特許第5667283号(P5667283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667283タイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667283
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】タイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20150122BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20150122BHJP
   C08G 69/40 20060101ALI20150122BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C08J5/18CFG
   B60C5/14 A
   C08G69/40
   C08L77/00
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-502482(P2013-502482)
(86)(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公表番号】特表2013-528666(P2013-528666A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】KR2011002229
(87)【国際公開番号】WO2011122876
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2012年9月27日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0028996
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0028995
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0029492
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0029493
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チュン イル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン オク−ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ サン−モク
(72)【発明者】
【氏名】キム ギ−ウン
【審査官】 大熊 幸治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−57788(JP,A)
【文献】 特開2009−107183(JP,A)
【文献】 特開平7−40702(JP,A)
【文献】 特表2008−504173(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/068104(WO,A1)
【文献】 福本 修,ポリアミド樹脂ハンドブック,日刊工業新聞社,1988年,第37頁−第39頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/02
C08J 5/12− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系セグメント;およびフィルム全体重量に対して5乃至50重量%のポリエーテル系セグメントを含む共重合体だけをフィルムの基材として含み、
30乃至300μmの厚さを有する、タイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項2】
常温で100%伸張時発生する荷重が0.5乃至4kgfである、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項3】
常温で200%伸張時発生する荷重が1乃至5kgfである、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項4】
180℃で10分間熱処理後100%伸張時発生する荷重が、常温で100%伸張時発生する荷重の2倍以下である、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項5】
180℃で10分間熱処理後100%伸張時発生する荷重が6kgf以下である、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項6】
前記ポリアミド系セグメントは、
ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66の共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物、および612−ナイロンのメトキシメチル化物からなる群より選択された1種のポリアミド系樹脂の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項7】
前記ポリアミド系セグメントは、下記化学式1または化学式2の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム:
【化1】
上記化学式1において、
は、炭素数1乃至20の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7乃至20の直鎖または分枝鎖のアリールアルキレン基であり、
【化2】
上記化学式2において、
は、炭素数1乃至20の直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり、
は、炭素数1乃至20の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7乃至20の直鎖または分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【請求項8】
前記ポリエーテル系セグメントは、下記化学式5の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム:
【化3】
上記化学式5において、
は、炭素数1乃至10のアルキレン基であり、
nは、1乃至100の整数であり、
およびRは、互いに同一であるか、または異なることができ、それぞれ直接結合、−O−、−NH−、−COO−または−CONH−である。
【請求項9】
前記ポリエーテル系セグメントは、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシテトラメチレンジアミン、およびこれらの共重合体からなる群より選択された1種のポリエーテル系樹脂の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項10】
未延伸フィルムである、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項11】
200cc/(m・24hr・atm)以下の酸素透過度を有する、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項12】
少なくともフィルムの一表面上に形成されており、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層をさらに含む、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項13】
耐熱酸化防止剤および熱安定剤からなる群より選択された1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルム。
【請求項14】
ポリアミド系樹脂またはその前駆体;およびフィルム全体重量に対して5乃至50重量%のポリエーテル系樹脂を重合反応させて共重合体を形成する段階;および
前記共重合体を溶融および圧出してフィルムを形成する段階を含む、請求項1に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記フィルムは30乃至300μmの厚さを有する未延伸フィルムである、請求項14に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記溶融圧出物から形成されたフィルムの少なくとも一表面上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階をさらに含む、請求項14に記載のタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法に関し、より詳しくは、薄い厚さでも優れた気密性を実現して、タイヤの軽量化および自動車燃費の向上を可能にし、タイヤの製造工程で優れた成形性を示すタイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは自動車の荷重を支えて、路面から受ける衝撃を緩和し、自動車の駆動力または制動力を地面に伝達する役割を果たす。一般に、タイヤは繊維/鋼鉄/ゴムの複合体であって、図1に示すような構造を有するのが一般的である。
【0003】
トレッド(Tread)1:路面と接触する部分で、制動、駆動に必要な摩擦力を与え、耐摩耗性が良好でなければならず、外部衝撃に耐えられ、発熱が少なくなければならない。
【0004】
ボディープライ(Body Ply)(またはカーカス(Carcass))6:タイヤ内部のコード層で、荷重を支持し、衝撃に耐え、走行中屈伸運動に対する耐疲労性が強くなければならない。
【0005】
ベルト(Belt)5:ボディープライの間に位置しており、大部分の場合に針金(Steel Wire)で構成され、外部の衝撃を緩和させるのはもちろん、トレッドの接地面を広く維持して走行安定性を優秀にする。
【0006】
サイドウォール(Side Wall)3:ショルダー2の下部からビード9の間のゴム層をいい、内部のボディープライ6を保護する役割を果たす。
【0007】
インナーライナ(Inner Liner)7:チューブの代わりにタイヤの内側に位置し、空気漏出を防止して空気入りタイヤを可能にする。
【0008】
ビード(BEAD)9:針金にゴムを被覆した四角または六角形態のワイヤバンドル(Wire Bundle)で、タイヤをリム(Rim)に安着させ固定させる役割を果たす。
【0009】
キャッププライ(CAP PLY)4:一部の乗用車用ラジアルタイヤのベルトの上に位置した特殊コード紙であって、走行時にベルトの動きを最小化する。
【0010】
アペックス(APEX)8:ビードの分散を最少化し、外部の衝撃を緩和してビードを保護し、成形時に空気の流入を防止するために使用する三角形状のゴム充填材である。
【0011】
最近は、チューブを使わずに、内部には30乃至40psi程度の高圧空気が注入されたチューブレス(tube−less)タイヤが通常使用されるが、車両の運行過程で内側の空気が外部に流出するのを防止するために、カーカス内層に気密性の高いインナーライナが配置される。
【0012】
以前には比較的に空気透過性が低いブチルゴムまたはハロブチルゴムなどのゴム成分を主要成分とするタイヤインナーライナが使用されたが、このようなインナーライナでは十分な気密性を得るために、ゴムの含有量またはインナーライナの厚さを増加させなければならなかった。
そのためにタイヤ総重量が増加し、自動車の燃費が低下しており、タイヤの加硫過程または自動車の運行過程でカーカス層の内面ゴムとインナーライナの間に空気ポケットが生じるか、またはインナーライナの形態や物性が変わる現象も現れた。
【0013】
これによって、インナーライナの厚さおよび重量を減少させて燃費を節減させ、タイヤの加硫または運行過程などで発生するインナーライナの形態や物性の変化を減らすために多様な方法が提案された。
【0014】
しかし、以前に知られていたいずれの方法も、インナーライナの厚さおよび重量を十分に減少させながら、優れた空気透過性およびタイヤの成形性を維持するのに限界があった。また、以前に知られていた方法によって得られたインナーライナは、タイヤの製造過程または運行過程などで反復的な変形によって亀裂が生じるなど十分な耐疲労性を有しない場合も多かった。
【0015】
そのために、さらに薄い厚さを有してタイヤを軽量化させると共に、優れた気密性または成形性などの物性を実現できるタイヤインナーライナの開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、薄い厚さでも優れた気密性を実現して、タイヤの軽量化および自動車燃費の向上を可能にし、タイヤの製造工程で優れた成形性を示すタイヤインナーライナ用フィルムを提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ポリアミド系セグメント;およびフィルム全体重量に対して5乃至50重量%のポリエーテル系セグメントを含む共重合体を含み、30乃至300μmの厚さを有するタイヤインナーライナ用フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、ポリアミド系樹脂またはその前駆体;およびフィルム全体重量に対して5乃至50重量%のポリエーテル系樹脂を重合反応させて共重合体を形成する段階;および前記共重合体を溶融および圧出してフィルムを形成する段階を含むタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法を提供する。
【0020】
以下、発明の具体的な具現例によるタイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0021】
発明の一具現例によれば、ポリアミド(poly−amide)系セグメント;およびフィルム全体重量に対して5乃至50重量%のポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体を含み、30乃至300μmの厚さを有するタイヤインナーライナ用フィルムが提供される。
【0022】
本発明者らは、ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントを特定の含有量で共重合して製造されるタイヤインナーライナ用フィルムが、薄い厚さでも優れた気密性および高い空気圧維持性能を実現できるだけでなく、タイヤ成形時に、そんなに大きくない力が加えられても容易に伸張または変形できることで、優れた成形特性を示すことができるという点を、実験を通して確認して発明を完成した。
【0023】
また、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、物性向上のための付加的な添加剤またはゴム成分を大きく必要としないため、製造工程を単純化させることができ、タイヤ製造原価の節減が可能である。そのために、前記発明の一具現例のタイヤインナーライナ用フィルムを用いれば、タイヤを軽量化させて自動車の燃費を向上させることができ、長期間使用後にも適正空気圧を維持して、低い空気圧によって誘発される転覆事故および燃費低下を防止でき、簡単な製造工程によっても優れた性能のタイヤを製造することができる。
【0024】
前記ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントの共重合体を含むタイヤインナーライナ用フィルムは、フィルムの基材として前記共重合体だけを含む(consisting essentially of)ことができる。そのために、前記インナーライナ用フィルムはゴム系統の成分または熱可塑性樹脂類の成分を基材の主要成分とする以前のタイヤインナーライナ用フィルムと区分でき、追加的な加硫剤(vulcanizer)を必要としない特徴を有する。前記フィルムの基材とは、タイヤインナーライナ用フィルムから添加剤などの付加的な分散成分を除いて、フィルムの形状を維持する樹脂またはゴム成分の基板(substrate)を意味し、以前には前記フィルムの基材が多様なゴム成分または樹脂成分を含む場合が多かった。しかし、前記発明の一具現例によるタイヤインナーライナ用フィルムは、基材として前記共重合体と共にポリアミド系樹脂などを含むことも可能であるが、前記共重合体だけを含むこともでき、この場合、他の樹脂またはゴム成分を実質的に含まないこともある。
【0025】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムの特性は、前記ポリアミド系セグメントと共にエラストマー的性質を付与するポリエーテル系セグメントを特定含有量範囲で用いて共重合することによるものと見られる。前記ポリアミド系セグメントは、固有の分子鎖特性によって優れた気密性、例えば、同一厚さでタイヤに一般に用いられるブチルゴムなどに比べて10乃至20倍程度の気密性を示し、他の樹脂に比べてそんなに高くないモジュラス特性を示す。そして、前記ポリアミド系セグメントと共にポリエーテル系セグメントがフィルム全体重量に対して5乃至50重量%で使用されて共重合されるため、前記タイヤインナーライナ用フィルムは低いモジュラス特性を示すか、または特定伸張条件で発生する荷重が相対的に小さいことができ、特定の熱処理工程以降にもフィルムの物性が大きく変化せず、ポリアミド成分の結晶化などによる構造変化を抑えることができるので、タイヤ変形に対する耐久性を向上させることができる。
【0026】
そのために、前記インナーライナ用フィルムは、タイヤ成形時にそんなに大きくない力が加えられても、タイヤの形態に合うように伸張または変形できるので、これはタイヤの優れた成形性の発現を可能にする。そして、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、ポリエーテル系セグメントの含有量をそんなに高めることなく、上述した特性を示すことができるので、前記インナーライナフィルムはポリアミド系セグメント特有の優れた気密性および低い空気透過性を示すことができる。
【0027】
具体的に、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、常温で100%伸張時発生する荷重(Load At Specific Elongation、100%)が0.5乃至4kgfであり、常温で200%伸張時発生する荷重が1乃至5kgfでありうる。前記タイヤインナーライナ用フィルムが、常温で100%または200%に伸張した時、大き過ぎる荷重が発生すれば、タイヤ成形機械の低い成形圧力では適切なタイヤ形状を製造するのが困難であり、これによって成形後グリーンタイヤの形状がゆがんだりフィルムが破れる工程上の問題点が発生しうる。また、前記タイヤインナーライナフィルムが常温で一定程度伸張時、大き過ぎる荷重を発生させる場合、成形機械または成形方法などを変更してタイヤを製造するとしても、強直なフィルムの特性によって自動車運行過程で発生しうる苛酷な引張および圧縮変形などの外力がフィルムの特定領域に集中でき、そのためにフィルムにクラックが発生したりフィルム自体が破れるなどの製品品質上の問題点が発生しうる。
【0028】
また、前記インナーライナ用フィルムは、180℃で10分間熱処理後100%伸張時発生する荷重(Load At Specific Elongation、100%)が、常温で100%伸張時発生する荷重の2倍以下でありうる。前記インナーライナ用フィルムにおいて、180℃で10分間熱処理後100%伸張時発生する荷重が、常温で100%伸張時発生する荷重の2倍を超えれば、膨張圧力を加えてもインナーライナが十分に延伸されなくて、成形されるグリーンタイヤの形状が不良になり、熱処理工程後に強直性が急激に増加して、最終タイヤの成形が困難になりうる。前記伸張時、タイヤインナーライナ用フィルムから発生する荷重は、フィルムのMD(Machine Direction)方向を基準として100%伸張区間でのMax荷重値で測定することができる。
【0029】
また、前記タイヤインナーライナを180℃で10分間熱処理後100%伸張時発生する荷重が、6kgf以下でありうる。つまり、前記タイヤインナーライナは、タイヤ成形時熱処理以降にも適切な機械的物性および弾性などを維持して、そんなに大きくない力が加えられても容易に伸張または変形でき、タイヤの成形後にもタイヤ内で安定した物性を示し、また、自動車運行過程で発生しうる苛酷な引張および圧縮変形などの外力にも安定した物性を有することができるので、タイヤの耐久性を向上させることができる。
【0030】
一般に、ポリアミド系樹脂は、熱によって簡単に結晶化することと知られているが、前記タイヤインナーライナ用フィルムは前記ポリエーテル系セグメントを特定含有量で含んで、フィルム内で熱または外部変形によって結晶が成長するのを抑えることができる。これによって、前記インナーライナフィルムは、タイヤ内部で発生する熱によっても簡単に結晶化されず、長期間の運行によってもモジュラスまたは硬直度が大きく変化しないで、運行中に発生しうるクラックも最小化することができる。
【0031】
そして、後述するタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法に示すように、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、配向を最大限抑える方法を適用して、例えば、溶融圧出温度の最適化による粘度調整、口金ダイ規格変更または巻取り速度の調節等をによって、未配向または未延伸フイルムに製造されるので、フィルム内でポリエーテル系セグメントの含有量がそんなに高くなくても、優れた機械的物性および成形性を有することができる。
【0032】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムは30乃至300μm、好ましくは40乃至250μm、さらに好ましくは40乃至200μmの厚さを有することができる。前記タイヤインナーライナ用フィルムは、以前に知られていたインナーライナフィルムに比べて薄い厚さを有しながらも、低い空気透過性、例えば、200cc/(m・24hr・atm)以下の酸素透過度を有することができる。
【0033】
前記ポリアミド系セグメントは、アミドグループ(−CONH−)を含む繰り返し単位を意味し、重合反応に参加するポリアミド系樹脂またはその前駆体から形成されることができる。
【0034】
前記ポリアミド系セグメントは十分な耐熱性および化学的安定性を有するため、タイヤの製造過程で適用される高温条件または添加剤などの化学物質に露出時、インナーライナフィルムが変形または変成することを防止することができる。そして、前記ポリアミド系セグメントはポリエーテル系セグメントと共重合されることによって、接着剤(例えば、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤)に対して相対的に高い反応性を有することができて、前記インナーライナ用フィルムがカーカス部分に容易に接着される。
【0035】
具体的に、前記ポリアミド系セグメントは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66の共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物、および612−ナイロンのメトキシメチル化物からなる群より選択された1種のポリアミド系樹脂に含まれる主要繰り返し単位でありうる。例えば、ナイロン6の主要繰り返し単位は、下記化学式1でRが炭素数6のアルキレンであると知られており、他のポリアミド系樹脂の主要繰り返し単位も当業者に自明に知られている。
【0036】
前記ポリアミド系セグメントは、下記化学式1または化学式2の繰り返し単位を含むことができる。
【0037】
【化1】
上記化学式1において、Rは、炭素数1乃至20の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7乃至20の直鎖または分枝鎖のアリールアルキレン基でありうる。
【0038】
【化2】
上記化学式2において、Rは、炭素数1乃至20の直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり、Rは、炭素数1乃至20の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7乃至20の直鎖または分枝鎖のアリールアルキレン基でありうる。
【0039】
本明細書において、「アルキレン(alkylene)基」とは、アルキル(alkyl)基から由来した2価の作用基を意味し、「アリールアルキレン基」とは、アリール(aryl)基が導入されたアルキル(alkyl)基から由来した2価の作用基を意味する。
【0040】
一方、前記ポリエーテル系セグメントは、アルキルオキシド(alkyl oxide、「−Akyl−O−」)グループを含む繰り返し単位を意味し、重合反応に参加するポリエーテル系樹脂またはその前駆体から形成される。
【0041】
前記ポリエーテル系セグメントは、タイヤの製造過程または自動車の運行過程でタイヤインナーライナ用フィルム内に大きい結晶が成長するのを抑えるか、または前記フィルムが簡単に破られるのを防止することができる。また、前記ポリエーテル系セグメントは前記タイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスまたは伸張時に発生する荷重をさらに低くすることができ、これによってタイヤの成形時そんなに大きくない力が加えられても、タイヤの形態に合うように伸張または変形されるようにして、タイヤを容易に成形することができるようにする。そして、前記ポリエーテル系セグメントは、低温でフィルムの硬直度が上昇するのを抑えることができ、高温で結晶化するのを防止することができ、反復的な変形などによるインナーライナフィルムの損傷または破れることを防止することができ、インナーライナの変形に対する回復力を向上させて、永久変形によるフィルムのシワ発生を抑えて、タイヤまたはインナーライナの耐久性を向上させることができる。
【0042】
前記ポリエーテル系セグメントは、ポリアルキレングリコール樹脂またはその誘導体に含まれる主要繰り返し単位でありえ、この時、前記ポリアルキレングリコール誘導体は、ポリアルキレングリコール樹脂の末端がアミン基、カルボキシル基またはイソシアネート基などに置換された、好ましくはアミン基に置換された誘導体でありうる。好ましくは、前記ポリエーテル系セグメントはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシテトラメチレンジアミン、およびこれらの共重合体からなる群より選択された1種のポリエーテル系樹脂に含まれる主要繰り返し単位でありうる。
【0043】
具体的に、前記ポリエーテル系セグメントは下記化学式5の繰り返し単位を含むことができる。
【化3】
上記化学式5において、Rは、炭素数1乃至10の直鎖または分枝鎖のアルキレン基でありえ、nは、1乃至100の整数でありうる。また、前記RおよびRは、互いに同一であるか、または異なることができ、それぞれ直接結合、−O−、−NH−、−COO−または−CONH−でありうる。
【0044】
後述する製造方法に示すように、前記ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントの共重合体は、ポリアミド系樹脂またはその前駆体とポリエーテル系樹脂を重合反応させることによって得られる。この時、使用されるポリエーテル系樹脂の重量平均分子量は500乃至10,000、好ましくは1,000乃至3,000でありうる。前記重量平均分子量が500未満である場合には、前記ポリエーテル系樹脂がタイヤインナーライナ用フィルム内で大きい結晶が成長するのを抑えたりモジュラスを低くするなどの作用を適切に行わない可能性がある。また、前記重量平均分子量が10,000超過である場合には、インナーライナの気密性が低下しうる。このような重量平均分子量は、通常広く知られた装置および方法、例えば、GC−MSまたはGPC(Gel Permeation Chromatography)等によって測定することができる。
【0045】
前記ポリエーテル系セグメントは、フィルム全体重量に対して5乃至50重量%、好ましくは10乃至30重量%で含まれることができる。これによって、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、前記ポリエーテル系セグメント以外の成分、例えば、ポリアミド系成分、その他の成分または添加剤を50乃至95重量%で含むことができる。
【0046】
前記ポリエーテル系セグメントがフィルム全体重量に対して5重量%未満で含まれる場合には、前記タイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスまたは伸張時発生する荷重が非常に高くなって、タイヤの成形性が低下するか、または反復的な変形による物性の低下が大きく現れる。また、前記ポリエーテル系セグメントがフィルム全体重量に対して50重量%を超えて含まれる場合には、前記タイヤインナーライナ用フィルムの気密性が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナがカーカス層に容易に接着するのが困難でありえ、インナーライナの弾性が大きく増加して、均一なフィルムの製造が容易でないことがある。
【0047】
前記ポリアミド系セグメントの含有量が小さすぎる場合には、タイヤインナーライナ用フィルムの密度や気密性が低下することがあり、大き過ぎる場合にはタイヤインナーライナ用フィルムのモジュラスが非常に高くなるか、またはタイヤの成形性が低下することがあり、タイヤの製造過程または自動車の運行過程に現れる高温環境でインナーライナが結晶化され、反復的な変形によってインナーライナ用フィルムにクラックが発生しうる。
【0048】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムは未延伸フィルムでありうる。前記タイヤインナーライナ用フィルムが未延伸フィルムである場合には、低いモジュラスおよび高い変形率を有するようになって、高い膨張が発生するタイヤ成形工程に適切に適用することができる。また、未延伸フィルムでは結晶化現象がほとんど発生しないため、反復される変形によってもクラックなどのような損傷を防止することができる。そして、未延伸フィルムは、特定方向への配向および物性の偏差が大きくないため、均一な物性を有するインナーライナを得ることができる。前記タイヤインナーライナ用フィルムが未延伸フィルムである場合、タイヤの製造工程で円筒形またはシート状に全て適用することができる。ただし、前記タイヤインナーライナ用フィルムがシート状である場合、タイヤサイズごとにフィルム製造設備を別に備えなければならず、移送および保管過程でフィルムに加えられる衝撃およびシワ等を最小化できるので好ましい。また、前記インナーライナ用フィルムをシート状に製造する場合、接着剤を容易に追加することができ、成形ドラムと規格差によって製造工程中に発生する損傷またはゆがみなどを防止することができる。
【0049】
また、図1に示されているように、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、以前のインナーライナ用フィルムに比べてさらに低い厚さでも優れた気密性を実現することができる。具体的に、前記インナーライナ用フィルムは、従来に一般に使用されていたハロブチルゴムのインナーライナに比べて、同じ厚さでも高い気密性を実現することができ、天然ゴムに比べて著しく優れた気密性を示す。また、一般的なナイロン6延伸フィルムが高い気密性を示すことができるが、タイヤの製造過程または自動車の運行過程で物性が低下したり変形したりすることがあるのに対し、前記タイヤインナーライナ用フィルムは優れた気密性を実現しながらも、物性または形態の変化が微々たるものであり、タイヤの成形性を高めることができる。図1において、横軸はLogスケールのフィルムの厚さ、縦軸は酸素透過度(OTR)、NRは天然ゴム、Nナイロンフィルムは一般的なナイロン6延伸フィルム、インナーライナゴム#1および#2はハロブチルゴムを使用するタイヤインナーライナ、インナーライナフィルムは発明の一例のタイヤインナーライナ用フィルムを意味する。
【0050】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントの共重合体を含むことによって、向上した接着力を示すことができるので、カーカス層との堅固な接着のために追加的な接着層またはゴム層を積層する必要がない。これによって、タイヤの製造工程に用いられるものと知られている通常の接着剤を用いて、前記タイヤインナーライナ用フィルムをカーカス内面に接着させることができるが、さらに均一でかつ安定した接着のためにレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を用いるのが好ましい。
【0051】
このことにより、前記タイヤインナーライナ用フィルムは少なくとも一表面上に形成された接着層をさらに含むことができ、このような接着層は前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含むことができる。このような接着層は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む通常の接着層の構成または製造方法によって形成することができ、このような接着層を含むタイヤインナーライナ用フィルムも上述した発明の一具現例による物性、例えば、低い空気透過性と一定の伸張時に発生する荷重が低い水準で維持される特性を満たすことができるのはもちろんである。また、前記接着層は20μm以下、好ましくは、0.1乃至10μmの厚さを有することができ、タイヤインナーライナ用フィルムの一表面または両表面上に形成することができる。
【0052】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、機械的物性または気密性を向上させるために、ポリアミド系樹脂をさらに含むことができる。このようなポリアミド系樹脂は、上述したポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントの共重合体と混合された状態または共重合された状態でフィルム上に存在することがある。後述する製造方法に示されているように、前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントの共重合体と混合された以後、溶融および圧出されることによって前記タイヤインナーライナ用フィルムに含むことができる。
【0053】
前記追加的に含むことができるポリアミド系樹脂は、前記タイヤインナーライナ用フィルムの機械的物性、例えば、耐熱性または化学的安定性などと気密性を向上させるために用いることができるが、用いられる量が大き過ぎると、製造されるタイヤインナーライナ用フィルムの特性を低下させることができる。特に、前記ポリアミド系樹脂が追加的に用いられる場合であっても、フィルム内でポリエーテル系セグメントの含有量は5乃至50重量%に維持されなければならず、そのために、前記ポリアミド系樹脂、前記ポリアミド系セグメント、およびその他追加される添加剤などの含有量の合計は50乃至95重量%でなければならない。
【0054】
前記追加的に使用可能なポリアミド系樹脂が特に限定されることではなく、前記共重合体との常用性を高めるために前記ポリアミド系セグメントと同一または類似する繰り返し単位を含むポリアミド系樹脂を用いるのが好ましい。
【0055】
前記ポリアミド系樹脂は2.5乃至4.0の相対粘度を有することができる。前記相対粘度が2.5未満である場合には靭性(toughness)の低下によって十分な伸び率が確保されなくて、タイヤの製造時や自動車の運行時に破損が発生でき、4.0超過である場合にはモジュラスまたは粘度が不必要に高まって、製造工程の効率および経済性などを低下させることができる。このようなポリアミド系樹脂の粘度は、微細管式粘度計または振動式粘度計など以前に知られていた粘度計と通常使用される溶媒および方法を大きい制限なしに使用することができる。例えば、ポリアミド系樹脂を96%硫酸に溶解し、硫酸とポリアミド樹脂溶液の落下速度の比率から相対粘度を測定することができる。
【0056】
前記ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド系樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66の共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、およびナイロン66/PPS共重合体;またはこれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物、または612−ナイロンのメトキシメチル化物があり、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、またはナイロン612を使用するのが好ましい。
【0057】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、耐熱酸化防止剤、熱安定剤、接着増進剤、またはこれらの混合物の添加剤をさらに含むことができる。前記耐熱酸化防止剤の具体的な例としては、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)(N,N’−Hexamethylene−bis−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxy−hydrocinnamamide))(例えば、Irganox1098等の市販製品)、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート]メタン(tetrakis[methylene(3,5−di−t−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)]methane(例えば、Irganox1010等の市販製品)、または4,4’−ジ−クミル−ジ−フェニル−アミン(4,4’−di−cumyl−di−phenyl−amine)(例えば、Naugard445)等がある。前記熱安定剤の具体的な例としては、安息香酸(Bezoic acid)、トリアセトンジアミン(triacetonediamine)、またはN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,3−ベンゼンジカルボキサミド(N,N’−Bis(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidyl)−1,3−benzenedicarboxamide)などがある。ただし、前記添加剤は前記例に限定されることではなく、タイヤインナーライナ用フィルムに使用可能であると知らされているものは、特別な制限なしに使用することができる。
【0058】
一方、発明の他の具現例によれば、ポリアミド系樹脂またはその前駆体;およびフィルム全体重量に対して5乃至50重量%のポリエーテル系樹脂を重合反応させて共重合体を形成する段階;および前記共重合体を溶融および圧出してフィルムを形成する段階を含むタイヤインナーライナ用フィルムの製造方法が提供される。
【0059】
本発明者らは、ポリアミド系樹脂またはその前駆体とポリエーテル系樹脂を特定含有量で重合反応させて得られる共重合体を溶融圧出してタイヤインナーライナ用フィルムを製造し、このようなタイヤインナーライナ用フィルムが薄い厚さでも優れた気密性および高い空気圧維持性能を実現できるだけでなく、タイヤ成形時にそんなに大きくない力が加えられても容易に伸張または変形されて、優れた成形特性を示すことができるという点を、実験を通して確認して発明を完成した。
【0060】
前述のように、前記製造方法によって提供されるタイヤインナーライナ用フィルムは、180℃で10分間熱処理後100%伸張時発生する荷重(Load At Specific Elongation、100%)が、常温で100%伸張時発生する荷重の2倍以下でありうる。また、前記製造方法によって得られるタイヤインナーライナ用フィルムは、常温で100%伸張時発生する荷重が0.5乃至4kgfでありえ、常温で200%伸張時発生する荷重が1乃至5kgfでありえ、180℃で10分間熱処理後100%伸張時発生する荷重が6kgf以下でありうる。また、前記製造されるタイヤインナーライナ用フィルムは200cc/(m・24hr・atm)以下の酸素透過度を有することができる。
【0061】
前記ポリアミド系樹脂またはその前駆体;およびフィルム重量に対して5乃至50重量%のポリエーテル系樹脂を重合反応する段階は、酸性条件および窒素大気下で行われる。また、このような重合反応は、50℃以上の温度で加熱または溶融する段階を含むことができ、反応段階によって昇圧または減圧する段階を含むことができる。そして、前記重合反応にはポリアミド系樹脂の合成に使用されることと通常知られている方法および装置を特別な制限なしに使用することができる。
【0062】
前記ポリアミド系樹脂またはその前駆体は、共重合体に含まれるポリアミド系セグメントの具体的な種類によって適切に選択することができる。例えば、前記ポリアミド系セグメントがナイロン6の繰り返し単位を有する場合、前記ポリアミド系樹脂の前駆体としてε−カプロラクタムとアジピン酸などを用いることができる。
【0063】
具体的に、前記ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66の共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物、および612−ナイロンのメトキシメチル化物からなる群より選択された1種以上のポリアミド系樹脂を使用することができる。また、前記ポリアミド系樹脂の前駆体としては、上述したポリアミド系樹脂のいずれか一つの前駆体を使用することができる。
【0064】
前記製造方法に使用されるポリエーテル系樹脂としては、ポリアルキレングリコール樹脂;またはポリアルキレングリコール樹脂の末端がアミン基、カルボキシル基、イソシアネート基などに置換された誘導体でありうる。そして、好ましくは、前記ポリエーテル系樹脂はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシテトラメチレンジアミン、またはこれらの共重合体でありうる。
【0065】
具体的に、前記ポリエーテル系樹脂は下記化学式6の化合物を含むことができる。
【化4】
上記化学式6において、R15は、炭素数1乃至10のアルキレン基であり、nは、1乃至100の整数でありうる。また、前記R16およびR17は、互いに同一であるか、または異なることができ、それぞれ水素、ヒドロキシ基、アミン基、カルボキシル基、またはイソシアネート基でありうる。
【0066】
前述のように、前記ポリエーテル系樹脂の重量平均分子量は500乃至10,000、好ましくは1,000乃至3,000でありうる。
【0067】
前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法によって得られる共重合体に関する具体的な内容、つまり、共重合体のポリアミド系セグメント、ポリエーテル系セグメント、およびその含有量、具体的な物性、または追加可能な成分などに関する内容は、上述の通りである。
【0068】
一方、前記共重合体を溶融する温度は、230乃至300℃、好ましくは240乃至280℃でありうる。前記溶融温度は、ポリアミド系樹脂の融点よりは高くなければならないが、高すぎれば炭化または分解が起きてフィルムの物性が阻害されることがあり、前記ポリエーテル系樹脂間の結合が起こったり繊維配列方向に配向が発生して、未延伸フィルムの製造に不利でありうる。
【0069】
一方、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、30乃至200μmの厚さを有する未延伸フィルムでありうる。前記圧出物の厚さは、使用される押出機などの装置の規格によって調節可能である。また、未延伸フィルムを形成するためには、溶融圧出温度を最適化して溶融物の粘度を調節するか、溶融物の吐出量を調節するか、口金ダイの規格を変更するか、またはフィルムの巻取り速度を調節する方法などを使用することができる。例えば、口金ダイのLip Openingを1mm前後に設定することができ、Lip Openingを狭くしすぎるのは、ダイ前段にかかる圧力を非常に高めるようになって好ましくない。また、フィルムの巻取り速度は、冷却不良および配向度増加の問題点を防止するために適切な速度を維持するのが好ましく、例えば、巻取り速度を最大限押さえて、100m/min以下、好ましくは50m/min以下の速度を適用することができる。
【0070】
また、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、前記溶融圧出を通したフィルム段階形成後に、このようなフィルムの少なくとも一表面上に接着層を形成する段階をさらに含むことができる。このような接着層の形成段階は、通常の製造方法によってレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記フィルムの一表面または両表面上にコーティングした後、乾燥する方法で行うことができる。前述のように、前記接着層は20μm以下、好ましくは、0.1乃至10μmの厚さを有することができる。
前記塗布には、通常使用される塗布、またはコーティング方法、または装置を特別な制限なしに使用することができるが、ナイフ(Knife)コーティング法、バー(Bar)コーティング法、グラビアコーティング法、またはスプレー法や、または浸漬法を使用することができる。ただし、ナイフ(Knife)コーティング法、グラビアコーティング法、またはバー(Bar)コーティング法を使用するのが、接着剤の均一な塗布およびコーティング側面で好ましい。
【0071】
前記フィルム層の一表面または両表面上に前記接着層を形成した以降には、乾燥および接着剤反応を同時に行うこともでき、接着剤の反応性の側面を考慮して、乾燥段階を経た後、熱処理反応段階に分けて行うことができ、接着層の厚さあるいは多段の接着剤を適用するために、前記の接着層形成および乾燥と反応段階を数回適用することができる。また、前記フィルム層に接着剤を塗布した後、100〜150℃でほぼ30秒乃至3分間熱処理条件で固化および反応させる方法によって熱処理反応を行うことができる。
【0072】
前述のように、前記タイヤインナーライナ用フィルムは、機械的物性または気密性を向上させるために、ポリアミド系樹脂をさらに含むことができる。前記追加的に含むことができるポリアミド系樹脂に関する具体的な内容は上述の通りである。
【0073】
そのために、前記タイヤインナーライナ用フィルムの製造方法は、ポリアミド系樹脂またはその前駆体;およびフィルム重量に対して5乃至50重量%のポリエーテル系樹脂を重合反応させて得られた共重合体とポリアミド系樹脂を混合して、230乃至300℃で溶融および圧出する段階をさらに含むことができる。前記溶融および圧出段階に関する具体的な内容は上述の通りであり、前記溶融および圧出以降に次いで進行する工程段階も上述した通りである。
【0074】
一方、前記共重合体を形成する段階、または共重合体を溶融および圧出する段階では、耐熱酸化防止剤または熱安定剤などの添加剤を追加的に添加することができる。前記添加剤に関する具体的な内容は上述の通りである。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、薄い厚さでも優れた気密性を実現して、タイヤの軽量化および自動車燃費の向上を可能にし、タイヤの製造工程で優れた成形性を示すタイヤインナーライナ用フィルムおよびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】タイヤ構造の概略図である。
図2】インナーライナの材質および厚さによる空気透過度の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
発明について、下記実施例でさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例によって限定されることではない。
【0078】
[実施例および比較例]
タイヤインナーライナ用フィルムの製造
【0079】
[実施例1]
インナーライナフィルム用樹脂重合のためのε−カプロラクタム70wt%およびポリオキシエチレンジアミン(Mw.1000)30wt%の混合物にポリオキシエチレンジアミンと同様のモル数のアジピン酸を混合して、100℃の窒素雰囲気下で30分間溶融した。前記溶融液を250℃で3時間加熱して、8kg/cmまで昇圧して圧力を維持した。そして、1時間の間1kg/cmに減圧した。
【0080】
前記減圧された溶融物をチップ形状に製造した後、製造されたチップを260℃温度で環状ダイに圧出して、30m/minの速度で延伸および熱処理区間を経ずに、70μmの厚さを有する未延伸タイヤインナーライナ用フィルムを得た。
【0081】
そして、前記インナーライナ用フィルム上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤をグラビアコーターを利用して5μmの厚さにコーティングして、150℃で1分間乾燥および反応させて接着層を形成した。
【0082】
製造されたタイヤインナーライナフィルムの厚さはゲージテスターを利用して測定した。この時、フィルムの厚さは接着剤層を除いたフィルムだけの厚さを意味する。
【0083】
[実施例2]
ε−カプロラクタム60wt%およびポリオキシエチレンジアミン40wt%を混合した点を除いて、実施例1と同様な方法で70μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0084】
[実施例3]
ε−カプロラクタム80wt%およびポリオキシエチレンジアミン20wt%を混合した点を除いて、実施例1と同様な方法で70μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0085】
[実施例4]
得られた未延伸タイヤインナーライナ用フィルムの厚さが50μmである点を除いて、実施例1と同様な方法を使用した。
【0086】
[実施例5]
得られた未延伸タイヤインナーライナ用フィルムの厚さが150μmである点を除いて、実施例1と同様な方法を使用した。
【0087】
[実施例6]
インナーライナフィルム用樹脂重合のためのε−カプロラクタム70wt%およびポリオキシエチレンジアミン(Mw.1000)30wt%の混合物に、ポリオキシエチレンジアミンと同様なモル数のアジピン酸を混合して、100℃の窒素雰囲気下で30分間溶融した。前記溶融液を250℃で3時間加熱して、8kg/cmまで昇圧して圧力を維持した。そして、1時間の間1kg/cmに減圧した。
【0088】
前記減圧された溶融物をチップ形状に製造した後、製造されたチップを相対粘度3.4のナイロン6樹脂と1:1の重量比で混合した。そして、このような混合物を260℃温度で環状ダイに圧出して、30m/minの速度で延伸および熱処理区間を経ずに、70μmの厚さを有する未延伸タイヤインナーライナ用フィルムを得た。
【0089】
そして、前記インナーライナ用フィルム上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤をグラビアコーターを利用して5μmの厚さにコーティングして、150℃で1分間乾燥および反応させて接着層を形成した。
【0090】
製造されたタイヤインナーライナフィルムの厚さはゲージテスターを利用して測定した。
【0091】
[実施例7]
インナーライナフィルム用樹脂重合のためのε−カプロラクタム70wt%およびポリオキシエチレンジアミン(Mw.1000)30wt%の混合物に、ポリオキシエチレンジアミンと同様なモル数のアジピン酸を混合して、100℃の窒素雰囲気下で30分間溶融した。前記溶融液を250℃で3時間加熱して、8kg/cmまで昇圧して圧力を維持した。そして、1時間の間1kg/cmに減圧した。
【0092】
前記減圧された溶融物をチップ形状に製造した後、製造されたチップを260℃温度で環状ダイに圧出して、30m/minの速度で延伸および熱処理区間を経ずに、100μmの厚さを有する未延伸タイヤインナーライナ用フィルムを得た。
【0093】
そして、前記インナーライナ用フィルム上にレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤をグラビアコーターを利用して15μmの厚さにコーティングして、150℃で1分間乾燥および反応させて接着層を形成した。
【0094】
製造されたタイヤインナーライナフィルムの厚さはゲージテスターを利用して測定した。この時、フィルムの厚さは接着剤層を除いたフィルムだけの厚さを意味する。
【0095】
[実施例8]
ε−カプロラクタム60wt%およびポリオキシエチレンジアミン40wt%を混合した点を除いて、実施例1と同様な方法で100μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0096】
[実施例9]
ε−カプロラクタム80wt%およびポリオキシエチレンジアミン20wt%を混合した点を除いて、実施例1と同様な方法で100μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0097】
[実施例10]
ε−カプロラクタム90wt%およびポリオキシエチレンジアミン10wt%を混合した点を除いて、実施例1と同様な方法で100μmのタイヤインナーライナフィルムを得た。
【0098】
[実施例11]
フィルムの厚さを50μmにした点を除いて、実施例1と同様な方法でタイヤインナーライナフィルムを得た。
【0099】
[比較例]
[比較例1]
ε−カプロラクタム97wt%およびポリオキシエチレンジアミン3wt%を混合した点を除いて、実施例1と同様な方法で70μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0100】
[比較例2]
ε−カプロラクタム30wt%およびポリオキシエチレンジアミン70wt%を混合した点を除いて、実施例1と同様な方法で70μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0101】
[比較例3]
相対粘度3.4のナイロン6樹脂だけを使用したことを除いて、実施例1と同様な方法で70μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0102】
[比較例4]
ブチルゴムに離型剤および加工剤を投入して混合した後、精錬して、厚さ70μmのタイヤインナーライナフィルムを得て、接着ゴム(タイガム)をインナーライナフィルム上に形成させた。
【0103】
[比較例5]
得られた未延伸タイヤインナーライナ用フィルムの厚さが20μmである点を除いて、実施例1と同様な方法で未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0104】
[比較例6]
得られた未延伸タイヤインナーライナ用フィルムの厚さが350μmである点を除いて、実施例1と同様な方法で未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0105】
[比較例7]
前記実施例1で製造されたチップを310℃温度で環状ダイに圧出して、タイヤインナーライナフィルムの製造を試みた。しかし、高い温度によってフィルムの溶融粘度が非常に低くなって、フィルム状を形成するのができず、低い溶融粘度を有するソフトセグメント成分の炭化物の発生によって製品の製造に失敗した。
【0106】
[比較例8]
ε−カプロラクタム97wt%およびポリオキシエチレンジアミン3wt%を混合した点を除いて、実施例7と同様な方法で100μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0107】
[比較例9]
ε−カプロラクタム30wt%およびポリオキシエチレンジアミン70wt%を混合した点を除いて、実施例7と同様な方法で100μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0108】
[比較例10]
相対粘度3.4のナイロン6樹脂だけを使用したことを除いて、実施例7と同様な方法で100μmの未延伸タイヤインナーライナフィルムを得た。
【0109】
[実験例]
[実験例1]
酸素透過度実験
前記実施例および比較例で得られたタイヤインナーライナフィルムの酸素透過度を、次のような方法によって測定した。
【0110】
[測定方法および条件]
ASTM D 3895の方法で、Oxygen Permeation Analyzer(Model8000、Illinois Instruments社製品)を使用して、25℃、60RH%雰囲気下で測定した。
【0111】
[実験例2]
特定条件でタイヤインナーライナフィルムを伸張時発生する荷重の測定
1.常温での伸張時発生する荷重測定
前記実施例および比較例で得られたタイヤインナーライナ用フィルムを、常温でMD(Machine Direction)方向に100%伸びて、発生する荷重(Load At Specific Elongation)を測定した。そして、実施例1乃至6および比較例1乃至6のタイヤインナーライナ用フィルムを、常温でMD(Machine Direction)方向に200%伸びて、発生する荷重(Load At Specific Elongation)を測定した。
【0112】
具体的な測定方法は、次の通りである。
(1)測定機器:万能材料試験器(Model 4204、Instron社)
(2)測定条件:1)Head Speed300mm/min、2)Grip Distance(Sample Length)100mm、3)Sample Width 10mm、4)25℃および60RH%雰囲気
(3)各5回測定して、その平均値を求めた。
【0113】
2.180℃で10分間熱処理後、100%伸張時発生する荷重の測定
前記実施例7乃至11および比較例7乃至9のタイヤインナーライナフィルムを熱風オーブンを利用して180℃で10分間熱処理して、常温で冷却した。そして、常温でMD(Machine Direction)方向に100%伸びて、発生する最大荷重(Load AtSpecific Elongation)を測定した。具体的な測定方法は上記「1.」と同一であった。
【0114】
前記実験例1および2で測定された結果を、下記表1および2に示した。
【0115】
【表1】
【0116】
上記表1に示されているように、実施例1乃至6のタイヤインナーライナは、150μm以下の厚さでも170cc/(m・24hr・atm)以下の空気透過度を示して、優れた気密性を実現することができるという点が確認された。また、実施例1乃至6のタイヤインナーライナは、常温で100%伸張時には4kgf以下の荷重が発生し、200%伸張時には5kgf以下の荷重が発生して、タイヤ成形時にそんなに大きくない力が加えられても容易に伸張または変形されて、優れた成形特性を示すことができ、タイヤ成形または自動者の運行過程で発生しうる苛酷な変形でも安定的に物性を維持することができる。
【0117】
これに反し、比較例1乃至6のタイヤインナーライナフィルムは、実施例と同じ厚さを有する場合、非常に高い空気透過度を示し、100%伸張時または200%伸張時にそれぞれ4または6kgf超過の荷重が発生する点が確認された。
【0118】
【表2】
【0119】
また、上記表2に示されているように、実施例7乃至11のタイヤインナーライナは、150μm以下の厚さでも200cc/(m・24hr・atm)以下の空気透過度を示して、優れた気密性を実現することができるという点が確認された。
【0120】
また、実施例7乃至11のタイヤインナーライナは、常温で100%伸張時には3kgf以下の荷重が発生し、180℃で10分間熱処理後、100%伸張時、6kgf以下の荷重が発生し、180℃で10分間熱処理後、100%伸張時発生する荷重が、常温で100%伸張時発生する荷重の2倍以下である点が確認された。これによって、タイヤ成形時にそんなに大きくない力が加えられても容易に伸張または変形され、熱処理段階以降にも一定の物性を維持することができるので、優れた成形特性を示すことができ、タイヤ成形または自動車の運行過程で発生しうる苛酷な変形にも安定的に物性を維持することができる。
【0121】
これに反し、比較例7乃至9のタイヤインナーライナフィルムは、実施例と同じ厚さを有する場合、非常に高い空気透過度を示し、常温で100%伸張時または前記熱処理後100%伸張時に、実施例に比べて非常に大きい荷重が発生し、180℃で10分間熱処理後100%伸張時発生する荷重が、常温で100%伸張時発生する荷重の2倍を超えることが明らかになった。
【0122】
[実験例3]
成形の容易性測定
前記実施例および比較例のタイヤインナーライナフィルムを適用して、205R/65R16規格に適用してタイヤを製造した。タイヤ製造工程中、グリーンタイヤ製造後の製造容易性および外形を評価しており、以降加硫後のタイヤの最終外形を検査した。
【0123】
この時、グリーンタイヤまたは加硫後のタイヤにゆがみがなく、直径の標準偏差が5%以内である場合「良好」に評価した。そして、グリーンタイヤまたは加硫後のタイヤにゆがみが発生して、タイヤがうまく製作されなかったり、タイヤ内部のインナーライナが溶けたり破れたりして破損された場合、または直径の標準偏差が5%を超過する場合「形状不良」と評価した。
【0124】
[実験例4]
空気圧維持性能測定
実験例3で製造されたタイヤをASTM F1112−06法を利用して、21℃温度で101.3kPa圧力下で90日間空気圧維持率(IPR Internal Pressure Retention)を測定して比較評価した。
【0125】
前記実験例3乃至4の測定結果を下記表3に示した。
【0126】
【表3】
【0127】
上記表3に示されているように、実施例のタイヤインナーライナ用フィルムを適用すれば、タイヤ製造過程で膨張圧力を加えても十分な延伸が行われるので、グリーンタイヤの製造状態が良好であることと明らかになった。また、実施例のタイヤインナーライナを適用した場合、不良の発生なしに優れた品質の最終製品状態のタイヤを提供することができるという点が確認された。
【0128】
これに反し、前記ポリエーテル系セグメントの含有量が実施例と相異するか(比較例1、2、7、8)、ポリアミド系樹脂またはブチルゴムだけを単独で使用するか(比較例3、4、9)、またはインナーライナ用フィルムが非常に薄いか厚い場合(比較例5、6)には、空気透過度が大き過ぎるか、初期伸張時発生する荷重があまり大きくて、膨張圧力を加えても十分な延伸が行われないため、グリーンタイヤの形状が不良になったり、インナーライナフィルムが破れたり、フィルムの製造が不可能であることが明らかになった。
【0129】
一方、前記実験例4の結果に示されているように、実施例のタイヤインナーライナ用フィルムを使用して製造されたタイヤは、ASTM F1112−06に基づいて、21℃および101.3kPa条件下で、前記タイヤインナーライナ用フィルムを適用したタイヤの90日間空気圧維持率(IPR、Internal Pressure Retention)を測定した時、空気圧減少率が5%未満に維持され、そのために低い空気圧によって誘発される転覆事故および燃費低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 トレッド(Tread)
2 ショルダー
3 サイドウォール(Side Wall)
4 キャッププライ(CAP PLY)
5 ベルト(Belt)
6 ボディープライ(Body Ply)
7 インナーライナ(Inner Liner)
8 アペックス(APEX)
9 ビード(BEAD)
図1
図2