(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有している。そして、前記導電性金属層として、走査型電子顕微鏡を使用して100000倍の拡大倍率で、その厚さ方向断面を観測したとき、その断面に粒界が認められ、且つ、粒界構造が厚さ方向に配向する柱状構造でないニッケルメッキ層を含む。
このニッケルメッキ層は、走査型電子顕微鏡を使用した100000倍の拡大倍率で確認される粒界を有しており、導電性微粒子が圧縮変形した場合、この粒界を起点として容易にクラックが生じ、応力が蓄積することが抑制される。また、クラックが発生し、伸長した場合でも、クラックの先端が他の粒界に達したとき、この粒界でクラックの伸長が止められることとなる。そのため、各クラックはいずれも微細なものとなり、導電性金属層の導通を妨げる程の大きなクラックの生成が抑制される。
また、前記粒界が金属層の厚さ方向に配向する柱状構造でないため、ニッケル層に生じたクラックが金属層の厚さ方向へと伸長することが抑制される。つまり、クラックが生じた場合でも、ニッケル層の層方向の導通が遮られない。よって、本発明の導電性微粒子は、加圧接続において金属層にクラックが生じた場合でも、安定した接続抵抗値が得られるようになる。
【0012】
1−1.導電性金属層
前記ニッケルメッキ層の破断面には、走査型電子顕微鏡を使用した100000倍の拡大倍率で確認される粒界が認められる。なお、粒界とは、破断面に認められる線を意味する。
ニッケルメッキ層の破断面に認められる粒界構造としては、粒界によって区切られた各領域が平坦である形態(平面型領域)からなる粒界構造(「平面型粒界構造」ともいう);粒界によって区切られた各領域が平坦でない形態(非平面型領域)からなる粒界構造(「非平面型粒界構造」ともいう);粒界によって区切られた各領域に、平面型領域と非平面型領域とが混在する粒界構造(「混在型粒界構造」ともいう)が挙げられる。上記各態様の粒界構造において、各領域は、粒界によって囲まれた閉塞領域を形成する場合も、閉塞領域を形成しない場合もある。なお、粒界が閉塞領域を形成する場合においてその最小単位をセグメントと称する。
【0013】
上記非平面型領域としては、例えば、粒界を谷として凸状をなす形態や、粒界を綾とする凹状の形態が挙げられる。前記凸状の領域がセグメントである場合の一例として、コブ状の粒界構造が挙げられる。
前記破断面は、大小のコブが形成されるようなものではなく、凹凸が少ないものが好ましい。すなわち、粒界構造は、平面型粒界構造、非平面型粒界構造、混在型粒界構造のいずれであってもよいが、これらの中でも、平面型領域が存在する粒界構造が好ましく、粒界構造における平面型領域が占める割合が高い粒界構造が好ましい。換言すると、平面型粒界構造、または、混在型粒界構造のうち平面型領域が占める面積が非平面型領域が占める面積より大きい粒界構造が好ましい。粒界構造の面積における平面型領域が占める面積が50%を超えることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、一層好ましくは95%以上である。特に、前記割合が80%以上であれば平面型粒界構造と効果、作用において同等とみなすことができる。
【0014】
さらに、粒界構造は、粒界で区切られた領域(セグメントの場合を含む。)からなるが、隣接する領域間の高低差(破断面に対し垂直方向の高低差)は小さいことが好ましい。各領域が平面型領域であって、隣接する領域間の前記高低差が小さいものがさらに好ましい。また、コブ状セグメントからなる粒界構造断面の場合、該セグメントの大きさは特に限定されないが、微細であるよりも比較的大きい方が好ましい。具体的な好ましい大きさについては後述する。
【0015】
また、前記粒界構造は厚さ方向に配向する柱状構造でないことが重要となる。前記柱状構造とは、高さがニッケルメッキ層の厚さと略同一であり、高さと幅との比(高さ/幅)が5以上のものをいう。そして、厚さ方向に配向する柱状構造とは、ニッケルメッキ層の厚さ方向断面において、幅1000nm以上にわたって柱状構造が連続して存在し、これらが厚さ方向に配向している構造をいう。
【0016】
本発明の導電性微粒子において、粒界構造が上記いずれの場合であっても、前記ニッケルメッキの粒界構造としては、粒界が配向している態様(有配向)、粒界が配向していない態様(無配向)が挙げられる。
前記粒界が有配向時、複数の直線状の粒界が、平行に並んでいる。この場合、直線粒界の方向は、金属層の厚さ方向と異なっていることが好ましく、例えば、層方向、斜め方向が挙げられる。この場合、直線粒界の配向方向と金属層の厚さ方向とのなす角は、0°超、10°以上が好ましく、より好ましくは20°以上、さらに好ましくは30°以上であり、90°以下が好ましく、より好ましくは80°以下、さらに好ましくは70°以下である。
【0017】
前記有配向では、全ての直線粒界が同一方向に配向している必要はない。特定の方向に配向している粒界の一群を一つの系列としてみた場合、同一又は異なる方向に配向している系列が複数存在していてもよい。このような系列は、金属層の厚さ方向に並んでいてもよいし、金属層の層方向に並んでいてもよい。系列が金属層の厚さ方向に並び層構造を形成する場合、層数は10層以下が好ましく、より好ましくは5層以下、さらに好ましくは2層である。各系列の境目には、粒界が存在していてもよい。
【0018】
前記系列が複数存在する態様としては、金属層の厚さ方向に多層構造を形成し、厚さ方向に隣接する系列の配向方向が異なることが好ましく、各層の粒界が斜め方向に配向していることがより好ましい。この場合、厚さ方向に隣接する系列の配向方向は、一方が厚さ方向に対して右向きに傾いている場合、他方は左向きに傾いていることが好ましい。また、厚さ方向に隣接する系列の配向方向が、これらの境界を対称軸として、線対称となっている態様(葉脈状)も好ましい。
【0019】
前記粒界が無配向時、粒界はそれぞれ不特定の方向を向いており、ブロック状にセグメントが存在する。なお、セグメントとは前述したとおり、粒界に囲まれた閉塞領域であって、最小単位を指す。
前記セグメントの形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形状、円形状、略円形状、楕円形状、略楕円形状等が挙げられ、これらの形状の内、1種が単独で存在してもよいし、複数種が混在していてもよい。なお、四角形状が連続して存在する場合、これらの四角形の高さと幅との比(高さ/幅)は、5未満であり、2以下が好ましく、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.8以下である。
【0020】
前記セグメントの平均径は、特に限定されないが、10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、ニッケル層の厚さ未満であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。セグメントの径は、セグメントの輪郭において、最も直径が長くなる部分を測定する。特に、セグメントがコブ状(コブ状セグメントからなる粒界構造)の場合、該セグメントの大きさは、下限値が上記範囲であることが一層好ましい形態となる。
【0021】
前記セグメントは、連続して存在していてもよいし、不連続に点在していてもよい。前記セグメントが連続して存在する場合、セグメントの配列は規則的でも不規則でもよい。なお、粒界が無配向の場合、粒界がセグメントを形成しない場合もあり、該形態も本発明に含まれる。
【0022】
本発明の導電性微粒子は、ニッケル層を有する。このニッケル層は、ニッケル又はニッケル合金から構成される。ニッケル合金を使用する場合、ニッケル合金中のニッケル含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
前記ニッケル合金としては、Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag、Ni−P、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−W、Ni−Ti等が好ましく、これらの中でもNi−Pが好ましい。
【0023】
前記ニッケル合金(Ni−P)中のP濃度は、20質量%以下が好ましく、より好ましくは18質量%以下である。P濃度が低いほど、ニッケル皮膜の電気抵抗値が低くなる。なお、P濃度が低すぎる場合、磁性による凝集が生じて、導電性微粒子を1次粒子に分散しにくくなる傾向がある。そのため、P濃度は3質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上である。なお、P濃度は、ニッケル合金中のNiとPとの合計質量に対するP質量の比(P/(P+Ni))である。
【0024】
前記ニッケル層の厚さは、0.02μm以上が好ましく、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上であり、0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下である。前記ニッケル層の厚さが上記範囲内であれは、導電性微粒子の導電性がより良好となる。特に、ニッケル層の厚さが0.3μm以下であれば、導電性微粒子の密度が高くなり過ぎず、バインダー等に分散した場合の沈降が抑制され、分散安定性が向上する。本発明の導電性微粒子における粒界構造は、上記のような薄膜であっても、特にニッケル層の膜厚が0.25μm以下であっても認められる。そのため、上述した効果に加え、基材粒子が有する機械的特性を十分に反映した圧縮変形挙動を示す導電性微粒子となるため、圧縮変形時のクラックによる抵抗値の増大が一層抑制された接続が可能となる。
【0025】
前記導電性微粒子は、前記ニッケル層の他に、他の導電性金属層を積層してもよい。
他の導電性金属層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム及びニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、パラジウム、銀が導電性に優れており好ましい。
前記ニッケル層は、基材粒子に直接形成してもよいし、下地として他の導電性金属層を基材粒子表面に形成し、その上にニッケル層を形成してもよいが、基材粒子に直接形成することが好ましい。また、導電性金属層は、例えば、ニッケル層−金層、ニッケル層−パラジウム層、ニッケル層−パラジウム層−金層、ニッケル層−銀層等の組合せが好ましく挙げられる。特に最外層として金層、又はパラジウム層を有することが好ましい。
【0026】
前記導電性微粒子は、導電性金属層の耐腐食性や酸化防止、変色防止を行うため、必要に応じてさらに表面処理を行ってもよい。ニッケル層の酸化を効果的に防ぐことができる方法としては、例えば、ニッケル層の表面にセリウム、又は、チタンを含有する金属酸化物層を形成させる;炭素数が3〜22のアルキル基を有する化合物で表面処理を行うこと;等が挙げられる。
【0027】
前記導電性微粒子は、導電性金属層の厚さ(ニッケル層と他の金属層との合計の厚さ)は、0.02μm以上が好ましく、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上であり、0.4μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.25μm以下である。前記導電性金属の厚さが上記範囲内であれは、バインダー等への分散安定性に優れ、かつ導電性の高い導電性微粒子が得られる。
【0028】
前記導電性微粒子の個数平均粒子径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。また前記導電性微粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
導電性微粒子が小さくなると(具体的には、個数平均粒子径が10.0μm未満)、異方導電接続時の接触面積を十分とするために、導電性微粒子を高い圧縮変形率まで圧縮する必要がある。このように大きく変形した場合であっても、本発明の導電性微粒子はニッケル層の断面が所定の粒界構造を呈するため、低い接続抵抗値を達成できる。よって、本発明の効果が一層顕著となる理由から、個数平均粒子径は、10μm未満が好ましく、より好ましくは9.5μm以下、さらに好ましくは8μm以下、一層好ましくは5μm以下、より一層好ましくは3μm以下、さらに一層好ましくは2.8μm以下である。
【0029】
また、本発明の導電性微粒子は、その表面が平滑であっても凹凸状であっても良い。導電性微粒子を異方性導電材料に使用する場合、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で、表面に複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。
【0030】
1−2.基材粒子
前記基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。前記樹脂粒子としては、例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂粒子;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;オルガノシロキサン等が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、ビニル重合体、アミノ樹脂、オルガノシロキサンが好ましく、ビニル重合体及びアミノ樹脂がより好ましく、特にビニル重合体が好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼン及び/又はジ(メタ)アクリレートを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ない。
【0031】
1−2−1.ビニル重合体粒子
ビニル重合体粒子は、ビニル重合体により構成される。ビニル重合体は、ビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成でき、このビニル系単量体はビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0032】
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、又は、1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
【0033】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤(特にスチレン系多官能モノマー)が好ましい。前記1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)の中でも、前記1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(ジ(メタ)アクリレート)が特に好ましく、さらにその中でも、1分子中に2個のアクリロイル基を有するアクリレート(ジアクリレート)が好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンのように1分子中に2個のビニル基を有する単量体が好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
【0037】
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。単量体(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記ビニル系単量体としては、少なくとも前記ビニル系架橋性単量体(1)を含む態様が好ましく、中でも前記ビニル系架橋性単量体(1)と前記ビニル系非架橋性単量体(3)とを含む態様(特に単量体(1)と単量体(3)との共重合体)が好ましい。具体的には、構成成分として、スチレン系単官能モノマー、スチレン系多官能モノマー、多官能(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含む態様が好ましい。さらに好ましくは、スチレン系多官能モノマー及び多官能(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;スチレン系多官能モノマー及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;多官能(メタ)アクリレート及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;である。上記態様において、スチレン系単官能モノマーとしてはスチレンが好ましく、スチレン系多官能モノマーとしてはジビニルベンゼンが好ましく、多官能メタ(アクリレート)としてはジ(メタ)アクリレートが好ましい。従って、ジビニルベンゼン及びジ(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;ジビニルベンゼン及びスチレンを必須構成成分とする態様;ジ(メタ)アクリレート及びスチレンを必須構成成分とする態様が特に好ましい。
【0039】
前記ビニル重合体粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、弾性変形と復元力に優れる点から、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。架橋性単量体の割合が上記範囲内であれば、優れた弾性変形特性を維持しつつ、復元力を向上させることができる。架橋性単量体の割合の上限は、特に限定されないが、用いる架橋性単量体の種類によっては、架橋性単量体の割合が多すぎると硬くなりすぎて異方導電接続時に圧縮変形させるために高い圧力が必要となる場合がある。そのため、架橋性単量体の割合は、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0040】
前記ビニル重合体粒子は、ビニル重合体の特性を損なわない程度に、他の成分を含んでいてもよい。この場合、ビニル重合体粒子は、ビニル重合体を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
前記他の成分としては、特に限定されないが、ポリシロキサン成分が好ましい。ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入することで、加圧接続時の弾性変形に優れるものとなる。
【0041】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。また、シラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、ビニル重合体とビニル重合体とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);ビニル重合体とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0042】
第一の形態(ビニル重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
【0045】
前記ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入する場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して100質量部以上が好ましく、より好ましくは200質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上であり、700質量部以下が好ましく、より好ましくは600質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
【0046】
前記ビニル系重合体粒子は、例えば、ビニル系単量体を重合することによって製造することができるが、具体的には、(i)ビニル系単量体を重合成分として含む単量体組成物を用いて、従来公知の水性懸濁重合、分散重合、乳化重合する方法;(ii)シラン系単量体を用いてビニル基含有ポリシロキサンを得た後、このビニル基含有ポリシロキサンとビニル系単量体とを重合(ラジカル重合)する方法;(iii)シード粒子に、ビニル系単量体を吸収させた後、ビニル系単量体をラジカル重合する、いわゆるシード重合する方法;が好ましい。
【0047】
前記製造方法(i)では、ビニル系単量体として、前記2つ以上のビニル基を有するシラン化合物、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン等のビニル基を有するシラン化合物を併用してもよい。前記製造方法(ii)においては、少なくとも前記第三の形態を形成し得るシラン系架橋性単量体を用いることによって、ポリシロキサン骨格が導入されたビニル重合体粒子が得られる。
【0048】
前記製造方法(iii)において、シード粒子としては、非架橋又は架橋度の低いポリスチレン粒子、ポリシロキサン粒子を用いることが好ましい。シード粒子にポリシロキサン粒子を用いることで、ビニル重合体にポリシロキサン骨格を導入できる。
ポリシロキサン粒子としては、前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体を含む組成物を、(共)加水分解縮合して得られるポリシロキサン粒子が好ましく、特にビニル基含有ポリシロキサン粒子が好ましい。ポリシロキサン粒子がビニル基を有する場合、得られるビニル重合体粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格がポリシロキサンを構成するケイ素原子を介して結合するため、弾性変形性及び接触圧に特に優れたものとなる。ビニル基含有ポリシロキサン粒子は、例えば、ビニル基を有するジまたはトリアルコキシシランを含むシラン系単量体(混合物)を(共)加水分解縮合することによって製造できる。
【0049】
また、前記ビニル重合体粒子がポリシロキサン骨格を含む場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は120℃(より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
【0050】
1−2−2.アミノ樹脂粒子
アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物により構成されるものが好ましい。
前記アミノ化合物としては、例えば、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミン等のグアナミン化合物、メラミン等のトリアジン環構造を有する化合物等の多官能アミノ化合物が挙げられる。これらの中でも、多官能アミノ化合物が好ましく、トリアジン環構造を有する化合物がより好ましく、特にメラミン、グアナミン化合物(特にベンゾグアナミン)が好ましい。前記アミノ化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0051】
前記アミノ樹脂粒子は、アミノ化合物中、グアナミン化合物を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。アミノ化合物中のグアナミン化合物の含有割合が上記範囲であれば、より粒度分布がシャープであり、粒子径が精密にコントロールされたものとなる。なお、アミノ化合物として、グアナミン化合物のみを用いることも好ましい。
【0052】
アミノ樹脂粒子は、例えば、水性媒体中でアミノ化合物とホルムアルデヒドを反応(付加縮合反応)させることにより得られる。通常、この反応は加熱下(50〜100℃)で行う。また、ドデシルベンゼンスルホン酸、硫酸等の酸触媒の存在下で反応を行うことにより、架橋度を高めることができる。
アミノ樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特開2000−256432号公報、特開2002−293854号公報、特開2002−293855号公報、特開2002−293856号公報、特開2002−293857号公報、特開2003−55422号公報、特開2003−82049号公報、特開2003−138023号公報、特開2003−147039号公報、特開2003−171432号公報、特開2003−176330号公報、特開2005−97575号公報、特開2007−186716号公報、特開2008−101040号公報、特開2010−248475号公報等に記載のアミノ樹脂架橋粒子及びその製造方法を適用することが好ましい。
【0053】
具体例としては、前記多官能アミノ化合物とホルムアルデヒドを、水性媒体(好ましくは塩基性の水性媒体)中で反応(付加縮合反応)させて縮合物オリゴマーを生成させ、該縮合物オリゴマーが溶解又は分散する水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸や硫酸等の酸触媒を混合して硬化させることによって、架橋されたアミノ樹脂粒子を製造することができる。縮合物オリゴマーを生成させる段階、架橋構造のアミノ樹脂とする段階は、いずれも、50〜100℃の温度で加熱された状態で行うことが好ましい。また、付加縮合反応を、界面活性剤の存在下で行うことにより、粒度分布のシャープなアミノ樹脂粒子が得られる。
【0054】
1−2−3.オルガノシロキサン粒子
オルガノポリシロキサン粒子は、ビニル基を含有しないシラン系単量体(シラン系架橋性単量体、シラン系非架橋性単量体)の1種または2種以上を(共)加水分解縮合することによって得られる。
前記ビニル基を含有しないシラン系単量体としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性シラン系単量体;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0055】
前記基材粒子(樹脂粒子)の個数平均粒子径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。前記基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
また、上述したように導電性微粒子が小さくなると(具体的には、個数平均粒子径が10.0μm未満)、本発明の効果が一層顕著となる。よって、基材粒子の個数平均粒子径は、10.0μm未満が好ましく、より好ましくは9.5μm以下、さらに好ましくは8μm以下、一層好ましくは5μm以下、より一層好ましくは3μm以下、さらに一層好ましくは2.8μm以下、特に好ましくは2.6μm以下である。
【0056】
1−3.導電性微粒子の製法
本発明の導電性微粒子は、無電解メッキ法により製造でき、ニッケルメッキ液中の錯化剤の種類や濃度、ニッケルメッキ液の液温等を制御することにより、ニッケル層の粒界構造を制御できる。製造方法の具体例としては、第1無電解メッキ工程及び第2無電解メッキ工程を有する製造方法が挙げられる。以下、製造方法について説明する。
【0057】
無電解メッキ工程に供される基材粒子には、触媒化処理が施される。また、基材粒子自体が親水性を有さず、導電性金属層との密着性が良好でない場合は、触媒化工程前に、エッチング処理工程を設けることが好ましい。
【0058】
エッチング処理
エッチング処理工程では、クロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;その他市販の種々のエッチング剤等を用いて、基材粒子の表面に親水性付与し、その後の無電解メッキ液に対する濡れ性を高める。また、微小な凹凸を形成させ、その凹凸のアンカー効果によって、後述する無電解メッキ後の基材粒子と導電性金属層との密着性の向上を図る。
【0059】
触媒化処理
前記触媒化処理では、基材粒子表面に貴金属イオンを捕捉させた後、これを還元して前記貴金属を基材粒子表面に担持させ、基材粒子の表面に次工程の無電解メッキの起点となりうる触媒層を形成させる。基材粒子自体が貴金属イオンの捕捉能を有さない場合、触媒化を行う前に、表面改質処理を行うことも好ましい。表面改質処理は、表面処理剤を溶解した水又は有機溶媒に、基材粒子を接触させることで行うことができる。
【0060】
触媒化処理は、例えば、塩化パラジウムや硝酸銀のような貴金属塩の希薄な酸性水溶液に、エッチングした基材粒子を浸漬させた後、基材粒子を分離し水洗する。引き続き水に分散させて、これに還元剤を加えて貴金属イオンの還元処理を行う。前記還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジン、ホルマリン等が挙げられる。還元剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
また、スズイオン(Sn
2+)を含有する溶液に基材粒子を接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させ感受性化処理を施した後、パラジウムイオン(Pd
2+)を含有する溶液に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等を用いてもよい。
【0062】
製造方法の一例として、ニッケルメッキ層の粒界構造が葉脈状である導電性微粒子の製造方法を説明する。
第1無電解メッキ工程及び第2無電解メッキ工程では、上記のように貴金属を担持させた基材粒子に対して、ニッケル層を形成する。なお、第1無電解メッキ工程では、貴金属を担持された基材粒子の表面が平滑となる程度に、極薄くニッケル層を形成し、第2無電解メッキによりニッケル層の厚さを調整する。これらの無電解メッキ工程では、ニッケル塩、還元剤及び錯化剤を溶解したメッキ液中に基材粒子を浸漬することにより、貴金属触媒を起点として、メッキ液中のニッケルイオンを還元剤で還元し、基材粒子表面にニッケルを析出させて、ニッケル層を形成する。
【0063】
第1無電解メッキ工程
第1無電解メッキ工程では、まず、基材粒子を水に十分に分散させ、基材粒子の水性スラリーを調製する。ここで、安定した導電特性を発現させるためには、基材粒子を、メッキ処理を行う水性媒体に十分分散させておくことが好ましい。基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置等従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波や分散剤(界面活性剤等)を併用してもよい。なお、上記触媒化工程において、還元処理を行った基材粒子分散液をそのまま水性スラリーとして用いてもよい。
【0064】
次に、ニッケル塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解メッキ液に、上記で調製した基材粒子の水性スラリー(あるいは還元処理後の基材粒子分散液)を添加し水性懸濁体とする。無電解メッキ反応は、メッキ液に触媒化基材粒子の水性スラリーを添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が完全に認められなくなった時点をもって無電解メッキ反応を終了すればよい。
前記ニッケル塩としては、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩等が挙げられる。前記還元剤としては、触媒化処理工程で例示したものが使用できる。
【0065】
第1無電解メッキ工程に使用するメッキ液は、錯化剤として、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、マロン酸等の有機カルボン酸又はその塩を使用することが重要である。これらの中でも酒石酸ナトリウムを用いることが好ましい。前記錯化剤の濃度は、0.001〜10mol/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜5mol/L、さらに好ましくは0.01〜2mol/Lである。第1無電解メッキ工程に使用するメッキ液中のニッケル塩濃度は、1.0×10
-4〜1.0mol/Lが好ましく、より好ましくは1.0×10
-3〜0.2mol/Lである。また、還元剤の濃度は、1.0×10
-4〜3.0mol/Lが好ましく、より好ましくは1.0×10
-3〜0.3mol/Lである。
第1無電解メッキ工程において、メッキ液の使用量は、貴金属を担持した基材粒子100質量部に対して、200〜2,000,000質量部が好ましく、より好ましくは500〜1,000,000質量部である。前記メッキ液に基材粒子を浸漬する際の液温、浸漬時間は、適宜調整すればよいが、液温は50℃〜95℃が好ましい。
【0066】
第2無電解メッキ工程
第2無電解メッキ工程では、前記第1無電解メッキ工程後の水性懸濁体にメッキ液を添加する。第2無電解メッキ工程に使用するメッキ液は、錯化剤を含むニッケルイオン含有液と、還元剤含有液の2液に分けて調整をする。ニッケルイオン含有液には、錯化剤として、グリシンを含有させておくことが重要である。また、第1無電解メッキ工程において使用する錯化剤に対して、グリシンを逐次添加することにより、メッキ液中に錯化剤の濃度勾配をつけることが重要である。前記グリシンの濃度は、0.001〜10mol/Lが好ましく、より好ましくは0.01〜10mol/Lである。第2無電解メッキ工程に使用するメッキ液中のニッケル塩濃度は、0.1〜2mol/Lが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5mol/Lである。また、還元剤の濃度は、0.1〜20mol/Lが好ましく、より好ましくは1〜10mol/Lである。メッキ液中での第1無電解メッキ工程で用いた錯化剤に対する、第2無電解メッキ工程で用いるグリシンの比率は、0.2〜2が好ましく、特に0.3〜1が好ましい。
前記メッキ液に基材粒子を浸漬する際の液温、浸漬時間は、適宜調整すればよいが、液温は50℃〜95℃が好ましい。第2無電解メッキ工程終了後、水性懸濁体から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子が得られる。
【0067】
2.突起を有する導電性微粒子
導電性微粒子は、その表面が平滑であっても凹凸状であっても良いが、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で、複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。
【0068】
導電性微粒子の表面に突起を形成させる方法としては、(1)基材粒子合成における重合工程において、高分子の相分離現象を利用して表面に突起の形成された基材粒子を得た後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(2)基材粒子表面に、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させた後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(3)基材粒子表面に無電解メッキを行った後、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させ、さらに無電解メッキを行う方法;(4)無電解メッキ反応時におけるメッキ浴の自己分解を利用して、基材粒子表面に突起の核となる金属を析出させ、さらに無電解メッキを行うことによって、突起部を含む導電性金属層が連続皮膜となった導電性金属層を形成する方法等が挙げられる。
【0069】
前記突起の高さは20nm〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは30nm〜800nm、さらに好ましくは40nm〜600nm、特に好ましくは50nm〜500nmである。突起の高さが前記範囲であると、接続信頼性が一層向上する。なお、突起の高さは、任意の導電性微粒子10個を電子顕微鏡で観察して求める。具体的には、観察される導電性微粒子の周縁部の突起について、導電性微粒子1個につき任意の10個の突起高さを測定し、その測定値を算術平均することにより求められる。
【0070】
前記突起の数は特に限定されないが、高い接続信頼性を確保する点から導電性微粒子の表面を電子顕微鏡で観察したときの任意の正投影面において、少なくとも1個以上の突起を有することが好ましく、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上である。
【0071】
3.絶縁被覆導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、表面の少なくとも一部に絶縁層を有する態様(絶縁被覆導電性微粒子)であってもよい。このように表面の導電性金属層にさらに絶縁層が積層されていると、高密度回路の形成時や端子接続時などに生じやすい横導通を防ぐことができる。
【0072】
絶縁層の厚さは0.005μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁層の厚さが前記範囲内であれば、導電性微粒子による導通特性を良好に維持しつつ、粒子間の電気絶縁性が良好となる。
【0073】
前記絶縁層としては、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁層が崩壊あるいは剥離するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン類;ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート重合体及び共重合体;ポリスチレン;等の熱可塑性樹脂やその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂及びこれらの混合物;シリコーン樹脂等の有機化合物、或いはシリカ、アルミナ等の無機化合物が挙げられる。
【0074】
前記絶縁層は、単層であっても、複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層が形成されていてもよいし、絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状その他の形状の粒子を導電性金属層の表面に付着させた層であってもよいし、さらには、導電性金属層の表面を化学修飾することにより形成された層であってもよく、又は、これらが組み合わされたものであってもよい。これらの中でも絶縁性を有する粒子(以下、「絶縁粒子」という。)が導電性金属層表面に付着した態様が好ましい。
【0075】
絶縁粒子の平均粒子径は導電性微粒子の平均粒子径や絶縁被覆導電性微粒子の用途によって適宜選択されるが、絶縁粒子の平均粒子径は0.005μm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁粒子の平均粒子径が0.005μmより小さくなると、複数の導電性微粒子間の導電層どうしが接触しやすくなり、1μmより大きくなると対向する電極間に導電性微粒子が挟み込まれた際に発揮するべき導電性が不十分となる虞がある。
【0076】
絶縁粒子の平均粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。CV値が40%を超えると導通性が不十分となる虞がある。
【0077】
絶縁粒子の平均粒子径は、導電性微粒子の平均粒子径の1/1000以上、1/5以下であることが好ましい。絶縁粒子の平均粒子径が前記範囲であると、導電性微粒子の表面に均一に絶縁粒子層を形成させることができる。また、粒子径の異なる2種類以上の絶縁粒子を使用してもよい。
絶縁粒子はその表面に導電性微粒子への付着性を高めるため官能基を有していても良い。前記官能基としては、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、リン酸基、シラノール基、アンモニウム基、スルホン酸基、チオール基、ニトロ基、ニトリル基、オキサゾリン基、ピロリドン基、スルホニル基、水酸基等が挙げられる。
【0078】
導電性微粒子表面における絶縁粒子の被覆率(絶縁被覆導電性微粒子の正投影面)は、好ましくは1%以上98%以下、より好ましくは5%以上95%以下である。絶縁粒子による導電性微粒子の被覆率が前記範囲であることにより、充分な導通性を確保しつつ、隣接する絶縁被覆導電性微粒子間を確実に絶縁することができる。なお、上記被覆率は、例えば電子顕微鏡を用いて任意の100個の絶縁被覆導電性微粒子表面を観察したときに、絶縁被覆導電性微粒子の正投影面における絶縁粒子の被覆されている部分と樹脂粒子の被覆されていない部分の面積比率を測定することにより評価できる。
【0079】
4.異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料として有用である。
前記異方性導電材料としては、前記導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサー及びその組成物)も含まれる。
【0080】
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0081】
バインダー樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、酸化防止剤、各種カップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導向上剤、有機溶剤等を配合することができる。
【0082】
なお、前記異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基材間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
【0083】
前記異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して0.01体積%以上が好ましく、より好ましくは0.03体積%以上、さらに好ましくは0.05体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0084】
前記異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0086】
1.評価方法
1−1.個数平均粒子径、変動係数(CV値)
<シード粒子、基材粒子(樹脂粒子)>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子径の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数基準平均粒子径)
なお、基材粒子では、基材粒子0.005部に界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。シード粒子では、加水分解、縮合反応で得られた分散液を、界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とした。
【0087】
1−2.ニッケル層断面観察
導電性微粒子0.1gをメノウ鉢に取り、すり潰すことにより導電性金属層を破断させた。すり潰した導電性微粒子のニッケル層の厚さ方向断面を、走査型電子顕微鏡で100000倍の拡大倍率で観察した。また、断面において、ニッケル層の厚さを任意に10点測定し、これら10点の平均値をニッケル層の厚さとした。
【0088】
1−3.リン濃度
導電性微粒子0.05gに王水4mlを加え、加熱下で攪拌することにより金属層を溶解しろ別した。その後、ろ液をICP発光分析装置を用いて、ニッケル及びリンの含有量を分析した。
【0089】
1−4.接続信頼性評価方法
導電性微粒子10質量部に、バインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学社製、「JER828」)100質量部、硬化剤(三新化学社製、「サンエイド(登録商標) SI−150」)2質量部及びトルエン100質量部を加えた。この混合物にさらに1mmのジルコニアビーズ50質量部を加えて、ステンレス製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間分散を行い、ペースト状組成物を得た。得られたペースト状組成物をバーコーターで剥離処理PETフィルム上に塗布し、乾燥させ異方性導電フィルムを得た。
得られた異方性導電フィルムを、抵抗測定用の線を有する全面アルミ蒸着ガラス基板と100μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板間に挟み込み、5MPa、200℃の圧着条件で熱圧着して測定試料を作製した。この試料について、電極間の抵抗値(初期抵抗値)を評価した。また、測定試料を、90℃で500時間放置した後の電極間の抵抗値(90℃、500時間後抵抗値)についても同様に測定した。下記式により抵抗値上昇率を求め、A、Bの2段階に分けて評価した。抵抗値上昇率が1%未満を「A」、1%以上を「B」とした。
抵抗上昇率(%)=[(90℃、500時間後抵抗値)−(初期抵抗値)]/(初期抵抗値)
【0090】
製造例1
アミノ樹脂粒子の合成
メラミン、ベンゾグアナミン、ホルマリン及び炭酸ナトリウム水溶液を含む水性媒体を攪拌しながら85℃に加熱して初期縮合物を得た。別に、ノニオン系界面活性剤(「エマルゲン(登録商標) 430」、花王社製)水溶液を攪拌しながら50℃に加熱した。この界面活性剤水溶液に、上記初期縮合物を投入し乳濁液を得た。これに硬化触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を加え、50〜60℃で3時間保持して縮合重合し、硬化樹脂の乳濁液を得た。この乳濁液から硬化樹脂を沈降分離して得られたペーストをエマルゲン430とドデシルベンゼンスルンホン酸水溶液に分散させ、90℃で1時間保持した後急冷した。この乳濁液から、沈降分離することにより硬化球状樹脂を得た(ここで、メラミン/ベンゾグアナミン/ホルムアルデヒドの質量比率は31.5/31.5/37である。)。
上記の硬化球状樹脂に水及び硬化触媒(「キャタニットA」、日東理研社製)を加え、オートクレーブを用いて170℃で3時間加熱加圧処理した。この処理後、粒子をろ別し純水で数回洗浄した後、160℃で4時間乾燥し、アミノ樹脂粒子を得た。
得られたアミノ樹脂粒子の個数平均粒子径は14μm、粒子径の変動係数は4.5%であった。
【0091】
触媒化処理工程
前記アミノ樹脂粒子を基材粒子として用いた。基材粒子3gに水40mLを加え、超音波分散を行った。この分散液を、液温60℃で攪拌しながら、塩化パラジウム水溶液(濃度19.5g/L)0.2mLを添加し、5分間維持させ、基材粒子の表面にパラジウムイオンを捕捉させる活性化処理を行った。次いで、基材粒子をろ別し、70℃の温水70mLで洗浄した後、水20mLを加えて、スラリーを調製した。このスラリーに超音波を照射した状態で、ジメチルアミンボランとホウ酸との混合水溶液(ジメチルアミンボラン濃度1g/L、ホウ酸濃度9.9g/L)2mLを加えた。常温で超音波を併用しながら2分間照射して、パラジウムイオンの還元処理を行った。
【0092】
第1無電解メッキ工程
触媒化処理工程で得られた還元処理後のスラリーを、75℃に加熱したメッキ液(酒石酸ナトリウム濃度16.9g/L、硫酸ニッケル濃度1.33g/L、次亜リン酸ナトリウム濃度1.85g/L)180mLに攪拌しながら添加した。スラリーを投入してから1分後、0.37gの次亜リン酸ナトリウムを投入し、さらに1分間攪拌を続けた。
【0093】
第2無電解メッキ工程
第1無電解メッキ工程で得られたスラリーとメッキ液との混合液に、ニッケルイオン含有液(グリシン濃度40.5g/L、硫酸ニッケル濃度133.2g/L)、還元剤含有液(次亜リン酸ナトリウム濃度1.85g/L、水酸化ナトリウム濃度104g/L)の2液を、それぞれ3mL/分の添加速度で添加した。添加量はそれぞれ22.4mLとした。2液の添加後、液温を75℃に保持し、水素ガスの発生が終了してから60分間攪拌を続けた。その後、固液分離を行い、粒子をイオン交換水、メタノールで洗浄した後、100℃の真空乾燥機で乾燥させた。これにより、ニッケルメッキを施した導電性微粒子を得た。得られた導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を観察した結果を
図1に示す。
図1に示すように、ニッケル層には粒界が認められ、ニッケル層の厚み方向に対して斜め方向に配向する粒界及びニッケル層の層方向に伸びる粒界を有する、いわゆる葉脈状に配向した構造を有するものであった。また、平面型の粒界構造断面を呈するものであった。断面を測長した結果、導電性金属層の厚さは0.12μmであった。また、ニッケル層中のリン濃度は8.9質量%であった。
【0094】
製造例2
第2無電解メッキ工程において、ニッケルイオン含有液の添加量を45mlにしたこと以外は、製造例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
得られた導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を観察したところ、粒界が認められ、製造例1と同様に、平面型の粒界構造断面を呈し、厚み方向に対して斜めに粒界を有する葉脈状の粒界断面構造を示した。断面を測長した結果、導電性金属層の厚さは0.20μmであった。また、ニッケル層中のリン濃度は8.8質量%であった。
【0095】
製造例3
製造例1で得られたニッケル−リン合金メッキ皮膜を有する導電性微粒子50部を200部のメタノールに超音波分散させた。得られた導電性微粒子の分散液に、ポリメタクリル酸メチル系架橋物の水分散体(日本触媒社製、エポスター(登録商標) MX100W)100部を加えて、さらに超音波を用いて均一に分散させた。次いで、エバポレーターでメタノール、水を留去し、導電性微粒子の表面をポリメタクリル酸メチル系架橋物で被覆して、絶縁被覆導電性微粒子を得た。
得られた導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を観察したところ、粒界が認められ、製造例1と同様に、平面型の粒界構造断面を呈し、厚み方向に対して斜めに配向する粒界を有する葉脈状の粒界断面構造を示した。断面を測長した結果、導電性金属層の厚さは0.12μmであった。また、ニッケル層中のリン濃度は8.9質量%であった。
【0096】
製造例4
第2無電解メッキ工程において、ニッケルイオン含有液中のグリシンを、酒石酸ナトリウム(濃度48.5g/L)に変更し、ニッケル層の厚さを0.15μmにしたこと以外は、製造例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
得られた導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を観察したところ、粒界は認められなかった。
【0097】
製造例5
第1無電解メッキ工程において、めっき液中の酒石酸ナトリウムをグリシン(濃度20.3g/L)に変更し、ニッケル層の厚さを0.15μmにしたこと以外は、製造例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
得られた導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を観察したところ、粒界はニッケル膜の厚さ方向に配向し、粒界が形成するセグメントが柱状を成し、粒界断面構造は、高さがほぼ0.15μm、幅が0.01〜0.03μm、高さ/幅の比が5〜15の範囲にある柱状構造が多数隣接する構造であった。
【0098】
得られた導電性微粒子について、接続信頼性評価を行い、結果を表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に示すように、導電性金属層の厚さ方向断面に粒界が認められ、粒界が葉脈状に配向していた製造例1〜3では、いずれも接続信頼性が優れていた。
これに対して、導電性金属層の厚さ方向断面に粒界が認められなかった製造例4、導電性金属層の厚さ方向断面に粒界が認められるが、該粒界構造が厚さ方向に配向する柱状構造からなる製造例5では、接続信頼性が劣っていた。