特許第5667551号(P5667551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667551
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】マットレス及びその人体角度調整方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/10 20060101AFI20150122BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20150122BHJP
   A47C 27/18 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   A47C27/10 A
   A47C27/15 A
   A47C27/18
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-264605(P2011-264605)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-116188(P2013-116188A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】田中 良
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−103980(JP,A)
【文献】 特開平8−52180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/10
A47C 27/15
A47C 27/18
A61G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルで構成されるマット本体と、
前記マット本体を左右に傾けるためのローリングセルと、
前記セルの空気量を調整するために接続されたポンプと、
前記ポンプから前記セルに対して連通される連通路と、
前記セルの内圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ローリングセルにより、前記マット本体を左右いずれか一方に傾ける動作の後に水平状態とした場合、前記マット本体の内圧を、人体を水平位置に戻すために給気することを特徴とするマットレス。
【請求項2】
セルで構成されるマット本体と、前記マット本体を左右に傾けるためのローリングセルと、前記セルの空気量を調整するために接続されたポンプと、前記ポンプから前記セルに対して連通される連通路と、を備えるマットレスに用いられる人体角度調整方法において、
前記ローリングセルにより、前記マット本体を左右いずれか一方に傾ける動作の後に水平状態とした場合、前記マット本体の内圧を、人体を水平位置に戻すために給気することを特徴とする人体角度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルへの空気の給排気により、横たわる人体の角度を調整することができるエアマットレス及びその人体角度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気圧により膨らむセルにより構成されたエアマットレスが知られている。エアマットレスは、体圧分散寝具等として使用されており、このマットレス上に横たわる患者の体圧が集中することを防止し、患者の身体に床ずれが発生することを防止する寝具として有用である。
【0003】
このようなエアマットレスは、患者を周期的に左右に向きを変える左右連続ローテーション機能や、横を向いた状態を保持する側臥位機能を有している。たとえば、特許文献1には、主エアマット部の裏面側に、主エアマット部の前後方向中心線に対し略対称に一対の体位変換エアマット部が配置されたエアマットレスが記載されている。体位変換エアマット部の片側マットに給気して膨張させ、次にそれを排気し、次に反対側のマットに給気して膨張させ、つぎにそれを排気する、ということを繰り返すことにより左右連続ローテーションを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−52180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
左右連続ローテーション過程で、左右に向きを変える間に水平な体位に戻る。ところが、患者の体が片側に傾いて片側が沈んだ状態であると、主エアマット部は水平状態になっているが、患者は主エアマット部上に完全に水平状態になっていない場合が多い。また、側臥位状態から水平な状態に戻したときも、同様に患者が水平な状態に戻らないことがある。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、左右連続ローテーションあるいは側臥位において、患者を完全に水平な状態に戻すことが調整可能なマットレス及びその人体角度調整方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セルで構成されるマット本体と、マット本体を左右に傾けるためのローリングセルと、前記セルの空気量を調整するために接続されたポンプと、前記ポンプから前記セルに対して連通される連通路と、、前記セルの内圧を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ローリングセルにより、前記マット本体を左右いずれか一方に傾ける動作の後に水平状態とした場合、前記マット本体の内圧を、人体を水平位置に戻すために給気することを特徴とするマットレスである。
【0008】
また、本発明は、セルで構成されるマット本体と、前記マット本体を左右に傾けるためのローリングセルと、前記セルの空気量を調整するために接続されたポンプと、前記ポンプから前記セルに対して連通される連通路と、を備えるマットレスに用いられる人体角度調整方法において、
前記ローリングセルにより、前記マット本体を左右いずれか一方に傾ける動作の後に水平状態とした場合、前記マット本体の内圧を、人体を水平位置に戻すために給気することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マット本体を左右いずれか一方に傾ける動作の後に水平状態とした場合、前記マット本体の内圧を、人体を水平位置に戻すために給気することにより、人体が水平状態にならずにわずかに傾いている状態でも、水平状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態におけるベッド装置の概略を示す図である。
図2】ベッド装置を足側正面から表した図である。
図3】本実施形態におけるベッド装置の各セルを示す図である。
図4】本実施形態における切替弁の動作を説明するための図である。
図5】本実施形態におけるベッド装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態のベッド装置のローテーション動作を示すフローチャートである。
図7】本実施形態のベッド装置のローテーション動作を説明する図である。
図8】本実施形態におけるベッド装置の変形例の各セルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
[1.全体構成図]
[1.1 装置概略]
まず、本発明を適用したベッド装置全体の構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態におけるベッド装置1の概略を説明するための図である。図2は、ベッド装置1を足側正面(図1の制御部40側)から表した図である。
【0013】
ベッド装置1は、ベース30の上に、マット本体10が載置されている。ここで、マット本体10は、複数のセル14が長手方向に連続して配置され構成されている。そして、トップカバーとボトムカバーにより構成されているカバー12により覆われることによりマット本体10が構成されている。
【0014】
また、ベッド装置1は、ローリング部20を有して構成されている。ローリング部20は、サイドセル22と、ローリングセル24とを有しており、患者の体位を変換するために用いられる。サイドセル22は、患者の傾いた体がベッドからずり落ちないようマット本体10の上側両サイドに配置される。ローリングセル24は、患者を左右交互に傾けるため、エアマット10の下側両サイドに配置される。
【0015】
ここで、ベッド装置1は、患者の足側が図1のF方向(制御部40側)、頭側が図1のH方向となるように利用される。したがって、患者の右側が図1のR方向、左側が図1のL方向となる。
【0016】
また、サイドセル22は、右側にあるサイドセル22Rと、左側にあるサイドセル22Lとから構成されている。また、ローリングセル24は、右側にあるローリングセル24Rと、左側にあるローリングセル24Lとから構成されている。
【0017】
そして、各セル(セル14、サイドセル22、ローリングセル24)には、制御部40から送風チューブ42が接続されている。また、制御部40には、ポンプ部50から送風チューブ44が接続されている。更に、制御部40と、ポンプ部50とは、制御ケーブル52で接続されており、各種制御信号がやり取りされる。また、ポンプ部50は、外部から制御ケーブル54が接続されており、ポンプを駆動させるための電源ケーブル56が接続されている。
【0018】
各セル14は複数の組となった系統に別れて連通路として共通の送風チューブ42に接続されている。送風チューブ42は、送風チューブ接続コネクタを介して切替弁に接続されており、切替弁は送風チューブを介してポンプ部50と接続されている。そして、ポンプ部50及び切替弁の動作により各セルの給排気が行われる。この切替弁は、切替弁を使用するものとするが、回転バルブ方式のものでもよい。
【0019】
この各セル14の給排気動作と同様にサイドセル22及びローリングセル24も送風チューブ42が接続され、送風チューブ42を介して切替弁に接続されている。そして、切替弁は送風チューブ44を介してポンプ部50に接続されており、給排気が行われる。
【0020】
なお、連通路である送風チューブ42、ポンプ部50から一本出力されて各セルに分岐して入力される構成であっても良いし、ポンプ部50から複数本出力されることとしても良い。すなわち、各セルを連通させる動作を行う場合に、各セルの圧力値が同一となるような構成であれば良い。
【0021】
[1.2 各セル構成の説明]
続いて、各セル(セル14、サイドセル22及びローリングセル24)の構成について、図3を用いて説明する。図3に示すように、サイドセル22は系統Sとして、ローリングセルは系統R(ローリングセルLは系統R(L)、ローリングセルRは系統R(R))としてそれぞれ切替弁を介してポンプ部50に接続されている。
【0022】
また、各セルは、系統A〜系統Gに別れてポンプ部50に接続されている。例えば、セル14Aは、系統Aとして送風チューブ42Aに接続されている。送風チューブ42Aにより、系統Aに属するセル14Aは、一律に給排気がされることとなる。
【0023】
[1.3 切替弁]
続いて、切替弁の概略配置とその動作について、図4を用いて説明する。実際のローテーション動作においては各系統に対して給排気の切替弁制御が行われるが、本発明の特徴部分は、系統A〜C、系統R(ローリングセルL,R)にあるので、これについて説明する。
【0024】
図4図5に示すように、各セル系統には、ポンプ50から、連通路として送風チューブが接続されており、セル内に空気(エア)を給排気可能である。
また、各セル系統には、切替弁が接続されている。切替弁は、例えばプランジャにより構成されている弁体を有しており、ポンプ側に接続される切替弁(弁体)と、セル系統のエアを大気に開放するための切替弁(弁体)とを有している。
更に、切替弁とセル系統の間には、圧力センサが接続されている。
【0025】
この各セル系統に接続される切替弁は、それぞれ切替弁を有する構成としても良いし、一つの切替弁で構成されていても良い。すなわち、一つの切替弁において、弁体の開閉状態により、ポンプ側に接続されて給排気できる状態と、大気圧に排気出来る状態と、セルを密閉する状態とを切り替えるように動作しても良い。
【0026】
また、ポンプ50には、切替弁64が設けられている。切替弁64を開いてポンプ50を駆動し、各セル系統に接続されている各切替弁を開閉することにより、セル系統の給排気を個別に制御できる。
【0027】
図4には、セル系統A(14a)、セル系統B(14b)、セル系統C(14c)、セル系統R(ローリングセルR:24R、ローリングセルL:24L)が示されている。セル系統A(14a)には、ポンプ50に接続される切替弁60aと、大気圧に開放するための切替弁62aとが接続されている。また、セル系統B(14b)には、ポンプに接続される切替弁60bと、大気圧に開放するための切替弁62bとが、セル系統B(14c)には、ポンプに接続される切替弁60cと、大気圧に開放するための切替弁62cとがそれぞれ接続されている。
また、ローリングセルL(24L)には、ポンプ50に接続される切替弁60dと、大気圧に開放するための切替弁62dとが接続されている。また、ローリングセルR(24R)には、ポンプ50に接続される切替弁60eと、大気圧に開放するための切替弁62eとが、それぞれ接続されている。
【0028】
更に、セル系統A(14a)には圧力センサ150aが、セル系統B(14b)には圧力センサ150bが、セル系統C(14c)には圧力センサ150cがそれぞれ接続されている。また、ローリングセルL(24L)には圧力センサ150dが、ローリングセルR(24R)には圧力センサ150eがそれぞれ接続されている。また、この圧力センサは、接続されているセル(系統)の内圧を検出することが出来る。
【0029】
切替弁64を開いてポンプを駆動し、各セル系統に接続されている各切替弁60a〜60eを開けることにより、セル系統A〜Cとセル系統R(ローリングセル24L,24R)に給気ができる。また、切替弁60a〜切替弁60eを閉じ、切替弁62a〜62eを開けば、セル系統A〜Cとセル系統R(ローリングセル24L,24R)から排気ができる。これら切替弁の開閉を個別に制御することにより、セル系統A〜C及びセル系統Rの給排気を個別に制御できる。
【0030】
[2.機能構成]
続いて、ベッド装置1の機能構成について図5を用いて説明する。ベッド装置1は、図5に示すように、CPU100に、状態検出部110と、記憶部120と、圧力センサ150と、ポンプ制御部160とが接続されている。
【0031】
CPU(Central Process Unit)100は、ベッド装置1の全体を制御するための機能部である。CPU100は、記憶部120に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現している。
【0032】
状態検出部110は、ベッド装置1における各種状態を検出するための機能部である。例えば、圧力センサ150の状態を検出したり、アクチュエータの動作信号を検出したりすることによって状態を検出する。ここで、検出される状態としては、例えばベッドの背上げ角度や、足下げ角度であったり、患者の体重であったり、患者の在床状態であったりと、種々の状態を検出することが可能である。
【0033】
記憶部120は、ベッド装置1の動作に必要な各種プログラムや、各種データが記憶されている機能部である。記憶部120は、例えば、半導体メモリや、HDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。
【0034】
また、記憶部120には、設定テーブル122が記憶されている。設定テーブルは、ベッド装置1における各セル(セル14、サイドセル22及びローリングセル24)の規定内圧値などが記憶されているテーブルである。
【0035】
圧力センサ150は、各セルの圧力を検出するための機能部である。圧力センサ150は、送風チューブ接続コネクタを介して各切替弁(セルの系統毎)に接続されている。圧力センサ150により、各セルの圧力が検出される。
【0036】
ポンプ制御部160は、ポンプ部50を制御させるための機能部である。ポンプ部50を動作、停止させることにより、給気・排気制御が実現可能となる。
【0037】
切替弁制御部170は、セルの系統毎に接続されている切替弁及びポンプ部50に接続されている切替弁を制御する機能部である。切替弁を制御することにより、ポンプ部50の動作と併せて給気が行えたり、排気が行えたりする。また、各セルの空気を保持する制御を行う。
【0038】
操作表示部180は、利用者(例えば、患者や、被介護者、介護スタッフ等)がベッド装置1に対して操作を指示したりするための入力部や、ベッド装置1の状態を利用者に報知するための機能部である。例えば、タッチパネルを有する液晶画面で構成されていたり、ハードウェアキーで構成されていたりする。
【0039】
[3.処理の流れ]
続いて処理の流れについて図を用いて説明する。図6は、本実施形態において、ローテーション機能の処理を示すフローチャートである。図7は、ローテーション動作を説明するための図である。ここでの処理では、ポンプ制御部160の指示によりポンプ50は稼働中である。
上述したように、ローテーション動作においては各系統に対して給排気の切替弁制御が行われるが、本発明の特徴部分は、系統A〜C、系統R(ローリングセルL,R)にあるので、これについて説明する。
【0040】
まず、患者の右半身をアップさせる動作を行う。切替弁制御部170の指示により、系統RのローリングセルR(24R)の切替弁60eが開放され、ローリングセルR(24R)に給気を行う(ステップS11)。このとき内圧を圧力センサ150eが検出し、状態検出部110が、記憶部120の設定テーブル122に記憶されている規定の内圧になったと判定するまで、切替弁60eを開放して給気を続ける。規定内圧になったとき、切替弁制御部170は、切替弁60eを閉じて、規定内圧を所定時間維持し(ステップS12)、図7(a)に示すように、右半身をアップした状態を維持する。
【0041】
次に、患者の右半身をダウンさせる動作を行う。ローリングセルR(24R)の切替弁62eが開放され、ローリングセルR内の空気が強制排気される(ステップS13)。このときの内圧を圧力センサ150eが検出し、状態検出部110が、記憶部120の設定テーブル122に記憶されている規定の内圧(ローテーションLと同じ内圧)になったと判定するまで、切替弁制御部170が切替弁62eを開放して排気を続ける。規定内圧になった時点で、切替弁制御部170は、切替弁62eを閉じる。こうして、図7(b)に示すように、マット本体10が水平となる。
【0042】
しかし、マット本体10が水平になっても、患者の体位はわずかに傾いている状態である。この傾きは約5度程度である。これは、患者の右側半身をアップしたため、左半身がマット本体に沈み込み、マット本体10が水平になっても患者自体は傾いた状態になる。そこで、マット本体10に空気を送り込み患者の姿勢を水平にしてから次の動作に移る。
【0043】
ステップS14にて、身体角度を水平に修正する。たとえば、系統A〜Cの切替弁60a〜60cを開放し、内圧が角度調整圧力値に達するまで系統A〜Cのセル群に給気する。この角度調整圧力値は、1.5kPa以上であればよく、好ましくは2kPaである。こうして、図7(c)に示すように、患者はほぼ水平になる。
【0044】
ここで、マット本体10が水平であるときの各系統を規定内圧値に更に調整する(ステップS15)。各系統を記憶部の設定テーブルに予め記憶させている規定値に切替弁を開閉動作させて調整する。
【0045】
次に患者の左半身をアップさせる動作に移る。切替弁制御部170の指示により、系統LのローリングセルL(24L)の切替弁60dが開放され、ローリングセルL(24L)に給気を行う(ステップS16)。このとき内圧を圧力センサ150dが検出し、状態検出部110が、記憶部120の設定テーブル122に記憶されている規定の内圧になったと判定するまで、切替弁制御部170が切替弁60dを開放して給気を続ける。規定内圧になったとき、図7(d)に示すように、切替弁制御部170は、切替弁60dを閉じて、規定内圧を所定時間維持する(ステップS17)。
【0046】
次に、患者の左半身をダウンさせる動作を行う。ローリングセルL(24L)の切替弁62dが開放され、ローリングセルL内の空気が強制排気される(ステップS18)。このときの内圧を圧力センサ150dが検出し、状態検出部110が、記憶部120の設定テーブルに記憶されている規定の内圧(ローテーションRと同じ内圧)になったと判定するまで、切替弁制御部170が切替弁62dを開放して排気を続ける。こうして、マット本体10が水平となる。
【0047】
しかし、マット本体10が水平になっても、患者の体位はわずかに傾いている状態である。これは、患者の左側半身をアップしたため、右半身がマット本体に沈み込み、マット本体が水平になっても患者自体は傾いた状態になる場合が多い。そこで、マット本体に空気を送り込み患者の姿勢を水平にしてから次の動作に移る。
【0048】
ステップS19にて、ステップ14と同様に、身体角度を水平に修正し、ステップS20にて、ステップS15と同様に、マット本体が水平であるときの各系統を規定内圧値に調整する。
こうした動作を繰り返し、左右ローテーションを行う。なお、左右どちらかのローテーションを一度だけ行う場合も、いずれかのローテーション処理を同様に行う。
【0049】
このように、マット本体が水平になっても、患者の体位はわずかに傾いている状態である場合にも、マット本体10のセル群(系統A〜C)の内圧を角度調整圧力値にすることにより、片側がわずかに沈んで傾いていた人体も、浮き上がって、ほぼ水平状態になる。従って、人体が傾きのない水平状態になるので、体圧分散や褥瘡予防にも効果があるし、ローテーション動作を行っても、人体に対して必ず所望の傾きを得られるという効果も得られる。
【0050】
[4.変形例]
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0051】
上述の実施形態においては、エアセルが複数に分割形成されている例(中心に近いセルが上側と下側とに分割形成されている例)について説明したが、単純に一つのセルで形成されていても良い。
【0052】
例えば、図8に示すように、各エアセルが上下に分割されず、単純に長手方向に配列されることにより、エアマットレス全体が形成されていても良い。また、系統がA〜Cに分割されておらず、一つの系統であっても良い。
【0053】
また、圧力センサを用いずに、例えばポンプの給排気時間によりセルの内圧を制御しても良い。また、圧力センサを用いずに、リリーフバルブによりセルの内圧を制御しても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 ベッド装置
10 マット本体
12 カバー
14 セル
14a、14b、14c セル系統
20 ローリング部
22、22L、22R サイドセル
24、24L、24R ローリングセル
30 ベース
40 制御部
42、44 送風チューブ
50 ポンプ部
52 制御ケーブル
54 制御ケーブル
56 電源ケーブル
60a〜60e、62a〜60e、64 切替弁
100 CPU
110 状態検出部(故障検知部)
120 記憶部
122 設定テーブル
150、150a、150b、150c 圧力センサ
160 ポンプ制御部
170 切替弁制御部
180 操作表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8