特許第5667355号(P5667355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667355グラフェン・ベースの炭素同素体着色剤を含む相変化インク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667355
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】グラフェン・ベースの炭素同素体着色剤を含む相変化インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20150122BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20150122BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20150122BHJP
   C09D 11/34 20140101ALN20150122BHJP
【FI】
   C09D11/037
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
   !C09D11/34
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2009-256950(P2009-256950)
(22)【出願日】2009年11月10日
(65)【公開番号】特開2010-121129(P2010-121129A)
(43)【公開日】2010年6月3日
【審査請求日】2012年9月12日
(31)【優先権主張番号】12/271950
(32)【優先日】2008年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ディー メイヨー
(72)【発明者】
【氏名】サントク エス バデシャ
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−115387(JP,A)
【文献】 特開2008−004800(JP,A)
【文献】 特開2005−220245(JP,A)
【文献】 特開2004−188978(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/102077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00〜201/10
B41J 2/01〜 2/21
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)相変化インクキャリアと、(b)着色剤とを含み、前記着色剤はカーボンナノチューブを含有し、前記カーボンナノチューブは500から1,000マイクロメートルまでの長さを有することを特徴とする相変化インク。
【請求項2】
前記着色剤は、前記インクの重量を基準として0.05重量パーセントから20重量パーセントまでの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の相変化インク。
【請求項3】
前記着色剤は単層カーボンナノチューブを含有することを特徴とする請求項1に記載の相変化インク。
【請求項4】
前記着色剤は複層カーボンナノチューブを含有することを特徴とする請求項1に記載の相変化インク。
【請求項5】
前記着色剤は、少なくとも1つの官能基によって表面修飾されることを特徴とする請求項1に記載の相変化インク。
【請求項6】
前記着色剤は、少なくとも1つの官能基によって表面修飾され、前記少なくとも1つの官能基は、カルボキシル、カルボニル、キニン、エーテル、アルキル、ニトリル、ヒドロキシル、ラクトン、アミン、四級化アミン、及びそれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の相変化インク。
【請求項7】
前記インクキャリアは、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、アミド、脂肪酸、脂肪アミド含有材料、スルホンアミド材料、天然源から作られる樹脂状材料、合成樹脂、オリゴマー、ポリマー、及びコポリマーからなる群の員から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の相変化インク。
【請求項8】
分散剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の相変化インク。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相変化インクは常温では固体であるが、インクジェット印刷装置の高温の動作温度においては液相で存在する。ジェット動作温度において、液体インクの小滴が印刷装置から噴射され、インク小滴は、直接、又は中間の加熱された転写ベルト又はドラムを介して、記録基材の表面に接触すると、急速に固化して、固化したインク滴の所定のパターンを形成する。
カラー印刷のための相変化インクは典型的には、相変化インクに相溶性の着色剤と組み合わされた、相変化インクキャリア組成物を含む。一連の着色相変化インクは、インクキャリア組成物を、典型的には4成分の染料、すなわちシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックを含む、減法混色の原色の相溶性着色剤と組み合わせることによって形成することができるが、インクはこれらの4色には限定されない。減法混色の原色インクは、単一の染料又は染料混合物を用いて形成することができる。着色剤は顔料を含むこともできる。
相変化インクは輸送や長期保存の間、室温で固相のままなので、インクジェット・プリンタ用に望ましい。液体インクジェット用インクのインク蒸発の結果として生じるノズルの目詰まりに関連する問題が解消されるので、インクジェット印刷の信頼性は向上する。インク小滴が最終記録基材上に直接付着する相変化インクジェット・プリンタにおいて、小滴は基材に接触すると直ちに固化するので、印刷媒体に沿ったインクの移動が防止され、ドット品質が向上する。
【0002】
水性インクは一般に、水性液体ビヒクル、着色剤、及び任意に1つ又はそれ以上の添加剤を含む。
【0003】
染料を固体若しくは相変化インク組成物又は水性インク中の着色剤として用いると、鮮明な色の画像がもたらされる。ある種の可溶性染料は、熱安定性、耐光性、及び染料の移行に関する問題に煩わされることがある。ある種の染料のために必要とされるカスタム合成は、それらの製造の費用を高くすることがある。これらの問題の幾つかを克服するために、顔料を固体若しくは相変化インク着色剤又は水性インク着色剤として選択することができる。顔料系インクは調製に成功しており、固体、相変化、及び水性インク・プリンタで用いられている。顔料は、固有の堅牢性、熱安定性及び耐光性を与えることができ、ワックスベースの画像内での染料系着色剤の移動性が、時間が経ったときの画像のゆがみ又は不鮮明さをもたらすことがあるのに対し、印刷画像における染料の移動の問題も低減又は排除することができる。顔料は染料よりも安価なので、その結果、かなりの製造コスト上の利点を与える。しかしながら、顔料系インクをジェットインクに組み入れることは技術的に困難であることがあり、顔料系インクは噴射が困難になりがちである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,165,909号
【特許文献2】米国特許第6,860,930号
【特許文献3】米国特許出願第11/290,202号
【特許文献4】米国特許出願第11/290,121号
【特許文献5】米国特許出願第7,259,275号
【特許文献6】米国特許出願第7,279,587号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Erik T. Thostenson他、「Advances in the Science and Technology of Carbon Nanotubes and Their Composites: A Review」、Composites Science and Technology、2001年、第61巻、p.1899−1912
【非特許文献2】P.J.F.Harris、「Carbon Nanotube Composites」、International Materials Reviews、2004年、第49巻、p.31−43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリンタ内で加熱されたときの経時的な色の安定性として現れる、改良されたインクの熱安定性、改良されたプリンタ信頼性、光学濃度の減少をもたらす、塗りつぶされた領域の画像を通して用紙の繊維が見えないようにする優れた隠蔽力、及び物理的な摩擦、スクラッチ、折り目に対して印刷画像が耐性となるような向上した機械的一体性を提供する、改良された相変化及び水性インク組成物に対する必要性が依然として存在する。さらに、水性及び相変化インクに高濃度の黒さを提供することができる着色剤に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において、(a)相変化インクキャリアと、(b)実施形態においてはフラーレン、実施形態においてはカーボンナノチューブであるグラフェン・ベースの炭素同素体着色剤を含む着色剤とを含む、相変化インクが開示される。本明細書において、さらに、(a)水性液体ビヒクルと、(b)炭素同素体を含む着色剤とを含む、水性インクが開示される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示されるインクは、グラフェン・ベースの網目状炭素同素体着色剤を含み、水性インク及び相変化若しくは固体インクを含むことができる。炭素同素体は全体が炭素で構成され、中空球体(フラーレン)、楕円体、チューブ(カーボンナノチューブ)、及び平面(グラファイト)を含むがそれらに限定されない幾つかの形態で存在することができる。本明細書の着色剤は炭素同素体を含み、さらなる実施形態において、カーボンナノチューブを含む。本明細書における炭素系着色剤は、相変化又は水性インクビヒクル内に分散させることができる。市販の分散剤及び従来技術で公知のミリング技術を用いて、粒子の安定性を達成することができる。
【0009】
カーボンナノチューブのコストは近年劇的に低下しているので、それにより、本発明の相変化インクに改良された性質と費用効果という利点が与えられる。カーボンナノチューブは、優れた機械的、熱的及び電気的性質を示す。それらの例外的な電気的、機械的、及び熱的特性に加えて、カーボンナノチューブはさらに、光を非常に効率的に吸収するので、本発明の相変化インクに優れた黒色の濃さ(black color strength)を与える。優れた色の濃さを提供することに加えて、いかなる特定の理論にも限定されることを意図するものではないが、実施形態において、本明細書に記載の炭素系着色剤を用いて画像を印刷することで、ネットワーク化されたポリマー膜を有する印刷画像をもたらすことができ、これはナノチューブの機械的及び電気的性質を強化することができ、それにより印刷画像に増強された構造特性を与える。カーボンナノチューブ又は他のナノサイズ若しくはマイクロサイズの粒子を用いたポリマー膜の強化は、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。
【0010】
このインクは、バイオテクノロジ、コンビナトリアルケミストリ、エレクトロニクス、ディスプレイ、MEMS(微小電子機械システム)デバイス、光電装置、及び有機半導体を含む広範囲な技術分野を包含するデジタル製造に用いることができる。本明細書の相変化インクは、電子デバイスのデジタル製造のような非印刷用途、又はカーボンナノチューブのパターン形成が所望されるその他の用途のために用いられることができる。本明細書に包含される方法は、対象物又は電子デバイスを、第1の量の本明細書に記載されているような相変化インク組成物を堆積して所望のパターンを作成し、任意に、引き続き追加量の相変化インク組成物を堆積し、任意に、インクが硬化性インクである場合には相変化インク組成物を硬化させるステップを含むデジタル製造によって製造することを含む。硬化性の場合、多層電子デバイス又は対象物内の硬化性インクの各層をその次の層を堆積する前に硬化することもでき、又は多層の最後の堆積が完了したところで硬化性インクの多層を硬化することもできる。
【0011】
カーボンナノチューブは、非常小さい直径を有し、フィブリル、ウィスカ、バッキーチューブなどを含むチューブ状の構造を持つ、ナノメートルスケールを有する炭素の同素体である。カーボンナノチューブは、1,000,000を越える長さ対直径比を有することができる。カーボンナノチューブの構造は、炭素原子の六角形の網目を巻いて継ぎ目のない円筒形とし、円筒の一端又は両端に半球状のバッキーボール構造でふたをかぶせたものとして概念的に説明することができる。カーボンナノチューブは単層ナノチューブ及び複層ナノチューブとして分類することができる。単層ナノチューブは基本的な円筒形構造として考えることができ、これが、複層ナノチューブ、及びロープと呼ばれる単層ナノチューブの規則的な配列の両方の構成単位を形成する。これらの構造は、1つの構造体として組み立てられた場合、そのサイズ及び形状のため、非常に大きな表面積を提供する。カーボンナノチューブは、高純度で均質に作ることができる。
【0012】
カーボンナノチューブ着色剤は本明細書において、単層カーボンナノチューブ又は複層カーボンナノチューブを含むことができる。
本開示のナノチューブは、1マイクロメートル(μm)未満、約0.5μm未満、約0.1μm未満、又は約0.05μm未満の直径を有するが、直径はそれらの範囲外であってもよい。特定の実施形態において、カーボンナノチューブ着色剤は、約1から約10ナノメートル、又は約8から約10ナノメートルまでの直径を有する。特定の実施形態において、カーボンナノチューブ着色剤は、約500から約1,000マイクロメートルまでの長さを有する。
【0013】
カーボンナノチューブは、NanoAmor、Carbon Solutions,Inc.、Unidym(以前のCarbon Nanotechnologies、テキサス州ヒューストン)といった商業的な供給元から入手することもでき、又は公知の方法によって合成することもできる。例えば、特許文献1は、カーボンフィブリルを作成する方法を記載する。カーボンナノチューブを調製する方法は、アーク放電、レーザアブレーション、高圧一酸化炭素、及び化学触媒蒸着を含む。本開示は、1つの特定の製造方法にも限定されず、例えば単層、複層、アームチェア型又はジグザグ型といった、製造されるチューブの種類にも限定されない。特定の実施形態において、最も安価な製造方法(CVD)を選択することができる。
【0014】
カーボンナノチューブ着色剤は、所望の色又は色相を得るためのいずれかの所望量又は有効量、例えば、インクの少なくとも約0.05重量パーセント、少なくとも約0.1重量パーセント、少なくとも約0.2重量パーセント、少なくとも約0.5重量パーセント、約50重量パーセント未満、約20重量パーセント未満、又は約10重量パーセント未満で、水性又は相変化インクの中に存在するが、量はこれらの範囲外であってもよい。
【0015】
水性インク又は相変化インクは、カーボンブラック、アセチレンブラック、及びシャウィニガン(Shawinigan)ブラックのような他の黒色着色剤をさらに含むことができ、これは、インクの約1から約40重量パーセントの量で存在するが、量はこれらの範囲外であってもよい。カーボンブラックの例は、VULCAN(登録商標)、REGAL(登録商標)、及びBLACK PEARLS(登録商標)カーボンブラックを含む。
【0016】
パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、アミド、脂肪酸及び他のワックス状材料、脂肪アミド含有材料、スルホンアミド材料、異なる天然源(トール油ロジン及びロジンエステル)から作られる樹脂状材料、並びに多くの合成樹脂、オリゴマー、ポリマー、及びコポリマーを含む、どのような適切なインクキャリアも相変化インク内に含まれることができる。
【0017】
適切なアミドの例は、モノアミド、ジアミド、トリアミド、テトラアミド、環式アミドを含む。脂肪アミドは、モノアミド、テトラアミド、及びそれらの混合物を含む。
他の適切なキャリア材料は、イソシアネート誘導樹脂及びワックス、例えば、ウレタンイソシアネート誘導材料、尿素イソシアネート誘導材料、ウレタン/尿素イソシアネート誘導材料、それらの混合物を含む。
適切なインクキャリア材料のさらなる例は、エチレン/プロピレンコポリマーを含む。コポリマーは、例えば、約70℃から約150℃までの融点、及び約500から約4,000までの分子量範囲(Mn)を有することができる。
別の種類のインクキャリア材料は、n−パラフィン、分枝パラフィン、及び/又はナフテン系炭化水素とすることができ、典型的には約5個から約100個の炭素原子を有し、一般に天然炭化水素の精製により調製される。
【0018】
典型的にはオレフィンの重合から調製される高度に分枝した炭化水素もまた用いることができる。さらに、インクキャリアは、一般式
【化1】
のエトキシ化アルコールとすることができ、ここでxは約1から約50の整数であり、yは約1から約70の整数である。
【0019】
インクキャリアは、モノアミド、テトラアミド、それらの混合物のような脂肪アミドから作ることができる。適切なモノアミドは、約50℃から約150℃までの融点を有することができるが、融点はこれらの範囲外であってもよい。適切なモノアミドの具体的な例は、一級モノアミド又は二級モノアミドを含む。ステアルアミド、ベヘンアミド/アラキドアミド、オレアミド、工業用オレアミド、及びエルカミドは、適切な一級アミドの幾つかの例である。ベヘニルベヘンアミド、ステアリルステアルアミド、ステアリルエルカミド、エルシルエルカミド、オレイルパルミトアミド、及びエルシルステアルアミドは、適切な二級アミドの幾つかの例である。さらなる適切なアミド材料は、N,N’−エチレンビスステアルアミド、オレイルパルミトアミド、N,N’−エチレンビスステアルアミド、及びN,N’−エチレンビスオレアミドを含む。
【0020】
さらなる任意成分は、一般式
【化2】
の高分子量線状アルコールを含むことができ、ここでxは約1から約50の整数である。
【0021】
さらなる例は、炭化水素ベースのワックス、例えば一般式
【化3】
のポリエチレンのホモポリマーを含むことができ、ここでxは約1から約200までの整数である。
【0022】
さらなる例は、グラフト共重合により調製されるポリオレフィンの修飾無水マレイン酸炭化水素付加物を含み、これは、一般式
【化4】
であり、ここでRは約1から約50個の炭素原子を有するアルキル基であり、R’はエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、又は約5から約500個の炭素原子を有するアルキル基であり、xは約9から約13までの整数であり、yは約1から約50までの整数であり、及び一般式
【化5】
であり、ここでR1及びR3は炭化水素であり、R2は一般式
【化6】
のうちのいずれか一方又はそれらの混合物であり、ここでR’はイソプロピル基である。
【0023】
相変化インクのための適切なインクビヒクルのさらなる例は、ロジンエステル、ポリアミド、ダイマー酸アミド、脂肪酸アミド、エポキシ樹脂、流動パラフィンワックス、流動マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー−トロプシュ(Fischer−tropsch)ワックス、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオール、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリビニルピリジン樹脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリスルホンアミド、安息香酸エステル、フタル酸可塑剤、クエン酸可塑剤、マレイン酸可塑剤、スルホン、例えばジフェニルスルホン、n−デシルスルホン、n−アルニルスルホン(n−arnyl sulfone)、シクロフェニルメチルスルホンなど、ポリビニルピロリジノンコポリマー、ポリビニルピロリドン/ポリ酢酸ビニルコポリマー、ノボラック樹脂、天然物ワックス、例えば蜜ろう、モントン(monton)ろう、カンデリラろうなど、線状一級アルコールと線状長鎖アミド又は脂肪酸アミドとの混合物、例えば、モノヒドロキシステアリン酸プロピレングリコール、モノヒドロキシステアリン酸グリセロール、モノヒドロキシステアリン酸エチレングリコール、N(2−ヒドロキシエチル)−12−ヒドロキシステアルアミド、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアルアミド、N,N’−エチレン−ビス−リシノールアミドを含めた、約6個から約24個までの炭素原子を有するものを含む。さらに、約4個から約16個の炭素原子を有する線状長鎖スルホン、例えば、n−プロピルスルホン、n−ペンチルスルホン、n−ヘキシルスルホン、n−ヘプチルスルホン、n−オクチルスルホン、n−ノニルスルホン、n−デシルスルホン、n−ウンデシルスルホン、n−ドデシルスルホン、n−トリデシルスルホン、n−テトラデシルスルホン、n−ペンタデシルスルホン、n−ヘキサデシルスルホンは、適切なインクビヒクル材料である。
【0024】
インクビヒクルは、特許文献2に記載されているような分枝トリアミド
【化7】
を含むことができ、ここでnは約34から約40又はそれ以下までの平均値を有し、x、y及びzは各々ゼロ又は整数であり、x、y及びzの合計は約5から6又はそれ以下までである。
【0025】
水性インクに適したビヒクルの例は、水、グリコール、グリコール混合物、水と混和性有機成分、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなグリコール、アミド、エーテル、カルボン酸、エステル、アルコール、有機スルフィド、有機スルホキシド、スルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アルコール誘導体、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル誘導体、アミノアルコール、ケトン及び他の水混和性物質との混合物、並びにそれらの混合物を含む。
【0026】
本明細書の相変化インクは、一般に少なくとも1つの硬化性モノマーと、着色剤と、特に硬化性モノマーであるインクの硬化性成分の重合を開始する、特に光開始剤である放射性活性化開始剤とを含有する、放射線硬化性インクを含む。本明細書に開示されるインクビヒクルは、どのような適切な硬化性モノマー又はポリマーも含むことができる。適切な材料は、アクリレート及びメタクリレートモノマー化合物のようなラジカル硬化可能なモノマー化合物を含み、これらは相変化インクキャリアとして用いるのに適している。比較的、非極性のアクリレート及びメタクリレートモノマーの具体的な例は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、並びにそれらの混合物及び組合せを含む。多官能性アクリレート及びメタクリレートのモノマー及びオリゴマーを、反応性希釈剤として、及び硬化された画像の架橋密度を高めることができる材料として、相変化インク内に含めることができ、それにより硬化した画像の靱性が増強される。適切な多官能性アクリレート及びメタクリレートのモノマー及びオリゴマーは、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカノールジアクリレート、1,12−ドデカノールジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アミン修飾ポリエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシ化トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、並びにそれらの混合物及び組合せを含む。反応性希釈剤がインクキャリア材料に添加される場合には、反応性希釈剤はいずれかの所望量又は有効量で、例えば、キャリアの約1から80重量パーセントまでの量で添加される。
【0027】
インクビヒクルは、紫外線のような放射線に曝露したときに硬化性モノマーとして挙動する化合物のような、液体中に溶解された場合に比較的狭い温度範囲にわたって比較的急激な粘度の上昇を経るという点でゲルのような挙動を示す少なくとも1つの化合物を含むことができる。そのような液体硬化性モノマーの1つの例は、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートである。
本明細書に開示される幾つかの化合物は、少なくとも約30℃、少なくとも約10℃、又は少なくとも約5℃の温度範囲にわたって少なくとも約103センチポアズ、少なくとも約105センチポアズ、少なくとも約106センチポアズの粘度の変化を経るが、これらの範囲の変化を経ない化合物もまた本明細書に含まれる。
【0028】
本明細書に開示される幾つかの化合物は、第1の温度で半固体ゲルを形成することができる。例えば、この化合物を相変化インクに組み入れる場合、この温度は、インクジェットが噴射される特定の温度を下回る温度である。半固体ゲル相は、1つ又はそれ以上の固体ゲル化剤分子と液体溶媒とを含む動的平衡で存在する物理的ゲルである。半固体ゲル相は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族非結合性相互作用、イオン性結合又は配位結合、ロンドン分散力などのような非共有結合的相互作用で互いに保持された分子成分の動的にネットワーク化された集成であり、温度、機械的撹拌などのような物理的力、又はpH、イオン強度などのような化学的力で刺激されると、巨視的レベルで液体から半固体状態への可逆的転移を経ることができる。ゲル化剤分子を含む溶液は、温度が溶液のゲル化点を上回るは下回るように変化すると、半固体ゲル状態と液体状態との間で熱的可逆的転移を示す。この半固体ゲル相と液体相との間の転移の可逆的サイクルは、溶液調合物において多数回繰り返されることができる。
【0029】
本明細書に開示されるインクビヒクルは、どのような適切な光開始剤も含むことができる。適切な開始剤の例は、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、イソプロピルチオキサンテノン、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、ベンジルケトン、モノマー性ヒドロキシルケトン、ポリマー性ヒドロキシルケトン、α−アミノケトン、アシルホスフィンオキシド、メタロセン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、アシルホスフィン開始剤を含む。具体的な例は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジル−ジメチルケタール、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド及びその他のアシルホスフィン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン及び1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル2−ジメチルアミノ1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタノン、チタノセン、イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタール、並びにそれらの混合物を含む。
【0030】
相変化インクはまた、アミン相乗剤を含むこともでき、これは、光開始剤に水素原子を提供することにより、重合を開始させるラジカル種を形成させることができる共同開始剤(co-initiator)であり、さらに、フリーラジカル重合を阻害する溶存酸素を消費することにより、重合速度を高めることもできる。適切なアミン相乗剤の例は、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートを含む。
【0031】
本明細書に開示されるインクのための開始剤は、いずれかの所望の又は有効な波長で、例えば、少なくとも約200から約560ナノメートル未満までの波長で放射線を吸収することができる。
任意に、開始剤は相変化インク中にいずれかの所望量又は有効量で、例えば、インク組成物の約0.5から約15重量パーセントの量で存在する。
【0032】
どのような適切な反応性ワックスも、本明細書に開示のビヒクル中で相変化のために用いることができる。反応性ワックスは、他の成分と混和性の、硬化性モノマーと共に重合してポリマーを形成することになる硬化性ワックス成分を含むことができる。ワックスを含めることで、噴射温度から冷却したときのインクの粘度の上昇が促進される。
【0033】
反応性ワックスは、重合性基で官能化されたヒドロキシル末端ポリエチレンワックスとすることができる。適切なワックスの例は、硬化性で官能化されたワックスを含む。硬化性は、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド及びオキセタン含むことができる。これらのワックスは、カルボキシル基又はヒドロキシルのような変換可能な官能基を備えたワックスの反応によって合成することができる。
【0034】
硬化性基で官能化することができるヒドロキシル末端ポリエチレンワックスの適切な例は、構造CH3−(CH2n−CH2OHを有し、鎖長nの混合物が存在し、平均鎖長は選択された実施形態において約16から約50までの範囲である炭素鎖と、同様の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンとの混合物を含む。ゲルベ(Guerbet)アルコールの具体的な実施形態は、16個から36個の炭素を含有するものを含む。実施形態において、式
【化8】
の異性体、並びに不飽和及び環を含んでいてもよい他の分枝異性体を含む、C−36ダイマージオール混合物が選択される。これらのアルコールとUV硬化性部分を備えたカルボン酸とを反応させて、反応性エステルを形成することができる。これらの酸の例は、アクリル酸及びメタクリル酸を含む。
【0035】
硬化性基で官能化することができるカルボン酸末端ポリエチレンワックスの適切な例は、構造CH3−(CH2n−COOHを有し、鎖長nの混合物が存在し、平均鎖長は選択された実施形態において約16から約50までの範囲である炭素鎖と、同様の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンとの混合物を含む。他の適切なワックスは、CH3−(CH2n−COOHの構造を有し、nが約14から約33までのものである。2,2−ジアルキルエタン酸として特徴付けられるゲルベ(Guerbet)酸もまた適切な化合物である。選択されるゲルベ酸は、16から36個の炭素を含有するもの、PRIPOL(登録商標)1009(式
【化9】
の異性体、並びに不飽和及び環を含んでいてもよい他の分枝異性体を含む、C−36ダイマー酸混合物)である。これらのカルボン酸とUV硬化性部分を備えたアルコールとを反応させて、反応性エステルを形成することができる。これらのアルコールの例は、2−アリルオキシエタノール、
【化10】
Sartomer Company,Inc製のSR495B、
【化11】
Sartomer Company,Inc.製のCD572(R=H、n=10)及びSR604(R=Me、n=4)を含むが、それらに限定されない。
【0036】
Baker PetroliteからPOLYWAX(登録商標)500として入手できるもののような、ポリエチレンワックスもまた適切である。
任意成分の硬化性ワックスは、インクの約1から約25重量パーセントの量でインク内に含まれるが、量はこの範囲外であってもよい。
硬化性モノマー又はプレポリマーと硬化性ワックスとを合わせて、インクの約50重量%より多く、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%を構成することができるが、それらに限定されない。
【0037】
どのような適切なゲル化剤も本明細書に開示のインクビヒクルのために用いることができ、例えば特許文献3に記載されているようなものを用いることができ、このゲル化剤は、式
【化12】
の化合物であり、ここでR1は、
(i)アルキレン基、
(ii)アリーレン基、
(iii)アリールアルキレン基、又は
(iv)アルキルアリーレン基
であり、R2及びR2’は各々、互いに独立して、
(i)アルキレン、
(ii)アリーレン、
(iii)アリールアルキレン、又は
(iv)アルキルアリーレン
であり、R3及びR3は各々、互いに独立して、
(a)光開始基、例えば、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導された、式
【化13】
の基、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導された、式
【化14】
の基、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導された、式
【化15】
の基、N,N−ジメチルエタノールアミン又はN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導された、式
【化16】
の基、又は
(b)以下の基、すなわち
(i)アルキル基、
(ii)アリール基
(iii)アリールアルキル基、又は
(iv)アルキルアリール基
のどちらかであり、ただしR3及びR3’のうちの少なくとも1つは光開始基であり、
X及びX’は各々、互いに独立して、酸素原子又は式−NR4−の基であり、ここでR4は、
(i)水素原子、
(ii)アルキル基、
(iii)アリール基
(iv)アリールアルキル基、又は
(v)アルキルアリール基
である。
【0038】
1つの実施形態において、R2及びR2’は、各々、式−C3456+a−であり、かつ不飽和又は環を含んでいてもよい分枝アルキレンであり、ここでaは0から12までの整数であり、式
【化17】
の異性体を含む。
1つの実施形態において、R1はエチレン(−CH2CH2−)基である。
1つの実施形態において、R3及びR3’は両方とも
【化18】
である。
【0039】
1つの実施形態において、化合物は、式
【化19】
のものであり、ここで−C3456+a−は、不飽和及び環を含んでいてもよい分枝アルキレン基を表し、aは0から12までの整数であり、これは式
【化20】
の異性体を含む。
【0040】
この式の化合物のさらなる具体的な例は、式
【化21】
の化合物であって、ここで−C3456+a−は、不飽和及び環を含んでいてもよい分枝アルキレン基を表し、aは0から12までの整数であり、mは整数であり、mが2である実施形態を含むがそれに限定されず、式
【化22】
の異性体を含む化合物、
【0041】

【化23】
の化合物であって、ここで−C3456+a−は、不飽和及び環を含んでいてもよい分枝アルキレン基を表し、aは0から12までの整数であり、nは整数であり、nが2又は5である実施形態を含み、式
【化24】
の異性体を含む化合物、
【0042】

【化25】
の化合物であって、ここで−C3456+a−は、不飽和及び環を含んでいてもよい分枝アルキレン基を表し、aは0から12までの整数であり、pは整数であり、pが2又は3である実施形態を含み、式
【化26】
の異性体を含む化合物、
【0043】

【化27】
の化合物であって、ここで−C3456+a−は、不飽和及び環を含んでいてもよい分枝アルキレン基を表し、aは0から12までの整数であり、qは整数であり、qが2又は3である実施形態を含み、式
【化28】
の異性体を含む化合物、及び
【0044】

【化29】
の化合物であって、ここで−C3456+a−は、不飽和及び環を含んでいてもよい分枝アルキレン基を表し、aは0から12までの整数であり、rは整数であり、rが2又は3である実施形態を含み、式
【化30】
の異性体を含む化合物、並びにそれら混合物を含む。
【0045】
実施形態において、ゲル化剤は、
【化31】
【化32】
及び
【化33】
の混合物であり、ここで−C3456+a−は分枝アルキレン基を表し、1は0から12までの整数である。
【0046】
本明細書のゲル化剤は、同時係属中の特許文献4に開示されている材料を含むことができ、これは、式
【化34】
の化合物を含み、ここでR1及びR’1は各々、互いに独立して、少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアルキル基、少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアリールアルキル基、又は少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアルキルアリール基であり、R2、R2’、及びR3は各々、互いに独立して、アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、又はアルキルアリーレンであり、nは繰り返しアミド単位の数を表す整数であって、少なくとも1である。
【0047】
本明細書に開示されているようなゲル化剤化合物は、いずれかの所望の又は有効な方法で調製することができる。
例えば、実施形態において、ゲル化剤は特許文献5に記載されているように調製することができ、これは式
【化35】
の化合物の調製のためのプロセスを記載しており、ここでR1は少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアルキル基、少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアリールアルキル基、又は少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアルキルアリール基であり、R2及びR3は各々、互いに独立して、アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、又はアルキルアリーレンであり、nは繰り返しアミド単位の数を表す整数であって、少なくとも1であり、このプロセスは、(a)式
【化36】
の二酸を式
【化37】
のジアミンと、溶媒の非存在下で反応混合物から水を除去しながら反応させて、酸末端オリゴアミド中間体を形成し、(b)酸末端オリゴアミド中間体を式
【化38】
のモノアルコールと、カップリング剤及び触媒の存在下で反応させて生成物を形成するステップを含む。
本明細書の実施形態はさらに、ゲル化剤を有するインク(すなわちゲル化剤を有する非硬化性インク)を含む。
【0048】
インクの硬化は、インク画像を、いずれかの所望の又は有効な波長、例えば約200ナノメートルから約480ナノメートルまでの化学線に曝露することによって達成することができる。化学線に対する曝露は、いずれかの所望の又は有効な時間、例えば約0.2から30秒間にわたるものとすることができる。硬化とは、インク中の硬化性化合物が化学線に曝露されると、架橋、鎖延長のように分子量が増大することを意味する。
【0049】
固体又は液体のいずれかであり得る可塑剤、例えば、フタル酸ベンジル、リン酸トリアリールエステル、テトラ安息香酸ペンタエリスリトール、アジピン酸ジアルキル、フタル酸ジアルキル、セバシン酸ジアルキル、フタル酸アルキルベンジル、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセロール、モノステアリン酸プロピレングリコール、フタル酸ジシクロヘキシル、イソフタル酸ジフェニル、リン酸トリフェニル、イソフタル酸ジメチル、及びそれらの混合物もまた、インクキャリア中にいずれかの所望量又は有効量、例えばインクキャリアの0.05重量%から15重量%まで、含まれることができる。
【0050】
インクはまた、画像を酸化から保護するため、またインク成分をインク調製プロセスの加熱部分の間の酸化から保護するために、任意に酸化防止剤を含むことができる。
ヒンダードアミン酸化防止剤は、インク中にいずれかの所望量又は有効量で、例えばインクキャリアの0.001から0.50重量パーセントまで、存在することができる。
適切なヒンダードアミン酸化防止剤の例は、一般式
【化39】
のものを含み、ここでR1及びR2は各々、互いに独立して、水素原子又はアルキル基とすることができる。
ヒンダードフェノール酸化防止剤を提供することもできる。1つの実施形態において、ヒンダードフェノールは比較的高濃度で存在し、酸化それ自体の開始を遅延させることにより長期熱安定性を最大化する。ヒンダードフェノール酸化防止剤はインク中にいずれかの所望量又は有効量で、例えばインクキャリアの約0.01重量%から4.0重量%まで、存在する。2つ又はそれ以上のこれらのヒンダードフェノール酸化防止剤の混合物を使用することもできる。
【0051】
インクビヒクル中に存在するカーボンナノチューブ着色剤又は代替的な粒子を分散及び安定化させる目的で、分散剤が、インク内にいずれかの所望量又は有効な量で、例えばインクキャリアの約1×10-5重量%から30重量%まで存在することができる。分散剤は、式
【化40】
のポリエステルとすることができ、ここで各R1はアルキレン基であり、Xは(i)酸素原子、(ii)少なくとも2つの炭素原子を有し、酸素又は窒素原子を介してカルボニル基に結合するアルキレン基であり、R2は(i)水素原子、(ii)一級、二級若しくは三級アミン基又はそれらと酸との塩、又は四級アンモニウム塩の基であり、nは繰り返しの数を表す整数であり、例えば2から約20までである。
【0052】
別のクラスの適切な分散剤は、一般式
【化41】
の、酸化された合成又は石油ワックスのウレタン誘導体を含み、ここでR1は式CH3(CH2nのアルキル基であり、nは約5から約200の整数であり、R2はアリーレン基であり、インクビヒクルとしても用いることができる。これらの材料は約60℃から約120℃までの融点を有することができる。
適切な分散剤の別の例は、ポリアルキレンスクシンイミド分散剤である。
【0053】
ロジンエステル樹脂もまた、いずれかの所望量又は有効量で、例えばインクキャリアの約0.5重量%から20重量%まで、インクキャリアの中に含まれることができるが、量はこれらの範囲外であってもよい。
【0054】
本明細書における水性インクのための添加剤は、インクの粘度を高めるためのポリマー性添加剤を含むことができ、例えば約0.001から約10重量パーセントまでの量で添加することができる。適切なポリマー性添加剤は、アラビアゴム、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、でんぷん、多糖類、ポリエチレンイミンのポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドによる誘導体のような、水溶性ポリマーを含む。当該分野で公知のように、例えば、殺生物剤、浸透制御添加剤、pH制御剤、浸透剤、界面活性剤などのような、他の任意成分のインク添加剤を含むことができる。
【0055】
インクキャリアは、調製される水性又は相変化インク中にいずれかの所望量又は有効量で、例えばインクの約40重量%から約98重量%まで、存在することができる。
1つの実施形態において、インクキャリアは約110℃未満又は約100℃未満の融点を有する。
【0056】
本明細書において開示されるインク組成物は、1つの実施形態において、約130℃、120℃、110℃、又は100℃以下の融点を有するが、融点はそれらの範囲外であってもよい。
本明細書に開示されるプロセスにより調製されるインク組成物は、約145℃、130℃、120℃、110℃、又は80℃に等しいか又はそれ以下であるがこれらの範囲外であってもよい噴射温度において、1つの実施形態においては約30cps、25cps、20cps、2cps、3cps又は4cpsに等しいか又はそれ以下の溶融粘度を有するが、溶融粘度はこれらの範囲外であってもよい。
【0057】
インク組成物は、インク成分を一緒に混合し、次いで、1つの実施形態においては約100℃から140℃までの温度に加熱し、均一なインク組成物が得られるまで撹拌し、その後、インクを室温(典型的には約20から約25℃)まで冷却するなどの、どのような所望の又は適切な方法で調製することもできる。本明細書における水性インクの場合、インク成分を撹拌により一緒に混合し、任意に濾過して、水性インクを得ることができる。カーボンナノチューブ、分散剤、及び任意成分の所望の化学添加剤を含むインクは、機械式又は磁気攪拌機、高速ミキサ、磨砕機、ホモジナイザ、超音波処理器(sonificator)、マイクロフルイダイザを含むいずれかの適切な手段により、ステンレス鋼ボール、セラミックチップのような任意の粉砕媒体を用い又は用いずに、撹拌又は混合することができる。顔料と分散剤との適正な比率、及び最適な破砕時間は、顔料の粒径を低減させて所望の粒径分布を有する適切な顔料分散体を提供するように選択することができる。粉砕又は混合時間は、混合条件に応じて、通常、約10分間から約24時間までの範囲である。インクに均一な粒子の分布を与え、不安定な大きい粒子を除去するために、このようにして得られた顔料分散体を20,000rpmまでの速度で遠心分離し、濾過することができる。この遠心分離プロセスは任意であり、インクは顔料分散体と他のインク成分との混合に引き続き濾過することができる。濾過は、チャネル又はノズルの開口部を目詰まりさせることがある所望されない大きな粒子を取り除くことを可能にする。上記の撹拌されたインク組成物はまた、濾過の前に、大きな又は不安定な分子、特に顔料粒子を取り除くために、任意に遠心分離することができる。濾過されたインクジェット用インクは、次に本開示のインクジェット印刷プロセスで用いることができる。インクジェット印刷プロセスでの使用に適した有用なインクジェット用インクの製造を増進するために、大きな不安定な粒子(例えば>3.0ミクロン、又は>1.2ミクロン)のインク組成物からの除去を行うことができる。大きい粒子の除去は、特に、約10から49ミクロンの範囲の直径又はサイズの少なくとも1つのノズルを有する高分解能インクジェット・プリントヘッド(>360spi)を用いる場合に重要である。
【0058】
本開示のインクジェット用インクは、場合によっては、分散剤を含む必要はない。例えば、カーボンナノチューブは、適切な官能基がナノチューブの表面に、共有結合、イオン性結合のいずれか、又は水素結合などのような弱い分子間相互作用により結合するように、化学的に修飾又は処理することができる。適切な官能性は、例えば実施形態ではカーボンナノチューブなどであるフラーレン着色剤とインクキャリアの成分との相溶性を高めることができ、上で列挙した分散剤分子で構成されるが、それらに限定されない。選択される官能基は、小分子(−Br、−Cl、−NH2、−CO2Hなど)又は大きいもの(ワックスポリマー)を含む、どのような適切な及び所望の基とすることもできる。例えば、本明細書における着色剤は、これらに限定されないが、カルボキシル、カルボニル、キニン、エーテル、アルキル、例えばメチル、ニトリル、ヒドロキシル、ラクトン、アミン、四級化アミン、及びそれらの組合せによって表面修飾されることができる。
【0059】
相変化インクは室温で固体である。特定の実施形態において、形成プロセスの間に、溶融状態のインクを型に注ぎ入れ、冷却及び固化させて、インクスティックを形成する。
【0060】
インクは、直接印刷インクジェット・プロセスのための装置において、及び間接(オフセット)印刷インクジェット用途において、使用することができる。別の実施形態は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置に組み込み、インクを溶融させ、溶融インクの小滴を画像のパターンで記録基材上に噴射するステップを含むプロセスに向けられる。別の実施形態は、本明細書に開示されているように調製されたインクをインクジェット印刷装置に組み込み、インクを溶融させ、溶融インクの小滴を画像のパターンで中間転写部材上に噴射し、画像のパターンのインクを中間転写部材から最終記録基材上に転写するステップを含むプロセスに向けられる。特定の実施形態において、中間転写部材は、最終記録シートの温度を上回り、かつ印刷装置内の溶融インクの温度を下回る温度まで加熱される。1つの実施形態において、印刷装置は、圧電振動要素の振動によって画像パターンでのインクの小滴の噴射が引き起こされる、圧電印刷プロセスを使用する。
他の実施形態は、(a)水性液体ビヒクルと炭素同素体を含有する着色剤とを含む水性インクをインクジェット印刷装置内に組み込み、(b)インクの小滴を画像パターンで基材上に噴射させるステップを含む方法に向けられる。
【0061】
普通紙、罫線ノートブック紙、ボンド紙、シリカコーティング紙、透明材料、布地、テキスタイル製品、プラスチック、ポリマーフィルム、金属のような無機基材及び木材を含む、どのような適切な基材又は記録シートも使用することができる。
【実施例1】
【0062】
特許文献6に記載のようなトリアミド樹脂である硬化性アミドゲル化剤をチップ又は塊の形態で調製し、次にブレンダを通して処理して粉末を形成する。その後、粉末化されたトリアミド樹脂(38.1当量)及びカーボンナノチューブ(12.2当量)をLITTLEFORD M5ブレンダ内で0.8Ampの設定で30分間混合する。その後、粉末混合物を0.8ポンド/時の速度でDAVO逆回転ツインスクリュー押出機に加える。次に、押出機の内容物を50RPMで70℃にて混合する。出口温度を75℃に設定する。押し出された分散体(押出物A)を他のインク成分と溶融混合して、インクを形成する。
【0063】
インク実施例1.押出物A(1当量)及びPETROLITE CA−11(ビス−ウレタン、0.3当量)を250mLビーカー(A)内で秤量する。Crompton Corp.のKEMAIDE(登録商標)S180(ステアルアミド、1.2当量)、荒川化学工業株式会社のKE100(登録商標)樹脂(アビエチン酸グリセリル、0.8当量)、及びCrompton Corp.のNAUGARD(登録商標)N445(酸化防止剤、0.01当量)を別の250mLビーカー(B)内で秤量する。最後にBaker PetroliteのポリエチレンワックスであるPOLYWAX(商標)(4.1当量)、及びウレタン樹脂(0.2当量)を第3の250mLビーカー(C)内で秤量する。ビーカーA、B及びCを130℃のオーブンに入れ、およそ3時間、加熱する。2時間の加熱の後、ビーカーB内の成分を磁気的に撹拌して混合物の溶融及び溶解を補助する。ビーカーB内の混合物が完全に溶解及び溶融したら、ビーカーBの内容物をビーカーAの中に注ぎ入れる。
次いで、超音波ディスメンブレータ(Sonic Dismembrator)モデル500ソニファイアを用いてビーカーA内の成分を超音波処理する。ソニファイアをプログラムして、インクを30秒間超音波処理し、次に30秒間休止し、このプロセスを5回繰り返し、それにより音波処理プロセスの総時間が3分間となるようにする。超音波処理しながら、混合物全体にわたって一様な処理が保証されるようにビーカーを回転させ、温度は130℃を下回るように維持する。ビーカーAに対して最初の3分間の超音波処理が完了した後、ビーカーを110℃のオーブン内に戻して30分間置く。その後、同じ超音波処理プロセスをビーカーAの内容物に対して繰り返す。その後、ビーカーCの内容物を、ビーカーAに対して行われる3回目の超音波処理プロセスの最初の30秒間の超音波処理の間にわたって、ビーカーAの中に徐々に注ぎ入れる。
【実施例2】
【0064】
PETROLITE CA−11の代わりにBaker Petroliteから入手可能なビス−ウレタンであるWB−5分散剤を用いること以外はインク実施例1と同様に、カーボンナノチューブ・ベースのインクを調製する。
【実施例3】
【0065】
PETROLITE CA−11の代わりにBaker Petroliteから入手可能なビス−ウレタンであるWB−17分散剤を用いること以外はインク実施例1と同様に、カーボンナノチューブ・ベースのインクを調製する。
【実施例4】
【0066】
PETROLITE CA−11の代わりにNoven Inc.から入手可能なSolsperese(登録商標)13240を用いること以外はインク実施例1と同様に、カーボンナノチューブ・ベースのインクを調製する。
【実施例5】
【0067】
PETROLITE CA−11の代わりにNoven Inc.から入手可能なSolsperese(登録商標)17000を用いること以外はインク実施例1と同様に、カーボンナノチューブ・ベースのインクを調製する。
【実施例6】
【0068】
PETROLITE CA−11の代わりにテキサス州ヒューストンのChevron Oronite Companyから入手可能なOLOA(登録商標)11000を用いること以外はインク実施例1と同様に、カーボンナノチューブ・ベースのインクを調製する。
【実施例7】
【0069】
(参考例)
水性インクを以下のように調製する。40グラムの蒸留水を30グラムのスルホラン及び8グラムの2−ピロリジノンと30分間混合する。20グラムのカーボンナノチューブを混合物に加え、10分間、超音波処理を用いた強力な撹拌にて混合する。次に、このブラックインクを、およそ5psiの窒素圧の下で2.0ミクロンのフィルタ(Pall Filter P/N PFY1U2−20ZJ、S/N416)を通して濾過する。