(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明のはんだ組成物について説明する。
本発明のはんだ組成物は、以下説明するはんだ粉末およびビヒクルを含有するものである。なお、ビヒクルとは、ロジン系樹脂、溶剤、有機酸およびイミダゾール化合物を含有するものである。
本発明に用いるはんだ粉末は、有鉛のはんだ粉末であってもよく、無鉛のはんだ粉末であってもよい。
前記はんだ粉末の含有量は、はんだ組成物100質量%に対して、85質量%以上92質量%以下であることが好ましい。はんだ粉末の含有量が85質量%未満の場合には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にあり、他方、はんだ粉末の含有量が92質量%を超える場合には、バインダーとしてのビヒクルが足りないため、ビヒクルとはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にある。
【0011】
前記はんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、20μm以上36μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、はんだ付ランドのピッチの狭くなってきている最近のプリント回路基板、はんだバンプ形成に対するリフローはんだ付用として好ましい。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0012】
本発明に用いるロジン系樹脂としては、ロジンおよびロジン誘導体が挙げられる。ロジン誘導体としては、変性ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどが挙げられる。これらのロジン系樹脂の中でも、活性作用の観点から、水添ロジンが好ましい。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
前記ロジン系樹脂の含有量は、前記ビヒクル100質量%に対して、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。含有量が前記下限未満では、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付性が低下し、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス残さ量が多くなる傾向にある。
【0014】
本発明に用いる溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。前記溶剤としては、沸点170℃以上の水溶性溶剤を用いることが好ましい。前記溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5−ペンタンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2−エチルヘキシルジグリコール、オクタンジオール、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
前記溶剤の含有量は、前記ビヒクル100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。前記溶剤の含有量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。
【0016】
本発明に用いる有機酸は、炭素数8以上の不飽和脂肪酸を含有することが必要である。また、不飽和脂肪酸の炭素数は、得られるはんだ組成物の保存安定性の観点から、12以上24以下であることが好ましく、14以上20以下であることがより好ましい。
前記不飽和脂肪酸の融点は、得られるはんだ組成物の保存安定性の観点から、25℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましい。
前記不飽和脂肪酸としては、例えば、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸が挙げられる。これらの不飽和脂肪酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノ不飽和脂肪酸としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸などが挙げられる。
ジ不飽和脂肪酸としては、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸などが挙げられる。
トリ不飽和脂肪酸としては、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸などが挙げられる。
【0017】
前記不飽和脂肪酸の含有量は、前記ビヒクル100質量%に対して、2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。不飽和脂肪酸の含有量が前記下限未満では、得られるはんだ組成物の保存安定性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるはんだ組成物のはんだ付性が低下する傾向にある。
【0018】
前記有機酸としては、前記炭素数8以上の不飽和脂肪酸と、これ以外の有機酸とを併用することが好ましい。
前記不飽和脂肪酸以外の有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。これらの有機酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、プチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、ジグリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸などが挙げられる。
前記不飽和脂肪酸以外の有機酸の中でも、活性作用の観点からは、ジグリコール酸、ダイマー酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸などを用いることが好ましく、ジグリコール酸、ダイマー酸などを用いることが特に好ましい。
【0019】
前記不飽和脂肪酸以外の有機酸を用いる場合には、この有機酸の含有量は、前記ビヒクル100質量%に対して、2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。有機酸の含有量が前記下限未満では、得られるはんだ組成物のはんだ付性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるはんだ組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
【0020】
本発明に用いるイミダゾール化合物は、下記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物である。
【0022】
前記一般式(1)において、R
1およびR
2は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示す。また、R
1は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。R
2は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることが特に好ましい。
前記一般式(1)において、Xは、水素原子、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基を示す。ここで、アルキル基の置換基としては、トリアジル基、アルキル基などが挙げられる。
【0023】
前記イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジンが挙げられる。
【0024】
前記イミダゾール化合物の含有量としては、前記ビヒクル100質量%に対して、2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。イミダゾール化合物の含有量が前記下限未満では、得られるはんだ組成物の保存安定性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、はんだ組成物としての性状が不安定(ボソボソした性状)となる傾向にある。
【0025】
本発明のビヒクルには、前記ロジン系樹脂、前記溶剤、前記有機酸および前記イミダゾール化合物の他に、必要に応じて、つや消し剤、酸化防止剤、チクソ剤、消泡剤、防錆剤、界面活性剤、熱硬化剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量としては、前記ビヒクル100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。
【0026】
次に、本発明のはんだ組成物の製造方法について説明する。前記本発明のはんだ組成物は、この製造方法以外の方法で作製することも可能であるが、この製造方法により作製することがより好ましい。
本発明のはんだ組成物の製造方法は、ロジン系樹脂と、溶剤と、炭素数8以上の不飽和脂肪酸と、前記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物とを含有する第一ビヒクルと、はんだ粉末とを混練して予備ペーストを得る第一混練工程と、ロジン系樹脂と、溶剤と、有機酸とを含有する第二ビヒクルと、前記予備ペーストとを混練する第二混練工程と、を備えることを特徴とする方法である。
【0027】
本発明のはんだ組成物の製造方法に用いるはんだ粉末、ロジン系樹脂、溶剤、有機酸、不飽和脂肪酸およびイミダゾール化合物については、前記本発明のはんだ組成物で用いたものと同様のものを用いることができる。
【0028】
前記第一混練工程においては、まず、前記ロジン系樹脂と、前記溶剤と、前記不飽和脂肪酸と、前記イミダゾール化合物とを含有する第一ビヒクルを準備する。このような第一ビヒクルは、前記の各材料を混練することで得られる。混練方法は、特に限定されず、適宜公知の方法を採用できる。
前記第一混練工程においては、次に、前記第一ビヒクルと、前記はんだ粉末とを混練して予備ペーストを得る。混練方法は、特に限定されず、適宜公知の方法を採用できる。また、ここでの混練は予備的な混練であればよい。混練時間は、特に限定されないが、5〜20分間とすることが好ましい。また、混練時の回転速度は、特に限定されないが、5〜40rpmとすることが好ましい。
【0029】
前記第二混練工程においては、まず、前記ロジン系樹脂と、前記溶剤と、前記有機酸とを含有する第二ビヒクルを準備する。このような第二ビヒクルは、前記の各材料を混練することで得られる。混練方法は、特に限定されず、適宜公知の方法を採用できる。
なお、前記第二ビヒクルには、さらに、前記イミダゾール化合物を配合してもよい。これにより、前記有機酸と前記イミダゾール化合物との塩を形成することができ、活性作用と保存安定性とのバランスをとることができる。
前記第二混練工程においては、次に、前記第二ビヒクルと、前記予備ペーストとを混練する。混練方法は、特に限定されず、適宜公知の方法を採用できる。但し、ここでは、予備的な混練(予備混練)をした後に、通常の混練(本混練)をすることが好ましい。また、ここでの混練は予備的な混練であればよい。予備混練での混練時間は、特に限定されないが、5〜20分間とすることが好ましい。また、予備混練での混練時の回転速度は、特に限定されないが、5〜30rpmとすることが好ましい。一方、本混練での混練時間は、特に限定されないが、30〜120分間とすることが好ましい。また、本混練での混練時の回転速度は、特に限定されないが、10〜40rpmとすることが好ましい。
【0030】
以上のはんだ組成物の製造方法により、はんだ付性および保存安定性に優れるはんだ組成物が得られる。この理由は必ずしも定かではないが、以下のように推察される。すなわち、前記第一ビヒクルを作製した場合には、前記不飽和脂肪酸と、前記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物との塩が形成される。この塩は、はんだ粉末への活性作用は比較的に低い。また、この塩は、不飽和脂肪酸の塩であるため、分子量の割には流動性がある。そして、前記第一ビヒクルと前記はんだ粉末とを混練した後の予備ペーストにおいては、前記はんだ粉末を流動性のある前記塩が覆うような構成となると推察される。その後、この予備ペーストと、活性作用が比較的に高い有機酸を含む前記第二ビヒクルとを混練すると、前記塩の存在により、前記はんだ粉末が活性作用の高い成分に接触する割合が低くなる。そのため、前記はんだ組成物の保存中には、はんだ粉末が活性となりにくくなる。一方で、前記はんだ組成物中には、活性作用の高い有機酸が十分に含まれているため、優れたはんだ付性を有するものとなる。その結果、はんだ付性および保存安定性に優れるはんだ組成物となると推察される。
【0031】
次に、本発明のプリント配線基板について説明する。本発明のプリント配線基板は、以上説明したはんだ組成物を用いて電子部品をプリント配線基板に実装したことを特徴とするものである。そのため、本発明のプリント配線基板でも、リフロー時におけるはんだボールやボイドを十分に抑制できる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
ロジン系樹脂A(商品名「KE−604」、荒川工業社製)20質量%、ロジン系樹脂B(商品名「フォーラルAX」、Eastman Chemical社製)15質量%、溶剤A(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル)33質量%、チクソ剤A(高級脂肪酸ポリアマイド、商品名「ターレンATX−1146」、共栄社化学社製)5質量%、チクソ剤B(脂肪酸アマイド、商品名「スリパックスH」、日本化成社製)2質量%、不飽和脂肪酸(オレイン酸、みどり化学社製)5質量%、および2−メチルイミダゾール(四国化成社製)20質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混練して第一ビヒクルを得た。
一方、ロジン系樹脂A20質量%、ロジン系樹脂B15質量%、溶剤A40質量%、チクソ剤A5質量%、チクソ剤B2質量%、酸化防止剤(商品名「ANOX20」、味の素ファインテクノ社製)4質量%、有機酸A(ダイマー酸、商品名「UNIDYME14」、ARIZONA CHEMICAL社製)6質量%、および有機酸B(ジグリコール酸、みどり化学社製)8質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混練して第二ビヒクルを得た。
その後、得られた第一ビヒクル5.5質量%、およびはんだ粉末88.4質量%(平均粒子径:28μm、はんだの融点:217〜224℃、はんだの組成:Sn/1.0Ag/0.7Cu)を容器に投入し、混練機にて低速(9rpm)で10分間混練することで予備ペーストを得た。さらに、得られた予備ペーストに、得られた第二ビヒクル5.5質量%を投入し、混練機にて低速(9rpm)で10分間混練し、その後、高速(24rpm)で40分間混練した。混練後のペーストに、溶剤B(ヘキシルジグリコール)0.6質量%をさらに添加して、粘度調整を行い、はんだ組成物を得た。
【0034】
[実施例2〜5]
2−メチルイミダゾールに代えて、下記のイミダゾール化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
実施例2:2−エチルイミダゾール(東京化成工業社製)
実施例3:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成社製)
実施例4:2−ウンデシルイミダゾール(四国化成社製)
実施例5:2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン(四国化成社製)
[比較例1]
2−メチルイミダゾールを配合しなかった以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
[比較例2〜6]
2−メチルイミダゾールに代えて、下記のアゾール化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
比較例2:2−フェニルイミダゾール(四国化成社製)
比較例3:ベンゾイミダゾール(東京化成工業社製)
比較例4:ベンゾトリアゾール(東京化成工業社製)
比較例5:1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール(東京化成工業社製)
比較例6:1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(東京化成工業社製)
【0035】
[比較例7]
ロジン系樹脂A20質量%、ロジン系樹脂B15質量%、溶剤A36.5質量%、チクソ剤A5質量%、チクソ剤B2質量%、不飽和脂肪酸2.5質量%、酸化防止剤2質量%、有機酸A3質量%、および有機酸B4質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混練してビヒクルを得た。
その後、得られたビヒクル11質量%、およびはんだ粉末88.4質量%(平均粒子径:28μm、はんだの融点:217〜224℃、はんだの組成:Sn/1.0Ag/0.7Cu)を容器に投入し、混練機にて低速(9rpm)で10分間混練し、その後、高速(24rpm)で40分間混練した。混練後のペーストに、溶剤B(ヘキシルジグリコール)0.6質量%をさらに添加して、粘度調整を行い、はんだ組成物を得た。
【0036】
[比較例8]
ロジン系樹脂A20質量%、ロジン系樹脂B15質量%、溶剤A36.5質量%、チクソ剤A5質量%、チクソ剤B2質量%、不飽和脂肪酸2.5質量%、2−フェニルイミダゾール10質量%、酸化防止剤2質量%、有機酸A3質量%、および有機酸B4質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混練してビヒクルを得た。
その後、得られたビヒクル11質量%、およびはんだ粉末88.4質量%(平均粒子径:28μm、はんだの融点:217〜224℃、はんだの組成:Sn/1.0Ag/0.7Cu)を容器に投入し、混練機にて低速(9rpm)で10分間混練し、その後、高速(24rpm)で40分間混練した。混練後のペーストに、溶剤B(ヘキシルジグリコール)0.6質量%をさらに添加して、粘度調整を行い、はんだ組成物を得た。
【0037】
[比較例9〜12]
2−フェニルイミダゾールに代えて、下記のアゾール化合物を用いた以外は比較例8と同様にして、はんだ組成物を得た。
比較例9:ベンゾイミダゾール(東京化成工業社製)
比較例10:ベンゾトリアゾール(東京化成工業社製)
比較例11:1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール(東京化成工業社製)
比較例12:1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(東京化成工業社製)
【0038】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(保存安定性、ぬれ性、加熱時のだれ性、QFNボイド、ピン間ボール)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1に示す。
(1)保存安定性
はんだ組成物を室温(25℃)で2〜3時間放置する。はんだ組成物の容器の蓋をあけ、スパチュラで空気の混入を避けるようにして丁寧に1〜2分間かき混ぜたものを試料とする。その後、試料をスパイラル型粘度計(マルコム社製、PCU−II型)にセットして、回転数を10rpm、温度を25℃にして、6分間ローターを回転させる。そして、一旦回転を停止させ、温度調整した後に、回転数を10rpmに調整し、3分後の粘度値を読み取る。また、この時の試料の性状を確認する。製造直後と同様に滑らかな性状を維持している場合には「○」と判定し、流動性が大幅に低下し、ボソボソになった場合には「×」と判定する。
なお、はんだ組成物を30℃の恒温槽に入れて14日経過した後の試料についても、上記と同様の評価を行う。
(2)ぬれ性
清浄した3種の基板(銅板、ニッケル板および黄銅板)を準備する。厚さ0.2mmで、直径6.5mmの穴が空いたメタルマスクを使用し、基板上にはんだ組成物を印刷して試験板とする。そして、はんだバスをはんだ融点より50℃高い温度に設定する(誤差は3℃以内)。はんだバス上で試験板を加熱し、はんだ組成物が溶けはじめてから5秒間加熱後、試験板を水平にして取り出す。試験板を冷却した後、広がりの度合を以下の基準に基づいて判定する。
1:はんだ組成物から溶融したはんだが、試験板をぬらし、ペーストを塗布した面積以上に広がった状態である。
2:はんだ組成物を塗布した部分は全ては、はんだでぬれた状態である。
3:はんだ組成物を塗布した部分の大半は、はんだでぬれた状態である。
4:試験板は、はんだがぬれた様子はなく、溶融したはんだは一つ以上のはんだボールとなった状態である。
【0039】
(3)加熱時のだれ性
清浄したセラミック基板(サンユインダストリアル製:25mm×50mm×0.8mm)を準備する。3.0mm×1.5mmのパターン孔を有し、それを0.1mmから1.2mmまで0.1mmステップで配置しているパターン孔を有する厚み0.2mm(誤差は0.001mm以内)のメタルマスクを使用し、このセラミック基板上にはんだ組成物を印刷して試験板とする。そして、170℃に加熱された炉中に試験板を入れ、1分間加熱する。加熱後の試験板を観察し、パターン孔のうち、印刷されたはんだ組成物が一体にならない最小間隔を測定する。
(4)QFNボイド
0.5mmピッチのQFN(Quad Flatpack No Lead)パターンの銅配線基板に、0.12mm厚のメタルマスクを使用して、はんだ組成物を印刷し、リフロー炉(タムラ製作所「TNR25−53PH」)ではんだ組成物を溶解させて、はんだ付けを行ったものを試験板とする。ここでのリフロー条件は、プリヒート温度が150〜180℃(60秒)で、温度220℃以上の時間が50秒間で、ピーク温度が245℃である。得られた試験板を、X線計測機(島津製作所社製「SMX−160E」)を使用して観察し、0.5mmピッチのQFNの下面に発生したボイドの占有面積(ボイドの発生した面積/QFNの面積)を測定する。
(5)ピン間ボール
0.8mmピッチのQFP(Quad Flat Package)パターンの銅配線基板に、0.12mm厚のメタルマスクを使用してはんだ組成物を印刷し、リフロー炉ではんだ組成物を溶解させて、はんだ付けを行ったものを試験板とする。ここでのリフロー条件は、プリヒート温度が150〜180℃(60秒)で、温度220℃以上の時間が50秒間で、ピーク温度が245℃である。得られた試験板を拡大鏡にて観察し、0.8mmピッチのQFPランドの間隔に発生したはんだボールの数を測定する。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物(実施例1〜5)は、保存安定性に優れることが確認された。また、本発明のはんだ組成物(実施例1〜5)は、ぬれ性、加熱時のだれ性、QFNボイド、ピン間ボールの評価にも優れ、はんだ付性に優れることが確認された。