【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、添加剤としてコロイド成分および少なくとも1つのコロイド安定剤(A)を含有するホスフェート溶液が磁気ストリップに塗布されることを特徴とする、ホスフェート層で被覆された方向性磁気ストリップの製造方法により達成される。
【0015】
本発明によれば、表現「ホスフェート溶液はコロイド成分を含有している」とは、ホスフェート溶液の一部分が、数ナノメートルから数マイクロメートルのサイズを有する固体粒子または超分子凝集体からなることを意味する。ホスフェート溶液中のコロイド成分のサイズは、5nm〜1μm、好ましくは5nm〜100nm、より好ましくは10nm〜100nmの範囲内で変動することが好ましい。
【0016】
ホスフェート溶液中のコロイド成分の一部は変えることができる。ホスフェート溶液のコロイド成分の一部は、好ましくは、5〜50重量%、より詳しくは5〜30重量%の範囲内で変えるのが好ましい。最も変化に富む物質をコロイド成分として使用できる。これらの物質は、可溶性リン酸が特に好ましい訳ではない。
【0017】
酸化物、好ましくはCr
2O
3、ZrO、SnO
2、V
2O
3、Al
2O
3、SiO
2の水性懸濁液により特に良い結果が得られる。これらのうち、特にSiO
2が適している。したがって、本発明による特に適したコロイド成分はシリカゾルである。水中のSiO
2の部分が10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%であるシリカゾルにより良い結果が達成される。SiO
2の特に好ましい粒子サイズは、5〜30nm、望ましくは10〜20nmである。
【0018】
本発明による方法は、ホスフェート溶液が、添加剤としてコロイド安定剤(A)を含有している点で優れている。本発明の方法のこの特徴は、ゾルからゲルへの変換が、ホスフェート層の乾燥中にのみ生じることにより確保される。また、コロイド安定剤の使用により、ホスフェート溶液の均一塗布が可能になり、このため、均一な仕上げ層の品質が達成される。したがって、コロイド安定剤(A)の使用により、磁気金属板のホスフェートコーティングにおいて、ホスフェート溶液中に六価クロムを使用しなくて済む。これにより、コロイド含有ホスフェート溶液を用いるクロムフリー(クロムを使用しない)製造時に一般に生じる問題を実質的に回避できる。
【0019】
A群の添加剤はコロイド安定剤である。本発明におけるコロイド安定剤はコロイドを安定化させる添加剤であり、制御されないゾル/ゲル変換または固体物質の凝集を防止する。また、コロイド安定剤は、ホスフェート溶液の塗布前の使用領域内の温度鈍感性を有利に確保して、好ましくない物質、より詳しくは好ましくないイオンに対してシステムを鈍感にする。
【0020】
本発明によれば、酸性溶液中で安定しているならば、最も変化に富むコロイド安定剤を使用できる。また、コロイド安定剤がコロイド溶液の安定性を乱すことがなくかつ塗布したホスフェート層の品質に不利な影響を与えないことが有利である。また、コロイド安定剤の毒性は、できる限り低いことが有利である。更に、使用されるコロイド安定剤は、ホスフェート溶液中に任意に存在する他の添加剤の個々の効果を妨げないようにするため、これらの添加剤と相互反応すべきではない。
【0021】
実用試験によれば、電解質、界面活性剤およびポリマーは、本発明によるコロイド安定剤に特に適していることが証明されている。しかしながら、驚くべきことに、コロイド安定剤として、リン酸エステルおよび/またはスルホン酸エステルが特に好ましい。用語「リン酸エステル」とは、本発明によれば、化学式OP(OR)
3を有し、コロイド安定剤として作用するリン酸の有機エステルを意味する。また「スルホン酸エステル」とは、本発明によれば、化学式R(O)P(OR)
2を有し、コロイド安定剤として作用するスルホン酸の有機エステルを意味するものと理解すべきである。ここでは、ラジカルRは、必ずしもすべてのラジカルRが同時的に水素である必要はないが、水素基、芳香族基または脂肪族基とは互いに独立している。用語「脂肪族基」は、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基を含むものである。
【0022】
アルキル基は、1〜8個の炭素原子をもつ飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルキル基は、直鎖基でも分鎖基でもよい。本発明による特に適したアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、n−ペンチル、n−ヘプチルがある。アルキル基はまた、1つ以上の置換基で置換できる。適当な置換基として、特に、脂肪族ラジカル基がある。更に、適当な置換基として、アルコキシ基、ニトロ基、スルホキシ基、メルカプト基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン基、スルファミド基、カルボバイアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、アミノカルボニル基、アミノスルホニル基、アミノアルキル基、シアノアルキル基、アルキルスルホニル基、スルホニルアミノ基およびヒドロキシル基がある。
【0023】
表現「アルケニル」は、2〜10個の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有する脂肪族炭素基に関する。アルケニル基は、直鎖または分枝鎖を呈する。本発明による特に好ましいアルケニル基は、アリル基、2−ブテニル基および2−ヘキシニル基である。任意であるが、アルケニル基は、1つ以上の置換基で置換できる。適当な置換基として、アルキル置換基として上述したものがある。
【0024】
用語「アルキニル」は、2〜8個の炭素原子および少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基に関する。アルキニル基は、直鎖または分枝鎖を呈する。アルキニル基は、1つ以上の置換基で置換できる。適当な置換基として、アルキル置換基として上述したものがある。
【0025】
また、脂肪族基の適当な置換基として、アリル基、アラルキル基または脂環基がある。「アリル」とは、例えばフェニル基のような単環基、例えばインデニル基、ナフタレニル基のような二環基、例えば3つの環をもつフルオレニル基またはベンゾ結合基のような三環基に関する。アリル基はまた、1つ以上の置換基で置換できる。適当な置換基として、アルキル置換基として上述したものがある。
【0026】
「アラルキル」は、アリル基と置換できるアルキル基に関する。表現「脂環(cycloaliphatic、cycloaliphatisch(英、独訳))」とは、単結合により分子の残部に結合された飽和または部分的に不飽和の単環、二環または三環の炭化水素リングをいう。脂環は、3〜8員(3 to 8-membered、3 bis 8-gliedrige(英、独訳))の単環リングおよび8〜12員の二環リングである。脂肪族基は、シクロアルキル基とシクロアルケニル基を含む。アラルキルはまた、1つ以上の置換基で置換できる。適当な置換基として、アルキル置換基として上述したものがある。
【0027】
脂肪族基の他の適当な置換基として、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子により置換された上記置換基がある。
【0028】
本発明によれば、リン酸エステルの使用が特に適している。エチルホスフェート、より詳しくはモノエチルホスフェートおよび/またはジエチルホスフェートが特に適している。特に、ケボケミエ社(Kebo Chemie社)から入手できる製品ADACID VP 1225/1は極めて適している。
【0029】
したがって、本発明による方法は、クロムを使用しない(クロムフリー)のホスフェート溶液の使用を可能にする。それでもなお、ホスフェート溶液にクロムを含有させてもよいことは明白である。しかしながら、0.2重量%より少ない、好ましくは0.1重量%より少ない、特に好ましくは0.01重量%より少ないクロムを含有するホスフェート溶液の使用が好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、ホスフェート溶液はまた、酸洗い抑制剤(B)および湿潤剤(C)からなる群から選択された少なくとも1つの添加剤を含有している。本発明による方法により製造される方向性磁気ストリップの特性は、酸洗い抑制剤(B)および/または湿潤剤(C)の使用により更に改善できる。したがって、本発明によれば、コロイド安定剤(A)に加えて、少なくとも1つの酸洗い抑制剤(B)および少なくとも1つの湿潤剤(C)を含有するホスフェート溶液の使用が特に好ましい。
【0031】
B群に属する添加剤は酸洗い抑制剤である。本発明によれば、用語「酸洗い抑制剤(pickling inhibitors、Beizinhibitoren(英、独訳))」とは、鉄が全く溶液中に入らないようにまたはごく少量だけ入るように、ホスフェート溶液とストリップ表面との化学的相互反応に影響を与える添加剤を意味する。したがって、酸洗い抑制剤の使用により、鉄イオンによるホスフェート溶液の汚染が防止され、ホスフェート溶液は長期間に亘って一定の特性を保有できる。これは、ホスフェート溶液の鉄イオンが濃厚になると磁気ストリップ上のホスフェート層の化学的抵抗が低下するため有利である。ゾル/ゲル変換はふさわしくないイオンによる影響を強く受けるので、本発明が適用されるときにコロイド系中に酸洗い抑制剤を使用すると特に有利であることが証明されている。したがって、酸洗い抑制剤を添加することにより、コロイド系の安定性が実質的に改善される。
【0032】
本発明によれば、酸性溶液中で安定していれば、酸洗い抑制剤(B)として、最も変化に富む添加剤を使用できる。酸洗い抑制剤が、塗布されるホスフェート層の品質に悪影響を与えないならば一層有利である。また、酸洗い抑制剤の毒性はできる限り小さいことが有利である。基本的に、使用される酸洗い抑制剤は、使用されるホスフェート溶液に適合できるものでなくてはならない。更に、使用される酸洗い抑制剤は、コロイド構成成分の安定を損なうものであってはならない。また、使用される酸洗い抑制剤は、添加剤が個々の効果に関して妨げられないように、ホスフェート溶液中の他の添加剤と相互反応すべきではない。
【0033】
実用試験によれば、チオ尿素誘導体、C
2−10−アルキノール、トリアジン誘導体、チオグリコール酸、C
1−4−アルキルアミン、ヒドロキシ−C
2−8−チオカルボン酸および/または脂肪アルコールポリグリコールエーテルは、特に有効な酸洗い抑制剤であることが証明されている。
【0034】
本発明によれば、チオ尿素誘導体の形態の酸洗い抑制剤は、基本的構造としてチオ尿素構造を有する酸洗い抑制剤を意味するものである。チオ尿素の1〜4個の水素原子は、適当な置換原子と置換できる。本発明による特に適した置換原子として、既に上述した脂肪族基がある。
【0035】
基本的チオ尿素構造の窒素原子の他の適当な置換原子として、上述のように、アリル基、アラルキル基または脂環基がある。
【0036】
本発明による特に適したチオ尿素誘導体として、C
1−6−ジアルキルチオ尿素、好ましくはC
1−4−ジアルキルチオ尿素がある。アルキル置換基は、置換されないのが好ましい。ジエチルチオ尿素、より詳しくは1,3−ジエチル−2−チオ尿素の使用が非常に好ましい。特に適した製品として、アルフィニッシュ社(Alufinish社)から入手できるFerropas 7578がある。
【0037】
本発明により特に適した酸洗い抑制剤として、C
2−10−アルキノール、より詳しくは上記特徴を有するC
2−6−アルカインジオール、アルカインがある。アルカイン置換基は、本発明により特に適したC
2−6−アルカインジオールでは置換されず、二重結合を有している。本発明による更に好ましい酸洗い抑制剤として、ブチン−1,4−ジオール、より詳しくはブタ−2−イン−1,4−ジオール(But-2-in-1,4-diol)およびプロパルギルアルコール(Prop-2-in-1-ol)がある。
【0038】
本発明により非常に適した酸洗い抑制剤として、トリアジン誘導体がある。トリアジン誘導体の形態をなす酸洗い誘導体とは、本発明によれば、基本的トリアジン構造を有する酸洗い抑制剤を意味する。基本的トリアジン構造の1つ以上の水素原子は、本発明に適したトリアジン誘導体の適当な置換基で置換できる。適当な置換基として、アルキル置換基として上述したものがある。
【0039】
本発明による他の特に適した酸洗い抑制剤として、脂肪アルコールポリグリコールエーテルがある。本発明によれば、脂肪アルコールポリグリコールエーテルとは、脂肪アルコールと過剰の酸化エチレンとの反応生成物を意味する。本発明による特に適した脂肪アルコールは、6〜30個、好ましくは8〜15個の炭素原子を有している。ポリグリコールエーテルの酸化エチレン基の部分は、水溶性脂肪アルコールポリグリコールエーテルを作るのに充分な大きさを有する。したがって、好ましくは、アルコールの炭素原子として、少なくとも多くの―O−CH
2−CH
2−基が存在すべきである。或いは、水溶性は、例えば硫酸とのエステル化およびエステルのナトリウム塩への変換等の適当な置換によっても達成できる。基本的には、脂肪アルコールポリグリコールエーテルの水素原子も、適当な置換基により置換できる。適当な置換基として、アルキル置換基として上述したものがある。
【0040】
酸洗い抑制剤として使用するのに、チオグリコール酸およびヘキサメチレンテトラミンは特に適している。
【0041】
C群の添加剤は湿潤剤である。酸性溶液中で安定しているものであれば、最も変化性に富む湿潤剤を本発明による方法に使用できる。湿潤剤が、塗布されるホスフェート層の品質に不利な影響を与えないならば更に有利である。湿潤剤の毒性ができる限り小さいことも有利である。また、使用される湿潤剤は、コロイド構成成分の安定性を損なうものであってはならない。更に、使用される湿潤剤は、ホスフェート溶液中に存在する他の添加剤の個々の効果が妨げられるような態様で添加剤と相互反応してはならない。
【0042】
本発明による方法に湿潤剤を使用すると、ストリップ表面上へのホスフェート溶液の塗布が改善される。また、ホスフェート層の均一性も向上する。実用試験によれば、湿潤剤として、フルオロ界面活性剤が特に適していることが証明されている。フルオロ界面活性剤の長所は、六価クロム含有ホスフェート溶液中でも、最も変化性に富むホスフェート溶液に安定的に使用できることである。本発明による方法には、最も変化性に富むフルオロ界面活性剤が添加剤として適している。本発明によれば、用語「フルオロ界面活性剤」とは、疎水性基としてのペルフルオロアルキルラジカルを有する界面活性剤を意味する(「アルキル」は、上記定義の意義を有している)。フルオロ界面活性剤は、非フッ素化界面活性剤と比較して、極めて低い濃度で水の表面張力を大きく低下できる点で優れている。また、フルオロ界面活性剤は、高い化学的および熱的安定性を有している。最も変化性に富む界面活性剤は、もしこれらの界面活性剤が酸性溶液中で安定している場合には、本発明により好ましく使用できるフルオロ界面活性剤の可能性ある界面活性剤成分である。フルオロ界面活性剤がコロイド溶液の安定性を損なわずかつ塗布されるホスフェート層の品質に不利な影響を与えない場合には更に有利である。また、フルオロ界面活性剤の毒性ができる限り低いものであれば、更に有利である。
【0043】
実用試験によれば、C
1−4−テトラアルキルアンモニウムペルフルオロ−C
5−10−アルキルスルホネートが、本発明によるフルオロ界面活性剤として特に適していることが証明されている。特に適した湿潤剤として、テトラエチルアンモニウムペルフルオロオクタンスルホネートを含有する、シュヴェンク社(Schwenk社)から入手できる製品NC 709がある。
【0044】
ホスフェート溶液中に含有される種々の添加剤A〜Cの量は、広範囲に変えることができる。実用試験によれば、コロイド安定剤(A)が0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より詳しくは0.1〜2重量%の量で使用される場合に特に良い結果が得られることが証明されている。酸洗い抑制剤(B)は、0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜1重量%、より詳しくは0.01〜0.08重量%の量で良好に使用できる。湿潤剤(C)は、0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜1重量%、より詳しくは0.01〜0.1重量%の量で良好に使用でき、各場合に、ホスフェート溶液の全重量に基づいて定められる。
【0045】
本発明によるホスフェート溶液には、最も変化性に富むホスフェートを含有させることができる。例えばホスフェート溶液には、カルシウムホスフェート、マグネシウムホスフェート、マンガンホスフェートおよび/またはこれらの混合物を含有させることができる。水溶性に優れているため、本発明によれば一次ホスフェート(モノホスフェート)が特に好ましい。アルミニウムホスフェートおよび/またはマグネシウムホスフェートを含有するホスフェート溶液により、特に良い結果が達成される。非常に好ましいホスフェート溶液は、40〜60重量%の量でAl(H
2PO
4)
3を含有するホスフェート溶液である。
【0046】
ホスフェートとしてAl(H
2PO
4)
3を含有しかつコロイド成分としてSiO
2(シリカゾル)を含有するホスフェート溶液を使用する場合には、下記量比率が特に適していることが証明された。すなわち、
0.5<Al(H
2PO
4)
3:SiO
2<20、好ましくは、
0.7<Al(H
2PO
4)
3:SiO
2<5、より詳しくは、
Al(H
2PO
4)
3:SiO
2=1.36
【0047】
ホスフェート溶液のベースは水が好ましいが、水と同様な反応性および極性を有するならば、他の溶剤を使用できることも明白である。
【0048】
本発明によれば、ホスフェート溶液中のホスフェートの濃度は、5〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%、特に40〜60重量%である。
【0049】
応力弛緩焼きなましの範囲内での焼付けホスフェートコーティングは、磁気ストリップ上にホスフェート層を形成する上で、実際に特に適していることが証明された。焼付けホスフェートコーティングでは、最初に、ホスフェート溶液がストリップに塗布され、次に700℃以上、好ましくは800℃、特に850℃より高い温度で焼付けられる。連続炉内での焼付けが特にうまくいくことが証明された。
【0050】
既に上述したように、ホスフェート溶液はコロイド成分を含有する。引っ張り応力はホスフェート層の乾燥中にコロイド成分により磁気ストリップに伝達されるので、この実施形態は有利である。磁気ストリップを使用するとき、引っ張り応力は、磁気損の明らかな低下をもたらす。また、磁歪、したがってノイズ発生は、変圧器内での使用中に最小になる。
【0051】
本発明による特に適したコロイド成分は、コロイド状の二酸化ケイ素である。コロイド系の安定性に関しては、コロイド安定剤の使用以外に、ホスフェート溶液のpHも重要である。乾燥前のホスフェート溶液の安定性を高めるには、3より小さいpH、好ましくは0.5〜1のpHが特にうまくいくことが証明された。
【0052】
磁気ストリップの引っ張り応力は、ホスフェート層と磁気ストリップとの間にガラス膜を配置することにより更に増大させることができる。本発明によれば、ガラス膜とは、好ましくは主としてMg
2SiO
4を含有しかつスルフィドが混和されたセラミックのような層を意味する。ガラス膜は、酸化マグネシウムおよび酸化ケイ素からの完全焼きなまし中に既知の方法により形成されるのが好ましい。
【0053】
本発明の他の態様は、本発明の方法により製造された、ホスフェート層で被覆された方向性磁気ストリップである。本発明による磁気ストリップは、ホスフェート層内のクロム含有量が0.2重量%より少なく、好ましくは0.1重量%より少ないことを特徴とする。
【0054】
本発明の好ましい実施形態によれば、ガラス膜は、ホスフェート層と磁気ストリップとの間に配置されている。
【0055】
磁気ストリップの上面および/または下面には、ホスフェート層および任意に設けられるガラス膜が配置される。好ましくは、磁気ストリップの上面および下面には、ホスフェート層およびガラス膜が配置される。
【0056】
本発明による方向性磁気ストリップは非常に多くの用途に適しており、変圧器のコア材料として使用することを特に強調しておく。