(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用前照灯として用いられる車両用灯具は、車両の左側に配置される左側灯具と車両の右側に配置される右側灯具とを含む。通常、左側灯具と右側灯具とは、パラボラ光学系リフレクタの形状と、パラボラ光学系リフレクタに対する発光素子の位置および発光素子の持つ発光面の向きとが左右対称となるよう設計される。
【0005】
そのため、パラボラ光学系リフレクタの形状によっては、発光素子の持つ発光面を通り斜めカットオフラインの傾斜角度に応じた角度で延びる仮想直線と、パラボラ光学系リフレクタとの灯具正面から見たときの重なり部分が、左右灯具の少なくとも一方で短くなる場合があった。当該重なり部分が短くなると、明瞭な斜めカットオフラインの形成が困難になるため、重なり部分の長さを確保できる灯具構造であることが望まれる。そのため、従来の車両用灯具では、左右灯具において当該重なり部分の長さを確保するために、パラボラ光学系リフレクタの形状に制約を設けたりパラボラ光学系リフレクタを大型化する必要があった。例えば、パラボラ光学系リフレクタが灯具正面から見て略四角形である場合は当該重なり部分が短くなりやすいため、リフレクタの大型化等の対策が必要であった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、パラボラ光学系リフレクタの形状の制約を減らすとともに、大型化を回避しながら明瞭な斜めカットオフラインを形成する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具であり、当該車両用灯具は、発光素子と、当該発光素子からの光を灯具前方へ反射するパラボラ光学系リフレクタとを備え、斜めカットオフラインを含む配光パターンを形成するための車両用灯具であって、パラボラ光学系リフレクタは、灯具正面から見て略四角形であり、発光素子は、(i)略四角形の一辺の近傍に配置され、発光素子の持つ発光面から発光面の法線方向に照射されパラボラ光学系リフレクタで反射された光が斜めカットオフラインを形成するよう発光面の法線が水平線に対して傾けられ、かつ、(ii)一辺の中心から、発光面の法線方向に延びる光線が水平線に対して傾く方向と逆方向にずれるようパラボラ光学系リフレクタに対して位置が定められていることを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、パラボラ光学系リフレクタが灯具正面から見て略四角形であっても、発光面の法線とパラボラ光学系リフレクタとの灯具正面から見た重なり部分の長さを、パラボラ型リフレクタの大きさを大きくすることなく、発光素子の位置および発光面の向きが左右対称である従来の構造に比べて長くすることができる。したがって、パラボラ光学系リフレクタの形状の制約を減らすとともに、大型化を回避しながら明瞭な斜めカットオフラインを形成することができる。
【0009】
上記態様において、車両用灯具が、発光素子とパラボラ光学系リフレクタとをそれぞれ有し、車両の車幅方向の左右に配置された第1灯具ユニットおよび第2灯具ユニットを備え、両灯具ユニットのパラボラ光学系リフレクタは、略左右対称の形状を有し、両灯具ユニットの発光素子は、パラボラ光学系リフレクタに対する車幅方向位置が略左右対称であり、パラボラ光学系リフレクタに対する上下方向位置が上下逆であってもよい。この態様によっても、パラボラ光学系リフレクタの形状の制約を減らすとともに、大型化を回避しながら明瞭な斜めカットオフラインを形成することができる。
【0010】
上記態様において、第1灯具ユニットの発光素子からパラボラ光学系リフレクタに至るまでの光照射方向は、斜めカットオフラインの一端側から他端側に向かう方向であり、第2灯具ユニットの発光素子からパラボラ光学系リフレクタに至るまでの光照射方向は、斜めカットオフラインの他端側から一端側に向かう方向であってもよい。これによれば、一端側から他端側にかけて全体的に明瞭な斜めカットオフラインCL2を形成することができる。
【0011】
本発明の他の態様は光学ユニットであり、当該光学ユニットは、発光素子搭載部と、当該発光素子搭載部に固定された発光素子からの光をユニット前方へ反射するパラボラ光学系リフレクタとを備え、斜めカットオフラインを含む配光パターンを形成するための車両用灯具に用いられる光学ユニットであって、パラボラ光学系リフレクタは、ユニット正面から見て略四角形であり、発光素子搭載部は、(i)略四角形の一辺の近傍に配置され、発光素子搭載部に固定された発光素子の持つ発光面から発光面の法線方向に照射されパラボラ光学系リフレクタで反射された光が斜めカットオフラインを形成するよう素子搭載面の法線が水平線に対して傾けられ、かつ、(ii)一辺の中心から、素子搭載面の法線のうち素子搭載面から発光素子の光照射方向側に延びる部分が水平線に対して傾く方向と逆方向にずれるようパラボラ光学系リフレクタに対して位置が定められていることを特徴とする。
【0012】
この態様によっても、パラボラ光学系リフレクタの形状の制約を減らすとともに、大型化を回避しながら明瞭な斜めカットオフラインを形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パラボラ光学系リフレクタの形状の制約を減らすとともに、大型化を回避しながら明瞭な斜めカットオフラインを形成する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具の正面模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方の車幅方向の左右に配置された一対の前照灯ユニット1L,1Rを有する車両用前照灯装置である。前照灯ユニット1Rは、車両の右前方部分に設けられ、前照灯ユニット1Lは、車両の左前方部分に設けられる。車両用灯具1は、前照灯ユニット1R、前照灯ユニット1Lともに、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成されている。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、ロービーム用配光パターンを形成するためのロービーム灯具ユニット10が収容されている。ロービーム灯具ユニット10は、水平カット部形成用ユニット12、斜めカット部形成用ユニット14、および広拡散部形成用ユニット16を備える。また、灯室3内には、ハイビーム灯具ユニット、他の付加配光パターン形成用灯具ユニット、およびターンランプ用灯具ユニットなどを構成する灯具ユニット50,52,54が収容されている。
【0017】
図2は、実施形態1に係る車両用灯具で形成される配光パターンの模式図である。なお、
図2では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。
【0018】
実施形態1に係る車両用灯具1のロービーム灯具ユニット10によって、
図2に示すロービーム用配光パターンPLが形成される。具体的には、ロービーム灯具ユニット10の水平カット部形成用ユニット12により水平カット部Lo1が形成され、斜めカット部形成用ユニット14により斜めカット部Lo2(斜めカットオフラインを含む配光パターン)が形成され、広拡散部形成用ユニット16により広拡散部Lo3が形成される。そして、水平カット部Lo1、斜めカット部Lo2、および広拡散部Lo3が合成されてロービーム用配光パターンPLとなる。
【0019】
ロービーム用配光パターンPLは、左側通行時に前方車両や歩行者にグレアを与えないように配慮された配光パターンである。水平カット部Lo1は、水平線Hより下方で車幅方向中央部を含む車幅方向の所定領域に延在する略矩形状の配光パターンである。水平カット部Lo1の上側の辺の一部は、鉛直線Vよりも右側で水平方向に延びる水平カットオフラインCL1を形成する。斜めカット部Lo2は、その大部分が鉛直線Vよりも左側に位置して水平線Hの下方から左斜め上方へ延びる略矩形状の配光パターンである。斜めカット部Lo2の一辺は、水平カットオフラインCL1と鉛直線Vとの交点近傍から左斜め上方へ15°の傾斜角で延びる斜めカットオフラインCL2を形成する。広拡散部Lo3は、水平線Hより下方で水平カット部Lo1および斜めカット部Lo2よりも車幅方向外側まで拡散した略矩形状の配光パターンである。
【0020】
続いて、本実施形態に係る車両用灯具1の斜めカット部形成用ユニット14について詳細に説明する。
図3は、実施形態1に係る車両用灯具の斜めカット部形成用ユニットの概略正面図である。
図4は、比較例に係る車両用灯具の斜めカット部形成用ユニットの概略正面図である。なお、
図4では、発光素子搭載部の図示を省略している。また、以下では適宜、前照灯ユニット1Rに設けられた斜めカット部形成用ユニット14を斜めカット部形成用ユニット14R(第1灯具ユニット)とし、前照灯ユニット1Lに設けられた斜めカット部形成用ユニット14を斜めカット部形成用ユニット14L(第2灯具ユニット)と称する。
【0021】
図3に示すように、斜めカット部形成用ユニット14Rは、いわゆるパラボラ型の光学ユニット20Rと、光源モジュール26Rとを有する。また、斜めカット部形成用ユニット14Lは、いわゆるパラボラ型の光学ユニット20Lと、光源モジュール26Lとを有する。光学ユニット20Rは、発光素子搭載部22Rとパラボラ光学系リフレクタ24Rとを備える。光源モジュール26Rは、光学ユニット20Rの発光素子搭載部22Rに固定される。光学ユニット20Lは、発光素子搭載部22Lとパラボラ光学系リフレクタ24Lとを備える。光源モジュール26Lは、光学ユニット20Lの発光素子搭載部22Lに固定される。
【0022】
発光素子搭載部22R,22Lは、光源モジュール26R,26Lが固定される素子搭載面22Ra,22Laが略車幅方向内側を向くようにしてヒートシンク(図示せず)に連結されている。ヒートシンクは、エイミングスクリューやレベリングシャフト(いずれも図示せず)を介してランプボディ2に固定されている。なお、斜めカット部形成用ユニット14のランプボディ2への取付構造は公知であるため詳細な説明は省略する。
【0023】
光源モジュール26R,26Lは、例えば発光ダイオード(LED)であり、発光素子26Ra,26Laと、発光素子26Ra,26Laを支持する基板26Rb,26Lbとを有する。基板26Rb,26Lbは、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板である。基板26Rb,26Lbには、発光素子26Ra,26Laに電力を伝達する電極(図示せず)が形成されている。光源モジュール26R,26Lが発光素子搭載部22R,22Lの素子搭載面22Ra,22Laに固定された状態で、発光素子26Ra,26Laの持つ発光面と素子搭載面22Ra,22Laとが平行になる。なお、発光素子26Ra,26Laは、発光面が略長方形であり、発光面の長手方向が斜めカット部形成用ユニット14R,14Lの光軸方向に延びるように配置される。
【0024】
パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lは、発光素子26Ra,26Laからの光を灯具前方へ反射するための反射部材である。パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lは、発光素子26Ra,26Laの近傍に焦点を有する回転放物面の一部を基準面とする反射面を有する。パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lは、その一端がヒートシンクに固定されている。また、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lは、灯具正面から見て略四角形である。本実施形態では、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lは、灯具正面から見て水平方向に長い略平行四辺形であり、車幅方向外側に、略鉛直方向に延びるとともに下方から上方にいくほど車幅方向外側に位置するように傾く一辺24Ra,24Laを有する。パラボラ光学系リフレクタ24Rとパラボラ光学系リフレクタ24Lとは、略左右対称の形状を有する。
【0025】
発光素子搭載部22R,22Lに搭載された発光素子26Ra,26Laから照射された光は、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lの反射面により灯具前方に向けて反射され、灯具前方に反射された光によって斜めカットオフラインCL2を含む斜めカット部Lo2が形成される。
【0026】
発光素子搭載部22R,22Lは、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lの略四角形の一辺24Ra,24Laの近傍に、素子搭載面22Ra,22Laが灯具正面から見てパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lの反射面側を向くよう配置されている。本実施形態では、発光素子搭載部22R,22Lは、素子搭載面22Ra,22Laが一辺24Ra,24Laに対向するよう配置されている。そして、発光素子搭載部22R,22Lは、発光素子26Ra,26Laの持つ発光面から発光面の法線方向に照射されパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lで反射された光が斜めカットオフラインCL2を形成するよう、素子搭載面22Ra,22Laの法線Nが水平線Hに対して傾けられている。したがって、発光素子搭載部22Rに固定された発光素子26Ra,26Laは、一辺24Ra,24Laの近傍に、発光素子26Ra,26Laの持つ発光面が灯具正面から見てパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lの反射面側を向くよう配置されるとともに、発光面の法線方向に照射されパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lで反射された光が斜めカットオフラインCL2を形成するよう、発光面の法線Nが水平線Hに対して傾けられている。
【0027】
具体的には、斜めカット部形成用ユニット14Rの発光素子26Raは、車幅方向外側の一辺24Raの近傍に発光面が車幅方向内側を向くよう配置されている。そして、発光素子26Raは、発光面が斜め上方を向くように、すなわち、法線Nのうち発光面から光照射方向側に延びる部分が水平線Hに対して上方向に傾くように傾けられている。一方、斜めカット部形成用ユニット14Lの発光素子26Laは、車幅方向外側の一辺24Laの近傍に発光面が車幅方向内側を向くよう配置されている。そして、発光素子26Laは、発光面が斜め下方を向くように、すなわち、法線Nのうち発光面から光照射方向側に延びる部分が水平線Hに対して下方向に傾くように傾けられている。本実施形態では、素子搭載面22Ra,22Laの法線Nおよび発光素子26Ra,26Laの発光面の法線Nが、発光面を通り斜めカットオフラインCL2と平行に延びる仮想直線Pと一致している(平行である)。すなわち、素子搭載面22Ra,22Laおよび発光素子26Ra,26Laは、法線Nと水平線Hとのなす角度θR,θLが斜めカットオフラインCL2の傾斜角度である15°と一致するように傾けられている。発光面の法線Nと水平線Hとのなす角度θR,θLは、7.5°〜22.5°の範囲に設定することが好ましい。
【0028】
さらに発光素子搭載部22R,22Lは、一辺24Ra,24Laの中心24Rac,24Lacから、素子搭載面22Ra,22Laの法線Nのうち素子搭載面22Ra,22Laから発光素子26Ra,26Laの光照射方向側に延びる部分が水平線Hに対して傾く方向と逆方向にずれるよう、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lに対して位置が定められている。したがって、発光素子26Ra,26Laは、一辺24Ra,24Laの中心24Rac,24Lacから、発光面の法線方向に延びる光線Xが水平線Hに対して傾く方向と逆方向にずれている。具体的には、発光素子26Raは、発光面の法線方向に延びる光線Xが水平線Hに対して上方向に傾けられているため、一辺24Raの中心24Racから下方向に一辺24Raに沿ってずれている。一方、発光素子26Laは、発光面の法線方向に延びる光線Xが水平線Hに対して下方向に傾けられているため、一辺24Laの中心24Lacから上方向に一辺24Laに沿ってずれている。
【0029】
そのため、斜めカット部形成用ユニット14Rの発光素子26Raと、斜めカット部形成用ユニット14Lの発光素子26Laとは、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lに対する車幅方向位置が略左右対称であり、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lに対する上下方向位置が上下逆である。なお、発光素子搭載部22R,22Lおよび発光素子26Ra,26Laは、少なくとも発光面の中心が中心24Rac,24Lacからずれるように配置されている。
【0030】
また、発光素子26Raおよび発光素子26Laの少なくとも一方は、その発光面が一辺24Ra,24Laに対して傾いている。本実施形態において、発光素子26Raは、上述のように発光面が斜め上方を向くように傾いている。また、パラボラ光学系リフレクタ24Rの一辺24Raは、下方から上方にいくほど車幅方向外側に位置するよう傾いている。一辺24Raの鉛直線に対する傾斜角度は、水平線Hに対する発光面の法線Nの傾斜角度θRと略同角度である。そのため、発光素子26Raの発光面と一辺24Raとは略平行である。これに対し、発光素子26Laは、発光面が斜め下方を向くように傾いている。また、パラボラ光学系リフレクタ24Lは、パラボラ光学系リフレクタ24Rと左右対称の形状であり、一辺24Laは下方から上方にいくほど車幅方向外側に位置するよう傾いている。そのため、発光素子26Laの発光面は一辺24Laに対して傾いている。一辺24Ra,24Laが鉛直方向に延びる場合は、発光素子26Raおよび発光素子26Laの発光面がそれぞれ一辺24Ra,24Laに対して傾いた状態となる。
【0031】
ここで、
図4に示すように、比較例に係る車両用灯具の斜めカット部形成用ユニット114R,114Lは、本実施形態の斜めカット部形成用ユニット14R,14Lと同一形状のパラボラ光学系リフレクタ124R,124Lを有する。また、比較例に係る斜めカット部形成用ユニット114R,114Lでは、発光素子126Ra,126Laの車幅方向位置および上下方向位置が左右対称である。具体的には、発光素子126Raは、パラボラ光学系リフレクタ124Rの車幅方向外側に位置する一辺124Raの中心124Racに、発光素子126Raの持つ発光面が斜め上方を向くように設けられている。また、発光素子126Laは、パラボラ光学系リフレクタ124Lの車幅方向外側に位置する一辺124Laの中心124Lacに、発光素子126Laの持つ発光面が斜め上方を向くように設けられている。発光素子126Raの発光面は一辺124Raに対して平行に延び、発光素子126Laの発光面は一辺124Laに対して平行に延びている。
【0032】
したがって、斜めカット部形成用ユニット114Rでは、発光素子126Raの持つ発光面の法線Nが、発光面を通り斜めカットオフラインCL2と平行に延びる仮想直線Pと一致している。しかしながら、仮想直線Pとパラボラ光学系リフレクタ124Rとの灯具正面から見た重なり部分の長さYは、斜めカット部形成用ユニット114Lに比べて極端に短い。一方、斜めカット部形成用ユニット114Lでは、仮想直線Pとパラボラ光学系リフレクタ124Lとの灯具正面から見た重なり部分の長さYは、斜めカット部形成用ユニット114Rと比べて長い。しかしながら、発光素子126Laの持つ発光面の法線Nが仮想直線Pと一致していない。斜めカット部形成用ユニット114Lにおいて、発光素子126Laは、発光面の法線方向に照射されパラボラ光学系リフレクタ124Lで反射された光が斜めカットオフラインCL2を形成するよう傾けられていない。
【0033】
これに対し、本実施形態に係る車両用灯具1では、発光面の法線方向に照射された光が斜めカットオフラインCL2を形成するように、発光素子26Ra,26Laの持つ発光面の法線Nが水平線Hに対して傾けられている。そのため、斜めカット部形成用ユニット14Rおよび斜めカット部形成用ユニット14Lの両方で、発光面の法線方向に照射された光を用いて斜めカットオフラインCL2を形成することができる。ここで、一般に発光素子は、発光面の法線方向が最も光度が高い指向特性を有する。よって、本実施形態の斜めカット部形成用ユニット14Lは、比較例の斜めカット部形成用ユニット114Lに比べてより明瞭な斜めカットオフラインCL2を形成することができる。また、発光素子26Laの照射光の光束利用率を高めることができる。
【0034】
また、発光素子26Ra,26Laは、一辺24Ra,24Laの中心24Rac,24Lacから、発光面の法線方向に延びる光線Xが水平線Hに対して傾く方向と逆方向にずれるように配置されている。すなわち、発光素子26Ra,26Laは、発光面の法線Nとパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lとの灯具前方から見た重なり部分が長くなる方向にずれている。また、発光素子26Ra,26Laは、発光面の法線Nがパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lの略四角形の対角線に近づくようにずれている。これにより、発光素子26Ra,26Laの発光面を通り斜めカットオフラインCL2と平行に延びる仮想直線Pと斜めカット部形成用ユニット14R,14Lとの灯具正面から見た重なり部分の長さYを、比較例に比べて長くすることができる。特に、本実施形態の斜めカット部形成用ユニット14Rにおける重なり部分の長さYを、比較例の斜めカット部形成用ユニット114Rにおける重なり部分の長さYに比べて長くすることができる。したがって、本実施形態によれば、比較例に比べてより明瞭な斜めカットオフラインCL2を形成することができる。
【0035】
また、本実施形態では、斜めカット部形成用ユニット14Rの、発光素子26Raからパラボラ光学系リフレクタ24Rに至るまでの光照射方向、すなわち発光素子26Raの光照射方向は、斜めカットオフラインCL2の一端側から他端側に向かう方向である。具体的には、水平カットオフラインCL1と鉛直線Vとの交点近傍から左斜め上方へ向かう方向である。一方、斜めカット部形成用ユニット14Lの、発光素子26Laからパラボラ光学系リフレクタ24Lに至るまでの光照射方向、すなわち発光素子26Laの光照射方向は、斜めカットオフラインCL2の他端側から一端側に向かう方向である。具体的には、左斜め上方から水平カットオフラインCL1と鉛直線Vとの交点近傍に向かう方向である。
【0036】
ここで、一般に発光素子から照射された光は、発光面から進行するほどその光度が減少していく。そのため、斜めカット部形成用ユニット14Rによって形成される斜めカットオフラインCL2は、一端側が他端側よりも明瞭なラインとなる。また、斜めカット部形成用ユニット14Lによって形成される斜めカットオフラインCL2は、他端側が一端側よりも明瞭なラインとなる。したがって、斜めカット部形成用ユニット14Rによって形成される斜めカットオフラインCL2と斜めカット部形成用ユニット14Lによって形成される斜めカットオフラインCL2とが合成されると、一端側から他端側にかけて全体的に明瞭な斜めカットオフラインCL2を形成することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具1において、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lは、灯具正面から見て略四角形である。そして、発光素子26Ra,26Laは、(i)略四角形の一辺24Ra,24Laの近傍に配置され、発光面から発光面の法線方向に照射されパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lで反射された光が斜めカットオフラインCL2を形成するよう発光面の法線Nが水平線Hに対して傾けられ、かつ、(ii)一辺24Ra,24Laの中心24Rac,24Lacから、発光面の法線方向に延びる光線が水平線Hに対して傾く方向と逆方向にずれている。
【0038】
また、本実施形態に係る光学ユニット20R,20Lにおいて、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lは、ユニット正面から見て略四角形であり、発光素子搭載部22R,22Lは、(i)略四角形の一辺24Ra,24Laの近傍に配置され、発光素子26Ra,26Laの持つ発光面から発光面の法線方向に照射されパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lで反射された光が斜めカットオフラインCL2を形成するよう素子搭載面22Ra,22Laの法線Nが水平H線に対して傾けられ、かつ、(ii)一辺24Ra,24Laの中心24Rac,24Lacから、素子搭載面22Ra,22Laの法線Nのうち素子搭載面22Ra,22Laから発光素子26Ra,26Laの光照射方向側に延びる部分が水平線Hに対して傾く方向と逆方向にずれている。
【0039】
これにより、発光素子126Ra,126Laの位置および発光面の向きが左右対称である従来構造に比べて、斜めカットオフラインCL2の形成に対する、発光面の法線方向に進行する強い光の利用量を増やすことができる。また、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lの形状が灯具正面から見て略四角形であっても、発光面の法線Nとパラボラ光学系リフレクタ24R,24Lとの灯具正面から見た重なり部分の長さYを、パラボラ光学系リフレクタ24R,24Lを大きくすることなく従来の構造に比べて長くすることができる。したがって、パラボラ型リフレクタの形状の制約を減らすとともに、パラボラ光学系リフレクタの大型化を回避しながら明瞭な斜めカットオフラインCL2を形成することができる。
【0040】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることが可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の実施形態に変形が加えられた新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。