(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エリアは前記空調装置によってエリア内温度が調整される環境調整エリアからなり、前記端末の操作手段は、温度上昇希望の投票スイッチと、温度下降希望の投票スイッチを有していることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の環境調整システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにオフィス等、多人数で利用する空間において、温熱環境が不快であっても、在室者が温度設定値を直接変更することは一般にできない。どうしても我慢できない場合には施設管理者に電話などで連絡して設定値を変更してもらうことになる。このような直接的な解決策と異なる解決策として、ネットワーク接続された操作者のパーソナルコンピュータ(PC)から設定変更を行う方法が考えられる(例えば、特開2004−205202号公報参照)。
【0008】
しかし、設定を変えたい人がPCから変更操作を行う場合、他の操作者が必ずしも同じ変更を希望しているとは限らない。ここで、操作者全員の希望を聞くには、上述した多数決の原則に基づくアンケートを行うことが考えられる。これは、例えば1時間おきに全員に対して、各自のPCにメール等で質問して答えてもらい、回答を集計して設定値変更を行う方法である。
【0009】
ここで、オフィス等、多人数で利用する空間で複数の空調ゾーンに分かれている場合において、空調ゾーンごとにリモコンを使って多数決により温度設定を行うことが考えられる。しかしながら、各空調ゾーンの中央付近以外の位置においては、周囲にある他の空調ゾーンの影響を受け易いため、一つの空調ゾーンに対する温度設定投票だけでは不十分である。これは携帯型のリモコンだけでなく、位置を固定して使用するリモコンについても同様である。
【0010】
特に、多数決を採るためにワイヤレスリモコンを全ての操作者に持たせた場合、空調されている空間が複数の空調ゾーンに分かれていて操作者がリモコンを携帯して自由に移動するとなると、どの空調ゾーンに対する多数決参加なのかが不明確になる。特に複数の空調ゾーン間の境界付近に操作者が位置している場合には、どの空調ゾーンに対する多数決参加なのかが不適切に決定されると、多数決参加の意味自体が損なわれることになる。
【0011】
本発明の目的は、オフィス等、多人数で利用する空間において各人に快適な環境を提供する環境調整システムであって、多数決方式の公平性を向上できる環境調整システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る環境調整システムは、
複数の人間が存在するエリアでの多数決情報に基づいて当該エリアの環境調整を可能とする環境調整システムにおいて、
前記エリア内にいる人間が各自特定の場所で操作可能な端末と、
各端末から送られてきた情報を集計して環境調整設定値を算出する制御演算部と、
前記制御演算部からの環境調整設定値に基づき前記エリアの環境を調整する環境調整機器からなる環境調整システムであって、
前記端末は、端末操作者の要求の意思表示のための操作手段を有し、前記操作手段の操作情報を有線通信又は無線通信により前記制御演算部にデータとして送るようになっており、
前記環境調整機器は空調装置からなり、
前記エリアは複数の空調装置によってそれぞれ空調制御される複数の空調ゾーンに分けられ、
前記制御演算部は、予め作成された各操作者の端末番号から端末の位置を特定すると共に、前記各端末の発信位置の各空調ゾーン中央からの距離に応じて投票の重み付けを行い、重みが予め規定された閾値以上になる空調ゾーンのみを
環境調整の適用対象に制限
し、この制限により残った環境調整の適用対象とすべき空調ゾーンの重みの合計が予め規定された数値になるように重みを正規化し、各端末のデータを集計して演算を行い、
前記環境調整の適用対象となった空調ゾーンに対応する各空調装置の設定変更値を算出し、結果を
当該環境調整の適用対象とすべき空調装置の空調制御部に送ることを特徴としている。
【0013】
一つの空調ゾーンだけでなく、影響を受ける全ての空調ゾーンに対して距離に応じて重みを付けて投票を行うことができるので、各端末操作者がより快適と感じる温度となるようにそのエリアの空調を制御することができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る環境調整システムは、
複数の人間が存在するエリアでの多数決情報に基づいて当該エリアの環境調整を可能とする環境調整システムにおいて、
前記エリア内にいる人間が各自特定の場所で操作可能な端末と、
各端末から送られてきた情報を集計して環境調整設定値を算出する制御演算部と、
前記制御演算部からの環境調整設定値に基づき前記エリアの環境を調整する環境調整機器からなる環境調整システムであって、
前記端末は、端末操作者の要求の意思表示のための操作手段を有し、前記操作手段の操作情報を無線通信により前記制御演算部にデータとして送るようになっており、
前記環境調整機器は空調装置からなり、
前記エリアは複数の空調装置によってそれぞれ空調制御される複数の空調ゾーンに分けられ、
前記各端末は、各端末操作者が携帯できるリモコン型の移動端末からなり、
前記制御演算部は、前記各移動端末からの移動電波の受信強度、伝搬遅延時間、又は到来方向の少なくとも何れか一つから各移動端末の発信位置を特定すると共に、所定時間内に送られてきた各移動端末の情報を受信し集計するようになっており、
前記移動端末の発信位置の各空調ゾーン中央からの距離に応じて投票の重み付けを行い、重みが予め規定された閾値以上になる空調ゾーンのみを
環境調整の適用対象に制限
し、この制限により残った環境調整の適用対象とすべき空調ゾーンの重みの合計が予め規定された数値になるように重みを正規化し、各端末のデータを集計して演算を行い、前記
前記環境調整の適用対象となった空調ゾーンに対応する各空調装置の設定変更値を算出し、結果を
当該環境調整の適用対象とすべき空調装置の空調制御部に送ることを特徴としている。
【0015】
固定端末の代わりに移動端末を各自携帯してエリア内を移動しても、一つの空調ゾーンだけでなく、影響を受ける全ての空調ゾーンに対して距離に応じて重みを付けて投票を行うことができる。
また、本発明の請求項3に係る環境調整システムは、請求項1又は請求項2に記載の環境調整システムにおいて、
前記エリアは前記空調装置によってエリア内温度が調整される環境調整エリアからなり、前記端末の操作手段は、温度上昇希望の投票スイッチと、温度下降希望の投票スイッチを有していることを特徴としている。
また、本発明の請求項4に係る環境調整システムは、請求項1又は請求項2に記載の環境調整システムにおいて、
前記予め規定された数値は、1票であることを意味する1であることを特徴としている。
また、本発明の請求項5に係る環境調整システムは、請求項2に記載の環境調整システムにおいて、前記各端末は、その各端末操作者が所定時間ごとに1回だけ当該端末の操作による操作情報を無線通信により前記制御演算部にデータとして送るようになったことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、空調されている空間が複数の空調ゾーンに分かれていて、これら複数の空調ゾーンにそれぞれ在席者がいる場合や在室者がリモコンを携帯して自由に移動する場合においても、多数決方式の公平性を向上できる環境調整システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、参考となる実施形態に係る環境調整システムについて説明する。なお、参考となる実施形態に係る環境調整システムは、オフィスなどの特定エリアの空調を調整するシステムであって、そのエリア内で働く多数の人々ができるだけ快適に感じる温度に空調機を調整する環境調整システムである。
【0019】
図1は、参考となる一実施形態に係る環境調整システムを説明するブロック図である。また、
図2は、
図1に示した環境調整システムにおいて使用する操作端末を概略的に示す斜視図である。また、
図3は、
図1に示した環境調整システムにおける制御方法を説明する説明図である。また、
図4は、
図1に示した環境調整システムの制御方法を説明するフローチャートである。
【0020】
参考となる実施形態に係る環境調整システムは、
図1に示すように、各人の机や椅子に設置される各固定端末100(100−1,100−2,100−3,・・・)と、各固定端末100からの情報を入手し、オフィス内の各人が快適に感じるように空調機162を制御する制御装置150と、制御装置150によって制御される空調装置160とを備えている。
【0021】
各人の机や椅子に設置される固定端末100は、制御部101と、温度設定スイッチ102と、端末番号設定器(端末設定スイッチ)104と、人検知センサ(人感センサ)105と、無線送信部106と、アンテナ107を備えている。
【0022】
一方、制御装置150は、制御演算部151と、無線送受信部152と、アンテナ153を備えている。そして、空調装置160は、空調制御部161と、空調機162を備えている。また、空調装置160は温度センサ163を備えている。
【0023】
図2は、各人が机や椅子に備える固定端末100を概略的に示す斜視図である。同図に示すように、固定端末100は小型の筐体とこれに備わったスイッチ、電子機器等からなり、端末操作者の存在の有無を検知する人感センサ105が端末操作者に面して備わると共に、端末操作者各人の端末を特定する端末設定スイッチ104が備わっている。また、端末設定スイッチ104の近くには2つの投票スイッチ(温度設定スイッチ)102が備わっている。
【0024】
各投票スイッチ102は押しボタン式になっており、一方の投票スイッチ102Uは上向きの三角形の押しボタンからなり、在席中の端末操作者(以下、「在席者」とする)が自己の周囲の温度が若干寒いと感じた時に温度を上げてもらいたいという希望情報を伝えるための温度上昇投票スイッチである。また、他方の投票スイッチ102Dは下向きの三角形の押しボタンからなり、在席者が自己の周囲の温度が若干暑いと感じた時に温度を下げてもらいたいという希望情報を明示するための温度下降投票スイッチである。
【0025】
また、端末の端には投票受付開始状態ボタン及び投票受付完了状態ボタンの双方を示す表示ランプ(操作受付表示器)103が備わっている。この表示ランプ103は、投票受付開始状態になると例えば緑色のLEDランプが点灯し、何れかの投票スイッチを押すことが可能な状態であることを在席者に知らせ、投票受付完了状態になると赤色のLEDランプが点灯して投票受付が完了したことを在席者に知らせることで、現在の端末操作状況を在席者が即座に認識できるようになっている。
【0026】
制御装置150は、アンテナ153及び無線送受信部152を介して各固定端末100からの情報を入手すると共に、これらの情報に基づいて各在席者ができるだけ快適と感じる温度に空調機162を制御するように演算結果を空調装置160の空調制御部161に送るようになっている。
【0027】
参考となる本実施形態に係る環境調整システムによると、
図3に示すように、空調管理者が空調装置160の設定値を設定し、それに基づいて制御演算して熱源を介して温熱環境を調整し、温度センサを介してこれをフィードバックすると共に、各在席者がそれぞれの投票スイッチを介して各人が感じる室温の快適さの度合いに応じて投票し、これを集計して演算(参考となる本実施形態では、これを加算して平均値演算)し、その結果をフィードバックするようになっている。
【0028】
なお、制御演算部151には制御演算部用タイマーAに加えて端末用タイマーBが備わっている。本実施形態においては各固定端末100と制御演算部151との間の通信を双方向通信とすることで、制御演算部151と各固定端末100を同期させて動作させることが可能になり、単方向通信、即ち各固定端末100から制御装置150への通信のみしかできない場合に必要とされる各固定端末100のタイマーをなくしている。
【0029】
続いて、参考となる実施形態に係る環境調整システムを
図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0030】
制御演算部151においては、以下のルーチンに従って制御を行う。最初にタイマーAをリセットする(ステップS11)。次いで、各固定端末100からのデータを受信し、端末別に上書き記録する(ステップS12)。次いで、タイマーAが所定時間経過したか否かを判断する(ステップS13)。ステップS13でタイマーAが所定時間経過していないと判断した場合は、ステップS12に戻る。ステップS13でタイマーAが所定時間経過したと判断した場合は、受信データから設定変更値を演算する(ステップS14)。次いで、空調装置160に設定変更値を出力する(ステップS15)。
【0031】
一方、各固定端末100においては、以下のルーチンに従って制御を行う。最初にタイマーBをリセットする(ステップS21)。次いで、レジスタをリセットする(ステップS22)。次いで、スイッチ状態をレジスタに記録する(ステップS23)。次いで、タイマーBが所定時間経過したか否かを判断する(ステップS24)。ステップS24でタイマーBが所定時間経過していないと判断した場合は、ステップS23に戻る。ステップS24でタイマーBが所定時間経過したと判断した場合は、人感センサがオンか否かを判断する(ステップS25)。ステップS25で人感センサがオンでないと判断した場合は、ステップS21に戻る。ステップS25で人感センサがオンであると判断した場合は、レジスタ内容を端末と共に送信する(ステップS26)。ここで、タイマーBの長さはタイマーAの長さと同じかそれよりも短く設定されている。これは、制御演算部151のタイマーAの継続中になるべく多くの情報を固定端末100から集めるためである。
【0032】
以下、参考となる実施形態における多数決演算方法をより具体的に説明する。在席者は、所定の時間(例えば5分)に1票の投票権がある。時間を限定するのは、投票スイッチの連打を無効にして多数決演算を正しく行うためである。
【0033】
在席者は、椅子又は机に取り付けられた固定端末100の投票スイッチ102を押すか、そのまま現状維持を認めて何も押さないかを決める。具体的には、寒いと感じた在席者はUPのボタンを押し、暑いと感じた在席者はDOWNのボタンを押し、現状を望む人は何も押さないようにする。ボタンを押すと、寒い・暑いという情報が、何も押さなければ中立という情報が、固定端末100から制御装置150に定期的に送信される。制御装置150の制御演算部151はタイマーAで設定された所定時間内に受信した端末データを集計する。
【0034】
寒いという数をU、暑いという数をD、中立の数をNとしたとき、設定温度変化値DTを次のように求める。DT
0はボタンを1回押したときの温度刻み幅である。
【0035】
【数1】
ここで分母のU+D+Nの値は在席者の総人数である。在席者のいない端末からは、人が在席していないことを人感センサ105が検知して電波を送信しないため、DTが公平に計算される。
【0036】
例えば、在席数3人でU=1、D=0、N=2の場合、DT
0=0.5とすれば、
【0037】
【数2】
となり、設定温度を0.17℃上昇させることになる。
【0038】
なお、参考となる本実施形態においては、
図5に示すように制御演算部151に設定される所定時間を空調装置160で調整されるエリアの空調制御時定数よりも長い値としている。
【0039】
設定温度が変更されることでその目標値に向かって制御が行われ、これにより空気温度が変化している状態で新たな設定変更を行うと、空気温度が上下する振動状態(いわゆるハンチング状態)を生じさせることで無駄な空調エネルギーを消費する虞がある(
図5(a)参照)。しかしながら、本実施形態においては、制御演算部151に設定される所定時間を空調装置160で調整されるエリアの空調制御時定数よりも長い値としていることで、空気温度が目標温度に近くなるまでの空調制御時定数よりも長い周期で操作を受け付けるようになっているので、無駄な振動状態を生じさせることなく早く目標温度に整定(収束)させることが可能になる(
図5(b)参照)。
【0040】
例えば、
図5(a)の場合、UPボタンを2回続けて押したため、空気温度が上がり過ぎ、今度はDOWNボタンを押すことになり、目標温度に収束するまで時間がかかるばかりでなく、スイッチ操作回数が増えてしまう欠点があるが、参考となる実施形態ではこのような事態に陥らないような対策がとられている。
【0041】
上述したように、参考となる本実施形態において、環境調整機器は空調装置160からなり、エリアは空調装置160によってエリア内温度が調整される環境調整エリアからなり、端末操作手段をなす固定端末100は、温度上昇希望の投票スイッチと、温度下降の投票スイッチを有していることで以下の作用を発揮する。
【0042】
具体的には、一定時間内に空調装置160が特定のエリアの温度を高くするか低くする、即ち投票スイッチに各自の周辺環境の温度状態の変更を希望する投票スイッチを押した在席者に加えて、投票スイッチを押さなかった在席者からもその者の周辺環境温度状態の現状維持希望という情報も集計されるため、在席者全員による公平な温度設定が短時間に可能になる。特に現状維持希望の人は何の操作も必要としないため、本来の業務を妨げるということが全くない。
【0043】
また、固定端末100は、椅子の肘掛け近傍や机の上等、各在席者が業務を遂行する特定の場所の近くに設置されるので、エリア内設備の一部という位置付けとなり、各在席者がわざわざ持ち歩く必要がない。即ち、各在席者が固定端末100を特別に所持(携帯)しなくて良いので煩わしくなく、入室時の所持忘れや退室時の置き忘れといった心配もない。
【0044】
また、一定時間ごとに集計を行うので、例えば同じ在席者がスイッチを短時間に何回押しても、1回しかカウントせず、各自の周辺環境の温度調整を行うに当っての投票の公平性を保つ。
【0045】
なお、上述の実施形態及び以下の各変形例においては、空調装置160に備わった温度センサ163によって、温度制御されるエリアの周辺温度を監視し、周辺温度が予め定めた設定温度に近くなった場合に各固定端末や移動端末からのデータを受け付けるようになっている。
【0046】
このように、空調装置160によって温度制御されるエリアの周辺温度を温度センサ163を介して監視し、目標温度に近くなった場合にのみ各固定端末や移動端末の操作を制御装置150が受け付けることにより、温度変化中の無駄な端末操作を確実に防ぐことが可能になる。
【0047】
続いて、上述の参考となる実施形態の第1変形例について説明する。なお、上述した参考となる実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図6は、
図1に示した環境調整システムの第1変形例を示すブロック図である。
図6から明らかなように、
図1に示す第1の実施形態に係る環境調整システムと比較して、固定端末100において操作受付表示器が省かれている。
【0048】
本変形例においては、固定端末100から無線受信部152を介した空調装置160への単方向通信となっている。そして、これに伴い、固定端末100は、
図4のフローチャートに示すタイマーAを備え、空調装置160は、
図4のフローチャートに示すタイマーBを備えている。このように、第1変形例では在席者の各端には投票受付開始状態及び投票受付完了状態の双方を示す操作受付表示器が各端末に備わっていないが、この操作受付表示器が備わっていなくても参考となる実施形態の作用を発揮することは十分可能である。
【0049】
しかしながら、本変形例においては単方向通信に限定されず双方向通信も適用可能である。その場合は、固定端末のタイマーAが不要となる。以下に、このような双方向通信としての構成を有する第2変形例について説明する。なお、上述した参考となる実施形態及びその第1変形例と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図7は、
図1に示した環境調整システムの第2変形例を示すブロック図である。
【0050】
この第2変形例に係る環境調整システムは、第1変形例において備わっていなかった操作受付表示器103が各固定端末100に備わっている。なお、制御演算部151には制御演算部用タイマーAに加えて端末用タイマーBが備わっている。各固定端末100と制御演算部151との間の通信を無線送受信部152を介した双方向通信とすることで、制御演算部151と各固定端末100を同期させて動作させることが可能になり、単方向通信、即ち各固定端末100から制御装置150への通信のみしかできない場合に必要とされる各固定端末100のタイマーをなくすことができる。
【0051】
これによって、上述した参考となる実施形態の有する操作受付表示器103の作用を発揮すると共に、その第1変形例の有する温度センサ163の作用を発揮することができる。
【0052】
続いて、上述の実施形態の第3変形例について説明する。なお、上述した参考となる実施形態及び第1、第2の変形例と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図8は、
図1に示した環境調整システムの第3変形例を示すブロック図である。
【0053】
この第3変形例に係る環境調整システムは、参考となる実施形態において各固定端末100に備わっていた操作受付表示器103の代わりに温度センサ108が各固定端末100に備わっている。本変形例においては、固定端末100から無線受信部152を介した空調装置160への単方向通信となっている。そして、これに伴い、固定端末100は、
図4のフローチャートに示すタイマーAを備え、空調装置160は、
図4のフローチャートに示すタイマーBを備えている。しかしながら、本変形例においても単方向通信に限定されず双方向通信も適用可能である。その場合は、固定端末のタイマーAが不要となる。
【0054】
このように各固定端末100に温度センサ108を備え、在席者の存在及びその周辺温度を検知した固定端末100は、温度センサ108を介して測定した温度を制御装置150に送り、制御装置150は各固定端末から送られた温度データを収集して平均温度データを演算し、この平均温度データに基づいて空調制御用の演算結果を補正して空調装置160を介して室温制御を行うようになっている。
【0055】
空調システムは、一般に柱などに温度センサを設置し、その測定値に基づいて温度制御を行っているが、温度センサの設置位置によっては、必ずしも部屋の温度を代表していないことがある。そのため、この第3変形例に係る環境調整システムによると、在席者一人一人の近くに温度センサ108を配置し、その測定値を用いることで、在席者の温熱感覚に近い空調制御が可能になる。また、各固定端末に設けられエリア内に分散した複数の温度センサ108により、部屋の温度をより正確に把握し、より正確な空調制御を行うことができる。
【0056】
続いて、本発明の実施形態に係る環境調整システムについて説明する。なお、上述の実施形態及びその各変形例と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
図9は、本発明の実施形態に係る環境調整システムを説明するブロック図である。また、
図10は、
図9に示した環境調整システムの制御方法を説明する説明図である。また、
図11は、
図9に示した環境調整システムの制御方法を説明する
図10とは異なる説明図である。
【0058】
本発明の実施形態に係る環境調整システムは、参考となる実施形態及びその各変形例と同様に、例えばオフィスなどの閉ざされたエリア内で働く多数の人々の職場環境をできるだけ快適な温度にするための空調システムである。
【0059】
なお、本実施形態は、参考となる実施形態及びその各変形例と異なり、1つのエリアを複数のゾーンに分けて各ゾーンごとに空調装置250(250−1,250−2,250−3,・・・)を1台ずつ設置し、1つのエリアを複数の空調機で温度調整するようになっている。なお、温度調整にあたってそのエリアにいる多数の人たちの意見を集約して多数決で理想的な調整値を算出する点については、参考となる実施形態及びその変形例と同様である。
【0060】
本発明の実施形態に環境調整システムは、参考となる実施形態と同様に、各固定端末200(200−1,200−2,200−3,・・・)が、操作者の業務を行う机や椅子等特定の場所に設置されたタイプの固定端末となっており(
図2参照)、かつ各空調装置250にはそれぞれ各人の固定端末200からの情報に基づきこれらの情報の重み付けを行い、各ゾーンごとに割当られた空調機256ごとに各ゾーンがそれぞれ最適な温度となるように制御する制御演算部251及び空調制御部255が備わっている。
【0061】
より具体的には、各固定端末200には、制御部201と、端末番号設定器204と、温度設定スイッチ202と、無線通信部206と、アンテナ207を備えている。また、各空調装置250には、制御演算部251と、無線受信部252と、アンテナ253と、空調制御部255と、空調制御部255によって制御される空調機256を備えている。そして、各固定端末200と各空調装置250の制御演算部251とは電波などの無線手段によって通信されるようになっている。
【0062】
本発明の実施形態においては、固定端末100から無線受信部252を介した空調装置160への単方向通信となっている。そして、これに伴い、固定端末100は、
図4のフローチャートに示すタイマーAを備え、空調装置160は、
図4のフローチャートに示すタイマーBを備えている。しかしながら、本発明の実施形態においても単方向通信に限定されず双方向通信も適用可能である。その場合は、固定端末のタイマーAが不要となる。
【0063】
なお、これら各固定端末200の各構成要素及び各空調装置250の各構成要素については、参考となる実施形態及びその各変形例と同等の構成になっているので、その詳細な説明を省略し、相違点のみついて以下に説明する。
【0064】
本発明の実施形態においては、
図10に示すように、各固定端末200から各空調装置250によって制御される空調ゾーンの中央位置までの距離(
図10では、d1〜d4)を測定し、この距離に応じて各固定端末200の投票スイッチの操作情報の重み付け又は投票スイッチが押されなかった情報の重み付けを変えるようになっている。
【0065】
具体的には、各固定端末200は、参考となる実施形態及びその各変形例と同様にエリア内にいる在席者の椅子の肘掛けの下や机の上等、各自特定の場所で操作可能な固定端末からなり、各固定端末200はタイマーを有し、一定時間ごとにスイッチの状態及び操作者の端末番号を無線通信により制御演算部251に送るようになっている。また、制御演算部251は、各固定端末200からの移動電波の受信強度、伝搬遅延時間、又は到来角の少なくとも何れか一つから各固定端末200の発信位置を特定すると共に、所定時間内に送られてきた各固定端末200の情報を受信して集計するようになっている。また、制御演算部251のタイマーに設定された所定時間は、各固定端末200のタイマー時間と同じか長く設定され、固定端末200の発信位置の各空調ゾーン中央からの距離に応じて投票の重み付けを行い、各固定端末200からのデータの平均演算を制御演算部251で行い、設定変更値を算出し、結果を空調制御部255に送るようになっている。
【0066】
これによって、一定時間内に、温度上昇投票スイッチ及び温度下降投票スイッチからなる温度変更希望の投票スイッチを押した在席者、押さなかった在席者からの情報が集計されるため、在席者全員による公平な温度設定が短時間に可能になる。また、一定時間ごとに集計を行うので、例えば同じ在席者が投票スイッチを短時間に何回押しても、1回としかカウントせず、公平性を保つ。また、一つの空調ゾーンだけでなく、影響を受ける全ての空調ゾーンに対して距離に応じて重みを付けて投票を行うことができる。
【0067】
この制御方法の具体例を以下に説明する。
図11は、
図9に示した環境調整システムの制御方法を説明する
図10とは異なる説明図であり、温風吹き出しの場合の水平距離と温度との関係を示した図である。
【0068】
図10に示すように、固定端末200の位置から近隣の4つの空調ゾーン中央までの距離をd
1,d
2,d
3,d
4とする。各空調ゾーンでは中央からある温度エネルギーをもった空気が吹き出しているとしたとき、
図11に示すように、エネルギーは吹き出し口からの水平距離の2乗に比例して拡散し減衰すると考えられるので、投票の重みを次のように求める。
【0069】
【数3】
ここで各空調ゾーンのエネルギー吹き出し量は等しいとする。aは係数であるが、重みの合計を1とすることから、
【0070】
【数4】
これによって、aは次のように求められる。
【0071】
【数5】
この具体的に求めたaの値を上述の投票の重みa/d
12,a/d
22,a/d
32,a/d
42をそれぞれ代入することで、距離に応じた各重み付けの具体的な値がそれぞれ求まる。そして、この値と各在席者の投票結果とから最適な温度調整量を求めることができる。
【0072】
例えば
図10の例では、a/d
12=0.4,a/d
22=0.4,a/d
32=0.1,a/d
42=0.1のようになる。
【0073】
以下、上述した本発明の実施形態の有用性を明らかにする着目点について説明する。
【0074】
操作者が利用する端末に位置検知機能を備えておき、端末を操作したとき(多数決参加として「暑い」「寒い」の意思表示をしたとき)に、検知されている位置に基づき、操作者と複数の近傍空調ゾーン中央までの距離を算出する。例えば、操作者がA,B,C,Dの4ゾーンにかかる位置にいるとして、それぞれの空調ゾーン中央までの距離DA,DB,DC,DDを算出する。操作者の多数決参加の1票を、空調ゾーン中央までの距離に応じて重み付けして空調システム側が受けることにする。これにより、仮に複数の空調ゾーン間の境界付近に操作者が位置している場合であっても、どれか1個の空調ゾーンに偏った多数決参加としなくて済むので、多数決参加の妥当性を向上できることになる。例えば、空調ゾーン中央までの距離が近いものほど重みを大きくし、重みの総和が1票分に相当する1.0になるようにすれば良い。
【0075】
なお、操作者が1人の場合は、実質的に「個人向け大空間空調法」として機能することになる。
【0076】
そして、上記のように構成すると、偶然、小さい数値の重み付けされた多数決参加の票が多数集まって、実質的にどの操作者にも大きな影響を及ぼさない空調設備が動作するということも起こり得るようになる。即ち、例えば0.05ぐらいの重みの票が20票集まれば、1票分の意思表示を受け付けることになる。
【0077】
単純に空調ゾーン中央までの距離に従うならばこのような数値になるものの、一方で空調は不必要な動作を極力減らすことが望ましい。従って、このようなことが起こり難くするために、重みが予め規定された閾値以上になる空調ゾーンのみを適用対象に制限するべきであることに、発明者は着眼した。
【0078】
これにより、不必要な(或いはあまり有効ではない)空調動作を減らすことができる。
【0079】
例えば操作者がA,B,C,Dの4ゾーンにかかる位置にいるとして、各ゾーンに対する重みがまず単純計算でそれぞれ0.44,0.22,0.22,0.12と得られたとする。予め規定された閾値を0.20とした場合、A,B,Cの0.44,0.22,0.22が採用される。このときの3つの数値の合計は0.88になるので、合計が1.0になるように正規化する。即ち、各数値を1.0/0.88倍して、A,B,Cの各ゾーンについてのみ重みが0.50,0.25,0.25として決定され、合計の重みは1票分になる。そして、極端に小さな数値は排除されることになる。
【0080】
続いて、本発明の実施形態の第1変形例について説明する。なお、本発明の実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図12は、
図9に示した環境調整システムの第1変形例を示すブロック図である。また、
図13は、
図9に示した環境調整システムの制御方法を説明する
図10及び
図11とは異なる説明図である。
【0081】
この第1変形例においては、本発明の実施形態と異なり、端末が在室者の業務を行う机や椅子等特定の場所に設置されたタイプの固定端末ではなく各人が身に付けて(携帯して)エリア内を歩き廻れるリモコン型の移動端末300(300−1,300−2,300−3,・・・)からなっている。そして、各人が1台ずつ移動端末(リモコン)300を持ち歩き、各受信装置260(260−1,260−2,260−3,・・・)を介して、本発明の実施形態の制御演算部251と同様に制御演算部290において各人の移動端末300からの情報に基づきこれらの情報の重み付けを行い、各ゾーンごとに割当られた空調装置270(270−1,270−2,270−3,・・・)ごとに各ゾーンがそれぞれ最適な温度となるように制御する。
【0082】
本変形例においては、移動端末300から無線受信部262を介した空調装置160への単方向通信となっている。そして、これに伴い、移動端末300は、
図4のフローチャートに示すタイマーAを備え、空調装置270は、
図4のフローチャートに示すタイマーBを備えている。しかしながら、本変形例においても単方向通信に限定されず双方向通信も適用可能である。その場合は、移動端末のタイマーAが不要となる。
【0083】
なお、
図13に示すように、各空調装置270によって温度調整される各空調ゾーンを更に小区画の空調ゾーンに分けても良い。具体的には、空調ゾーンを更に小区画に区切り、移動端末の存在する小区画内に他の移動端末がある場合には、制御演算部290は、投票の重みを低くするようになっている。
【0084】
この理由は次の通りである。1つの空調ゾーンの中で、場所によって温度が均一でない場合がある。例えば窓の近く、入口の近く、熱源の近くなど、他に比べて、温熱環境の調整し難い場所が存在する。このような場合、操作者1人が均等に1票を持つのではなく、場所毎に1票と考える。例えば、小区画に1人しかいない場合には1人1票だが、小区画に3人いる場合には、空調装置270が暖房している場合、例えは別の熱源があって空調装置270がその小区間の温熱環境を調整し難いと見做してそこでは1人1/3票とする。このようにして設定値を公平に決定する。
図13の場合、左上の小区画ゾーンに在室者A1名だけ居て、右下の小区画ゾーンに在室者B,C,D合計3名居るので、在室者Aからの情報の重みを1とし、在室者B,C,Dからの情報の重みをそれぞれ0.33として設定値を公平に決定する。
【0085】
続いて、本発明の実施形態の第2変形例について説明する。なお、本発明の実施形態及びその第1変形例と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図14は、
図9に示した環境調整システムの第2変形例を示すブロック図である。
【0086】
本変形例においては、移動端末300から無線受信部262を介した制御演算部290への単方向通信となっている。そして、これに伴い、移動端末300は、
図4のフローチャートに示すタイマーAを備え、制御演算部290は、
図4のフローチャートに示すタイマーBを備えている。しかしながら、本変形例においても単方向通信に限定されず双方向通信も適用可能である。その場合は、移動端末のタイマーAが不要となる。
【0087】
第2変形例は、本発明の実施形態の第1変形例と異なり、移動端末300に人検知センサ(人感センサ)305を備えている。そして、人感センサ305によって移動端末300を在室者が携帯しているときのみを検知し、在室者が移動端末300を携帯していて所定時間内に温度設定変更の投票がなされない場合は、現状の温度管理状態を容認したものとする信号を各受信装置260(260−1,260−2,260−3,・・・)を介して制御演算部290に送るようになっている。従って、移動端末300を在室者が携帯しておらず、例えば机の上に置いたままとなっている場合、人検知センサ305により在室者が移動端末300を携帯していないと判断し、温度設定変更の投票の信号が所定時間内に制御演算部290に届かなければ、その人の温度管理に関する変更希望又は容認の投票はなされなかったものと判断する。
【0088】
なお、上述の各実施形態及びその各変形例において制御演算部は、算出した設定変更値が例えば現状の設定温度に対して1℃程度の所定値より小さい場合にこの変更値をゼロとするのが良い。
【0089】
周辺の空調ゾーンに対して小さな設定変更値を与えることで無駄な空調エネルギーが発生するが、制御演算部は、算出した設定変更値が所定値以下の場合に当該変更値をゼロとすることで、このような無駄な空調エネルギーが発生するのを防止する。
【0090】
なお、上述した本発明の実施形態及びその各変形例において、参考となる実施形態の第3変形例のように各端末に温度センサが備わっていても良い。これによって、温度センサを介して測定した温度を制御装置に送り、制御装置は各端末から送られた温度データを収集して平均温度データを演算し、この平均温度データに基づいて空調制御用の演算結果を補正して空調装置を介して室温制御を行うことができる。
【0091】
また、上述の各実施形態及びその各変形例については、端末と制御装置間を無線で通信するように紹介したが、端末が例えば椅子や机等に固定された固定端末であれば必ずしも無線で通信する必要はなく、端末と制御装置間を有線で通信するようにしても良い。
【0092】
また、上述の各実施形態及びその各変形例については、環境調整システムの一つである空調環境調整システムを紹介したが、本発明はこの空調環境調整システムに限定されるものではない。具体的には、本発明に係る環境調整システムを照明環境や音響(BGM等)環境などにも幅広く適用することが可能である。
【0093】
以上説明したように、エリアは複数の空調装置によってそれぞれ空調制御される複数の空調ゾーンに分けられ、制御演算部は、予め作成された各操作者の端末番号から端末の位置を特定すると共に、各端末のデータを集計して演算を行い、各端末の発信位置の各空調ゾーン中央からの距離に応じて投票の重み付けを行い、各空調機の設定変更値を算出し、結果を空調制御部に送る場合、一つの空調ゾーンだけでなく、影響を受ける全ての空調ゾーンに対して距離に応じて重みを付けて投票を行うことができるので、より各自が快適と感じる温度となるようにそのエリアの空調を制御することができる。