(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、汚れを押し流す効果を有し左右もしくは上下方向に清掃力のある散水をすることのできる散水ノズルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、水導入用の接続口と、この接続口から取り入れた水が通過する内部の流路と、この流路の先端のシャワー板に形成される多数の吐出口とを有する散水ノズルであって、上記シャワー板は中央部分が前に膨出してX方向に湾曲する形状に形成され、複数個の上記吐出口をX方向に並べて開口したものを1段として、X方向に直交するY方向に複数の段を形成してなるとともに、異なる段の吐出口は互いにX方向にずらして開口され、かつ、所定の基準の段の吐出口を略前方に向けて形成するとともに、他の段の吐出口を上記基準の段側へY方向に傾けることにより、上記各吐出口から吐出された水が、上記シャワー板から所定の距離でX方向に略一列に並ぶことを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、上記シャワー板が、Y方向中央付近が後退し、Y方向両端側が前進した鞍状の湾曲面に形成されることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、上記シャワー板が、逆さ円錐周面状の形状と、円筒周面状の形状と、円錐周面状の形状とをY方向に順に接続してなることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、水導入用の接続口と、この接続口から取り入れた水が通過する内部の流路と、この流路の先端のシャワー板に形成される多数の吐出口とを有する散水ノズルであって、上記シャワー板は、複数個の上記吐出口をX方向に並べて開口したものを一段として、X方向に直交するY方向に複数の段を形成してなるとともに、それぞれの段は円筒周面状の形状からなり、上記複数の段がそれぞれの湾曲面を互いにX方向にずらして形成され、Y方向に隣接する段の吐出口が互いにX方向にずらした千鳥配置に開口されていることにより、上記各吐出口から吐出された水が、上記シャワー板から所定の距離で、X方向に延びるやや幅広な帯状範囲内に点在することを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、上記X方向は散水ノズルを前方に向けたときの左右方向であり、上記Y方向は散水ノズルを前方に向けたときの上下方向であることを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、上記X方向は散水ノズルを前方に向けたときの上下方向であり、上記Y方向は散水ノズルを前方に向けたときの左右方向であることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、上記シャワー板の取り付け角度を上下左右平面内で変更可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、上記シャワー板は中央部分が前に膨出してX方向に湾曲する形状に形成され、複数個の上記吐出口をX方向に並べて開口したものを1段として、X方向に直交するY方向に複数の段を形成してなるとともに、異なる段の吐出口は互いにX方向にずらして開口され、かつ、所定の基準の段の吐出口を略前方に向けて形成するとともに、他の段の吐出口を上記基準の段側へY方向に傾けることにより、上記各吐出口から吐出された水が、上記シャワー板から所定の距離でX方向に略一列に並ぶことによって、X方向の広い範囲にムラがなく水勢のある散水を行うことができる。
また、シャワー板の小さな領域に多数の吐出口を形成して、X方向の広い範囲に吐水することができる。
【0016】
第2の発明によれば、上記シャワー板が、Y方向中央付近が後退し、Y方向両端側が前進した鞍状の湾曲面に形成されることにより、X方向の広い範囲にムラがなく水勢のある散水を行うことができる。
【0017】
第3の発明によれば、上記シャワー板が、逆さ円錐周面状の形状と、円筒周面状の形状と、円錐周面状の形状とをY方向に順に接続してなることにより、X方向の広い範囲にムラがなく水勢のある散水を行うことができる。
【0018】
第4の発明によれば、上記シャワー板は、複数個の上記吐出口をX方向に並べて開口したものを一段として、X方向に直交するY方向に複数の段を形成してなるとともに、それぞれの段は円筒周面状の形状からなり、上記複数の段がそれぞれの湾曲面を互いにX方向にずらして形成され、Y方向に隣接する段の吐出口が互いにX方向にずらした千鳥配置に開口されていることにより、上記各吐出口から吐出された水が、上記シャワー板から所定の距離で、X方向に延びるやや幅広な帯状範囲内に点在することによって、X方向の広い範囲にムラがなく水勢のある散水を行うことができる。
また、シャワー板の小さな領域に多数の吐出口を形成して、X方向の広い範囲に吐水することができる。
【0019】
第5の発明によれば、上記X方向は散水ノズルを前方に向けたときの左右方向であり、上記Y方向は散水ノズルを前方に向けたときの上下方向であることにより、左右方向の広い範囲にムラなく散水することができる。
【0020】
第6の発明によれば、上記X方向は散水ノズルを前方に向けたときの上下方向であり、上記Y方向は散水ノズルを前方に向けたときの左右方向であることにより、上下方向の広い範囲にムラなく散水することができる。
【0021】
第7の発明によれば、上記シャワー板の取り付け角度を上下左右平面内で変更可能としたことにより、使用者が用途に応じて吐水範囲の角度を変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一実施形態に係る散水ノズルについて説明する。
この散水ノズル1は、園芸、農業、清掃、その他の用途において、ホースを介して水道等の給水設備の先端に接続されて散水を行う器具であって、使用者が手に持って使用するものである。
【0024】
図1、
図2に示すように、散水ノズル1は、ホース等に接続されて水を導入する接続口2を形成した基端部3aから上方に延びる略筒状に形成されたグリップ部3と、このグリップ部3の上端から前方に延びるとともに先端に散水口5a、5b、5cを形成したノズル部4とからなり、全体としてL字形、くの字形もしくはピストル形等の、グリップ部3とノズル部4の連続部位で屈曲した屈曲形状に形成されたノズル本体6を有している。
本明細書において、ノズル部4の説明における前後とはノズル部4の延在方向を意味し、前とはノズル部4の散水口5a、5b、5c側、後ろとはグリップ部3側を意味する。また、グリップ部3の説明における上下とは、ノズル部4を地面に平行にしてグリップ部3の接続口を地面側に向けた状態での地面に対する上下を意味し、上とは地面に対して上側、すなわちノズル部4側を意味し、下とは地面側、すなわち接続口2側を意味する。
図3に示すように、ノズル本体6の内部には、接続口2から散水口5a、5b、5cまで延在する水の流路10が形成されている。
【0025】
ノズル本体6は、
図3に示すように、屈曲した通水パイプ7に、ホースニップル8や吐水ヘッド9を接続し、外周を覆う複数のカバーを組み付けてなるが、これらのうちいくつかについて一体に成形したものであってもよい。
通水パイプ7の材料には、POM(ポリアセタール)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)等を使用することができ、降伏強度や摩擦耐久力に優れるという理由から、特にPOMが好ましい。そのため、本実施形態ではPOMを採用している。
【0026】
グリップ部3は、基端部3aからノズル部4に向かって上方に延びる略筒状に形成され、使用者が手で把持して取り回すことができるようになっている。
グリップ部3の基端部3aでは、ホースに取り付けられた受け具(図示せず)と連結するための凹凸やOリングを外周面に設けるとともに、その中心に給水設備からの水を導入する接続口2を開口したホースニップル8が通水パイプ7の下方に取り付けられている。
グリップ部3の向きは、ノズル部4の延在方向に対して垂直であってもよいが、
図2に示すように、その垂直な向きから傾斜して、上方にグリップ部3の延在方向とは交差する向きに延びたものであってもよい。
図3に示すように、ノズル部4は、グリップ部3の上端から前方(ノズル部4の散水口側)に延びる略筒状に形成されている。
【0027】
図3に示すように、この散水ノズル1は、通水パイプ7の流路中に、通水と止水とを切り換える止水弁、および流路を通過する水の流量を増減させる流量調整弁を有している。
止水弁は流量調整弁の上流側に設けられ、通水パイプ7のグリップ部3側の流路10に配置された止水弁体30を有している。止水弁体30は、通水パイプ7に内接する有蓋円筒状に形成され、蓋の上に突起状の弁体部30aを形成している。止水弁体30の外周面の2箇所にはOリング30c、30cを配設して止水弁体30の外周を水が流れないようにするとともに、Oリング30cより上の外周面に通水口30bを形成している。通水パイプ7の基端(下方)から供給された水は、止水弁体30の内部を通過して通水口30bより外周に流出し、下流へ流れるようになっている。
【0028】
止水弁体30の弁体部30aは、通水パイプ7に設けられた止水弁座7aよりも大径に形成され、ホースニップル8と止水弁体30との間に介在するコイルスプリング31によって、止水弁座7a側に付勢されて流路10を閉塞する(止水状態)。この付勢力に反して弁体部30aが止水弁座7aから離間させられると、流路10が開放され水が通水する(通水状態)。
【0029】
図2、
図3に示すように、止水弁体30を操作するために、グリップ部3の前方には止水操作レバー32が取り付けられている。この止水操作レバー32は、下端を固定端としてグリップ部3の下部に取り付け、上端を自由端としているため、使用者がグリップ部3を持った手で握り込むことにより下端を固定端として前後方向に回動可能となっている。
図3に示すように、通水パイプ7はグリップ部3側部分の前面に開口7bを形成している。縦断面L字状の弁開閉用アーム33が、一端で止水操作レバー32に当接し、他端で止水弁体30に当接し、L字状の屈曲部分を支点として通水パイプ7に回動可能に支持されているため、使用者が止水操作レバー32を握り込むと、弁開閉用アーム33を介し、コイルスプリング31の付勢力に反して止水弁体30を止水弁座7aから離間させ、通水状態にすることができる。
通水パイプ7の開口7bは常時止水弁体30の2つのOリング30c、30cの中間に位置するため、水が開口7bから通水パイプ7の外側へ漏れることはない。
【0030】
止水弁の下流側にあたる通水パイプ7の屈曲部分の流路10中には、散水量を調整できる流量調整弁が設けられている。
図3に示すように、流量調整弁は、流路中に配設され、回動することで水の流量を増減させる流量調整弁体34と、この流量調整弁体34に連動するとともにグリップ部3の後背上部から突出し、親指で左右方向に回動操作される流量操作部材35とからなる。
流量調整弁体は、下端をグリップ部3の流路10に常時開放している有蓋円筒状に形成されているとともに、周面に流量調整用の切り欠きを設けている。
この流量調整弁では、流量調整弁体34に形成された切り欠きと、ノズル部4の流路10とが合致する面積を増減させることにより、散水量の大小を調整することができる。
【0031】
図2(c)に示すように、ノズル本体6の流路の先端には、外シャワー板11が取り付けられ、この外シャワー板11の中心には内シャワー板12が取り付けられている。
図3に示すように、流路10はノズル部4の先端付近で切換口13に到達し、切換口13の下流で、外シャワー板11に連通する第一外流路14b、第二外流路14cと内シャワー板12に連通する内流路15とに分岐している。外シャワー板11および内シャワー板12を含む吐水ヘッド9がノズル本体6に対してネジ回りに前後動し、第一外流路14b、第二外流路14c、内流路15のいずれか一つが選択的に上流側の切換口13に接続されることで、使用者は外シャワー板11の散水口5bからの散水と、外シャワー板11の散水口5cからの散水と、内シャワー板12の散水口5aからの散水とを切り換えることができる。
外シャワー板11は、幅広環状の先端面を有し、この先端面には多数の散水口5b、5cを放射状に形成している。
【0032】
図4(a)に示すように、内シャワー板12は、正面視で円形の先端面を有している。
図4(c)に示すように、内シャワー板12の先端面は、中央部分が前に膨出して左右方向に湾曲している。また、
図4(b)に示すように、内シャワー板12の先端面の上下方向中央付近は後退し、その上側および下側は前進しており、全体としては鞍状または一葉双曲面状の立体形状に形成されている(
図9(a)参照)。
【0033】
内シャワー板12の材料は、落下等の衝撃で破損することがなく、成形時に流動性が高いものであればよく、ステンレス等の金属や各種樹脂を使用することができる。
金属を打ち抜いて内シャワー板12を形成すると、破断部で面精度が荒れてしまい、吐水の方向が狙い通りに安定しないおそれがある。さらに、吐水方向を調節するために曲げ加工や絞り加工といった後工程を必要とし、この後工程中に吐出口16の形状が変形するおそれもある。
そのため、樹脂を用いることが好ましい。成形時の流動性、内圧による変形防止、機械特性、耐薬品性、耐疲労性、クリープ特性に優れることから、特にPOM(ポリアセタール)を使用することが好ましい。
【0034】
図4(a)に示すように、内シャワー板の散水口5aは、複数の小さな吐出口16を左右方向に並べて開口したものを1段とし、上下に5段が形成されている。1段あたりの吐出口16の数は、中央である上から3段目で5つの吐出口16が形成され、その他の段では吐出口16が4つずつ形成されている。
また、
図4(a)に示すように、異なる段の吐出口16は、互いに左右方向にずらした位置に形成されており、一つの吐出口16の真上または真下には、他の吐出口16は配置されていない。
【0035】
図6(b)に示すように、各吐出口16は、外側出口の孔径DOを0.7mmに設定されている。
外側出口の孔径DOは、0.2〜2.5mmに設定するのが好ましい。
孔径DOを0.2mmよりも小さくすると、内シャワー板12から500mm以上の飛距離において、吐出された水が空気抵抗により分散して着弾点が狙いから逸れるおそれがある。孔径DOを0.5mm以上にするのがより好ましい。
また、孔径DOを2.5mmよりも大きくすると、吐出される水の流速が落ちて、遠い地点への散水が難しくなるとともに、水圧も落ちて汚れを十分に押し流すことができなくなる。孔径DOを2.0mm以下とするのがより好ましく、1.0mm以下とするのが特に好ましい。
0.2〜1.0mmの範囲内では、孔径DOを小さくすると水形がわずかに霧状になって水遣りの用途に適し、孔径DOを大きくすると空気抵抗の影響を受けにくくなるため清掃の用途に適する。
【0036】
また、
図4、
図5(b)、
図6に示すように、各吐出口16の内側入口DIは外側出口DOよりも大径に形成され、各吐出口16はテーパ面状に形成されている。
各吐出口16がテーパ面状に形成されていることにより、内シャワー板12の成形時に使用した金型を容易に内面側(上流側)に引き抜くことができる。
図6(a)に示すように、テーパ面の角度θ1は、金型を容易に引き抜くことができれば特に制限されないが、対向するテーパ面同士の角度が20〜30度とするのがより好ましい。第一実施形態では20度に設定した。
また、
図6の断面に表れない各吐出口16のテーパ面の内形状は、各吐出口16の中心軸に対して360度の範囲で対称(シンメトリー)な形状に形成されている。
これにより、吐出される水の水形が乱れず、中心軸の方向に吐水することができる。
【0037】
図5(b)に示すように、内シャワー板12が左右方向に湾曲して形成されているため、同一の段の各吐出口16は、吐出された水が左右方向に拡散するように向けられている。
また、
図6(a)に示すように、それぞれの段において、左右両端の吐出口の左右方向最外壁は、前後方向の後方線Lを基準にして、平行または内側に傾いていることが好ましい。上記最外壁が前後方向の後方線Lよりも外側に傾いていると、内シャワー板12の成形時に使用する金型を引き抜くことが困難になるためである。
金型の引き抜き(いわゆる抜き勾配)のためには、上記最外壁の前後方向の後方線Lに対する傾きθ2が内側に0.5度以上傾いていることが好ましく、他方、上記のように水を左右方向に拡散するためには傾きθ2が2度以下であることが好ましい。第一実施形態では、傾きθ2を1度に設定した。
【0038】
図4(b)、
図5(a)に示すように、内シャワー板12において、上から1段目では、吐出口16が比較的急な角度で下方に傾いている。同2段目では、吐出口16が比較的緩やかな角度で下方に傾いている。同3段目では、吐出口16が水平方向に向いている。同4段目では、吐出口16が比較的緩やかな角度で上方に傾いている。同5段目では、吐出口16が比較的急な角度で上方に傾いている。
【0039】
同一の段であるか異なる段であるかを問わず、吐出口16相互間の距離は、吐出された水が互いに引き合わない程度の距離を設ける必要があり、各吐出口16の中心軸相互間の距離を1.8mm以上にするのが好ましい。中心軸相互間の距離を1.8mmより小さくすると、水の持つ電位による引き付け力が発生し、吐出された水が合流してしまい、狙った地点に着弾しなくなってしまう。第一実施形態では、各吐出口の中心軸相互間の最短距離(上下に隣接する段の最も近い吐出口の間の距離)Min(
図8参照)を1.8mmとした。
また、同一の段で隣接する吐出口相互間の距離を、全て2.7mmとしている。
【0040】
また、
図6(a)に示すように、内シャワー板12の左右方向の湾曲は略円弧状に形成されている。
図6(a)のような水平断面で見たときに、内シャワー板12の外側円弧面の中心Oと、内側円弧面の中心Oとは一致し、同一の段の全ての吐出口16の中心軸が中心Oを通るようにする。
このように均等な形状に形成したことにより、各吐出口の水量や水形の偏りやムラがなくなり、所望の地点への吐水が可能となる。
【0041】
以上の構成により、
図9(a)に示すように、内シャワー板12の吐出口から吐出される水は、内シャワー板12から約1000mm離れた地点で、左右方向に略一列に並んで着弾する。
水は、全体で左右方向に400mm、上下方向に2mm程度の範囲に吐出される。
このとき、同一の段で左右方向に隣接する2つの吐出口16から吐出される水の着弾点での距離は約100mmとなる。また、上下に隣接する段の最も近い2つの吐出口から吐出される水の着弾点の距離は約20mmとなる。
【0042】
最も近い着弾点同士の距離は約20mmであり、着弾した水がその勢いで変形することで隙間が埋まるため、着弾地点では、左右方向に連続する水の波が形成される。
吐出された水は着弾するまで細い棒状吐水であるため、空気抵抗をほとんど受けず、狙いから逸れることや減速することはほとんどない。そのため、内シャワー板12からの散水によって形成された水の波は、左右方向の広い範囲にわたり、隙間なく汚れ等を押し流す勢いを有している。
これにより、第一実施形態の散水ノズル1では、清掃等において左右方向の広い範囲の汚れをムラなく押し流すことができるとともに、水遣り等においてもムラのない水遣りが可能になる。
【0043】
また、内シャワー板12の先端面の直径は約20mmであるが、第一実施形態ではこのように小さな領域に多数(第一実施形態では21個)の吐出口16を形成して、横一列の広範囲に吐水することができ、散水ノズル1を小型化することができる。
【0044】
<第二実施形態>
以下では、第二実施形態の散水ノズル1について説明する。なお、第一実施形態と共通する構成については説明を省略する。
第二実施形態では、
図9(b)に示すように、内シャワー板17の先端面を、上から順に逆さ円錐周面状、円筒周面状、円錐周面状の曲面を連続させることによって形成したことを特徴とする。
【0045】
内シャワー板17の上部17aは、下側が縮径する逆さ円錐の周面状に形成されている。
内シャワー板17の上下方向中央部17bは、上部17aの下端部分と同径の円筒の周面状に形成されている。
内シャワー板17の下部17cは、上側が縮径する円錐の周面状に形成されている。下部17cの上端部分は、中央部17bの円筒と同じ径に形成される。
図に示すように、内シャワー板17の先端面は、全体として鼓形の側周面を切り取った形状に形成される。
【0046】
第二実施形態でも、内シャワー板17には、複数の小さな吐出口16を左右方向に並べて開口したものを1段とし、上下に複数の段が形成されている。
図9(b)では、上下に3段が形成され、1段あたりの吐出口16は、上から2段目で5つの吐出口16が形成され、その他の段では吐出口16が4つずつ形成されている。
また、異なる段の吐出口16は、互いに左右方向にずらした位置に形成されており、一つの吐出口16の真上または真下には、他の吐出口16は配置されていない。
【0047】
また、同一の段であるか異なる段であるかを問わず、吐出口16相互間の距離は、吐出された水が互いに引き合わない程度の距離を設ける必要があり、第二実施形態では、各吐出口16の中心軸相互間の最短距離(上下に隣接する段の最も近い吐出口の間の距離)Min(
図8参照)を2.0mmとした。
【0048】
図9(b)に示すように、上から1段目の吐出口16は逆さ円錐周面状の上部17aに形成され、同2段目の吐出口16は円筒周面状の中央部17bに形成され、同3段目の吐出口16は円錐周面状の下部17cに形成されている。
このため、1段目の吐出口16は下方に傾き、2段目の吐出口16は水平方向に向けられ、3段目の吐出口16は上方に傾いている。
【0049】
第二実施形態では、以上の構成により、
図9(b)に示すように、内シャワー板17の吐出口16から吐出される水が、内シャワー板17から約1000mm離れた地点で、左右方向に略一列に並んで着弾する。
着弾した水がその勢いで変形することで隙間が埋まるため、着弾地点では、左右方向に連続する水の波が形成される。
これにより、第二実施形態の散水ノズルでは、清掃等において左右方向の広い範囲の汚れをムラなく押し流すことができるとともに、水遣り等においてもムラのない水遣りが可能になる。
【0050】
<第三実施形態>
以下では、第三実施形態の散水ノズル1について説明する。なお、第一実施形態と共通する構成については説明を省略する。
第三実施形態でも、
図7(a)に示すように、内シャワー板18の先端面に、左右方向に並べて開口された複数の吐出口16を1段とし、上下方向に複数の段を設けている。
図7では、上下に5段が形成され、1段あたりの吐出口16の数は、中央である上から3段目で5つの吐出口16が形成され、その他の段では吐出口16が4つずつ形成されている。
また、
図8に示すように、上下に3段が形成され、1段あたりの吐出口16の数は、中央である上から2段目で4つの吐出口16が形成され、その他の段では吐出口16が3つずつ形成されるようにしてもよい。
【0051】
第三実施形態では、
図7(b)(c)、
図10(a)に示すように、それぞれの段は円筒周面状の曲面からなり、上記複数の段のそれぞれの湾曲面を互いに左右方向にずらして内シャワー板18を形成したことを特徴とする。
【0052】
図10(a)に示すように、それぞれの段は円筒周面状の曲面からなっており、かつ、それぞれの段の湾曲面は互いに左右方向にずらして形成されている。
隣接する2つの段では、下の段が上の段よりも
図10(a)で右側に所定長さだけずらされており、このずらし量は全ての段差部分で等しい。
【0053】
また、内シャワー板18における吐出口16の配置は、上下に隣接する段の吐出口16が左右方向にずらして形成されるとともに、間に1段を隔てた段同士(たとえば上から1段目と3段目)では吐出口16の位置が左右方向に一致する千鳥配置に形成されている。
間に1段を隔てた段同士においても、上記の通りそれぞれの段の湾曲面が左右方向にずらして形成されているため、左右方向の同じ位置に形成された上下の吐出口16の角度は、左右方向に異なっている。
【0054】
第三実施形態では、以上の構成により、内シャワー板18の吐出口16から吐出される水が、内シャワー板18から約1000mm離れた地点で、左右方向に延びるやや幅広な帯状の範囲内に着弾する。
各吐出口16からの水の着弾位置は、左右方向に隙間があるとともに、上下方向または前後方向にもわずかに隙間が形成され、全体としてやや幅広な帯状の範囲に着弾する。
着弾した水がその勢いで変形することで隙間が埋まるため、着弾地点では、左右方向に連続する水の波が形成される。
これにより、第三実施形態の散水ノズル1では、清掃等において左右方向の広い範囲の汚れをムラなく押し流すことができるとともに、水遣り等においてもムラのない水遣りが可能になる。
【0055】
図10(b)の比較例の内シャワー板23のように、それぞれの段の湾曲面をずらさず、異なる段の吐出口16を左右方向にずらして形成する場合、幅方向に均一な散水を可能にするために内シャワー板の左右方向に大きな領域を必要とするとともに、吐出される水が引き合わない距離を保持するために内シャワー板の上下方向にも大きな領域を必要とする。
他方、第三実施形態の散水ノズル1では、
図10(a)のようにそれぞれの段の湾曲面を互いに左右方向にずらしたことにより、異なる段の吐出口16の配置をより左右方向に密集させて形成しても、吐出口16の向きの差異によって左右方向の広い範囲に散水することができる。
そのため、
図10(b)の比較例に比べて、内シャワー板18の小さな領域に多数の吐出口を形成して、広範囲に吐水することができ、散水ノズル1を小型化することができる。
【0056】
<その他の変形例>
内シャワー板に形成する吐出口16の段の数や、1段あたりの吐出口16の数は、内シャワー板の大きさや必要な散水範囲に応じて適宜変更してよい。
第一実施形態では段数を5段として1段あたり4つ(3段目のみ5つ)の吐出口16を形成し、左右方向に400mmの範囲に散水することができたが、段数を7段として1段あたり4つ(4段目のみ5つ)の吐出口16を形成すると、左右方向に560mmの範囲に散水することができる。
また、吐出口16の段数を偶数にしてもよい。
【0057】
また、第一実施形態や第二実施形態では3段目の吐出口を水平方向に向け、1、2段目の吐出口を下方に傾け、4、5段目の吐出口を上方に傾けているが、このほかに2段目の吐出口を水平方向に向け、1段目の吐出口を下方に向け、3〜5段目の吐出口を上方に傾けてもよい。また、この例と上下を逆にして、4段目の吐出口を水平方向に向けてもよい。
さらに、1段目の吐出口を水平方向に向け、2〜5段目を上方に傾けてもよい。また、この例と上下を逆にして、5段目の吐出口を水平方向に向けてもよい。
【0058】
また、各吐出口16の形状は、
図6(b)のようなテーパ面状には限定されず、様々な形状を採用することができる。
たとえば、
図11(a)に示すように、内側入口から外側出口へと縮径する点では
図6(b)と共通するが、
図6(b)よりも内壁がせり出し、流路が内部に凹んだ形状に形成してもよい。
また、
図11(b)に示すように、内側入口から外側出口へと縮径する点では
図6(b)と共通するが、
図6(b)よりも内壁が凹み、流路が膨らんだ流路形状に形成してもよい。
【0059】
また、
図11(c)に示すように、内側入口に形成された大径のテーパ面と、外側出口に形成された小径のテーパ面とを、急勾配のテーパ面によって接続した段差形状に形成してもよい。
さらに、
図11(d)に示すように、内側入口から形成されたテーパ面が、縮径しない円柱状の流路に接続する形状に形成してもよい。
また、
図11(e)に示すように、内側入口から形成された円柱状の流路が、途中からテーパ面に接続する形状に形成してもよい。
その他にも、内側入口から外側出口へ流路の径が一定な円柱形状、流路の径が次第に小さくなっていく形状、径が一定な円柱状の部分と径が次第に小さくなっていく部分とを接続した形状を採用することができる。
【0060】
第一実施形態や第二実施形態では、左右方向の広い範囲を散水できる内シャワー板12,17,18を形成したが、必要に応じ、上下方向の広い範囲を散水できる内シャワー板を形成してもよい。
この場合には、内シャワー板を、中央部分が前に膨出して上下方向に湾曲する形状に形成し、上下方向に複数(たとえば4つ)の吐出口16を並べたものを1列として、左右方向に複数の列(たとえば5列)を形成する。異なる段の吐出口16は互いに左右方向にずらして形成される。
また、中央の列の吐出口16を左右方向に傾きのない方向に向けるとともに、左右の列の吐出口16を中央の列側に(左右方向に)傾けて形成する。
これにより、各吐出口16から吐出された水が、内シャワー板から所定距離の地点において上下方向に略一列に並び、広い範囲を散水することができる。
同様に、第三実施形態でも、上下方向の広い範囲を散水できる内シャワー板を形成してもよい。
【0061】
また、上記と同様に、所望の斜め方向の広い範囲を散水できるようにしてもよい。
また、第一実施形態から第三実施形態の内シャワー板12,17,18を散水ノズルの他の部分に対して上下左右平面内で回転可能に取り付けて、吐水範囲の角度を使用者が自由に変更できるようにしてもよい。