特許第5666918号(P5666918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許5666918ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子とその製造方法、及びポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体
<>
  • 特許5666918-ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子とその製造方法、及びポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666918
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子とその製造方法、及びポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20150122BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20150122BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C08J9/18CES
   C08F4/6592
   C08F10/06
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-548386(P2010-548386)
(86)(22)【出願日】2010年1月13日
(86)【国際出願番号】JP2010000127
(87)【国際公開番号】WO2010087111
(87)【国際公開日】20100805
【審査請求日】2013年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2009-15538(P2009-15538)
(32)【優先日】2009年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-53807(P2009-53807)
(32)【優先日】2009年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉田 融
(72)【発明者】
【氏名】常石 浩司
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−011128(JP,A)
【文献】 特開2006−057010(JP,A)
【文献】 特開平05−059210(JP,A)
【文献】 特開2008−274025(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/027124(WO,A1)
【文献】 特開平08−245820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08F 4/60−4/70
C08F 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a)〜(c)を有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂としてなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
(a)クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であること。
(b)融点が100℃以上160℃以下であること。
(c)プロピレンモノマー単位が90モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上10モル%以下存在すること。
【請求項2】
ポリプロピレン系樹脂のクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が0.5重量%以下である、請求項1記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂が、メタロセン触媒を用いて重合されたことを特徴とする、請求項1あるいは2記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項4】
メタロセン触媒が、遷移金属を異種のπ系の不飽和環状化合物で挟んだ構造のメタロセン化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項5】
メタロセン触媒が、下記一般式[I]で表されるメタロセン化合物を含むことを特徴とする請求項3あるいは4に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【化3】
上記一般式[I]において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14は、水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子またはケイ素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。
【請求項6】
ポリプロピレン系樹脂の融点が110℃以上145℃以下である、請求項1〜5何れか一項記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項7】
ポリプロピレン系樹脂が、13C−NMRで測定した、全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入及び1,3−挿入に基づく位置不規則単位の合計量が0.5モル%未満である請求項1〜6何れか一項記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項8】
ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.005重量部以上0.5重量部以下のフェノール系酸化防止剤を含む請求項1〜7何れか一項記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項9】
示差走査熱量計法による測定において2つの融解ピークを有し、低温側の融解ピーク熱量Qlと、高温側の融解ピーク熱量Qhから算出した、高温側の融解ピークの比率Qh/(Ql+Qh)×100が10%以上50%以下である、請求項1〜8何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項10】
請求項1〜9何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる、密度が10kg/m以上300kg/m以下であるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
【請求項11】
下記要件(a)〜(c)を有するポリプロピレン系樹脂粒子と、水、無機分散剤を耐圧容器中に収容した後、攪拌条件下に分散させるとともに、発泡剤の存在下、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点温度以上に昇温し、次いで耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に耐圧容器中の分散液を放出して発泡させるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
(a)クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であること。
(b)融点が100℃以上160℃以下であること。
(c)プロピレンモノマー単位が90モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上10モル%以下存在すること。
【請求項12】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が実質的に合着していないことを特徴とする請求項11に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車内装部材、自動車バンパー用芯材、断熱材、緩衝包材、通箱などに用いられるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子とその製造方法、及び該予備発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴をもつ。また同様の型内発泡成形体と比較しても、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体と比較すると、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率に優れており、またポリエチレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体と比較すると、寸法精度、耐熱性、圧縮強度が優れている。これらの特徴により、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材など様々な用途に用いられている。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に要求される重要な性質として、高温における寸法安定性が挙げられる。
【0004】
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は高温雰囲気下で使用される場合が多々あり、例えば自動車内装部材などは、夏季には窓を閉め切った車内において局部的に100℃に近い温度にさらされる場合もある。また、断熱材、緩衝包材、通箱などにおいても高温の環境で用いられることが少なくない。
【0005】
このようなことから、高温雰囲気下においても優れた寸法安定性を発現するようポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に求められるが、このような場合、一般的には融点の高いポリプロピレン系樹脂を用いたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を採用することになる。
【0006】
しかし、このような融点の高いポリプロピレン系樹脂を用いた場合、該ポリプロピレン系樹脂からなる予備発泡粒子を型内発泡成形する際に、高い成形加熱蒸気圧力を要することとなり、成形加工コストが高くなるという問題を有することとなる。
【0007】
従って、低い成形加熱蒸気圧力で型内発泡成形が可能であり、かつ高温での寸法安定性に優れるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が求められている。
【0008】
一方、近年、ポリプロピレン系樹脂の重合触媒技術が広範に検討され、ポリプロピレン系樹脂の性能改善が種々検討されつつある。その中で、いわゆるメタロセン触媒を用いることにより、組成分布が制御され、従来のポリプロピレン系樹脂と比較して組成分布がシャープなポリプロピレン系樹脂が得られている(例えば、特許文献1)。
【0009】
また、メタロセン触媒を用いたポリプロピレン系樹脂からなる予備発泡粒子についても知られている(例えば、特許文献2〜7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−57010号公報
【特許文献2】特開平6−240041号公報
【特許文献3】国際公開1999/028374号公報
【特許文献4】特開2004−143451号公報
【特許文献5】国際公開2008/139822号公報
【特許文献6】国際公開2009/001626号公報
【特許文献7】特開2009−144096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形する際において、高くない成形加熱蒸気圧力で成形でき、高温での寸法安定性に優れるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、特定の特性を有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂に用いることにより型内発泡成形時の成形加熱蒸気圧力が高くなく、さらに得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温での寸法安定性が優れるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、良好な生産効率で得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、次の要件からなる。
〔1〕 下記要件(a)〜(c)を有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂としてなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
(a)クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であること。
(b)融点が100℃以上160℃以下であること。
(c)プロピレンモノマー単位が90モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上10モル%以下存在すること。
〔2〕 ポリプロピレン系樹脂のクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が0.5重量%以下である、〔1〕記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
〔3〕 ポリプロピレン系樹脂が、メタロセン触媒を用いて重合されたことを特徴とする、〔1〕あるいは〔2〕記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
〔4〕 メタロセン触媒が、遷移金属を異種のπ系の不飽和環状化合物で挟んだ構造のメタロセン化合物を含むことを特徴とする〔3〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
〔5〕 メタロセン触媒が、下記一般式[I]で表されるメタロセン化合物を含むことを特徴とする〔3〕あるいは〔4〕に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【0014】
【化1】
【0015】
上記一般式[I]において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14は、水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子またはケイ素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。
〔6〕 ポリプロピレン系樹脂の融点が110℃以上145℃以下である、〔1〕〜〔5〕何れかに記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
〔7〕 ポリプロピレン系樹脂が、13C−NMRで測定した、全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入及び1,3−挿入に基づく位置不規則単位の合計量が0.5モル%未満である〔1〕〜〔6〕何れかに記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
〔8〕 ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.005重量部以上0.5重量部以下のフェノール系酸化防止剤を含む〔1〕〜〔7〕何れかに記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
〔9〕 示差走査熱量計法による測定において2つの融解ピークを有し、低温側の融解ピーク熱量Qlと、高温側の融解ピーク熱量Qhから算出した、高温側の融解ピークの比率Qh/(Ql+Qh)×100が10%以上50%以下である、〔1〕〜〔8〕何れかに記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
〔10〕 〔1〕〜〔9〕何れかに記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られる、密度が10kg/m以上300kg/m以下であるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
〔11〕 下記要件(a)〜(c)を有するポリプロピレン系樹脂粒子と、水、無機分散剤を耐圧容器中に収容した後、攪拌条件下に分散させるとともに、発泡剤の存在下、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点温度以上に昇温し、次いで耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に耐圧容器中の分散液を放出して発泡させるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
(a)クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であること。
(b)融点が100℃以上160℃以下であること。
(c)プロピレンモノマー単位が90モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上10モル%以下存在すること。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造時にポリプロピレン系樹脂粒子同士が合着することが殆どないため、生産効率に優れたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が得られる。また得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いることで、高温での寸法安定性に優れたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を低い成形加熱蒸気圧力で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】示差走査熱量計を用い、本発明記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を測定した際に得られるDSC曲線の一例である。横軸は温度、縦軸は吸熱量である。低温側のピークと破線で囲まれる部分がQl、高温側のピークと破線で囲まれる部分がQhである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、下記要件(a)〜(c)を有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂としてなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子である。
(a)クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であること。
(b)融点が100℃以上160℃以下であること。
(c)プロピレンモノマー単位が90モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上10モル%以下存在すること。
【0019】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂のクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量は、2.0重量%以下であり、好ましくは1.0重量%以下であり、より好ましくは0.7重量%以下であり、最も好ましくは0.5重量%以下である。クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体としたときの高温での寸法安定性が低下する。
【0020】
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であれば、樹脂組成分布がシャープとなるとともに、高温時に寸法安定性を低下させる要因となる組成物割合も減少すると考えられ、これにより用いるポリプロピレン系樹脂の融点を上げることなく、すなわち低い成形加熱蒸気圧力に抑えつつポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を成形することが可能となり、しかも得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温での寸法安定性が向上するものと考えられる。
【0021】
このようなクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であるポリプロピレン系樹脂は、重合する際の重合条件を適宜調整することで得られるが、特に重合触媒の選択が重要となる。後述するように、重合触媒としてはメタロセン触媒を選択することが好ましいが、メタロセン触媒を用いたとしてもクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%を超えるポリプロピレン系樹脂しか得られない場合がある。なお、メタロセン触媒を用いてもクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%を超えるポリプロピレン系樹脂が得られる例としては、例えば、特開2006−57010号公報の比較例4あるいは5に記載がある。単独の樹脂で、クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下にならない場合であっても、他の樹脂を混合することによってクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下とすることが可能な場合がある。
【0022】
なお、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂のクロス分別クロマトグラフ法は、次に記載する条件で測定することができ、また、40℃以下の溶出成分量は、40℃以下の溶出量の積分値を言う。
装置 :三菱油化社製クロス分別クロマトグラフ CFC T−150A型
検出器 :Miran社製赤外分光光度計1ACVF型
検出波長 :3.42μm
GPCカラム:昭和電工社製Shodex AT−806MS 3本
カラム温度 :135℃
カラム較正 :東ソー社製単分散ポリスチレン
分子量較正法:汎用較正法/ポリエチレン換算
溶離液 :o−ジクロロベンゼン(ODCB)
流速 :1.0mL/min.
試料濃度 :30mg/10mL
注入量 :500μL
降温時間 :135分(135から0℃)、その後60分間保持
溶出区分 :0、20、40、50、60、70、75、80、83、86、89、92、95、98、101、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、130、135℃(29分画)
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂の融点は、100℃以上160℃以下であり、好ましくは110℃以上145℃以下であり、最も好ましくは115℃以上140℃以下である。融点が100℃未満の場合ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体としたときの高温での寸法安定性が低下し、160℃を超えると型内発泡成形する際の成形加熱蒸気圧力が高くなる。
【0023】
なお、本発明における融点とは、示差走査熱量計によってポリプロピレン系樹脂1mg以上10mg以下を40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における吸熱ピークのピーク温度をいう。
【0024】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマー単位が90モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上10モル%以下存在する。好ましくは、プロピレンモノマー単位が92モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上8モル%以下であり、より好ましくは、プロピレンモノマー単位が94モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上6モル%以下であり、最も好ましくは、プロピレンモノマー単位が96モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上4モル%以下である。
【0025】
プロピレンモノマー単位が90モル%未満であり、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が10モル%を超えると、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体としたときの高温での寸法安定性が低下する。
【0026】
本発明における炭素数が2あるいは4以上のオレフィンに特に制限は無く、具体的には、エチレンや、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどのα−オレフィンが挙げられる。更にはシクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエンなどが挙げられる。
【0027】
この中でも、炭素数が2あるいは4以上のオレフィンとしては、エチレンまたはα−オレフィンがより好ましく、最も好ましくはエチレン、1−ブテンである。なお、これらの炭素数が2あるいは4以上のオレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、更に塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが共重合されていてもかまわない。
【0029】
以上のようなポリプロピレン系樹脂中でも、エチレン、1−ブテンを使用したプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、が良好な発泡性を示し、また、耐寒脆性向上、安価等の観点からも好適に使用し得る。
【0030】
本発明のポリプロピレン系樹脂を重合する際の触媒に特に制限は無く、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などを用いることができる。クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下のポリプロピレン系樹脂を得やすい点からは、メタロセン触媒を選択することが好ましい。
【0031】
このようなメタロセン触媒としては、(1)遷移金属をπ系の不飽和環状化合物で挟んだ構造のメタロセン化合物を含んだメタロセン触媒、(2)π系の不飽和環状化合物を1つだけ有する構造のメタロセン化合物を含んだメタロセン触媒、(3)π系の不飽和環状化合物を持たず、ヘテロ原子が配位した構造のメタロセン化合物を含んだメタロセン触媒、等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、(1)の遷移金属をπ系の不飽和環状化合物で挟んだ構造のメタロセン化合物を含んだメタロセン触媒がより好ましく、このようなメタロセン触媒に用いられる、遷移金属をπ系の不飽和環状化合物で挟んだ構造のメタロセン化合物としては、具体的には、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2,4−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、メチレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、メチレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、メチレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、エチレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、エチレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、エチレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、エチレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1,1’−(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1,1’−(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1,1’−(4−フェニルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1,1’−(4−ナフチルジヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0033】
中でも、(1)のメタロセン触媒の中でも、更に好ましいメタロセン触媒は、遷移金属を異種のπ系の不飽和環状化合物で挟んだ構造のメタロセン化合物を含んだメタロセン触媒である。このような遷移金属を異種のπ系の不飽和環状化合物で挟んだ構造のメタロセン化合物としては、例えば、π系の不飽和環状化合物としてシクロペンタジエニル構造を有する化合物、インデニル構造を有する化合物、アズレニル構造を有する化合物、フルオレニル構造を有する化合物、等の中から2種以上のπ系の不飽和環状化合物を選択して得られるメタロセン化合物を挙げることができる。
【0034】
これらの中でも、最も好ましいメタロセン触媒は、下記一般式[I]で表されるメタロセン化合物を必須成分として含むメタロセン触媒である。
【0035】
【化2】
【0036】
なお、上記一般式[I]において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子またはケイ素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。
【0037】
このような一般式[I]のメタロセン化合物としては、具体的には、イソプロピリデン(3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0038】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂としては、13C−NMRで測定した、全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入及び1,3−挿入に基づく位置不規則単位の合計量が0.5モル%未満であることが好ましい。このようなポリプロピレン系樹脂は、樹脂中の低結晶成分が少なくなる傾向にあることから、該ポリプロピレン系樹脂を用いて、合着のない生産効率に優れたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得ることができ、さらにこのポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子から得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温での寸法安定性が更に向上することになると推定される。
【0039】
なお、このようなポリプロピレン系樹脂の全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入及び1,3−挿入に基づく位置不規則単位量は、Polymer, 30, 1350(1989)や特開平7−145212号公報に開示された情報を参考に算出することができる。
【0040】
本発明のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)に特に制限は無いが、0.5g/10min以上100g/10min以下が好ましく、より好ましくは2g/10min以上50g/10min以下であり、最も好ましくは3g/10min以上20g/10min以下である。本発明に言うMFRの測定は、JIS−K7210記載のMFR測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。MFRが上記範囲にあると比較的大きな発泡倍率のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が得られやすく、それを型内発泡成形して得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面美麗性が優れ、寸法収縮率が小さいものが得られる傾向がある。
【0041】
これらのポリプロピレン系樹脂は無架橋の状態が好ましいが、パーオキサイドや放射線により架橋させても良い。またポリプロピレン系樹脂と混合使用可能な他の熱可塑性樹脂、例えば、本発明以外のポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等を本発明のポリプロプレン系樹脂の特性が失われない範囲で混合使用しても良い。
【0042】
上記のポリプロピレン系樹脂は、通常、予備発泡に利用されやすいようにあらかじめ押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状に成形加工され、ポリプロピレン系樹脂粒子となる。
【0043】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂の他に、酸化防止剤、耐光性改良剤、帯電防止剤、顔料、難燃性改良剤、導電性改良剤等の添加剤を必要により加えて、ポリプロピレン系樹脂粒子としてもよく、その場合は、これらは、通常、樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加することが好ましい。
【0044】
添加剤としては酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤を添加することで、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体としたときの高温での寸法安定性がより優れたものとなる。
【0045】
このような酸化防止剤としては特に制限は無く、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などやこれらを併用して用いることができるが、ポリプロピレン系樹脂の熱劣化を抑制する観点からは、フェノール系酸化防止剤を添加することがより好ましい。
【0046】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ジャパン製IRGANOX1010など)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(別名1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンであり、例えば、チバ・ジャパン製IRGANOX3114など)、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート(別名1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−ベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン)、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、などが挙げられ、最も好ましくは、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ジャパン製IRGANOX1010など)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(別名1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンであり、例えば、チバ・ジャパン製IRGANOX3114など)である。
【0047】
前記フェノール系酸化防止剤の添加量は、酸化防止性能やポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温時の寸法安定性が発現するよう適宜調整されるものであるが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.005重量部以上0.5重量部以下であり、より好ましくは0.01重量部以上0.4重量部以下、最も好ましくは0.03重量部以上0.3重量部以下である。0.005重量部未満では酸化防止性能やポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温時の寸法安定性が発現しにくく、0.5重量部を超えると気泡が微細化し、型内発泡成形する際の成形性が低下する傾向にある。
【0048】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、下記要件(a)〜(c)を有するポリプロピレン系樹脂粒子と、水、無機分散剤を含んでなる分散液を耐圧容器中に収容した後、攪拌条件下に分散させるとともに、発泡剤の存在下、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点温度以上に昇温し、次いで耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に耐圧容器中の分散液を放出して、ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させ製造する。
(a)クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であること。
(b)融点が100℃以上160℃以下であること。
(c)プロピレンモノマー単位が90モル%以上100モル%以下、炭素数が2あるいは4以上のオレフィン単位が0モル%以上10モル%以下存在すること。
【0049】
ここで、軟化点温度以上に昇温する際、好ましくはポリプロピレン系樹脂粒子の融点−20℃以上ポリプロピレン系樹脂粒子の融点+10℃以下の範囲の温度に昇温することが発泡性を確保する上で好ましい。
【0050】
本発明に使用される発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロブタン等の脂肪式環化水素類;空気、窒素、炭酸ガス等の無機ガス類;水、等が挙げられる。これらの発泡剤は単独で用いてもよく、また、2種類以上併用してもよい。なかでも、炭酸ガス、水や、より高倍率での発泡を可能とするイソブタンを用いることが好ましい。
【0051】
また、発泡剤の使用量に限定はなく、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の所望の発泡倍率に応じて適宣使用すれば良く、その使用量はポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して3重量部以上60重量部以下であることが好ましい。
【0052】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子製造時に使用する耐圧容器には特に制限はなく、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよく、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0053】
本発明で使用することが出来る無機分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、アルミノ珪酸塩、カオリン、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0054】
本発明においては分散性を高めるために分散助剤を併用することが好ましい。このような分散助剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、無機分散剤と分散助剤の組み合わせとしては、第三リン酸カルシウムとアルキルスルホン酸ナトリウムの組み合わせが好ましい。
【0055】
無機分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水100重量部に対して無機分散剤0.2重量部以上3重量部以下であることが好ましく、分散助剤0.001重量部以上0.1重量部以下であることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂粒子は、水中での分散性を良好なものにするために、通常、水100重量部に対して20重量部以上100重量部以下で使用するのが好ましい。
【0056】
このような製造方法において、耐圧容器内温度や無機分散剤の量等如何によってはポリプロピレン系樹脂粒子が耐圧容器中で合着(複数の粒子がお互いにくっついてしまう現象)してしまう場合がある。その結果、発泡時にポリプロピレン系樹脂粒子が全て放出されずに耐圧容器中に残存してしまったり、得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が合着してしまうこととなる。ポリプロピレン系樹脂粒子が耐圧容器中に残存すると生産効率を低下させることとなり、合着したポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、後の型内発泡成形時の不良原因となる場合がある。しかし、本発明ではクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下のポリプロピレン系樹脂を用いることから合着しにくくなる。
【0057】
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であれば、樹脂組成分布がシャープとなるとともに、耐圧容器中で合着の原因となる組成物割合が減少すると考えられ、これにより耐圧容器中においてポリプロピレン系樹脂粒子の合着が起こりにくくなると推定される。
【0058】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、好ましくは3倍以上50倍以下であり、さらに好ましくは7倍以上45倍以下である。また、ポリプロピレン系樹脂粒子、発泡剤、水、無機分散剤を含んでなる分散液を耐圧容器に入れて、所定温度まで加熱し、加圧下のもと、容器内混合物を、好ましくはポリプロピレン系樹脂の融点−20℃以上ポリプロピレン系樹脂+10℃以下の範囲の温度に加熱するとともに発泡剤を含浸させ、容器内の温度、圧力を一定に保持しながら、加圧下で、容器内混合物を容器内よりも低圧雰囲気下に放出する(この工程を一段発泡と称する場合がある)時に、好ましくは発泡倍率3倍以上35倍以下の予備発泡粒子(以下、一段発泡予備発泡粒子と称す場合がある)を製造し、該一段発泡予備発泡粒子を耐圧密閉容器内に入れて窒素、空気などを0.1MPa以上0.6MPa以下(ゲージ圧)で加圧含浸させる加圧処理により一段発泡予備発泡粒子内の圧力を常圧よりも高くした後、該一段発泡予備発泡粒子をスチーム等で加熱して更に発泡させることにより、一段発泡予備発泡粒子の発泡倍率よりも発泡倍率の高いポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子(以下、二段発泡予備発泡粒子を称する場合がある)を得ても良い。
【0059】
この二段発泡予備発泡粒子を得る際にも加熱条件如何によっては二段発泡後の予備発泡粒子が合着してしまう場合があるが、本発明ではクロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下のポリプロピレン系樹脂を用いることで合着しにくくなる。
【0060】
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.0重量%以下であれば、樹脂組成分布がシャープとなるとともに、二段発泡において合着の原因となる組成物割合が減少すると考えられ、これにより二段発泡時のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の合着が起こりにくくなると推定される。
【0061】
ここでポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の重量w(g)およびエタノール水没体積v(cm)を求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂の密度d(g/cm)から次式により求めたものである。
発泡倍率=d×v/w
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面に付着した無機分散剤量は2000ppm以下が好ましく、より好ましくは1300ppm以下であり、最も好ましくは800ppm以下である。当該範囲であれば、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温での寸法安定性が良好となる傾向にある。表面に付着した無機分散剤量が2000ppmを超えると型内発泡成形する際の融着性が低下する傾向にあり、その結果、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温での寸法安定性が低下する傾向にある。
【0062】
本発明の付着した無機分散剤量については、各種分光分析や、或いはポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を燃焼したときの灰分量から定量できる。例えば、無機分散剤として、リン酸塩を使用する場合、乾燥させた予備発泡粒子をメタバナジン酸アンモニウム0.022重量%、モリブデン酸アンモニウム0.54重量%および硝酸3重量%を含む水溶液(比色液)50.0mLとW(g)の予備発泡粒子をコニカルビーカーに採り、1分間撹拌したのち10分間放置した。得られた液相を光路長1.0cmの石英セルに採り、分光光度計により410nmでの吸光度A(−)を測定し、標準のリン酸塩溶液の吸光度から求めることが出来る。
【0063】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は図1に示すように、示差走査熱量計法において、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線において2つの融解ピークを有し、DSC曲線の低温側ピークと、低温側ピークと高温側ピークの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量である低温側の融解ピーク熱量Qlと、DSC曲線の高温側ピークと、低温側ピークと高温側ピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量である高温側融解ピーク熱量Qhから算出する、高温側の融解ピークの比率Qh/(Ql+Qh)×100(以下、DSC比と略す)が10%以上50%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以上40%以下の範囲である。DSC比が当該範囲であると、表面美麗性の高いポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が得られやすい。10%未満ではポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が連泡化しやすくなり、50%を超えると型内発泡成形体を得る際の融着性が低下する傾向にある。
【0064】
また、高温側融解ピーク熱量Qhに制限は無いが、好ましくは4J/g以上28J/g以下、より好ましくは7J/g以上25J/g以下、最も好ましくは10J/g以上22J/g以下である。4J/g未満ではポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が連泡化しやすくなり、28J/gを超えると発泡倍率が大きくなり難い傾向となる。
【0065】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子をポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とするには、イ)そのまま型内発泡成形を行う方法、ロ)あらかじめポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、内圧(発泡能)を付与した後、型内発泡成形を行う方法、ハ)ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を圧縮状態で金型内に充填し、型内発泡成形を行う方法、など従来既知の方法が使用しうる。
【0066】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いてポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得る方法の具体例としては、たとえばあらかじめポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を耐圧容器内で空気加圧し、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子中に空気を圧入することにより内圧(発泡能)を付与し、これを2つの金型からなる閉鎖しうるが密閉し得ない成形空間内に充填し、水蒸気などを加熱媒体として0.1MPa以上0.4MPa以下(ゲージ圧)程度の加熱水蒸気圧で3秒以上30秒以下程度の加熱時間で成形しポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子同士を融着させ、このあと金型を水冷により型内発泡成形体取り出し後のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の変形を抑制できる程度まで冷却した後、金型を開き、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得る方法などが挙げられる。
【0067】
また、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の内圧は、例えば耐圧容器内で、1時間以上48時間以下、室温以上80℃以下の温度条件下、空気、窒素等の無機ガスによって0.1MPa以上1.0MPa(ゲージ圧)以下に加圧することによって調整できる。
【0068】
このようにして、本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度は10kg/m以上300kg/m以下であることが好ましく、より好ましくは15kg/m以上250kg/m以下である。10kg/m未満では圧縮強度などの機械物性が低下する傾向にあり、300kg/mを超えると緩衝性能が低下する傾向にある。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
〔クロス分別クロマトグラフ測定〕
三菱油化社製クロス分別クロマトグラフ CFC T−150A型を使用し、以下の条件で40℃以下の溶出成分量を測定した。
検出器 : Miran社製赤外分光光度計1ACVF型
検出波長 :3.42μm
GPCカラム:昭和電工社製Shodex AT−806MS 3本
カラム温度 :135℃
カラム較正 :東ソー社製単分散ポリスチレン
分子量較正法:汎用較正法/ポリエチレン換算
溶離液 :o−ジクロロベンゼン(ODCB)
流速 :1.0mL/min.
試料濃度 :30mg/10mL
注入量 :500μL
降温時間 :135分(135から0℃)、その後60分間保持
溶出区分 :0、20、40、50、60、70、75、80、83、86、89、92、95、98、101、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、130、135℃(29分画)
〔融点の測定〕
セイコーインスツルメンツ(株)製のDSC6200型示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事により樹脂粒子を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度を融点として求めた。
【0071】
〔生産効率〕
発泡後の耐圧容器中の残存ポリプロピレン系樹脂、および得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を観察し、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の生産効率を次の指標で評価した。
○:耐圧容器中に残存するポリプロピレン系樹脂がなく、かつ得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に合着が見られない。
×:耐圧容器中に残存するポリプロピレン系樹脂があるか、あるいは得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に合着が見られる。
【0072】
〔DSC比の測定〕
セイコーインスツルメンツ(株)製のDSC6200型示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子5〜6mgを40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温して得られたDSC曲線における、2つの融解ピークについて、DSC曲線の低温側ピークと、低温側ピークと高温側ピークの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量である低温側の融解ピーク熱量Qlと、DSC曲線の高温側ピークと、低温側ピークと高温側ピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量である高温側融解ピーク熱量Qhとし、高温側の融解ピークの比率(Qh/(Ql+Qh)×100)を算出した。
【0073】
〔ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率〕
嵩体積約50cmのポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の重量w(g)を測定した後、該ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子をエタノールに浸漬した際の増加体積(水没体積)v(cm)を求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂の密度d(g/cm)から次式により求めた。
発泡倍率=d×v/w
〔付着無機分散剤量の測定(無機分散剤がリン酸カルシウムの場合)〕
乾燥させた予備発泡粒子をメタバナジン酸アンモニウム0.022重量%、モリブデン酸アンモニウム0.54重量%および硝酸3重量%を含む水溶液(比色液)50.0mLとW(g)の予備発泡粒子をコニカルビーカーに採り、1分間撹拌したのち10分間放置した。得られた液相を光路長1.0cmの石英セルに採り、分光光度計により410nmでの吸光度A(−)を測定した。
【0074】
同一の比色液について、予め測定しておいた第三リン酸カルシウムの410nmでの吸光度係数ε(g/L・cm)を用いて、第三リン酸カルシウムの付着量C(ppm)=5.0×10・ε・A/Wを求めた。
【0075】
〔融着率評価〕
種々の成形加熱蒸気圧力で成形して得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、カッターナイフでポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の厚み方向に約3mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部からポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を破断し、
破断面を観察して、破断面を構成するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子数に対する破壊されたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の割合を求め、融着率とした。
【0076】
〔成形体密度〕
得られた直方体のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の長さ、幅、厚み寸法を測定し、また重量を測定し、重量を型内発泡成形体体積で除することにより成形体密度を算出した。
【0077】
〔高温における寸法安定性(高温時寸法変化率)〕
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体から長さ180mm×幅40mm×厚み19mmの試験片を切り出した後、長さ、幅、厚み寸法をノギスで正確に測定した。次いで試験片を110℃あるいは90℃のオーブンで22時間加熱処理した後、23℃雰囲気に3時間放置し、再度、長さ、幅、厚み寸法をノギスで正確に測定した。
【0078】
長さ方向、幅方向、厚み方向のそれぞれについて、高温時寸法変化率を次の式に従って算出した。
高温時寸法変化率={(加熱前の寸法−加熱後の寸法)/加熱前の寸法}×100(%)
(実施例1)
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が0重量%、融点137℃のプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂100重量部を用い、セル造核剤としポリエチレングリコール(ライオン(株)製PEG#300)0.5重量部、タルク(林化成製PKS)0.1重量部、更に酸化防止剤として1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート0.05重量部をブレンドした後、50mm単軸押出機(大阪精機工作(株)製20VSE−50−28型)内で溶融混練した。得られた溶融混練樹脂を円形ダイよりストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザーで切断し、一粒の重量が1.2mg/粒のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
【0079】
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水200重量部、分散剤として第3リン酸カルシウム1.0重量部、分散助剤としてアルキルスルホン酸ナトリウム0.05重量部を容量10Lの耐圧オートクレーブ中に仕込み、攪拌下、発泡剤として炭酸ガスを6.25重量部添加した。オートクレーブ内容物を昇温し、141℃の発泡温度まで加熱した後、さらに炭酸ガスを追加してオートクレーブ内圧を3.0MPa(ゲージ圧)とした。その後、30分間保持した後、オートクレーブ下部のバルブを開き、4.0mmφの開口オリフィスを通して、オートクレーブ内容物を大気圧下に放出して一段発泡予備発泡粒子を得た。得られた一段発泡予備発泡粒子の発泡倍率は15倍、融点ピークのDSC比は18%であった。得られた一段発泡予備発泡粒子内に空気含浸により0.32MPa(絶対圧)の内圧を付与し、0.11MPa(ゲージ圧)の蒸気により加熱し、発泡倍率約30倍の予備発泡粒子を得た。
【0080】
得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、pH=1の塩酸水溶液で洗浄した後、75℃で乾燥し、付着無機分散剤量を測定した。
【0081】
次に、ダイセン株式会社製ポリオレフィン発泡成形機KD−345を用い、縦300mm×横400mm×厚み21mmの金型に、あらかじめポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子内部の空気圧力が0.20MPa(絶対圧)になるように調整したポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を充填し、厚み方向に5%圧縮して加熱成形させることにより、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。このとき、種々の成形加熱蒸気圧で成形してポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は1時間室温で放置した後、75℃の恒温室内で3時間養生乾燥を行い、再び室温に取出してから室温で1時間放置した後、成形体密度の測定、および融着率評価を行い、融着率が60%となる成形加熱蒸気圧力(60%融着成形圧)を求めた。また、融着率が95%以上に達した型内発泡成形体の中から、最も低い成形加熱蒸気圧力で成形した型内発泡成形体を選び110℃における寸法安定性(高温時寸法変化率)を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例2)
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が0.2重量%、融点126℃のプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂を用い、表1記載の条件とした以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子と、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。また、評価も実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が0.4重量%、融点118℃のプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂を用い、表1記載の条件とした以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子と、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。評価は、高温時寸法変化率を90℃で行った以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0085】
(比較例1)
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が7.5重量%、融点137℃のプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂を用い、表1記載の条件とした以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子と、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。また、評価も実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例2)
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が4.3重量%、融点132℃のプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体樹脂を用い、表1記載の条件とした以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子と、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。また、評価も実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0087】
(比較例3)
クロス分別クロマトグラフ法における40℃以下の溶出成分量が2.9重量%、融点118℃のプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂を用い、表1記載の条件とした以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子と、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得た。評価は、高温時寸法変化率を90℃で行った以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0088】
実施例1と比較例1の比較において、同じ融点のプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂を用いているにもかかわらず実施例1のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温寸法変化率は小さく、高温寸法安定性が優れていることがわかる。
【0089】
実施例2と比較例2の比較において、実施例2で用いたプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂の融点が低いにもかかわらず、同じ高温寸法変化率を示し、実施例2のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は融点が低いにもかかわらず良好な高温寸法安定性を示すことがわかる。更に60%融着成形圧から、実施例2のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、低い成形加熱蒸気圧力で成形可能なことがわかる。
【0090】
実施例3と比較例3は、樹脂融点が低いことから90℃で高温寸法安定性を評価したが、同じ融点のプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂を用いているにもかかわらず実施例3のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の高温寸法変化率は小さく、高温寸法安定性が優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、型内発泡成形する際において高くない成形加熱蒸気圧力で成形でき、得られるプロピレン系樹脂型内発泡成形体は高温での寸法安定性に優れることから、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材、断熱材、緩衝包材、通箱などに好適に使用できる。
図1