【実施例】
【0021】
以下、本発明による銀めっき材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0022】
[実施例1]
まず、素材(被めっき材)として67mm×50mm ×0.3mmの純銅板を用意し、この被めっき材とSUS板をアルカリ脱脂液に入れ、被めっき材を陰極とし、SUS板を陽極として、電圧5Vで30秒間電解脱脂を行い、水洗した後、3%硫酸中で15秒間酸洗を行った。
【0023】
次に、3g/Lのシアン化銀カリウムと90g/Lのシアン化カリウムからなる銀ストライクめっき浴中において、被めっき材を陰極とし、白金で被覆したチタン電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら電流密度2.5A/dm
2で10秒間電気めっき(銀ストライクめっき)を行った。
【0024】
次に、74g/Lのシアン化銀カリウム(KAg(CN)
2)と、100g/Lのシアン化カリウム(KCN)と、18mg/Lのセレノシアン酸カリウム(KSeCN)からなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において電流密度5A/dm
2で銀の膜厚が3μmになるまで電気めっき(銀めっき)を行った。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は10mg/L、Ag濃度は40g/L、フリーCN濃度は40g/L、Ag/フリーCN質量比は1.0である。
【0025】
このようにして作製した銀めっき材について、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。
【0026】
銀めっき材の{200}配向強度比は、X線回折(XRD)分析装置(理学電気株式会社製のRINT−3C)により、管球Cu、管電圧30kV、管電流30mA、サンプリング幅0.020°の条件で、モノクロメータとガラスの試料ホルダを使用して得られたX線回折パターンから、銀めっき皮膜の{111}面、{200}面、{220}面および{311}面の各々のX線回折ピークの積分強度を求めて、その合計に対して{200}面のX線回折ピークの積分強度が占める割合として算出した。その結果、{200}配向強度比は62.3%であった。
【0027】
銀めっき材の耐熱性は、銀めっき材を乾燥機(アズワン社製のOF450)により200℃で144時間加熱する耐熱試験の前後に、電気接点シミュレータ(山崎精機研究所製のCRS−1)により荷重50gfで接触抵抗を測定することによって評価した。その結果、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.9mΩ、耐熱試験後では2.3mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗も5mΩ以下と良好であり、耐熱試験後の接触抵抗の上昇が抑制されていた。
【0028】
銀めっき材の曲げ加工性は、JIS Z2248のVブロック法に準じて、銀めっき材を素材の圧延方向に対して垂直方向にR=0.1で90度に折り曲げた後、その折り曲げた箇所を顕微鏡(キーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX−1000)により1000倍に拡大して観察し、その割れの有無によって評価した。その結果、割れは観察されず、曲げ加工性が良好であった。
【0029】
[実施例2]
111g/Lのシアン化銀カリウムと100g/Lのシアン化カリウムと18mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は10mg/L、Ag濃度は60g/L、フリーCN濃度は40g/L、Ag/フリーCN質量比は1.5である。
【0030】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は61.6%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.8mΩ、耐熱試験後では2.5mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗も5mΩ以下と良好であり、耐熱試験後の接触抵抗の上昇が抑制されていた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察されず、曲げ加工性が良好であった。
【0031】
[実施例3]
111g/Lのシアン化銀カリウムと120g/Lのシアン化カリウムと18mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は10mg/L、Ag濃度は60g/L、フリーCN濃度は48g/L、Ag/フリーCN質量比は1.3である。
【0032】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は74.4%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.9mΩ、耐熱試験後では2.5mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗も5mΩ以下と良好であり、耐熱試験後の接触抵抗の上昇が抑制されていた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察されず、曲げ加工性が良好であった。
【0033】
[実施例4]
111g/Lのシアン化銀カリウムと140g/Lのシアン化カリウムと18mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は10mg/L、Ag濃度は60g/L、フリーCN濃度は58g/L、Ag/フリーCN質量比は1.1である。
【0034】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は60.4%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.8mΩ、耐熱試験後では3.2mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗も5mΩ以下と良好であり、耐熱試験後の接触抵抗の上昇が抑制されていた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察されず、曲げ加工性が良好であった。
【0035】
[実施例5]
148g/Lのシアン化銀カリウムと120g/Lのシアン化カリウムと18mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は10mg/L、Ag濃度は80g/L、フリーCN濃度は48g/L、Ag/フリーCN質量比は1.7である。
【0036】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は79.9%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.7mΩ、耐熱試験後では2.0mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗も5mΩ以下と良好であり、耐熱試験後の接触抵抗の上昇が抑制されていた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察されず、曲げ加工性が良好であった。
【0037】
[実施例6]
148g/Lのシアン化銀カリウムと140g/Lのシアン化カリウムと18mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は10mg/L、Ag濃度は80g/L、フリーCN濃度は56g/L、Ag/フリーCN質量比は1.4である。
【0038】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は72.7%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.9mΩ、耐熱試験後では2.4mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗も5mΩ以下と良好であり、耐熱試験後の接触抵抗の上昇が抑制されていた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察されず、曲げ加工性が良好であった。
【0039】
[実施例7]
148g/Lのシアン化銀カリウムと140g/Lのシアン化カリウムと11mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は6mg/L、Ag濃度は80g/L、フリーCN濃度は56g/L、Ag/フリーCN質量比は1.4である。
【0040】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は81.2%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では1.0mΩ、耐熱試験後では2.4mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗も5mΩ以下と良好であり、耐熱試験後の接触抵抗の上昇が抑制されていた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察されず、曲げ加工性が良好であった。
【0041】
[実施例8]
148g/Lのシアン化銀カリウムと140g/Lのシアン化カリウムと26mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は14g/L、Ag濃度は80g/L、フリーCN濃度は56g/L、Ag/フリーCN質量比は1.4である。
【0042】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は48.1%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.8mΩ、耐熱試験後では3.6mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗も5mΩ以下と良好であり、耐熱試験後の接触抵抗の上昇が抑制されていた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察されず、曲げ加工性が良好であった。
【0043】
[比較例1]
74g/Lのシアン化銀カリウムと140g/Lのシアン化カリウムと18mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は10g/L、Ag濃度は40g/L、フリーCN濃度は56g/L、Ag/フリーCN質量比は0.7である。
【0044】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は33.6%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.8mΩ、耐熱試験後では5.6mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗が5mΩ以上と良好ではなく、耐熱試験後の接触抵抗が上昇していた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察され、素材が露出しており、曲げ加工性が良好でなかった。
【0045】
[比較例2]
148g/Lのシアン化銀カリウムと100g/Lのシアン化カリウムと18mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は10g/L、Ag濃度は80g/L、フリーCN濃度は40g/L、Ag/フリーCN質量比は2.0である。
【0046】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は25.9%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.9mΩ、耐熱試験後では12.3mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗が5mΩ以上と良好ではなく、耐熱試験後の接触抵抗が上昇していた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察され、素材が露出しており、曲げ加工性が良好でなかった。
【0047】
[比較例3]
148g/Lのシアン化銀カリウムと140g/Lのシアン化カリウムと36mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は20g/L、Ag濃度は80g/L、フリーCN濃度は56g/L、Ag/フリーCN質量比は1.4である。
【0048】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は5.4%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.9mΩ、耐熱試験後では15.7mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗が5mΩ以上と良好ではなく、耐熱試験後の接触抵抗が上昇していた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察され、素材が露出しており、曲げ加工性が良好でなかった。
【0049】
[比較例4]
148g/Lのシアン化銀カリウムと140g/Lのシアン化カリウムと55mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は30g/L、Ag濃度は80g/L、フリーCN濃度は56g/L、Ag/フリーCN質量比は1.4である。
【0050】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は5.1%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.7mΩ、耐熱試験後では94.2mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗が5mΩ以上と良好ではなく、耐熱試験後の接触抵抗が上昇していた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察され、素材が露出しており、曲げ加工性が良好でなかった。
【0051】
[比較例5]
148g/Lのシアン化銀カリウムと140g/Lのシアン化カリウムと73mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる銀めっき浴中において、被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより400rpmで撹拌しながら液温18℃において膜厚が3μmになるまで電流密度5A/dm
2で電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。なお、使用した銀めっき浴中のSe濃度は40g/L、Ag濃度は80g/L、フリーCN濃度は56g/L、Ag/フリーCN質量比は1.4である。
【0052】
このようにして作製した銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、{200}配向強度比を算出し、耐熱試験前後の接触抵抗および曲げ加工性を評価した。その結果、{200}配向強度比は4.8%であった。また、銀めっき材の接触抵抗は、耐熱試験前では0.7mΩ、耐熱試験後では574.5mΩであり、耐熱試験後の接触抵抗が5mΩ以上と良好ではなく、耐熱試験後の接触抵抗が上昇していた。さらに、折り曲げ後の銀めっき材に割れは観察され、素材が露出しており、曲げ加工性が良好でなかった。
【0053】
これらの実施例1〜8および比較例1〜5銀めっき材を製造するために使用した銀めっき浴の組成を表1に示し、銀めっき材の特性を表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】