(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667006
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】手摺
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-166249(P2011-166249)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2013-28974(P2013-28974A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年7月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503355546
【氏名又は名称】快工房株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089336
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 佳直
(72)【発明者】
【氏名】時岡▲邦▼男
【審査官】
南澤 弘明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−027687(JP,A)
【文献】
特開2001−317174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置場所に所定間隔で支柱が立設され、前記支柱に設けられる手摺取付部により手摺本体を連結固定される手摺において、
前記手摺取付部は、前記支柱の支持部に固定され、前記手摺本体の端部に貫通して設けられた孔に一致するねじ孔を有するとともに、記手摺本体の外周面と同じ曲率に形成された樋状の受け部と、
前記受け部と同じ長さかつ前記手摺本体の外周面と同じ曲率に形成され、前記受け部のねじ孔に一致して雌ねじを有するボスが固着された樋状のカバーと、
弾性材料で円筒に成型されており、両端には前記受け部と前記カバーの両端縁部を外面に露出させないための鍔が形成され、該鍔間の内寸法が前記受け部と前記カバーの長さに等しくなっているとともに、前記手摺本体の端部の孔に一致して長孔が形成されたスリーブと、から成り、
前記手摺本体は、当該端部に嵌挿された前記スリーブの鍔の内側に前記受け部を位置させて載置するとともに、前記カバーは当該ボスを前記スリーブおよび手摺本体の上方の孔に通して前記スリーブの鍔の内側の外周に添わせ、一方ねじを前記受け部の下方から前記スリーブおよび手摺本体の下方の孔に通して前記カバーのボスの雌ねじに螺合し、締め付けて前記受け部と前記カバーにより前記手摺本体の端部を前記スリーブを介在させて挟持固定することを特徴とする手摺。
【請求項2】
前記スリーブが、受け部のねじ孔とカバーのボスを通る線を境にして一方の半分には当該スリーブと同心円かつ受け部とカバーの厚みに等しい半円形の鍔が形成され、他方の半分には前記鍔に連続してスリーブ中心の半楕円形の鍔が形成されており、前記手摺取付部を連結基点として非直線的に設置される二つの前記手摺本体が成す広がりの内側に半円形の鍔、外側に半楕円形の鍔を配し、前記手摺本体が前記手摺取付部に連結固定されていることを特徴とする請求項1に記載の手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園の散策路・遊歩道、広場、河川敷などの公共空間、あるいは屋外構造物に設置される手摺に関し、特に、支柱に手摺本体を固定する手摺取付部が高い衝撃強度、連結強度を持った手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から公共空間を安全に利用することを目的として、歩行者の歩行を補助するための手摺が必要に応じて設けられている。手摺は、連設される手摺本体が構造物の壁面や支柱の側面に固着された支持部に設けられる手摺取付部によって連結されているもの(特許文献1、特許文献4)、支柱の上端に設けられた手摺取付部によって連結されているもの(特許文献2、特許文献3)などが知られている。
【0003】
特許文献1には、手摺受け金具に載置された手摺本体の突き合わせ端部の内側に、雌ねじが形成された接続部材を挿入し、手摺受け金具の下方から接続部材の雌ねじに雄ねじを締め付け、連設される手摺本体の突き合わせ端部を固定するとともに、該突き合わせ端部にカバーを設ける手摺構造が開示されている。
【0004】
特許文献2には、挟持クランプの弾性筒部本体を弾性変形させて左右に僅かに開き、筒部本体に連設される手摺本体の端部を嵌挿したのち、挟持片をボルト及びナットにより強く締め付けて、弾性筒部本体の内径を小さくし、挟持片をブラケットに不動状態に挟持固定する手摺構造が開示されている。
【0005】
特許文献3には、開放端に外方に向かって拡開するテーパ部が形成された手摺固定体の嵌合穴内に手摺本体の端部を嵌合し、手摺本体をテーパ部の傾斜角度の範囲内で傾斜可能とし、手摺本体の端部の貫通孔に固定ねじを貫挿し、固定ねじの突出部に袋ナットを螺合することにより、手摺固定体に手摺本体を固定する手摺構造が開示されている。
【0006】
特許文献4には、取付基部にブラケット固定ねじで固定される手摺固定ブラケットの手摺本体受部に、連接するそれぞれの手摺本体の端部を、手摺本体固定ねじにより締結固定し、手摺本体の端部の上方よりカバーを嵌合し、カバー固定ねじによりそれぞれの手摺本体の端部に固定する手摺構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−306566号公報
【特許文献2】特開2002−322782号公報
【特許文献3】特開平10−159395号公報
【特許文献4】特開2001−214591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の手摺取付部は、手摺本体の外周面にカバーや挟持クランプなどの連結部材が直接接触する構造であるため、手摺取付部を握ると連結部材の両端縁が指や手のひらに当たり、違和感を持つことがあった。
また、手摺本体を非直線的に設置する場合、手摺本体の中心線が手摺取付部の中心線に対して斜めに連結されるので、手摺取付部との結合力が不十分となり易く、ボルトの締め付け具合によって衝撃や連結の強度低下の要因となる。
本発明は、連設される手摺本体を直線的あるいは非直線的に設置する際に、取付け作業性に優れ、かつ手摺本体への強い衝撃荷重に対して高い連結強度の手摺取付部を備えた手摺を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、設置場所に所定間隔で支柱が立設され、前記支柱に設けられる手摺取付部により手摺本体を連結固定される手摺において、
前記手摺取付部は、前記支柱の支持部に固定され、
前記手摺本体の端部に貫通して設けられた孔に一致するねじ孔を有する
とともに、記手摺本体の外周面と同じ曲率に形成された樋状の受け部と、
前記受け部と同じ長さかつ前記手摺本体の外周面と同じ曲率に形成され、前記受け部のねじ孔に一致して雌ねじを有するボスが固着された樋状のカバーと、
弾性材料で円筒に成型されており、両端には前記受け部と前記カバーの両端縁部を外面に露出させないための鍔が形成され、該鍔間の内寸法が前記受け部と前記カバーの長さに等しくなっているとともに、前記手摺本体の端部の孔に一致して長孔が形成されたスリーブと、から成り、
前記手摺本体
は、当該端部に嵌挿された前記スリーブの鍔の内側に前記受け部を位置させて載置するとともに、前記カバーは当該ボスを前記スリーブおよび手摺本体の上方の孔に通して前記スリーブの鍔の内側の外周に添わせ、一方ねじを前記受け部の下方から前記スリーブおよび手摺本体の下方の孔に通して前記カバーのボスの雌ねじに螺合し、締め付けて前記受け部と前記カバーにより前記手摺本体の端部を前記スリーブを介在させて挟持固定することを特徴とする。
本発明は、前記スリーブが、受け部のねじ孔とカバーのボスを通る線を境にして一方の半分には当該スリーブと同心円かつ受け部とカバーの厚みに等しい半円形の鍔が形成され、他方の半分には前記鍔に連続してスリーブ中心の半楕円形の鍔が形成されており、前記手摺取付部を連結基点として非直線的に設置される二つの前記手摺本体が成す広がりの内側に半円形の鍔、外側に半楕円形の鍔を配し、前記手摺本体が前記手摺取付部に連結固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受け部とカバーの両端面にスリーブの鍔が当接しているので、スリーブの弾性によって滑りが抑えられ、確実に握ることができ、安全・安心して歩行ができる。また、カバーの両端縁部がスリーブの鍔によって外面に露出していないので、握った状態で手を滑らせても怪我をすることがない。さらに、手摺本体に強い衝撃が加わった場合には、スリーブの弾性により手摺本体への曲げ応力を吸収するため、受け部およびカバーへのダメージを最小限に抑えることができ、手摺の機能を維持することができる。更に、カバーに雌ねじ付きボスが一体化され、手摺本体と受け部とカバーの取付けを1工程によって出来るので、作業性が向上されるとともに、カバーの雌ねじ付きボスとねじが手摺本体を貫通連結されるので、高い衝撃強度および連結強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の手摺の設置状態を示す正面図である。
【
図4A】
図4Aは、手摺取付部の部分断面図である。
【
図5A】
図5Aは、手摺取付部の部分断面図である。
【
図5B】
図5Bは、手摺取付部の構成部品の側面図である。
【
図7】
図7は、手摺取付部の他の実施形態を示す部分断面図である。
【
図8A】
図8Aは、スリーブの他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、手摺本体の端部が、
弾性材料で円筒に成型されたスリーブを嵌挿させて受け部に載置され、カバーのボスを上方からスリーブおよび手摺本体
の上方の孔を通して受け部とカバーにより手摺本体の端部を挟持し、
ねじを受け部の下方から
スリーブおよび手摺本体の下方の孔に通し、カバーのボスに螺合して連結すること
、およびスリーブの鍔が受け部とカバーの両端縁部を外面に露出させないことで実現した。
以下に、本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の手摺の設置状態を示す正面図、
図2は
図1のA―A矢視の側面図、
図3Aは手摺取付部の正面図、
図3Bは手摺取付部の側面図である。本実施例では、手摺本体を連結する手摺取付部が支柱の側部に設けられた手摺によって説明する。
【0014】
手摺1は、支柱2、手摺本体3、手摺取付部4から構成されている。支柱2は、金属製パイプで構成されており、設置場所に所定間隔をおいて基礎コンクリート5により立設され、所定の高さに1または複数の支持部6が溶接等により固着される。手摺本体3は、金属製パイプで構成されており、両端部には手摺取付部に固定するための長手方向に延びた長孔30(
図4A参照)が対向し、かつ上下方向に貫通して設けられている。支持部6には、手摺本体3の外周面と同じ曲率を有する樋状の受け部7のほぼ中央が固定される。カバー8は、受け部7と協働して手摺本体3の端部を挟持し、連結保持するもので、手摺本体3の外周面と同じ曲率の樋状に形成されている。スリーブ9は、手摺本体3の端部が嵌挿され、スリーブ外周に受け部7およびカバー8が配される。支柱2の上端は、キャップ10が取り付けられる。
【0015】
次に、手摺取付部を詳しく説明する。
図4Aは手摺取付部の部分断面図、
図4Bは
図4AのB−B断面図、
図5Aは手摺取付部を構成する部品の正面図、
図5Bは手摺取付部を構成する部品の側面図、
図6Aはスリーブの平面図、
図6Bは
図6AのC−C断面図である。
【0016】
受け部7は、下面の中央に取付け片71が溶接等により固着されており、長手方向には両端から内側の所定位置に二つのねじ孔70が形成されている。カバー8は、受け部7のねじ孔70に対向して雌ねじが設けられたボス80が内側に溶接等により固着されている。受け部7とカバー8の端縁のコーナー部分には、アール加工が施されており、歩行者が当該部分を握ったときエッジによる怪我を防止する。
【0017】
スリーブ9は、ゴムなどの弾性材料で円筒に成型されており、両端には受け部7とカバー8の厚みにほぼ等しい鍔91が形成され、この鍔91の間の内寸法が受け部7とカバー8の長さに等しくなっている。スリーブ9には、受け部7のねじ孔70とカバー8のボス80に一致して長孔90が形成されている。
【0018】
本実施例の手摺の組み立てについて説明する。
支柱2の支持部6には、受け部7の取付け片71を固定する。手摺本体3の両端部には、互いの孔位置を合わせるようにスリーブ9を嵌挿する。手摺本体3は、隣設する受け部7に載置し、同様に連設する手摺本体3の端部を上記スリーブ9の反対側から嵌挿し、互いの手摺本体3の端面を突き合わせる。カバー8のボス80をスリーブ9の貫通孔90
および手摺本体3の上方の孔30に通し、カバー8をスリーブ9の外周に添わせ、受け部7およびカバー8がスリーブ9の鍔90の内側に位置されていることを確認した後、
ねじ11を受け部7のねじ孔70
の下方から
スリーブ9の貫通孔90および手摺本体3の下方の孔30に通し、カバー8のボス80の雌ねじに螺合し、締め付けて受け部7とカバー8によりスリーブ9を介在させて手摺本体3の端部を挟持し、連結固定する。同様に、順次手摺本体3を連結する。
【0019】
本実施例の手摺の作用を説明する。
歩行者が手摺1を使用して歩行する際に、手摺取付部4を握るとカバー8の両端部分と手摺本体3との間にスリーブ9の鍔91があるので、スリーブ9の弾性によって滑りがなく、確実に握ることができ、安全・安心して歩行ができる。また、カバー8の両端縁部がスリーブ9の鍔91によって外面に露出していないので、握った状態で手を滑らせても怪我をすることがない。さらに、手摺本体3に大きな荷重、すなわち強い衝撃が加わった場合には、スリーブ9が無いと受け部7およびカバー8に曲げ応力が作用して当該部材を変形させたり、場合によっては手摺本体3が手摺取付部4から脱落する恐れもあるが、スリーブ9があるとスリーブ9の弾性により上記曲げ応力を吸収するとともに、カバー8の雌ねじ付きボス80とねじ11が手摺本体3を貫通連結され、耐衝撃性が高められているので、受け部7およびカバー8へのダメージを最小限に抑えることができ、手摺の機能を維持することができる。
【0020】
本発明の他の実施態様を説明する。
図7は、手摺取付部の他の実施形態を示す部分断面図、
図8Aはスリーブの他の実施形態を示す平面図、
図8Bは
図8AのD−D断面図である。本実施例は、手摺本体を手摺取付部において
図7に示すように連結する際に用いるスリーブに関する。
【0021】
連設される二つの手摺本体3,3が、手摺取付部4において、互いの中心線の向きが逆になって連結されて非直線的に設置される場合、手摺取付部を連結基点として、両手摺本体が成す広がりによって内側と外側が形成される。この様な設置仕様では、スリーブ9の鍔91が受け部7およびカバー8の厚みと同じであると、外側(
図7において上側)にスリーブ9の鍔91と受け部7およびカバー8の端縁部との間に段差が生じ、前記端縁部が外面に露出するので、手摺取付部4を握ったときに違和感を持たせることになる。上記段差を無くすため、段差が生じる範囲のスリーブ9の鍔91を段差相当分だけ大きく形成したものである。
【0022】
スリーブ9は、
図8Bに示すように対向する長孔90、すなわち受け部7のねじ孔11およびカバー8のボス80を通る線を境にして一方の半分にはスリーブ9と同心円かつ受け部7とカバー8の厚みに等しい半円形の鍔91が高さt1により形成され、他方の半分には前記鍔91に連続してスリーブ中心の半楕円形の鍔91が高さt1からt2に変化させて形成されている。ここで、t1<t2である。楕円形は、短径が半円形の鍔91の径に等しく、長径が上記段差相当分になるように設計されている。
【0023】
本実施例の手摺取付部の組み立てについて説明する。
手摺本体3の両端部には、互いの孔位置を合わせるようにスリーブ9を嵌挿する。このとき、非直線的に設置される二つの手摺本体が成す内側に半円形の鍔91、外側に半楕円形の鍔91となるようにする。手摺本体3は、隣設する受け部7に載置され、同様に連設する手摺本体3の端部を上記スリーブ9の反対側から嵌挿し、非直線的に両手摺本体3,3の端面を突き合わせる。カバー8のボス80をスリーブ9の貫通孔90に通し、カバー8をスリーブ9の外周に添わせ、受け部7およびカバー8がスリーブ9の鍔90の内側に位置されていることを確認した後、受け部7のねじ孔70に下方からねじ11を通し、カバー8のボス80の雌ねじに螺合し、締め付けて受け部7とカバー8によりスリーブ9を介在させて手摺本体3の端部を挟持し、連結固定する。
【符号の説明】
【0024】
1 手摺
2 支柱
3 手摺本体
4 手摺取付部
5 基礎コンクリート
6 支持部
7 受け部
8 カバー
9 スリーブ