特許第5667578号(P5667578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特許5667578高性能ガラス繊維用組成物及びそれをもって成形される繊維
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667578
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】高性能ガラス繊維用組成物及びそれをもって成形される繊維
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/00 20060101AFI20150122BHJP
   C03C 13/02 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C03C13/00
   C03C13/02
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-542538(P2011-542538)
(86)(22)【出願日】2009年12月21日
(65)【公表番号】特表2012-513362(P2012-513362A)
(43)【公表日】2012年6月14日
(86)【国際出願番号】US2009068955
(87)【国際公開番号】WO2010075262
(87)【国際公開日】20100701
【審査請求日】2012年12月21日
(31)【優先権主張番号】12/341,985
(32)【優先日】2008年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508076428
【氏名又は名称】オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】マクギニス ピーター バーナード
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン ダグラス
【審査官】 大工原 大二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/055964(WO,A2)
【文献】 特公昭48−024411(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接溶融工程から成形可能な、高強度ガラス繊維用組成物であって、
SiO2を64〜75質量%;
Al2O3を16〜24質量%;
MgOを8〜11質量%;及び
Li2Oを0.25〜3質量%を含み、CaOは2質量%以下であり、前記組成物から製造される前記ガラス繊維が、2650°F(約1454℃)より低い繊維化温度を有し、かつ700KPsi(約4826MPa)より大きい強度を有する組成物を含む、前記組成物。
【請求項2】
ガラスバッチが、P2O5、ZnO、ZrO2、SrO、BaO、SO3、F2、B2O3、TiO2及びFe2O3からなる群から選択される化合物を合計5質量%より少なく含む、請求項1記載の高強度ガラス繊維用組成物。
【請求項3】
前記バッチから製造されるガラスが、液相線温度を有し、前記繊維化温度と前記液相線温度との差異(ΔT)が少なくとも80°F(27℃)である、請求項1記載の高強度ガラス繊維用組成物。
【請求項4】
前記バッチから製造されるガラスが、少なくとも120°F(49℃)のΔTを有する請求項3記載の高強度ガラス繊維用組成物。
【請求項5】
前記バッチから製造されるガラスが、2600°F(1427℃)より低い繊維化温度を有する、請求項1記載の高強度ガラス繊維用組成物。
【請求項6】
SiO2を68〜69質量%;
Al2O3を20〜22質量%;
MgOを9〜10質量%;及び
Li2Oを1〜3質量%を含む組成物である、請求項1記載の高強度ガラス繊維用組成物。
【請求項7】
SiO2を64〜75質量%;
Al2O3を16〜24質量%;
MgOを8〜11質量%;及び
Li2Oを0.25〜3質量%含み、CaOは2質量%以下であり、前記組成物から製造される前記ガラス繊維が、2650°F(約1454℃)より低い繊維化温度を有し、かつ700KPsi(4826MPa)より大きい強度を有する耐火物で裏打ちしたガラス溶融装置の中でガラスバッチを溶融することにより成形した、高強度ガラス繊維。
【請求項8】
繊維が82737MPa(12.0Mpsi)より大きいモジュラスを有する、請求項記載の高強度ガラス繊維。
【請求項9】
繊維が87563MPa(12.7MPsi)より大きいモジュラスを有する、請求項記載の高強度ガラス繊維。
【請求項10】
繊維が4744MPa(688KPsi)より大きい強度を有する、請求項記載の高強度ガラス繊維。
【請求項11】
SiO2を68〜69質量%;
Al2O3を20〜22質量%;
MgOを9〜10質量%;及び
Li2Oを1〜3質量%含む、請求項記載の高強度ガラス繊維。
【請求項12】
Li2Oを前記組成物中に1.75〜3.0質量%含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
Al2O3を前記組成物中に17〜22質量%;
MgOを前記組成物中に9〜11質量%;及び
Li2Oを前記組成物中に1.75〜3.0質量%含む、請求項記載の高強度ガラス繊維。
【請求項14】
前記組成物の成分が、耐火物で裏打ちした溶融装置中で溶融できる、請求項1記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野及び産業上の利用可能性)
本発明は、概して、連続高強度ガラス繊維の生産に使用される組成物、及び前記組成物から成形される繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
連続高強度ガラス繊維ストランドを生成する一般的なガラス組成物は、「Sガラス」である。Sガラスという用語は、Eガラス繊維より高い機械的強度を有するガラス繊維を製造する化学組成物と、マグネシウム、アルミニウム及びケイ素の酸化物から本来構成されるガラスの系統を定義する。Sガラス系統の化学組成物は、高強度のガラス繊維を製造し、これらのガラスを、弾道装甲のような高強度の用途に使用することを可能にする。ASTMインターナショナルは、Sガラスを、マグネシウム、アルミニウム及びケイ素の酸化物と、適切な材料規格に合致し、高い機械的強度(D578-05)を生む認定された化学組成物から本来構成されるガラスの系統として定義している。ドイツ規格協会(DIN)は、SガラスをCaOを加えず、MgOが約10質量%であるMgOの部分的質量を有するアルミノケイ酸塩として定義している(アルミノケイ酸塩ガラスは、主として三酸化アルミニウム及びシリカ及び他の酸化物からなるガラスとして定義される)(DIN1259-1)。
【0003】
Rガラスは、通常、航空宇宙関連の複合的用途に使用する繊維に成形される高強度、高モジュラスガラスの別の系統である。Rガラス系統は、Sガラス繊維より高い機械的強度のガラス繊維を製造する化学組成物と、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムから本来なる。Rガラスは、概して、繊維成形時に、より高い溶融温度及び加工温度を要するSガラスよりシリカを少なく酸化カルシウム(CaO)を多く含む。
表IA-IEは、多数の従来の高強度ガラス組成物用組成物について述べる。
表IA

表I-B
【0004】
表I-C

表I-D
【0005】
表I-E

典型的なRガラス及びSガラスは、白金で裏打ちした容器の中で、組成物の構成要素を溶融させることにより製造する。Rガラス及びSガラス繊維を成形するためのコストは、前述のような溶融装置の中で繊維を製造するため、Eガラス繊維の成形より劇的に高くなる。従って、直接溶融工程による、高性能のガラス繊維の成形に有用なガラス組成物の成形方法が技術的に必要となる。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、高強度の用途の使用に好適な連続ガラス繊維の成形のためのガラス組成物である。組成物の繊維化温度が比較的低いため、耐火物で裏打ちした炉における低コストの直接溶融を用い、ガラス繊維へ安価に成形してよい。一度繊維に成形すると、ガラス組成物はSガラスの強度の特徴をもつ。本発明のある組成物は、SiO2を64〜75質量%、Al2O3を16〜24質量%、MgOを8〜11質量%及びR2Oを0.25〜3.0質量%含み、R2OはLi2O及びNa2Oの合計である。本発明の組成物は、SiO2を64〜75質量%、Al2O3を16〜24質量%、MgOを8〜11質量%及びLi2Oを0.25〜3.0質量%含む。好ましい実施形態において、ガラス組成物はSiO2を64〜70質量%、Al2O3を17〜22質量%、MgOを9〜11質量%及びR2Oを1.75〜3.0質量%からなり、R2OはLi2O及びNa2Oの合計である。さらなる好ましい実施形態において、ガラス組成物はSiO2を64〜70質量%、Al2O3を17〜22質量%、MgOを9〜11質量%及びLi2Oを1.75〜3.0質量%からなる。組成物は、酸化物またはCaO、P2O5、ZnO、ZrO2、SrO、BaO、SO3、F2、B2O3、TiO2及びFe2O3からなる群から選択される化合物約5.0質量%より多くを含まないことが好ましい。
【0007】
本発明により生産される高性能の複合繊維の好ましい特性は、約2650°F(1454℃)より低く、好ましくは2625°F(1441℃)より低く、より好ましくは2600°F(1427℃)より低く、最も好ましくは2575°F(1413℃)より低い繊維化温度、及び繊維化温度より少なくとも80°F(44.44℃)、より好ましくは少なくとも約120°F(66.67℃)、最も好ましくは少なくとも150°F(83.33℃)低い液相線温度を含む。本発明は、そのような組成物から成形される繊維をも含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明及び好ましい実施形態)
本発明のガラスバッチ組成物の繊維化特性は、繊維化温度、液相線、及びデルタ-T(ΔT)を含む。繊維化温度は、100Pa・秒(1000ポアズ)の粘性に一致する温度として定義される。以下に詳細に示すとおり、繊維化温度を低下させることは、繊維の製造コストを削減し、ブッシュの寿命を延ばし、処理量を増加させ、ガラスが耐火物でライニング加工を施した溶融装置で溶融でき、エネルギーの消費を抑える。例えば、より低い繊維化温度で、ブッシュはより低い温度で作動し、すぐに「たわむ」ことがない。「たわみ」とは、長時間高温を維持するブッシュにおいて生ずる現象である。繊維化温度を下げることにより、ブッシュのたわみ率を減少させることができ、ブッシュの寿命を延ばすことができる。さらに、より低い繊維化温度は、所定のエネルギー投入量及び所定の期間で、より多くのガラスを溶融できるため、より高い処理量を可能にする。その結果、製造コストが下げられる。さらに、より低い繊維化温度は、溶融及び繊維化温度が多くの商業上利用可能な耐火性物質の上部で使用する温度以下であるため、創意に富む組成物により成形されたガラスが、耐火物で裏打ちした溶融装置で溶融することを可能にする。
ガラスの液相線は、水ガラスと主要な結晶相の間に平衡が存在する最も高い温度として定義される。液相線より高いすべての温度において、ガラスは主要相に存在する結晶を含まない。液相線より低い温度では、結晶は形成してよい。溶融物の結晶はブッシュの閉塞、及び繊維のもろさの原因となる。
【0009】
他の繊維化特性は、繊維化温度と液相線との間の差異として定義される、デルタ-T(ΔT)である。より大きいΔTは、ガラス繊維の成形時の柔軟性をより大きな値で提供し、溶融及び繊維化の間、ガラスの失透(すなわち、溶融中の結晶の形成)を抑える助けとなる。同時に、ΔTの増加は、より長いブッシュの寿命を可能にし、繊維を成形するためのより広いプロセスウィンドウを提供することにより、ガラス繊維の製造コストを削減する。
本発明のガラスは、ガラス強化繊維の製造に広く用いられる、従来の商業的に利用可能な耐火物で裏打ちしたガラス溶融装置での溶融に好適である。出発バッチ構成要素は、通常SiO2(粉砕ケイ素)及びAl2O3(焼成酸化アルミニウム)または葉蝋石、同様にタルク、菱苦土石またはドロマイトのような原材料からの連鎖改質剤(chain modifiers)も含む。菱苦土石のような物質に含まれる炭素は、CO2のような炭素の酸化物として排気される。
【0010】
本発明により成形される繊維は、SiO2を64〜75質量%、Al2O3を16〜24質量%、MgOを8〜11質量%及びR2Oを0.25〜3.0質量%含むことが好ましく、R2OはLi2O及びNa2Oの合計である。より好ましくは、組成物は、Li2O及びNa2Oの組み合わせに比べ、Li2Oを0.25〜3.0質量%含む。さらなる好ましい実施形態において、ガラス組成物は、SiO2を64〜70質量%、Al2O3を17〜22質量%、MgOを9〜11質量%及びR2Oを1.75〜3.0質量%含み、R2OはLi2O及びNa2Oの合計である。より好ましくは、組成物はLi2Oを1.75〜3.0質量%含む。本発明に従い成形した繊維は、通常CaO、P2O5、ZnO、ZrO2、SrO、BaO、SO3、F2、B2O3、TiO2及びFe2O3を少量含み、好ましくは5質量%より少ない合計量であり、より好ましくは4質量%より少ない合計量である。さらに、本発明の方法及び組成物に従い成形された繊維は、2650°F(1454℃)より低い、好ましくは約2625°F(1441℃)より低い、より好ましくは約2600°F(1427℃)より低い、最も好ましくは約2575°F(1413℃)より低い繊維化温度、及び繊維化温度より好ましくは少なくとも80°F、より好ましくは少なくとも約120°F(66.67℃)及び最も好ましくは約150°F(83.33℃)低い液相線温度を有する。さらに、本発明のガラスは、本来の繊維強度が4688MPa(680KPSI)より大きく、より好ましくは約4826MPa(700KPSI)より大きく、及び最も好ましくは約5033MPa(730KPSI)より大きい。さらに、ガラス繊維は、82737MPa(12.0MPSI)より大きく、より好ましくは約83978MPa(12.18MPSI)より大きく、最も好ましくは86874MPa(12.6MPSI)より大きいモジュラスを有することが望ましい。
【0011】
本発明のガラスバッチは、酸化アルミニウム、酸化クロム、シリカ、酸化アルミニウム及びシリカ、ジルコン、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウム及びシリカ、または同様の酸化物を基礎とする耐火性物質のような適切な耐火性物質から作られる溶融ガラスを用いて溶融することが好ましい。しばしば、そのようなガラス溶融炉は、1以上のバブラー及び/または電気ブースト電極を含む(ある好適なガラス溶融炉が、米国特許出願第2007/0105701号“Method of Manufacturing High Performance Glass Fibers in a Refractory Lined Melter and Fiber Formed Thereby”において開示され、ここで参考に取り入れる)。バブラー及び/または電気ブースト電極は、大量のガラスの温度を上昇させ、バッチカバー下での溶融ガラスの循環を高める。
【0012】
溶融ガラスは前炉からブッシュアセンブリーへ送られる。ブッシュは複数のノズルと先端プレートを含み、それぞれのノズルが溶融ガラスの流れを流出させ、機械的に引張り連続フィラメントを成形する。通常、フィラメントは保護サイジングで被覆し、単独の連続ストランドへ集め、ワインダー装置の回転コレットに巻き付けパッケージを成形する。フィラメントは制限することなく、湿式チョップドストランド、乾式チョップドストランド、連続フィラメントマット、チョップドストランドマット、湿式成形マットまたはエアレイドマットを含む他の形態へ加工処理してよい。
本発明を概説し、さらなる理解のため以下に例証したある特定の実施例を提供する。これらの実施例は、例証的な目的のみのためのものであり、特に言及のない限り、すべて包括的または限定的である意図はない。
【実施例】
【0013】
実施例
表IIA〜IIDに列挙される実施例のガラスを、白金るつぼ、または白金で連続的に裏打ちした溶融装置の中で溶融し、製造されるガラス及び繊維の機械的及び物理的特性を測定した。物理的特性の測定装置は、粘性(°F)、液相線温度(°F)及びΔT(°F)である。いくつかの実施例において、ガラスは繊維化し、強度(MPa(KPsi))、密度(g/ml(cc))及びモジュラス(MPa(MPsi))を測定した。
繊維化温度は回転スピンドル粘土計を用いて測定した。繊維化粘性は100Pa・秒(1000ポアズ)として定義する。液相線はガラスで満たした白金容器を熱勾配炉(thermal gradient furnace)へ設置し16時間測定した。結晶が存在した最高温度を液相線温度とみなした。モジュラスを、ガラスの単独の繊維上で音波技術(sonic technique)を用いて測定した。引張り強さは本来の単独の繊維上で測定した。
表IIA
【0014】
表II-B
表II-C
【0015】
本発明の組成物は、Na2O、CaO及びB2O3のような連鎖改質剤を含んでもよい。前述の組成物は、表II-D(以下)に示す。
表II-D
【0016】
本発明により製造した繊維は、優れたモジュラス及び強度の特徴を有する。実施例1の繊維は、87632MPa(12.71MPsi)の測定モジュラスを有し、及び4743MPa(688 KPsi)の測定強度を有する。実施例3の繊維は、89356MPa(12.96MPsi)の測定モジュラスを有し、及び5081MPa(737 KPsi)の測定強度を有する。実施例17の繊維は、87908MPa(12.75MPsi)の測定モジュラスを有し、及び5060MPa(734 KPsi)の測定強度を有する。
従来技術において理解されるとおり、上述の例証的な発明の組成物は統計的慣習(丸め及び平均化)、及びいくつかの組成物は列挙されていない不純物を含んでよいという事実により、列挙した構成要素が必ずしも総計100%となるわけではない。もちろん、組成物における不純物を含むすべての構成要素の実際の量は、常に総計100%である。さらに、例えば約0.05質量%またはそれより少ない量といった、構成要素の少量が組成物中に指定されている場合、これらの構成要素は、意図的に加えるより、原料中に存在する微量の不純物の形として存在してよいことが理解されるべきである。
その上、構成要素は、例えば加工を容易にするためバッチ組成物に加えてもよいが、のちに除去し、それにより前記構成要素を本質的に含まないガラス組成物を成形する。従って、例えばフッ素及びスルフェートのような構成要素の微細な量は、本発明の商業上の実施においてシリカ、カルシア、酸化アルミニウム及びマグネシア成分を提供し、微量の不純物として原料中に存在してよく、または生産中に本質的に除去される加工助剤としてもよい。
【0017】
上述の実施例から明らかなとおり、本発明のガラス繊維組成物は、低い繊維化温度、及び液相線温度及び繊維化温度(高いΔT値)間の大幅な差異のような、有利な特性を有する。本発明の他の利点及び自明な修正は、上述の記載及びさらに発明の実施を通して、当業者に明らかである。本発明の高性能のガラスは、比較的低い温度で溶融及び精製し、比較的低い温度の広範な温度範囲、及び低い液相線温度の範囲に渡り、実行可能な粘性を有する。
本出願の発明を、一般的に、及び特定の実施形態に関して記述した。発明は、好ましいとされる実施形態で述べているが、一般的な開示の範囲内において、当業者に知られた広範な代案を選択してもよい。本発明の他の利点及び自明な修正は、上述の記載及び本発明のさらなる実施を通じ、当業者に明らかである。本発明は、以下に述べる特許請求の範囲の記載を除き、特別に限定されない。
本発明は更に以下の態様に関するものであってもよい。
[1]
直接溶融工程から成形可能な、高強度ガラス繊維用組成物であって、
SiO2を64〜75質量%;
Al2O3を16〜24質量%;
MgOを8〜12質量%;及び
R2Oを0.25〜3質量%を含み、R2OはLi2O、Na2Oの合計に等しく、かつ、約2550°F(1399℃)より低い液相線を有する組成物を含む、前記組成物。
[2]
ガラスバッチが、CaO、P2O5、ZnO、ZrO2、SrO、BaO、SO3、F2、B2O3、TiO2及びFe2O3からなる群から選択される化合物を合計5質量%より少なく含む、[1]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[3]
前記バッチから製造されるガラスが、約2650°F(1454℃)より低い繊維化温度、及び少なくとも80°F(27℃)のΔTを有する、[1]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[4]
前記バッチから製造されるガラスが、少なくとも120°F(49℃)のΔTを有する[3]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[5]
前記バッチから製造されるガラスが、2600°F(1427℃)より低い繊維化温度及び少なくとも140°F(77.78℃)のΔTを有する、[1]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[6]
ガラスバッチが、さらに0〜3質量%のアルカリ金属酸化物を含む、[1]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[7]
SiO2を68〜69質量%;
Al2O3を20〜22質量%;
MgOを9〜10質量%;及び
Li2Oを1〜3質量%を含む組成物である、[1]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[8]
直接溶融工程から成形可能な、高強度ガラス繊維用組成物であって、
SiO2を65〜69質量%;
Al2O3を20〜22質量%;
MgOを9〜11質量%;及び
Li2Oを0.25〜3質量%を含み、かつ、約2650°F(1454℃)より低い液相線を有する組成物を含む、前記組成物。
[9]
SiO2を約68質量%;
Al2O3を約20質量%;
MgOを約10質量%;及び
Li2Oを約2質量%含む、[8]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[10]
組成物が、
SiO2を約68質量%;
Al2O3を約20質量%;
MgOを約9.7質量%;及び
Li2Oを約2質量%から本質的になる、[8]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[11]
モジュラスが少なくとも87563MPa(12.7MPsi)である、[10]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[12]
ΔTが少なくとも140°F(77.78℃)である、[10]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[13]
バッチから製造されるガラスが、2600°F(1427℃)より低い繊維化温度及び少なくとも144°F(80℃)のΔTを有する、[8]記載の高強度ガラス繊維用組成物。
[14]
SiO2を64〜75質量%;
Al2O3を16〜24質量%;
MgOを8〜12質量%;及び
R2Oを0.25〜3質量%含み、R2OはLi2O、Na2Oの合計に等しい、耐火物で裏打ちしたガラス溶融装置の中でガラスバッチを溶融することにより成形した、高強度ガラス繊維。
[15]
繊維が82737MPaより大きいモジュラスを有する、[14]記載の高強度ガラス繊維。
[16]
繊維が87563MPaより大きいモジュラスを有する、[14]記載の高強度ガラス繊維。
[17]
繊維が4744MPaより大きい強度を有する、[14]記載の高強度ガラス繊維。
[18]
繊維が4826MPaより大きい強度を有する、[14]記載の高強度ガラス繊維。
[19]
少なくともR2Oの75%がLi2Oである、[14]記載の高強度ガラス繊維。
[20]
SiO2を68〜69質量%;
Al2O3を20〜22質量%;
MgOを9〜10質量%;及び
Li2Oを1〜3質量%含む、請求項14記載の高強度ガラス繊維。