【実施例1】
【0026】
図1は本発明が適用された自動血圧測定装置10の構成を説明するブロック図である。
図1において、カフ12は、一般的な上腕の血圧測定用圧迫帯であり、例えば患者の上肢の一部である上腕部14に巻回される。カフ12には、圧力センサ16、排気弁18および空気ポンプ20が軟質樹脂製チューブ24により接続されている。また、カフ12と圧力センサ16との間の軟質樹脂製チューブ24内には、ノイズ除去フィルタ22が挿着されている。上記カフ12は、布製帯状外袋内に軟質ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂製である膨張袋を収容した構造である。
【0027】
圧力センサ16は、カフ12内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SP
Bを静圧弁別回路26および脈波弁別回路28にそれぞれ供給する。静圧弁別回路26はローパスフィルタを備えており、圧力信号SP
Bに含まれる定常的な圧力すなわちカフ12の圧迫圧力である上腕圧迫圧PC
Bを表す上腕圧迫圧信号SC
Bを弁別して、その上腕圧迫圧信号SC
Bを図示しないA/D変換器を介して電子制御装置30へ供給する。脈波弁別回路28はバンドパスフィルタを備えており、圧力信号SP
Bの振動成分である上腕脈波信号SM
Bを弁別してその上腕脈波信号SM
Bを図示しないA/D変換器を介して電子制御装置30へ供給する。上記脈波弁別回路28により弁別される上腕脈波信号SM
Bは、上腕を通る動脈の拍動に同期してカフ12に発生する圧力振動すなわち上腕脈波を表す。
【0028】
排気弁18は、カフ12内を徐々に排気する定速排気弁、およびカフ12内を急速に排気する急速排気弁を含むように構成されている。空気ポンプ20は、上腕部14をカフ12により圧迫するために圧縮空気を圧送する装置であって、ダイヤフラムが電動機によって往復駆動されるダイヤフラムポンプのような容積式ポンプであり、その吐出圧には脈動ノイズが含まれる。ノイズ除去フィルタ22は、専らその脈動ノイズを除去するためのローパスフィルタの一種である。軟質樹脂製チューブ24は、カフ12と圧力センサ16、排気弁18、および空気ポンプ20それぞれとを接続する弾性変形可能な軟質の樹脂製の管である。
【0029】
電子制御装置30は、CPU32、ROM34、RAM36、および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されている。CPU32は、ROM34に予め記憶されたプログラムに従ってRAM36の一時記憶機能を利用しつつ信号処理を実行し、I/Oポートから駆動信号を出力することにより、排気弁18、空気ポンプ20を制御する。また、CPU32は、電子制御装置30に供給される上腕圧迫圧信号SC
Bおよび上腕脈波信号SM
Bに基づいて演算処理を実行することにより、脈拍に同期して逐次発生するたとえば上腕脈波信号SM
Bの間の差分が最大となるときのカフ圧に基づいて血圧値を決定する。
【0030】
血圧測定装置10は、さらに、入力装置38および出力装置40を備えている。上記入力装置38は、たとえば、測定開始時に操作されることにより起動信号STを電子制御装置30へ供給する。出力装置40は、印刷や画面表示などにより、電子制御装置30から送られて来るCPU32が決定した血圧値の情報を出力する。
【0031】
図2は、
図1の自動血圧測定装置10が備える排気弁18のコイル68の非通電時における断面図である。
図3は、
図1の自動血圧測定装置10が備える排気弁18のコイル68の非通電時における断面図であって
図2の断面図よりも手前の断面の図である。この排気弁18のケース42は、第2ケース部材46側に開口部を有する浅い直方体容器状の第1ケース部材44と、第1ケース部材44側に開口部を有する深い直方体容器状の第2ケース部材46とから構成され、互いに組み合わせることにより直方体状の収容空間が形成される。第1ケース部材44は、第2ケース部材46側に開口部を有し、その開口縁には第2ケース部材46に向って突き出す係合突起44bがその開口縁全周に形成されるとともに、その係合突起44bの先端には2つの係合爪44aが形成される。第2ケース部材46は、第1ケース部材44側に開口部を有し、その開口部内には係合突起44bを嵌め込むための嵌合溝46bが開口部全周に形成されるとともに、その嵌合溝46bの溝底には係合爪44aを係合するための2つの係合穴46aが嵌合溝46bの溝底を貫通して形成される。つまり、ケース42は、第1ケース部材44と第2ケース部材46とを組み立てるために、係合突起44bを係合溝46bに嵌め入れ、且つ、係合突起44bの係合爪44aを係合穴46aに係合させることによって一体的に組み立てられる。ここで、2つの係合爪44aおよび2つの係合穴46aは、それぞれのケース部材44および46において向かい合う面に1つずつ形成される。また、第2ケース部材46の一部を貫通して排気口48が設けられ、軟質樹脂製チューブ24で排気口48をカフ12と接続している。排気口48の第2ケース部材46の内側の開口縁には弁座50が形成され、後述する可動部材の一端に設けられる弁子52が弁座50に当接することによって排気口48が開閉される。また、第2ケース部材46の図示しない面であって係合穴46aが形成されない面において、コイル68に電子制御装置30からの出力電流を供給するために、コイル68をケース42外部に接続するための隙間が設けられている。
【0032】
ケース42の内部には、受部材70のコイル68が巻回された中空の巻芯の孔内に、一定間隔毎に平行に並べた同一形状の3つの柱状部を有するヨーク66の真ん中の柱状部を差込むことによって形成された電磁石と、弁座50に当接してそれを開閉するための弁子52とネオジム磁石等からなる板状形状の永久磁石56とを有する可動部材54とを、受部材70と可動部材54との間に支柱60および62をそれぞれ傾動可能に介在させた状態で永久磁石56とヨーク66との吸引力によって一体的に組み立てたものを1つのユニットとし、そのユニットが、可動部材54の永久磁石56のヨーク側の面とは反対側の面に、排気弁18の駆動力をより大きくするため、バックヨーク58を密着させ、且つ、可動部材54の移動方向の弁子52が設けられた方の一端にばね部材64を装着させた状態で収容されている。収容する際、ヨーク66および受部材70は、ヨーク66の基部および受部材70の基部が嵌込凹部44cおよび嵌込凹部46cに嵌め込まれるように収容されることで、ヨーク66がケース42内において固定される。
【0033】
可動部材54は、排気口48方向と排気口48から離れる方向とを往復移動する部材であり、その移動方向の一端において円柱形状の突出した部分を有し、その突出した部分には、その部分に覆い被さるような内部形状をしたゴム等の弾性材料からなる円柱形状の弁子52が装着されている。弁子52が弁座50と当接することにより、排気口48は閉められる。弁子52の弁座50と当接する面には、複数の小突起52aが設けられており、この小突起52aにより、弁子52が弁座50と完全に当接した状態から弁子52を離して排気を行う際に、弁子52の小突起52aの排気口48側の面のみが弁座50に当接した状態で排気を行うことが可能であるため、小突起52aが設けられていないときに比べて少ない量の排気も可能となり、排気量の微調整が可能となる。また、可動部材54は、その移動方向の一端付近において、ヨーク66側へ伸びた突部54cを有しており、可動部材54を排気口48から離れる方向へ付勢するためのばね部材64に当接する面を突部54cの排気口48側の面を含めた面に有している。突部54cの排気口48側の面の裏面には、可動部材54を排気口48から離れる方向へ移動した際に、ヨーク66の排気口48側の先端部の側面と当接する第1ストッパ面54aが形成されている。第1ストッパ面54aは、可動部材54の排気口48から離れる方向への移動を、永久磁石56の磁極の境目がヨーク66の真ん中の柱状部の中心部よりも排気口48側に位置するよう制限するためのものである。また、可動部材54は、可動部材54の移動方向の他端においてヨーク66側へ延びた突部54dを有しており、突部54dの排気口48側の面、すなわち第1ストッパ面54aと向かい合う面には、ヨーク66の排気口から離れる側の先端部の側面と当接する第2ストッパ面54bが形成されている。第1ストッパ面54aおよび第2ストッパ面54bは、ケース42外において可動部材54と支柱60および62とヨーク66、コイル68および受部材70からなる電磁石とをユニット化する際、永久磁石56の吸引力による可動部材54の移動方向への移動を一定範囲内に制限する。その際、第1ストッパ面54aは上記の様に、永久磁石56の磁極の境目がヨーク66の真ん中の柱状部の中心部よりも排気口48側に位置するように形成され、第2ストッパ面54bは永久磁石56がヨーク66を吸着する力により、可動部材54とヨーク66が接触しないように形成される。その結果、ユニット化する際やユニット化した後、ユニットが永久磁石56のヨーク66を吸引する力によって崩れることを防止できる。また、可動部材54は、ヨーク66側と反対側に永久磁石56を嵌め込むための窪みが設けられており、その窪みにより永久磁石56は接着剤など用いることなく可動部材54と一体となってケース42内を移動する。
【0034】
永久磁石56は、可動部材54の移動方向に長い板状を有しており、ネオジム磁石等の強力な磁力を有する磁石である。永久磁石56は、長手方向に一対の異なる磁極を有しており、ヨーク66側の表面において、たとえば、排気口48側がN極、排気口48から離れた側がS極である。また、厚み方向に磁化されているので、ヨーク66側と反対側の面において、たとえば、排気口48側がS極、排気口48から離れた側がN極となっている。磁極の境目は上述のように、ケース42内において、ヨーク66の真ん中の柱状部の中心部よりも排気口48側の位置になるように可動部材54に嵌め込まれた状態で設けられる。
【0035】
可動部材54に嵌め込まれた永久磁石56のヨーク66側の面とは反対側の面には、珪素鋼などの残留磁化の少ない磁性材料製部材である板状形状のバックヨーク58が密着させられる。バックヨーク58が密着させられることによって、磁気回路の磁束数が増加して永久磁石56のヨーク66側の面の磁力が強くなり、コイル通電時に、可動部材54は、大きな推力を得ることができる。また、可動部材54に装着された弁子52の周囲には、可動部材54を排気口48から離れる方向へ付勢するためのばね部材64が装着されている。ばね部材64は、第2ケース部材46の弁座50の周囲の部分と、可動部材54との間に介在しており、可動部材54を排気口48から離れる方向へ付勢する。ばね部材64としては、その付勢力が、非通電時において、可動部材54に嵌め込まれた永久磁石56がヨーク66を吸引することによって生じる排気口48側への推力よりも僅かに大きくなるようなばね部材64が用いられる。排気口48は、このばね部材64により、非通電時において全開の状態で維持される。また、通電時においてコイル68に流す励磁電流の量を調節することにより可動部材54の永久磁石56がヨーク66を吸引することによって生じる推力を調節し、ばね部材56を押圧し、排気弁18の排気流量を調節する。
【0036】
可動部材54に嵌め込まれた永久磁石56は、コイル68の通電時、非通電時に関わらず、ヨーク66を吸引する。支柱60および62は、このような吸引力によって発生する可動部材54の荷重を支持するために、
図3に示すように、可動部材54とヨーク66の基部側に設けられた受部材70との間であって、排気口48側の端部と排気口48から離れる側の端部にそれぞれ介在させられる。支柱60および62は、それぞれが一対の支柱であり、ヨーク66の両外の柱状部をそれぞれ挟むように一対の支柱60および62が設けられる。一対の支柱60および62はそれぞれ、一対の支柱の相互の長手方向の中間部を相互に連結するヨーク66の両外の柱状部の周りに設けられた連結部60aおよび62aを介して相互に一体的に連結されている。一対の支柱60および62は、先端ほど細くなる先細端部を両端に有し、その先細端部を受け入れるために、可動部材54には凹穴54eが、受部材70には凹穴70aが、それぞれ4つずつ形成されている。本実施例においては、一対の支柱60および62と、可動部材54の凹穴54eと、受部材70の凹穴70aとによって可動部材支持装置が形成されている。ここで、一対の支柱60および62の先細端部の先端の角度より、可動部材54および受部材70の凹穴54eおよび70aそれぞれの角度の方が大きくされているため、一対の支柱60および62は、可動部材54の移動方向に向かってスムーズに傾動可能である。可動部材支持装置は、可動部材54の弁子52が弁座50に当接して排気口48を閉じる位置(第1位置)から、可動部材54の弁子52が弁座50から離れて第1ストッパ面54aがヨーク66の排気口側の面に当接するときの位置(第2位置)まで傾動可能であるよう、可動部材54を支持している。
【0037】
ヨーク66は、前述のように、一定間隔毎に平行に並べた同一形状の3つの棒状の柱状部を有するとともに、3つの柱状部の永久磁石56とは反対側の端を相互に連結する連結部とからなる珪素鋼などの残留磁化の少ない磁性材料製部材である。ヨーク66の真ん中の柱状部に受部材70を介してコイル68を装着した電磁石は、コイル68に流す励磁電流を調節することによって、可動部材54をばね部材64の付勢力に抗して可動部材54を排気口48方向へ移動し、排気口48を通過する排気流量を調節する。可動部材54が排気口48方向へ移動する際、一対の支柱60および62が傾動するため、可動部材54の側方はヨーク66の3つの柱状部のそれぞれの先端部に接近する。3つの柱状部の先端部は、永久磁石56側に先端面を有し、先端面は永久磁石56の長手方向に設けられた磁極の両端部に僅かな間隔Gを隔てて対向している。受部材70は、コイル68が周囲に巻回され、ヨーク66の真ん中の柱状部が差し込まれる中空の棒状部と、一対の支柱60および62の先細端部を受け入れるための凹穴70aが形成され、ケース42への収容時にヨーク66の基部と共に嵌込凹部44cおよび46cに嵌め込まれる基部とを有している。ヨーク66の真ん中の柱状部が受部材70の棒状部に差し込まれた状態で、永久磁石56がヨーク66を吸引するので、ユニット化に際して、受部材70とヨーク66との間にネジや接着剤などを一切用いる必要はない。
【0038】
本実施例において、可動部材54の排気口48側への移動は、永久磁石56がヨーク66を吸引する力を利用して行われる。
図4乃至
図6は、本実施例で使用した永久磁石56、バックヨーク58およびヨーク66のみを取り出して、永久磁石56がヨーク66を吸引する際の永久磁石56の動作を説明する図である。ここで、
図4乃至
図6は、永久磁石56がヨーク66を吸引する際の永久磁石56の動作を説明するための図であるため、永久磁石56、バックヨーク58およびヨーク66以外で本実施例の発明を構成する要素は考慮していない。そのため、本実施例の永久磁石56の動作とは異なる。
【0039】
図4は、永久磁石56の磁極の境界がヨーク66の真ん中の柱状部の中央の延長上に位置する場合を示す図である。
図4において、ヨーク66は、永久磁石56によって磁化されるため、永久磁石56は、永久磁石56に力を加えることにより左右どちらにも動きうる不安定な状態にある。次に、
図5は、
図4に示すような状態の永久磁石56が図中左側に移動するような力を加え、永久磁石56が移動し始めて間もない状態を示す図である。
図5において、永久磁石56には、永久磁石56がヨーク66を吸引する力によって図中左側へ移動しようとする力が働いている。
図6は、
図5における図中左側へ移動しようとする力がなくなる位置まで永久磁石56が移動した後の安定した状態を示す図である。
【0040】
上記において
図4乃至
図6を用いて説明したように、本実施例において使用した永久磁石56は、磁化されたヨーク66を吸引し、安定する位置まで移動しようとするため、
図4に示す位置から
図6に示す位置まで移動する。このような原理を利用して、本実施例の可動部材54は排気口48に向って移動させられる。
【0041】
本実施例において実際には、可動部材54には、ばね部材64による付勢力が、永久磁石56のヨーク66を吸引することにより生じる推力とは反対方向に働くため、永久磁石56、バックヨーク58およびヨーク66のみで可動部材54を移動させることはできない。本実施例では、ヨーク66にコイル68を装着した電磁石のコイル68に流す励磁電流の量を増加させることによって電磁石の磁化を強くし、ばね部材64による付勢力を超える永久磁石56の吸引力を得ている。すなわち、コイル68の励磁電流の量を調節し、永久磁石56がヨーク66を吸引する力とばね部材64の付勢力との力のバランスを調節することによって、排気口48を通過する排気流量を調節している。このように、本実施例の発明は、永久磁石56、バックヨーク58およびヨーク66とコイル68からなる電磁石を上述のように配置し、コイル68に流す励磁電流の量を調節することによって、可動部材54を移動させ、排気弁の排気流量を調節する。ここで、バックヨーク58は、磁気回路を整えるとともに、永久磁石の磁力を強くするために用いられている。
【0042】
次に、本実施例における排気弁18を使用して行った解析結果を
図7乃至
図9に示す。
図7は、永久磁石56の磁極の境目がヨーク66の真ん中の柱状部の中央の延長上の位置(基準位置)にあり、コイル68の印加電圧を変化させたときの可動部材54の推力(N)の変化の関係を示す図である。
図7において、コイル68としては、Case1(コイル巻数:1000ターン)とCase2(コイル巻数:900ターン)の2つのコイルを使用して解析を行った。
図7から、コイルの巻数に関わらず、本実施例における基準位置での可動部材54の推力は、コイル68に掛けた電圧に比例することがわかる。
【0043】
図8および
図9は、可動部材54の基準位置からの移動距離が変化した場合の移動後の各位置における可動部材54の推力(N)の変化を示す図である。
図8は、
図7におけるCase1およびCase2のコイル68を使用し、それぞれ一定の電圧を加えた場合と、Case0(コイル巻数:0ターン)の場合とにおいて行った解析結果を示す。Case0の場合のように、コイルが巻き付けられてないときの可動部材54の推力は、
図4乃至
図6において説明したような永久磁石56のヨーク66を吸引することにより生じる推力と同じである。
図8から、このような推力は、基準位置からの移動距離が離れるほど大きくなることがわかる。ここで、
図8におけるCase0の場合とは、コイルなしの場合であるため、Case0の場合の可動部材54の推力の値とCase1およびCase2のコイル68それぞれの非通電時における可動部材54の推力の値とは同じになり、また、本実施例におけるばね部材64の付勢力は、非通電時の可動部材54の推力よりも僅かに大きくしてあるので、Case0の場合の可動部材54の推力とばね部材64の付勢力とを足し合わせると、その値は零未満且つ零付近になる。よって、コイルありの場合の可動部材54の推力からコイルなしの場合の可動部材54の推力を差し引いた値が、排気弁18のケース42内の排気口48方向への推力の値に近い値だと言える。
【0044】
図9は、
図8のCase1およびCase2のコイル68それぞれに一定の電圧を印加した場合の推力からCase0の場合の推力をそれぞれ差し引いた印加電圧のみに基づく推力値を示す図である。すなわち、本実施例において、コイル68に一定の電圧を印加したときの排気弁18のケース42内の排気口48方向への推力の値に近い値を示す図である。
図9から、排気弁18のケース42内の排気口48方向への推力は、コイル68に掛ける電圧値が同じ場合には、コイルの巻数に関わらず、基準位置からの移動距離が離れても増減が小さいことがわかる。よって、可動部材54の位置に関わらず、
図7のような可動部材54の推力とコイル68に掛けた電圧との関係を用いて可動部材54の推力を調節することができる。
【0045】
上述のように、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、可動部材支持装置は、コイル68の非励磁状態において発生する可動部材54に固定された永久磁石56とヨーク66の先端部との間の磁気的吸引力に基づいて発生する可動部材54のそのヨーク66に向う荷重を支持し、その可動部材54とそのヨーク66の先端部との間に所定の隙間Gをその可動部材54の位置に拘らず形成するものである。このようにすれば、可動部材54と可動部材支持装置と電磁石とが永久磁石56とヨーク66の先端部との間の磁気的吸引力によって複数部品が一体的な1つのユニットとしてケース42内に設けられるので、組立工程が短くなるとともにネジや接着剤などが不要となり、熟練を要することなく組立てを容易に行うことができる。
【0046】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、可動部材支持装置は、可動部材54とヨーク66の基部側に設けられた受部材70との間にそれぞれ傾動可能に介在させられた複数本の支柱60および62を含むものである。このようにすれば、可動部材54と可動部材支持装置と電磁石とが永久磁石56とヨーク66との間の磁気的吸引力によって複数部品が一体的な1つのユニットとして準備されるので、組立工程が短くなるとともにネジや接着剤などが不要となり、熟練を要することなく組立てを容易に行うことができる。
【0047】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、複数本の支柱60および62は、先端ほど細くなる先細端部を両端に有し、可動部材54および受部材70には、支柱60および62の先細端部を受け入れる凹穴54eおよび70aそれぞれが形成され、その支柱60および62の先細端部がその可動部材54およびその受部材70に形成された凹穴54eおよび70aそれぞれに受け入れられることによって、その支柱60および62が傾動可能にその可動部材54とその受部材70との間に介在させられている。このようにすれば、永久磁石56によって相互に吸引されている可動部材54とヨーク66との間に、簡単な構造で支柱60および62を傾動可能に介在させることができるため、組立てを容易にすることができる。また、ケース42に負荷がかからないため、ケース42の薄肉化が可能であり、全体として小型化且つ軽量化することができる。
【0048】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、複数本の支柱60および62は、可動部材54の一端部を支持するための一対の支柱60と、その可動部材54の他端部を支持するための一対の支柱62とからなり、それら一対の支柱60および62はそれぞれ、相互の長手方向の中間部を相互に連結する連結部60aおよび62aを介して相互に一体的に連結されている。このようにすれば、各一対の支柱60および62が一体的に傾動することで可動部材54が移動可能に支持されるので、摺動部分が存在せず動作がよりスムーズになるとともに、耐久性が増す。また、ケース42内の部品点数が少なくなるため、熟練を要することなく組立てを容易に行うことができる。
【0049】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、永久磁石56は、可動部材54の移動方向に長く厚み方向に磁化されて長手方向において一対の異なる磁極が形成された板状部材であり、ヨーク66は、永久磁石56の長手方向に設けられた磁極の両端部に僅かな間隔Gを隔てて対向する先端面を有する複数本の棒状の柱状部と、その複数本の柱状部の永久磁石56とは反対側の端を相互に連結する連結部とからなる磁性材料製部材であり、コイル68は、複数本の柱状部の少なくとも1つに装着され、可動部材54は、そのコイル68の励磁電流の増加に伴って、可動部材54を第1位置へ向う推力が増加させられている。このようにすれば、コイル68の励磁電流に応じて可動部材54がケース42内をリニアに移動し、永久磁石56とヨーク66との間で極めて小さな距離を適切に保つことができるので、可動部材54の推力がどの位置でも安定し、可動部材54の推力を容易に制御することができる。
【0050】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、永久磁石56のヨーク66側の面とは反対側の面に、バックヨーク58が密着させられている。このようにすれば、バックヨーク58によって磁気回路の磁束数が増加するので、排気弁の駆動力をより大きくすることができる。
【0051】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、永久磁石56は、第2位置において、一対の異なる磁極の境界がヨーク66の中心から排気口48側へずらした位置となるように設けられる。このようにすれば、非通電時において、可動部材54に固定された永久磁石56とヨーク66との吸引により生じる可動部材54の推力が排気口48方向にのみ働くとともに、可動部材54の推力が、励磁電流増加時における可動部材54の推力の方向と同じ方向なので、排気弁18の通電時初期動作を安定させることができる。
【0052】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、可動部材54は、ヨーク66の排気口48側の先端部に当接する第1ストッパ面54aを有する。このようにすれば、ケース42内において、ヨーク66の中心から排気口48側へずらした位置となるように設けられた永久磁石56の一対の異なる磁極の境界が、第1ストッパ面54aによって排気口48から離れる側へずれるのを防止することができるので、排気弁18の通電時初期の動作を安定させることができる。
【0053】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、可動部材54は、ヨーク66の排気口48から離れる側に当接する第2ストッパ面54bを有する。このようにすれば、ケース42外において、可動部材54と可動部材支持装置と電磁石とをユニット化するときに可動部材54の移動方向への移動が一定範囲内に制限されるため、ユニットが永久磁石56の吸引力によって崩れることを防止できるので、組立てを容易にすることができる。
【0054】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、ばね部材64による第2位置へ向う付勢力は、非通電時において、永久磁石56がヨーク66を吸引することによって生じる第1位置へ向う推力より大きい。このようにすれば、非通電時において、可動部材54の推力を排気口48方向にのみ働かせつつ、可動部材54の位置を排気口48が開いた第2位置に維持することができるので、1ユニット化されたものを容易にケース42内に組付けできるとともに、排気弁18の通電時初期の動作を安定させることができる。
【0055】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、ケース42は、互いに組み合わせられて直方体状の収容空間を形成する2つのケース部材44および46から構成され、第1ケース部材44の開口縁には、先端に係合爪44aを有して第2ケース部材46に向って突き出す複数個の係合突起44bを有し、その第2ケース部材46の開口部内には、その係合突起44bを嵌め込むための複数個の嵌合溝46bと、係合爪44aを係合させるためにその嵌合溝46bの溝底にそれを貫通して形成した係合穴46aとを有し、その係合突起44bを嵌合溝46b内に嵌め入れ且つその係合突起44bの係合爪44aをその係合穴46aに係合させることによって一体的に組み立てられる。このようにすれば、ケース42を容易且つ強固に組み立てることができる。
【0056】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁18によれば、弁子52は、弾性材料からなり、その弁子52の弁座50に着座する面に複数の小突起52aを有する。このようにすれば、弁子52を弁座50から離して排気を行う際に、弁子52の小突起52aの排気口48側の面のみが弁座50に当接した状態で排気を行うことができるので、小突起52aが設けられていないときに比べて少ない量の排気も可能となり、排気量の微調整をすることができる。
【0057】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【実施例2】
【0058】
図10は、本発明の他の実施例における排気弁80のコイル68の非通電時における断面図であって、前述の実施例1の
図2および
図3に対応する図である。また、
図11は、
図10のXI-I−XI-I視断面図およびXI-II−XI-II視断面図両方を表す図である。なお、
図11中においてXI-II−XI-II視断面図の符号を括弧付きで表す。本実施例の排気弁80は、前述の実施例1における一対の支柱60および62と、可動部材54の凹穴54eと、受部材70の凹穴70aとによって形成される可動部材支持装置に代えて、吊下部材90および92と、可動部材88の凹穴88aおよび88bと、ケース82の第1ケース部材84の支持部84cおよび84dとによって形成される可動部材支持装置を有する。また、吊下部材90および92を設けるために、前述の実施例1における第1ケース部材44および第2ケース部材46からなるケース42に代えて、第1ケース部材84および第2ケース部材86からなるケース82を、可動部材54に代えて、可動部材88を有する。また、実施例1においてコイル68が巻回され、ヨーク66の真ん中の柱状部が差し込まれた受部材70の中空の棒状部に相当する巻芯94を有する。その他の部分は同様に構成されている。
【0059】
ケース82には、第1ケース部材84のヨーク66が設けられる側の壁とは反対側の壁に、可動部材88を支持する吊下部材90および92を第1ケース部材84に吊り下げる際に吊下部材90および92の通り道となる穴84aおよび84bが空けられており、更に、それらの穴84aおよび84bの内部には吊下部材90および92を吊り下げる際に吊下部材90および92を支持する円形状の凹部を有する支持部84cおよび84dが2つずつ形成されている。可動部材88には、吊下部材90および92に支持されるための円形状の凹穴88aおよび88bが2つずつ形成されている。
【0060】
吊下部材90は、第1ケース部材84に吊り下げられることによってケース82内に設けられており、第1ケース部材84の2つの支持部84cに対応する外向きに突き出た2つの円柱形状の吊下部90aを吊下部材90の両端に有している。また、吊下部材90は、可動部材88に嵌め込まれた永久磁石56の磁極の両端部がヨーク66の3つの柱状部の先端面と僅かな間隔Gを隔てて対向する状態で可動部材88が吊下部材90に支持されるように、可動部材88の2つの凹穴88aに対応する内向きに突き出た2つの支持部90bを有している。吊下部材90は、第1ケース部材84に吊り下げられた状態で吊下部90aの軸心aを中心に回動することによって、可動部材88が第1位置から第2位置まで移動するよう支持する。なお、吊下部材92は吊下部材90と同様の構成であるのでその説明を省略する。
【0061】
排気弁80の組立方法について説明する。まず、コイル68が巻回された中空の巻芯94の孔内に、ヨーク66の真ん中の柱状部を差込むことによって形成された電磁石と、吊下部材90および92とを、電磁石はヨーク66の基部が第1ケース部材84の嵌込凹部84eに嵌め込まれるように第1ケース部材84の第2ケース86側に設けられた開口部から第1ケース部材84内に収容し、吊下部材90および92は第1ケース部材84の支持部84cおよび84dに支持されるように第1ケース部材84の穴84aおよび84bを通って第1ケース部材84内に収容する。次に、永久磁石56およびバックヨーク58が嵌め込まれ、且つ、弁子52が装着された可動部材88を可動部材88の凹穴88aおよび88bが吊下部材90および92の支持部90bおよび92bにそれぞれ支持されるように第1ケース部材84内に収容する。そして、弁子52の周囲にばね部材64を装着した状態で第1ケース部材84と第2ケース部材86とのそれぞれの開口部を組み合わせることにより排気弁80は組み立てられる。排気弁80の可動部材88は、コイル68の通電時において可動部材88が排気口48側へ移動する際、可動部材88を支持する吊下部材90および92がそれらの吊下部90aおよび92aの軸心aおよびbを中心に回動することによって移動する。
【0062】
本実施例の排気弁80において、吊下部材90および92は前述の実施例と同様に可動部材88のヨーク66に向う荷重を支持し、可動部材88と可動部材支持装置と電磁石とがケース82内で1つのユニットとして設けられるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【0063】
上述のように、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁80によれば、可動部材支持装置は、可動部材88とケース82のヨーク66とは反対側の壁との間にそれぞれ回動可能に装着され、その可動部材88をケース82に吊り下げられた状態で支持する複数の吊下部材90および92を含むものである。このようにすれば、可動部材88と可動部材支持装置と電磁石とが永久磁石56とヨーク66の先端部との間の磁気的吸引力によって複数部品が一体的な1つのユニットとしてケース82内に設けられるので、組立工程が短くなるとともにネジや接着剤などが不要となり、熟練を要することなく組立てを容易に行うことができる。
【0064】
また、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁80によれば、複数の吊下部材90および92は、外向きに突き出た円柱形状の吊下部90aおよび92aと内向きに突き出た円柱形状の支持部90bおよび92bとを有し、ケース82は、その吊下部90aおよび92aを受け入れる凹穴84cおよび84dを有し、その凹穴84cおよび84dにその吊下部90aおよび92aが受け入れられることによって、吊下部材90および92がその吊下部90aおよび92aの軸心aおよびbを中心に回動可能に吊り下げられ、可動部材88は、支持部90bおよび92bを受け入れる凹穴88aおよび88bを有し、その凹穴88aおよび88bにその支持部90bおよび92bが受け入れられることによって、可動部材88が吊下部材90および92の回動に伴って移動可能に支持されている。このようにすれば、永久磁石56によって相互に吸引されている可動部材88とヨーク66との間に僅かな間隔Gを隔てて可動部材88を支持する吊下部材90および92を簡単な構造で設けることができるため、組立てを容易にすることができる。
【実施例3】
【0065】
図12は、本発明の他の実施例における排気弁100のコイル68の非通電時における断面図であって、前述の実施例1の
図2および
図3に対応する図である。
図12において、本実施例の排気弁100は、前述の実施例1における一対の支柱60および62と、可動部材54の凹穴54eと、受部材70の凹穴70aとによって形成される可動部材支持装置に代えて、複数本(本実施例では2本)のローラー102および104によって形成される可動部材支持装置を有する。また、前述の実施例2と同様に、実施例1においてコイル68が巻回され、ヨーク66の真ん中の柱状部が差し込まれた受部材70の中空の棒状部に相当する巻芯94を有する。その他の部分は同様に構成されている。
【0066】
ローラー102および104は、円柱状の棒材であり、可動部材54に嵌め込まれた永久磁石56の磁極の両端部とヨーク66の3つの柱状部の先端面との間の僅かな間隔Gを適切に保つために可動部材54とヨーク66との間に介在させられている。本実施例では、ローラー102および104は、可動部材54とヨーク66の3つの柱状部のうちの両端に位置する柱状部の先端面との間に介在させられている。永久磁石56とヨーク66の柱状部の先端面との間の僅かな間隔Gは、ローラー102および104の直径を調節することにより所望の間隔に設定される。可動部材54はコイル68の通電時にローラー102および104の回動とともに移動することによって永久磁石56とヨーク66との僅かな間隔Gを保ちつつ第1位置から第2位置までケース42内をリニアに移動する。
【0067】
排気弁100の組立方法について説明する。排気弁100は、コイル68が巻回された中空の巻芯94の孔内に、ヨーク66の真ん中の柱状部を差込むことによって形成された電磁石と、弁子52と永久磁石56とを有する可動部材54とを、ヨーク66と可動部材54との間にローラー102および104を転動可能に介在させた状態で永久磁石56とヨーク66との吸引力によって一体的に組み立てたものを1つのユニットとし、可動部材54の永久磁石56のヨーク66側の面とは反対側の面にバックヨーク58を密着させ、且つ、可動部材54の移動方向の弁子52が設けられた方の一端にばね部材64を装着させた状態で第1ケース部材44に収容した後、第1ケース部材44と第2ケース部材46との開口部をそれぞれ組み合わせることによって組み立てられる。
【0068】
本実施例の排気弁100において、ローラー102および104は前述の実施例と同様に可動部材54のヨーク66に向う荷重を支持し、可動部材54と可動部材支持装置と電磁石とが1つのユニットとして準備されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【0069】
上述のように、本実施例の自動血圧測定装置10の排気弁100によれば、可動部材支持装置は、可動部材54とヨーク66との間にそれぞれ転動可能に介在させられた複数のローラー102および104であり、それら複数のローラー102および104は、その側面がその可動部材54およびそのヨーク66に接する円柱形状の棒材であり、排気口48の開閉時の可動部材54の移動に伴って転動する。このようにすれば、可動部材54と可動部材支持装置と電磁石とが永久磁石56とヨーク66との間の磁気的吸引力によって複数部品が一体的な1つのユニットとして準備されるので、組立工程が短くなるとともにネジや接着剤などが不要となり、熟練を要することなく組立てを容易に行うことができる。
【0070】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明はその他の態様においても適用される。
【0071】
例えば上述の実施例では、上腕にカフ12を装着して血圧測定等が実施されるが、カフ12が装着される被圧迫部位は生体の一部であれば良く、例えば、手の指や手首に巻回された圧迫帯が用いられてもよい。
【0072】
また、上述の実施例では、2つの係合爪44aおよび2つの係合穴46aは、それぞれのケース部材44および46において向かい合う面に1つずつ形成されているが、2つ以上ずつ形成されてもよい。
【0073】
また、上述の実施例では、永久磁石56は、ヨーク66側の表面において、排気口48側がN極、排気口48から離れた側がS極であり、ヨーク66側と反対側の面において、排気口48側がS極、排気口48から離れた側がN極となっているが、N極とS極とが逆であってもよい。
【0074】
また、実施例1の一対の支柱60および62は2本に限られず、同様の作用効果を得ることができるならば本数の増減が可能である。
【0075】
また、上述の実施例では、コイル68は、受部材70又は巻芯94を介してヨーク66の真ん中の柱状部に装着されているが、少なくとも1つの柱状部に装着されればよい。
【0076】
また、
図12の実施例3では、転動体としてローラー102および104が用いられていたが、例えば、ボール(球体)などの他の形状の転動体が用いられてもよい。ボールが用いられる場合には、そのボールを案内するための可動部材54の移動方向の案内溝が、ヨーク66の柱状部の先端面および/または可動部材54の対向面に設けられる。
【0077】
その他、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更が加えられ得るものである。