(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダ内に移動自在に挿入されて当該シリンダ内に伸側室と圧側室とに区画するピストンと、当該ピストンに設けられて上記伸側室と上記圧側室とを連通する減衰通路と、上記シリンダ内に移動自在に挿入されて一端に上記ピストンが連結されるピストンロッドと、当該ピストンロッドに設けられて上記減衰通路を迂回して上記圧側室を上記伸側室へ連通するバイパスと、上記圧側室の圧力の作用でバイパスを開放するリリーフ弁とを備えた減衰バルブにおいて、
上記バイパスが上記圧側室に臨む上記ピストンロッドの一端から開口して当該ピストンロッドの軸方向へ伸びる弁孔と上記伸側室に臨む上記ピストンロッドの側部から開口して上記弁孔へ通じる横孔とを備え、
上記リリーフ弁は、上記弁孔の途中であって上記横孔の開口よりも上記圧側室側に設けた環状弁座と、上記弁孔内であって上記環状弁座よりも伸側室側へ摺動自在に挿入されて上記弁孔内に背圧室を区画する弁体と、上記背圧室内に挿入されて上記弁体を上記環状弁座へ向けて附勢する附勢ばねと、上記ピストンロッドに設けられて上記背圧室を上記伸側室へ連通する絞りとを備えたことを特徴とする減衰バルブ。
上記絞りは、上記ピストンロッドの上記伸側室に臨む側方から開口して上記背圧室内へ連通する透孔と、上記背圧室内に周方向に回転自在に挿入されて透孔に対向可能な絞り孔を備えた筒状弁体と、上記筒状弁体に連結され上記ピストンロッド内に挿通されてピストンロッドの他端外方から回転操作可能なコントロールロッドとを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、一実施の形態における減衰バルブVは、緩衝器Dに適用されており、シリンダ1内に移動自在に挿入されてシリンダ1内に伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、ピストン2に設けられて伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路3と、シリンダ1内に移動自在に挿入されて一端となる
図1中下端にピストン2が連結されるピストンロッド4と、ピストンロッド4に設けられて減衰通路3を迂回して圧側室R2を伸側室R1へ連通するバイパス5と、圧側室R2の圧力の作用でバイパス5を開放するリリーフ弁6とを備えて構成されている。
【0015】
他方、この減衰バルブVが適用される緩衝器Dは、
図1に示すように、シリンダ1と、ピストン2と、ピストンロッド4と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内に気室Gを区画するフリーピストン7と、シリンダ1の
図1中上端を閉塞するとともにピストンロッド4を摺動自在に軸支するロッドガイド8と、シリンダ1の
図1中下端を閉塞するボトムキャップ9とを備えている。そして、シリンダ1内の伸側室R1と圧側室R2には、作動油等の流体が充填され、気室G内には気体が充填されている。なお、上記の流体としては、作動油のほか水や水溶液等を用いてもよい。また、気室G内に充填される気体は、液体を作動油とする場合、液体の性状を変化させにくい窒素等の不活性ガスとされるとよい。
【0016】
図示したところでは、緩衝器Dがいわゆる片ロッド型に設定されているため、緩衝器Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド4の体積は、気室G内の気体の体積が膨張あるいは収縮しフリーピストン7が
図1中上下方向に移動することによって補償されるようになっている。このように緩衝器Dは、本実施の形態では、単筒型に設定されているが、フリーピストン7および気室Gの設置に変えて、シリンダ1の外周や外部にリザーバを設けて当該リザーバによって上記ピストンロッド4の体積補償を行ってもよい。また、緩衝器Dが片ロッド型ではなく、両ロッド型に設定されてもよい。なお、伸側室R1と圧側室R2に充填する流体を気体とする場合には、気室Gやリザーバを省略することも可能である。
【0017】
以下、各部について詳細に説明すると、ピストンロッド4は、その
図1中下端側に小径部4aが形成されるとともに、小径部4aの先端側には螺子部4bが形成されている。
【0018】
ピストン2は、環状に形成されるとともに、その内周側にピストンロッド4の小径部4aが挿入されている。また、このピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路3と伸側通路10が設けられている。さらに、ピストン2は、その
図1中上端に減衰通路3の上端開口部外周を囲む弁座11を備えており、
図1中下端に伸側通路10の下端開口部外周を囲む弁座12を備えている。
【0019】
そして、ピストン2の
図1中上端には、上記弁座11に離着座して減衰通路3の
図1中上端開口部を開閉するリーフバルブ13が積層されており、ピストン2の
図1中下端には、上記弁座12に離着座して伸側通路10の
図1中下端開口部を開閉するリーフバルブ14が積層されている。
【0020】
このリーフバルブ13,14は、共に環状に形成され、内周側にはピストンロッド4の小径部4aが挿入されてピストン2に積層されて、ピストンロッド4の螺子部4bに螺着されるピストンナット15によって、外周側の撓みが許容された状態でピストン2と共にピストンロッド4に固定されている。
【0021】
また、リーフバルブ13,14は、共に、複数の環状板を積層した積層リーフバルブとして構成されており、弁座11,12に当接する環状板の外周に切欠13a,14aを備えており、リーフバルブ13,14が弁座11,12に着座した状態では、切欠13a,14aがオリフィスとして機能するようになっている。なお、環状板側に切欠13a,14aを設けてオリフィスを設ける代わりに、弁座11,12に窪みを打刻しておいて、これをオリフィスとして機能させてもよい。
【0022】
そして、リーフバルブ13は、緩衝器Dの収縮作動時に圧側室R2と伸側室R1の差圧によって撓んで開弁し減衰通路3を開放して圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに抵抗を与えるとともに、緩衝器Dの伸長作動時には減衰通路3を閉塞するようになっている。したがって、減衰通路3は、リーフバルブ13によって圧側室R2から伸側室R1へ向かう流体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。他方のリーフバルブ14は、リーフバルブ13とは反対に緩衝器Dの伸長作動時に伸側通路10を開放して通過流体に抵抗を与え、収縮作動時には伸側通路10を閉塞する。すなわち、リーフバルブ14は、緩衝器Dの収縮作動時における伸側減衰力を発生する減衰力発生要素であり、伸側通路10は、当該リーフバルブ14によって、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、減衰通路3および伸側通路10を通過する流体に抵抗を与えるバルブとしては、上記したリーフバルブ13,14の他にも、たとえば、オリフィスではなくチョークとリーフバルブを並列させる構成を採用することもでき、また、リーフバルブ以外にもポペット弁やその他の構成を採用することもできる。
【0023】
バイパス5は、圧側室R2に臨むピストンロッド4の一端となる
図1中下端から開口してピストンロッド4の軸方向へ伸びる弁孔5aと、伸側室R1に臨むピストンロッド4の側部から開口して弁孔5aへ通じる横孔5bとを備えて構成されている。
【0024】
リリーフ弁6は、弁孔5aの途中であって横孔5bの開口よりも圧側室側となる
図1中下方側に設けた環状弁座16と、弁孔5a内であって環状弁座16よりも伸側室R1側となる
図1中上方側へ摺動自在に挿入されて弁孔5a内に背圧室Pを区画する弁体17と、背圧室P内に挿入されて弁体17を環状弁座16へ向けて附勢する附勢ばね18と、ピストンロッド4に設けられて背圧室Pを伸側室R1へ連通する絞り19とを備えて構成されている。
【0025】
環状弁座16は、環状であって、弁孔5a内に圧入されて固定されている。なお、環状弁座16は、ピストンロッド4と別部品とされているが、ピストンロッド4の弁孔5aの内周に段部を設けて環状弁座を形成するようにしてもよい。この場合、ピストンロッド4の
図1中上端から弁孔5aに通じる貫通孔を設けておき、貫通孔側から弁体17および附勢ばね18を挿入してから、附勢ばね18の上端を支承するばね座を貫通孔側から弁孔5aを圧入して固定するとよい。また、環状弁座16の固定に際しては、圧入以外の方法で行ってもよい。
【0026】
弁体17は、弁孔5aの内周に摺接する胴部17aと、胴部17aの
図1中下端に設けた円錐状の弁頭17bと、胴部17aの外周に周方向に沿って装着されて二つのシールリング17cと備えて構成されている。弁頭17bは、円錐状とされているので、環状弁座16の
図1中上端内周縁に隙間なく当接することができ、バイパス5を介しての圧側室R2と伸側室R1の連通を遮断することができる。
【0027】
このように、弁体17が環状弁座16に当接する着座状態では、リリーフ弁6は閉弁状態となってバイパス5を遮断し、弁体17が環状弁座16と離間した状態では、リリーフ弁6は開弁状態となってバイパス5を開放するようになっている。
【0028】
また、弁体17が環状弁座16に弁頭17bを当接した閉弁位置から
図1中上方へ移動して環状弁座16から遠ざかると開弁して、弁頭17bと環状弁座16の上記内周縁との間に環状隙間が形成され、圧側室R2と伸側室R1とを連通するようになるが、環状弁座16に離着座する弁頭17bが円錐状となっているので、弁体17の上方への移動変位量の増加によって徐々に上記環状隙間を大きくするようにすることができる、つまり、徐々に流路面積を大きくすることができる。
【0029】
さらに、弁体17に二つのシールリング17cを設けることで、弁体17とピストンロッド4との間が密にシールされて弁体17の
図1中下方側となる正面側と背面側の背圧室Pとが弁体17の外周を通じて連通してしまうことを確実に防止できるとともに、弁体17の弁孔5a内での軸方向となる
図1中上下方向への移動の際に弁体17の軸ぶれを防ぐことができ、偏りなく環状弁座16へ弁頭17bを当接させて確実に閉弁することができるとともに、開弁時における流路面積にバラツキがなくなり、安定した減衰力を発揮させることができる。
【0030】
なお、胴部17aの
図1中上端となる背面側端には小径な凸部17dが設けられていて、この凸部17dは、コイル状の附勢ばね18の内周に嵌合している。附勢ばね18は、弁孔5aの底と弁体17との間に圧縮状態で介装されていて、弁体17を環状弁座16へ向けて附勢しており、弁体17が環状弁座16に着座した状態においても、附勢力を発揮していて、弁体17に初期荷重を与えている。
【0031】
絞り19は、背圧室Pと伸側室R1を交流する流体の流れに抵抗を与えるようになっている。したがって、リリーフ弁6が開弁して弁体17が環状弁座16から離間する方向へ移動する後退時には、圧縮される背圧室Pから流体を伸側室R1へ押し出す際には、絞り19が背圧室P内の圧力を上昇させるので、背圧室P内の圧力で弁体17の後退を抑制する。反対に、弁体17が環状弁座16から接近する方向へ移動する前進時には、拡大される背圧室Pへ流体を伸側室R1へ吸い込む際には、絞り19が背圧室P内の圧力を減圧させるので、弁体17の前進を抑制する。
【0032】
リリーフ弁6は、上述のように構成され、圧側室R2の圧力の作用により弁体17を環状弁座16から離間する方向へ押圧する力が、弁体17を環状弁座16側へ附勢する附勢ばね18の附勢力と背圧室Pが内部圧力で弁体17を環状弁座16側へ押圧する力に抗して、弁体17を後退させると開弁してバイパス5を開放する。つまり、リリーフ弁6は、圧側室R2の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁して、バイパス5を開放し、当該開弁圧は附勢ばね18が弁体17へ与える初期荷重によって調整することができる。
【0033】
また、背圧室Pは、弁体17の移動を抑制する働きがあるので、圧側室R2の圧力が振動的に変動しても、弁体17の振動を抑制することができ、リリーフ弁6の開弁度合が振動的に変化せず、安定的に減衰力を発揮することができる。
【0034】
上記のように減衰バルブVは構成され、以下、当該減衰バルブVの作動について説明する。減衰バルブVは、緩衝器Dの収縮作動時において緩衝器Dに減衰力を発揮するようになっている。
【0035】
緩衝器Dの収縮作動時において、ピストン速度が低速領域にある場合、ピストン2によって圧側室R2が圧縮されるとともに伸側室R1が拡大されるが、ピストン速度が低速のうちはリーフバルブ13もリリーフ弁6も開弁しないので、圧側室R2内の流体は、リーフバルブ13の外周に設けたオリフィスとして機能する切欠13aのみを通過して伸側室R1へ移動される。したがって、このときの緩衝器Dの減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)は、
図2に示すように、ピストン速度に対して圧側の減衰力がピストン速度の二乗に比例するように立ち上がるオリフィス特有の二乗特性となり、この低速領域では、減衰係数は比較的大きいものとなる(
図2中a区間)。なお、減衰係数は、
図2の減衰特性の傾きとして把握される。
【0036】
また、低速を超える中速度となると、流体は、リーフバルブ13の外周を撓ませて、リーフバルブ13と弁座11と間の隙間を通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。そして、リーフバルブ13と弁座11との間の隙間の面積が減衰通路3の流路面積と等しくなるまでは、緩衝器Dの減衰特性はリーフバルブ13による特性に支配される(
図2中b区間)。リーフバルブ13と弁座11との間の隙間の面積が減衰通路3の流路面積よりも大きくなると、緩衝器Dの減衰特性は減衰通路3による特性に支配される(
図2中c区間)。つまり、b区間では、リーフバルブ13と弁座11との間の隙間の面積の方が減衰通路3の流路面積よりも小さいので、一番流路面積が小さくなるのは、リーフバルブ13と弁座11との間の隙間の面積となり、リーフバルブ13と弁座11とで流体の流れが絞られるため、緩衝器Dの減衰特性は、リーフバルブ13で流体の流れを絞る特性、すなわち、圧力室R2の圧力上昇に比例的な減衰力を発生する特性が支配的となる。他方、c区間では、ピストン速度が高くなって圧側室R2内の圧力も高くなるので、リーフバルブ13の撓み量も大きくなるものの、リーフバルブ13と弁座11との間の隙間の面積が減衰通路3の流路面積よりも大きくなるので、一番流路面積が小さくなるのは、減衰通路3の流路面積となってこの減衰通路3によって流体の流れが絞られるため、緩衝器Dの減衰特性は、減衰通路3で流体の流れを絞るポート特性が支配的となる。なお、b区間における減衰係数がc区間における減衰係数よりも大きいのは、b区間ではリーフバルブ13が撓み量に応じて減衰通路3を閉じようとする復元力が働いているからである。
【0037】
つづいて、ピストン速度が高速領域に達して、圧側室R2の圧力がリリーフ弁6の開弁圧を超えてリリーフ弁6が開弁する場合について説明する。この場合、リーフバルブ13だけでなくリリーフ弁6も開弁して、圧側室R2と伸側室R1とが減衰通路3だけでなくバイパス5によっても連通され、流路面積が大きくなる。これによって、圧側室R2の圧力がバイパス5を介しても伸側室R1へ逃げることになり、ピストン速度の上昇に対して圧側室R2の圧力上昇が抑制される。その結果、ピストン速度が高速領域にあるときの緩衝器Dの減衰特性は、
図2に示すように、ピストン速度の増加に対して比例はするものの低中速領域より減衰係数は小さくなり、減衰特性の傾きが小さくなる(d区間)。
【0038】
このように、本発明の減衰バルブVを適用した緩衝器Dにあっては、収縮作動時においてピストン速度が低中速度領域では、オリフィスとして機能する切欠13a、リーフバルブ13および減衰通路3によって充分な減衰力を発揮することができる一方、ピストン速度が高速領域にある場合、圧側室R2内の圧力上昇が抑制されて、緩衝器Dの圧側減衰力が過剰となることがない。よって、本発明の減衰バルブVによれば、全ての速度領域において車両における乗り心地を満足させることができる。そして、本発明の減衰バルブVでは、たとえば、この車両が走行中に路面上の突起に乗り上げるなどして、車輪に突き上げる衝撃的振動が入力されても、緩衝器Dの圧側減衰力が過剰とならないので、上記衝撃的振動の車体への伝達を絶縁するので、効果的にインパクトショックを低減することができる。したがって、本発明の減衰バルブVによれば、緩衝器Dの収縮作動の際に減衰力低減効果を発揮することができ、車両の乗心地を向上することができる。
【0039】
また、本発明の減衰バルブVは、バイパス5が、ピストンロッド4の一端から開口してピストンロッド4の軸方向へ伸びる弁孔5aとピストンロッド4の側部から開口して弁孔5aへ通じる横孔5bとで構成され、リリーフ弁6が、弁孔5a内に設けた環状弁座16と、弁孔5a内に摺動自在に挿入される弁体17と、背圧室P内に挿入される附勢ばね18と、ピストンロッド4に設けられて背圧室Pを伸側室R1へ連通する絞り19とを備えており、バイパス5もリリーフ弁6もピストンロッド4内に設けられるので、これらが緩衝器Dのストローク長に影響することがない。よって、本発明の減衰バルブVによれば、緩衝器Dのストローク長を短くしてしまう不都合を生じないので、緩衝器Dを限られた搭載スペースしかない車両へも搭載させることができる。
【0040】
また、リリーフ弁6の開弁後の弁体17の環状弁座16からの後退変位量は、附勢ばね18のばね定数以外にも、背圧室P内の圧力を制御してやることでリリーフ弁6の開弁後の緩衝器Dの減衰特性を調節することができる。この背圧室P内の圧力の制御は、絞り19が通過流体に与える抵抗の大きさによって行われ、具体的には絞り19の流路面積で行う。したがって、この実施の形態の減衰バルブVにあっては、予め、絞り19の流路面積を狙った減衰特性を実現するような面積に設定することで減衰特性のチューニングを行うことができる。なお、附勢ばね18のばね定数のみで減衰特性をチューニングすると、リリーフ弁6の開弁後の減衰係数の傾きを変更するだけでなく、リリーフ弁6の開弁圧も変更されてしまうので、附勢ばね18の自然長を変更するか、弁体17或いは背圧室Pの全長を変更して附勢ばね18の介装スペースの全長を変更する必要がある。しかし、このような変更は、煩雑であるため、背圧室Pと絞り19を設けて減衰特性をチューニングする方が狙った減衰特性を実現しやすい。
【0041】
また、絞り19を設けることで、背圧室P内の圧力で弁体17の後退を抑制することができるから、減衰特性のc区間とd区間の変曲点での傾きの変化が滑らかとなり、減衰力の急変を緩和することができる。
【0042】
このように、絞り19の流路面積で背圧室P内の圧力を制御することができるから、
図3に示した、一実施の形態の一変形例の減衰バルブV1のように、絞り19の代わりに、可変絞り20を設けることで、リリーフ弁6の開弁後の減衰特性を好みに合ったものに調節することができる。なお、
図3では、減衰バルブV1以外の緩衝器の構成は同一であるので、減衰バルブV1以外を図中で省略している。
【0043】
具体的には、可変絞り20は、ピストンロッド4の伸側室R1に臨む側方から開口して背圧室P内へ連通する透孔21と、背圧室P内に周方向に回転自在に挿入されて透孔21に対向可能な絞り孔23a,23bを備えた筒状弁体22と、筒状弁体22に連結されピストンロッド4内に挿通されてピストンロッド4の他端となる
図3中上端に設けたアジャスタ24の回転操作で回転させることが可能なコントロールロッド25とを備えている。
【0044】
筒状弁体22は、この例では、筒状弁体22の内外を連通するとともに開口面積の異なる二つの絞り孔23a,23bを備えて、弁孔5aの内周に外周を摺接させている。絞り孔23a,23bは、筒状本体22の同一周上に設けられており、筒状弁体22を周方向に回転させて透孔21に絞り孔23a,23bのいずれか一方を対向させることができるようになっている。また、この例では、筒状弁体22は、有頂筒状とされていて、頂部22aと弁体17との間に附勢ばね18を介装することで、筒状弁体22が弁孔5aの底部へ押しつけられて、背圧室P内で軸方向に位置決められていて、筒状弁体22が軸方向へずれてしまって透孔21へ絞り孔23a,23bを対向不能となることがないように配慮されている。
【0045】
また、コントロールロッド25は、ピストンロッド4に設けた弁孔5aの底部から開口して上端となる他端へ通じるコントロールロッド挿通孔4c内に回転自在に挿入されている。そして、コントロールロッド25は、一端が筒状弁体22に連結され、他端がピストンロッド4の他端となる上端に周方向に回転自在に取り付けたアジャスタ24に連結されている。そのため、アジャスタ24の回転操作によってコントロールロッド25を介して筒状弁体22を背圧室P内で周方向へ回転させることができるようになっている。
【0046】
したがって、この実施の形態の減衰バルブV1にあっては、アジャスタ24を回転操作して、開口面積が大きな絞り孔23aを透孔21に対向させた場合と、開口面積が小さな絞り孔23bを透孔21に対向させた場合とで比較すると、絞り孔23aを対向させて場合の方が、弁体17の環状弁座16からの後退時において、弁体17の後退に対する背圧室Pの圧力上昇度合いが小さくなる。したがって、
図4に示すように、リリーフ弁6が開弁した後は、絞り孔23aを透孔21へ対向させた場合の緩衝器Dの減衰特性e(図中実線)が、絞り孔23bを透孔21へ対向させた場合の緩衝器Dの減衰特性f(図中破線)よりも減衰係数が小さくなる。なお、筒状弁体22の外周であって絞り孔23a,23b間を透孔21へ対向させる場合には、背圧室Pは伸側室R1と隔絶されるので、弁体17はロック状態となって後退しえなくなるので、バイパス5は遮断状態に維持される。この場合の緩衝器Dの減衰特性は、
図4中の一点鎖線で示すように、減衰力が一番大きくなる。
【0047】
また、弁体17がある程度環状弁座16から後退変位した際に、筒状弁体22の
図2中下端を弁体17に当接させて、弁体17のそれ以上の後退変位を規制することもできる。この場合は、弁体17が筒状弁体22に当接するまで後退すると、それ以上後退できなくなるので、減衰特性のe区間或いはf区間の後に、減衰係数を高める(減衰特性の傾きが大きくなる)区間を設けることができる。
【0048】
このように、可変絞り20を設けることで、リリーフ弁6の開弁後の減衰特性における減衰係数を簡単に調節することができ、ユーザーの好みに合った減衰特性を簡単に実現することができる。なお、上記したところでは、筒状弁体22に二つの絞り孔23a,23bを設けて、緩衝器Dの減衰特性を、
図4に示すように、透孔21を閉じ切りにする場合を含めて、三段に切換えることができるようになっているが、絞り孔の設置数を増やして四段以上の切換えができるようにしてもよいし、また、たとえば、
図5に示すように、筒状弁体22に周方向に沿って軸方向長さが徐々に変化する周方向に長い絞り孔23cを設けておいて、筒状弁体22を回転させることで透孔21と絞り孔23cとが重なる面積を徐々に変化させることができるようにしておき、無段階に緩衝器Dの減衰特性が変化するようにしてもよい。なお、ピストンロッド4に設ける透孔をピストンロッド4に周方向に沿って軸方向長さが徐々に変化する長孔とし、筒状弁体22に設けた絞り孔を上記長孔の任意の位置に対向させて透孔と絞り孔との重なる面積を変化させるようにしてもよい。
【0049】
なお、アジャスタ24の操作については、ユーザーが手動で行うようにしてもよいし、アクチュエータで回転操作するようにしてもよく、アクチュエータで回転操作する場合には、車体姿勢に応じてアクチュエータを制御する制御装置を設けるようにしてもよい。
【0050】
また、リリーフ弁6の弁体17は、上記したところでは、円錐状の弁頭17bを備えているが、これに限定されるものではなく、たとえば、弁頭に割を設けて環状弁座16内に弁頭を挿入し、弁体の環状弁座16からの後退によって割を通じてバイパス5を開放するものであってもよい。なお、リリーフ弁6が開弁すると流路面積を最大限に大きくような弁の採用も可能であるが、弁体17の環状弁座16からの離間する距離に応じて徐々に流路面積を大きくしていく弁体を採用することで、減衰特性に極端な変曲点ができることを防止でき、車両における乗り心地をより向上することができる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、減衰特性の変化を説明するために、ピストン速度に低速、中速および高速でなる区分を設けているが、これらの区分の境の速度はそれぞれ任意に設定することができ、この区分の設定に応じてリリーフ弁6の開弁圧を設定すればよい。つまり、中速と高速の区分をピストン速度が高い方へシフトする場合には、リリーフ弁6の開弁圧を高くすればよく、低い方へシフトする場合には、リリーフ弁6の開弁圧をそれに応じて低くすればよい。また、低速と中速の区分をピストン速度が高い方へシフトする場合には、リーフバルブ13の開弁圧を高くすればよく、低い方へシフトする場合には、リーフバルブ13の開弁圧をそれに応じて低くすればよい。
【0052】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。