特許第5667080号(P5667080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667080
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】硬化性組成物、その硬化物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/14 20060101AFI20150122BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20150122BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20150122BHJP
   C08K 13/02 20060101ALI20150122BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20150122BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C08L33/14
   C08K5/3492
   C08K5/36
   C08K13/02
   C08F220/36
   H05K3/28 C
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-543204(P2011-543204)
(86)(22)【出願日】2010年11月10日
(86)【国際出願番号】JP2010070005
(87)【国際公開番号】WO2011065228
(87)【国際公開日】20110603
【審査請求日】2013年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2009-271923(P2009-271923)
(32)【優先日】2009年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-134319(P2010-134319)
(32)【優先日】2010年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】三木 禎大
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】原嶋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】梁 仁丁
(72)【発明者】
【氏名】高井 桃子
【審査官】 鈴木 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−126699(JP,A)
【文献】 特開2000−327724(JP,A)
【文献】 特開平10−204326(JP,A)
【文献】 特開2010−229220(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/035627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F283/01
C08F290/00−290/14
C08F299/00−299/08
C08F301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にカルボキシ基を有さず、2以上の不飽和基を有する分子量500〜5000の化合物(A)と、
光重合開始剤(B)と、
分子中に2以上の不飽和基を有する反応性希釈剤(C)と、
分子中にアミノ基又はイミノ基を少なくとも一つ以上有する化合物(D)と、を含有する硬化性組成物であって、
前記化合物(A)が、下記一般式(i)
【化1】

[式(i)中、Rは、−CH−又は−CHO−R01−を表し、Rは、メチル基又は水素を意味し、点線は二重結合であっても良い結合箇所を示し、Gは、下記一般式(ia)、(ib)又は(ic)で表される、2価又は3価の基を表し、mはGの価数に対応する数であり、R01は、炭素数2〜10の分岐又は直鎖状アルキレン基を表す。
【化2】
(式(ia)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)
【化3】
(式(ib)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を意味する。)
【化4】
(式(ic)中、pは2〜5の整数を意味する。)]で表される化合物であり、
前記化合物(D)が、メラミン、下記式(ix)
【化5】
(式(ix)中、R12は−NR1819を表し、R13、R14、R15、R16、R18、R19は、それぞれ相互に独立に、水素、メチロール基、またはメトキシメチル基を意味する。)で表されるメラミン誘導体、又はN'-tert-ブチル-N-シクロプロピル-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンであることを特徴とする硬化性組成物
【請求項2】
前記反応性希釈剤(C)が、下記一般式(ii)で表されるトリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする、請求項に記載の硬化性組成物。
【化6】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基又は水素を意味する。n及びmは、それぞれ独立して0〜5の整数を意味する。)
【請求項3】
前記反応性希釈剤(C)が、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ソルダーレジストのインキ用である、請求項1〜3いずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項に記載の硬化性組成物であって、インクジェットによるソルダーレジストのインキ用であり、粘度が25℃で200mPa・s以下であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜いずれかに記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項に記載の硬化物を用いたプリント配線板。
【請求項8】
さらに酸化チタンを含有する、請求項1〜いずれかに記載の硬化性組成物の硬化物による皮膜を有する反射シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な硬化性組成物、より詳細には、プリント配線板の製造に用いられるソルダーレジストやマーキングインキ等に用いられる硬化性組成物、その硬化物、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一部の民生用プリント配線板並びに殆どの産業用プリント配線板用に、液状現像型ソルダーレジストインキ組成物が使用されている。液状現像型ソルダーレジスト組成物は、紫外線照射後、現像することにより画像形成し、熱及び光照射で仕上げ硬化(本硬化)されて使用され、高精度、高密度のプリント配線板の製造を可能とする。
【0003】
レジストインキ組成物の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂と、不飽和基含有モノカルボン酸の反応生成物に酸無水物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂、光重合開始剤、希釈剤及びエポキシ樹脂からなるレジストインキ組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたソルダーレジストインキ組成物は、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂とが使用前に反応するのを防止するために二液型としており、使用直前に混合しなければならないという問題点があった。
【0005】
また、昨今では、プリント配線板の製造工程の効率化を目的として、インクジェットプリンタでソルダーレジストパターンを描画することが提案されている。
【0006】
インクジェットプリンタによるソルダーレジストのインキ組成物として、特許文献2には、アリル基含有ジイミド化合物と、ビスマレイミド化合物と、希釈剤とを含有することにより、低粘度で、作業性、保存安定性、耐熱性、耐薬品性、無電解金メッキ耐性に優れる硬化性組成物が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、アリル基含有ジイミド化合物と、ビスマレイミド化合物と、平均粒子径5乃至100nmのシリカ又はアルミナ微粒子を希釈剤に分散してなるディスパージョンと、希釈剤とを含有することにより、低粘度で、耐熱性及び重ね塗り性に優れる樹脂組成物が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】PCT/JP2006/300279号公報
【特許文献3】特開2008−37898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、各用途において優れた性能を有する硬化物を提供することが可能な硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は以下の(1)〜(12)に係る構成により、上述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
(1)分子中にカルボキシ基を有さず、2以上の不飽和基を有する分子量500〜5000の化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、分子中に2以上の不飽和基を有する反応性希釈剤(C)と、分子中にアミノ基又はイミノ基を少なくとも一つ以上有する化合物(D)と、を含有することを特徴とする硬化性組成物。
(2)前記化合物(A)が下記一般式(i)で表される化合物である、(1)に記載の硬化性組成物。
【0011】
【化1】
[式(i)中、Rは、−CH−又は−CHO−R01−を表し、Rは、メチル基又は水素を意味し、点線は二重結合であっても良い結合箇所を示し、Gは、下記一般式(ia)、(ib)又は(ic)で表される、2価又は3価の基を表し、mはGの価数に対応する数であり、R01は、炭素数2〜10の分岐又は直鎖状アルキレン基を表す。
【0012】
【化2】
(式(ia)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)
【化3】
(式(ib)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を意味する。)
【化4】
(式(ic)中、pは2〜5の整数を意味する。)]
(3)前記化合物(A)が、アリル基含有ジイミド化合物であることを特徴とする、(1)に記載の硬化性組成物。
(4)前記反応性希釈剤(C)が、下記一般式(ii)で表されるトリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする、(1)〜(3)いずれかに記載の硬化性組成物。
【0013】
【化2】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基又は水素を意味する。n及びmは、それぞれ独立して0〜5の整数を意味する。)
(5)前記反応性希釈剤(C)が、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上を含有することを特徴とする、(1)〜(4)何れかに記載の硬化性組成物。
(6)前記化合物(D)が、トリアジン系化合物である、(1)〜(5)いずれかに記載の硬化性組成物。
(7)前記トリアジン系化合物が、メラミン、メラミン誘導体又はN'-tert-ブチル-N-シクロプロピル-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンであることを特徴とする、(6)に記載の硬化性組成物。
(8)ソルダーレジストのインキ用である、(1)〜(8)何れかに記載の硬化性組成物。
(9)(8)に記載の硬化性組成物であって、インクジェットによるソルダーレジストのインキ用であり、粘度が25℃で200mPa・s以下であることを特徴とする硬化性組成物。
(10)(1)〜(9)いずれかに記載の硬化性組成物の硬化物。
(11)(10)に記載の硬化物を用いたプリント配線板。
(12)さらに酸化チタンを含有する、(1)〜(7)いずれかに記載の硬化性組成物の硬化物による皮膜を有する反射シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた特性を有する硬化物を形成することが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。
[硬化性組成物]
化合物(A)
化合物(A)としては、カルボキシル基を有さず、2以上の不飽和基を有し、分子量(モノマーを構成単位とする高分子化合物にあっては、重量平均分子量を言う。本発明において同じ。)が5000以下のものであれば制限されないが、好ましくは、アリル基含有ジイミド化合物を用いることが好ましい。
【0016】
アリル基含有ジイミド化合物の具体例としては、特に制限されないが、下記式(iii)で表される化合物を好適に使用することが出来る。
【0017】
【化3】
【0018】
ここで、一般式(iii)において、Rは、アルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を意味する。これらの基の炭素数としては、典型的には、1〜18個である。このような基としてより具体的には、−(CH)n−で表される直鎖状アルキレン基(n:1〜18の整数、好ましくはn=6)や、下記式であらわされる基があげられる。
【0019】
【化4】
【0020】
また、アリル基含有ジイミド化合物として、本発明者による下記一般式(i)で表される新規化合物を用いることもできる。
【化1】
[[式(i)中、Rは、−CH−又は−CHO−R01−を表し、Rは、メチル基又は水素を意味し、点線は二重結合であっても良い結合箇所を示し、Gは、下記一般式(ia)、(ib)又は(ic)で表される、2価又は3価の基を表し、mはGの価数に対応する数であり、R01は、炭素数2〜10の分岐又は直鎖状アルキレン基を表す。
なお、点線の結合箇所が二重結合である場合には、3箇所すべてが二重結合であることが好ましい。
【0021】
【化2】
(式(ia)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)
【化3】
(式(ib)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を意味する。)
【化4】
(式(ic)中、pは2〜5の整数を意味する。)]
なお、上記の一般式(ia)〜(ic)において、波線と交差した結合は、(i)式におけるGとN原子の間の結合を示す。式から明らかなとおり、一般式(i)のN原子は、酸素原子又はカルボニル基のオルト位、メタ位又はパラ位のいずれでも良いが、好ましくはパラ位である。
【0022】
一般式(i)で表される化合物は、下記実施例において詳述するように、一般式(vii)〜(viii)で表されるトリアミンから誘導することが出来る。
【0023】
【化5】
【0024】
また、一般式(vi)〜(viii)で表されるトリアミンは、下記実施例において詳述するように、通常公知の化合物を出発原料として公知の反応を経て合成することが可能である。
【0025】
なお、化合物(A)の分子量は、その値が小さいとはんだ耐熱性が低下することから、500以上であることが好ましい。
【0026】
また、化合物(A)の含有量は、組成物全量に対して40〜95質量%が好ましく、さらには50〜85質量%が好ましい。化合物(A)の含有量が40質量%未満であると、感光性が低下し、塗膜硬度の低下となるおそれがあり、95質量%を超えると架橋点が低下し、適切な塗膜特性が得られなくなるおそれがある。
【0027】
光重合開始剤(B)
光重合開始剤としては、熱又は活性エネルギー線照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を好適に使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドや、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール系化合物;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ−フェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−s−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。なお、銅箔等の金属表面を酸化させるおそれがあることから、過酸化物は使用しないことが好ましい。
【0028】
また、透明な硬化膜を形成する場合に、着色のない硬化膜を形成するのに特に好ましい光重合開始剤は、α−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、特には下記一般式(I)で表されるα−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤である。
【0029】
【化8】

式(I)において、Rは、任意に置換されていて良い、単環式又は多環式の芳香族基である。Rの具体例としては、フェニル及びナフチル基等があげられる。Rの可能な置換基としては、フッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルコキシ基等があげられる。
【0030】
10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基を示すか、一緒になって合計炭素数5〜10のシクロアルキル基を示す。
【0031】
この様なα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−2メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンなどがあげられる。
【0032】
これら光重合開始剤は、単独または2種類以上を混合して用いても良く、化合物(A)を100質量部とした場合に、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部である。光重合開始剤の配合量が1質量部未満であると感光性の低下となるおそれがあり、20質量部を超えた場合、塗膜特性の低下が起こり、好ましくない。
【0033】
反応性希釈剤(C)
反応性希釈剤(C)としては、分子中に2以上の不飽和基を有するものであれば特に制限はなく、通常公知のものを使用することが出来る。より具体的には、1,3―ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのなどの1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基が2個以上有する化合物が挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートのいずれかであっても、両方であっても良いことを意味する。
【0034】
また、反応性希釈剤(C)として、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば下記一般式(ii)で表される化合物を用いることも出来る。
【0035】
【化8】
【0036】
ここで、式中、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基又は水素を意味する。n及びmは、それぞれ独立して0〜5、好ましくは0〜3の整数を意味する。
【0037】
これら反応性希釈剤は、単独または2種類以上を混合して用いても良く、化合物(A)を100質量部とした場合に、合計で、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは10〜150質量部である。反応性希釈剤(C)の配合量が5質量部未満であると感光性低下となるおそれがあり、200質量部を超えた場合、同時に耐熱性低下が起こるおそれがあり、好ましくない。
【0038】
また、硬化性組成物をインクジェット方式によるソルダーレジストのインキとして用いる場合には、ニジミ発生を防止し、十分な精度を確保するために、粘度を200mPa・s以下、好ましくは10〜150mPa・sとする必要があるので、反応性希釈剤(C)により、適宜粘度を調節する必要がある。この場合、分子中に1の不飽和基を有する単官能モノマーも併用することができ、このようなものとして、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、東亜合成(株)社製のフェノールEO変性アクリレート(商品名M−102)、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(商品名M−140)、マレイミドアクリレート(商品名M−145)、2−エチルヘキシルEO変性アクリレート(商品名M−120)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(商品名M−5700)、オキサゾリンドンアクリレート(商品名MT−1000)等が挙げられる。これら単官能モノマーの好ましい含有量は、化合物(A)100質量部に対して、合計で、40〜150質量部、さらには40〜120質量部である。
【0039】
化合物(D)
1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物としては、従来公知のものであれば、いずれも使用することができ、例えば、トリアジン系化合物をあげることが出来る。トリアジン系化合物としては、式(ix)で表される化合物があげられる。
【0040】
【化9】
【0041】
ここで、式中、R12は、−SR17(但しR17は、炭素数1〜5(好ましくは1〜3)のアルキル基を意味する。)又は−NR1819を意味する。また、R13、R14、R15、R16、R18、R19は、それぞれ相互に独立に、水素、シクロプロピル基、t−ブチル基、メチロール基、またはメトキシメチル基を表す。
【0042】
これらのうち、メラミン、メラミン誘導体(例えば、R12が−NR1819であり、R13、R14、R15、R16、R18、R19が、それぞれ相互に独立に、水素、メチロール基、またはメトキシメチル基である化合物)を好適に用いることができる。市販されているメラミン誘導体には、例えば、(株)三和ケミカル社製の「ニカラックMW−30HM」、「ニカラックMW−390」、「ニカラックMW−100LM」、「ニカラックMX−750LM」、「ニカラックMX−750」、「ニカラックMX−002」等を挙げることができる。
【0043】
また、R12が−SR17である化合物の具体例としては、N'-tert-ブチル-N-シクロプロピル-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンを使用することができ、市販されているチバ・ジャパン(株)製の「IRGAGUARD D1071」、「IRGAROL 1051」等を挙げることができる。
【0044】
化合物(A)100質量部に対して、1分子中にアミノ基またはイミノ基を少なくとも1以上有する化合物の配合量の下限値は、硬化速度を確保する点から0.2質量部であり、耐変色性を高める点から1.0質量部が好ましく、さらにはんだ耐熱性をより高める点から1.5質量部が特に好ましい。また、配合量の上限値は、硬化塗膜の耐水性の点から10質量部であり、保存安定性を高める点から3質量部が特に好ましい。
【0045】
その他の成分
本発明の組成物は、更に、密着性、硬度などの特性を向上する目的で必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸アルミニウム、雲母粉等の通常公知の無機充填剤が使用できる。その使用量は、本発明の組成物中の0〜60重量が好ましく、特に好ましくは5〜40重量%である。
【0046】
更に、必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、グリスタルバイオッレト、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの通常公知の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等の通常公知の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/または、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような通常公知の添加剤類を用いることができる。
【0047】
[硬化物]
上述のようにして得られた本発明の硬化性組成物は、例えば銅張り積層板の銅箔をエッチングして形成した回路のパターンを有するプリント配線板に所望の厚さ、例えば5〜100μmの厚さで塗布される。インクジェット方式以外の塗工の手段としては、現在スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられるが、均一に塗工できる塗工手段であれば、これに限らずどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコーター、ホンメルトコーター、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、エアナイフコータ、カーテンフローコータ、ロールコータ、グラビアコータ、オフセット印刷、ディップコータ、刷毛塗り、その他通常の方法は全て使用できる。
【0048】
塗工後、LDI(Laser Direct imaging)を用いたレーザー直描、あるいは、活性エネルギー線による光硬化工程が行われる。プリント配線板製造では活性エネルギー線として紫外線が多く用いられる。紫外線の照射量はおおむね10〜1000mJ/cmである。
【0049】
次いで、熱硬化工程として、例えば130〜170℃の熱風炉又は遠赤外線炉等の乾燥機等で例えば20〜80分間加熱を行ない、これによりソルダーレジスト皮膜を形成せしめることができる。
【0050】
[プリント配線板]
本発明に係るプリント配線板は、上記の硬化物を用いることを特徴とする。ここで、プリント配線板としては、集積回路、抵抗器、コンデンサー等の電子部品を含まない基板だけのもの及び電子部品を実装した状態のものをも含む。
【0051】
本発明のプリント配線板は、家電製品、オフィス機器、自動車、コンピュータ、工業用機器等の種々の電気製品の部品として使用することが出来る。
【0052】
[反射シート]
上記した本発明の実施形態例に係る硬化性組成物に、さらにルチル型酸化チタン等の酸化チタンを所定量配合することで、白色の組成物とし、この白色の硬化性組成物をシート状のベースフィルム上に塗布して反射シートを得ることができる。例えば、上記反射シートを、太陽電池モジュールの裏面側、すなわち日射を受ける表面とは反対側の表面上に配置する。すると、太陽電池モジュールの発電素子に受光されずに太陽電池モジュール内を透過した太陽光が、上記反射シートにより反射されて太陽電池モジュールの裏面側から再度太陽電池モジュール内部に戻されるので、太陽電池モジュールの発電効率が向上する。なお、太陽電池モジュール裏面への反射シートの設置方法には、例えば、接着剤や接着用テープを用いて太陽電池モジュール裏面に直接貼り合わせる方法が挙げられる。また、酸化チタンの配合量としては、化合物(A)100質量部に対して、30〜250質量部、50〜100質量部、さらには60〜80質量部の範囲が好ましい。
【0053】
白色の硬化性組成物が塗工されるベースフィルムの材料は、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルフロライド(PVF)、フッ化エチレン・プロピレンコポリマー(FEP)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、アラミド、ポリアミド・イミド、エポキシ、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)等を挙げることができる。
【0054】
白色の硬化性組成物を、シート状のベースフィルム上に塗工する方法は特に限定されないが、[硬化物]の欄で説明した方法や、例えば、厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面を3%硫酸で処理して表面を洗浄後、洗浄した表面に、スクリーン印刷等公知の印刷方法を用いて白色の硬化性組成物を所定の厚さ、例えば、硬化後の膜厚が20〜23μmとなるように塗工する方法を用いることが出来る。白色の硬化性組成物の塗工部位は、太陽電池モジュール裏面に対向したベースフィルム表面の全面または略全面について行なう。次いで、130〜170℃程度の温度で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、シート状のベースフィルム上に目的とする白色の膜を形成させることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。なお、以下の実験において重量平均分子量は、GPCにより、THFを移動相として、ポリスチレン換算で測定した(装置名:HLC−9120(東ソー(株)社製)、カラム:TSKgelSuperHZ2500、スピード:0.3mL/分、溶質濃度:10g/l、温度:40℃、検出器:RI)。
【0056】
(1)原料の準備方法
(1−1)化合物(A−1)の合成
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)JER834)240質量部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート120質量部に溶解したものにアクリル酸72質量部を加え加熱還流条件下、定法により反応させ、化合物(A)に相当する合成樹脂1を得た(重量平均分子量500)。
(1−2)化合物(A−2)の合成
(1−2−1)トリアミン化合物の合成
1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]−1,1−ビス[4−ヒドロキシフェニル]エタン(本州化学工業社製 trisP−PA)42.5g(0.1mol)とp−クロロニトロベンゼン50.4g(0.32mol)と炭酸カリウム55.3g(0.4mol)を加え、N−メチルピロリドン150g溶媒中で、窒素気流下5時間還流、攪拌し反応させた。室温まで冷却した後、減圧濾過により複製した無機塩及び残留した炭酸カリウム取り除くことにより、トリニトロ体のN−メチルピロリドン溶液を得た。
【0057】
続いて、攪拌機、温度計、還流管と窒素導入管を備えた1Lの4つ口フラスコに得られたトリニトロ体のN−メチルピロリドン溶液とプロピレングリコールモノメチルエーテル150g及び5%パラジウム炭素1.0gを加え、フラスコ内を窒素置換した後、攪拌しながら80〜85℃に昇温後、60%ヒドラジン水溶液50mlをゆっくり滴下し、反応温度を80〜95℃になるように調節しながら5時間加熱攪拌した。その後HPLCで反応液を分析しながら、トリニトロ体の還元中間体のピークが消失したのを確認した後反応を停止した。冷却後減圧濾過によりパラジウム炭素を取り除いた反応液に、攪拌しながらメタノール300g及び水600gをゆっくり投入し、析出物を減圧濾過で回収し、水洗した後真空乾燥して下記式(x)であらわされるトリアミン化合物の茶白色結晶を得た。収量は62.5g(収率92%)であった。
【0058】
【化10】
【0059】
HPLC面積(%) 99.3%、H−NMR(DMSOd−6、TMS)δ7.14−7.10(m、4H)、6.94−6.91(m、6H)、6.77−6.73(m、12H)、6.59−6.55(m、6H)、4.96(s、6H)、2.01(s、3H)、1.58(s、6H)
【0060】
(1−2−2)化合物(A2)の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、還流管及びディーンスタークトラップを備えた300ml4つ口フラスコに水添トリメリット酸無水物(H−TMAn−s、三菱ガス化学製)39.63g(0.2mol)及び溶媒としてγ−ブチロラクトン30gを加え、10〜15℃に冷却下攪拌しながら、(1−2−1)で合成したトリアミン化合物46.5g(0.067mol)をガンマブチロラクトン70gに溶解させた溶液を30分かけて滴下した後、室温で1時間攪拌することでイミド前駆体樹脂溶液を得た。得られたイミド前駆体樹脂溶液にシクロペンチルメチルエーテル30gを加えて窒素を流通させて生成する水を共沸脱水により取り除きながら130℃で2時間、更に150℃で2時間加熱攪拌することで末端にカルボキシルを有するイミド化合物のγ−ブチロラクトン溶液を得た。つづいてグリシジルメタクリレート(ブレンマーGH、日油製)42.7g(0.3mol)及び重合禁止剤としてメトキシハイドロキノン0.2g、反応触媒としてトリフェニルホスフィン0.2gを加え、フラスコ内に乾燥空気を流通させながら90℃で5時間加熱攪拌後、更に100℃で10時間加熱攪拌し、固形分酸価が2mgKOH/g以下になるまで反応を行うことで、化合物(A)に相当する下記式(xi)の構造の化合物のγ−ブチロラクトン溶液を得た(分子量1665)。固形分は57%で、GPCでの重量平均分子量約2800であった。
【0061】
【化11】
【0062】
(1−3)化合物A3の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、還流管及びディーンスタークトラップを備えた500ml4つ口フラスコに水添トリメリット酸無水物(H−TMAn−s、三菱ガス化学製)237.8g(1.2mol)及び溶媒としてγ−ブチロラクトン540gを加え、10〜15℃に冷却下攪拌しながら、上記トリアミン化合物279.14g(0.4mol)をガンマブチロラクトン60gに溶解させた溶液を30分かけて滴下した後、室温で1時間攪拌することでイミド前駆体樹脂溶液を得た。得られたイミド前駆体樹脂溶液にシクロペンチルメチルエーテル100gを加えて窒素を流通させて生成する水を共沸脱水により取り除きながら130℃で2時間、更に150℃で2時間加熱攪拌することで末端にカルボキシルを有するイミド化合物のγ−ブチロラクトン溶液を得た。つづいて4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE、日本化成製)360.18g(1.8mol)及び重合禁止剤としてメトキシハイドロキノン3.0g、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.5gを加え、フラスコ内に乾燥空気を流通させながら90℃で5時間加熱攪拌後、更に100℃で10時間加熱攪拌し、固形分酸価が2mgKOH/g以下になるまで反応を行うことで、化合物A3のγ−ブチロラクトン溶液を得た(分子量1838)。固形分は53.5%で、GPCでの重量平均分子量約2400であった。合成スキームを以下に示す。
【0063】
【化12】
【0064】
(1−4)化合物A4の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、還流管及びディーンスタークトラップを備えた500ml4つ口フラスコに水添トリメリット酸無水物(H−TMAn−s、三菱ガス化学製)99.09g(0.5mol)及び溶媒としてγ−ブチロラクトン180gを加え、10〜15℃に冷却下攪拌しながら、(2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン102.55g(0.25mol)をガンマブチロラクトン30gに溶解させた溶液を30分かけて滴下した後、室温で1時間攪拌することでイミド前駆体樹脂溶液を得た。得られたイミド前駆体樹脂溶液にシクロペンチルメチルエーテル50gを加えて窒素を流通させて生成する水を共沸脱水により取り除きながら130℃で2時間、更に150℃で2時間加熱攪拌することで末端にカルボキシルを有するイミド化合物のγ−ブチロラクトン溶液を得た。つづいてグリシジルメタクリレート(ブレンマーGH、日油製)106.88g(0.75mol)及び重合禁止剤としてメトキシハイドロキノン0.5g、反応触媒としてトリフェニルホスフィン0.5gを加え、フラスコ内に乾燥空気を流通させながら90℃で5時間加熱攪拌後、更に100℃で10時間加熱攪拌し、固形分酸価が2mgKOH/g以下になるまで反応を行うことで、化合物A4のγ−ブチロラクトン溶液を得た(分子量1055)。固形分は62.5%で、GPCでの重量平均分子量約1190であった。合成スキームを以下に示す。
【0065】
【化13】
【0066】
(1−5)化合物A5の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、還流管及びディーンスタークトラップを備えた500ml4つ口フラスコに水添トリメリット酸無水物(H−TMAn−s、三菱ガス化学製)99.09g(0.5mol)及び溶媒としてγ−ブチロラクトン180gを加え、10〜15℃に冷却下攪拌しながら、(トリメチレン ビス(4−アミノベンゾアート:CUA-4イハラケミカル工業製)78.53g(0.25mol)をガンマブチロラクトン20gに溶解させた溶液を30分かけて滴下した後、室温で1時間攪拌することでイミド前駆体樹脂溶液を得た。得られたイミド前駆体樹脂溶液にシクロペンチルメチルエーテル50gを加えて窒素を流通させて生成する水を共沸脱水により取り除きながら130℃で2時間、更に150℃で2時間加熱攪拌することで末端にカルボキシルを有するイミド化合物のγ−ブチロラクトン溶液を得た。つづいてグリシジルメタクリレート(ブレンマーGH、日油製)106.88g(0.75mol)及び重合禁止剤としてメトキシハイドロキノン0.5g、反応触媒としてトリフェニルホスフィン0.5gを加え、フラスコ内に乾燥空気を流通させながら90℃で5時間加熱攪拌後、更に100℃で10時間加熱攪拌し、固形分酸価が2mgKOH/g以下になるまで反応を行うことで、化合物A5のγ−ブチロラクトン溶液を得た(分子量958)。固形分は57%で、GPCでの重量平均分子量約1080であった。合成スキームを以下に示す。
【0067】
(1−6)比較化合物1
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)JER834)240質量部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート120質量部に溶解したものにアクリル酸72質量部を加え加熱還流条件下、定法により反応させ、続いて、テトラヒドロ無水フタル酸83質量部を定法により反応させて重量平均分子量500の1分子中にカルボキシル基を有し、且つ2以上の不飽和基を有する樹脂を得た。
【0068】
(1−7)比較化合物2
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)JER1010)400質量部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート120質量部に溶解したものにアクリル酸7.2質量部を加え加熱還流条件下、定法により反応させ、重量平均分子量5800の1分子中にカルボキシル基を有さず、2以上の不飽和基を有する樹脂を得た。
【0069】
(2)評価試験片作製方法
(2−1)実施例1〜7及び比較例1〜5
表1に示される重量比で各配合物を3本ロールで混合分散させて、硬化性樹脂組成物を調製した。また、硬化塗膜の作製工程は以下の通りである。
【0070】
表面処理:バフ研磨
塗膜膜厚:dry20〜23μm
塗工:バーコーター塗布
UV照射: レジスト上: 400mJ/cm(オーク社製HMW−680GW)
加熱処理: 150℃−60分(BOX炉内70分)
【0071】
(2−2)実施例8〜14及び比較例6〜10
表2に示される重量比で各配合物を3本ロールで混合分散させて、白色の硬化性樹脂組成物を調製した。厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、「ルミラー」)の表面を3%硫酸水溶液で処理して表面を洗浄後、DRY膜厚が20〜23μmとなるように白色の硬化性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の表面全体にスクリーン印刷法にて塗布し、上記と同様のUV照射及び加熱処理条件で硬化塗膜を作製し、試験片とした。なお、反射率に関しては、加速試験である環境放置に伴うポリエチレンテレフタレート自体の劣化の影響を除くため、ガラス板(1.2mm厚)上に同様な方法にて硬化塗膜を形成し評価した。
【0072】
(2−3)実施例15〜30
表3に示される重量比で各配合物を3本ロールで混合分散させて樹脂組成物を調製した。厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ製)の表面をイソプロピルアルコールを用いて脱脂処理した。次いで、DRY膜厚が10〜15μmとなるように樹脂組成物を当該フィルムにバーコーター塗布し、500〜2000mJ/cm(ランプ光源:メタルハライドランプ)のUVを照射した。ついで、120〜150℃で60分(BOX炉内70分)ポストキュアして試験片を作製した。
【0073】
(3)評価方法
(3−1)粘度測定
硬化性組成物の粘度を音叉型振動式粘度計により測定した。
【0074】
測定装置名:SV型粘度計(SV−10)、(株)エー・アンド・デイ社製
固有周波数:30Hz、測定温度:25℃
【0075】
(3−2)保存安定性(増粘率)
樹脂組成物を音叉型振動式粘度計にて粘度測定(25℃)を行い、恒温槽にて50℃−7日間後の増粘率を求めた。増粘率1.1未満を◎、1.1以上−1.2未満を○、1.2以上−1.5未満を△、1.5以上を×と評価した。
【0076】
(3−3)変色性評価
実施例1〜7及び比較例1〜5については、硬化塗膜を260℃で5分間加熱後、変色を目視にて評価した。変色なしのものを○、変色が若干認められるものを△、黄変したものを×と評価した。実施例15〜30に関しては、上記(2−3)におけるポストキュア後の基板を目視にて確認し同様に評価した。
【0077】
(3−4)塗膜硬度
銅箔上の硬化塗膜の鉛筆硬度を、JIS K−5600−5−4の試験方法に従って評価した。
【0078】
(3−5)はんだ耐熱性
はんだ耐熱性は、試験片の硬化塗膜を、JIS C−6481の試験方法に従って、260℃のはんだ槽に30秒間浸せき後、セロハンテープによるピーリング試験を1サイクルとし、これを1〜3回繰り返した後の塗膜状態を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
◎:3サイクル繰り返し後も塗膜に変化が認められない。
○:3サイクル繰り返し後の塗膜にほんの僅か変化が認められる。
△:2サイクル繰り返し後の塗膜に変化が認められる。
×:1サイクル繰り返し後の塗膜に剥離が認められる。
【0079】
(3−6)絶縁特性
絶縁特性はIPC−TM−650のIPC−SM840B B−25テストクーポンのくし形電極を用い、85℃、85%R.H.で200時間加湿した後の絶縁抵抗を、DC50Vを印加して測定した。
【0080】
(3−7)反射率
分光光度計U‐3410((株)日立製作所製:φ60mm積分球)を用いて、硬化塗膜を被覆した試験片の450nmにおける反射率を測定した。また、「初期」とは評価試験片作製直後、評価試験片を作製後、「加温加湿後」とは85℃、85%RHにて、1000時間放置後を意味する。
(3−8)透過率
樹脂組成物を石英ガラス(50×50×1mm)に塗工し、(2−3)の条件で硬化させた後、硬化膜に対してJIS-K-7105、JIS-K-7136に準じて、日立ハイテク社製U-3310分光高度計を用いて全光線透過率を測定した。
(3−9)ヘーズ
樹脂組成物を石英ガラス(50×50×1mm)に塗工し、(2−3)の条件で硬化させた後、硬化膜に対してJIS-K-7105、JIS-K-7136に準じて、日立ハイテク社製U-3310分光高度計を用いてヘーズを測定した。
(3−10)折り曲げ試験
(2−3)の条件で硬化塗膜を形成した試験片をハゼ折りにより180°折り曲げを数回繰り返して行い、その際の透明絶縁膜におけるクラック発生状況を目視及び200倍の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生し無かった回数を評価した。
(3−11)伸び率(%)
樹脂組成物をPETフィルムに厚さ50μm±10μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した後、(2−3)の予備乾燥からポストキュアまでの工程を行い、硬化塗膜を形成した。つづいて作成された硬化塗膜をPETフィルム(125μm)から剥がし所定の大きさに切断したものついて、SHIMAZU社製オートグラフを使用し、引っ張り速度5mm/minの条件で伸び率を測定した。
【0081】
(4)実験結果
各樹脂組成物(硬化物)の評価結果を表1〜表3に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
*1:式(iv)で表されるアリル基含有ジイミド(丸善石油化学社製)
*2:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)
*3:メラミン誘導体(MX−750LM、(株)三和ケミカル社製)
*4:フタロシアニングリーン(リオノールグリーン2Y−301、東洋インキ製造(株)社製)
*5:シリカ(MIN−U−SIL 5、林化成(株)社製)
*6:消泡剤(KS−66、信越化学工業(株)社製)
*7:チクソ性付与剤(R−974、日本アエロジル(株)社製)
*8:2.4.6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(SPEEDCURE TPO、日本シイベルヘグナー(株)社製)
*9:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819、チバ スペシャルティ ケミカルズ(株)社製)
EBECRYL3708:ダイセル・サイテック(株)製、二官能変性エポキシアクリレート、重量平均分子量1500
EBECRYL9270:ダイセル・サイテック(株)製、二官能ウレタンアクリレート、重量平均分子量1000
イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
ダロキュア1173:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン
イルガキュア2959:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、1‐[4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル]‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロパン‐1‐オン
イルガキュア127:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン
イルガキュア651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、ベンジルジメチルケタール系光重合開始剤(2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン)
イルガキュア369:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、α‐アミノケトン系光重合開始剤(2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルフォリノフェニル)‐ブタノン‐1)
MX708:メラミン誘導体、(株)三和ケミカル社製
MX002:メラミン誘導体、(株)三和ケミカル社製
【0086】
表1から明らかなとおり、本発明の硬化性組成物は、保存安定性、変色性評価、はんだ耐熱性がいずれも優れていることが分かる。なお、実施例6では、保存安定性がやや劣る傾向があったことから、メラミンの含有量としては2質量部程度が適切であることが分かる。
【0087】
また、本発明の硬化性組成物は、いずれも、塗膜硬度が3H以上(好ましくは4H以上)、絶縁抵抗が0.8×1012Ω以上という良好な結果となった。特に、実施例2及び実施例3の組成物については、評価項目がいずれも良好であり、優れていることが分かる。
【0088】
さらに、表2から明らかなとおり、本発明の硬化性組成物の硬化物は、優れた反射率を有し、塗膜硬度も良好であることから、太陽電池モジュール用の反射シートとしても好適である。
また、表3から、実施例15〜30の硬化性組成物の硬化物、特に実施例15〜25の硬化性組成物の硬化物は、良好な透明性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の硬化性組成物は、保存安定性に優れ、硬化後の塗膜が十分な硬度、ハンダ耐熱性、絶縁抵抗を有するとともに、はんだ付けの際等に変色が生じにくいという優れた特性を有し、プリント配線板製造原料として有用である。
また、本発明の硬化性組成物の硬化物は、優れた反射率を有し、塗膜硬度も良好であることから、太陽電池モジュール用の反射シートとしても好適である。
また、本発明の硬化性組成物による透明な硬化物は、タッチパネル電極基板などの製造に好適である。