(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の蓄電デバイスについて、リチウムイオンキャパシタとして実施した場合を例に挙げて説明する。
図1は、本発明に係るリチウムイオンキャパシタの一例における外観を示す平面図、
図2は、
図1に示すリチウムイオンキャパシタをX−Xで切断して示す説明用断面図である。
このリチウムイオンキャパシタは、互いに重ね合わせた外装フィルム21,22が、それぞれの外周縁部に沿って形成された接合部23によって相互に気密に接合されてなる外装容器20を有し、この外装容器20内には、電極ユニット10が収容されていると共に、電解液が充填されている。この例における電極ユニット10は、正極集電体11aを有する複数の矩形の正極電極シート11および負極集電体12aを有する複数の矩形の負極電極シート12がシート状のセパレータ13を介して交互に積層されて構成された積層体構造のものである。
【0012】
外装容器20の一端(
図1および
図2において左端)には、板状の正極電極端子30が、外装容器20の内部から接合部23を介して外装容器20の外部に突出するよう設けられ、外装容器20の他端(
図1および
図2において右端)には、板状の負極電極端子35が、外装容器20の内部から接合部23を介して外装容器20の外部に突出するよう設けられている。
外装容器20内において、正極電極端子30には、リード部31によって、正極電極シート11における正極集電体11aが電気的に接続され、負極電極端子35には、リード部36によって、負極電極シート12における負極集電体12aが電気的に接続されている。
そして、正極集電体11aと正極電極端子30とを電気的に接続するリード部31の表面には、
図3に示すように、保護膜32が形成されており、一方、負極集電体12aと負極電極端子35とを電気的に接続するリード部36の表面には、
図4に示すように、保護膜37が形成されている。
【0013】
<電極ユニット>
電極ユニット10において、正極電極シート11は、正極集電体11aの両面に正極活物質を含有してなる電極層11bが形成されて構成され、負極電極シート12は、負極集電体12aの一面または両面に負極活物質を含有してなる電極層12bが形成されて構成されており、正極電極シート11および負極電極シート12は、それぞれの電極層11b,12bがセパレータ13を介して互いに対向するよう積層されている。図示の例では、最上層および最下層に係る電極シートが負極電極シート12とされ、負極集電体12aの両面に電極層12bが形成されている。
また、電極ユニット10の上面には、セパレータ13を介して膜状のリチウムイオン供給源15が配置されている。このリチウムイオン供給源15は、リチウム極集電体16に圧着、蒸着または積重されており、このリチウム極集電体16は、負極電極端子35に電気的に接続されている。
本発明において、「正極」とは、放電の際に電流が流出し、充電の際に電流が流入する側の極を意味し、「負極」とは、放電の際に電流が流入し、充電の際に電流が流出する側の極を意味する。
【0014】
≪集電体≫
正極集電体11aおよび負極集電体12a(以下、両者を併せて「電極集電体」ともいう。)は、表裏面を貫通する孔を有する多孔材よりなるものであり、かかる多孔材の形態としては、パンチングメタル、金属網、発泡体、あるいはエッチング、電解エッチングにより貫通孔が形成された多孔質箔等が挙げられる。
電極集電体の孔の形状は、円形、矩形等の多角形、その他適宜の形状に設定することができる。また、電極集電体の厚みは、強度および軽量化の観点から、1〜50μmであることが好ましい。
【0015】
電極集電体の気孔率は、通常、10〜79%、好ましくは20〜60%である。ここで、気孔率は、[1−(電極集電体の質量/電極集電体の真比重)/(電極集電体の見かけ体積)]×100によって算出されるものである。
電極集電体の材質としては、一般に有機電解質電池などの用途で使用されている種々のものを用いることができる。負極集電体12aの材質の具体例としては、ステンレス、銅、ニッケル等が挙げられ、正極集電体11aの材質のとしては、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。
このような多孔材を電極集電体として用いることにより、リチウム極集電体16に積層されたリチウムイオン供給源15から放出されるリチウムイオンが電極集電体の孔を通って自由に各電極間を移動するので、負極電極シート12および/または正極電極シート11における電極層11b,12bにリチウムイオンをドーピングすることができる。
【0016】
また、本発明においては、電極集電体における少なくとも一部の孔を、脱落しにくい導電性材料を用いて閉塞し、この状態で、電極集電体の一面に、電極層11b,12bが形成されることが好ましく、これにより、電極の生産性を向上させることができると共に、電極集電体から電極層11b,12bが脱落することによって生じる蓄電デバイスの信頼性の低下を防止または抑制することができる。
【0017】
≪負極活物質≫
負極電極シート12における電極層12bは、リチウムイオンを可逆的に担持可能な負極活物質を含有してなるものである。
電極層12bを構成する負極活物質としては、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子数比(以下「H/C」と記す。)が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(以下、「PAS」という。)等を好適に用いることができる。
【0018】
≪正極活物質≫
正極電極シート11における電極層11bは、リチウムイオンおよび/または例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンを可逆的に担持できる正極活物質を含有してなるものである。
電極層11bを構成する正極活物質としては、例えば活性炭、導電性高分子、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であってH/Cが0.05〜0.50であるポリアセン系骨格構造を有するPAS等を用いることができる。
【0019】
≪電極層≫
負極電極シート12における電極層12bの厚みは、得られるリチウムイオンキャパシタに十分なエネルギー密度を確保されるよう正極電極シート11における電極層11bの厚みとのバランスで設計されるが、得られるリチウムイオンキャパシタの出力密度、エネルギー密度および工業的生産性等の観点から、負極集電体12aの一面に形成される場合では、通常、15〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0020】
正極電極シート11における電極層11bの厚みは、得られるリチウムイオンキャパシタに十分なエネルギー密度を確保されるよう負極電極シート12における電極層12bの厚みとのバランスで設計されるが、得られるリチウムイオンキャパシタの出力密度、エネルギー密度および工業的生産性等の観点から、正極集電体11aの一面に形成される場合では、通常、15〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0021】
≪電極層の形成方法≫
本発明に係るリチウムイオンキャパシタにおいて、負極電極シート12における電極層12bは、上記の炭素材料やPAS等の負極活物質を含有してなる材料を用いて負極集電体12a上に形成されるが、その方法は特定されず公知の方法を利用することができる。具体的には、負極活物質粉末、バインダーおよび必要に応じて用いられる導電性粉末が水系媒体または有機溶媒中に分散されてなるスラリーを調製し、このスラリーを負極集電体12aの表面に塗布して乾燥することによって、或いは上記スラリーを予めシート状に成形し、得られる成形体を負極集電体12aの表面に貼り付けることによって、電極層12bを形成することができる。
ここで、スラリーの調製に用いられるバインダーとしては、例えばSBR等のゴム系バンダーや、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの中では、バインダーとしてフッ素系樹脂が好ましい。
バインダーの使用量は、負極活物質の種類や電極形状等により異なるが、負極活物質に対して1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である。
【0022】
また、必要に応じて用いられる導電性粉末としては、例えばアセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等が挙げられる。この導電性粉末の使用量は、負極活物質の電気伝導度、電極形状等により異なるが、負極活物質に対して2〜40質量%の割合で用いることが好ましい。
【0023】
負極集電体12aに上記スラリーを塗工することによって、電極層12bを形成する場合には、負極集電体12aの塗工面に導電性材料の下地層を形成することが好ましい。負極集電体12aの表面にスラリーを直接塗工する場合には、負極集電体12aが多孔材であるため、スラリーが負極集電体12aの孔から洩れ出したり、あるいは負極集電体12aの表面が平滑でないため、均一な厚みを有する電極層12bを形成することが困難となることがある。そして、負極集電体12aの表面に下地層を形成することにより、孔が下地層によって塞がれると共に、平滑な塗工面が形成されるので、スラリーを塗工しやすくなると共に、均一な厚みを有する電極層12bを形成することができる。
【0024】
また、正極電極シート11における電極層11bは、負極電極シート12における電極層12bと同様の方法によって形成することができる。
【0025】
≪セパレータ≫
セパレータ13としては、電解液、正極活物質或いは負極活物質に対して耐久性があり、電解液を含浸することが可能な連通気孔を有する電気伝導性の小さい多孔体等を用いることができる。
セパレータ13の材質としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース/レーヨン、エンジニアプラスチック・スーパーエンジニアプラスチック等の熱可塑性樹脂、ガラス繊維、その他公知のものを用いることができる。これらの中では、セルロース/レーヨンが耐久性および経済性の点で好ましい。
また、セパレータ13の厚みは特に限定されないが、通常、10〜50μm程度が好ましい。
【0026】
≪リチウムイオン供給源≫
リチウムイオン供給源15の体積は、負極電極シート12の電極層12bおよび正極電極シート11の電極層11bにドーピングされるリチウムイオンの量を考慮して適宜定められるが、正極電極シート11と負極電極シート12とを短絡させた後における正極電極シート11の電位が2.0V以下となるように、リチウムイオンがドーピングされる量に設定することが好ましい。
また、リチウムイオン供給源15の厚みは、例えば100〜300μmである。
【0027】
≪リチウム極集電体≫
リチウム極集電体16としては、リチウムイオン供給源15を構成するリチウム金属が圧着しやすく、必要に応じてリチウムイオンが通過するよう、電極集電体と同様な多孔構造のものを用いることが好ましい。また、リチウム極集電体16の材質は、アルミニウム、銅、ステンレス等のリチウムイオン供給源15と反応しないものを用いることが好ましい。
また、リチウム極集電体16として、銅メッシュ等の導電性多孔体を用いる場合には、リチウムイオン供給源15を構成するリチウム金属の少なくとも一部、特に80質量%以上が、リチウム極集電体16の孔に埋め込まれていることが好ましく、これにより、リチウムイオンが負極電極シート12に担持された後も、リチウム金属の消失によって正極電極シート11および負極電極シート12の間に生じる隙間が少なくなり、得られるリチウムイオンキャパシタの信頼性をより確実に維持することができる。
また、リチウム極集電体16の厚みは、10〜200μm程度であることが好ましい。
【0028】
<リード部>
正極集電体11aに電気的に接続されるリード部31の材質としては、前述の正極集電体11aの材質として例示したものを用いることができ、一方、負極集電体12aに接続されるリード部36の材質としては、前述の負極集電体12aの材質として例示したものを用いることができる。
リード部31,36の厚みは、1〜50μmであることが好ましく、また、リード部31,36の幅は、10〜180mmであることが好ましい。
【0029】
正極集電体11aに電気的に接続されるリード部31は、当該正極集電体11aにおける正極電極端子30側の一縁に連続して一体に形成されていてもよく、例えば正極集電体11aにその一縁から突出する接続タブを形成することによって、当該接続タブに溶接等によって固定されていてもよい。
また、負極集電体12aに電気的に接続されるリード部36は、当該負極集電体12aにおける負極電極端子35側の一縁に連続して一体に形成されていてもよく、例えば負極集電体12aにその一縁から突出する接続タブを形成することによって、当該接続タブに溶接等によって固定されていてもよい。
【0030】
図示の例では、リード部31,36の各々には、屈曲部分31a,36aが形成されている。このように、リード部31,36の各々に少なくとも1つ以上の屈曲部分31a,36aが形成されることによって、リチウムイオンキャパシタのコンパクト化を図ることができる。
【0031】
<保護膜>
保護膜32,37は、リード部31,36における露出する表面全面に形成されていても、一部の表面に形成されていてもよいが、電極層11b,12bとの境界Bを含む表面領域を被覆するよう形成されていることが好ましい。
また、保護膜32,37は、屈曲部分31a、36aを含む表面領域を被覆するよう形成されることが好ましく、これにより、一層効果的にリード部31,36に生じる金属疲労を緩和させることが可能となる。
また、保護膜32,37は、電極層11b,12bと重畳しないように形成されていることが好ましい。また、保護膜32、37が電極層11b,12bに重畳する場合は、保護膜32、37によって被覆される電極層11b,12bの面積をできるだけ小さくして、電極層11b,12bの有効面積への影響をできるだけ小さくすることが好ましい。具体的には、重畳する電極層11b,12bの面積は、電極層11b,12bの総面積の2%以下にすることが好ましく、1%以下にすることがより好ましい。このような構成によれば、リチウムイオンをドーピングする際に、電極層11b,12bにリチウムイオンを効率よくドープすることができる。
また、保護膜32,37は、リード部31,36の各々に別個に独立して形成されていてもよいが、隣接するリード部31,36に形成された保護膜32,37が互いに一体に形成されていてもよい。
また、保護膜32,37の厚みは、5〜300μmであることが好ましく、より好ましくは10〜200μmである。
【0032】
保護膜32,37を構成する材料としては、ポリマー材料または非金属無機材料を用いることが好ましい。
ポリマー材料としては、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはジエン系ゴム等のゴムを用いることが好ましく、特に、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)を用いることが好ましい。
非金属無機材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
前述した材料は、電解液と反応せず、還元耐性のある材料であるため、保護膜32,37を形成することによる二次的な不具合(ガス発生等)を引き起こすことがない。そのため、リチウムイオンキャパシタの信頼性を向上させることができる。
【0033】
保護膜32,37は、モールド成形または塗布成形等によって形成することができる。 モールド成形によって保護膜32,37を形成する場合には、電極ユニット10を外装容器20を形成する2つの外装フィルム21,22の間に配置し、外装フィルム21,22の三辺を融着した後、保護膜32,37を形成するためのポリマー材料もしくは非金属無機材料をリード部31,36の周辺に充填すればよい。また、電極ユニット10を形成した後に、リード部31,36に、ポリマー材料もしくは非金属無機材料を含む分散液を充填して乾燥処理してもよい。
塗布成形によって保護膜32,37を形成する場合には、リード部31,36を形成するための金属箔の表面にポリマー材料もしくは非金属無機材料を含む分散液を塗布して乾燥処理した後、当該金属箔を目的とする形態に切断することにより、保護膜32,37が形成されたリード部31,36を得ることができる。この場合には、電極層11b、12bが形成された後、或いは、形成される前の何れかのタイミングで塗布成形を行ってもよい。また、保護膜32、37の厚みは電極層11b、12bの厚みよりも小さいことが好ましい。
【0034】
<正極電極端子および負極電極端子>
正極電極端子30における外装容器20の内部に位置する内端部には、リード部31の各々における当該正極電極端子30に接続される接続部分31bが束ねられた状態で溶接などによって固定されている。
一方、負極電極端子35における外装容器20の内部に位置する内端部には、リード部36の各々における当該負極電極端子35に接続される接続部分36bが束ねられた状態で溶接などによって固定されている。
正極電極端子30の材質としては、アルミニウム、ステンレスなどを用いることができる。
一方、負極電極端子35の材質としては、銅、ニッケル、スンテレスなどを用いることができる。
【0035】
<外装容器>
外装容器20は、それぞれ矩形のラミネートフィルムよりなる外装フィルム21,22が、互いに重ね合わせた状態で、それぞれの外周縁部に沿って相互に気密に接合されて構成されている。図示の例では、一方の外装フィルム21における中央部分には、絞り加工が施されており、これにより、外装容器20の内部には、電極ユニット10が収容される収容空間が形成され、当該収容空間内に電極ユニット10が収容されると共に、電解液が充填されている。
外装フィルム21,22としては、例えばポリプロピレン層よりなる内層と、例えばアルミニウム層よりなる中間層と、例えばナイロンよりなる外層との三層構造よりなるものを用いることができる。
外装フィルム21,22の縦横の寸法は、収容される電極ユニット10の寸法に応じて適宜選択されるが、例えば縦方向の寸法が40〜200mm、横方向の寸法が60〜300mmである。
【0036】
<電解液>
外装容器20内に充填される電解液としては、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を用いることが好ましい。
電解質を構成するリチウム塩としては、リチウムイオンを移送可能で、高電圧下においても電気分解を起こさず、リチウムイオンが安定に存在し得るものであればよく、その具体例としては、LiClO
4 、LiAsF
6 、LiBF
4 、LiPF
6 、Li(C
2 F
5 SO
2 )
2 Nなどが挙げられる。
非プロトン性有機溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホランなどが挙げられる。これらの非プロトン性有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
電解液は、上記の電解質および溶媒を充分に脱水された状態で混合することによって調製されるが、電解液中の電解質の濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするために、少なくとも0.1モル/L以上であることが好ましく、0.5〜1.5モル/Lであることが更に好ましい。
【0037】
上記のリチウムイオンキャパシタは、電極ユニット10を外装容器20内に収容すると共に、電極ユニット10における正極集電体11aおよび負極集電体12aをリード部31,36によって正極電極端子30および負極電極端子35に電気的に接続し、更に、外装容器20内に電解液を充填した後、外装容器20を封止することによって得られる。
そして、このようにして作製されたリチウムイオンキャパシタにおいては、外装容器20内にリチウムイオンを供給し得る電解液が充填されているため、適宜の期間放置されると、負極電極シート12および/または正極電極シート11とリチウムイオン供給源15との電気化学的接触によって、リチウムイオン供給源15から放出されたリチウムイオンが負極電極シート12および/または正極電極シート11にドーピングされる。
【0038】
このような蓄電デバイスによれば、正極電極端子30および負極電極端子35と正極集電体11aおよび負極集電体12aとを電気的に接続するリード部31,36の各々の表面に保護膜32,37が形成されていることにより、例えば移動体に搭載されて動的な使用を行った場合に、デバイス全体に振動が生じても、リード部31,36に応力が加わることが抑制されるので、リード部の金属疲労による内部抵抗の上昇を抑制することができると共に、リード部の破断を抑制することができる。
そして、本発明の蓄電デバイスは、自動車、航空機、船舶、漂流ブイなどの移動体に搭載される蓄電デバイスとして好適である。
【0039】
以上、本発明のリチウムイオンキャパシタの実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば電極ユニットとしては、積層体構造のものに限定されず、種々の構造のものを用いることができるが、積層体構造の電極ユニットを用いる場合において、本発明による効果が得られやすい。
また、本発明の蓄電デバイスは、リチウムイオンキャパシタに限定されず、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池として構成することができる。
【実施例】
【0040】
〈実施例1〉
図1〜
図4の構成に従い、以下のようにしてリチウムイオンキャパシタを製造した。
(1)負極電極シートの製造:
気孔率30%、平均孔径50μmの微細な孔を有する、厚みが20μmの銅製の多孔箔の両面に、負極活物質を含有してなるスラリーを、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅が130mm、塗工速度が8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を80μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、多孔箔の表裏面に電極層を形成した。この多孔箔における電極層が形成された部分(以下、「塗工部」という。)以外の部分(リード部となる部分。以下、「未塗工部」という。)における電極層側の部分の表裏面に、縦型ダイ方式の両面塗工機を用いてスチレン−ブタジエン(SBR)分散液「TRD2001」(JSR社製)を塗布して乾燥処理することにより、厚みが30μmの保護膜を形成した。このとき、保護膜は、電極層との境界からおよそ10mmの幅で形成された。そして、塗工部が100mm×128mm、未塗工部が100mm×15mmになるように、多孔箔を100×143mmの大きさに切断することにより、銅製の多孔箔よりなる負極集電体の表裏面に電極層が形成されてなる負極電極シートと、この負極電極シートの負極集電体の一縁に連続して一体に形成された銅製の多孔箔よりなるリード部と、このリード部の表裏面に形成された保護膜とよりなる負極電極シート複合体を作製した。
【0041】
(2)正極電極シートの製造:
気孔率30%、平均孔径50μmの微細な孔を有した厚さ30μmのアルミニウム製の多孔箔の両面に、導電性塗料を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅が130mm、塗工速度が8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を20μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、多孔箔の表裏面に導電層を形成した。
次いで、多孔箔の表裏面に形成された導電層上に、正極活物質を含有してなるスラリーを、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工速度8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を150μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、導電層上に電極層を形成した。この多孔箔の未塗工部(リード部となる部分)における電極層側の部分の表裏面に、縦型ダイ方式の両面塗工機を用いてスチレン−ブタジエン(SBR)分散液「TRD2001」(JSR社製)を塗布して乾燥処理することにより、厚みが30μmの保護膜を形成した。このとき、保護膜は、電極層との境界からおよそ10mmの幅で形成された。そして、塗工部が98mm×126mm、未塗工部が98mm×15mmになるように、多孔箔を98×141mmの大きさに切断することにより、アルミニウム製の多孔箔よりなる正極集電体の表裏面に電極層が形成されてなる正極電極シートと、この正極電極シートの正極集電体の一縁に連続して一体に形成されたアルミニウム製の多孔箔よりなるリード部と、このリード部の表裏面に形成された保護膜とよりなる正極電極シート複合体を作製した。
【0042】
(3)セパレータの作製:
縦横の寸法が102cm×130cm、厚みが35μmのセルロース/レーヨン混合不織布よりなるセパレータを合計で22枚作製した。
【0043】
(4)電極ユニットの作製:
先ず、上記の正極電極シート複合体10枚、負極電極シート複合体11枚およびセパレータ22枚を用意し、正極電極シートと負極電極シートとを、それぞれの塗工部は重なるが、それぞれの未塗工部は反対側になり重ならないよう、セパレータ、負極電極シート、セパレータ、正極電極シートの順で積重し、積重体の4辺をテープにより固定することにより、電極ユニットを作製した。
次いで、厚みが100μmのリチウム箔を切断し、厚さ40μmの銅網に圧着することにより、リチウム極集電体上にリチウムイオン供給源が圧着されてなるリチウムイオン供給部材を作製し、このリチウムイオン供給部材を電極ユニットの上側に負極と対向するよう配置した。
そして、作製した電極ユニットの10枚の正極電極シート複合体の各々のリード部の先端部分を束ねて、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した、幅が50mm、長さが50mm、厚みが0.2mmのアルミニウム製の正極電極端子を重ねて超音波溶接した。このとき、リード部における超音波溶接を施した接続部分が保護膜と重ならないように、およそ5mmの幅で形成された。一方、電極ユニットの11枚の負極電極シート複合体の各々のリード部およびリチウムイオン供給部材のリチウム極集電体の各々の先端部分を束ねて、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した幅が50mm、長さが50mm、厚みが0.2mmの銅製の負極電極端子を重ねて抵抗溶接した。
以上のようにして、正極電極端子および負極電極端子がリード部によって正極集電体および負極集電体に電気的に接続された電極ユニットを作製した。
【0044】
(6)リチウムイオンキャパシタの作製:
ポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)で、中央部分に、102mm(縦幅)×130mm(横幅)の絞り加工が施された一方の外装フィルムと、ポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)の他方の外装フィルムとを作製した。
次いで、他方の外装フィルム上における中央位置に、正極電極端子および負極電極端子が接続された電極ユニットを、その正極電極端子および負極電極端子の各々が、他方の外装フィルムの端部から外方に突出しするよう配置した。このとき、リード部が、形成される外装容器内に収容されるよう電極ユニットを配置した。その後、電極ユニットに、一方の外装フィルムを重ね合わせ、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における3辺(正極電極端子および負極電極端子が突出する2辺を含む。)に沿って熱融着することにより、幅が10mmの接合部を形成した。
そして、一方の外装フィルムと他方の外装フィルムとの間に、電解液を注入すると共に、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における未接合の一辺に沿って熱融着することにより、幅が10mmの接合部を形成して外装容器を作製し、以て、リチウムイオンキャパシタを製造した。
【0045】
〈実施例2〉
保護膜を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、正極電極端子および負極電極端子がリード部によって正極集電体および負極集電体に電気的に接続された電極ユニットを作製した。次いで、正極集電体に接続された各リード部を積重した状態で、当該リード部に、ディスペンサーによりスチレン−ブタジエンゴム(SBR)分散液を充填して乾燥処理することにより、全部のリード部を覆う保護膜を形成した。また、負極集電体に接続された各リード部を積重した状態で、当該リード部に、ディスペンサーによりスチレン−ブタジエンゴム(SBR)分散液を充填することにより、全部のリード部を覆う保護膜を形成した。その後、電極ユニットに、一方の外装フィルムを重ね合わせ、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における3辺(正極電極端子および負極電極端子が突出する2辺を含む。)に沿って熱融着することにより、幅が10mmの接合部を形成した。
そして、一方の外装フィルムと他方の外装フィルムとの間に、電解液を注入すると共に、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における未接合の一辺に沿って熱融着することにより、幅が10mmの接合部を形成して外装容器を作製し、以て、リチウムイオンキャパシタを製造した。
【0046】
〈実施例3〉
保護膜形成用の材料として、スチレン−ブタジエン(SBR)分散液の代わりにブチルゴム分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様にリチウムイオンキャパシタを作成した。
【0047】
〈実施例4〉
保護膜形成用の材料として、スチレン−ブタジエン(SBR)分散液の代わりにブチルゴム分散液を用いたこと以外は、実施例2と同様にリチウムイオンキャパシタを作成した。
【0048】
〈比較例1〉
保護膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にリチウムイオンキャパシタを作成した。
【0049】
〔交流内部抵抗測定〕
作製したリチウムイオンキャパシタの各々について、日置電機社製「ACミリオームハイテスタ3560」を用い、25℃±5℃の環境下における1KHzの交流内部抵抗を測定した。次いで、各リチウムイオンキャパシタをアルミ製の冶具に貼り付けることによって固定し、その長軸方向、短軸方向、上下方向の各軸に対して、加速度7gn、周波数20〜200Hzの対数掃引の正弦波振動を、周期15分間で各軸3時間ずつ作用させた後、日置電機社製「ACミリオームハイテスタ3560」を用い、25℃±5℃の環境下における1KHzの交流内部抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4に係るリチウムイオンキャパシタによれば、リード部に保護膜が形成されているため、キャパシタ全体に振動が生じても、内部抵抗の上昇を抑制することができるが確認された。
これに対して、比較例1に係るリチウムイオンキャパシタにおいては、リード部に保護膜が形成されていないため、キャパシタ全体に振動が生じることにより、内部抵抗が大きく上昇した。