特許第5667067号(P5667067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667067
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】抗TGFベータ受容体II抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20150122BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   A61K39/395 N
   A61P35/00
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-534731(P2011-534731)
(86)(22)【出願日】2009年10月29日
(65)【公表番号】特表2012-508170(P2012-508170A)
(43)【公表日】2012年4月5日
(86)【国際出願番号】US2009062450
(87)【国際公開番号】WO2010053814
(87)【国際公開日】20100514
【審査請求日】2012年10月22日
(31)【優先権主張番号】61/198,697
(32)【優先日】2008年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/170,369
(32)【優先日】2009年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508188662
【氏名又は名称】イムクローン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Imclone LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100144923
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 将之
(74)【代理人】
【識別番号】100156111
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ウ
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−121001(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/088651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
A61K 39/00−39/44
A61K 49/00−49/04
A61K 31/33−33/44
C07K 1/00−19/00
C12P 1/00−41/00
C12N 1/00− 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列GGSISNSYF(配列番号1)を有するCDRH1、
配列SFYYGEKTYYNPSLKS(配列番号2)を有するCDRH2、
配列GPTMIRGVIDS(配列番号3)を有するCDRH3、
配列RASQSVRSYLA(配列番号10)を有するCDRL1、
配列DASNRAT(配列番号11)を有するCDRL2、および、
配列QQRSNWPPT(配列番号12)を有するCDRL3
を含むヒトTGFβRIIに対して特異的に結合する抗体。
【請求項2】
HCVRアミノ酸配列:
QLQVQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISNSYFSWGWIRQPPGKGLEWIGSFYYGEKTYYNPSLKSRATISIDTSKSQFSLKLSSVTAADTAVYYCPRGPTMIRGVIDSWGQGTLVTVSS(配列番号25)、および、
LCVRアミノ酸配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK(配列番号27)、
を含む請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号37の重鎖を含む、請求項に記載の抗体。
【請求項4】
重鎖および軽鎖を含む請求項に記載の抗体であって、該重鎖は配列番号:37で示されるものであり、該軽鎖はLCVRアミノ酸配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK(配列番号:27)および軽鎖定常領域
からなるものである、抗体。
【請求項5】
2つの重鎖および2つの軽鎖を含む請求項に記載の抗体であって、重鎖は配列番号:37のアミノ酸配列であり、軽鎖はLCVRアミノ酸配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK(配列番号:27)および軽鎖定常領域
からなるものである、抗体。
【請求項6】
ヒトTGFβ受容体II(TGFβII)の細胞外ドメインに10〜80pMのK値にて特異的に結合する、請求項1〜のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
TGFβにより誘導されるSmad2リン酸化反応を4.5〜25.5nMのIC50値にて阻害する、請求項1〜のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメント、ならびに、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または、賦形剤を含む、癌の治療のための医薬組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメント、ならびに、治療において同時使用、別個使用、または、連続使用のために組み合わせて処置する追加の抗癌剤を含む、癌の治療のための製剤。
【請求項10】
癌の治療に用いる医薬の製造における請求項1〜のいずれか一項記載の抗体またはそのフラグメントの使用であって、癌が乳癌、膵臓癌または肺癌である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野におけるものであり、特に、ヒト形質転換成長因子ベータ受容体II(TGFβRII)に結合する抗体、抗体を含む薬学的組成物、および、当該抗体を用いて例えば癌、線維化、および線維症を治療する方法の分野におけるものである。
【背景技術】
【0002】
TGFβは、細胞増殖および分化、運動性、細胞外マトリックス生成、および免疫機能を制御する多面サイトカインである。TGFβは、3つの哺乳動物アイソフォーム(TGFβ−1、TGFβ−2およびTGFβ−3)を有し、それぞれがインビボにおける異なる機能を有する。3つ全てのTGFβは、同一の受容体シグナル伝達系を使用する。TGFβRIIに対するTGFβの結合は、Smad2のリン酸化反応および遺伝子発現を調節するための活性化Smad2/Smad4複合体の核転座を導く、TGFβシグナル伝達経路の活性化の開始において重要な段階である。
【0003】
高い親和性(8.06×10−10および1.91×10−9MのK)にてヒトTGFβRIIに結合して腎疾患および組織線維化を治療するヒトモノクローナル抗体(mAb)が、特許文献1に開示されている。当該特許文献1はまた、mAbがケラチノサイトのTGFβ誘導増殖を抑制すること(IC50の平均値は、2.17〜3.89μg/ml、3.17〜4.95μg/ml、および3.21〜5.07μg/ml)を開示している。TGFβRIIに対する完全ヒトモノクローナル抗体の使用が、ラット抗Thy−1腎炎において細胞外マトリックスの沈着物を減少するのに効果的であることが報告されていた(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004―121001号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kasuga,H.ら著、Kidney Int’l、第60巻、1745−1755(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでに、高度に特異的であり高い親和性を有する抗TGFβRII抗体に関する開示がないため必要とされている。ここで、必要とされる抗TGFβRII抗体とは、非常に高い親和性にてヒトTGFβRIIの細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトTGFβRIIに対するヒトTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の結合をブロックし、血管形成を阻害し、腫瘍細胞増殖を抑制し、癌細胞の遊走および浸潤を阻害し、コラーゲン沈着および肝機能を低減し、T細胞のリガンド誘導制御を阻害し、または、細胞毒性薬と組み合わせて腫瘍増殖を阻害するものである。
【0007】
本発明は、上述の必要に応える新規の単離された抗TGFβRIImAを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
TGFベータRIIは、哺乳動物、好ましくはヒト由来である。本発明の抗体は、以下(1)〜(6)の活動のうち一つ以上を行うことができる。(1)ヒトTGFβRIIの細胞外ドメインに対する高親和性結合を示すこと、(2)TGFβRIIに対するTGFβRIIリガンド(TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3)結合をブロックし、これにより、TGFβ誘導Smad2リン酸化反応を阻害すること、(3)リガンド−受容体相互作用から独立してシグナル伝達下流制御機構として機能し得るTGFβRIIを内在化すること、(4)リガンド誘導TGFβRIIシグナル伝達経路を阻害すること、(5)TGFβRII仲介細胞活動を阻害すること、(6)インビトロおよびインビボにおいて腫瘍増殖を阻害すること。また、本発明の抗体は、より好ましくは、以下(7)〜(11)のうち一つ以上を更に行うことができる。(7)TGFβ誘導血管内皮増殖因子A(VEGF−A)の分泌を低減させることにより血管形成を阻害すること、(8)癌細胞の遊走および浸潤を阻害すること、(9)コラーゲン沈着および肝機能を低減すること、(10)T細胞のリガンド誘導制御を阻害して、免疫抑制効果を有するTreg細胞を形成すること、または、(11)細胞毒性薬と組み合わせて腫瘍増殖を阻害すること。
【0009】
TGFβRII対して特異的に結合し、かつ、TGFβRII仲介活動を中和する高親和性モノクローナル抗体は、TGFβシグナル伝達仲介疾患の治療のための治療生物因子として、特に有用である。
【0010】
本発明の第一の態様では、室温(20〜25℃)において100pM未満のKにて、ヒトTGFβRIIの細胞外ドメインに対して特異的に結合する、単離された抗体が提供される。
【0011】
一つの態様において、本発明の抗体は、ELISAにより決定される1.0nM未満のIC50にて、ヒトTGFβRIIに対してヒトTGFβ1、TGFβ2、またはTGFβ3が結合することをブロックする。
【0012】
別の態様において、本発明の抗体は、30nM未満のIC50にて、TGFβ誘導Smad2リン酸化反応を阻害する。
【0013】
更に別の態様において、本発明の抗体は、
)配列GGSISNSYF(配列番号1)を有するCDRH1、配列SFYYGEKTYYNPSLKS(配列番号2)を有するCDRH2、配列GPTMIRGVIDS(配列番号3)を有するCDRH3、配列RASQSVRSYLA(配列番号10)を有するCDRL1、配列DASNRAT(配列番号11)を有するCDRL2、および、配列QQRSNWPPT(配列番号12)を有するCDRL3、または、
ii)配列GGSISSSSY(配列番号7)を有するCDRH1、配列SFYYSGITYYSPSLKS(配列番号8)を有するCDRH2、配列GFTMIRGALDY(配列番号9)を有するCDRH3、配列RASQSVRSFLA(配列番号16)を有するCDRL1、配列DASNRAT(配列番号11)を有するCDRL2、および、配列QQRSNWPPT(配列番号12)を有するCDRL3、
を含むTGFβRIIに対して特異的に結合する抗体を含む。
【0014】
別の態様において、本発明の抗体は、
)HCVRアミノ酸配列:QLQVQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISNSYFSWGWIRQPPGKGLEWIGSFYYGEKTYYNPSLKSRATISIDTSKSQFSLKLSSVTAADTAVYYCPRGPTMIRGVIDSWGQGTLVTVSS(配列番号25)、および、LCVRアミノ酸配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK(配列番号27)、または、
ii)HCVRアミノ酸配列:QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYSWGWIRQPPGKGLEWIGSFYYSGITYYSPSLKSRIIISEDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCASGFTMIRGALDYWGQGTLVTVSS(配列番号33)、および、LCVRアミノ酸配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSFLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK(配列番号35)、
を含む。
【0015】
別の態様において、本発明の抗体は、
HCVRアミノ酸配列:QLQVQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISNSYFSWGWIRQPPGKGLEWIGSFYYGEKTYYNPSLKSRATISIDTSKSQFSLKLSSVTAADTAVYYCPRGPTMIRGVIDSWGQGTLVTVSS(配列番号25)、および、LCVRアミノ酸配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK(配列番号27)を含む。
【0016】
別の態様において、本発明の抗体は、
)配列番号37の重鎖および配列番号の軽鎖、または、
ii)配列番号の重鎖および配列番号14の軽鎖、
を含む。
【0017】
別の態様において、本発明の抗体は、配列番号372本の重鎖および配列番号4の2本の軽鎖を含む。
【0018】
別の態様において、本発明は、ヒトTGFβRII結合フラグメントを含む。
【0019】
本発明の抗体のいずれも、それを必要とする患者に対して投与され得ることが理解される。したがって、本発明の一態様では、本発明の抗体またはフラグメント、ならびに、薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または、賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0020】
本発明の好ましい態様において、抗体またはその機能的フラグメントは、競合抗体を用いる競合ELISAアッセイにて、TGFβRIIの細胞外ドメインに対する結合に対して競合し、ここで、競合抗体は、室温(20〜25℃)において100pM未満のKにてTGFβRIIと結合する。
【0021】
本発明の別の好ましい態様において、本発明の抗体は、ELISAにより決定される1.0nM未満のIC50にて、ヒトTGFβRIIに対してヒトTGFβ1、TGFβ2、またはTGFβ3が結合することをブロックする。
【0022】
本発明のmAbが、肺、肝臓および腎臓の線維化または線維症の治療に使用され得ることもまた理解される。一つの態様において、治療を必要とする患者に対して有効量の本発明のmAbを投与することを含む、肺、肝臓および腎臓の線維化または線維症を治療する方法を提供する。
【0023】
本発明の一つの態様では、医薬として使用される本発明の抗体を提供する。本発明の一つの態様では、癌の治療において使用される本発明の抗体を提供する。本発明の更なる態様では、胸部、肺または脾臓における癌の治療において使用される抗体を提供する。本発明の抗体は、抗癌剤とともに癌の治療において使用され得る。本発明の別の態様では、抗体またはフラグメント、ならびに、治療において同時使用、別個使用、または、連続使用を組み合わせて処置する追加の抗癌剤を含有する製剤を提供する。
【0024】
本発明の好ましい態様では、配列GGSISXSX(配列番号17)を有するCDH1(ここで、XはNまたはSであり、XはYまたはSであり、XはFまたはYである)、配列SFYYXTYYXPSLKS(配列番号18)を有するCDRH2(ここで、XはGまたはSであり、XはEまたはGであり、XはKまたはIであり、XはNまたはSである)、配列GXTMIRGXDX(配列番号42)を有するCDRH3(ここで、XはPまたはFであり、XはVまたはAであり、XはIまたはLであり、XはSまたはYである)、配列RASQSVRSXLA(配列番号20)を有するCDRL1(ここで、XはYまたはFである)、配列DASNRAT(配列番号11)を有するCDRL2、および、配列QQRSNWPPT(配列番号12)を有するCDRL3を含む、hTGFβRIIの細胞外ドメインに特異的に結合する単離された抗体を提供する。
【0025】
本発明の別の態様では、患者に対して有効量の本発明の抗体を投与することを含む、患者において癌を治療する方法を提供する。癌は、胸部、肺、または、脾臓における癌であり得る。抗体は、有効量または別の抗癌剤ともに、同時、別個または連続的に患者に対して投与され得る。抗癌剤は、シクロホスファミドであり得る。
【0026】
本発明の別の態様では、
配列GGSISNSYF(配列番号1)を有するCDRH1、配列SFYYGEKTYYNPSLKS(配列番号2)を有するCDRH2、配列GPTMIRGVIDS(配列番号3)を有するCDRH3、配列RASQSVRSYLA(配列番号10)を有するCDRL1、配列DASNRAT(配列番号11)を有するCDRL2、および、配列QQRSNWPPT(配列番号12)を有するCDRL3、あるいは、
配列GGSISSSSY(配列番号7)を有するCDRH1、配列SFYYSGITYYSPSLKS(配列番号8)を有するCDRH2、配列GFTMIRGALDY(配列番号9)を有するCDRH3、配列RASQSVRSFLA(配列番号16)を有するCDRL1、配列DASNRAT(配列番号11)を有するCDRL2、および、配列QQRSNWPPT(配列番号12)有するCDRL3
含むヒトTGFβ受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインに対して特異的に結合する単離された抗体、あるいは、該抗体のTGFβRII結合フラグメントを提供する。
【0027】
本発明の別の態様では、
HCVRアミノ酸配列:QLQVQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISNSYFSWGWIRQPPGKGLEWIGSFYYGEKTYYNPSLKSRATISIDTSKSQFSLKLSSVTAADTAVYYCPRGPTMIRGVIDSWGQGTLVTVSS(配列番号25)、および、LCVRアミノ酸配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK(配列番号27)、あるいは、
HCVRアミノ酸配列:QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYSWGWIRQPPGKGLEWIGSFYYSGITYYSPSLKSRIIISEDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCASGFTMIRGALDYWGQGTLVTVSS(配列番号33)、および、LCVRアミノ酸配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSFLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK(配列番号35)
含む、本発明の抗体、あるいは、該抗体のTGFβRII結合フラグメントを含む。
【0028】
本発明の別の態様では、配列番号37の重鎖および配列番号の軽鎖、あるいは、配列番号の重鎖および配列番号14の軽鎖を含む、本発明の抗体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0029】
「単離された抗体」とは、(1)構成要素の混合物から部分的、実質的、または、完全に精製されており、(2)自然環境の構成要素から同定、分離、および/または回収されており、(3)モノクローナルであり、(4)同種由来の他のタンパク質が存在しなく、(5)異種由来の細胞により発現されており、または、(6)自然発生しない、抗体である。自然環境における汚染物質の構成要素は、本発明の抗体を用いる診断または治療を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性溶質または非タンパク性溶質を含み得る。単離された抗体の例としては、アフィニティー精製された抗体、ハイブリドーマまたは他の細胞株によりインビトロで作成された抗体および、形質転換マウス由来のヒト抗体が挙げられる。
【0030】
本願明細書において使用される、用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子を意味し、当該分子は、4本のポリペプチド鎖(2本の重鎖(H)および2本の軽鎖(L))を含み、ジスルフィド結合により相互に結合されている。個々の重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVHとして略称される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)を含む。個々の軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVRまたはVLとして略称される)および軽鎖定常領域から構成される。任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の軽鎖には、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つの明らかに異なるタイプのうち一つが割り当てられ得る。カッパ軽鎖の可変領域は本願明細書においてVKと呼ばれる。本願明細書において用いられる、VLという表現は、カッパ型軽鎖(Vκ)由来の可変領域およびラムダ型軽鎖(Vλ)由来の可変領域の両方を含むことを意図する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)から構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が散在される相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域を含む。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRにより構成されており、以下の順序「FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4」でアミノ末端からカルボキシ末端へ配置される。
【0031】
「CDRH1」は、抗体重鎖における第1のCDR領域を意味し、「CDRH2」は、抗体重鎖における第2のCDR領域を意味し、「CDRH3」は、抗体重鎖における第3のCDR領域を意味する。「CDRL1」は、抗体軽鎖における第1のCDR領域を意味し、「CDRL2」は、抗体軽鎖における第2のCDR領域を意味し、「CDRL3」は、抗体軽鎖における第3のCDR領域を意味する。
【0032】
用語「抗原結合フラグメント」は、その抗原結合領域または可変領域を含むインタクトな抗体の一部分またはフラグメントを意味する。抗体フラグメントの例としては、完全長未満の抗体を含む。例えば、Fabフラグメント、F(ab’)、または単鎖可変フラグメント(scFv)である。同様に、ダイアボディ(diabodies)、直鎖抗体、単鎖抗体、一本鎖抗体、融合タンパク質、組み換えタンパク質、および、本発明の抗原結合フラグメントにより形成または一部形成された多価または多特異的な抗体もまた、本発明により包含される。
【0033】
本願明細書において使用される、用語「TGFベータ受容体II」または「TGFβRII」は、リガンドに結合する細胞表面受容体を意味し、ここでリガンドは、限定されないが、TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3を含み、結果として、細胞内のシグナル伝達経路を開始させる。ヒトTGFβRIIは、配列番号40のDNA配列によってコードされる膜貫通タンパク質である
【0034】
本発明の抗体は、ヒトTGFβRII(より具体的には、ヒトTGFβRIIの細胞外ドメイン)に結合し、ヒトTGFβ1、TGFβ2、および、TGFβ3のヒトTGFβRIIに対する結合をブロックする。
【0035】
本発明の抗体はまた、当該技術分野において公知である直接変異法、親和性成熟法、ファージ提示法、または、鎖シャッフリング法により改善された結合特性を有するものも含む。本発明の抗体はTGF1、およびTGF3として呼ばれる、本発明の抗体由来の重鎖および軽鎖(完全長またはその一部のいずれか)の任意の組み合わせを含む。
【0036】
本発明の抗体は、CDRグラフティング、ベニヤリング(veneering)または表面再構成(resurfacing)、および、鎖シャッフリングを含む(例えば、米国特許第5565332号において開示される)種々の技術を用いて本発明の追加の抗体を作成するために、テンプレートまたは親抗体として用いられ得る。本発明のヒト抗体は、例えば、CDRにおいて、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロにおけるランダム突然変異または部位特異的突然変異により、あるいは、インビボにおける体細胞変異により誘導された変異)によりコードされていないアミノ酸残基を含み得る。ヒト抗体は、アミノ酸残基(例えば、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされていない活性促進アミノ酸残基)で置換された少なくとも1つの位置を有し得る。また、その際に、本願明細書により提供された配列由来の更なる可変領域アミノ酸配列を生成する。
【0037】
1つの方法において、親抗体CDRは、親抗体フレームワークに対する高い配列同一性を有するヒトフレームワークにグラフトされる。新規フレームワークの配列同一性は、一般的に、親抗体中の対応するフレームワークに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%となる。このグラフティングにより、親抗体と比較して結合親和性が減少する結果となり得る。この場合、フレームワークは、Queenにより公開された具体的な基準に基づいて(Queen,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,2869(1991))、特定の位置にて親フレームワークに復帰突然変異され得る。使用され得る更なる方法としては、例えば、Jones et al.,Nature,321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988)、および、Verhoeyen et al.,Science,239:1534(1988)が挙げられる。
【0038】
全20個までの代替自然発生アミノ酸、特定の置換部位において導入され得る。本願明細書において定義されたインビトロ選択プロセスは、次いで、主張した交差反応性を有するFabフラグメントについて、これらの追加の可変領域アミノ酸配列をインビトロでスクリーニングするために適切に使用され得る。このようにして、更に、本発明に従ったヒト化抗体を調製するために適切なFabフラグメントが同定される。好ましくは、フレームワーク内のアミノ酸置換は、本願明細書に開示された1つまたはそれぞれのフレームワーク配列内における1、2または3箇所の位置に制限される。好ましくは、CDR内のアミノ酸置換は、1つまたはそれぞれのCDR内において1から3箇所の位置に制限され、より好ましくは、1つまたはそれぞれのCDR内における1または2箇所のアミノ酸位置にて置換が行われる。更に好ましくは、アミノ酸置換は、重鎖可変領域のCDRにおける1または2箇所のアミノ酸位置にて行われる。本願明細書に説明された抗体を親抗体として用いて、本発明に従って代替抗体を調製するためにCDRおよびフレームワーク置換を組み合わせる適切な方法は、Wu et al.,J.Mol.Biol.,294:151−162により提供される。
【0039】
用語「K」は、特定の抗体−抗原相互作用における解離定数を意味する。これは、以下の式「koff/kon=K」により算出される。用語「kon」は、単位「M−1−1」にて測定される、正反応または複合体形成反応における結合定数または速度定数、あるいは特定の反応速度を意味する。用語「koff」は、単位「1/秒」にて測定される、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての解離定数またはオフ速度定数、あるいは特定の反応速度を意味する。本発明の抗体の結合親和性は多くの場合、高konよりももっと、低koffと相関する。しかしながら、理論により限定されないが、改善されたkoffおよびkonの両方の実施形態が包含される。より好ましい態様において、本発明の抗体は、低いkoff値を一般的に示す、高力価の抗体またはそのフラグメントである。
【0040】
特定の態様において、本発明の抗体は、約1pMから約200pM、約5pMから約100pM、または、約10pMから約80pMのKを有する。
【0041】
本願明細書において用いられる用語「結合をブロックする」および「結合を阻害する」は、互換的に用いられ、サイトカイン/受容体シグナル伝達経路の生物学的機能における完全または部分的な阻害または減少をもたらす、サイトカインのその受容体に対する結合のブロック/阻害を意味する。TGFβのTGFβRIIに対する結合のブロック/阻害は、TGFβ活(例えば、受容体結合、細胞増殖の阻害効果、走化性、アポトーシス、細胞内タンパク質リン酸化反応、または、シグナル伝達)における1つ以上のインビトロまたはインビボの指標の完全または部分的な阻害または減少を測定することにより評価される。TGFβのTGFβRIIに対する結合をブロックする能力は、本願明細書において記載されるようにELISAにより測定され得る。TGFβ活を阻害する能力は、本願明細書において記載されるように細胞(例えばヒトMDA−MB−231細胞)におけるSmad2リン酸化反応の阻害を測定することにより評価され得る。
【0042】
本発明の抗体は、ヒトTGFβRIIに対するヒトTGFβ1、TGFβ2、またはTGFβ3の結合を、約0.05nMから約1.0nM、約0.08nMから約0.75nM、または、約0.10nMから約0.60nMのIC50にてブロックする。
【0043】
本発明の抗体は、インビトロブロッキングアッセイ(例えば、本願明細書に記載されるインビトロMDA−MB−231細胞ブロッキングアッセイ)において、約2.0nMから約30nM、約3.0nMから約15.0nM、または、約4.0nMから約7.5nM以下IC50にて、TGFβ誘導Smad2リン酸化反応を阻害する。
【0044】
抗体は、在来種において見出されたものとは異なるかまたは変更された糖鎖付加パターンを有し得る。当該技術分野において公知なように、糖鎖付加パターンは、抗体の配列(例えば、特定の糖鎖付加アミノ酸残基の存在または非存在)、あるいは、宿主細胞またはタンパク質が生成される生物に依存し得る。本発明の抗体は、本願明細書において開示された抗体ならびにその糖鎖付加改変体を含むことが意図される。
【0045】
本発明はまた、本願明細書に記載された任意のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。例示的なベクターとしては、原核宿主または真核宿主(例えば細胞(哺乳動物細胞等))において複製可能なプラスミド、ファージミド、コスミド、ウイルスおよびファージ核酸または他の核酸分子が挙げられる。ベクターは、発現ベクターであり得、ここで、抗体をコードするポリヌクレオチドは、発現制御エレメントと操作可能に結合される。一般的な発現ベクターは、本発明の核酸分子における発現の制御に有用な、転写および翻訳ターミネーター、開始配列、および、プロモーターを含む。ベクターはまた、独立したターミネーター配列を含む遺伝子発現カセットを含み得、ここで、配列は、真核生物および原核生物の両方においてベクターの複製を許容するものであり、すなわち、真核系および原核系の両方についてのシャトルベクターおよび選択マーカーである。ベクターは、一般的に、形質転換宿主の選択のための表現型形質を提供する(例えば、アンピシリンまたはネオマイシン等の抗生物質に対する抵抗性を与える)マーカーを含む。
【0046】
適切なプロモーターは、構成的プロモーターおよび誘導プロモーターを含む。代表的なプロモーターとしては、ヒトサイトメガロウイルス由来のプロモーター、メタロチオネインプロモーター、SV−40早期プロモーター、SV−40後期プロモーター、マウス乳癌腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、および、ポリヘドリンプロモーターを含む。
【0047】
本発明はまた、本発明の核酸分子または発現ベクターを含む組み換え細胞を含む。「組換え細胞」は、非ヒト多細胞生物、または、本願発明の核酸分子またはベクターが導入される細胞または細胞集団である「宿主細胞」を意味する。本発明の宿主細胞は、真核細胞もしくは細胞株(例えば、植物、動物、脊椎動物、哺乳動物、齧歯類、マウス、霊長類、または、ヒト細胞もしくは細胞株)であり得る。
【0048】
一つの態様において、本発明の宿主は、原核または真核であり得る。適切な原核宿主としては、例えば、大腸菌(例えば、大腸菌SG−936、大腸菌HB101、大腸菌W3110、大腸菌X1776、大腸菌X2282、大腸菌DHI、および大腸菌MRC1)、シュードモナス菌、バシラス属(例えば、枯草菌)、およびストレプトミセスが挙げられる。適切な真核細胞としては、酵母および他の菌類、昆虫細胞、植物細胞、ヒト細胞、および動物細胞が挙げられ、例えば、ハイブリドーマ株、COS細胞、NS0細胞およびCHO細胞等の哺乳動物細胞を含む。
【0049】
本発明は、本発明の抗体をコードする1つ以上の核酸配列を発現する組換え細胞を培養し、培養培地から抗体を回収することにより抗体を生成する方法を含む。このように発現された抗体は、一般的に、発現後に精製または単離される。抗体は、当該技術分野において公知の種々の方法において単離または精製され得る。標準的な精製方法としては、クロマトグラフィー手法、電気泳動手法、免疫学的手法、沈殿手法、透析手法、濾過手法、濃縮手法、クロマト分画手法が挙げられる。当該技術分野において周知なように、種々の天然タンパク質抗体に結合し、例えば、細菌タンパク質A、GおよびLが挙げられ、これらのタンパク質は、本発明において精製に利用され得る。精製は多くの場合、特定の融合パートナーにより使用可能になり得る。例えば、タンパク質は、GST融合が適用される場合にグルタチオン樹脂、Hisタグが適用される場合にNi+2親和性クロマトグラフィー、またはHisタグが使用される場合に固定化抗Flag抗体、を用いて精製され得る。抗体は、培養培地からそれを分離することにより精製され得る。以上の鎖を含む抗体は、同一宿主において各鎖ともに発現されるか、または、培養培地からの回収前もしくは回収後に組み立てられるよう別個の鎖として発現されることにより、生成され得る。
【0050】
抗体は、例えば、限定されないが、インビトロアッセイ、インビトロセルベースアッセイ、インビボアッセイ、および、選択技術を含む種々の方法を用いてスクリーニングされ得る。スクリーニングされ得る抗体の特性は、限定されないが、生物学的活、安定性、可溶性、および、標的に対する結合親和性が挙げられる。多数の特性が、同時または別個にスクリーニングされ得る。タンパク質は、アッセイの要件に依存して、精製され得るかまたは精製され得ない。一つの態様において、スクリーニングは、抗体に結合することが知られるかそう考えられている、タンパク質分子または非タンパク質分子に対する抗体の結合についての定性的または定量的な結合アッセイである。一つの態様において、スクリーングは、標的抗原に対する結合を測定するための結合アッセイである。自動およびハイスループットのスクリーニング技術は、スクリーニング手順において使用され得る。スクリーニングは、融合タンパク質またはラベル化タンパク質の使用を適用し得る。結合アッセイは、限定されないがELISAを含む、当該技術分野において公知の種々の方法を用いて実行され得る。本願明細書において用いられる「結合について競合する」とは、抗体が結合またはシグナル伝達を、当該技術分野において利用可能な技術(例えば、競合ELISAまたはBIAcoreを用いる測定)により測定される場合に、少なくとも約20%、30%、50%、70%または90%減少させる状況を意味するが、結合を完全に除外することを意図しない。
【0051】
結合相互作用を測定するための当該技術分野において周知である一つの装置は、Pharmacia Biosensor(Uppsala,Sweden)から市販されているBIAcore(商標)2000機器である。
【0052】
本発明は、本願明細書において開示された本発明の抗体、および、薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含む薬学的組成物を含む。薬学的組成物は、他の治療成分を任意に含み得る。本願明細書において用いられる「薬学的に受容可能な担体」とは、生理学的に適合可能な、溶媒、分散媒質、コーティング、防菌防黴剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。
【0053】
薬学的に受容可能な担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびに、それらの組み合わせが挙げられる。薬学的に受容可能な担体は、抗体の保存可能期間または有効性を増進する、少量の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤またはバッファ)、ならびに、等張剤(例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトール)および塩化ナトリウム)を、更に含み得る。
【0054】
本発明の薬学的組成物は、例えば、液体、半液体、および固体の投与形態を含む種々の様式に製剤され得、例えば、液体溶液(例えば、注射可能溶液および注入可能溶液)、分散物または懸濁液、粉末、リポソームおよび座薬が挙げられる。組成物は、好ましくは、注射可能溶液または注入可能溶液の形態である。投与の好ましい様式は、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)である。特に好ましい様式は、静脈内注入または静脈注射、筋肉注射、および、皮下注射である。上述の組成物は、実践者が一般的に知っている例えば製剤技術の概要を記載したRemington,The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA 1995のような常套技術にしたがって設計され得る。
【0055】
本願明細書において記載される病気または疾患の治療のための本発明の組成物における有効量は、多くの異なる因子(例えば、投与手段、標的部位、対象の生理学的状態、対象がヒトまたは動物であるか、投与される他の医薬、および、処置が予防または治療であるか)に依存して変化する。投薬量は、安全性および有効性を最適化するために当業者に公知の所定方法を用いて漸増され得る。
【0056】
用語「処置」、「処置する」および「治療」は、治療的処置を意味し、ここで、物体は病気または疾患に関連した望ましくない生理学的変化を遅れさせる(減少させる)。有益または所望の臨床結果としては、限定されないが、検出可能または検出不可能であっても、症状の軽減、病気または疾患の程度の縮小、病気または疾患の安定化(すなわち、病気または疾患は悪化しない)、病気または疾患の進行を遅延または減速、および、病気または疾患の(部分的または全体的な)寛解が挙げられる。「治療」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較して生存を延命させることも意味しうる。治療を必要とする者は、病気または疾患を既に有している者ならびに病気または疾患を有する傾向がある者である。
【0057】
本発明の薬学的組成物は、「治療有効量」における本発明の抗TGFβRII抗体を含み得る。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要用量および期間にて有効な量を意味する。抗体の治療有効量は、例えば、疾患状態、年齢、性別、個体の体重、抗体または抗体部分がもつ個体における所望の反応を引き起こす能力等の因子にしたがって変化し得る。治療有効量はまた、抗体または抗体部分の任意の毒性または有害な影響が、治療に有効な影響よりも下回る量である。
【0058】
投与レジメンは、最適な所望の反応を提供するように調整され得る。例えば、単一ボーラスが投与され得、いくつかに分割された投与量が徐々に投与され得、または、投与量が治療状況における要件により指定されるように比例的に削減または増加され得る。投与の容易性および投与量の均一性のために投与単位形態において非経口組成物を製剤することが特に有効である。投与単位形態は、必要な薬学的担体に関連する所望の治療効果をもたらすために算出された活性化合物の所定量を含む投与量を意味する。本発明の投与単位形態についての仕様は、(a)活性化合物の特有な特徴および達成される特定の治療効果または予防効果と、(b)個体の敏感性を治療するための活性化合物を配合する際の当該技術分野固有の限定により、決定されかつ直接的に依存する。
【0059】
本発明の抗体の治療有効量についての例示的かつ非限定的な範囲は、0.1〜50mg/kgである。別の態様において、抗体の有効量は、3〜35mg/kgである。別の態様において、抗体の有効量は、10〜25mg/kgである。別の態様において、抗体の有効量は、5〜20mg/kgである。別の態様において、抗体の有効量は、3〜15mg/kgである。別の態様において、抗体の有効量は、2〜10mg/kgである。別の態様において、抗体の有効量は、5〜10mg/kgである。別の態様において、抗体の有効量は、1〜10mg/kgである。投与量の値は、軽減される症状のタイプおよび重篤度により変化し得ることを留意されたい。更に、任意の特定の対象について、特定の投与レジメンが、個体のニーズおよび組成物の投与を行うかまたは管理する者の専門的判断にしたがって徐々に調整されるべきであり、また、本願明細書において記載された投与量の範囲は、例示のみであり、特許請求した組成物の実際の範囲を限定することを意図しないことが、理解される。
【0060】
本発明の抗体は、癌の治療に用いられ得る。癌は、発生源の組織および腫瘍進行の程度により分類された疾患の大きなグループであると考えられている。癌はまた、原発腫瘍および転移性腫瘍、ならびに、難治性腫瘍または再発性腫瘍として分類され得る。難治性腫瘍は、化学療法剤のみ、抗体のみ、放射線療法のみ、または、それら組み合わせる治療に対して、反応がないかまたは耐性がある腫瘍である。再発性腫瘍は、このような薬剤を用いる治療により阻害されたように見えるが、治療を中断してから5年後(時々10年後以上)までに再発する腫瘍である。
【0061】
治療され得る癌はまた、血管新生されていない腫瘍、または、実質的まだ血管新生されていない腫瘍、ならびに、血管新生された腫瘍を含む。癌は、非固形腫瘍または固形腫瘍から構成され得る。
【0062】
本発明の抗TGFβRII抗体はまた、哺乳動物を疾患にかかりやすくする病理学的状態などの慢性および急性疾患または病気を含む、TGFβRII関連疾患、病気、または、症状の治療に使用され得る。本願明細書において治療される疾患は、動脈損傷により生じる線維化、感染、関節リウマチ、糖尿病または糖尿病状態、あるいは、悪性腫瘍、細胞外マトリックスの蓄積により特徴付けられた疾患TGFβRIIシグナル伝達により生じる疾患、TGFβRII仲介活性に起因する免疫系の抑制により生じる状態、重篤な損傷、熱傷、および病気(例えば、ウイルス感染または細菌感染)により生じる急性免疫欠損、および、TGFβRII仲介活性に起因する多臓器全身性疾患が挙げられる。
【0063】
TGFβは、造血幹細胞の自己再生、増殖、分化において重要な役割を担う。本発明の抗体は、幹細胞の富化および再生、ならびに、心筋梗塞後、ニューロン疾患および種々のタイプの組織再生における幹細胞ベースの治療法を促進するために使用され得る。
【0064】
本発明の抗体は、単独で投与され得るか、または、化学療法剤、放射線療法、他のTGFβRIIアンタゴニスト、TGFβアンタゴニスト、抗血管形成剤、他の標的に対する抗体、および、分子を含む、抗ヒトTGFβRII抗体以外の抗腫瘍剤と組み合わせて投与され得る。抗TGFβRII抗体は特に、抗VEGF−A耐性腫瘍の治療において有用である。他の抗体および/または治療を用いる抗体の投与は、同一または異なる経路を介して、同一または異なる時間にて、同時または別個に行われ得る。
【0065】
本願明細書において説明された治療方法は、霊長類(例えば、サルおよびヒト)、ウマ、ウシ、ネコ、イヌ、ウサギならびに齧歯類(例えば、ラットおよびマウス)を含む、任意の適切な哺乳動物を治療するために使用され得る。
【0066】
以下の実施例は、例示目的のためのみに提供されるものであって、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0067】
物質および細胞株
ヒトTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3は、組み換え技術により産生でき、精製できるか、または例えば、R&D Systemsから購入できる。組み換えTGFβRII Fc融合タンパク質(TGFβRII−Fc)および可溶性組み換えTGFβRIIアルカリホスファターゼ(TGFβRII−AP)タンパク質は、当業者に公知の手順に従って安定にトランスフェクトされた細胞で発現でき、細胞培養上清から精製できる(Tessler,J.Biol.Chem.,269:12456−12461(1994))。
【0068】
ヒト癌細胞株BXPC−3、PANC−1、MDA−MB−231およびマウス腫瘍細胞株EMT6、4T1、CT26、B16−F10および骨髄腫細胞株P3−X63−Ag8.653は、アメリカ合衆国組織培養保存機関(Manassas,VA)から得ることができる。MDA−MB−231シフェラーゼトランスフェクト細胞株は、Sunnybrook Health Sciences Centreから得ることができる。細胞は、10%ウシ胎仔血清(FCS,Hyclone,Logan,UT)を含有するRPMI1640またはIMDM培地(Invitrogen/Life Technologies,Inc.,Rockville,MD)中で維持できる。全ての細胞は、加湿した、5%CO雰囲気下中で37℃にて維持できる。
【0069】
抗TGFβRII mAbの生成
抗TGFβRII mAbは、ヒト免疫グロブリン形質転換マウス(Medarex,San Jose,CA)を用いた標準のハイブリドーマ技術(Harlow&Lane,ed.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,211−213(1998))によって実質的に生成でき、これは、ヒト免疫グロブリンガンマ重鎖およびカッパ軽鎖を産生しあるいはLewisラット(Charles River Laboratories, Wilmington,MA)を用いても生成できる。つまり、マウスまたはラットに、完全フロイントアジュバンドを用いて乳化された組み換えヒトまたはマウスTGFβRII−Fcタンパク質で皮下(s.c.)に免疫性を与える。動物は腹腔内(i.p.)で、不完全フロイントアジュバンド中の同じTGFβRII−Fcタンパク質を用いて3回追加免疫する。動物がリン酸緩衝水溶液(PBS)中に50マイクログラム(μg)のTGFβRII−Fcタンパク質の最終的な腹腔内追加免疫を受容する前に、その動物を一ヶ月の間、休ませる。脾臓細胞を、免疫を与えたマウスから採取し、ポリエチレングリコール(PEG,MW:1450KD)を用いてP3−X63−Ag8.653形質細胞腫細胞と融合させる。融合後、それらの細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)培地に再懸濁し、ハイブリドーマ細胞を作製するために、ウェル毎に200マイクロリットルの密度で、96ウェルプレートに分配する。
【0070】
融合後10日〜12日に、ELISAベースの結合およびブロッキングアッセイにおいて、TGFβRIIタンパク質を用いて、培養上清の抗体産生および特異的結合活性についてハイブリドーマをスクリーニングする。特に、抗TGFβRII mAbを産生するハイブリドーマを、以下の手順に従って、ヤギ抗ヒトカッパ軽鎖または抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)接合抗体を用いて、TGFβRII結合抗体の検出によってまず同定する。ヒトTGFβRII−FcまたはマウスTGFβRII−Fcを、一晩、4℃にて、96マイクロタイタープレート上で、100ng/ウェルでコーティングする。コーティングしたプレートを、室温で2時間、ブロッキングバッファ(5%粉乳を含む、PBS 0.05% TWEEN(登録商標)20)でブロッキングする。ハイブリドーマの上清または精製した抗体を2%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.05% TWEEN(登録商標)20(ELISAバッファ)を有するPBSにおいて希釈し、TGFβRIIコーティングした、96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて30分インキュベートする。プレートをELISAバッファで洗浄し、ヤギ抗ヒトカッパ軽鎖または抗マウスIgG−HRP複合体を用いて30分インキュベートする。TMB(3,3’,5,5’−テトラ−メチルベンジジン)基質を製造者の使用説明書に従って発色現像のために用いる。450ナノメートル(nm)での吸光度を抗体の結合活性を定量化するために読み取る。中和抗TGFβRII mAbを産生するハイブリドーマを同定するために、ELISAベースのブロッキングアッセイを以下の手順に従って行う。TGFβ1,TGFβ2,またはTGFβ3を、96ウェルプレート上でウェル毎に200ngにてコーティングし、次いで、ウェルを、ブロッキングバッファを用いてブロッキングする。ハイブリドーマの上清を、TGFβコーティングした96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、1時間、TGFβRII−APを含むELISAバッファを用いてインキュベートする。洗浄後、APのためのp−ニトロフェニルリン酸塩(PNPP)基質を、製造者の使用説明書に従って発色現像のためにウェルに加える。405nmでの吸光度をTGFβ1,TGFβ2,およびTGFβ3へのTGFβRII結合を定量化するために読み取る。光学密度(OD)の値を、マイクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)上で読み取る。
【0071】
陽性ハイブリドーマを、モノクローナルハイブリドーマの細胞株の作製のために、限界希釈培養により、3回サブクローニングする。
【0072】
表1は、mAb TGF1,およびTGF3の軽鎖CDRおよび重鎖CDRのアミノ酸配列を示す。
【0073】
表1 抗ヒトTGFβRII mAbの軽鎖CDRおよび重鎖CDRのアミノ酸配列
【表1】
【0074】
アミノ酸配列の配列番号、ならびに、mAb TGF1およびTGF3のための、HCVR,LCVR、重鎖(HC)および軽鎖(LC)のアミノ酸配列をコードするDNA配列を以下の表2に示す。
【0075】
表2 抗ヒトTGFβRII mAのアミノ酸配列およびコードDNA配列の配列番号
【表2】
【0076】
ヒトIgG1抗ヒトTGFβ受容体II抗体の操作および発現
抗TGFβRII mAbの重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を、発現ベクターにクローニングするためにPCRにより増幅できる。重鎖の可変領域を、ベクターpEE6.1(Lonza Biologics plc,Slough,Berkshire,UK)において、ヒト免疫グロブリン重鎖ガンマ1の定常領域に、イン・フレームにて融合できる。ヒト軽鎖cDNA全体を、ベクターpEE12.1(Lonza Biologics PLC,Slough,Berkshire,UK)に、直接クローニングできる。操作した免疫グロブリン発現ベクターを、エレクトロポレーションによりNS0骨髄腫細胞に安定してトランスフェクトでき、グルタミン合成酵素選択培地において選択する。安定したクローンを、抗ヒトTGFβRII特異的結合ELISAにより抗体発現についてスクリーニングできる。陽性クローンを、スピナーフラスコまたは生物反応器において、抗体産生のために無血清培地へと培養できる。完全長IgG1抗体を、タンパク質親和性クロマトグラフィー(Poros A,PerSeptive Biosystems Inc.,Foster City,CA)により精製でき、中性緩衝食塩溶液に溶出できる。
【0077】
抗ヒトTGFβRII mAb TGF1およびTGF3の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNAをクローニングでき、GS(グルタミン合成酵素)発現ベクターにおいて、ヒト免疫グロブリン重鎖ガンマ1定常領域に、イン・フレームにて融合できる。操作した免疫グロブリン発現ベクターを、CHO細胞に安定してトランスフェクトできる。安定したクローンを、ヒトTGFβRIIに特異的に結合する抗体の発現について検証できる。陽性のクローンを生物反応器において抗体産生のための無血清培地へと広げることができる。完全長IgG1抗体を、タンパク質A親和性クロマトグラフィーによって精製でき、中性緩衝食塩溶液に溶出できる。
【0078】
抗TGFβRII mAbは、TGFβRIIへ結合し、TGFβRIIのそのリガンドへの結合をブロックする。
精製した抗TGFβRII mAbの結合およびブロッキング活性を、上述の「抗TGFβRII mAbの生成」で記載したように、ELISAにおいて決定する。抗体のED50およびIC50をGraphPad Prism(登録商標) ソフトウェア3.03(GraphPad Software Inc.,San Diego,CA)を用いて分析する。抗ヒトTGFβRII mAb TGF1,およびTGF3はそれぞれ、ELISAベースの結合アッセイにおいて0.031〜0.059nMのED50にてヒトTGFβRIIに対する結合活性を別々に示すが、他方で通常のヒトIgGは受容体に対しては結合活性を有さない。精製したmAb TGF1,およびTGF3、0.10〜0.54nMのIC50にてヒトTGFβRIIに対するヒトTGFβ1,TGFβ2,またはTGFβ3の結合を効果的に、各々別々にブロッする。
【0079】
抗ヒトTGFβRII抗体の結合およびブロッキング特性を表3に要約する。
【0080】
表3 抗ヒトTGFβRII抗体の結合およびブロッキング特性
【表3】
【0081】
マウスTGFβRIIへの抗マウスTGFβRII mAb MT1の結合活性は0.054nMのED50を有し、マウスTGFβ1,TGFβ2,またはTGFβ3へ結合するマウスTGFβRIIへのmAb MT1のブロッキング活性は0.12〜0.54nMのIC50の値を有する。
【0082】
mAb MT1の結合およびブロッキング特性を表4に要約する。
【0083】
表4 抗マウスTGFβRII mAb MT1の結合およびブロッキング特性
【表4】
【0084】
抗TGFβRII mAbの結合親和性
抗TGFβRII mAbの結合親和性を、室温(20〜25℃)にて、BIAcore(商標)2000を用いて、表面プラズモン共鳴技術によって決定する(Pharmacia, Piscataway, NJ)。mAbの動態分析を、5〜100nMの濃度にてセンサ表面上に、マウスTGFβRII(配列番号41)の組み換え細胞外ドメイン、あるいは、マウスまたはヒトのFcまたは重鎖定常領域と各々リンクされた配列番号40によってコードされるヒトTGFβRIIの細胞外ドメインの融合タンパク質の固定化によって行う。抗ヒトTGFβRII mAb TGF1,およびTGF3は、各々11、78、19pMのK値を有して、高い親和性を示す。抗マウスTGFβRII mAb MT1は、33pMのK値を有して、高い親和性を示す。
【0085】
mAbの動態を表5に要約する。
【0086】
表5 抗ヒトTGFβRII mAbの反応速度
【表5】
【0087】
抗ヒトTGFβRII mAbの種特異性
抗ヒトTGFβRII mAbの特異性を、ELISAによって、ヒトTGFβRIIまたはマウスTGFβRIIに対する抗体の反応性を測定することによって決定する。抗ヒトTGFβRII mAb TGF1は、マウスTGFβRIIと交差反応を示さない。これに対して、mAb TGF3は、マウスTGFβRIIと、中程度または小程度の交差反応を示す。しかしながら、mAb TGF3は、マウスTGFβRIIに対するヒトTGFβ1の結合をブロックしない。
【0088】
TGFβRII発現細胞上での抗TGFβRII mAbの天然のTGFβRIIへの結合
抗ヒトTGFβRII mAb TGF1およびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識化されたヤギ抗ヒトIgG抗体の結合活性を、293−ヒトTGFβRII形質転換細胞およびヒト癌細胞を用いた染色アッセイにより決定できる。特に、形質転換細胞、癌細胞、脾臓細胞、またはリンパ節細胞の一定分量を増殖途中(subconfluent)の培養から採取し、フルオレセイン標識付けた、または標識付けのない所望の分子に対する一次抗体を用いて、氷上で一時間、1%BSA(染色バッファ)を有するPBS中にインキュベートする。マッチさせたIgGアイソタイプをネガティブコントロールとして用いる。細胞を、染色バッファを用いて2回洗浄し、次いで、氷上で30分間、バッファ中で、FITC、フィコエリトリン(PE)、または、一次抗体に対するAlxasレッド標識化種特異的二次抗体(BioSource International,Camarillo,CA)でインキュベートする。上述のように、細胞を洗浄し、フローサイトメーターで分析する。死滅細胞および残留物を前方および側方からの光散乱に基づいて分析から除く。平均の蛍光強度単位(MFIU)を、陽性の団の百分率を乗じた対数平均蛍光として計算する。平均蛍光強度比(MFIR)を、細胞株におけるTGFβRIIの相対的な発現レベルを定量化するために計算する。MFIRは、アイソタイプのコントロール抗体を用いて染色した細胞のMFIで割った、TGFβRII異的mAbを用いて染色した細胞の平均蛍光強度(MFI)である。
【0089】
抗ヒトTGFβRII mAb TGF1は、293−ヒトTGFβRII形質転換細胞およびMDA−MB−231ヒト乳癌細胞との結合反応性を検証の結果、それぞれ46と209のMFIRを有する。これとは対照的に通常のヒトIgGは細胞に反応性を有さない。結果は、mAb TGF1が、細胞表面上において発現した天然のヒトTGFβRIIに特異的な反応性を有することを示す。
【0090】
キナーゼSmad2の下流でのTGFβ1に応答したTGFβRIIの活性に対する抗TGFβRII mAbの阻害活性
TGFβに誘導されたSmad2(p−Smad2)のリン酸化反応は、例えば様々な細胞種における増殖、運動、生存、分化など、細胞の生物学的反応を仲介するTGFβRIIを介したTGFβシグナル伝達の典型的な下流シグナル伝達経路である。p−Smad2活性を阻害する、抗ヒトTGFβRIIおよび抗ヒトマウスTGFβRII mAbの能力を、以下の手順に従って、4T1マウス乳癌細胞およびMDA−MB−231ヒト乳癌細胞を用いることによって決定できる。つまり、細胞をFCS含有培地において80%のコンフルエンス状態にまで培養する。その培地と無血清培地とを取り替えた後、細胞を、1時間、10ng/mL TGFβの存在下において、抗体またはアイソタイプのコントロールで処理する。洗浄後、細胞溶解物を溶解バッファで調製し、電気泳動法を用いて、ニトロセルロース膜に電気移動する。リン酸化Smad2およびSmad2を、抗−ホスホ−Smad2およびSmad2モノクローナル抗体(Millipore Corporate)を用いたウェスタンブロット法および電気化学発光システム(ECL)によって検出し、画像化して、フジ画像アナライザー(Fuji Image Analyzer)を用いた濃度測定で定量化する。
【0091】
抗TGFβRII mAb TGF1およびMT1はヒトMDA−MB−231およびマウス4T1乳癌細胞におけるSmad2のTGFβ誘導されたリン酸化反応を、用量依存的な方法において低減する。p−Smad2阻害試験において、mAb TGF1およびMT1のIC50を、5±0.5nMであると決定し、他方でmAb TGF3は25±0.5nM未満のIC50を示す。
【0092】
腫瘍細胞のインビトロでの移動および浸襲における抗TGFβRII mAbの阻害活性
腫瘍細胞の浸襲性に対する抗TGFβRII mAbの阻害効果は、インビトロの移動および浸襲アッセイによって決定できる。つまり、癌細胞を、ウェル毎に5×10の密度で、無血清培地中の48ウェルプレートコラーゲンIおよびIVコーティングした下側のチャンバーに挿入されている上側のチャンバーに投与する。細胞を、24〜48時間、37℃にて、10ng/mLのTGFβの存在下において、3、10、および30μg/mLの投与量において、mAb TGF1またはMT1で処理する。25μg/mL TGFβRII−FcまたはアイソタイプIgGは、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとしてアッセイにおいて用いる。同様の条件を、マトリゲルコーティングした上側のチャンバーを用いることは例外として浸襲アッセイにおいて用いる。インキュベーションの後、上側のチャンバーの反対側に移動した細胞を、10%緩衝中性ホルマリンで固定し、2μg/mL Hoechst 33342,三塩酸塩,三水和物溶液(Invitrogen)で染色し、Zeiss Digital Image Cameraおよびsoftware Image−Pro Plus 5.1を用いて20倍の倍率で数える。
【0093】
抗TGFβRII mAb TGF1およびMT1は、IgG処理されたコントロールと比較すると、BXPC−3ヒト膵臓癌細胞の移動および4T1マウス乳癌細胞の浸襲をそれぞれ100%(P<0.0001)および93% (P<0.0005)著しく阻害した
【0094】
これらの結果は、その表面上にTGFβRIIを有する癌細胞の浸襲に対する本発明の抗TGFβRII抗体の阻害効果を示す。
【0095】
腫瘍細胞におけるVEGF−A分泌に対する抗TGFβRII mAbの阻害活性
TGFβは、腫瘍細胞におけるVEGF−A分泌の刺激および内皮細胞機能の調節を介した病状の進行の間の血管形成を促進させる役割を担う。腫瘍細胞におけるTGFβ誘導されたVEGF−A分泌に対する抗TGFβRII mAbの阻害効果を細胞培養において決定できる。
【0096】
つまり、腫瘍細胞を、48時間、10ng/mL TGFβおよび限界希釈のmAbの存在下または非存在下において5%COでの培養器中で、37℃で無血清培地において培養する。馴化培養物上清中のVEGF−A分泌における変化を、製造者の使用説明書に従ってELIKONキット(R&D Systems)を使用して決定する。
【0097】
10μM/mLでの抗ヒトTGFβRII mAb TGF1はMDA−MB−231ヒト乳癌細胞において、VEGF−AのTGFβ誘導生成を63%(P<0.01)阻害する。10μM/mLでの抗マウスTGFβRII mAb MT1は、4T1マウス乳癌細胞において、VEGF−AのTGFβ誘導生成を30%(P<0.02)阻害する。
【0098】
これらの結果は、TGFβ誘導VEGF−A分泌を低減することによって本発明の抗TGFβRII mAbが血管生成を阻害することを示す。
【0099】
インビトロでのTGFβ誘導Treg転換に対する抗TGFβRII mAbの阻害活性
TGFβは、免疫反応を陰性に制御する免疫抑制能力を有する制御性T(Treg)細胞を形成するために、未感作T細胞を誘導することができることが証明されている。TGFβ誘導制御性細胞転換に対する抗TGFβRII mAbの阻害効果を、以下のように、インビトロで評価できる。
【0100】
つまり、精製した未感作のCD4+細胞を、7日間、5%CO下の培養器において、37℃で、完全RPMI培地中で、10ng/mLのTGFβおよび段階希釈のmAb MT1の存在下または非存在下において1μg/mLの抗CD3抗体および精製した抗原提示細胞(APC)で刺激する。細胞を、次いで、CD25+/Foxp3+Treg細胞の染色のために採取して、染色した細胞をフローサイトメーターで分析する。
【0101】
10μM/mLでの抗マウスTGFβRII mAb MT1は、コントロールIgGで処理した細胞と比較してインビトロにて、TGFβ誘導Treg細胞の数を75%(P<0.005)低減する。
【0102】
腫瘍の増殖および転移に対する抗TGFβRII mAbの阻害活性
抗TGFβRII mAbの抗腫瘍効果を、静脈または皮下転移腫瘍モデルにおいて試験できる。
【0103】
無胸腺ヌードマウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)、Balb/cマウス、またはC57B6マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)を、マウスまたはヒト癌細胞による接種のために用いることができる。皮下モデルにおける生成された腫瘍の処置のために、腫瘍を、約200mmの大きさまで成長させることができ、次いで、マウスを、グループ毎に12匹〜15匹のグループとなるよう無作為に抽出する。肺転移モデルにおいて、マウス、尾静脈を介して腫瘍細胞を静脈注射できる。動物は、毎週3回、10〜40mg/kgの投与量で腹腔内投与の抗TGFβRII mAbを受容できる。コントロールグループ中のマウスは、等量の生理食塩水または通常のIgG溶液を受容できる。動物の処置は、実験期間の間継続できる。腫瘍は測径器を用いて毎週2回測定できる。腫瘍の体積を、以下の式「π/6(w1×w2×w2)」を用いて計算でき、ここで「w1」は、最大の腫瘍直径を示し、「w2」は、最小の腫瘍直径を示す。
【0104】
腫瘍体積のデータを、処置時点、および処置時間の相互作用の間での腫瘍の大きさにおける有意差を決定するために、反復測定ANOVA(RM−ANOVA)を用いて分析できる。処置とコントロールとの間のインビトロでの腫瘍細胞の成長の比較を、両側スチューデントT検定(two−tailed Student’s t test)を用いて行うことができる。0.05未満のP値が統計的に有意であると考えられる
【0105】
腫瘍を有するマウスを、腫瘍細胞の静脈注射後または一次腫瘍が確立した24時間後、毎週3回、40mg/kgの投与量で、mAb TGF1処置する。mAb TGF1の全身投与は、PANC−1膵臓癌異種移植片(T/C=69%,ANOVA p<0.03),BXPC−3膵臓癌異種移植片(T/C=30%,ANOVA p<0.0001),およびMDA−MB−231 乳癌異種移植片(T/C=63%,ANOVA p<0.01)の皮下一次腫瘍の成長を抑制する。
【0106】
抗マウスTGFβRII mAb MT1を、免疫担当マウスにおける一次および転移性腫瘍に対する抗腫瘍活性を決定するために、マウス同系(syngenetic)腫瘍モデルにおいて試験する。マウスに、マウス4T1,CT26またはB16 F10癌細胞を静脈注射(i.v.)し、または、EMT6マウス腫瘍細胞を皮下注射(s.c.)する。マウスは、静脈注射接種後または一次皮下腫瘍が確立した24時間後、毎週3回、40mg/kgの投与量で、mAb MT1の投与を受容する。
【0107】
mAb MT1の全身投与は、84%(P<0.0001)で4T1、94%(P<0.0001)でCT26、および63%P<0.001)でB16 F10腫瘍の肺への転移をそれぞれ有意に抑制する。抗マウスTGFβRII mAb MT1は、EMT6 皮下注射腫瘍モデルにおいて、28%(P<0.05)で一次腫瘍の成長および84%(P<0.0001)で不随意的な肺転移を阻害する。
【0108】
Gr−1/CD11b+表現型を有する骨髄性細胞は、腫瘍進行の間、転移を促進し、血管形成の免疫抑制を促進する重要な役割を果たすことが報告されている。CD4/CD25/Foxp3+Treg細胞は、腫瘍細胞に対するナチュラルキラー細胞の機能、および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)免疫エフェクター細胞の機能を抑制する能力を有する。免疫抑制細胞、すなわちCD4/CD25/Foxp3/TGFβRII+Treg細胞およびGr−1+/CD11b+/TGFβRII+骨髄性細胞に対するmAb MT1の阻害活性を、EMT6 皮下注射腫瘍モデルにおいて評価する。腫瘍を有するマウス中のTregおよびGr−1+/CD11b+骨髄性細胞団に対する抗TGFβRII抗体の阻害効果を、mAb MT1によるマウスの処置後のGr−1+/CD11b+団ならびにCD4/CD25/Foxp3/TGFβRII+およびGr−1+/CD11b+/TGFβRII+団の変化についてのFACS分析によって決定できる。
【0109】
抗マウスTGFβRII mAb MT1は、EMT6腫瘍を有する処置済みのマウス中に、95%(P<0.0001)でGr−1+/CD11b+/TGFβRII+骨髄性細胞および71%(P<0.0005)でCD4/CD25/Foxp3/TGFβRII+Treg細胞の数をそれぞれ有意に低減する。
【0110】
これらの結果は、抗TGFβRIIの抗体が、TGFβRII+Tregおよび骨髄性細胞の阻害および/または喪失により、CD4/CD25/Foxp3/TGFβRII+およびGr−1+/CD11b+団を制御できることを示す。
【0111】
マウスにおける線維症モデル
TGFβは、肝星細胞(HSC)の活性化ならびに筋線維芽細胞および線維症の一因となる細胞外マトリックス積における主要調節因子である。動物における肝線維症モデルは、線維症を阻害するTGFβシグナル伝達阻害因子の活性の評価のための実験的なモデルとして広く利用されている。コラーゲン沈着は、肝臓中の線維症の形成についての公知の指標である。線維症の保護および干渉における抗TGFβRII抗体の治療活性を、四塩化炭素(CCl)誘導肝線維症モデルにおいて評価できる。
【0112】
つまり、C57BL6マウスに、1週間に2回、トウモロコシ油を混入した1mL/kgのCCl溶液を腹腔内注射できる。干渉治療グループ中のマウスに、そのマウスにCCl腹腔内注射した14日後、一週間に3回、40mg/kgの投与量でmAb MT1を投与できる。コントロールグループ中のマウスに、同じ量で、コントロールラットIgGを投与できる。CCl注射の8週間後、肝組織および血漿試料を処置後のマウスから収集できる。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血漿レベル、すなわち肝機能障害の指標を、血清ALTキットを用いて決定できる(Pointe Scientific,Inc.MI)。肝臓組織を、コラーゲン沈着のSiriusレッド染色を用いて免疫組織化学(IHC)分析により評価できる。
【0113】
上述のように実質的に行われた研究において、抗マウスTGFβRII mAb MT1は、CClを与えられたマウスの肝臓中、95%(P<00001)で、コラーゲン沈着を有意に低減し、他方で、コントロールラットIgGは効果を有さない。抗マウスTGFβRII mAb MT1は、CClを与えられたマウス中のALTの血漿レベルによって測定されるように、85%(P<0.001)で、肝臓を機能障害から保護し、他方で、コントロールラットIgGで処置したマウスは有意に高いALTレベルを有する。
【0114】
これらの結果は、抗TGFβRII抗体MT1が、損傷によって誘発された線維症および肝機能障害からマウスを保護するのに有効であることを示唆する。
【0115】
mAb MT1およびシクロホスファミドを用いた併用療法についてのインビボでの研究
シクロホスファミド(CTX)、すなわち造血および骨髄性前駆細胞を抑制する能力を有する潜在的細胞毒性薬は、骨髄性細胞に対する阻害効果を有すると報告されている(Honeychurchら,Cancer Res.65:7493−7501(2005)を参照)。EMT6−腫瘍を有するマウス、mAb MT1を単独で、CTX単独で、またはそれらの組み合わせで処置できる。例えば、Balb/cマウスまたはC57B6マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)を、癌細胞の接種のために使用できる。確立した腫瘍を有するマウスを、例えば、グループ毎に12匹の動物となるように無作為化できる。動物に、40mg/kgの抗TGFβRII mAbまたは80mg/kgのCXT、あるいは両方の組み合わせを、毎週3回腹腔内投与できる。コントロールグループ中のマウスは、等量の生理食塩水または通常のIgG溶液を受容できる。腫瘍の大きさを、以下の式「π/6(w1×w2×w2)」を用いて計算でき、ここで「w1」は、最大の腫瘍直径を示し、「w2」は、最小の腫瘍直径を示す。
【0116】
上述のように、実質的に行われる抗マウスTGFβRII mAb MT1およびCTXを用いた併用療法は、一次腫瘍成長の阻害において、mAb MT1 28%(P<0.05)またはCTX 62%(P<0.0005)、ならびに、転移の阻害において、mAb MT1 84%(P<0.0001)またはCTX 96%(P<0.00001)を用いた単剤療法と比較して、EMT6腫瘍を有するマウスにおいて、80%(P<0.0001)で一次腫瘍成長および99.99%(P<0.000001)で不随意的な肺転移を低減する。
【0117】
その結果は、骨髄性細胞抑制化学療法と組み合わせた抗TGFβRII抗体によるTGFβRII陽性骨髄性細胞のサブセットの阻害が、腫瘍の成長および転移における干渉のために効果的なストラテジーであることを証明する。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]