可能である。
【0021】
表1は2つの比較例(比較例1及び比較例2)及び本発明の3つの実施例(実施例3〜実施例5)を示す。それぞれの量が重量パーセントで示される。
【0022】
所望される機械的特性には、1500psiを超える引張り強さ、及び、200パーセントを超える伸びが含まれる。難燃性の成績については、2以下の総合的火炎評価が許容可能である。
【表1】