(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
我が国は、国土の大半が山間部で占められ、しかも急峻な地形であることから、地方に整備される道路は多くの橋梁に頼っているのが現状である。一方、都市部では無数の構造物が密集しており、そこへ新たな道路を計画するとなれば、跨道橋、跨線橋、高架橋など、やはり多くの橋梁に頼ることとなる。
【0003】
橋梁は、その損壊時における社会的影響を考えるまでもなく重要な構造物であり、そのため古くから「道路橋示方書・同解説」といった設計基準を整備して厳格に設計され、そして極めて高い品質で施工されている。このように橋梁は高品質が求められる一方で、社会的要請と技術力の向上から、より経済的に、より短い工期で、施工されることも求められるようになってきた。
【0004】
橋梁の上部工を構成する床版は、新設時に設置されるのは当然のことながら、既設橋の改修時にも設置されるものであり、近年では次のような理由から既設橋改修が頻繁に行われるようになり、これに伴って高付加価値床版への取替の機会も増加している。
【0005】
東京オリンピックを目前にした昭和30年代は、いわゆる建設ラッシュといわれ多くのコンクリート構造物が構築された。これらのコンクリート構造物も、現在では約50年が経過しようとしている。コンクリートの耐久性は50年とも100年ともいわれるが、これについては未だ検証されておらず、仮に50年とすると我が国の多くのコンクリート構造物、例えば橋梁のコンクリート床版は何らかの補強対策を必要としていることになる。実際、昨今では地方自治体を中心に橋梁点検が実施されており、多くのコンクリート床版の劣化や損傷が発見されている。このような状況から、盛んに既設橋コンクリート床版の改修工事が行われている。
【0006】
前述のとおり橋梁工事は急速施工が要請されるところであり、既設橋の改修工事の場合は特に工期短期が求められている。例えば高速道路など自動車専用道路の高架橋は、膨大な交通量を確保して我が国の流通産業を支えており、供用停止による経済的損失を考えると一日でも早く工事を完成することが強く望まれる。
【0007】
以上のような背景から、橋梁の床版にはプレキャスト床版が多用されるようになってきた。従来から採用されている場所打ちコンクリート工法では、型枠設置からコンクート打設、さらには養生期間と、長い施工期間を必要としていたが、プレキャスト床版は工場で製作され、しかも容易に設置できるため、現場を占有する期間が極めて短くなる。しかも技術の進歩によりプレキャスト床版の適用範囲が大幅に広がり、例えば鋼・コンクリート合成床版形式とすることで、10mを超える長支間や、半径100m以下の曲線橋、斜角45°程度の斜橋などにも適用可能で、プレキャスト床版が採用しやすくなってきたことも、プレキャスト床版の採用を後押ししている。
【0008】
なお、一般的に「プレキャスト」とは、工場や製造ヤード(施工現場も含む)などの場所で、あらかじめコンクリート部材を製作しておくことであり、このプレキャストによって製作された床版は「プレキャスト床版」と呼ばれる。
【0009】
一方で、プレキャスト床版は、製作場所から施工現場までの公道輸送を伴うため、あまり大きな部材とすることができない。従って、複数のプレキャスト床版を橋軸方向(あるいは橋軸直角方向)に並べ、それぞれプレキャスト床版同士を連結して、床版全体を完成させている。
【0010】
複数のプレキャスト床版を連結する場合、プレキャスト床版とプレキャスト床版との間にはいわゆる「継手」が設けられる。そしてこの継手には大きく2つの問題が挙げられる。一つは構造上の問題で、もう一つは施工上の問題である。
【0011】
橋梁の床版は、自重や上載荷重、その他衝撃荷重等を受け、その結果、床版には断面力(軸力、せん断力、曲げモーメント)が発生する。床版全体を一体構造として(例えば現場打ちコンクリート工法で)構築すれば、部材全体で荷重を負担し、任意箇所で断面力が集中することはない。一方、プレキャスト床版を連結して橋梁床版を構築した場合、その継手箇所が構造上の弱点となって、せん断力、曲げモーメントが集中してしまうおそれがあるというのが、構造上の問題である。
【0012】
プレキャスト床版は、工事の急速施工を可能にすることが大きな特長であるが、継手箇所での連結作業に手間がかかると、その分だけ急速という効果が減じてしまう。ところが、従来におけるプレキャスト床版の継手では、上記した構造上の問題を補う目的で、補強鉄筋を配置したり、鋼線や鋼棒を緊張してテンションを与えたり、特殊な治具で隣接するプレキャスト床版同士を固定したり、継手箇所にコンクリートやモルタルを打設するなど、種々の「連結補強作業」が行われていた。その結果、プレキャスト床版の大きな特長である急速施工が十分に生かされないというのが、施工上の問題である。特に、継手箇所に打設するコンクリートやモルタルの量が多いと、その打設のために割かれる時間が工期全体に大きな影響を及ぼすこととなる。
【0013】
構造上の問題を解決するため、従来では次のような手法でプレキャスト床版を連結していた。プレキャスト床版の端部には、構造鉄筋(主筋や配力筋のこと)を突出させた継手用鉄筋が設けられており、連結しようとする双方のプレキャスト床版の継手用鉄筋を重ね合わせ、結束線で連結していた。双方の継手用鉄筋を重ね合わせる場合、定着長として所定長さ(鉄筋径Dの30倍以上)を要するため、継手用鉄筋はプレキャスト床版から30D以上の長さで突出させなければならず、つまり連結しようとする双方のプレキャスト床版は、30D以上の間隔を設けて配置されなければならない。例えば構造鉄筋がD22の場合、双方のプレキャスト床版の間隔は700〜800mm程度となり、この700〜800mmに版厚を乗じた空間にモルタルもしくはコンクリートを打設することになる。
【0014】
上記のような継手構造とすれば構造上の問題は解決できるものの、モルタル打設量が大きくなってしまい一方の施工上の問題は解決できない。さらに、連結しようとするプレキャスト床版の継手用鉄筋どうしを結束する必要から、双方の継手用鉄筋の大きなズレ(誤差)が許されず、製作時の鉄筋の位置(ピッチ)や、設置する際の配置には、厳しい精度管理が要求されていた。
【0015】
これまでも構造上の問題あるいは施工上の問題を解決すべく、プレキャスト床版の継手に関する改良技術が提案されており、例えば特許文献1では、「継手部」に打設する間詰めコンクリート容積を減量することで工期短縮とコスト縮減を図った継手構造が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[実施形態]
本願発明のプレキャスト床版と、プレキャスト床版の継手構造、及びプレキャスト床版継手の
連結方法の一実施形態について、図に基づいて説明する。
【0037】
(全体構成)
図1は床版設置中の橋梁を示す全体図であり、
図1(a)はその側面図、
図1(b)はその平面図、
図1(c)は
図1(b)に示すD部の詳細図である。
図1(a)に示すように、この橋梁には既にいくつかのプレキャスト床版1が橋桁2の上に並べられており、いま一つのプレキャスト床版1が揚重機で吊られて橋桁2上に設置されるところである。
図2にも示すように、プレキャスト床版1は2以上の橋桁2(図では3つの橋桁2)の上に架けられ、橋軸方向に並べられていく。もちろん、道路幅員が広い橋梁の場合など、橋軸直角方向にもプレキャスト床版1が並べて配置されることもある。
【0038】
橋桁2上の所定位置に並べられたプレキャスト床版1は、隣接する他のプレキャスト床版1と連結されていく。ここでいう「連結」とは、それぞれ独立したプレキャスト床版1をまとめて一体化することであり、具体的には断面力(軸力、せん断力、曲げモーメント)を伝達し得るようにプレキャスト床版1同士を結合することである。このように、橋桁2上で隣接する一方のプレキャスト床版1と他方のプレキャスト床版1の連結が、順次行われていき橋梁の床版全体が完成される。
【0039】
図1(a)や
図2に示すように、プレキャスト床版1を橋桁2上に配置する際、通常は隣接するプレキャスト床版1が既に橋桁2上に配置されており、それぞれのプレキャスト床版1は所定の位置関係となるように並べられる。例えば
図1(b)に示すように、連結しようとする2つのプレキャスト床版1の間に隙間Nを設けて配置することができる。双方のプレキャスト床版1同士を接触させて配置することもできるが、この場合は製造誤差や設置誤差の影響から微小な隙間が生じることもあるので、あらかじめ隙間Nを設けた配置とすることが望ましい。なお、この隙間Nにはモルタルなどの間詰め材が充填されるため、その間隔はモルタル等の打設可能な幅(例えば30mm以上など)とする。以下、連結のため隣接配置される2つのプレキャスト床版1を「双方のプレキャスト床版1」と呼び、「双方のプレキャスト床版1」のうち一つを「一方のプレキャスト床版1」、残りを「連結他方のプレキャスト床版1」と呼ぶ。また、双方のプレキャスト床版1が連結するために所定配置に置かれた状態を、「連結状態」と呼ぶこととする。
【0040】
連結状態に配置された双方のプレキャスト床版1は、それぞれの端部が向き合って(対向して)おり、
図1(a)に示す継手箇所Pを形成している。この継手箇所Pにおいて、後述する継手用鉄筋の配置や間詰め材の充填が行われることで、双方のプレキャスト床版1は連結される。
【0041】
以上説明したように、プレキャスト床版1は橋桁2上に並べられ、連結状態となった双方のプレキャスト床版1は継手箇所Pで連結される。これを順次繰り返すことで、橋梁の床版全体が完成される。なお
図1(a)〜(c)や
図2では、単純梁形式の橋梁を示しているが、これに限らずあらゆる構造形式(多径間形式など)で本願発明を実施することができる。また、ここではプレキャスト床版1を橋軸方向で連結する場合の継手構造について説明しているが、橋軸直角方向にプレキャスト床版1を連結する場合であっても同様に本願発明を実施することができる。
【0042】
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0043】
(プレキャスト床版)
プレキャスト床版1は、工場や製造ヤード(施工現場も含む)などの場所で、あらかじめ(床版設置の事前に)製作されるものであり、おもに主筋や配力筋(以下、まとめて「構造鉄筋3」という。
図3(c)参照)とコンクリートからなるものである。本願発明のプレキャスト床版1には、RC(Reinforced Concrete)のものや、PC(Prestressed Concrete)のものをはじめ、従来から用いられるあらゆる構造のプレキャスト版が含まれる。
【0044】
一般的なプレキャスト床版1の形状は、
図2にも示すように、平面視が概ね長方形で、厚さが比較的薄い板状を呈している。プレキャスト床版1は橋桁2に架け渡されるため、橋桁2方向(橋軸方向)は任意の寸法とすることができるが、橋軸直角方向の寸法は橋桁2の間隔に制約され、通常は橋軸方向が短辺で橋軸直角方向が長辺の平面形状となる。プレキャスト床版1の平面形状を例示すれば、長辺が5〜10mで、短辺が1〜3mの長方形とすることができる。もちろん本願発明は、このような形状に限定されるものではないが、便宜上、本実施形態ではプレキャスト床版1の平面形状が長方形の場合で説明する。なお以下の説明のため、
図1(b)に示すようにプレキャスト床版1の平面上に2軸を設け、一方の軸を「版軸方向」とし、他方の軸を「版軸直角方向」とする。版軸方向は、連結状態で連結他方のプレキャスト床版1が置かれる方向であり、本実施形態では
図1(b)に示すようにプレキャスト床版1の短辺方向である。また、版軸直角方向は、文字どおり版軸方向に対して直角方向であり、本実施形態では
図1(b)に示すようにプレキャスト床版1の長辺方向である。すなわち、プレキャスト床版1が橋軸方向で連結される場合、連結状態では版軸方向と橋軸方向が一致し、版軸直角方向と橋軸直角方向が一致する。
【0045】
プレキャスト床版1は、本体部と継手端部で構成される。継手端部とは、
図1(b)に示すように、プレキャスト床版1のうち版軸方向における端部側に設けられるもので、
図1(c)に示すように、凸部4と
凹部5で形成される。そしてプレキャスト床版1のうち、継手端部を除く部分で主体となる部分が本体部である。なお継手端部は、プレキャスト床版1の両端(版軸方向)又は1端に設けられる。例えば、
図1(b)に示すように、橋梁床版の端部に配置されるプレキャスト床版1(図では左端)は1端側にのみ継手端部を設け、スパン中間に配置され両側ともに連結されるプレキャスト床版1は両側に継手端部を設けるとよい。場合によっては(版軸直角方向にも連結する場合など)、長方形のうち3辺あるいは4辺に継手端部を設けることもできる。
【0046】
(継手端部)
図1(b)に示すように、継手端部には複数の凸部4と
凹部5が繰り返し配置されている。この
凹部5は、
図1(c)に示すように、版軸端(版の端面のことで、図では右端)から版軸方向に切り欠かれたもので、略長方形となっている。この
凹部5には、後述するように継手用鉄筋が配置され、且つ間詰め材が充填されるので、これに必要な空間が確保できれば、長方形に限らず任意の形状とすることができる。また、この
凹部5は、版軸直角方向に間隔をあけて複数形成されており、切欠かれずに残った部分が凸部4であり、換言すれば凸部4は
凹部5を設けることで形成されている。
【0047】
本願発明のプレキャスト床版1は、後に説明する継手用鉄筋6(
図3(a))の配置方法や補強鉄筋7(
図4(a))の取付け方法において種々の類型があり、これに伴い継手構造と
連結方法にも種々の類型が存在する。
図3は、そのうちの第1の類型のプレキャスト床版1を示す説明図であり、
図3(a)は連結状態前の第1の類型のプレキャスト床版1を示す平面図、
図3(b)は連結状態の第1の類型のプレキャスト床版1を示す平面図、
図3(c)は
図3(b)に示すA−A矢視の断面図、
図3(d)は
図3(b)に示すB−B矢視の断面図である。
【0048】
図3(a)に示すように、凸部4には継手用鉄筋6が設けられている。
図3(c)(d)に示すように、構造鉄筋3が本体部と凸部4にわたって配置され、さらには凸部4の端面から突出しており、この突出した部分が継手用鉄筋6である。すなわち、この図に示す継手用鉄筋6は構造鉄筋3の一部分であるが、便宜上ここでは突出部分を継手用鉄筋6として説明する。なお、後述するように継手用鉄筋6を構造鉄筋3とは別体とすることも可能で、この場合は、プレキャスト床版1(本体部と凸部4)に埋設された構造鉄筋3に、継手用鉄筋6を連結する必要がある。要は、継手用鉄筋6は、凸部4の端面から版軸方向(外側)に突出するものであって、構造鉄筋3と連結されるものであれば種々の形態のものを採用できる。
【0049】
また、
図3(c)(d)に示すように、継手用鉄筋6をループ状(U字状)とすることもできる。ループ状とすると鉄筋の定着長を短くすることができるので、本願発明の場合でいえば、継手用鉄筋6の長さを短くすることができて、
凹部5の大きさ(切欠き長さ)も小さくなり、結果的に、間詰め材の充填量を軽減することができるので好適である。
【0050】
図3(b)に示すように、連結する双方のプレキャスト床版1を連結状態とすると、
図3(c)(d)に示すように、一方のプレキャスト床版1(例えば図の左側)の凸部4は、連結他方のプレキャスト床版1(例えば図の右側)の
凹部5に向き合っている(以下、「対向している」という。)。同様に、一方のプレキャスト床版1の
凹部5は、連結他方のプレキャスト床版1の凸部4に対向している。このため、プレキャスト床版1の両端に継手端部を設ける場合、一方の継手端部における
凹部5と凸部4の配列は、他方の継手端部における配列と異なっている。つまり、プレキャスト床版1に任意の版軸方向線を描くと、例えば右側端部では凸部4が配列されており、左側端部では
凹部5が配列されることとなる。
【0051】
また連結状態では、
図3(b)に示すように、一方のプレキャスト床版1の凸部4に設けられた継手用鉄筋6は、対向する
凹部5内に収まっている。すなわち、
凹部5の切欠き長さ(版軸端から版軸方向に切り欠かれる長さ)は、連結状態で設けられる隙間N(
図1(b))の間隔と継手用鉄筋6の長さに合わせて設計される。
【0052】
双方のプレキャスト床版1を連結する場合、
凹部5やプレキャスト床版1間に設けられる隙間Nには、間詰め材16が充填される。よって、
凹部5には間詰め材16を充填するための空間(充填空間)が必要で、所定の切欠き幅(版軸直角方向の寸法)で切欠かれる必要がある。例えば間詰め材をモルタルとした場合、
凹部5の切欠き幅は30mm以上とするのが望ましい。なお、
凹部5の切欠き幅は、通常、継手用鉄筋6の鉄筋径よりも大きく、つまり継手用鉄筋6は
凹部5内で幅方向に余裕が生ずるので、製造過程における継手用鉄筋6の配筋誤差や、プレキャスト床版1設置時における配置誤差を吸収することができる、という効果を奏する。
【0053】
上記のとおり、双方のプレキャスト床版1が連結されると、一方のプレキャスト床版1の継手用鉄筋6は、連結他方のプレキャスト床版1の
凹部5に収容され、
凹部5に充填された間詰め材16が硬化して固定される。継手用鉄筋6がプレキャスト床版1内に埋設された構造鉄筋3(
図3(c)(d))と連結されていることを考えると、継手用鉄筋6が
凹部5に収容されるということは、一方のプレキャスト床版1の構造鉄筋3が、連結他方のプレキャスト床版1に定着されることになる。従来では、双方のプレキャスト床版1から構造鉄筋3を突出させ、これらを結束線で一体にすることで、双方のプレキャスト床版1を連結していた。これに対して、本願発明では継手用鉄筋6を連結他方のプレキャスト床版1に、いわば呑み込ませることで、双方のプレキャスト床版1を連結している。すなわち、従来では双方のプレキャスト床版1の間に鉄筋の定着長分(鉄筋径Dの30倍以上)だけ間隔を設けてそこに間詰め材16を充填する必要があったが、本願発明ではこのような間隔を設ける必要がない。そのため本願発明は、従来に比べると間詰め材の充填量を著しく軽減することができて、間詰め材のひび割れといった構造面、材料費といった経済面、施工手間や施工時間といった施工面で有利な効果を奏する。
【0054】
(間詰め材)
前記したように、
凹部5に継手用鉄筋6を収容した後にその
凹部5と継手用鉄筋6の間にできる充填空間14と、連結状態で双方のプレキャスト床版1間に設けられる隙間Nには、間詰め材16が充填される。一般的には、この間詰め材16にはモルタルが用いられるが、もちろん状況に応じてコンクリート、繊維補強モルタルやポリマーモルタルなどを採用してもよい。
【0055】
急速施工という観点から、使用する間詰め材が硬化に要する時間は短い方が望ましい。例えば、超速硬モルタルを用いれば、充填から1時間程度で使用に耐える強度発現が期待できるので、好適である。また、短繊維補強したモルタルを使用すれば、引張強度が増してひび割れ抵抗性や変形性能が向上するので、さらに好適となる。
【0056】
(補強鉄筋)
図4は、第2の類型のプレキャスト床版1を示す説明図であり、
図4(a)は連結状態前の第2の類型のプレキャスト床版1を示す平面図、
図4(b)は連結状態の第2の類型のプレキャスト床版1を示す平面図、
図4(c)は
図4(a)に示すA’−A’矢視の断面図、
図4(d)は
図4(b)に示すA−A矢視の断面図、
図4(e)は
図4(a)に示すB’−B’矢視の断面図、
図4(f)は
図4(b)に示すB−B矢視の断面図である。これらの図に示すように、継手箇所P(
図1(a))には版軸直角方向に配置される補強鉄筋7を設置することができる。本来構造上の弱点となっていた継手箇所Pは、この補強鉄筋7を設置することでさらに補強されるので好適である。
【0057】
図4(a)(b)に示すように、補強鉄筋7は版軸直角方向に配置されるので、継手端部の凸部4と
凹部5を貫通するように設置される。この場合、工場製作の過程で、凸部4と
凹部5に貫通させるように補強鉄筋7をプレキャスト床版1に固定することもできるし、後述するように凸部4に
上面開口部を設けることで、現地(プレキャスト床版1の設置現場)にて補強鉄筋7を設置することもできる。また、連結状態で設けられる隙間N(
図1(b))に、補強鉄筋7を設置することもできる。
【0058】
(緊張部材)
図3(b)〜(c)に示すように、補強鉄筋7に代えて(あるいは加えて)継手箇所P(
図1(a))に緊張材8を設置することもできる。緊張材8としては、PC鋼材を例示することができるが、現地で緊張しテンションを付与するいわゆるポストテンション方式でプレストレス(緊張力)を導入することができるものであれば種々のものを採用することができる。緊張材8を設置するためには、連結状態での双方のプレキャスト床版1の間に隙間N(
図1(b))を設ける必要がある。この隙間Nにあらかじめシース管を配置しておき、そのシース管内に緊張材8を挿入して、間詰め材16を充填する。そして間詰め材16が硬化した後(例えば超速硬モルタルであれば、充填から1時間後)に緊張材8の両端を版軸直角方向に緊張し、その状態でシース管内にグラウト注入するとともに定着具を装着してプレストレスを付与する。
【0059】
なお、シース管を必要としないプレグラウトPC鋼材を使用することも可能で、この場合、シース管の設置や、シース管内へのグラウト注入が省略でき、しかもグラウトの硬化時間も短縮できるので好適である。
【0060】
(プレキャスト床版の類型)
前記したように、本願発明のプレキャスト床版1は、継手用鉄筋6や補強鉄筋7の配置方法の取付け方において種々の類型があり、これに伴い継手構造と
連結方法にも種々の類型が存在する。ここでは、プレキャスト床版1の類型について説明する。
【0061】
図3(a)〜(d)に示すプレキャスト床版1が、第1の類型である。継手用鉄筋6は構造鉄筋3と一連のものであり、U字状を呈している。連結状態(
図3(b))では、双方のプレキャスト床版1の間に隙間N(
図1(b))が設けられ、ここには緊張材8が設置されている。もちろんこの緊張材8に代えて(加えて)補強鉄筋7を設置することもできる。
【0062】
図4(a)〜(f)に示すプレキャスト床版1が、第2の類型である。継手用鉄筋6は第1の類型と同様U字状を呈しているが、構造鉄筋3とは別体であって脱着可能となっているのが特徴である。また、継手端部には、凸部4と
凹部5を貫通するように補強鉄筋7が設置されている。継手用鉄筋6の両端には、
図5に示すように(図では便宜上、継手用鉄筋6の一端のみを示す)、カプラー9a(接続具)が固定して設けられている。また、構造鉄筋3にも、
図5に示すように、カプラー9b(接続具)が固定して設けられている。継手用鉄筋6に固定されたカプラー9aと、構造鉄筋3に固定されたカプラー9bとを突き合わせて、連結ネジ9cで両者を連結する。場合によっては一旦構造鉄筋3に連結した継手用鉄筋6を取り外すこともできる。連結ネジ9cに代えて、中間ナット付きの連結ネジ9dを使用することもできる。
【0063】
第2の類型の継手用鉄筋6は、現地(プレキャスト床版1の設置現場)にて構造鉄筋3に連結固定される。このとき継手用鉄筋6は、連結他方のプレキャスト床版1の補強鉄筋7に係止させた上で、構造鉄筋3に固定される。そのため、現地で補強鉄筋7に係止することができれば、プレキャスト床版1とは別に継手用鉄筋6を搬入することもできるが、現地で補強鉄筋7に係止することができない場合は、あらかじめ補強鉄筋7に係止させた状態で継手用鉄筋6を搬入する必要がある。具体的には
図4(a)〜(f)に示すように、あらかじめ補強鉄筋7に係止されてプレキャスト床版1とともに搬入された継手用鉄筋6は、連結状態(
図4(b)(d)(f))で、連結他方のプレキャスト床版1の構造鉄筋3に連結固定される(
図4(c)〜(d)、
図4(e)〜(f))。
【0064】
図6(a)〜(d)に示すプレキャスト床版1が、第3の類型である。
図6(a)は連結状態前の第3の類型のプレキャスト床版1を示す平面図、
図6(b)は連結状態の第3の類型のプレキャスト床版1を示す平面図、
図6(c)は
図6(b)に示すA−A矢視の断面図、
図6(d)は
図6(b)に示すB−B矢視の断面図である。継手用鉄筋6は、第1の類型と同様、構造鉄筋3と一連のものであり、U字状を呈している。継手端部の凸部4に、上面開放で版軸直角方向に貫通する
上面開口部10(スリット)が設けられているのが特徴である。
【0065】
第3の類型で設けられる
上面開口部10は、補強鉄筋7を設置するためのもので、当然ながら補強鉄筋7を配置できる空間を備えている。同時に、一つの連結端部を構成する複数の凸部4に設けられるそれぞれの
上面開口部10は、補強鉄筋7が配置できるように略一列(一列も含む)に並ぶように配置されている。補強鉄筋7の設置手順の一例を示すと、まず双方のプレキャスト床版1が連結状態に配置され(
図6(b)〜(d))、
上面開口部10の上方から補強鉄筋7が降ろされて
上面開口部10内の所定位置に設置される。このとき、
上面開口部10内にスペーサを設置しておき設置高さを調整することもできる。その後に、
上面開口部10内に間詰め材を充填する。なお
上面開口部10を、上部開放とせずにそれぞれの凸部4を貫通する貫通孔とすることもできるが、間詰め材の充填しやすさを考慮すると、上部開放とする方がよい。
【0066】
図7(a)〜(d)に示すプレキャスト床版1が、第4の類型であり、上記第3の類型の変形である。
図7(a)は連結状態前の第4の類型のプレキャスト床版1を示す平面図、
図7(b)は連結状態の第4の類型のプレキャスト床版1を示す平面図、
図7(c)は
図7(b)に示すA−A矢視の断面図、
図7(d)は
図7(b)に示すB−B矢視の断面図である。継手用鉄筋6は、第1の類型と同様、構造鉄筋3と一連のものであり、U字状を呈しているが、凸部4内に埋設されている。また、継手端部の凸部4に、上面開放で版軸直角方向に貫通する
上面開口部10が設けられているのは第3の類型と同様であるが、一つの凸部4に複数(図では2箇所)の
上面開口部10が設けられている。
【0067】
第4の類型では、継手用鉄筋6を備えた凸部4を、対向する
凹部5内に収容することが特徴である。すなわち、凸部4とともに継手用鉄筋6を連結他方のプレキャスト床版1内に挿入することで、継手用鉄筋6の定着を図っている。なお、一つの連結端部を構成する複数の凸部4に設けられるそれぞれの
上面開口部10が、略一列(一列も含む)に並ぶように配置されるのは第3の類型と同様であるが、凸部4が対向する
凹部5内に収容されることから、
図7(b)に示すように、連結状態で連結他方の凸部4に設けられる
上面開口部10も略一列に並ぶように配置されている。このように、連結状態で双方のプレキャスト床版1に設けられた双方の
上面開口部10が、略一列に並ぶように配置されているので、補強鉄筋7を容易に設置することができる。なお一つの凸部4に2箇所の
上面開口部10が設けられている場合は、
図7(b)に示すように、略一列に並んだ双方の
上面開口部10が2箇所設けられることとなり、この2箇所の一連の
上面開口部10にそれぞれ補強鉄筋7が設置される。
【0068】
図9に示すプレキャスト床版1が第5の類型である。このプレキャスト床版1は、上面が平坦な本体部11の版軸方向一端又は両端に継手端部12を備え、継手端部12に凸部4と
凹部5が版軸直角方向に交互に形成され、その継手端部12の上面(凸部の上面及びその根元側)を本体部11の上面よりも一段低くして段落とし部13を設けてある。
【0069】
図9のプレキャスト床版1を連結する場合は、対向配置された一方のプレキャスト床版1の凸部4から突出している継手用鉄筋6を他方のプレキャスト床版1の
凹部5内に配置させ、補強鉄筋7と緊張材8との双方又はいずれか一方を版軸直角方向に差し込んで凸部4と
凹部5を貫通させる。この配置により、
図9のように、
凹部5内に間詰め材16を充填可能な充填空間14が確保され、プレキャスト床版1間に隙間Nが確保され、対向するプレキャスト床版1の対向する段落とし部13の間の一段低い注入スペース15が形成される。この注入スペース15に
図10のように間詰め材16を注入して、
図11のように間詰め材16を前記充填空間14及び隙間N内に充填することができる。この場合、注入スペース15(
図9)が長く(広く)確保されるので間詰め材を注入し易くなり、注入スペース15内の間詰め材16の上面を平滑に仕上げることができ、プレキャスト床版の継手部分の品質を高めることができる。
【0070】
(施工手順)
本願発明のプレキャスト床版1の設置手順、及びプレキャスト床版1の継手構造の施工手順の一例を示す。
揚重機で吊られたプレキャスト床版1を、既に構築された橋桁2上に降ろす。このとき、一方のプレキャスト床版1の凸部4が、連結他方の
凹部5に対向するように、且つ、一方の
凹部5に連結他方の継手用鉄筋6が収容されるように、あらかじめ測量された指定位置に配置される。なお、双方のプレキャスト床版1の間に隙間Nが得られる場合、版軸方向に所定の間隔をあけてプレキャスト床版1は設置される。
こうして双方のプレキャスト床版1が連結状態となった後、類型2の場合は、一方の補強鉄筋7にU字状の継手用鉄筋6を係止させた上で、接続具(カプラー9a、9b)を使用して連結他方の構造鉄筋3に固定する。
また、類型3や類型4の場合は、凸部4に設けられた
上面開口部10内に補強鉄筋7を設置していく。
その後、継手用鉄筋6を収容した
凹部5(充填空間)、隙間N、
上面開口部10内に、それぞれ間詰め材16を充填していく。この間詰め材16が硬化すれば、双方のプレキャスト床版1の連結が完了する。
なお、緊張材8を設置する場合は、間詰め材16が硬化した後に緊張材8の両端を版軸直角方向に緊張し、その状態で定着具を装着してプレストレス(緊張力)を導入する。
【0071】
[その他の実施形態]
本願発明のプレキャスト床版と、その継手構造及び
連結方法は、2つのプレキャスト床版1を突き合わせて連結する場合に限らず、
図8に示すように、一つの継手部において3つ以上のプレキャスト床版1(
図8では1a、1b、1cの3つ)を連結する場合でも利用することができる。なおこの場合であっても、プレキャスト床版1の構造、継手構造、
連結方法は、あるいはこれらによる作用については前記した[実施形態]と同様である。