特許第5667042号(P5667042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667042芳香族アミン誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667042
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】芳香族アミン誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/61 20060101AFI20150122BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150122BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C07C211/61CSP
   C09K11/06 690
   C09K11/06 625
   C09K11/06 620
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
【請求項の数】25
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2011-504756(P2011-504756)
(86)(22)【出願日】2010年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2010001956
(87)【国際公開番号】WO2010106806
(87)【国際公開日】20100923
【審査請求日】2013年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2009-68306(P2009-68306)
(32)【優先日】2009年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】藪ノ内 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 朋希
(72)【発明者】
【氏名】藤山 高広
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 由之
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/062636(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/148660(WO,A1)
【文献】 特開2004−091350(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/145016(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/069756(WO,A1)
【文献】 特開2006−151845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 211/61
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される芳香族アミン誘導体。
【化1】
[式中、
Arは、下記一般式(2)または(2−2)で表される有機基Aであり、
Arは、有機基Aまたは下記一般式(3)で表される有機基Bであり、
Arは、有機基A、有機基B、または下記一般式(3−2)で表される有機基Cである。
Ar〜Arのうち二つ以上が有機基Aである場合は、二つ以上の有機基A同士は同じであっても異なっていてもよく、
Ar〜Arのうち二つが有機基Bである場合は、二つの有機基B同士は同じであっても異なっていてもよい]
【化2】
[式中、
Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜14の縮合環基であって、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基からなる群から選ばれる基であり、
〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、または環形成炭素数6〜12のアリール基であり、
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または環形成炭素数6〜12のアリール基であり、
Lは、置換または無置換の環形成炭素数6〜10のアリーレン基であり、
a、b及びcはそれぞれ独立に、0〜2の整数であり、
また、a、bまたはcが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい]
【化3】
[式中、
Ar〜Arはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基であり、
Arは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基であり、
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または環形成炭素数6〜12のアリール基であり、
d、e及びfはそれぞれ独立に、0〜2の整数、ただしArが単結合である場合にfは1であり、
〜Rは、互いに結合して飽和環構造を形成してもよく、
d、eまたはfが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい]
【化4】
[式中、
Arは、置換または無置換の環形成炭素数10〜14のアリーレン基であり、
11は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または環形成炭素数6〜12のアリール基であり、
gは、0〜2の整数である]
【請求項2】
前記有機基Bが、下記一般式(4)で表される、請求項1に記載の芳香族アミン誘導体。
【化5】
[式中、
Arは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基であり、
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または環形成炭素数6〜12のアリール基であり、
d、e及びfはそれぞれ独立に、0〜2の整数、ただしArが単結合である場合にfは1であり、
〜Rは、互いに結合して飽和環構造を形成してもよく、
d、eまたはfが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい]
【請求項3】
前記有機基Bが、下記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される、請求項2に記載の芳香族アミン誘導体。
【化6】
[式中、
Arは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基であり、
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または環形成炭素数6〜12のアリール基であり、
及びR10はそれぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、または環形成炭素数6〜12のアリール基であり、
d、e及びfはそれぞれ独立に、0〜2の整数、ただしArが単結合である場合にfは1であり、
h及びiはそれぞれ独立に、0又は1であり、
〜Rは、互いに結合して飽和環構造を形成してもよく、
d、eまたはfが2である場合、及びhまたはiが1であるとともにfが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい]
【請求項4】
前記Ar及びArが有機基Aであり、かつ
前記Arが前記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである、請求項3に記載の芳香族アミン誘導体。
【請求項5】
前記Arが有機基Aであり、かつ
前記Ar及びArがそれぞれ独立に、前記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである、請求項3に記載の芳香族アミン誘導体。
【請求項6】
前記Ar〜Arがそれぞれ独立に有機基Aである、請求項1に記載の芳香族アミン誘導体。
【請求項7】
前記有機基Bが、下記一般式(8)〜(16)のいずれかで表される、請求項1に記載の芳香族アミン誘導体。
【化7】
【請求項8】
前記有機基Aが、下記一般式(17)〜(20)のいずれかで表される、請求項1に記載の芳香族アミン誘導体。
【化8】
【請求項9】
下記式のいずれかで表される芳香族アミン誘導体。
【化9】
【化10】
【請求項10】
有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である、請求項1または請求項9に記載の芳香族アミン誘導体。
【請求項11】
有機エレクトロルミネッセンス素子用の正孔輸送材料または正孔注入材料である、請求項1または請求項9に記載の芳香族アミン誘導体。
【請求項12】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、
該有機薄膜層の少なくとも1層が、請求項1または請求項9に記載の芳香族アミン誘導体を単独もしくは混合物の一成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記有機薄膜層が正孔輸送層を有し、前記芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有されている、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記有機薄膜層が複数の正孔輸送層を有し、前記発光層に直接接する層に前記芳香族アミン誘導体が含有されている、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記有機薄膜層が正孔注入層を有し、前記芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
前記有機薄膜層が複数の正孔注入層を有し、前記陽極に直接接する層に前記芳香族アミン誘導体が含有されている、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機薄膜層が正孔輸送層を有し、
請求項4又は5に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機薄膜層が正孔注入層を有し、
請求項4又は6に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有し、
請求項4に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層及び該正孔注入層にそれぞれ含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有し、
請求項4に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有され、
請求項6に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有し、
請求項5に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有され、
請求項4に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項22】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有し、
請求項5に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有され、
請求項6に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項23】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を兼ねた単層であり、
請求項4〜6のいずれか一項に記載の芳香族アミン誘導体が該有機薄膜層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項24】
前記発光層にスチリルアミン化合物及び/又はアリールアミン化合物が含有されている、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項25】
前記有機薄膜層が複数の正孔輸送層及び正孔注入層を有し、
前記正孔輸送層及び前記正孔注入層のうちの少なくとも1層がアクセプター材料を含有する層である、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族アミン誘導体及びそれらを用いた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子に関し、特に、特定の構造を有し、かつ非対称な芳香族アミン誘導体を正孔輸送材料に用いることにより、効率を向上させるとともに分子の結晶化を抑制し、有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する際の歩留りを向上させ、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命を改善する芳香族アミン誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、電界を印加することより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。イーストマン・コダック社のC.W.Tangらによる積層型素子による低電圧駆動有機エレクトロルミネッセンス素子の報告(非特許文献1を参照)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究が盛んに行われている。Tangらは、トリス(8-キノリノラト)アルミニウムを発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いている。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めること、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めること、発光層内で生成した励起子を閉じ込めること等が挙げられる。この例のように有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送発光層の2層型、又は正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等がよく知られている。こうした積層型構造素子では注入された正孔と電子の再結合効率を高めるため、素子構造や形成方法の工夫がなされている。
【0003】
通常、高温環境下で有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動させたり、保管すると、発光色の変化、発光効率の低下、駆動電圧の上昇、発光寿命の短時間化等の悪影響が生じる。これを防ぐためには正孔輸送材料のガラス転移温度(Tg)を高くする必要があった。そのために正孔輸送材料の分子内に多くの芳香族基を有する必要があり(例えば特許文献1〜2を参照:特許文献1の芳香族ジアミン誘導体、特許文献2の芳香族縮合環ジアミン誘導体)、通常8〜12個のベンゼン環を有する構造が好ましく用いられている。
【0004】
しかしながら、分子内に多くの芳香族基を有すると、これらの正孔輸送材料を用いて薄膜を形成して有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際に結晶化が起こりやすく、蒸着に用いるるつぼの出口を塞いだり、結晶化に起因する薄膜の欠陥が発生し、有機エレクトロルミネッセンス素子の歩留り低下を招くなどの問題が生じていた。また、分子内に多くの芳香族基を有する化合物は、一般的にガラス転移温度(Tg)は高いものの、昇華温度が高く、蒸着時の分解や蒸着が不均一に形成される等の現象が起こると考えられるために寿命が短いという問題があった。
【0005】
一方、アリール基を有するフルオレンを有するモノアミン誘導体が開示されている(特許文献3〜8を参照)。特許文献3は、感光体に関する特許文献である。特許文献4〜8は、有機ELに関する特許文献である、特に特許文献8にはフルオレン含有モノアミン化合物を有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入輸送層に用いた例が記載されているが、更なる性能の向上が望まれていた。
【0006】
以上のように、高効率、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子の報告はあるものの、より優れた性能を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,720,432号明細書
【特許文献2】米国特許第5,061,569号明細書
【特許文献3】特開平7−72639号公報
【特許文献4】特開2002−154993号公報
【特許文献5】特開2004−043349号公報
【特許文献6】特開2003−261471号公報
【特許文献7】特開2004−91350号公報
【特許文献8】特開平11−144875号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C.W. Tang, S.A. Vanslyke, アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters),51巻、913頁、1987年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、高温環境下にさらされても高い発光効率を維持し、駆動電圧が低く、かつ発光寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを実現する芳香族アミン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、特定構造の新規な芳香族アミン誘導体を提供する。さらに、陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層(特に正孔輸送層)に、この芳香族アミン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有させると、好適な有機エレクトロルミネッセンス素子が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明の第一は、以下に示す芳香族アミン誘導体に関する。
【0011】
<1>下記一般式(1)で表される芳香族アミン誘導体。
【化1】
【0012】
式(1)におけるArは、下記一般式(2)または(2−2)で表される有機基Aであり、Arは、有機基Aまたは下記一般式(3)で表される有機基Bであり、Arは、有機基A、有機基B、または下記一般式(3−2)で表される有機基Cである。Ar〜Arのうち二つ以上が有機基Aである場合は、二つ以上の有機基A同士は同じであっても異なっていてもよく;Ar〜Arのうち二つが有機基Bである場合は、二つの有機基B同士は同じであっても異なっていてもよい。
【0013】
【化2】
【0014】
式(2)および(2−2)におけるArは、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜14の縮合環基である。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;または環形成炭素数6〜12のアリール基である。a、b及びcはそれぞれ独立に、0〜2の整数である。R〜Rは、互いに結合して飽和環構造を形成してもよい。また、a、bまたはcが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して飽和環構造を形成してもよい。また、式(2−2)におけるLは、置換または無置換の環形成炭素数6〜10のアリーレン基である。
【0015】
【化3】
【0016】
式(3)におけるAr〜Arはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基である。Arは、単結合;置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基である。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;または環形成炭素数6〜12のアリール基である。d、e及びfはそれぞれ独立に、0〜2の整数である。R〜Rは、互いに結合して飽和環構造を形成してもよい。また、d、eまたはfが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい。
【0017】
【化4】
【0018】
式(3−2)におけるArは、置換または無置換の環形成炭素数10〜14のアリーレン基である。R11は、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基、または環形成炭素数6〜12のアリール基である。gは、0〜2の整数である。
【0019】
<2>前記有機基Bが、下記一般式(4)で表される<1>に記載の芳香族アミン誘導体。
【化5】
【0020】
式(4)におけるArは、単結合;または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基である。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;または環形成炭素数6〜12のアリール基である。d、e及びfはそれぞれ独立に、0〜2の整数である。R〜Rは、互いに結合して飽和環構造を形成してもよい。また、d、eまたはfが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい。
【0021】
<3>前記有機基Bが、下記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される<2>に記載の芳香族アミン誘導体。
【化6】
【0022】
式(7)におけるArは、単結合;または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基である。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;または環形成炭素数6〜12のアリール基である。R及びR10はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;または環形成炭素数6〜12のアリール基である。式(5)〜(7)におけるd、e及びfはそれぞれ独立に、0〜2の整数である。また、式(7)におけるh及びiはそれぞれ独立に、0又は1である。R〜Rは、互いに結合して飽和環構造を形成してもよい。また、式(5)〜(7)におけるd、eまたはfが2である場合、及び式(7)におけるhまたはiが1であるとともにfが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい。
【0023】
<4>前記Ar及びArが有機基Aであり、Arが前記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである、<3>に記載の芳香族アミン誘導体。
<5>前記Arが有機基Aであり、Ar及びArがそれぞれ独立に、前記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである<3>記載の芳香族アミン誘導体。
<6>前記Ar〜Arがそれぞれ独立に有機基Aである<1>に記載の芳香族アミン誘導体。
<7>有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である、<1>に記載の芳香族アミン誘導体。
<8>有機エレクトロルミネッセンス素子用の正孔輸送材料または正孔注入材料である、<1>に記載の芳香族アミン誘導体。
【0024】
本発明の第2は、以下に示す有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
<9>陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、<1>に記載の芳香族アミン誘導体を単独もしくは混合物の一成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
<10>前記有機薄膜層が正孔輸送層を有し、前記芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有されている<9>に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
<11>前記有機薄膜層が複数の正孔輸送層を有し、前記発光層に直接接する層に前記芳香族アミン誘導体が含有されている、<9>に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
<12>前記有機薄膜層が正孔注入層を有し、前記芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、<9>に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
<13>前記有機薄膜層が複数の正孔注入層を有し、前記陽極に直接接する層に前記芳香族アミン誘導体が含有されている、<9>に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
<14>陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層が正孔輸送層を有し、<4>又は<5>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
<15>陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層が正孔注入層を有し、<4>又は<6>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
<16>陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有し、<4>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層及び該正孔注入層にそれぞれ含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
<17>陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有し、<4>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有され、<6>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
<18>陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有し、<5>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有され、<4>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
<19>陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有し、<5>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔輸送層に含有され、<6>に記載の芳香族アミン誘導体が該正孔注入層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
<20>陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を兼ねた単層であり、<4>〜<6>のいずれかに記載の芳香族アミン誘導体が該有機薄膜層に含有されている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
<21>前記発光層にスチリルアミン化合物及び/又はアリールアミン化合物が含有されている、<9>に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
<22>前記有機薄膜層が複数の正孔輸送層及び正孔注入層を有し、前記正孔輸送層及び前記正孔注入層のうちの少なくとも1層がアクセプター材料を含有する層である、<9>に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る芳香族アミン誘導体を用いることで、高温環境下にさらされても高い発光効率を維持し、駆動電圧が低く、かつ発光寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
前記一般式(1)におけるArは、下記一般式(2)または(2−2)で表される有機基Aである。Arは、有機基Aまたは下記一般式(3)で表される有機基Bである。また、Arは、有機基A、有機基B、または下記一般式(3−2)で表される有機基Cである。なお、Ar〜Arのうちの少なくとも1つは有機基Aである。Ar〜Arのうち二つ以上が有機基Aである場合は、二つ以上の有機基A同士は同じであっても異なっていてもよい。同様に、Ar〜Arのうち二つが有機基Bである場合は、二つの有機基B同士は同じであっても異なっていてもよい。
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
一般式(2)におけるR〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基であるか、または環形成炭素数6〜12のアリール基である。
〜Rが示すアルキル基の具体例には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が含まれる。R〜Rが示すアリール基の具体例には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが含まれる。
【0030】
〜Rが互いに結合して飽和環構造を形成していてもよいが、飽和環構造は5員環または6員環の飽和環構造でありうる。
【0031】
一般式(2)におけるArは、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜14の縮合環基である。その具体例には、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、9-フェナントリル基などが含まれる。
【0032】
一般式(2)におけるa、bおよびcは、それぞれ0〜2の整数である。a、bまたはcが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して、不飽和環構造を形成してもよい。不飽和環は、5員環または6員環などでありうる。
【0033】
一般式(2−2)におけるLは、置換または無置換の環形成炭素数6〜10のアリーレン基である。Lが示すアリーレン基の例には、フェニレン基、ナフタレンジイル基などの2価の基が含まれる。
【0034】
一般式(3)におけるAr〜Arはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基である。Ar〜Arが示すアリーレン基の例には、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ビフェニレン基、フェナントレンジイル基などの2価の基が含まれる。
【0035】
一般式(3)におけるR〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;又は環形成炭素数6〜12のアリール基である。その具体例としては、前記R〜Rと同様のものが挙げられる。R〜Rが互いに結合して形成する飽和環構造としては、5員環又は6員環の飽和環構造が挙げられる。
【0036】
一般式(3)におけるd、eおよびfは、それぞれ0〜2の整数である。d、eまたはfが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい。不飽和環は、5員環または6員環などでありうる。
【0037】
一般式(3−2)におけるArは、置換または無置換の環形成炭素数10〜14のアリーレン基である。Arが示すアリーレン基の例には、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基などの2価の基が含まれる。
【0038】
一般式(3−2)におけるR11は、水素原子;炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;または環形成炭素数6〜12のアリール基である。R11が示すアルキル基及びアリール基の具体例としては、それぞれ前記R〜Rと同様のものが挙げられる。また、一般式(3−2)におけるgは、0〜2の整数である。
【0039】
一般式(3)で表される有機基Bは、好ましくは下記一般式(4)で表される。
【化10】
【0040】
式(4)におけるArは、単結合;置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜14のアリーレン基である。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;または環形成炭素数6〜12のアリール基である。d、e及びfはそれぞれ独立に、0〜2の整数である。R〜Rは、互いに結合して飽和環構造を形成してもよい。また、d、eまたはfが2である場合、R同士、R同士またはR同士は、互いに結合して不飽和環構造を形成してもよい。
【0041】
さらに、前記一般式(4)で表される有機基Bは、好ましくは下記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される。
【化11】
【0042】
一般式(7)におけるR及びR10はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基;または環形成炭素数6〜12のアリール基である。その具体例としては、前記R〜Rと同様のものが挙げられる。
【0043】
一般式(1)で表される本発明の芳香族アミン誘導体は、好ましくは、Ar及びArが有機基Aであり、かつArが前記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bであるか;Arが有機基Aであり、かつAr及びArがそれぞれ独立に、前記一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bであるか;また、Ar〜Arがそれぞれ独立に有機基Aである。
【0044】
一般式(1)で表される本発明の芳香族アミン誘導体は、例えば以下の反応により合成することができる。
【0045】
まず、中間体X(ハロゲン化合物)を合成する。中間体Xは、一般式(2)で表される有機基A又は一般式(3)で表される有機基Bの起源となる。例えば、1-ナフチルボロン酸と4-ヨード-1-ブロモ(9,9-ジメチル)フルオレンとを、触媒〔例えば、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)〕の存在下、溶媒〔例えば、トルエン〕と塩基〔例えば、炭酸ナトリウム〕を含む水溶液中で、室温〜150℃で反応させることにより、中間体Xを得る。反応はアルゴンのような不活性ガス雰囲気下で行なうのが好ましい。
【化12】
【0046】
別途、中間体Y(アミン化合物)を合成する。中間体Yは、一般式(3)で表される有機基B又は一般式(2)で表される有機基Aの起源となる。ハロゲン化物〔例えば、4−ブロモ−p−テルフェニル〕、アミノ基を生成させる化合物(置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基を生成させる化合物を含んでもよい)〔例えば、ベンズアミド〕を、触媒(ヨウ化銅のような金属ハロゲン化物およびN,N’−ジメチルエチレンジアミンのようなアミン〕、および塩基〔例えば、炭酸カリウム〕の存在下、溶媒〔例えば、キシレン〕中、50〜250℃で反応させる。その後、塩基〔例えば、水酸化カリウム〕と水の存在下、溶媒〔例えば、キシレン〕中、50〜250℃で反応させることにより、中間体Yを得る。反応はアルゴンのような不活性ガス雰囲気下で行なうのが好ましい。
【化13】
【0047】
次に、中間体Xと中間体Yを、触媒〔例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)〕および塩基〔例えば、t−ブトキシナトリウム〕の存在下、溶媒〔例えば、脱水トルエン〕中、0〜150℃で反応させることにより、本発明の芳香族アミン誘導体を合成することができる。反応はアルゴンのような不活性ガス雰囲気下で行なうのが好ましい。
【0048】
反応終了後、室温まで冷却し、水を加えて反応生成物を濾過し、濾液をトルエンなどの溶媒で抽出し、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させる。これを減圧下で脱溶媒して濃縮する。得られた粗生成物をカラム精製し、トルエン等の溶媒で再結晶し、それを濾別して乾燥することにより、精製された本発明の芳香族アミン誘導体が得られる。
【0049】
有機基Aのハロゲン化物と有機基Bのハロゲン化物は、任意の中間体Yに導入することが可能である。また、アリール基は1つもしくは2つ導入することが可能であり、さらに任意の組み合わせで導入することが可能である。その導入の結果得られたアミン化合物(中間体Y)と、任意のハロゲン化物(中間体X)と、前述の手法と同様に反応させることで、目的物を得ることができる。これらの反応順序や組み合わせ方は、反応性や精製の容易さ等を考慮して行うことができる。
【0050】
以下に一般式(1)によって表される本発明の芳香族アミン誘導体の代表例を例示するが、これらの代表例に限定されるものではない。
【0051】
【化14】
【0052】
【化15】
【0053】
【化16】
【0054】
【化17】
【0055】
【化18】
【0056】
【化19】
【0057】
【化20】
【0058】
【化21】
【0059】
【化22】
【0060】
【化23】
【0061】
本発明の前記一般式(1)で表される芳香族アミン誘導体は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として好ましく用いられる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は陰極と陽極間に発光層を含む一層以上の有機薄膜層を有し、該有機薄膜層の少なくとも一層が、前記いずれかの芳香族アミン誘導体を含有する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、好ましくは前記正孔注入層又は正孔輸送層に、前記一般式(1)で表される芳香族アミン誘導体が含有される。
【0062】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の代表的な素子構成として、以下の構成を挙げることができる。これらの中で、通常(8)の構成が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(13)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
【0063】
<透光性基板>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、透光性の基板上に上記各種の層構成を有する複数の層を積層して作製される。ここでいう透光性基板は有機エレクトロルミネッセンス素子を支持する基板であり、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルホン等を挙げることができる。
【0064】
<陽極>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きい仕事関数を有するものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
【0065】
<陰極>
陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さい仕事関数を有するものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム、フッ化リチウム等及びそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陽極及び陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていてもよい。
【0066】
陰極は上記の導電性物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
【0067】
発光層からの発光を、陰極を通して取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0068】
<絶縁層>
有機エレクトロルミネッセンス素子は、超薄膜に電界を印可するためにリークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層を挿入することが好ましい。絶縁層に用いられる材料としては、例えば酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられ、これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0069】
<発光層>
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層は、以下(1)〜(3)の機能をあわせもつ。(1)注入機能:電界印加時に陽極又は正孔注入層から正孔を注入されることができ、陰極又は電子注入層から電子を注入されることができる機能(2)輸送機能:注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能(3)発光機能:電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能
【0070】
発光層は、正孔の注入されやすさと、電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよい。いずれにしても、どちらか一方の電荷を移動することができることが好ましい。
【0071】
前記複数の層には、必要に応じて、本発明の芳香族アミン誘導体に加えてさらなる公知の発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を使用することもできる。有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記有機薄膜層を複数層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。必要があれば、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を組み合わせて使用することができる。また、ドーピング材料により、発光輝度や発光効率の向上、赤色や青色の発光を得ることもできる。
【0072】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層には、発光層のドーピング材料としてスチリルアミン化合物およびアリールアミン化合物の一方または両方が含まれていてもよい。上記ドーピング材料用いて発光層を形成することにより、発光効率の高い、色純度に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することが可能になる。
【0073】
本発明の芳香族アミン誘導体と共に発光層に使用できるホスト材料又はドーピング材料としては、例えば、ナフタレン、フェナントレン、ルブレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル) アントラセン、1,4-ビス(9'-エチニルアントラセニル)ベンゼン等の縮合多環芳香族化合物及びそれらの誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム、ビス-(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノリナート)アルミニウム等の有機金属錯体、トリアリールアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、スチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、オキサゾン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ピラジン誘導体、ケイ皮酸エステル誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
また、発光層、正孔注入層および電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されてもよい。その際には、正孔注入層の場合、電極から正孔を注入する層を「正孔注入層」、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を「正孔輸送層」と称する。同様に、電子注入層の場合、電極から電子を注入する層を「電子注入層」、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を「電子輸送層」と称する。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機層又は金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
【0075】
<正孔注入層および正孔輸送層>
正孔注入層および正孔輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.6eV以下と小さい。このような正孔注入層や正孔輸送層を形成する、または含有される正孔注入材料や正孔輸送材料としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10〜10V/cmの電界印加時に、少なくとも10−4cm/Vsとなる材料であれば好ましい。
【0076】
本発明の芳香族アミン誘導体は、特に正孔注入層及び/又は正孔輸送層として好ましく用いられるが、正孔輸送層のみに用いてもよいし、正孔注入層のみに用いてもよい。また、本発明の芳香族アミン誘導体単独で正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成してもよく、他の材料と混合して用いてもよい。
【0077】
本発明の芳香族アミン誘導体を正孔輸送層と正孔注入層の双方に用いる場合、正孔輸送層に用いる芳香族アミン誘導体と正孔注入層に用いる本発明の芳香族アミン誘導体は同じであっても異なっていてもよい。
【0078】
正孔輸送層に用いる芳香族アミン誘導体としては、前記一般式(1)のArが有機基Aであり、かつAr及びArがそれぞれ独立に、前記一般式(5)または(6)で表される有機基Bである芳香族アミン誘導体が、そのイオン化エネルギー値が、前述の発光層に用いられるホスト材料のイオン化エネルギー値に近く、正孔輸送層から発光層への正孔注入が促進されるために、より好ましい。
【0079】
正孔注入層に用いる芳香族アミン誘導体としては、前記一般式(1)のAr〜Arがそれぞれ独立に有機基Aである芳香族アミン誘導体が、そのイオン化エネルギー値が、陽極のイオン化エネルギー値に近く、陽極から正孔注入層への正孔注入が促進されるために、より好ましい。
【0080】
前記一般式(1)のAr及びArがそれぞれ独立に、有機基Aであり、かつArが、前記一般式(5)または(6)で表される有機基Bである芳香族アミン誘導体は、そのイオン化エネルギー値が、陽極及びホスト材料それぞれのイオン化エネルギー値の中間的な値を取るために、正孔注入層と正孔輸送層のいずれに用いても好ましい。
【0081】
なお、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、その有機薄膜層が正孔輸送層及び正孔注入層を有するものであり、一般式(1)中のArとArがいずれも有機基Aであるとともに、Arが一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである芳香族アミン誘導体が、正孔輸送層と正孔注入層のそれぞれに含有されていることが、正孔注入層と正孔輸送層のイオン化エネルギー値が近く、正孔注入障壁が低減されるために好ましい。
【0082】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、一般式(1)中のArとArがいずれも有機基Aであるとともに、Arが一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである芳香族アミン誘導体が正孔輸送層に含有されており、かつ、Ar〜Arがそれぞれ独立に有機基Aである芳香族アミン誘導体が正孔注入層に含有されていることが、正孔注入層と正孔輸送層が積層構造を形成することにより、正孔が陽極から発光層へ段階的に注入され、正孔注入障壁が低減するために好ましい。
【0083】
更に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、一般式(1)中のArが有機基Aであるとともに、ArとArがいずれも一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである芳香族アミン誘導体が正孔輸送層に含有されており、かつ、ArとArがいずれも有機基Aであるとともに、Arが一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである芳香族アミン誘導体が正孔注入層に含有されていることが、正孔注入層と正孔輸送層が積層構造を形成することにより、正孔が陽極から発光層へ段階的に注入され、正孔注入障壁が低減するために好ましい。
【0084】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、一般式(1)中のArが有機基Aであるとともに、ArとArがいずれも一般式(5)〜(7)のいずれかで表される有機基Bである芳香族アミン誘導体が正孔輸送層に含有されており、かつ、Ar〜Arがそれぞれ独立に有機基Aである芳香族アミン誘導体が正孔注入層に含有されていることが、正孔注入層と正孔輸送層が積層構造を形成することにより、正孔が陽極から発光層へ段階的に注入され、正孔注入障壁が低減するために好ましい。
【0085】
本発明の芳香族アミン誘導体と組み合わせて、または混合して正孔注入・輸送層を形成する他の材料としては、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はない。従来、光伝導材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入・輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。本明細書において、正孔輸送能を有し、正孔輸送帯域に用いることが可能な材料を「正孔輸送材料」と称する。また、本明細書において、正孔注入能を有し、正孔注入帯域に用いることが可能な材料を「正孔注入材料」と称する。
【0086】
本発明の芳香族アミン誘導体以外の、正孔注入層及び正孔輸送層材料の具体例としては、例えば、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができ;好ましくはポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物であり;特に好ましくは芳香族第三級アミン化合物である。
【0087】
また、本発明の芳香族アミン誘導体以外の、正孔注入層及び正孔輸送層材料は、例えば、4,4'-ビス(N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ)ビフェニル(以下NPDと略記する)、またはトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4',4"-トリス(N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(以下MTDATAと略記する)などをの、2個の縮合芳香族環を分子内に有する化合物でありうる。
【0088】
さらに、本発明の芳香族アミン誘導体以外の、正孔注入層及び正孔輸送層材料は、下記式で表される含窒素複素環誘導体であってもよい。
【化24】
【0089】
上記式中、R121〜R126は、それぞれ置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換の複素環基のいずれかを示す。R121〜R126は、互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R121とR122、R123とR124、R125とR126、R121とR126、R122とR123、R124とR125が結合して縮合環を形成していてもよい。
【0090】
さらに、下記式の化合物も用いることができる。
【化25】
【0091】
上記式中、R131〜R136は任意の置換基であり、好ましくはシアノ基、ニトロ基、スルホニル基、カルボニル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン等の電子吸引基である。
【0092】
これらの材料に代表されるように、アクセプター材料を正孔注入材料又は正孔輸送材料として用いてもよい。これらの具体例は上述した通りである。
【0093】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において使用できる正孔注入材料の中で、さらに効果的な正孔注入材料は、芳香族三級アミン誘導体及びフタロシアニン誘導体である。
【0094】
芳香族三級アミン誘導体としては、例えば、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N'-ジフェニル-N,N'-(3-メチルフェニル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン、N,N,N',N'-(4-メチルフェニル)-1,1'-フェニル-4,4'-ジアミン、N,N,N',N'-(4-メチルフェニル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジナフチル-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン、N,N'-(メチルフェニル)-N,N'-(4-n-ブチルフェニル)-フェナントレン-9,10-ジアミン、N,N-ビス(4-ジ-4-トリルアミノフェニル)-4-フェニル-シクロヘキサン等、又はこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
フタロシアニン(Pc)誘導体としては、例えば、HPc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、ClSiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体及びナフタロシアニン誘導体があるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層と陽極との間に、これらの芳香族三級アミン誘導体及び/又はフタロシアニン誘導体を含有する層、例えば、前記正孔輸送層又は正孔注入層を形成してなると好ましい。
【0096】
<電子注入・輸送層>
次に、電子注入層・輸送層について述べる。電子注入層・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい。この電子注入層の中で特に陰極との付着がよい材料からなる層を、付着改善層として設けてもよい。
【0097】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は発光した光が電極(この場合は陰極)により反射するため、直接陽極から取り出される発光と、電極による反射を経由して取り出される発光とが干渉することが知られている。この干渉効果を効率的に利用するため、電子輸送層は数nm〜数μmの膜厚で適宜選ばれるが、特に膜厚が厚いとき、電圧上昇を避けるために、10〜10V/cmの電界印加時に電子輸送層の電子移動度が10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
【0098】
電子注入層に用いられる材料としては、具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより増感させることもできる。
【0099】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、さらに効果的な電子注入材料は、金属錯体化合物及び含窒素五員環誘導体である。金属錯体化合物としては、例えば、8-ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナート)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(2-ナフトラート)ガリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
電子注入材料としての含窒素五員誘導体としては、例えば、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5-ビス(1-フェニル)-1,3,4-オキサゾール、ジメチルPOPOP、2,5-ビス(1-フェニル)-1,3,4-チアゾール、2,5-ビス(1-フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-(4'-tert-ブチルフェニル)-5-(4”-ビフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,4-ビス[2-(5-フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4-ビス[2-(5-フェニルオキサジアゾリル)-4-tert-ブチルベンゼン]、2-(4'-tert-ブチルフェニル)-5-(4”-ビフェニル)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-チアジアゾール、1,4-ビス[2-(5-フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2-(4'-tert-ブチルフェニル)-5-(4”-ビフェニル)-1,3,4-トリアゾール、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-トリアゾール、1,4-ビス[2-(5-フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光層中に、前記一般式(1)で表される芳香族アミン誘導体の他に、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料及び電子注入材料の少なくとも1種が同一層に含有されてもよい。また、本発明により得られた有機エレクトロルミネッセンス素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護することも可能である。
【0102】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を効率良く発光させるためには、少なくとも一方の面は素子の発光波長領域において充分に透明にすることが好ましい。また、基板も透明であることが望ましい。透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが好ましい。基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものであれば限定されるものではないが、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムがある。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0103】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することができる。膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nm〜10μmの範囲が適しているが、10nm〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0104】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解又は分散させて薄膜を形成するが、その溶媒はいずれであってもよい。このような湿式成膜法に適した溶液として、有機EL材料として本発明の芳香族アミン誘導体と溶媒とを含有する有機EL材料含有溶液を用いることができる。また、いずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。使用可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリサルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を挙げられる。
【0105】
<有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法>
以上例示した各種材料及び層形成方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入・輸送層、及び必要に応じて電子注入・輸送層を形成し、さらに陰極を形成することにより有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することができる。また陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することもできる。
【0106】
以下、透光性基板上に陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製例を記載する。まず、適当な透光性基板上に陽極材料からなる薄膜を1μm以下(好ましくは10〜200nmの範囲)の膜厚になるように蒸着やスパッタリング等の方法により形成して陽極を作製する。次に、この陽極上に正孔注入層を設ける。正孔注入層の形成は、前述したように真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物(正孔注入層の材料)、目的とする正孔注入層の結晶構造や再結合構造等により異なるが、一般に蒸着源温度50〜450℃、真空度10−7〜10−3Torr、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選択することが好ましい。
【0107】
なお、発光層、電子注入層、及び陰極は、任意の方法で形成すればよく、特に限定されない。形成方法の例には、真空蒸着法、イオン化蒸着法、溶液塗布法(例えば、スピンコート法、キャスト法、デイップコート法、バーコート法、ロールコート法、ラングミュア・ブロジェット法、インクジェット法)などが含まれる。
【0108】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、壁掛けテレビのフラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯等に利用できる。また、本発明の材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子だけでなく、電子写真感光体、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の分野においても使用できる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を合成例及び実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
合成例1〜14で製造する中間体1〜14の構造式は下記の通りである。
【0110】
【化26】
【0111】
合成例1(中間体1の合成)
アルゴン気流下、1000mLの三つ口フラスコに4-ブロモビフェニルを47g、ヨウ素を23g、過ヨウ素酸2水和物を9.4g、水を42mL、酢酸を360mL、硫酸を11mL入れ、65℃で30分撹拌後、90℃で6時間反応した。反応物を氷水に注入し、ろ過した。水で洗浄後、メタノールで洗浄することにより67gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、C12BrI=359に対し、m/z=358と360の主ピークが得られ、中間体1と同定した。
【0112】
合成例2(中間体2の合成)
合成例1において4-ブロモビフェニルの代わりに2-ブロモ-9,9-ジメチルフルオレンを用いる以外は同様に反応を行ったところ、61gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、C1512BrI=399に対し、m/z=398と400の主ピークが得られ、中間体2と同定した。
【0113】
合成例3(中間体3の合成)
m-ターフェニル250g(アルドリッチ社製)と、ヨウ化水素酸・二水和物50gと、ヨウ素75gと、酢酸750mlと、濃硫酸25mlを三口フラスコにいれ、70℃で3時間反応した。反応後、メタノール5Lに注入し、その後1時間撹拌した。これを濾取し、得られた結晶をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、アセトニトリルで再結晶し、白色粉末を64g得た。FD−MSの分析により、中間体3と同定した。
【0114】
合成例4(中間体4の合成)
アルゴン雰囲気下、中間体2を39.9g(100mmol)、フェニルボロン酸12.4g(105mmol)、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)2.31g(2.00mmol)にトルエン300mL、2M炭酸ナトリウム水溶液150mLを加え、10時間加熱還流した。
反応終了後、直ちにろ過した後、水層を除去した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、白色結晶28.3gを得た(収率81%)。FD−MSの分析により、中間体4と同定した。
【0115】
合成例5(中間体5の合成)
合成例4において、フェニルボロン酸の代わりに2-ナフチルボロン酸を用いた以外は同様に反応を行ったところ、30.2gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体5と同定した。
【0116】
合成例6(中間体6の合成)
合成例4において、フェニルボロン酸の代わりに1-ナフチルボロン酸を用いた以外は同様に反応を行ったところ、32.1gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体6と同定した。
【0117】
合成例7(中間体7の合成)
合成例4において、フェニルボロン酸の代わりに9-フェナントレニルボロン酸を用いた以外は同様に反応を行ったところ、34.7gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体7と同定した。
【0118】
合成例8(中間体8の合成)
アルゴン気流下、4-ブロモ-p-ターフェニルを30.7g、4-アミノ-p-ターフェニルを24.3g、t-ブトキシナトリウム13.0g(広島和光社製)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)460mg (アルドリッチ社製)、トリ-t-ブチルホスフィン210mg及び脱水トルエン500mL を入れ、80℃にて8時間反応した。冷却後、水2.5リットルを加え、混合物をセライト濾過し、濾液をトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。これを減圧下で濃縮し、得られた粗生成物をカラム精製し、トルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥したところ、28.7gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体8と同定した。
【0119】
合成例9(中間体9の合成)
合成例8において、4−ブロモ−p−ターフェニルの代わりに中間体3を用いた以外は同様に反応を行ったところ、30.7gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体9と同定した。
【0120】
合成例10(中間体10の合成)
合成例8において、4-ブロモ-p-ターフェニルの代わりに4-ブロモビフェニルを用いた以外は同様に反応を行ったところ、25.3gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体10と同定した。
【0121】
合成例11(中間体11の合成)
合成例8において、4-ブロモ-p-ターフェニルの代わりに1-ブロモナフタレンを用いた以外は同様に反応を行ったところ、23.5gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体11と同定した。
【0122】
合成例12(中間体12の合成)
アルゴン気流下、1000mlの三つ口フラスコにベンズアミド(東京化成社製)22.8g、中間体6を83.8g、ヨウ化銅(I)(和光純薬社製)6.6g、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(アルドリッチ社製)6.1g、炭酸カリウム(和光純薬社製)52.8g及びキシレン480ml を入れ、130℃にて36時間反応した。冷却後、ろ過しトルエンで洗浄した。さらに水とメタノールで洗浄した後、乾燥したところ、92gの淡黄色粉末を得た。
【0123】
三つ口フラスコに上記粉末25.0g、水酸化カリウム(和光純薬社製)24.8g、イオン交換水21ml、キシレン(和光純薬社製)28ml、EtOH(和光純薬社製)15mlを入れ、36時間還流した。反応終了後、トルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。これを減圧下で濃縮し、得られた粗生成物をカラム精製した。トルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥したところ、11.2gの白色粉末として中間体12を得た。
【0124】
合成例13(中間体13の合成)
合成例12において、中間体6の代わりに中間体5を用いた以外は同様に反応を行ったところ、10.8gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体13と同定した。
【0125】
合成例14(中間体14の合成)
合成例12において、中間体6の代わりに中間体4を用いた以外は同様に反応を行ったところ、9.2gの白色粉末を得た。FD−MSの分析により、中間体14と同定した。
【0126】
合成実施例1〜12で製造する本発明の芳香族アミン誘導体である化合物HT1〜HT12の構造式は下記の通りである。
【0127】
【化27】
【0128】
【化28】
【0129】
合成実施例1(化合物HT1の合成)
アルゴン気流下、中間体5を8.0g、中間体8を9.4g、t−ブトキシナトリウム2.6g(広島和光社製)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)92mg(アルドリッチ社製)、トリ−t−ブチルホスフィン42mg及び脱水トルエン100mLを入れ、80℃にて8時間反応した。冷却後、水500mLを加え、混合物をセライト濾過し、濾液をトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。これを減圧下で濃縮し、得られた粗生成物をカラム精製し、トルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥したところ、8.6gの淡黄色粉末を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、化合物HT1と同定した。
【0130】
合成実施例2(化合物HT2の合成)
合成実施例1において、中間体5の代わりに中間体6を用いた以外は同様に反応を行ったところ、9.1gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT2と同定した。
【0131】
合成実施例3(化合物HT3の合成)
合成実施例1において、中間体5の代わりに中間体7を用いた以外は同様に反応を行ったところ、8.2gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT3と同定した。
【0132】
合成実施例4(化合物HT4の合成)
合成実施例1において、中間体8の代わりに中間体14を用いた以外は同様に反応を行ったところ、10.1gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT4と同定した。
【0133】
合成実施例5(化合物HT5の合成)
合成実施例1において、中間体8の代わりに中間体9を用いた以外は同様に反応を行ったところ、9.8gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT5と同定した。
【0134】
合成実施例6(化合物HT6の合成)
合成実施例1において、中間体5の代わりに4-ブロモ-p-ターフェニルを、中間体8の代わりに中間体13を用いた以外は同様に反応を行ったところ、10.4gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT6と同定した。
【0135】
合成実施例7(化合物HT7の合成)
合成実施例1において、中間体8の代わりに中間体10を用いた以外は同様に反応を行ったところ、7.6gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT7と同定した。
【0136】
合成実施例8(化合物HT8の合成)
合成実施例1において、中間体8の代わりに中間体13を用いた以外は同様に反応を行ったところ、12.1gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT8と同定した。
【0137】
合成実施例9(化合物HT9の合成)
合成実施例1において、中間体8の代わりに中間体11を用いた以外は同様に反応を行ったところ、7.4gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT9と同定した。
【0138】
合成実施例10(化合物HT10の合成)
合成実施例1において、中間体5の代わりに1-ブロモナフタレンを、中間体8の代わりに中間体13を用いた以外は同様に反応を行ったところ、9.4gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT10と同定した。
【0139】
合成実施例11(化合物HT11の合成)
合成実施例1において、中間体8の代わりにビス(4-ビフェニリル)アミンを用いた以外は同様に反応を行ったところ、8.7gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT11と同定した。
【0140】
合成実施例12(化合物HT12の合成)
合成実施例11において、中間体5の代わりに2-ブロモ-9,9-ジメチル-7-[4(2−ナフチル)フェニル]フルオレンを用いた以外は同様に反応を行ったところ、7.5gの淡黄色粉末を得た。FD−MSの分析により、化合物HT12と同定した。
【0141】
実施例1−1(有機エレクトロルミネッセンス素子の製造)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)を、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
【0142】
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着した。まず、透明電極ラインが形成されている側の面上に、前記透明電極を覆うようにして膜厚80nmの上記化合物HT1膜を成膜した。HT1膜は、正孔注入層および正孔輸送層として機能する。
【0143】
さらに膜厚40nmの下記化合物EM1を蒸着し成膜した。同時に発光分子として、下記のスチリル基を有するアミン化合物D1を、EM1とD1の重量比が40:2になるように蒸着した。この膜は発光層として機能する。
【0144】
発光層として機能する膜上に、膜厚10nmの下記Alq膜を成膜した。この膜は電子注入層として機能する。この後、還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。
【0145】
また、得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察した。発光効率はミノルタ製CS1000を用いて輝度を測定し、10mA/cmにおける発光効率を算出した。さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0146】
【化29】
【0147】
実施例1−2〜1−12(有機エレクトロルミネッセンス素子の製造)
実施例1−1において、正孔輸送材料として化合物HT1の代わりに表1記載の化合物を用いた以外は同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子について、105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0148】
比較例1−1〜1−3
実施例1−1において、正孔輸送材料として、化合物HT1の代わりに比較化合物1〜3を用いた以外は同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子について、105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0149】
【化30】
【0150】
実施例1−13(有機エレクトロルミネッセンス素子の製造)
実施例1−1において、スチリル基を有するアミン化合物D1の代わりに下記アリールアミン化合物D2を用いた以外は同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。Meはメチル基である。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子について、105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0151】
【化31】
【0152】
比較例1−4
実施例1−13において、正孔輸送材料として化合物HT1の代わりに上記比較化合物1を用いた以外は同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子について、105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
表1に示されるように、本発明の芳香族アミン誘導体を正孔輸送材料とする実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子は、高温環境下にさらされても高い発光効率を維持し、かつ発光寿命が長い。
【0155】
実施例2−1(有機エレクトロルミネッセンス素子の製造)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)を、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
【0156】
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着した。まず、透明電極ラインが形成されている側の面上に、前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmの上記化合物HT4膜を成膜した。HT4膜は、正孔注入層として機能する。
【0157】
このHT4膜上に下記化合物TM1を蒸着し、膜厚20nmの正孔輸送層を成膜した。さらに上記化合物EM1を蒸着し、膜厚40nmの発光層を成膜した。同時に発光分子として、上記のスチリル基を有するアミン化合物D1を、EM1とD1の重量比(EM1:D1)が40:2になるように蒸着した。この膜は発光層として機能する。
【0158】
【化32】
【0159】
発光層として機能する膜上に、上記有機金属錯体(Alq)を膜厚10nmとなるよう成膜した。この膜は電子注入層として機能する。この後、還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。
【0160】
また、得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察した。発光効率はミノルタ製CS1000を用いて輝度を測定し、10mA/cmにおける発光効率を算出した。さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表2に示す。
【0161】
実施例2−2及び2−3(有機エレクトロルミネッセンス素子の製造)
実施例2−1において、正孔注入材料として化合物HT4の代わりに表2記載の化合物を用いた以外は同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子について、105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表2に示す。
【0162】
実施例2−4(有機エレクトロルミネッセンス素子の製造)
実施例2−1において、正孔輸送材料として化合物TM1の代わりにHT1を用いた以外は同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子について、105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表2に示す。
【0163】
実施例2−5〜2−21(有機エレクトロルミネッセンス素子の製造)
実施例2−1において、正孔注入材料、正孔輸送材料として表2記載の化合物を用いた以外は同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子について、105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表2に示す。
【0164】
比較例2−1〜2−3
実施例2−1において、正孔注入材料として、化合物HT4の代わりに比較化合物1〜3を用いた以外は同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。得られた有機エレクトロルミネッセンス素子について、105℃で8h保存した後、発光効率を測定し、発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表2に示す。
【0165】
【表2】
【0166】
表2に示されるように、本発明の芳香族アミン誘導体を正孔注入材料とする実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子は、駆動電圧が低く、かつ発光寿命が長い。
【0167】
本出願は、2009年3月19日出願の出願番号JP2009−068306に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の芳香族アミン誘導体は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成するための材料として好適である。