(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667495
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ポジショナ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
F16K31/06 310Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-76183(P2011-76183)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-211600(P2012-211600A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2013年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩二
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−244825(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0071082(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
F15B 3/00
G05B 19/05
G08C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位側システムより一対の電線を介して直流の電気信号を受け、この直流の電気信号から自己の動作電源を生成する一方、その直流の電気信号の値に応じて調節弁の開度を制御するポジショナにおいて、
前記上位側システムから前記直流の電気信号に重畳して送られてくる交流の電気信号を受信し、この受信した直流の電気信号に重畳されている交流の電気信号を抽出する電流入力型の通信回路と、
前記通信回路の前段に設けられ、前記上位側システムからの直流の電気信号およびその直流の電気信号に重畳して送られてくる交流の電気信号が電圧信号である場合、この直流の電圧信号およびこの直流の電圧信号に重畳されている交流の電圧信号を電流に変換して前記通信回路に送る電圧電流変換回路とを備え、
前記電圧電流変換回路は、所定の電流値以上の電流が流れるのを防止する過電流防止回路を備える
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項2】
請求項1に記載されたポジショナにおいて、
前記電圧電流変換回路に対して並列に接続されたバイパス回路と、
前記バイパス回路の前記電圧電流変換回路への並列接続を有効/無効とする切替スイッチと
を備えることを特徴とするポジショナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたポジショナにおいて、
前記電圧電流変換回路は、
前記通信回路へ至るライン中に挿入接続され、
前記ラインの前記上位側システム側にそのコレクタが接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのエミッタにその一端が接続され、前記ラインの前記通信回路側にその他端が接続された第1の抵抗と、
前記第1のトランジスタのコレクタにその一端が接続され、前記第1のトランジスタのベースにその他端が接続された第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端にそのコレクタが接続され、前記第1のトランジスタのエミッタにそのベースが接続され、前記第1の抵抗の他端にそのエミッタが接続された第2のトランジスタと
を備えることを特徴とするポジショナ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載されたポジショナにおいて、
前記電圧電流変換回路は、
前記通信回路へ至るライン中に挿入接続され、
前記ラインの前記上位側システム側にそのコレクタが接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのエミッタにその一端が接続された第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端にそのアノードが接続され、前記ラインの前記通信回路側にそのカソードが接続されたダイオードと、
前記第1のトランジスタのコレクタにその一端が接続され、前記第1のトランジスタのベースにその他端が接続された第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端にそのコレクタが接続され、前記第1のトランジスタのエミッタにそのベースが接続され、前記第1の抵抗の他端にそのエミッタが接続された第2のトランジスタと
を備えることを特徴とするポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上位側システムより一対の電線を介して直流の電気信号を受け、この直流の電気信号から自己の動作電源を生成する一方、その直流の電気信号の値に応じて調節弁の開度を制御するポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のポジショナは、上位側システムより一対の電線を介して送られてくる4〜20mAの電流(直流の電流信号)で動作するように設計されている。例えば、調節弁を比例弁とし、上位側システムより4mAの電流が送られてきた場合には比例弁の開度を0%とし、20mAの電流が送られてきた場合には比例弁の開度を100%とする。
【0003】
この場合、上位側システムからの供給電流は4mA(下限電流値)から20mA(上限電流値)の範囲で変化するので、ポジショナの内部回路は上位側システムから供給される電流値として常に確保することの可能な4mA以下の電流より自己の動作電源を生成する。
【0004】
ポジショナには上位側システムから調節弁に対する設定開度値が入力される。また、開度センサを介して調節弁の実開度値も得られる。したがって、ポジショナでは、調節弁の設定開度値と実開度値との関係を演算することによって、調節弁の異常診断や自己の異常診断などが可能である。このような異常診断機能をポジショナに設ければ、別途異常診断装置を設けなくてもよく、低コストでシステムの機能アップを図ることが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような理由から、近年、ポジショナには、調節弁の弁開度制御という本来の機能に加えて、弁開度発信機能や調節弁の異常診断や自己の異常診断などの結果を上位側システムへ送信する機能を有するポジショナが提案されている。
図8に上位側システムとの間の通信機能を有するポジショナを用いたシステムの要部の構成を示す。
【0006】
図8において、1はポジショナ、2はポジショナ1と2線式の伝送路(一対の電線)L1,L2を介して接続された上位装置、3は伝送路L1,L2間に必要に応じて接続される通信装置、4は上位側システム、5は調節弁(比例弁)である。ポジショナ1は、本体回路1−1と、通信回路1−2と、定電圧回路1−3とを備えている。なお、この例の場合、上位側システム4は、上位装置2と通信装置3とで構成されている。
【0007】
このシステムにおいて、上位装置2は、伝送路L1,L2を介して、4〜20mAの直流の電流信号Iをポジショナ1へ送る。ポジショナ1において、定電圧回路1−3は、上位装置2から送られてくる直流の電流信号Iより定電圧Vposを生成し、通信回路1−2や本体回路1−1へ供給する。本体回路1−1は、上位装置2から送られてくる直流の電流信号Iの値に応じて、比例弁5の開度を制御する。また、比例弁5の異常診断や自己の異常診断などを行う。
【0008】
通信装置3は、ポジショナ1への直流の電流信号Iに、通信用の交流の電流信号Ifを重畳させる。ポジショナ1において、通信回路1−2は、電流入力型の通信回路であり、直流の電流信号Iに重畳されている交流の電流信号Ifを抽出し、この交流の電流信号Ifによって通知される通信装置3からの指令やデータを本体回路1−1へ伝える。また、通信回路1−2は、伝送路L1,L2の線間電圧を変化させることによって、本体回路1−1からの比例弁5の異常診断結果や自己の異常診断結果を通信装置3へ伝える。このような通信方式は特許文献2に開示されている。
【0009】
ところで、最近では、比例弁のみならず、オン/オフ弁でも異常診断を行いたいという要求があり、ポジショナが適用される場合も見られる。但し、オン/オフ弁は全開と全閉の2位置制御でよいので、通常は電磁弁が使用されるのが一般的であり、またその電磁弁を動作させるために一対の電線からは直流の電圧信号(通常、0〜24V)が入力されるようになっている。そこで、このようなオン/オフ弁の弁開度を制御するポジショナの内部回路は電圧入力対応にする必要がある。
【0010】
例えば、特許文献2において、一方の通信装置をポジショナ、他方の通信装置を上位装置とすれば、上位装置からは所定の範囲で変動する直流の電圧信号に通信用の交流の電圧信号を重畳させてポジショナ側に送信し、ポジショナ側は上位装置から受信した電圧信号のうち直流の電圧信号を抽出して、この直流の電圧信号の値に基づいて調節弁の開度を制御するとともに、上位装置へ帰還する線路電流を変化させることで、上位装置側に弁開度や異常診断結果を伝えることができる。この場合、ポジショナは、電圧入力対応となり、オン/オフ弁への適用が可能となる。また、上位側システムの電源を電流出力タイプ(AO:アナログアウトプット)ではなく、電圧出力タイプ(DO:デジタルアウトプット)として、比例弁の開度を制御することも可能となる。
【0011】
なお、電圧出力タイプの電源を供給する方式は、フィールドバス方式と呼ばれており(例えば、特許文献3参照)、例えば9〜32Vの電圧を上位側システムより供給する。
また、以下では、直流の電流信号を入力するタイプのポジショナを電流入力型のポジショナと呼び、直流の電圧信号を入力するタイプのポジショナを電圧入力型のポジショナと呼ぶ。
【0012】
この場合、ポジショナを製造供給するメーカは、上位側システムとの間の通信機能を確保しつつ、オン/オフ弁に対応したり、フィールドバス方式に対応したりするために、電流入力型のポジショナと電圧入力型のポジショナの2機種を用意しなければならず、製造上の負担となる。また、電圧入力型のポジショナは、一般的な電流入力型のポジショナとは異なるものとして用意しておかなければならないので、高価となる。
【0013】
そこで、この負担を解消すべく、1機種で、アナログ伝送路からの電流入力にもフィールドバス伝送路からの電圧入力にも対応することが可能な兼用型のポジショナが特許文献4に開示されている。この兼用型のポジショナでは、アナログ伝送路と接続するインタフェース回路(I/Vブロック)と、フィールドバス伝送路と接続するインタフェース回路(FBブロック)とを設け、このI/VブロックとFBブロックとを必要に応じて切り替えて使用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平1−141202号公報
【特許文献2】特開昭61−070827号公報
【特許文献3】特開2004−226092号公報(特許第4185369号)
【特許文献4】特開2002−367069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献4に開示されている兼用型のポジショナでは、I/VブロックとFBブロックとを別個に設けなければならず、その構成が複雑となって、電流入力型のポジショナや電圧入力型のポジショナよりも高価になってしまうという問題がある。
【0016】
そこで、本出願人は、
図8に示した電流入力型のポジショナ1(1A)において、通信回路1−2の前段に固定抵抗器1−4(
図9参照)を設けることを考えた。なお、このポジショナ1(1B)を用いたシステムにおいて、上位側装置2(2B)は直流の電圧信号Vをポジショナ1Bへ送る。また、通信装置3(3B)はポジショナ1Bへの直流の電圧信号Vに通信用の交流の電圧信号Vfを重畳させる。また、調節弁5(5B)は、電磁弁(オン/オフ弁)とする。
【0017】
このポジショナ1Bでは、上位装置2Bからの直流の電圧信号Vが抵抗値rの固定抵抗器1−4で電流に変換され、本体回路1−1へ送られる。これにより、本体回路1−1は、固定抵抗器1−4で変換された電流の値、すなわち直流の電流信号V/rの値に基づいて、調節弁5Bの開閉を制御する。なお、ラインL1には、電圧源側への通信信号の侵入を防ぐために、固定抵抗器1−4の抵抗値rよりも大きい負荷抵抗6を設ける。また、固定抵抗器1−4の抵抗値rは小さくし、交流の電圧信号Vfを電流の変化に変換する。
【0018】
しかし、このようなポジショナ1Bでは、負荷抵抗6を接続せずに電圧源側に誤って接続すると(
図10参照)、固定抵抗器1−4の抵抗値rが小さいために、ポジショナ1Bの内部回路へ過大電流が流れ、ポジショナ1Bが破損してしまう虞がある。
【0019】
そこで、
図11に示すように、固定抵抗器1−4の抵抗値をより大きな抵抗値Rとすることが考えられるが、このようにすると、交流の電圧信号Vfに対するインピーダンスが電源側に比較して高くなりすぎて、変換される電流が小さくなり、通信ができなくなってしまう。
【0020】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、一般的な電流入力型のポジショナに対する簡単な変更で、負荷抵抗を接続せずに電圧源側に接続しても過大電流が流れることがなく、また通信も支障なく行うことが可能な安価な構成の電圧入力型のポジショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような目的を達成するために本発明は、上位側システムより一対の電線を介して直流の電気信号を受け、この直流の電気信号から自己の動作電源を生成する一方、その直流の電気信号の値に応じて調節弁の開度を制御するポジショナにおいて、上位側システムから直流の電気信号に重畳して送られてくる交流の電気信号を受信
し、この受信した直流の電気信号に重畳されている交流の電気信号を抽出する電流入力型の通信回路と、通信回路の前段に設けられ、上位側システムからの直流の電気信号
およびその直流の電気信号に重畳して送られてくる交流の電気信号が電圧信号である場合、この直流の電圧信号およびこの直流の電圧信号に重畳されている交流の電圧信号を電流に変換して通信回路に送る電圧電流変換回路とを備え、電圧電流変換回路は、所定の電流値以上の電流が流れるのを防止する過電流防止回路を備えることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、上位側システムから直流の電圧信号(直流の電気信号)に重畳して交流の電圧信号(交流の電気信号)が送られてくると、電圧電流変換回路は、直流の電圧信号を直流の電流信号に変換し、交流の電圧信号を交流の電流信号に変換する。電圧電流変換回路で変換された交流の電流信号は電流入力型の通信回路
で抽出される。
【0023】
また、この発明によれば、負荷抵抗を接続せずにポジショナを電圧源側に誤って接続したような場合、内部回路へ過大電流が流れようとするが、この過大電流は過電流防止回路によって所定の電流値以下に抑えられる。
【0024】
なお、電圧電流変換回路に対して並列にバイパス回路を接続し、このバイパス回路の電圧電流変換回路への並列接続を有効/無効とする切替スイッチを設けるようにしてもよい。この場合、バイパス回路の電圧電流変換回路への並列接続を有効とすると、電圧電流変換回路が機能しなくなり、電流入力型のポジショナが得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、通信回路の前段に、上位側システムからの直流の電気信号が電圧である場合、この電圧を電流に変換して通信回路に送る電圧電流変換回路を設け、この電圧電流変換回路を過電流防止回路を備える構成としたので、一般的な電流入力型のポジショナに対する簡単な変更で、負荷抵抗を接続せずに電圧源側に誤って接続しても過大電流が流れることがなく、また通信も支障なく行うことが可能な安価な構成の電圧入力型のポジショナを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るポジショナの一実施の形態(実施の形態1)を用いたシステムの要部の構成を示す図である。
【
図2】このシステムにおけるポジショナの通信回路の前段に設けられた電圧電流変換回路の回路構成を示す図である。
【
図3】この電圧電流変換回路の入力電圧−電流特性を示す図である。
【
図4】この電圧電流変換回路にダイオードを付加した例を示す図である。
【
図5】電圧電流変換回路を設けたポジショナを負荷抵抗を接続せずに電圧源側に誤って接続した状態を示す図である。
【
図6】電圧電流変換回路に対して並列に切替スイッチを介してバイパス回路を設けた例(実施の形態2)を示す図である。
【
図7】電圧電流変換回路に並列に設けられたバイパス回路中の切替スイッチをオンとし電流入力型のポジショナとして使用した例を示す図である。
【
図8】上位側システムとの間の通信機能を有するポジショナ(一般的な電流入力型のポジショナ)を用いたシステムの要部の構成を示す図である。
【
図9】電流入力型のポジショナの通信回路の前段に固定抵抗器(抵抗値小)を設けて電圧入力型のポジショナに変更しようとした例を示す図である。
【
図10】このポジショナを負荷抵抗を接続せずに電圧源側に誤って接続した状態を示す図である。
【
図11】電流入力型のポジショナの通信回路の前段に固定抵抗器(抵抗値大)を設けて電圧入力型のポジショナに変更しようとした例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係るポジショナの一実施の形態(実施の形態1)を用いたシステムの要部の構成を示す図である。同図において、
図9と同一符号は
図9を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0028】
このシステムでは、
図9に示したシステムと比較して分かるように、ポジショナ1(1C)に抵抗1−4に替えて電圧電流変換回路1−5を設けている。この電圧電流変換回路1−5には、所定の電流値以上の電流が流れるのを防止する過電流防止回路CBが組み込まれている。
【0029】
図2に電圧電流変換回路1−5の回路構成を示す。この電圧電流変換回路1−5は、通信回路へ至るラインLA中に挿入接続され、ラインLAの上位側システム側LA1にそのコレクタが接続された第1のトランジスタQ1と、第1のトランジスタQ1のエミッタにその一端が接続され、ラインLAの通信回路側LA2にその他端が接続された
抵抗値r1の第1の抵抗R1と、第1のトランジスタQ1のコレクタにその一端が接続され、第1のトランジスタQ1のベースにその他端が接続された
抵抗値r2の第2の抵抗R2と、第2の抵抗R2の他端にそのコレクタが接続され、第1のトランジスタQ1のエミッタにそのベースが接続され、第1の抵抗R1の他端にそのエミッタが接続された第2のトランジスタQ2とから構成されている。
【0030】
なお、この実施の形態において、抵抗R1の抵抗値r1は20Ω、抵抗R2の抵抗値r2は10kΩとされており、後述するトランジスタQ1,Q2の動作によって、
図3に示すように、30mAまではリニアに電流を流すが、30mAになった時点で、その電流を30mAで飽和させ、それ以上の電流が流れないようにする。すなわち、30mAを設定電流値(遮断電流)とし、設定電流値以上の電流が流れないように制限する。
【0031】
この場合、電圧電流変換回路1−5では、トランジスタQ1→抵抗R1の経路で電流が流れる。また、この電圧電流変換回路1−5において、抵抗R1は電圧を電流に変換する役割を果たし、この抵抗R1に対して付加されたトランジスタQ1,Q2および抵抗R2よりなる回路構成が過電流防止回路CBを構成している。
【0032】
このポジショナ1Cでは、上位装置2Bからの直流の電圧信号Vが電圧電流変換回路1−5における抵抗R1で電流に変換され、本体回路1−1へ送られる。これにより、本体回路1−1は、電圧電流変換回路1−5で変換された電流の値、すなわち直流の電流信号V/r1の値に基づいて、調節弁5Bの開閉を制御する。
【0033】
また、このポジショナ1Cでは、通信装置3Bからの交流の電圧信号Vfが電圧電流変換回路1−5における抵抗R1で電流に変換され、電流入力型の通信回路1−2に送られる。この場合、ラインL1に接続されている負荷抵抗6によって、電源側への通信信号の侵入が防がれるとともに、電圧電流変換回路1−5において交流の電圧信号Vfがほゞそのままの形で交流の電流信号に変換され、電流入力型の通信回路1−2へ送られることになる。
【0034】
図5にこのポジショナ1Cを負荷抵抗6を接続せずに電圧源側に誤って接続した状態を示す。この場合、電圧電流変換回路1−5における抵抗R1の値が小さいため、ポジショナ1Cの内部回路へ大きな電流が流れ込もうとする。ここで、流れ込む電流が30mAに達する前は、トランジスタQ1にコレクタ電流が流れ、トランジスタQ2には流れない(20Ω×29mA=0.58Vで、トランジスタQ2のVbeが0.6V未満で動作できないため、トランジスタQ2には電流が流れない。)。これが30mAに達すると、20Ω×30mA=0.6Vとなり、トランジスタQ2のVbeが0.6Vとなり動作を開始し、トランジスタQ2のVce間が0Vに近づく。これはトランジスタQ1のVbc間を0Vに近づけて0.6V未満になることに等しいため、トランジスタQ1が動作しなくなる(OFF)。このバランスを保つことで、電圧電流変換回路1−5を通過する電流が30mA以上にならないように制御される。
【0035】
このようにして、本実施の形態では、
図8に示した一般的な電流入力型のポジショナ1Aの通信回路1−2の前段に過電流防止回路CBを組み込んだ電圧電流変換回路1−5を設けるだけで、負荷抵抗6を接続せずに電圧源に誤って接続しても過大電流が流れることがなく、また通信も支障なく行うことが可能な安価な構成の電圧入力型のポジショナ1Cを提供することができる。
【0036】
なお、この実施の形態では、電圧電流変換回路1−5での過電流の設定電流値を30mAとしたが、必ずしも30mAに限られるものではない。例えば、抵抗R1,R2の値を変えることによって、電圧電流変換回路1−5での過電流の設定電流値を50mAとする等としてもよい。
【0037】
また、
図4に示すように、電圧電流変換回路1−5において、抵抗R1とラインLAの通信回路側LA2との間にダイオードD1を設けるようにしてもよい。この場合、ダイオードD1のアノードを抵抗R1の他端に接続し、ダイオードD1のカソードをラインLAの通信回路側LA2に接続する。このようなダイオードD1を設けることによって、電圧源との接続の極性が誤って反対とされた場合でも、確実に過電流がポジショナ1Cの内部回路に流れることを防止することができる。
【0038】
〔実施の形態2〕
図1に示したポジショナ1Cは電圧入力型のポジショナとして使用される。このポジショナ1Cを電流入力型にするには電圧電流変換回路1−5を取り外さなければならない。そこで、実施の形態2では、
図6に示すように、電圧電流変換回路1−5に対して並列にバイパス回路(短絡回路)1−6を設け、このバイパス回路1−6中に切替スイッチ1−7を設けている。
【0039】
このポジショナ1(1D)を電圧入力型のポジショナとして使用する場合には、
図6に示されるように、切替スイッチ1−7をオフとする。これにより、バイパス回路1−6の電圧電流変換回路1−5への並列接続が無効とされ、電圧電流変換回路1−5が機能し、電圧入力型のポジショナとなる。
【0040】
これに対し、ポジショナ1Dを電流入力型のポジショナとして使用する場合には、
図7に示されるように、切替スイッチ1−7をオンとする。これにより、バイパス回路1−6の電圧電流変換回路1−5への並列接続が有効とされ、電圧電流変換回路1−5が機能しなくなり、電流入力型のポジショナとなる。
【0041】
なお、上述した実施の形態1,2では、調節弁5Bを電磁弁としたが、ポジショナ1C,1Dへの電源の供給方式をフィールドバス方式とし、調節弁5Bを比例弁とするようにしてもよい。
【0042】
また、上述した実施の形態1,2では、通信装置3を伝送路L1,L2間に必要に応じて接続するようにしたが、上位装置3とポジショナ1との間で通信が行われるシステムであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のポジショナは、調節弁の開度を制御する機器として、プロセス制御など様々な分野で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1(1A〜1D)…ポジショナ、1−1…本体回路、1−2…通信回路、1−3…定電圧回路、1−4…抵抗、1−5…電圧電流変換回路、1−6…バイパス回路、1−7…切替スイッチ、2(2A,2B)…上位装置、3(3A,3B)…通信装置、4…上位側システム、5(5A,5B)…調節弁、6…負荷抵抗、L1,L2…伝送路(一対の電線)、LA…ライン、LA1…ラインLAの上位側システム側、LA2…ラインLAの通信回路側、CB…過電流防止回路、Q1…第1のトランジスタ、Q2…第2のトランジスタ、R1…第1の抵抗、R2…第2の抵抗、D1…ダイオード。