(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666925
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】水道管の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 9/055 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
B08B9/055
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-12029(P2011-12029)
(22)【出願日】2011年1月24日
(65)【公開番号】特開2012-152673(P2012-152673A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海道 尚毅
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−154004(JP,A)
【文献】
特開2006−348684(JP,A)
【文献】
特開2009−189910(JP,A)
【文献】
特開2006−003008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の仕切弁と第2の仕切弁とを閉塞して、それらで挟まれた区間を断水し、
前記区間に設けられた水道管の周壁に穿設された通水孔を取り囲んで水密に装着される分岐ケースの分岐部から、その分岐部に接続された接続管を取り外し、
前記分岐ケースの分岐部に挿入ガイドの筒体を挿入して、その筒体の先端部を前記通水孔の切り口の内周側に配置させ、前記分岐ケースの分岐部に前記接続管を介してランチャーとして機能する分岐管を接続し、前記分岐ケースの分岐部とそれに接続される前記接続管との間に、前記筒体の外周に形成されたフランジを固定し、
前記接続管に挿入した洗管ピグを、前記挿入ガイドの筒体を通じて前記水道管に挿入し、前記洗管ピグを圧送することによって前記水道管の内面を擦り洗いし、
前記第1の仕切弁と前記第2の仕切弁とを解放して前記区間を通水することを特徴とする水道管の洗浄方法。
【請求項2】
前記筒体の先端部に、前記水道管の周壁に沿うように湾曲した一対の凹みが形成されている請求項1に記載の水道管の洗浄方法。
【請求項3】
前記筒体の内径が先端部に向かって漸減する請求項1又は2に記載の水道管の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内を洗浄するための洗管ピグを水道管に挿入する
ことによる水道管の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、既設の水道配管の途中に分岐管を接続する工事では、管路を上流側で止水することなく不断水の状態を維持したまま、円筒形のカッターで水道管の周壁に通水孔を穿設し、その水道管に分岐管を連通させる工法が採用されている。かかる不断水工法では、下記特許文献1に記載されているように、通水孔を取り囲んで水密に装着される分岐ケースが用いられ、その分岐ケースに仕切弁などを介して分岐管が接続される。
【0003】
また、水道管を洗浄する方法として、管内に挿入した洗管ピグを水圧や空気圧で圧送し、その洗管ピグの外面により水道管の内面を擦り洗いする方法が知られている。この方法では、配管の洗浄区間を断水して、洗管ピグの発進箇所にランチャーを設置し、到達箇所にキャッチャーを設置する必要がある。このようなランチャーとキャッチャーの設置には、配管の分解作業や切断作業を伴うことから、断水の時間が多く費やされることになる。
【0004】
これに対し、洗管ピグを管路へ直接に挿入せず、不断水工法で接続した分岐管から挿入するようにすれば、所定の作業を不断水の状態で行えるため、断水の時間を短縮でき、更には、任意の位置にランチャーを設置できるという利点もある。特に、断水の実施が夜間に限られるなど、断水可能な時間に制約が設けられる工事では、短時間で施工を完了する必要があり、かかる方式が有用である。
【0005】
ところが、不断水工法で接続した分岐管から洗管ピグを挿入する場合、次のような問題があることが判明した。即ち、上述した不断水工法によれば、分岐ケースの内部にて、水道管に設けた通水孔の鋭利な切り口が内側に突出するため、その切り口に洗管ピグが引っ掛かることによって、洗管ピグの圧送が妨げられたり、洗管ピグの外面が損傷したりするという不具合を生じることが分かった。
【0006】
下記特許文献2には、分岐管から水道管の内面に沿って溝型に湾曲したガイドベラを使って、分岐管から洗管ピグを挿入する方法が記載されている。しかし、そのような溝型のガイドベラでは、通水孔の切り口に洗管ピグが引っ掛かる余地があり、適切に保護することができない。もとより、当該文献に記載の方法では、T字状のチーズを介して洗管ピグを挿入しており、不断水工法で接続した分岐管から洗管ピグを挿入する技術に関連した上記の不具合について、その解決手段を示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−154004号公報
【特許文献2】特開2008−175046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水道管の周壁に穿設された通水孔の切り口から洗管ピグを保護して、洗管ピグを円滑に且つ安全に圧送できるようにした
水道管の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る
水道管の洗浄方法は、第1の仕切弁と第2の仕切弁とを閉塞して、それらで挟まれた区間を断水し、前記区間に設けられた水道管の周壁に穿設された通水孔を取り囲んで水密に装着される
分岐ケースの分岐部から、その分岐部に接続された接続管を取り外し、前記分岐ケースの分岐部に挿入ガイドの筒体を挿入して、その筒体の先端部を前記通水孔の
切り口の内周側に配置させ、前記分岐ケースの分岐部に前記接続管を介してランチャーとして機能する分岐管を接続し、前記分岐ケースの分岐部とそれに接続される
前記接続管との間に、前記筒体の外周に形成されたフランジを固定し、前記接続管に挿入した洗管ピグを、前記挿入ガイドの筒体を通じて前記水道管に挿入
し、前記洗管ピグを圧送することによって前記水道管の内面を擦り洗いし、前記第1の仕切弁と前記第2の仕切弁とを解放して前記区間を通水するものである。
【0010】
この方法は、不断水工法で接続した分岐管から洗管ピグを挿入する方式に利用できるものであり、通水孔の切り口から洗管ピグを保護するために挿入ガイドが使用される。挿入ガイドは、筒体とその外周に形成されたフランジとを備え、該フランジが分岐ケースの分岐部と接続管との間に固定される。また、筒体が分岐ケースの分岐部に挿入され、その先端部が通水孔の切り口に近接することで、洗管ピグの引っ掛かりが防止される。その結果、通水孔の切り口から洗管ピグを保護して、円滑に且つ安全に圧送することができる。
【0011】
本発明の
水道管の洗浄方法では、前記筒体の先端部を前記通水孔の切り口の内周側に配置
する。これにより、通水孔の切り口から洗管ピグをより確実に保護でき、本発明の実効性を高めることができる。
【0012】
また、本発明
で用いられる洗管ピグの挿入ガイドは、水道管の周壁に穿設された通水孔を取り囲んで水密に装着される分岐ケースの分岐部に挿入される筒体と、その筒体の外周に形成され、前記分岐ケースの分岐部とそれに接続される接続管との間に固定されるフランジとを備えたものである。かかる構成の挿入ガイドは、上述した洗管ピグの挿入方法に使用しうるものであるため、通水孔の切り口から洗管ピグを保護して、洗管ピグを円滑に且つ安全に圧送することができる。
【0013】
本発明では、前記筒体の先端部に、前記水道管の周壁に沿うように湾曲した一対の凹みが形成されているものが好ましい。かかる構成によれば、通水孔の切り口に対して筒体の先端部を的確に近接させうるため、通水孔の切り口から洗管ピグをより確実に保護でき、本発明の実効性を高めることができる。
【0014】
本発明では、前記筒体の内径が先端部に向かって漸減するものでもよい。かかる構成によれば、分岐ケースが装着された水道管の内径が小さい場合においても、洗管ピグを水道管へ適切にガイドして円滑に圧送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例に係る
水道管の洗浄方法を説明するための概略構成図
【
図5】本発明の別実施形態において分岐ケースの要部を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、
図1の左右方向に延びた既設の水道配管のうち、仕切弁21
(第1の仕切弁)と仕切弁22
(第2の仕切弁)とで挟まれた区間に設けられた水道管3を洗浄する例を示す。水道管3の洗浄は、管内に挿入した洗管ピグ2を圧送し、それによって水道管3の内面を擦り洗いすることで行われる。
【0017】
水道管3には、
図1の上方に分岐して接続された分岐管41が設けられ、これが洗管ピグ2の発進箇所となるランチャーとして機能する。一方、下流側に設けられた分岐管42は、洗管ピグ2の到達箇所となるキャッチャーとして機能する。ランチャーである分岐管41は、水道管3の周壁に穿設された通水孔31を介して水道管3と連通しており、その通水孔31を取り囲んで水密に装着された分岐ケース5の分岐部51に仕切弁23を介して接続されている。
【0018】
分岐ケース5は、割T字管形状をしており、水道管3への外嵌装着が可能に構成されている。また、分岐ケース5は、
図2のように複数の分割体を組み合わせてなり、ボルトとナットからなる締結具52によって、その分割体同士を互いに連結している。本実施形態では、既述のように分岐部51に仕切弁23を接続しており、この仕切弁23(の弁箱)が前記接続管に相当する。仕切弁23は分岐部51にフランジ接続され、双方のフランジのボルト孔に挿通したボルトとそれに締結したナットによって固定されている。
【0019】
水道管3に分岐管41を接続する工事では、不断水工法が利用される。その施工の際には、水道管3に分岐ケース5を装着するとともに、分岐部51に仕切弁23を接続し、その仕切弁23に穿孔装置(不図示)を接続する。そして、穿孔装置が内蔵する円筒形のカッターで水道管3の周壁に通水孔31を穿設し、仕切弁23を閉塞した後に、穿孔装置に代えて分岐管41を接続する。カッターの外径は分岐部51の内径よりも小さく、分岐ケース5の内部では、
図2のように通水孔31の鋭利な切り口31aが内側に突出することになる。
【0020】
洗管ピグ2は、水道管3の内面を擦り洗いできるように、ゴムやポリウレタンなどの弾性変形する材料により、水道管3の内径よりも大きいサイズで作製されている。それ故、洗管ピグ2が通水孔31を通過する際には、通水孔31の切り口31aに洗管ピグ2が引っ掛かり、洗管ピグ2の円滑な圧送が妨げられる恐れがある。更には、洗管ピグ2の外面が切り口31aにより損傷することで、安全な圧送が妨げられることも懸念される。
【0021】
そこで、本発明では、洗管ピグの挿入ガイド1を用いて、通水孔31の切り口31aから洗管ピグ2を保護するようにしている。
図3は、挿入ガイド1の斜視図である。
図4は、挿入ガイド1を側方から見た図であって、上半分に断面を示している。この挿入ガイド1は、円筒状の筒体11と、その筒体11の外周に形成されたフランジ12を有する。挿入ガイド1は、例えば、SS400などの鋼板により作製され、内外面に錆止めの塗装が施される。尚、挿入ガイド1の素材は特に限定されず、プラスチック製でも構わない。
【0022】
図2に示すように、挿入ガイド1の筒体11は分岐ケース5の分岐部51に挿入され、挿入ガイド1のフランジ12は分岐部51と仕切弁23との間に固定される。筒体11の長さは、分岐部51の長さに対応しており、筒体11の先端部が通水孔31の切り口31aに近接して配置されるように設定されている。また、筒体11の先端部には、水道管3の周壁に沿うように湾曲した一対の凹み13が形成され、筒体11の先端部を切り口31aに沿って的確に近接させて、洗管ピグ2をより確実に保護できるようにしている。
【0023】
挿入ガイド1のフランジ12は、筒体11の後端部から外周側に張り出して形成され、仕切弁23のフランジと分岐部51のフランジとで挟持されている。フランジ12に形成された複数の孔14には、仕切弁23と分岐部51とのフランジ接続に使用されるボルトが挿通される。フランジ12には、水密性を高めるためにシートパッキン(不図示)を取り付けることが好ましい。該シートパッキンとしては、例えばスチレンブタジエンゴム等の合成ゴムよりなるものが例示される。
【0024】
水道管3を洗浄する際には、ランチャーである分岐管41に圧送ポンプ(不図示)から加圧水が供給され、仕切弁23を介して水道管3に移送された洗管ピグ2が、水道管3の内面を擦り洗いしながら移動し、キャッチャーである分岐管42に到達する。分岐管42では、水道管3の内面に付着していた汚れや錆などの夾雑物が、加圧水と共に排出される。図示はしないが、分岐管41の上流側には給水タンクが設置され、分岐管42の下流側には排水タンクが設置されている。
【0025】
分岐管41から水道管3へと洗管ピグ2が移動する過程で、仕切弁23に挿入された洗管ピグ2は、挿入ガイド1の筒体11を通じて水道管3に挿入される。筒体11の先端部は通水孔31の切り口31aに近接しており、切り口31aの内側への突出が緩和されるため、切り口31aでの洗管ピグ2の引っ掛かりが防止され、洗管ピグ2を円滑に且つ安全に圧送することができる。本実施形態では、筒体11の先端部を切り口31aの内周側に配置することで、洗管ピグ2をより確実に保護できるようにしている。
【0026】
本実施形態では、筒体11の後端部によって管内面に段差が形成されているものの、通水孔31の切り口31aとは異なり、鋭利に突出したものではないため、洗管ピグ2の引っ掛かりによる弊害は大きな問題にならない。但し、洗管ピグ2を円滑に圧送できるように、この段差に面取りを施すことは有益である。或いは、筒体11の内径が先端部に向かって漸増するように構成して、この段差の突出を小さくしてもよい。
【0027】
図5は、挿入ガイド1の筒体11の内径が先端部に向かって漸減するように構成した例である。これにより、分岐ケース5や仕切弁23との関係において、水道管3の径寸法が相応に小さい場合であっても、切り口31aから洗管ピグ2を保護し、洗管ピグ2を水道管3へ適切にガイドして円滑に圧送することができる。また、かかる場合において、筒体11の後端部における段差の突出を小さくするうえでも有益である。
【0028】
水道管3を洗浄するための一連の手順を簡単に説明すると、以下の通りである。まず、不断水工法によって水道管3に分岐ケース5と仕切弁23を接続する。次に、仕切弁21,22を閉塞して所定の洗浄区間を断水し、分岐ケース5の分岐部51から仕切弁23を取り外して挿入ガイド1を組み込み、分岐部51に仕切弁23を介して分岐管41を接続する。そして、分岐管42や圧送ポンプ、タンク等の必要な機材を据え付け、洗管ピグ2を圧送して管内を洗浄する。その後、配管を復旧して機材を撤去し、仕切弁21,22を開放して通水させる。
【0029】
本発明に係る
水道管の洗浄方法は、上記の如き挿入ガイドを用いて、通水孔の切り口から洗管ピグを保護すること以外は、従来公知のピグ洗浄における方法と同等に構成できる。したがって、洗管ピグの圧送媒体となる加圧流体としては、加圧水に代えて加圧空気を利用することも可能である。また、使用する洗管ピグの種類も特に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
1 挿入ガイド
2 洗管ピグ
3 水道管
5 分岐ケース
11 筒体
12 フランジ
21 仕切弁(第1の仕切弁に相当)
22 仕切弁(第2の仕切弁に相当)
23 仕切弁(接続管に相当)
31 通水孔
31a 切り口
41 分岐管
51 分岐部