(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1の楽曲の拍を基準とした周期と、当該1の楽曲とは異なる他の楽曲の拍を基準とした周期が合致するように同期再生されている状況で、当該他の楽曲に対して、周期性を乱す特殊再生の指示をする特殊再生指示部と、
前記特殊再生指示部の指示にしたがい、前記他の楽曲に対し前記特殊再生を行わせる特殊再生処理部と、
前記特殊再生が行われた場合、前記特殊再生を解除して通常再生に復帰する際に、前記特殊再生の対象となる前記他の楽曲を、前記1の楽曲の周期タイミングに合わせるように復帰させる復帰処理部と、を備えたことを特徴とする再生装置。
前記復帰位置決定部により、前記4つの候補の中からどの候補を決定するかを選択する復帰位置選択部をさらに備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の再生装置。
特殊再生の対象とならない前記1の楽曲であるマスターコンテンツを再生するマスター再生部と、特殊再生の対象となる前記他の楽曲であるスレーブコンテンツを再生するスレーブ再生部と、をさらに備え、
前記スレーブ再生部は、前記マスター再生部から、前記マスターコンテンツの再生位置を示す再生位置情報を取得し、当該再生位置情報に基づいて前記スレーブコンテンツの加減速処理を行うことで、前記マスターコンテンツとの同期再生を行うことを特徴とする請求項1に記載の再生装置。
1の楽曲の拍を基準とした周期と、当該1の楽曲とは異なる他の楽曲の拍を基準とした周期が合致するように同期再生されている状況で、当該他の楽曲に対して、周期性を乱す特殊再生の指示をする特殊再生指示ステップと、
前記特殊再生の指示にしたがい、前記他の楽曲に対し前記特殊再生を行わせる特殊再生処理ステップと、
前記特殊再生が行われた場合、前記特殊再生を解除して通常再生に復帰する際に、前記特殊再生の対象となる前記他の楽曲を、前記1の楽曲の周期タイミングに合わせるように復帰させる復帰処理ステップと、を備えたことを特徴とする再生方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この同期再生中において、スレーブ側でスクラッチ操作などの特殊再生操作が行われると、スレーブ側の再生位置が通常再生の場合とずれるため、同期関係が崩れてしまう。
図15は、このような同期再生の従来例を示す図である。同図上段は、マスター曲の再生状態を示し、同図下段は、スレーブ曲の再生状態を示している。また、1小節は4拍から成る(4拍子である)ものとする。同図に示すように、例えばスレーブ曲の第2小節内で特殊再生操作を開始し、1拍目の位置で特殊再生操作を終了した場合であって、その操作終了時におけるマスター曲の再生位置が2.7拍目であった場合、スレーブ曲は、操作終了時における小節(ここでは、第2小節とする)の1拍目から再生を開始するため、マスター曲とスレーブ曲の各小節の開始位置がずれてしまう。つまり、特殊再生を解除して通常再生に復帰したとき、特殊再生の解除タイミングによっては、マスター曲とスレーブ曲のテンポがずれてしまう。ところが、DJ機器の場合、このような楽曲のテンポのずれはフロアの雰囲気を大きく損ねてしまうため、致命的な問題である。特にDJ機器の場合、その特性上、特殊再生操作が頻繁に行われる。このため、特殊再生が行われた場合に、マスター曲とのタイミングを維持したまま通常再生に復帰可能な技術の実現が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑み、特殊再生が行われた場合でも、確実にテンポを維持することができる再生装置
、再生方法およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の再生装置は、1の楽曲の拍を基準とした周期と、当該1の楽曲とは異なる他の楽曲の拍を基準とした周期が合致するように同期再生されている状況で、当該他の楽曲に対して、周期性を乱す特殊再生の指示をする特殊再生指示部と、特殊再生指示部の指示にしたがい、他の楽曲に対し特殊再生を行わせる特殊再生処理部と、特殊再生が行われた場合、特殊再生を解除して通常再生に復帰する際に、特殊再生の対象となる他の楽曲を、1の楽曲の周期タイミングに合わせるように復帰させる復帰処理部と、を備えたことを特徴とする。
上記の再生装置において、特殊再生指示が行われた場合、1の楽曲の通常再生を監視する通常再生監視部をさらに備え、復帰処理部は、特殊再生の解除時に、特殊再生された他の楽曲を、通常再生監視部で監視されている1の楽曲の周期タイミングに合わせるように復帰させることを特徴とする。
上記の再生装置において、復帰処理部は、特殊再生された他の楽曲の当該特殊再生の解除時における再生位置Tsと、特殊再生されていない1の楽曲の当該解除時における再生位置Tbgと、を判定する再生位置判定部と、再生位置Tsの直前に存在する再生位置Tbgの周期内の位置を示す周期内位置Ubgである復帰位置候補A、再生位置Tsの直後に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補B、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち再生位置Tsに近い方、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち再生位置Tsが属する周期に含まれる方、の4つの候補の中からいずれかを、通常再生復帰位置として決定する復帰位置決定部と、特殊再生された他の楽曲の再生位置を、決定した通常再生復帰位置に合わせる復帰部と、を含むことを特徴とする。
上記の再生装置において、特殊再生された他の楽曲内の任意の位置Trを復帰目標位置として指定する復帰目標位置指定部をさらに備え、復帰処理部は、特殊再生されていない1の楽曲の、特殊再生の解除時における再生位置Tbgを判定する再生位置判定部と、任意の位置Trの直前に存在する再生位置Tbgの周期内の位置を示す周期内位置Ubgである復帰位置候補A、任意の位置Trの直後に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補B、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち任意の位置Trに近い方、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち任意の位置Trが属する周期に含まれる方、の4つの候補の中からいずれかを、通常再生復帰位置として決定する復帰位置決定部と、特殊再生された他の楽曲の再生位置を、決定した通常再生復帰位置に合わせる復帰部と、を含むことを特徴とする。
上記の再生装置において、復帰位置決定部により、4つの候補の中からどの候補を決定するかを選択する復帰位置選択部をさらに備えたことを特徴とする。
上記の再生装置において、特殊再生の対象とならない1の楽曲であるマスターコンテンツを再生するマスター再生部と、特殊再生の対象となる他の楽曲であるスレーブコンテンツを再生するスレーブ再生部と、をさらに備え、スレーブ再生部は、マスター再生部から、マスターコンテンツの再生位置を示す再生位置情報を取得し、当該再生位置情報に基づいてスレーブコンテンツの加減速処理を行うことで、マスターコンテンツとの同期再生を行うことを特徴とする。
上記の再生装置において、マスター再生部とスレーブ再生部とが、ネットワークを介して接続されている場合、スレーブ再生部は、ネットワークによる通信遅延量を加味して、スレーブコンテンツの加減速処理を行うことを特徴とする。
本発明の再生方法は、1の楽曲の拍を基準とした周期と、当該1の楽曲とは異なる他の楽曲の拍を基準とした周期が合致するように同期再生されている状況で、当該他の楽曲に対して、周期性を乱す特殊再生の指示をする特殊再生指示ステップと、特殊再生の指示にしたがい、他の楽曲に対し特殊再生を行わせる特殊再生処理ステップと、特殊再生が行われた場合、特殊再生を解除して通常再生に復帰する際に、特殊再生の対象となる他の楽曲を、1の楽曲の周期タイミングに合わせるように復帰させる復帰処理ステップと、を備えたことを特徴とする。
本発明のプログラムは、コンピューターに、上記の再生方法における各ステップを実行させることを特徴とする。
なお、以下の構成としても良い。
本発明の再生システムは、周期を持ったコンテンツを再生するコンテンツ再生部と、コンテンツに対し、通常に再生される通常再生時とは異なる再生位置を再生する特殊再生を行うように操作する特殊再生操作部と、特殊再生操作部の操作にしたがい、コンテンツ再生部に特殊再生を行わせる特殊再生処理部と、特殊再生が行われた場合、特殊再生を解除して通常再生に復帰する際に、コンテンツの通常再生復帰位置を、特殊再生が行われずに通常再生が継続された場合の周期タイミングと合致する位置に合わせる復帰処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の再生方法は、コンピューターが、周期を持ったコンテンツを再生するコンテンツ再生ステップと、コンテンツに対し、通常に再生される通常再生時とは異なる再生位置を再生する特殊再生を行うように操作する特殊再生操作ステップと、特殊再生操作ステップの操作にしたがい、特殊再生を行わせる特殊再生処理ステップと、特殊再生が行われた場合、特殊再生を解除して通常再生に復帰する際に、コンテンツの通常再生復帰位置を、特殊再生が行われずに通常再生が継続された場合の周期タイミングと合致する位置に合わせる復帰処理ステップと、を実行することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、特殊再生が行われた場合、その特殊再生の解除時に、コンテンツの通常再生復帰位置を、通常再生時における周期タイミングと合致する位置に合わせるため、テンポの崩れを防止することができる。つまり、スクラッチなどの特殊再生が行われた場合、コンテンツの通常再生復帰位置を、通常再生時の拍内の位置などに合わせることで、テンポを維持することができる。これにより、本発明がDJ機器に適用された場合、特殊再生によってフロアの雰囲気を損ねることがないため、DJ初心者であっても気軽に特殊再生をパフォーマンスに組み込むことができる。
なお、特殊再生とは、スクラッチ、ループ、リバース、サーチ、ニードルサーチ、ホットキュー、その他周期性を乱す可能性のある行為(テンポスライダー等)などを指す。
また、「周期を持ったコンテンツ」とは、周期が一定、すなわち拍間隔や拍子間隔などのリズム間隔が一定のコンテンツを指し、「周期タイミング」とは、周期内の位置を指す。なお、周期が一定ではないコンテンツについては、周期が一定になるように補正した後、本発明を適用すれば良い。
また、「コンテンツの通常再生復帰位置を、特殊再生が行われずに通常再生が継続された場合の周期タイミングと合致する位置に合わせる」とは、「コンテンツの通常再生復帰位置を、特殊再生が行われずに通常再生が継続された場合の再生位置に合わせる」ことを含む概念である。
【0010】
上記に記載の再生システムにおいて、コンテンツ再生部は、複数のコンテンツに対応して複数備えられ、複数のコンテンツが同期再生されている状況で、特殊再生処理部により、複数のコンテンツのうち1以上のコンテンツに対して特殊再生が行われた場合、復帰処理部は、特殊再生の解除時に、特殊再生の対象となる1以上のコンテンツの通常再生復帰位置を、複数のコンテンツのうち通常再生の対象となる他のコンテンツの周期タイミングと合致する位置に合わせることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、複数のコンテンツが同期再生されている状況で、特殊再生の対象となる1以上のコンテンツの通常再生復帰位置を、通常再生の対象となる他のコンテンツの周期タイミングと合致する位置に合わせるため、特殊再生操作が行われた場合でも、通常再生の対象となるコンテンツとのテンポのずれを防止することができる。
なお、「複数のコンテンツの同期再生」とは、少なくとも周期(拍間隔や拍子間隔など)ごとの同期がとれた状態で再生されていることを意味する。
【0012】
上記に記載の再生システムにおいて、コンテンツ再生部は、特殊再生操作が行われた場合、コンテンツの通常再生を監視する通常再生監視部を含み、復帰処理部は、特殊再生の解除時に、特殊再生されたコンテンツの通常再生復帰位置を、通常再生監視部で監視されているコンテンツの周期タイミングと合致する位置に合わせることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、コンテンツの通常再生を監視しているため、コンテンツの通常再生復帰位置を、通常再生されているコンテンツの周期タイミングと合致する位置に正確に合わせることができる。
なお、「コンテンツの通常再生を監視する」方法として、コンテンツの通常再生をバックグラウンドで行っても良い。この場合、「バックグラウンドで再生する」とは、コンテンツを出力しない状態で再生することを意味する。
【0014】
上記に記載の再生システムにおいて、復帰処理部は、特殊再生されたコンテンツの当該特殊再生の解除時における再生位置Tsと、通常再生された場合のコンテンツの当該解除時における再生位置Tbgと、を判定する再生位置判定部と、再生位置Tbgの周期内の位置である周期内位置Ubgを算出する周期内位置算出部と、各周期内に周期内位置Ubgが存在すると仮定した場合、再生位置Tsの直前に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補Aと、再生位置Tsの直後に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補Bと、を特定する復帰位置候補特定部と、復帰位置候補A、復帰位置候補B、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち再生位置Tsに近い方、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち再生位置Tsが属する周期に含まれる方、の4つの候補の中からいずれかを通常再生復帰位置として決定する復帰位置決定部と、特殊再生されたコンテンツの再生位置を、決定した通常再生復帰位置に合わせる復帰部と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、コンテンツの通常再生復帰位置を、「再生位置Tsの直前に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補A」、「再生位置Tsの直後に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補B」、「復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち再生位置Tsに近い方」、「復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち再生位置Tsが属する周期に含まれる方」、のいずれかの復帰位置に合わせることができる。例えば、「復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち再生位置Tsに近い方」を復帰位置とすることで、ユーザーが復帰を意図した場所(再生位置Ts)に最も近い位置から特殊再生解除後の再生を開始することができる。
【0016】
上記に記載の再生システムにおいて、コンテンツ内の任意の位置Trを復帰目標位置として指定する復帰目標位置指定部をさらに備え、復帰処理部は、
通常再生された場合のコンテンツの、特殊再生の解除時における再生位置Tbgを判定する再生位置判定部と、再生位置Tbgの周期内の位置である周期内位置Ubgを算出する周期内位置算出部と、各周期内に周期内位置Ubgが存在すると仮定した場合、任意の位置Trの直前に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補Aと、任意の位置Trの直後に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補Bと、を特定する復帰位置候補特定部と、復帰位置候補A、復帰位置候補B、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち任意の位置Trに近い方、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち任意の位置Trが属する周期に含まれる方、の4つの候補の中からいずれかを通常再生復帰位置として決定する復帰位置決定部と、特殊再生されたコンテンツの再生位置を、決定した通常再生復帰位置に合わせる復帰部と、を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、「任意の位置Trの直前に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補A」、「任意の位置Trの直後に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補B」、「復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち任意の位置Trに近い方」、「復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち任意の位置Trが属する周期に含まれる方」、のいずれかの復帰位置に合わせることができる。例えば、「復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち任意の位置Trに近い方」を復帰位置とすることで、ユーザーが復帰を意図した場所(任意の位置Tr)に最も近い位置から特殊再生解除後の再生を開始することができる。また、復帰位置を任意に指定することができるため、ユーザーが意図して曲調を変えたり、テンポを維持したまま、違和感なく違う場面に移行したりすることができる。
なお、任意の位置Trの指定は、コンテンツの先頭からの再生位置や曲調変化位置(Aメロ開始位置、サビ開始位置)などとして指定可能である。また、コンテンツの先頭からの再生位置は、コンテンツの先頭からの経過時間や、コンテンツの先頭からカウントされる周期の数(拍の数など)などにより指定可能である。
【0018】
上記に記載の再生システムにおいて、復帰位置決定部により、4つの候補の中からどの候補を決定するかを選択する復帰位置選択部をさらに備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ユーザーの好みやニーズに応じて、復帰位置を選択することができる。
【0020】
上記に記載の再生システムにおいて、複数のコンテンツ再生部は、通常再生の対象となるマスターコンテンツを再生するマスター再生部と、特殊再生の対象となるスレーブコンテンツを再生するスレーブ再生部と、を含み、スレーブ再生部は、マスター再生部から、マスターコンテンツの再生位置を示す再生位置情報を取得し、当該再生位置情報に基づいてスレーブコンテンツの加減速処理を行うことで、マスターコンテンツとの同期再生を行うことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、マスターコンテンツとスレーブコンテンツが同期再生されている状況で、スレーブコンテンツに対して特殊再生操作が行われた場合、当該スレーブコンテンツの通常再生復帰位置を、マスターコンテンツの周期タイミングと合致する位置に合わせるため、マスターコンテンツとスレーブコンテンツのテンポのずれを防止することができる。また、スレーブ再生部は、マスター再生部から再生位置情報を取得してスレーブコンテンツの加減速処理を行うため、正確な同期再生を行うことができる。
【0022】
上記に記載の再生システムにおいて、マスター再生部とスレーブ再生部とが、ネットワークを介して接続されている場合、スレーブ再生部は、ネットワークによる通信遅延量を加味して、スレーブコンテンツの加減速処理を行うことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、マスター再生部とスレーブ再生部とが、位置的に離れた場所にある場合でも、ネットワークによる通信遅延を考慮した正確な同期再生を行うことができる。
【0024】
上記に記載の再生システムにおいて、周期は、拍、小節、フレーズ、曲調、曲番のうち、いずれかを基準とした期間であることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、拍、小節(拍子)、フレーズ、曲調(前奏、Aメロ、サビなどのメロディ切替位置を基準とした単位)、曲番(曲の1番・2番など)が同期した同期再生を行う場合に、本発明を適用することができる。
【0026】
本発明のプログラムは、コンピューターに、上記に記載の再生方法における各ステップを実行させることを特徴とする。
【0027】
このプログラムを用いることにより、特殊再生が行われた場合でも、確実にテンポを維持することができる再生方法を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る再生装置
、再生方法およびそのプログラムについて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、再生システムSY(再生装置)のシステム構成図である。同図に示すように、再生システムSYは、メインとなるマスター曲(マスターコンテンツ)を再生するマスターデッキ10と、マスター曲に同期してスレーブ曲(スレーブコンテンツ)を再生するスレーブデッキ20と、から成る。両デッキ10,20は、イーサネット(登録商標)などのケーブル31を介して接続されており、少なくともマスターデッキ10からスレーブデッキ20へのデータ送信が可能となっている。
【0030】
なお、本実施形態において、マスターデッキ10およびスレーブデッキ20は、いずれもDJプレーヤー(ディスクジョッキーがDJパフォーマンスに用いるためのプレーヤー)であるものとする。また、各デッキ10,20で再生される曲は、既に解析済みであり、その解析データは、各デッキ10,20内のメモリ13,23に保持されているものとする。さらに、各デッキ10,20で再生される曲は、周期性を持つものとする。なお、「周期性を持つ」とは、拍(アクセント)間隔が一定、または拍子(強拍とそれに続く弱拍)間隔が一定、というような、一定のテンポ(リズム)を有することを意味する。また、テンポが一定ではない曲については、テンポを一定にするための補正処理を施した上で解析されているものとする。
【0031】
マスターデッキ10は、マイコン11、DSP(Digital Signal Processor)12、メモリ13、操作子14および通信インターフェース15を備えている。なお、一般的なDJプレーヤーに搭載される他の構成要素(記録媒体読取機構、再生機構および再生信号出力機構など)については説明を省略する。マイコン11は、曲の再生を制御する再生制御機能と、メモリ13に保持されている曲の解析データから、曲の構成単位(周期)となる「小節」の各位置を示す小節情報を検出する小節情報検出機能と、次の小節までのデータである小節データを演算する小節データ演算機能と、を有している。なお、「小節情報」とは、曲の先頭からの各小節の位置(時間、サンプリングのデータ数など)を示し、「小節データ」とは、ある任意の再生位置(現在位置)から、次の小節の開始位置までの長さ(時間、サンプリングのデータ数など)を示す。
【0032】
DSP12は、再生スピードを調整するなど、各種音声処理を行う。また、メモリ13は、不揮発性の記憶媒体であり、上記の解析データ(小節情報)を記憶する。また、操作子14は、ユーザーが曲の再生操作など各種操作を行うために用いられる。また、通信インターフェース15は、小節データをスレーブデッキ20に送信するために用いられる。なお、請求項における再生位置情報(コンテンツの再生位置を示す情報)とは、本実施形態において、当該「小節データ」を指す。
【0033】
一方、スレーブデッキ20も、マスターデッキ10と同様の構成であり、マイコン21、DSP22、メモリ23、操作子24および通信インターフェース25を備えている。スレーブデッキ20側のマイコン21は、上記の小節情報検出機能および小節データ演算機能の他、操作子24によりスレーブ曲に対する特殊再生操作が行われた場合に、マスター曲との同期状態を保持したままスレーブ曲の再生を開始するための復帰処理機能を有している。また、スレーブデッキ20側の操作子24は、スクラッチなど特殊再生を行うための特殊再生操作子が含まれる。なお、特殊再生および特殊再生操作子については、
図3にて後述する。また、スレーブデッキ20側の通信インターフェース25は、マスターデッキ10から小節データを受信する。
【0034】
次に、
図2を参照し、再生システムSYの機能構成について説明する。マスターデッキ10は、主な機能構成として、マスター側通信部110およびコンテンツ再生部120を備えている。マスター側通信部110は、通信インターフェース15を主要部とし、スレーブデッキ20との通信を行う。
【0035】
コンテンツ再生部120は、マイコン11、DSP12および不図示の再生機構を主要部とし、音楽コンテンツを再生する。また、マスターデッキ10側のコンテンツ再生部120は、マスター再生部121を有し、マスター曲を再生する。なお、マスター曲は、通常再生される(特殊再生の対象とならない)ものとする。
【0036】
一方、スレーブデッキ20は、主な機能構成として、スレーブ側通信部210、コンテンツ再生部220、特殊再生操作部230(特殊再生指示部)、特殊再生処理部235、復帰位置選択部240および復帰処理部250を備えている。スレーブ側通信部210は、通信インターフェース25を主要部とし、マスターデッキ10との通信を行う。
【0037】
コンテンツ再生部220は、マイコン21、DSP22および不図示の再生機構を主要部とし、音楽コンテンツを再生する。また、スレーブデッキ20側のコンテンツ再生部220は、スレーブ再生部221を有し、スレーブ曲を再生する。さらに、スレーブ再生部221は、特殊再生が行われた場合に、表側処理を行うスレーブ表側再生部と、裏側処理を行うバックグラウンド再生部と、を有する。表側処理とは、再生信号を外部に出力可能な状態で行う再生処理を意味するものであり、特殊再生操作が反映される。これに対し、裏側処理とは、スレーブ曲の通常再生を監視するものである(通常再生監視部)。本実施形態では、裏側処理として、再生信号を外部に出力しない状態でスレーブ曲の通常再生を行う、いわゆるバックグラウンド再生を行う。したがって、マスター再生部121により再生されるマスター曲と、バックグラウンド再生部により再生されるスレーブ曲は、常に同期状態が維持されている。
【0038】
特殊再生操作部230は、操作子24を主要部とするものであり、スレーブ再生部221(スレーブ表側再生部)にて再生されるスレーブ曲に対し、通常再生時とは異なる再生位置を再生させるための特殊再生操作を行う。つまり、「特殊再生操作」とは、スレーブ曲のテンポとマスター曲のテンポがずれる(同期状態が崩れる)可能性のある操作を指す。ここで、
図3を参照し、特殊再生操作部230(特殊再生操作子)の具体例、およびその特殊再生の動作について説明する。
【0039】
図3は、スレーブデッキ20を上側から見た平面図である。符号41〜43については、復帰位置選択部240として機能する部位であるため後述する。符号44は、特殊再生「ニードルサーチ」を行うためのニードルサーチパッドである。「ニードルサーチ」は、再生位置のジャンプ機能であり、ニードルサーチパッドの任意の位置が指でタッチされることで、タッチした付近の音を瞬時に再生する。この「ニードルサーチ」を開始すると、その時点でマスター曲(マスターデッキ10)との再生位置に差異が生じるため、同期状態が崩れる。
【0040】
符号45〜48は、特殊再生「ループ」を行うためのボタン群である。「ループ」は、繰り返し再生機能であり、楽曲内で繰り返しの開始点と終了点を定めると、その繰り返し期間内を繰り返し再生する。また、「ループ」を解除すると通常再生に戻り、繰り返し終了点に到達しても繰り返し再生されなくなる。なお、符号45,46は、「ループ」を手動で開始および終了させるための手動ループボタンであり、符号47は、「ループ」を解除するための解除ボタンである。また、符号48は、「ループ」を自動で開始/終了させるための自動ループボタンである。当該自動ループボタンが押下されると、再生しているトラックのBPM(Beats Per Minute)に合わせて、押下した位置から4拍のループが自動設定される。この「ループ」を行った場合、繰り返し期間をマスター曲のBPMに合わせて自動設定できる機能(自動同期機能)があれば、同期状態が崩れることはないが、手動設定の場合、設定した位置によって(マスター曲のリズムに同期しないタイミングまたは長さのループを組んだ場合)、同期状態が崩れる。
【0041】
符号49は、特殊再生「ホットキュー」を行うためのボタン群である。「ホットキュー」は、再生位置のジャンプ機能であり、ホットキューボタンが押下されると、楽曲内の予め指定しておいた(記録しておいた)位置から、即座に再生を開始する。同図の例では、ホットキューボタンA,B,Cに対応して3つの位置を指定することが可能となっている。この「ホットキュー」は、任意の位置からの再生であるため、上記の自動同期機能を用いても再生開始時点ではマスター曲の再生位置と差異が発生するため、同期状態が崩れる。
【0042】
符号50は、特殊再生「リバース」を行うためのスイッチである。「リバース」は、逆再生機能であり、スイッチをONにすると、再生中の位置から逆再生を開始する。また、スイッチをOFFにすると、逆再生中の位置から通常再生を開始する。なお、符号51は、逆再生を行っている間に点灯するREVインジケーターである。この「リバース」は、逆再生を開始した時点で、マスター曲との再生位置に差異が生じるため、同期状態が崩れる。
【0043】
符号52は、特殊再生「サーチ」を行うためのボタン群である。「サーチ」は、再生位置の早送り・巻き戻し機能であり、各ボタンが押下されている間、早送り・巻き戻しを行い、ボタンの押下が解除されると通常再生を開始する。この「サーチ」は、早送り・巻き戻しを開始した時点で、マスター曲と再生位置および再生速度の差異が生じるため、同期状態が崩れる。
【0044】
符号53は、特殊再生「プレイ」を行うためのボタン群である。「プレイ」は楽曲再生機能であり、ボタンが押下されると、停止中またはキュー待機中の再生位置から通常再生を開始する。この「プレイ」は、任意の位置からの再生であるため、上記の自動同期機能を用いても再生開始時点ではマスター曲の再生位置との差異が発生するため、同期状態が崩れる。
【0045】
符号54は、特殊再生「スクラッチ」を行うためのジョグダイヤルである。「スクラッチ」は、ジョグダイヤルの天面が押下されながら回されることで、ジョグダイヤルの回転方向と回転速度に応じた再生を行う。また、天面の押下が解除されると(手が離されると)、スクラッチ再生中の位置から通常再生を再開する。この「スクラッチ」は、開始した時点で、マスター曲と再生位置および再生速度の差異が生じるため、同期状態が崩れる。以上、符号44〜54は、特殊再生操作部230を実現する操作子の一例であり、その他再生速度を可変するための操作子(フェーダーなど)なども、特殊再生操作部230に含まれる。また、タッチパネルやタッチパッド等を接触操作することにより特殊再生を行っても良い。
【0046】
図2の説明に戻る。特殊再生処理部235は、マイコン11、DSP12、並びに特殊再生時に曲の一部を記憶しておくためのバッファ(図示省略)を主要部とするものであり、特殊再生操作部230の操作にしたがって、コンテンツ再生部220(スレーブ再生部221)に特殊再生を行わせる。
【0047】
復帰位置選択部240は、操作子24を主要部とするものであり、後述する復帰位置決定部254により、4つの復帰位置候補の中からどの候補を復帰位置として決定するかを選択する。本実施形態では、パターン1〜4のいずれかを、ユーザーの好みやニーズに応じて選択可能となっており(
図7,
図8参照)、当該パターンの選択によって復帰位置が一意に特定される。なお、復帰位置選択部240の選択操作は、
図3に示す符号41〜43を用いて行われる。符号41は、メニューボタンであり、符号42は、ロータリーセレクターであり、符号43は、液晶ディスプレイである。具体的には、メニューボタンの押下によりパターン1〜4を選択するための選択肢を液晶ディスプレイに表示させ、ロータリーセレクターを用いていずれか1の選択肢を選択し、ロータリーセレクターを押下することで、パターンを決定する。
【0048】
復帰処理部250は、マイコン21およびDSP22を主要部とするものであり、特殊再生操作が行われた場合、特殊再生の解除時に、スレーブ曲の通常再生復帰位置(通常再生に戻った際の復帰位置)を、マスター曲の小節内位置(バックグラウンド再生部にて再生されているスレーブ曲の小節内位置=請求項における「周期タイミング」)に合わせるための処理を行う。同図に示すように、復帰処理部250は、再生位置判定部251、周期内位置算出部252、復帰位置候補特定部253、復帰位置決定部254および復帰部255を有している。
【0049】
再生位置判定部251は、スレーブ表側再生部により特殊再生されたスレーブ曲の当該特殊再生の解除時における再生位置Tsと、バックグラウンド再生部により通常再生されたスレーブ曲の当該解除時における再生位置Tbgと、を判定する。
図4は、これらの再生位置Ts,Tbgを時間軸上で示したものである。同図において、各時間軸上の目盛りは、小節(周期)の区切りを示す。
【0050】
また、周期内位置算出部252は、再生位置Tsの小節内の位置(小節の開始点からの位置)である周期内位置Usと、再生位置Tbgの小節内の位置である周期内位置Ubgと、を算出する(
図4参照)。
【0051】
また、復帰位置候補特定部253は、各小節内に周期内位置Ubgが存在すると仮定した場合、再生位置Tsの直前に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補Aと、再生位置Tsの直後に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補Bと、を特定する(
図7(a),
図8(a)参照)。
【0052】
また、復帰位置決定部254は、特定した復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bと、復帰位置選択部240により選択されたパターンと、に応じて通常再生復帰位置を決定する。また、復帰部255は、スレーブ曲の再生位置を、復帰位置決定部254により決定した通常再生復帰位置に合わせる(ジャンプする)。
【0053】
このように、復帰処理部250の処理により、スレーブ曲に対する特殊再生が行われた場合でも、マスター曲との同期状態を維持することができる。
図5は、マスター曲とスレーブ曲の、本実施形態に係る同期再生のイメージ図である。同図上段は、マスター曲の再生状態を示し、同図下段は、スレーブ曲の再生状態を示す。また、太点線は、小節の区切り、細点線は拍の区切りを示す。つまり、同図の例は、4拍子の楽曲であって、太点線は1拍目の強拍を示し、細点線は、図示左側から2拍目、3拍目、4拍目の弱拍を示す。さらに、符号60は、特殊再生が行われている期間を示している。同図に示すように、例えばスレーブ側の第2小節内で特殊再生操作を開始し、第2小節の1拍目の位置で特殊再生操作を終了した場合であって、その操作終了時におけるマスター曲の再生位置が2.7拍目であった場合、スレーブ曲は、操作終了時における第2小節の1拍目からではなく、第2小節の2.7拍目から再生を開始するように復帰処理を行う。これにより、マスター曲とスレーブ曲のテンポのずれを解消している。但し、同図は、復帰位置選択部240により、パターン2〜4のいずれかが選択された場合の例を示している(パターン1が選択された場合は、異なる復帰位置となる)。各パターンの詳細については後述する。
【0054】
次に、
図6のフローチャートを参照し、本実施形態に係る再生システムSYの再生処理(再生方法)について説明する。まず、マスター再生部121では、マスター曲の再生を行い(S01)、小節ポイント(現在位置)を検出すると(S02)、メモリ13内に記憶されている小節情報に基づいて、次の小節までの小節データ(次の小節までの時間など,再生位置情報)を、スレーブ再生部221に送信する(S03)。
【0055】
一方、スレーブ再生部221では、スレーブ曲の再生を行っており(S04)、マスター再生部121から小節データを受信すると(S05)、現在位置(現在の再生位置)から次の小節までのデータ(時間など)を算出し(S06)、マスター曲のテンポに合わせるための加減速処理を行う(S07)。例えば、受信した小節データよりも算出したデータ量(サンプル数)の方が大きい場合は、加速処理を行い、逆の場合は、減速処理を行う。これらの工程を繰り返すことにより、マスター曲とスレーブ曲の小節位置が一致した状態となる(S08,自動同期機能)。なお、S05〜S07(符号SA)は、バックグラウンド再生部による裏側処理を指す。また、S01〜S08は、請求項におけるコンテンツ再生ステップを指す。
【0056】
ここで、ユーザーにより特殊再生操作が開始され(S09)、任意のタイミングで特殊再生操作が終了された場合(S10)の復帰処理について、以下説明する。なお、S09,S10(符号SB)は、スレーブ表側再生部による表側処理、並びに請求項における特殊再生操作ステップ,特殊再生処理ステップを指す。を指す。まず、復帰処理部250は、特殊再生されているスレーブ曲の再生位置Tsを判定する(S11,
図4参照)。続いて、再生位置Tsの前後の小節位置Ls,Ls+1(再生位置Tsが含まれる小節の開始位置および終了位置)を算出する(S12,
図4参照)。これらS11,S12の工程により、再生位置Tsの周期内位置Us(小節内位置)を算出する(S13,
図4参照)。
【0057】
また、復帰処理部250は、バックグラウンド再生部により通常再生されているスレーブ曲の再生位置Tbgを判定する(S14,
図4参照)。続いて、再生位置Tbgの前後の小節位置Lbg,Lbg+1を算出する(S15,
図4参照)。これらS14,S15の工程により、再生位置Tbgの周期内位置Ubg(小節内位置)を算出する(S16,
図4参照)。
【0058】
続いて、復帰処理部250は、S13およびS16の結果から、復帰位置候補A,Bを特定する(S17)。例えば、周期内位置Usと周期内位置Ubgが
図7(a)に示す位置関係である場合、復帰位置候補A,Bは、同図に示すように特定される。つまり、復帰位置候補Aは、各小節内にそれぞれ周期内位置Ubgがプロットされていると仮定した場合、再生位置Tsの直前に存在する周期内位置Ubgである。これに対し、復帰位置候補Bは、各小節内にそれぞれ周期内位置Ubgがプロットされていると仮定した場合、再生位置Tsの直後に存在する周期内位置Ubgである。このようにして、復帰位置候補A,Bを特定した後、ユーザーが選択したパターンに応じて通常再生復帰位置を決定し(S18)、その復帰位置に復帰する(S19)。つまり、スレーブ曲の再生を、通常再生復帰位置から開始する。これにより、結果的にマスター曲とスレーブ曲の小節内位置(周期タイミング)が一致した状態となる(S08)。なお、S11〜S19(符号SC)は、復帰処理部250による復帰処理(復帰処理ステップ)を指す。
【0059】
次に、
図7および
図8を参照し、各パターンに応じて定められる通常再生復帰位置(以下、単に「復帰位置」とも称する)について詳細に説明する。
図7は、周期内位置Ubg>周期内位置Usの場合の説明図である。同図(a)は、この場合の復帰位置候補A,Bの配置イメージを示している。
【0060】
また、同図(b)は、各パターンが選択された場合の復帰位置を示している。ここで、各パターン1〜4について説明する。まず、「パターン1」は、復帰位置候補Aを復帰位置とするパターンである。つまり、再生位置Tsの直前に存在する周期内位置Ubgを復帰位置とする。したがって、再生位置Tsと復帰位置候補A間の長さをLAとすると、復帰位置はTs−LAとなる。なお、
図5に示した例では、パターン1が選択された場合、再生位置Tsが「1拍目」となるため、図示したような第2小節の2.7拍目ではなく、第1小節の2.7拍目が復帰位置となる。なお、LAの長さおよび復帰位置(復帰位置候補A)は、同図(b)に示す計算式により求められる。
【0061】
また、「パターン2」は、復帰位置候補Bを復帰位置とするパターンである。つまり、再生位置Tsの直後に存在する周期内位置Ubgを復帰位置とする。したがって、再生位置Tsと復帰位置候補B間の長さをLBとすると、復帰位置はTs+LBとなる。なお、LBの長さおよび復帰位置(復帰位置候補B)は、同図(b)に示す計算式により求められる。
【0062】
また、「パターン3」は、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち再生位置Tsに近い方を復帰位置とするパターンである。したがって、LA<LBの場合の復帰位置は復帰位置候補Aとなり、LA>LBの場合の復帰位置は復帰位置候補Bとなる。
【0063】
また、「パターン4」は、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち、再生位置Tsが属する小節(周期)内に含まれる方を復帰位置とするパターンである。つまり、復帰位置候補Aおよび復帰位置候補Bのうち、条件式「Ls≦X<Ls+1」のXの条件を満たす方を復帰位置とする。したがって、
図7(a)の例では、復帰位置候補Bとなる。なお、条件式は、「Ls≦X<Ls+1」ではなく、「Ls<X≦Ls+1」としても良い。
【0064】
一方、
図8は、周期内位置Ubg<周期内位置Usの場合の説明図である。同図(a)は、この場合の復帰位置候補A,Bの配置イメージを示している。また、同図(b)は、各パターンが選択された場合の復帰位置を示している。なお、同図の例の場合、
図7の例と比較すると、再生位置Tsと復帰位置候補A間の長さLAと、再生位置Tsと復帰位置候補B間の長さLBの計算式が異なる。その他、各パターンが選択された場合の復帰位置については、
図8(b)に示した通りであるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
以上説明したとおり、第1実施形態によれば、マスター曲とスレーブ曲が同期再生されている状況において、スレーブ曲に対する特殊再生操作が行われた場合、その特殊再生の解除時に、スレーブ曲の通常再生復帰位置を、バックグラウンド処理にて通常再生されているスレーブ曲の小節内位置に合わせるため、結果的に、マスター曲とスレーブ曲のテンポの崩れを防止し、同期状態を維持することができる。これにより、DJ初心者であっても、特殊再生操作によってテンポを乱すことがないため、フロアの雰囲気を損ねる心配がなく、気軽に特殊再生をパフォーマンスに組み込むことができる。
【0066】
また、復帰位置を決定するためのパターンを、4つのパターンの中から選択可能であるため、ユーザーの好みやニーズに応じた高度なパフォーマンスが可能となる。また、「パターン3」を選択した場合は、周期内位置Usに最も近い位置から特殊再生解除後の再生を開始することができるため、ユーザーが意図した場所から、通常再生を再開することができる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、
図9ないし
図12を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。上記の第1実施形態では、特殊再生操作終了時におけるスレーブ曲の再生位置Tsを基準として復帰位置を決定したが、本実施形態では、ユーザーが指定した任意の位置Trを基準として復帰位置を決定する点で異なる。以下、第1実施形態と異なる点のみ説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0068】
本実施形態の機能構成は、
図2のスレーブデッキ20内に、上記の任意の位置Trを指定する復帰位置指定部を追加した構成となる(図示省略)。復帰位置指定部は、スレーブ曲の先頭からの再生位置(時間、データ、小節数、拍数など)として任意の位置Trを指定する。また、その指定は、
図3に示す符号41〜43(メニューボタン、ロータリーセレクターおよび液晶ディスプレイ)を用いて行う。
【0069】
また、本実施形態の再生位置判定部251は、バックグラウンド再生部により通常再生されたスレーブ曲の、特殊再生の解除時における再生位置Tbgを判定する。また、本実施形態の周期内位置算出部252は、指定された任意の位置Trの小節内の位置である周期内位置Urと、再生位置Tbgの小節内の位置である周期内位置Ubgと、を算出する。また、本実施形態の復帰位置候補特定部253は、各小節内に周期内位置Ubgが存在すると仮定した場合、任意の位置Trの直前に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補Aと、任意の位置Trの直後に存在する周期内位置Ubgである復帰位置候補Bと、を特定する。
【0070】
図9は、マスター曲とスレーブ曲の、本実施形態に係る同期再生のイメージ図である。同図において、符号60は、特殊再生が行われている期間を示している。また、任意の位置Trは、第8小節内に指定されているものとする。同図に示すように、例えばスレーブ側の第2小節内で特殊再生操作を開始し、第2小節の1拍目の位置で特殊再生操作を終了した場合であって、その操作終了時におけるマスター曲の再生位置が2.7拍目であった場合、スレーブ曲は、操作終了時の再生位置Tsが含まれる第2小節ではなく、任意の位置Trが含まれる第8小節の2.7拍目から再生を開始するように復帰処理を行う。これにより、ユーザーが指定した位置から通常再生を開始しつつも、マスター曲とスレーブ曲の各小節位置のずれを解消している。但し、同図は、復帰位置選択部240により、パターン2〜4のいずれかが選択された場合の例を示している(パターン1が選択された場合は、第7小節の2.7拍目が復帰位置となる)。
【0071】
次に、
図10のフローチャートを参照し、本実施形態に係る再生システムSYの再生処理について説明する。なお、S21〜S30は、
図6に示したフローチャートのS01〜S10と同様であるため、S31以降の復帰処理についてのみ説明する。本実施形態の復帰処理部250は、特殊再生が解除された後、指定された任意の位置Trを所定の記憶領域(例えば、メモリ23)から取得する(S31)。続いて、任意の位置Trの前後の小節位置Lr,Lr+1を算出する(S32,
図11,
図12参照)。これらS31,S32の工程により、再生位置Trの周期内位置Ur(小節内位置)を算出する(S33,
図11,
図12参照)。
【0072】
その後、S33〜S36にて、バックグラウンド再生部により通常再生されているスレーブ曲の再生位置Tbg、再生位置Tbgの前後の小節位置Lbg,Lbg+1、再生位置Tbgの周期内位置Ubgを算出し、S37にて、周期内位置Urおよび周期内位置Ubgに基づき、復帰位置候補A,Bを特定する。復帰位置候補Aは、各小節内にそれぞれ周期内位置Ubgがプロットされていると仮定した場合、任意の位置Trの直前に存在する周期内位置Ubgである。これに対し、復帰位置候補Bは、各小節内にそれぞれ周期内位置Ubgがプロットされていると仮定した場合、任意の位置Trの直後に存在する周期内位置Ubgである。このようにして、復帰位置候補A,Bを特定した後、ユーザーが選択したパターンに応じて復帰位置を決定し(S38)、その復帰位置に復帰する(S39)。これにより、ユーザーが所望する任意の位置Tr(その近傍)に復帰することができ、且つマスター曲とスレーブ曲の小節位置(周期タイミング)が一致した状態となる(S28)。
【0073】
図11および
図12は、本実施形態に係る復帰処理の説明図である。
図11は、周期内位置Ubg>周期内位置Urの場合を示し、
図12は、周期内位置Ubg<周期内位置Urの場合を示している。また、両図共に、(a)は、復帰位置候補A,Bの配置イメージを示し、(b)は、各パターンが選択された場合の復帰位置を示している。なお、これら
図11および
図12は、第1実施形態の
図7および
図8における、再生位置Ts、周期内位置Us、小節位置Ls,Ls+1を、それぞれ任意の位置Tr、周期内位置Ur、小節位置Lr,Lr+1に置き換えただけであるため、詳細な説明を省略する。
【0074】
以上説明したとおり、第2実施形態に係る再生システムSYによれば、復帰候補となる位置を任意に指定することができるため、ユーザーが意図して曲調を変えたり、テンポを維持したまま、違和感なく違う場面に移行したりすることができる。また、任意の位置Trと共に、復帰位置を決定するためのパターンを選択することができるため、DJ初心者および熟練者の両者にとって利便性の良い再生システムSYを提供することができる。
【0075】
なお、第2実施形態では、任意の位置Trを、スレーブ曲の先頭からの再生位置として指定したが、曲調変化位置(Aメロ開始位置、サビ開始位置など)や曲番(曲の1番の開始位置、曲の2番の開始位置など)として指定しても良い。
【0076】
以上、2つの実施形態を示したが、以下の変形例を適用可能である。例えば、上記の各実施形態では、マスターデッキ10がマスター再生部121として機能し、スレーブデッキ20がスレーブ再生部221として機能するものとしたが、必ずしも各デッキ10,20がいずれか一方のみとして機能する必要はない。例えば、マスターデッキ10とスレーブデッキ20との間で自動同期機能が機能している状況で、
図13に示すように、マスターデッキ10にてA曲の再生が開始された後(S51)、B曲の再生が開始された場合(S52)、マスターデッキ10がマスター再生部121として機能し、スレーブデッキ20がスレーブ再生部221として機能する。ところが、その後、マスターデッキ10にてC曲の再生が開始された場合(S53)、スレーブデッキ20がマスター再生部121として機能し、マスターデッキ10がスレーブ再生部221として機能する。つまり、点線枠E01内では、マスターデッキ10で再生されるA曲がマスター曲となるのに対し、点線枠E02内では、スレーブデッキ20で再生されるB曲がマスター曲となる。このように、先行して再生された曲を、マスター曲として扱うようにしても良い。
【0077】
また、上記の実施形態では、マスターデッキ10およびスレーブデッキ20の2台のデッキによって再生システムSYが構築される場合を例示したが、複数台のデッキによって再生システムSYを構築しても良い。この場合、再生システムSYに、複数台のマスターデッキ10が含まれていても良いし、複数台のスレーブデッキ20が含まれていても良い。また、必ずしも、それぞれが独立した機器である必要はなく、1台の機器(プレーヤー、コンピューターなど)上で、マスター再生部121とスレーブ再生部221とが実現されても良い。また、マスター再生部121とスレーブ再生部221のいずれか一方を、ソフトウェアプログラム(アプリケーション)で実現し、他方を機器によって実現したり、両方をソフトウェアプログラムで実現したりしても良い。
【0078】
また、上記の実施形態では、マスターデッキ10とスレーブデッキ20が、ケーブル31を介して接続されている場合を例示したが、ネットワークを介して接続される構成としても良い。この場合、ネットワークとしては、有線LAN、無線LAN、インターネット、電話回線などが考えられる。
【0079】
また、マスターデッキ10とスレーブデッキ20が遠隔地に設置されている場合など、ネットワーク通信に起因する通信遅延が生じる場合、スレーブ再生部221は、その通信遅延量を加味して(通信遅延を解消するように)、スレーブ曲の加減速処理を行うことが好ましい。この場合、エコーバックを利用して通信遅延量を計測したり、予め設定しておいた通信遅延量に基づいて加減速処理を行うなど、通信遅延量の計測方法および通信遅延量の加味方法は問わない。
【0080】
また、上記の実施形態では、曲の周期を「小節(拍子)」単位で区切った場合を例示したが、「拍」、「フレーズ」、「曲調」、「曲番」など、他の種類の構成単位によって区切っても良い。また、「小節」についても、上記の実施形態では、4拍子の場合を例示したが、3拍子など他の拍子でも構わない。なお、「曲調」とは、前奏、Aメロ、サビなどのメロディ要素を指す。また、曲の周期を「1小節」単位で区切るのではなく、「N小節」単位で区切ったり、「1/N小節」単位で区切るなど(但し、NはN≧2となる整数)、構成単位の長さも任意である。さらに、構成単位の種類や長さを、ユーザーが任意に設定可能としても良い。
【0081】
また、
図14に示すように、強拍とそれに続く弱拍とから成る楽曲の場合(黒丸が強拍、白丸が弱拍を示す)、すなわち「拍子」を有する楽曲の場合、拍を周期として復帰処理を行うと(マスター曲とスレーブ曲の周期タイミングを一致させると)、拍周期は揃うが、拍子周期が揃わなくなってしまう。したがって、このような楽曲について構成単位が選択される場合は、液晶ディスプレイ43上に構成単位として「小節(拍子)」を選択するように促す表示を行うことが好ましい。
【0082】
また、上記の実施形態では、音楽コンテンツを用いた場合について例示したが、映像コンテンツにも本実施形態を適用可能である。この場合、映像コンテンツは、何らかの要因により、周期性を有することが前提である。例えば、周期を「拍」の間隔とした場合、ビート情報に基づいて映像エフェクトが発生された映像コンテンツが考えられる。また、この場合の「映像エフェクト」としては、拡大/縮小、パズル、カラーリング、ぼかし、ストロボ、レンズ、ワイプ、反転、ネガ等、種々の映像効果が考えられる。その他、映像コンテンツの場合、チャプターやフレーム数によって周期を区切っても良い。また、コマーシャルなど、所定の時間長さを有する映像コンテンツを繰り返し再生する場合にも本実施形態を適用可能である。
【0083】
また、上記の映像エフェクトを実現する機器としては、VJ機器が知られている。VJ機器とは、ビジュアルジョッキーまたはビデオジョッキー(VJ)と称される操作者が映像パフォーマンスに用いる機器であり、クラブ等において、ビートの効いた音楽に合わせてモニターに映像を映し出すために用いられる。一言で表すとDJ機器の映像コンテンツ版である。このため、DJ機器と同様に、音楽コンテンツまたは他の映像コンテンツとのテンポのずれはフロアの雰囲気を大きく損ねてしまう。したがって、VJ機器に本実施形態を適用することで、映像コンテンツに対して特殊再生操作が行われた場合にも、マスターコンテンツ(音楽コンテンツ、映像コンテンツのいずれであっても良い)とのテンポのずれを防止することができ、ひいてはフロアのテンションを維持することができる。なお、DJ機器とVJ機器とを複合化したDVJ機器(音声コンテンツおよび映像コンテンツを扱う機器)にも、当然本実施形態を適用可能である。
【0084】
また、上記の実施形態は、マスター再生部121とスレーブ再生部221が存在し、2つのコンテンツが同期再生していることを前提としたが、必ずしも2つのコンテンツ再生部120,220を有する必要はなく、同期再生の必要もない。つまり、スレーブデッキ20側の機能のみで、本発明を実現することも可能である。例えば、ビート音が流れている状況で、コンテンツ再生部220により、当該ビート音に合わせて(同じBPMで)コンテンツの再生が行われている状況を想定する。この場合、コンテンツに対して特殊再生操作が行われると、ビート音のテンポ(小節位置や拍位置など)とコンテンツのテンポとがずれてしまう。このため、特殊再生操作が行われた場合、バックグラウンド再生部によりコンテンツの通常再生を行い、復帰処理部250により、特殊再生の解除時に、コンテンツの通常再生復帰位置をバックグラウンド再生部で通常再生されているコンテンツの周期タイミングと合致する位置に合わせることで、ビート音とのテンポのずれを解消することができる。このように、1のコンテンツが再生されている状況で特殊再生操作が行われた場合でも、確実にそのコンテンツのテンポを維持することができる。
【0085】
また、上記の実施形態では、スレーブ再生部221の裏側処理(通常再生を監視する方法)として、バックグラウンド再生処理を行う場合を例示したが、必ずしも再生を行う必要はなく、何らかの形式で、通常再生の進行をカウントできれば良い。
【0086】
また、上記の実施形態では、それぞれ特殊再生の解除時における再生位置Usを基準とした復帰位置、または指定した任意の位置Trを基準とした復帰位置から、再生を開始するものとしたが、通常再生時における再生位置そのものから再生を開始するようにしても良い。例えば、
図5に示した例の場合、スレーブ曲の通常再生復帰位置を、マスター曲の再生位置(第4小節の2.7拍目)に合せるようにしても良い。
【0087】
また、上記の実施形態に示した再生システムSYの各部、並びに各機能をプログラムとして提供することが可能である。また、そのプログラムを各種記録媒体(CD−ROM、フラッシュメモリ等)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピューターを、再生システムSYの各部として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれるものである。その他、上述した実施例によらず、再生システムSYのシステム構成や処理工程等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。