【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の超音波探触子では、密閉容器内に音響媒質(超音波媒質)としての液体を充填した密閉容器の内部で反射し
、超音波探触子から外部へ出ない不要超音波は、診断装置の画像上に不要エコーとなって現れるため、
超音波診断の妨げとなる。
【0008】
そこで、このような不要エコーを防ぐために、前出特許文献1(特開2007−222244号公報)では、突出部(超音波吸収手段)
6dを音響レンズの脚部に付加しているが、突出部
6bとカバー内周面
3cとの間には、クリアランス
gを設ける必要があるために、不要エコーを十分に除去することができず、また、部品点数や組立工数が増加によりコストアップ要因にもなっていた。
【0009】
このような不要エコーは、以下のような経路で不要超音波が、これを送信した圧電素子に戻ってしまうことにより発生する。以下、添付した
図9に基づいて不要エコーの発生原理を説明する。
【0010】
まず、圧電素子から放射された不要超音波は、音響レンズ表面とカバー内面との間で反射を繰り返して圧電素子群の長軸方向または短軸方向に伝播して音響レンズの範囲の外に出る(
図9に示すD部及びE部参照)。
【0011】
この不要超音波が、密閉容器内のいずれかの部位で反射する際に、反射前の方向と同じ方向に反射すると、元の経路を辿って最終的に音響レンズ上の放射された地点付近に戻る。これを送信時の圧電素子が受信すると画像上の不要エコーとなる。
【0012】
上述のような、反射の際に反射前の方向と同じ方向に反射して元の経路に戻るようなケースは以下の通りである。(ここで、
図9は探触子が、
図10に示すように、中心位置にあり、長軸方向に不要超音波が伝播する場合を示す。)
(1)反射面に対して90度で入射した場合(入射角=0°、
図9に示すD部、矢印方向に
点線で示す)。
【0013】
(2)互いになす角度が略90度である2平面(凹の直角コーナー形状)のいずれか一方の面に入射する場合(
図9に示すE部、矢印方向に実線で示す)。
【0014】
ここで、上記(2)について補足説明すると、
図7に示すように、互いのなす角度θの2面
(第1及び第2反射面)で連続して反射する場合、反射前の方向(入射角a)と2回反射後の方向(同じ基準での射出角c)の関係は正反射の性質(反射面の法線に対する入射角と射出角の値は等しく、反射前後の各進行方向は法線について対称)を使って計算すると以下の通りになる。
【0015】
すなわち、
図7に示す、ΔABOの内角について、(90−a)+(90−b)+θ=180 → b=θ−a、また、
ΔABCの内角について、a+2×b+c=180、bを消去すると、
c=180−a−2×(θ−a)=a−2×θ+180
θ=90のとき、c=a、となる。
【0016】
よって、θ=90°の場合は、どのような入射角であっても、射出角は入射角と同じであり、かつ角度aと角度cは、基準に対して同じ方向と、ここで定義しているので、反射前後の進行方向は同じになる。
【0017】
従って、どの入射角であっても、反射後は元の経路に戻ることになるので、このような90°をなす2面での連続反射は不要エコーの原因となりやすいことが分る。
【0018】
次に各
反射部位での反射により、不要超音波が圧電素子に戻る例を説明する。
【0019】
図10は、探触子が中心位置にあり、不要超音波が短軸方向に伝播する場合を示す。
【0020】
図11は、探触子が所定角度回動した位置にあり、不要超音波が短軸方向に伝播する場合を示す。
【0021】
図10と
図11は、いずれも容器本体の
上部端面(
図8に示す面U)とカバー内面が互いに90°をなす2面を構成しており、この部位で反射した不要超音波が反射前の経路に戻る様子を示している。
【0022】
図8に示す矢印は、探触子が回動した位置にあり、不要超音波が長軸方向に伝播する場合に、容器本体の端面(
図8に示す面T)で反射する様子
(実線矢印)を示す。ここで、
この面Tでの不要超音波の入射角は、略0°のため、図
9に示す
D部での反射と同様に、反射後の方向は、反射前の方向と略同じとなり元の経路を戻っていく。
【0023】
さらに、反射部位の構成について説明する。
【0024】
上述したように、
図8に示す面S、T、Uは容器本体の端面であるが、
面S及び面Uは部品加工が容易となるように、
図9に示す加工基準面と平行
に形成されている。また、カバーの内面については容器本体と嵌合させることから、容器本体の面S、T、Uと隣接する部位では、これらの面と略垂直な面となっている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記した課題を解決するために、本発明の短軸揺動型超音波探触子では、不要エコーを防ぐために、長軸方向に並べられて超音波送受波面に音響レンズを有する圧電素子群を、密閉容器内に収容された回転保持台上に設け、前記圧電素子群の短軸方向に前記回転保持台を回転揺動することにより前記圧電素子群の超音波送受波面から送受波される超音波を前記短軸方向に機械的に走査し、前記密閉容器内に音響媒質としての液体を充填した短軸揺動型超音波探触子を構成し、前記音響レンズの表面と前記密閉容器の内周面との間を長軸方向または短軸方向に伝播した後に前記音響レンズの範囲を超えて前記密閉容器内を進
行する不要超音波が、前記密閉容器内のいずれかの反射部位にて反射する際に、反射後の不要超音波が前記音響レンズの表面と前記密閉容器の内周面との間に戻る方向には反射しないようにするため、前記反射部位の表面形状を傾斜させる。
【0026】
また、本発明の超音波探触子では、前記密閉容器が、少なくとも
超音波診断時に被検体の体表に接するカバーと前記回転保持台を支持する容器本体とから、かつ、前記反射部位が前記容器本体の面の一部からなり、前記反射部位に向かう前記不要超音波の前記反射部位での入射角がなるべく大きくなるように、前記反射部位の面を傾斜させることにより、前記不要超音波が前記反射部位で反射した後に、反射前の進行方向とは異なる方向に進行するようにする。
【0027】
さらに、本発明の超音波探触子では、前記密閉容器が、少なくとも
超音波診断時に被検体の体表に接するカバーと前記回転保持台を支持する容器本体とから、かつ、前記反射部位が前記カバー内面の一部とそれと隣接する前記容器本体の面の一部の2面からなり、前記2面のなす角度が鋭角または鈍角をなすように、前記2面のうちの一方、または両方の面を傾斜させることにより、前記不要超音波が、前記2面で連続して反射した後に、反射前の進行方向とは異なる方向に進行するようにする。