(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジエステルが、ジメチルアジペート(r=4)、ジメチルグルタレート(r=3)、およびジメチルスクシネート(r=2)の混合物、またはジエチルアジペート(r=4)、ジエチルグルタレート(r=3)およびジエチルスクシネート(r=2)の混合物、またはジイソブチルアジペート(r=4)、ジイソブチルグルタレート(r=3)およびジイソブチルスクシネート(r=2)の混合物である、請求項10に記載の組成物。
【背景技術】
【0004】
フルオロポリマーたとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンには、多くの技術分野において遭遇する。
【0005】
テトラフルオロエチレンの合成フルオロポリマーである、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、フライパンやその他の調理器具のための焦げ付かないコーティングとして、電線やコネクタ部品のための絶縁材として、そして、マイクロ波周波数で使用されるプリント回路基板のための材料として使用されている。それは、反応性および腐食性の化学物質のための容器や配管に使用されることも多い。
【0006】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、配管製品、シート、チューブ、フィルム、プレート、膜、粉体コーティング、発泡体、および電線絶縁材料として入手可能である。それは、射出成形、金型成形または溶接が可能であり、化学工業、半導体、太陽光発電パネルにおいて、さらにはリチウムイオン電池において一般的に使用される。
【0007】
各種の用途において、特にフルオロポリマーを電池において使用する場合に、フルオロポリマーを可溶化させる工程が時には存在する場合がある。
【0008】
バッテリー駆動の電子機器の需要が高まるにつれて、高い比エネルギーを有する再充電可能な電気化学的電池に対する要求性能も相応に高くなってくる。
【0009】
リチウムイオン二次電池は、慣用されているニッケルカドミウム二次電池に比較して、高い電圧と大きい容量を有している。さらに詳しくは、LiCoO
2およびLiMn
2O
4のようなリチウム遷移金属複合酸化物をカソード作用物質として使用し、グラファイトおよび炭素繊維のような炭素質材料をアノード作用物質として使用する場合には、高電圧および大容量を達成することが可能で、しかも短絡のような副次的作用は生じない。したがって、リチウム二次電池は、モバイル電子機器たとえば携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの電源として広く使用されている。
【0010】
リチウム二次電池は一般的に、金属膜の上に活性物質およびポリマーバインダーからなるスラリーを塗布し、そのスラリーを乾燥させ、膜を加圧することによって調製される。バインダーとしては各種の樹脂が使用されてきたが、フッ素ベースの樹脂たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、材料の集電体および活性物質によく接着するので、一般的に使用されている。
【0011】
スラリーを調製するためには、通常は、ポリマーバインダーを溶媒の中に溶解させて、溶媒中に約1〜15%のバインダーを含む溶液を形成させる。バインダー溶液は、典型的には、N−メチルピロリドン(NMP)を用いて配合される。NMPが、最も有効であると考えられている。
【0012】
しかしながら、作業者および環境に対する安全面でのリスクは、永遠の関心事である。ヨーロッパにおいては2009年6月から、NMPが、「Mutagen Cat 2」/「Reprotoxic R61」に分類されることになるし、またNMPは、「Toxic Release Inventory」における報告物質である(SARAタイトルIII、セクション313)。良好な安全性および/または環境プロファイルを呈する、他の溶媒が必要とされている。
【0013】
中国特許出願公開第1277236−A号明細書および中国特許第1120210−C号明細書においては、ポリフッ化ビニリデン樹脂3〜15重量%、N−メチルピロリドンまたはジメチルアセトアミド85〜95重量%、およびカップリング剤としてのγ−アミノプロピルトリエトキシシリコーン、メタクリル酸γ−プロピルトリメトキシシリコーン、またはエチルアミノアミドプロピルトリメトキシシリコーン1〜5重量%からなる接着剤処方が開発されている。
【0014】
米国特許出願公開第2005048368−A1号明細書、特開2005−072009−A号公報、中国特許出願公開第1591939−A号明細書、韓国特許出願公開第2005023179−A号明細書、および中国特許第100411232−C号明細書は、セパレーター方式に関連するものであるが、そこで採用されている有機溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセテート、アセトン、および/またはN−メチル−2−ピロリジンからなっている。
【0015】
ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドはさらに、CMR(発がん物質/変異原物質/生殖毒性物質)に分類されている。
【0016】
韓国特許出願公開第2003047038−A号明細書では、リチウム電池のための複合バインダーが開発されている。その複合電極バインダーには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリイミドが含まれている。好ましくは、そのポリイミドが、ピロメリット酸二無水物と4,4'−ジアミノフェニルエーテルとを1/1の比率で混合し、その混合物をN−メチルピロリドンの中に溶解させることによって調製した、20%ポリイミド溶液である。
【0017】
特開2002−246029−A号公報、国際公開第200273720−A2号パンフレット、オーストラリア国特許出願公開第2002257642−A1号明細書、およびオーストラリア国特許出願公開第2002257642−A8号明細書には、特定の有機溶媒中に溶解するフルオロ樹脂Aと、有機溶媒中には完全にまたは部分的に不溶性である樹脂Bとを含む、新規なバインダー組成物が記載されている。フルオロ樹脂Aには、その8重量%N−メチルピロリジノン溶液が0.3〜20Pa・sの粘度を有するフルオロポリマーA1と、その中に極性基が組み込まれているフルオロポリマーA2とが含まれる。A/Bの重量比は、99/1〜1/99である。
【0018】
リチウム電池のためのポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)ベースの膜は、Journal of Membrane Science(2008),310(1+2),349〜355に記載されている。ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)(PVdF−HFP)コポリマー膜は、添加剤としてのポリ(エチレングリコール)および溶媒としてのTHF、アセトンまたはDMFを用いた転相によって調製される。
【0019】
リチウム−イオン電池のための電極バインダーとしての、液状溶媒の中で膨潤させた、ポリ(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン)/Super−Sカーボンブラックの機械的および電気的性質は、Jouranal of Applied Polymer Science(2004),91(5),2958〜2965に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の主題は、次の溶媒ブレンド物を含む、フルオロポリマーを可溶化させるための組成物である:
− 式(I)のジエステル:
R
1−OOC−A−COO−R
2
[式中、
− R
1およびR
2は、同一であるかまたは異なっていて、C
1〜C
20アルキル、アリール、アルキアリール、またはアリールアルキル基で、直鎖状もしくは分岐状、環状もしくは非環状であり、そして
− Aは、直鎖状もしくは分岐状の二価のアルキレン基である]
および
− ジメチルスルホキシド(DMSO)。
【0037】
本発明のまた別な主題は、可溶化されたフルオロポリマー、および式(I)のジエステルとジメチルスルホキシドとの溶媒ブレンド物を含む、フルオロポリマー組成物である。
【0038】
その組成物には、典型的には、1〜15重量%のフルオロポリマーを含む。
【0039】
その組成物は、一般的には、室温、好ましくは27℃で1000cPより低い粘度を有している。
【0040】
そのフルオロポリマーがPVDFである場合、そうして得られた、本発明の溶媒ブレンド物中のPVDFの溶液は、室温で、好ましくは250〜400cP、より好ましくは300〜400cPの範囲の粘度を有している。
【0041】
フルオロポリマー
本発明の組成物の中に含まれるポリマーは、フルオロポリマーである。
【0042】
フルオロポリマーに関しては、これは、その鎖の中に、開いて重合させることが可能で、その二重結合に直接結合している、少なくとも1個のフッ素原子、1個のフルオロアルキル基、または1個のフルオロアルコキシ基を含むビニル結合を含むモノマーから選択される少なくとも1種のフルオロモノマーを、重量で50%を超えて、好ましくは75%を超えて有する各種のポリマーを指している。
【0043】
そのフルオロポリマーは、ホモポリマーであってもよいし、あるいは、フッ素原子によって完全に置換されているか、またはモノマーあたり、フッ素原子と少なくとも1個の塩素、臭素およびヨウ素原子との組合せによって完全に置換されているオレフィン系モノマーから、少なくとも部分的に誘導されたコポリマーであってもよい。
【0044】
フルオロホモポリマーまたはコポリマーの例は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、およびブロモトリフルオロエチレンから誘導されるポリマーまたはコポリマーである。
【0045】
そのようなフルオロポリマーにはさらに、少なくとも炭素原子と同じ数のフッ素原子を含む他のエチレン性不飽和モノマー、たとえば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、およびビニルペルフルオロアルキルエーテルたとえば、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテルまたはペルフルオロ(エチルビニル)エーテル、から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0046】
ポリフッ化ビニリデン(PDVF)ポリマー(ホモポリマーまたはそのコポリマー)が特に好ましい。
【0047】
フルオロポリマーは、フッ化ビニリデン(VDF)と、コモノマーたとえば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)および/またはクロロトリフルオロメチレン(CTFE)とのコポリマーとすることができる。そのコモノマーがHFPであれば、有利である。
【0048】
PVDFには、重量で、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも85%のVDFを含む。
【0049】
コモノマーの量は、典型的には0〜25%、好ましくは0〜10重量%である。
【0050】
そのような適切なPVDFポリマーの例としては、Arkemaから入手可能なKynar 301F、Kynar 741、およびKynar 461、ならびにSolvayから入手可能なSolef 6020が挙げられる。
【0051】
フルオロポリマーはホモポリマーであっても、コポリマーであってもよいが、それにはさらに、非フッ素化モノマーたとえば、エチレンまたはプロピレンを、好ましくは25%未満の量で含んでいてもよい。
【0052】
本発明には、フルオロポリマーを、少量(50重量%未満)の他のポリマーたとえば、ポリウレタン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、グリコールジアクリレート、およびそれらの組合せと混合するという場合も含まれる。
【0053】
溶媒
本発明において使用される溶媒ブレンド物には、少なくとも2種の溶媒、すなわちジエステルとDSMOとが含まれる。
【0054】
ジエステルとDMSOとの間の重量比は、好ましくは1/99〜99/1、好ましくは20/80〜80/20、好ましくは70/30〜30/70である。これらの比率とすることによって、良好なHSEプロファイルと同時に良好な性質が得られる。
【0055】
溶媒ブレンド物には、ジエステルとDMSOに加えてさらなる溶媒を含むことができる。
【0056】
臭気マスキング剤が含まれる場合においては、ジエステル/DMSOブレンド物と臭気マスキング剤との間の重量比は、好ましくは0.1/99.9〜1/99である。これらの比率とすることによって、良好なHSEプロファイルと同時に良好な性質が得られる。
【0057】
凍結防止剤が含まれる場合においては、ジエステル/DMSOブレンド物と凍結防止剤との間の重量比は、好ましくは1/99〜10/90である。これらの比率とすることによって、良好なHSEプロファイルと同時に良好な性質が得られる。
【0058】
さらなる溶媒の例としては、以下のものが挙げられる:
− 脂肪族炭化水素たとえば、より具体的には、パラフィンたとえば、特に、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはシクロヘキサン、およびナフタレン、ならびに芳香族炭化水素、より具体的にはたとえば、特に、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、アルキルベンゼン類の混合物からなる石油留分のような芳香族炭化水素、
− 脂肪族または芳香族ハロゲン化炭化水素たとえば、より具体的には、過塩素化炭化水素たとえば、特に、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロエタン;部分塩素化炭化水素たとえば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、トリクロロエチレン、1−クロロブタン、1,2−ジクロロブタン;モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、または各種のクロロベンゼンの混合物、
− 脂肪族、脂環族または芳香族エーテルオキシド、より具体的には、ジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルテルチオブチルエーテル、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルベンジルオキシド;ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、
− グリコールエーテルたとえば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル,
− グリコールエーテルエステルたとえば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
− アルコールたとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、
− ケトンたとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、
− 直鎖状もしくは環状エステルたとえば、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、
− 直鎖状もしくは環状カルボキサミドたとえば、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、またはN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、
− 有機カーボネートたとえば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、
− リン酸エステルたとえば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、
− 尿素たとえば、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素。
【0059】
さらなる溶媒の量は、ジエステルの量および/またはDMSOの量より少ないのが好ましい。さらなる溶媒の量は、好ましくはまたは溶媒の全量の50重量%未満、好ましくは25%未満である。
【0060】
本発明の一つの実施態様においては、さらなる溶媒の量が少ないのが好ましい。
【0061】
本発明の一つの実施態様においては、その溶媒は、CMRフリーで、実質的には、NMP、DMF、DMACフリーのものを選択する。
【0062】
本発明の一つの実施態様においては、その溶媒が、実質的にさらなる溶媒を含まない。
【0063】
ジエステル
本発明の組成物に含まれるジエステルは、式(I)に相当するものである。
【0064】
本発明の文脈においては、「アルキル」は、以下のものを意味すると理解されたい:1〜20個の炭素原子、好ましくは1個または2個〜10個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の炭化水素鎖:または、3〜8個の炭素原子を含む環状の炭化水素基、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシル基。
【0065】
「アリール」は、以下のものを意味すると理解されたい:芳香族単環もしくは多環基、好ましくは6〜12個の炭素原子を含む単環もしくは二環基、好ましくはフェニルまたはナフチル。
【0066】
「アリールアルキル」は、以下のものを意味すると理解されたい:芳香族単環を担持し、7〜12個の炭素原子を含む直鎖状もしくは分岐状の炭化水素基、好ましくはベンジル。
【0067】
「アルキルアリール」は、以下のものを意味すると理解されたい:アルキル基を担持する芳香族単環基。
【0068】
ジエステルは、式(I)の複数のジエステルの混合物とすることもできる。それによって、乾燥性を改良することができる。
【0069】
式(I)において、R
1およびR
2は、同一であるかまたは異なっていて、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、およびベンジルからなる群より選択される。
【0070】
本発明の一つの実施態様においては、Aは、C
3〜C
10の分岐状二価アルキレンである。たとえば、Aは、以下のものからなる群より選択することができる:
− 式−CH(CH
3)−CH
2−CH
2−のA
MG、
− 式−CH(C
2H
5)−CH
2−のA
ES、および
− それらの混合物。
【0071】
一つの実施態様においては、そのジエステルが、
CH
3−OOC−CH(CH
3)−CH
2−CH
2−COO−CH
3であるか、またはそのような化合物を含むジエステルの混合物である。
【0072】
一つの実施態様においては、そのジエステルが、以下の式(I’)、(I’’)、場合によっては(II)のジエステルを含む混合物である:
− R
1−OOC−A
MG−COO−R
2 (I’)、
− R
1−OOC−A
ES−COO−R
2 (I’’)、
− 場合によっては、R
1−OOC−(CH
2)
4−COO−R
2 (II)。
[式中、
− A
MGは、−CH(CH
3)−CH
2−CH
2−であり、
− A
ESは、−CH(C
2H
5)−CH
2−である]
【0073】
この実施態様においては、R
1およびR
2がメチル基であるのが好ましい。
【0074】
ジエステルの混合物には以下のものを含むことができる:
− 70〜95重量%の式(I’)のジエステル、
− 5〜30重量%の式(I’’)のジエステル、および
− 0〜10重量%の式(II)のジエステル。
【0075】
Aが分岐状である有用なジエステルベースの溶媒の一例は、Rhodiaによって市販されているRhodiasolv(登録商標)IRISである。
【0076】
Rhodiasolv(登録商標)IRISは、実質的に(80重量%を超える)エチルコハク酸ジメチルと2−メチルグルタル酸ジメチルとを含むジエステルの混合物である。
【0077】
一つの実施態様においては、Aが、式(CH
2)
rの二価のアルキレン基であるが、ここでrは、2〜4の平均数である。
【0078】
たとえば、そのジエステルが、ジメチルアジペート(r=4)、ジメチルグルタレート(r=3)、およびジメチルスクシネート(r=2)の混合物、またはジエチルアジペート(r=4)、ジエチルグルタレート(r=3)およびジエチルスクシネート(r=2)の混合物、またはジイソブチルアジペート(r=4)、ジイソブチルグルタレート(r=3)およびジイソブチルスクシネート(r=2)の混合物である。
【0079】
たとえば、そのジエステルが、以下のものを含む混合物である:
− 9〜17重量%のジメチルアジペート、
− 59〜67重量%のジメチルグルタレート、および
− 20〜28重量%のジメチルスクシネート。
【0080】
Aが直鎖状である有用なジエステルベースの溶媒の一例は、Rhodiaによって市販されているRhodiasolv(登録商標)RPDEである。
【0081】
Rhodiasolv(登録商標)RPDEは、実質的に(70重量%を超える)ジメチルグルタレートとジメチルスクシネートとを含むジエステルの混合物である。
【0082】
本発明の組成物において使用されジエステルは、欧州特許第1991519号明細書に従って調製することができる。
【0083】
Rhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとの混合物(50/50、重量)が、DMSOの凝固点が18℃に等しいのに比較して、その凝固点が5℃未満であるので、極めて興味深い。
【0084】
Rhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとエチレングリコールとの混合物(48.75/48.75/2.5、重量)が、Rhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとの凝固点が5℃に等しいのに比較して、その凝固点が−12℃であるので、極めて興味深い。
【0085】
Rhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとプロピレングリコールとの混合物(48.75/48.75/2.5、重量)が、Rhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとの凝固点が5℃に等しいのに比較して、その凝固点が−10.9℃であるので、極めて興味深い。
【0086】
また別な実施態様においては、式(I)のジエステルが、ジアルキルスクシネート、好ましくはジメチルスクシネートであるが、それは、化学的プロセスまたは生化学的プロセスに従って調製することができる。
【0087】
溶媒ブレンド物
本発明はさらに、本発明を実施するのに特に有用な溶媒の混合物にも関する。
【0088】
この混合物(またはブレンド物)には、DMSOと式(I)のジエステルとが含まれるが、ここで、そのジエステルは、Aが分岐状の二価のアルキレン基、好ましくはC
3〜C
10の分岐状の二価のアルキレン基である、式(I)のジエステルである。そのような基およびそれを含むジエステルは先に記述している。
【0089】
その混合物(またはブレンド物)の中のジエステルとDMSOとの間の重量比は、1/99〜99/1、好ましくは20/80〜80/20、好ましくは70/30〜30/70である。
【0090】
その溶媒には、先に述べたジエステルおよびDMSOの他に、さらなる溶媒を含むことも可能である。さらなる溶媒の量は、ジエステルの量および/またはDMSOの量より少ないのが好ましい。さらなる溶媒の量は、好ましくは溶媒の全量の50重量%未満、好ましくは25%未満である。
【0091】
そのブレンド物の中には臭気マスキング剤を含むこともできるが、ジエステル/DMSOブレンド物と臭気マスキング剤との間の重量比は、好ましくは0.1/99.9〜1/99である。
【0092】
凍結防止剤を含むこともできるが、ジエステル/DMSOブレンド物と凍結防止剤との間の重量比は、好ましくは1/99〜10/90である。
【0093】
フルオロポリマー組成物を調製するための方法
本発明のまた別な目的は、フルオロポリマーを含む組成物(これは、「フルオロポリマー組成物」と称する)を調製するための方法である。
【0094】
本発明の組成物は、以下の工程を含む方法に従って調製される:
− 式(I)のジエステルとジメチルスルホキシドとを混合することによって溶媒ブレンド物を調製する工程、
− その溶媒ブレンド物をフルオロポリマーの中に、撹拌下に導入する工程、
− その混合物を、室温から100℃以下までの温度で加熱する工程。
【0095】
「室温」という用語は一般的には、15℃〜30℃の範囲の温度を意味している。
【0096】
この操作は、30〜80℃で実施するのが有利である。
【0097】
フルオロポリマーが可溶化するまで、その温度を維持する。
【0098】
この工程の最後に、得られた組成物を、一般的には、冷却して室温とする。
【0099】
本発明のまた別な実施態様においては、フルオロポリマー組成物を調製するための方法には、以下の工程が含まれる:
− 式(I)のジエステルとジメチルスルホキシドとを混合することによって溶媒ブレンド物を調製する工程、
− その溶媒ブレンド物を、室温から100℃以下までの温度、好ましくは30〜80℃の温度で加熱する工程、
− その溶媒ブレンド物の中にフルオロポリマーを導入する工程。
【0100】
フルオロポリマーが可溶化するまで、その温度を維持する。
【0101】
この工程の最後に、得られた組成物を、一般的には、冷却して室温とする。
【0102】
使用
本発明の溶媒ブレンド物は、フルオロポリマー物質好ましくはPVDFを使用するのに溶媒系が好ましい場合には、いつも使用することができる。
【0103】
本発明の溶媒ブレンド物のまた別な用途は、フルオロポリマー、特にPVDFをリサイクルする分野においてである。したがって、PVDFを、太陽光発電パネルのバッキングや、電線のコーティングから回収することができる。
【0104】
本発明の溶媒ブレンド物から得られるフルオロポリマー組成物は、たとえば、膜または発泡体を調製するため、または基材をコーティングするための原料物質として使用することができる。
【0105】
コーティングすることが可能な基材の例は、金属(シート、フィルム、電線)、プラスチック、織物、ガラスなどである。
【0106】
本発明はさらに、本発明のフルオロポリマー組成物を基材の1面または2面またはその一部の上に塗布する工程、および溶媒を除去する工程を含む、基材をコーティングするための方法もまた提供する。
【0107】
溶媒は、温度を上げて蒸発させるか、または非溶媒、たとえば水を追加使用する転相法によって、除去することができる。
【0108】
一つの特殊な用途は、コーティングされた電池セパレーターを調製するための方法である。
【0109】
そのセパレーター材料は、以下において記述されるようにしてコーティングされた、多孔質のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンからなるか、またはそれらの2種の組合せからなっていてよい。
【0110】
その他の可能なセパレーター材料としては、ポリテトラフオロエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ナイロン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0111】
コーティングされた電池セパレーターを調製するための本発明の方法には、以下の工程が含まれる:
− セパレーター材料を備える工程、
− そのセパレーターの1面または2面の上またはその一部に本発明のフルオロポリマー組成物を塗布する工程、
− 溶媒を除去する工程。
【0112】
フルオロポリマー組成物は、セパレーター材料の一つの面に一度に塗布してもよいし、あるいはまた別な実施態様においては、同時に両面に塗布してもよい。
【0113】
本発明のフルオロポリマー組成物を用いて、セパレーター材料の一つの面に、一度にコーティングしてもよい。そのようにコーティングしたセパレーターを、次いで、溶媒を蒸発させることによって乾燥させ、セパレーター材料の一つの面の上に多孔質なフルオロポリマーコーティングを形成させる。第一の面をコーティングしてから、同一のプロセスを再度使用して、セパレーターの第二の面をコーティングする。
【0114】
一つの好ましい実施態様においては、セパレーター材料を、フルオロポリマー組成物の浸漬浴の中を通過させることによって、そのセパレーターを同時に両面コーティングしてもよい。次いで、そのコーティングしたセパレーター材料を、蒸発により乾燥させる。
【0115】
乾燥させると、セパレーターの上にフルオロポリマーの多孔質のコーティングが得られる。
【0116】
本発明はさらに、本発明によってコーティングされたセパレーターを含む、バッテリーを調製するための方法もまた提供する。
【0117】
本発明による電気化学的電池特にリチウム電池は、多孔質コーティングされたセパレーターを、他の電気化学的電池構成成分と共に使用して、製造することができる。
【0118】
リチウム−イオンバッテリーの三つの主要な基本構成要素は、アノード、カソード、および電解液である。
【0119】
従来からのリチウム−イオン電池のアノードは、炭素(グラファイト)から作製されている。
【0120】
カソードは、金属酸化物(たとえばコバルトまたはマンガンの二酸化物)である。
【0121】
電解液は、典型的には、リチウムイオンの錯体を含む有機溶媒の混合物である。
【0122】
本発明によるリチウムイオン電池のための液状電解液組成物の例としては、以下のような溶媒が挙げられる:プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、およびそれらの組合せ、カチオンとしてLi
+、アニオンとしてPF
6-、AsF
6-、BF
4-、ClO
4-、CF
3SO
3-、N(CF
3SO
2)
2-の一つを有するリチウム塩。
【0123】
簡潔に言えば、本発明は、フルオロポリマーが多孔質の電池セパレーター材料に塗布された、電気化学的電池加工プロセスを提供する。
【0124】
本発明によるフルオロポリマー組成物は、フルオロポリマーを溶解させ、それをセパレーターの上にコーティングするための良好なHSEプロファイルを有する高沸点溶媒を用いて配合されている。
【0125】
本発明を実施するための実施例を以下において提供する。これらの実施例は、説明のために提供されるのであって、本来的に限定を目的としたものではない。
【実施例】
【0126】
実施例においては、Cの文字は比較例を表している。
【0127】
実施例1:フルオロポリマーの溶液
実施例1.1
10.0重量%のPVDF(Kynar(登録商標)461、Arkema)を、42.3%のジメチルスルホキシド(DMSO)および47.7%のRhodiasolv(登録商標)IRIS(Rhodia)と混合した。
【0128】
その溶液を混合し、温度が約45〜50℃に達するまで加熱した。
【0129】
その溶液は透明となった。
【0130】
次いでその溶液を冷却して室温とした。ゲルはまったく観察されなかった。
【0131】
比較例1.2C
9.1重量%のPVDF(Kynar(登録商標)461、Arkema)を、90.9%のDMSOと混合した。
【0132】
その溶液を混合すると、室温でPVDF樹脂が膨潤したので、次いで温度が約51.8℃に達するまで加熱した。
【0133】
その溶液は透明となった。
【0134】
実施例1.3
9.1重量%のPVDF(Kynar(登録商標)461、Arkema)を48.2%のIRISおよび42.7%のDMSOと混合した。
【0135】
その溶液を混合すると、32.3℃でPVDF樹脂が膨潤したので、次いで温度が約45.0℃に達するまで加熱した。
【0136】
その溶液は透明となった。ゲルはまったく観察されなかった。
【0137】
比較例1.4C
9.1重量%のPVDF(Kynar(登録商標)461、Arkema)を、90.9%のRhodiasolv(登録商標)RPDE(Rhodia)と混合した。
【0138】
その溶液を混合し、温度が約80℃に達するまで加熱した。
【0139】
その溶液は透明となった。
【0140】
その溶液は、室温にまで冷却するとゲルを形成した。
【0141】
比較例1.5C
9.1重量%のPVDF(Kynar(登録商標)461、Arkema)を、90.9%のRhodiasolv(登録商標)IRIS(Rhodia)と混合した。
【0142】
その溶液を混合し、温度が約68.5℃に達するまで加熱した。
【0143】
その溶液は透明となった。その溶液は、室温にまで冷却するとゲルを形成した。
【0144】
実施例2
異なった温度で、PVDFを含む一連の組成物を調製する。
【0145】
実施例2.1
8gのFLTCO(Sinochem)によって市販されているPVDFを、80gのRhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとの混合物(50/50、重量)と混合した。
【0146】
その溶液を混合し、温度が約40℃に達するまで加熱した。
【0147】
その溶液は2時間の内に透明となった。室温にまで冷却しても、ゲルはまったく観察されなかった。
【0148】
実施例2.2
8gのFLTCO(Sinochem)によって市販されているPVDFを、80gのRhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとの混合物(50/50、重量)と混合した。
【0149】
その溶液を混合し、温度が約50℃に達するまで加熱した。
【0150】
その溶液は30分の内に透明となった。室温にまで冷却しても、ゲルはまったく観察されなかった。
【0151】
実施例2.3
8gのFLTCO(Sinochem)によって市販されているPVDFを、80gのRhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとの混合物(50/50、重量)と混合した。
【0152】
その溶液を混合し、温度が約60℃に達するまで加熱した。
【0153】
その溶液は15分の内に透明となった。室温にまで冷却しても、ゲルはまったく観察されなかった。
【0154】
実施例2.4
8gのFLTCO(Sinochem)によって市販されているPVDFを、80gのRhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとの混合物(50/50、重量)と混合した。
【0155】
その溶液を混合し、温度が約70℃に達するまで加熱した。
【0156】
その溶液は15分以内に透明となった。室温にまで冷却しても、ゲルはまったく観察されなかった。
【0157】
実施例2.5
8gのFLTCO(Sinochem)によって市販されているPVDFを、80gのRhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとの混合物(50/50、重量)と混合した。
【0158】
その溶液を混合し、温度が約80℃に達するまで加熱した。
【0159】
その溶液は数分の内に透明となった。室温にまで冷却しても、ゲルはまったく観察されなかった。
【0160】
実施例3
Rhodiasolv(登録商標)IRIS、DMSO、臭気マスキング剤、および凍結防止剤のブレンド物の中に溶解させることによって、一連のPVDFを含む組成物を調製する。
【0161】
実施例3.1
3gのFLTCO(Sinochem)によって市販されているPVDFを、30gの、Rhodiasolv(登録商標)IRISおよびDMSOおよび臭気マスキング剤およびエチレングリコールの混合物(48.6/48.6/0.3/2.5、重量)と混合した。
【0162】
その溶液を混合し、温度が約60℃に達するまで加熱した。
【0163】
その溶液は15分の内に透明となった。室温にまで冷却しても、ゲルはまったく観察されなかった。
【0164】
実施例3.2
3gのFLTCO(Sinochem)によって市販されているPVDFを、30gの、Rhodiasolv(登録商標)IRISおよびDMSOおよび臭気マスキング剤およびプロピレングリコールの混合物(48.6/48.6/0.3/2.5、重量)と混合した。
【0165】
その溶液を混合し、温度が約60℃に達するまで加熱した。
【0166】
その溶液は15分の内に透明となった。室温にまで冷却しても、ゲルはまったく観察されなかった。
【0167】
昇温試験
FLTCO(Sinochem)によって市販されているPVDFおよび溶媒を、共に混合し、加熱しながら撹拌した。加熱温度は50℃〜80℃に設定した。
【0168】
溶解状況を観察した。混合物が透明になったところで、加熱を停止した。冷却後、室温(rt)で粘度を測定した。
【0169】
【表1】
【0170】
BROOKFIELD MODEL DV−II+粘度計を用いて、室温(27℃)で粘度を測定した:すべての試験において粘度計の速度を50rpmに設定した。
【0171】
これから、ジエステルとDMSOとの間に相乗作用が存在して、溶解する(透明となる)ことがわかる:その混合物は、それら個々の成分の場合よりも、必要とされる加熱が少なく、溶解時間が短い。さらに、ジエステルのみでは、ゲルが生成するので、簡単に使用することができない。NMPに比較して、このブレンド溶媒では、より速やかな溶解が達成できる。
【0172】
実施例3:コーティング
Rhodiasolv(登録商標)IRISとDMSOとのブレンド物を用い1/10(w/w比)で調製したPVDF溶液は、平坦な表面の上に薄膜を形成することが可能であり、このことは、コーティングに適用するのに有利となるであろう。
【0173】
溶媒回収
バッテリー製造において使用する際の、PVDFを溶解させるための溶媒は、ほとんどの場合において、回収してから再使用される。
【0174】
この溶媒のコストパフォーマンスを最大にするには、溶媒を回収して、リサイクルさせる。
【0175】
溶媒ブレンド物の組成が、回収プロセスの際にも変化せず、得られた溶媒ブレンド物を直接再使用することが可能である。
【0176】
得られた結果を次の表に示し、NMPの場合の結果と比較する。
【0177】
【表2】