特許第5667587号(P5667587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667587
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/005 20060101AFI20150122BHJP
   A23L 3/22 20060101ALI20150122BHJP
   H05B 3/00 20060101ALN20150122BHJP
【FI】
   A23L3/005
   A23L3/22
   !H05B3/00 340
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-30253(P2012-30253)
(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-165664(P2013-165664A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136642
【氏名又は名称】株式会社フロンティアエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】星野 弘
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−320213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/00−1/35
A23L 3/00−3/3598
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する飲食物を被加熱物として流路内を連続的に搬送しつつジュール熱により加熱する加熱装置であって、
絶縁性材料からなり前記流路を形成する管状部材と、当該管状部材に対となって設けられる電極対とを備えた加熱ユニットと、
前記加熱ユニットの流入口に接続され、被加熱物および被加熱物よりも粘度が小さいダミー液を前記加熱ユニットに供給する流入配管と、
前記流入配管に設けられ、前記加熱ユニットに被加熱物とダミー液とを吐出供給するポンプと、
前記ポンプがダミー液を吐出するときにはダミー液よりも粘度が大きい前記被加熱物を吐出するときよりも前記ポンプの回転数を高くする制御手段とを有することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱装置において、前記ポンプがダミー液を吐出する状態から被加熱物を吐出する状態に切り換えられる立ち上げ時には、前記ポンプの回転数をダミー液を吐出するときよりも低くすることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の加熱装置において、前記ポンプが被加熱物を吐出する状態からダミー液を吐出する状態に切り換えられる加熱終了時には、前記ポンプの回転数を被加熱物を吐出するときよりも高くすることを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置において、前記流入配管内を流れる被搬送物の流量を検出する流量センサを有し、前記ポンプからダミー液が吐出された状態であるか、被加熱物が吐出された状態であるかを流量に基づいて判定することを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置において、前記流入配管に被加熱物を供給する状態と、ダミー液を供給する状態とに切り換える流路切換弁を前記流入配管に設け、前記流路切換弁が作動してから被搬送物が前記ポンプに到達するまでの時間をカウントするタイマーを有し、前記ポンプからダミー液が吐出された状態であるか、被加熱物が吐出された状態であるかを前記流路切換弁から前記ポンプまでに到達する時間に基づいて判定することを特徴とする加熱装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱装置において、複数のリング状の電極とそれぞれの前記電極の間に配置される絶縁性の複数の円筒体とにより前記加熱ユニットを形成することを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱装置において、横断面が四角形の絶縁性の管状部材の内面に電極対を構成する板状の電極を相互に対向させて配置することにより前記加熱ユニットを形成することを特徴とする加熱装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱装置において、両端が閉塞された絶縁性の管状部材の両端部に電極対を構成する板状の電極を相互に対向させて配置することにより前記加熱ユニットを形成することを特徴とする加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性を有する飲食物を被加熱物としてこれを連続的に搬送しながら通電加熱する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュースやスープなどの飲食物、並びに蜂蜜、ジャムおよび味噌などのペースト状の食品のように流動性を有する飲食物を被加熱物としてこれを連続的に搬送しながら加熱するために、例えば、特許文献1に記載されるように、被加熱物自体に通電してジュール熱により被加熱物を加熱するようにしたジュール加熱装置が開発されている。
【0003】
被加熱物を流路内に連続的に流しながら通電加熱するジュール加熱装置は、上記公報に記載されるように、被加熱物を連続的に案内する管状部材からなる加熱ユニットを有している。加熱ユニットにはポンプにより被加熱物が供給され、加熱ユニットの流路内に被加熱物を流しながら加熱ユニットに対となって設けられた電極から被加熱物に電流を流すようにしている。加熱ユニットの形態としては、特許文献1に記載されるように、複数のリング状の電極とそれぞれの電極の間に配置される絶縁性の複数の筒体とを有するタイプと、絶縁性材料からなる管状部材の両端部に相互に対向させて一対の円板状の電極を配置するようにしたタイプと、絶縁性材料からなる断面四角形の管状部材を有し、管状部材の内面に相互に対向させて一対の板状の電極を配置するようにしたタイプ等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4603932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような加熱装置においては、加熱作業の開始から終了まで被加熱物を流路内で連続的に搬送しながら通電加熱することができる。被加熱物の連続的な加熱処理は、ホッパ内に投入された被加熱物の加熱処理が全て終了するまで行われる場合と、ホッパ内に順次被加熱物を投入することにより、1日の加熱作業が終了するまでのように一定時間に渡って行われる場合がある。さらに、同一の加熱装置により相互に粘性が相違する複数種類の被加熱物が加熱処理される場合には、加熱装置内における被加熱物の流路を洗浄した後に、他の被加熱物の加熱処理が行われる。
【0006】
加熱装置によっては、加熱ユニット内に被加熱物を供給開始してから供給が停止されるまでにおける被加熱物に対する加熱条件を一定に保持するために、被加熱物の加熱処理が開始されるときには、被加熱物を加熱ユニットに供給する前に、被加熱物と同一の導電率に設定された塩水等のダミー液をポンプにより加熱ユニットに供給しながらダミー液を通電するようにし、被加熱物に対する連続加熱を終了する際にはダミー液を加熱ユニットに供給して被加熱物を押し出すようにしたタイプがある。このタイプの加熱装置においては、連続的に搬送されることになる被加熱物の先頭部分はダミー液を押し付けた状態となって流路内を流れることになり、最終部分はダミー液に押し込まれた状態となって流路内を流れることになる。これにより、先頭部分と最終部分を含めて搬送される全ての被加熱物が流路内の電極に確実に接触した状態で同一の通電条件により通電加熱され、被加熱物の加熱処理の歩留まりを高めることができる。
【0007】
しかしながら、このように加熱装置の立ち上げ時と終了時とにダミー液を利用した加熱処理を行うようにしても、連続的に搬送される被加熱物の先頭部分と最終部分の加熱品質が他の部分と相違する場合があることが判明した。その原因を追及したところ、被加熱物である飲食物とダミー液の導電率を同一に調整しても、被加熱物の粘性とダミー液の粘性とが相違すると、ダミー液吐出時と被加熱物吐出時とで加熱ユニット内における被搬送物の流速が相違するためであると考えられる。ダミー液や被加熱物は、加熱ユニットに対して容積形ポンプや遠心式等のターボ形ポンプにより供給するようにしており、ポンプの回転数はダミー液も被加熱物の吐出時と同一回転数としている。しかし、ダミー液の粘性は被加熱物の粘性よりも低いので、ポンプから吐出される被加熱物の量はダミー液の吐出量よりも多くなることが判明した。この理由は、粘性が低いダミー液はポンプから吐出されることなく、ポンプのロータとステータとの間の隙間から洩れて逆流する量が被加熱物の量よりも多くなるからであると推測される。このため、ポンプの回転数をダミー液と被加熱物とで同一回転数としても、加熱装置の立ち上げ時にダミー液から被加熱物に切り換えられると、ダミー液を押し込む被加熱物の流速がダミー液よりも速くなって被加熱物の加熱温度が低くなる。一方、加熱終了時には被加熱物からダミー液に切り換えられると、ダミー液により押し込まれる被加熱物の流速がダミー液よりも遅くなって被加熱物の加熱温度が高くなる。このように、被加熱物の流速が速くなると加熱ユニットを通過する時間が短くなるので加熱温度が低くなり、流速が遅くなると加熱ユニットを通過する時間が長くなるので加熱温度が高くなる。
【0008】
加熱装置の立ち上げ時と終了時とにダミー液を使用し、被加熱物を連続的に加熱ユニット内に搬送しながら通電加熱するようにした加熱装置においては、連続的に搬送される被加熱物の先頭部分と最終部分とでは加熱条件が他の部分と相違して所望の加熱品質が得られなくなるので、その部分を製品化することができず、被加熱物の加熱処理の歩留まり向上には限度があった。
【0009】
本発明の目的は、ダミー液を使用するようにした加熱装置における被加熱物の加熱品質を向上し、加熱処理の歩留まりを向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加熱装置は、流動性を有する飲食物を被加熱物として流路内を連続的に搬送しつつジュール熱により加熱する加熱装置であって、絶縁性材料からなり前記流路を形成する管状部材と、当該管状部材に対となって設けられる電極対とを備えた加熱ユニットと、前記加熱ユニットの流入口に接続され、被加熱物および被加熱物よりも粘度が小さいダミー液を前記加熱ユニットに供給する流入配管と、前記流入配管に設けられ、前記加熱ユニットに被加熱物とダミー液とを吐出供給するポンプと、前記ポンプがダミー液を吐出するときにはダミー液よりも粘度が大きい前記被加熱物を吐出するときよりも前記ポンプの回転数を高くする制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の加熱装置は、前記ポンプがダミー液を吐出する状態から被加熱物を吐出する状態に切り換えられる立ち上げ時には、前記ポンプの回転数をダミー液を吐出するときよりも低くすることを特徴とする。本発明の加熱装置は、前記ポンプが被加熱物を吐出する状態からダミー液を吐出する状態に切り換えられる加熱終了時には、前記ポンプの回転数を被加熱物を吐出するときよりも高くすることを特徴とする。本発明の加熱装置は、前記流入配管内を流れる被搬送物の流量を検出する流量センサを有し、前記ポンプからダミー液が吐出された状態であるか、被加熱物が吐出された状態であるかを流量に基づいて判定することを特徴とする。
【0012】
本発明の加熱装置は、前記流入配管に被加熱物を供給する状態と、ダミー液を供給する状態とに切り換える流路切換弁を前記流入配管に設け、前記流路切換弁が作動してから被搬送物が前記ポンプに到達するまでの時間をカウントするタイマーを有し、前記ポンプからダミー液が吐出された状態であるか、被加熱物が吐出された状態であるかを前記流路切換弁から前記ポンプまでに到達する時間に基づいて判定することを特徴とする。本発明の加熱装置は、複数のリング状の電極とそれぞれの前記電極の間に配置される絶縁性の複数の円筒体とにより前記加熱ユニットを形成することを特徴とする。本発明の加熱装置は、横断面が四角形の絶縁性の管状部材の内面に電極対を構成する板状の電極を相互に対向させて配置することにより前記加熱ユニットを形成することを特徴とする。本発明の加熱装置は、両端が閉塞された絶縁性の管状部材の両端部に電極対を構成する板状の電極を相互に対向させて配置することにより前記加熱ユニットを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
ダミー液を加熱ユニットに供給した状態から被加熱物を供給する状態に切り換える立ち上げ時における被加熱物の先頭部分の加熱温度と、被加熱物を加熱ユニットに供給した状態からダミー液を供給する状態に切り換える加熱終了時における被加熱物の終了部分の加熱温度を、被加熱物の他の部分つまり先頭部分と終了部分の間の部分の温度と同一の加熱温度に設定することができるので、ダミー液を使用するようにした加熱装置における被加熱物の加熱品質を向上させることができるとともに加熱処理の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】加熱ユニットを有する加熱装置を示す概略図である。
図2】(A)は図1に示された加熱ユニットの拡大断面図であり、(B)は(A)における2B−2B線断面図である。
図3】加熱装置の制御回路を示すブロック図である。
図4】加熱処理が行われるときのポンプ回転数の制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
図5】本発明の他の実施の形態である加熱装置の一部を示す概略図である。
図6】(A)は変形例の加熱ユニットの縦断面図であり、(B)は(A)における6B−6B線断面図である。
図7】さらに他の変形例である加熱ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示される加熱装置10は、3つの加熱ユニット11a〜11cを有しており、イチゴジャム等の流動性を有する飲食物を被加熱物としてこれを加熱処理して飲食物を製造するために使用される。第1段目の加熱ユニット11aの流出口は第2段目の加熱ユニット11bの流入口に配管12aにより接続され、第2段目の加熱ユニット11bの流出口は第3段目の流入口に配管12bにより接続されており、3つの加熱ユニット11a〜11cは配管12a,12bにより直列となっている。
【0016】
加熱装置10は、被加熱物Wである飲食物を収容する製品ホッパ13と、ダミー液Dである塩水を収容するダミー液ホッパ14とを有している。製品ホッパ13には被加熱物Wを加熱ユニット11aに供給する製品供給配管15が接続され、ダミー液ホッパ14にはダミー液Dを加熱ユニット11aに供給するダミー液供給配管16が接続されている。加熱ユニット11aの流入口には流入配管17が接続されており、流入配管17と製品供給配管15との間には流路切換弁18が設けられ、この流路切換弁18にはダミー液供給配管16が接続されている。
【0017】
この流路切換弁18は三方弁であり、流入配管17と製品供給配管15とを連通させるとともにダミー液供給配管16と流入配管17との連通を遮断させる状態と、流入配管17と製品供給配管15との連通を遮断させるとともに流入配管17とダミー液供給配管16とを連通させる状態とに切り換えられる。
【0018】
流入配管17と製品供給配管15とが連通した状態のもとで製品ホッパ13内の被加熱物Wを加熱ユニット11aに向けて供給し、流入配管17とダミー液供給配管16とが連通した状態のもとでダミー液ホッパ14内のダミー液Dを加熱ユニット11aに向けて供給するために、流入配管17にはポンプ19が設けられている。このポンプ19としては、渦流ポンプ等の容積形ポンプ、および遠心ポンプや軸流ポンプ等のターボ形ポンプが使用される。
【0019】
図2図1に示された加熱ユニット11aの拡大断面図であり、他の加熱ユニット11b,11cも同一の構造となっている。加熱ユニット11aは被加熱物Wおよびダミー液D等からなる被搬送物を案内する流路21が形成された横断面円形の加熱パイプつまり管状部材22を有している。管状部材22は複数のリング状の電極23a,23bとこれらの間に配置される複数の円筒体24とにより形成されている。流路21の流れ方向に隣り合って配置される電極23aと電極23bは対となって電極対を構成しており、複数の電極23a,23bと複数の円筒体24とにより形成される管状部材22は複数の電極対を備えている。それぞれの電極23a,23bはチタンやステンレスなどの導体により形成され、それぞれの円筒体24は樹脂等の絶縁性材料により形成されている。図2に示される加熱ユニット11aは8つの電極23a,23bを有しているが、それぞれの加熱ユニット11a〜11cに設けられる電極の数は図示される8つに限定されることはなく、任意の数とすることができる。
【0020】
管状部材22の流入側には入口側のジョイント25が設けられ、流出側には出口側のジョイント26が設けられている。第1段目の加熱ユニット11aのジョイント25には流入配管17が接続され、ジョイント26には配管12aにより第2段目の加熱ユニット11bのジョイント25に接続される。第2段目の加熱ユニット11bのジョイント26は配管12bにより第3段目の加熱ユニット11aのジョイント25に接続される。
【0021】
図2に示されるように、加熱ユニット11aにおける電極対に電力を供給するために、加熱装置10は電源ユニット27を有している。この電源ユニット27からは対をなす一方の電極23aと他方の電極23bとが相互に逆極性となるように高周波電流が供給される。他の加熱ユニット11b,11cも同様の構造となっている。なお、図示する加熱装置10は、3つの加熱ユニットを有しているが、加熱装置10を構成する加熱ユニットの台数は任意の数とすることができる。
【0022】
製品ホッパ13内の未加熱の被加熱物Wはポンプ19により加熱ユニット11a〜11cに搬送されて、所望の加熱温度まで通電加熱される。加熱された被加熱物Wを加熱温度で所定の時間保持するために、第3段目の加熱ユニット11cの流出口は配管28により保温機としてのホールド管31に搬送される。ホールド管31を通過した被加熱物Wは配管32により冷却装置33に搬送された後に、回収タンク34に配管35により供給される。配管35には回収タンク34に被加熱物Wを供給するためのポンプ36が設けられている。回収タンク34内の被加熱物Wは排出配管37により図示しない充填機に搬送され、包装袋等に充填される。排出配管37には流路を開閉する開閉弁38が設けられている。
【0023】
排出配管37には、ポンプ36の下流側に位置させて廃棄配管39が流路切換弁40を介して接続されており、冷却装置33を通過したダミー液Dは廃棄配管39により外部に排出される。
【0024】
冷却装置33は、6つの冷却ユニット41a〜41fを有しており、それぞれの冷却ユニットには被加熱物Wを案内する製品流路と、冷却水が循環供給される冷却流路とが設けられている。それぞれの冷却ユニットの製品流路は相互に配管42により直列に接続され、冷却流路は相互に配管43により直列に接続されている。冷却ユニット41a〜41fに冷却水を循環供給するために、冷水発生機44の吐出口は配管45により流側の冷却ユニット41fに接続されており、冷水発生機44により生成された冷却水は配管45により冷却ユニットに供給される。流側の冷却ユニット41aと冷水発生機44の戻し口との間に設けられた配管46により冷水発生機44に戻された冷却水は、冷水発生機44により冷却された後に冷却ユニットに循環供給される。配管45には冷却水を冷却ユニットに供給するためのポンプ47が設けられている。
【0025】
配管28には最終段の加熱ユニット11cを通過したダミー液Dや被加熱物W等の被搬送物の温度を検出するための温度センサ48が設けられ、流入配管17には内部を流れる被搬送物の流量を検出するための流量センサ49が設けられている。流入配管17には流路切換弁51を介して洗浄液供給配管52が接続されており、それぞれの加熱ユニット11a〜11cを洗浄する際には、洗浄液供給配管52から加熱ユニット11a〜11cおよび冷却装置33に洗浄液が供給される。洗浄液は廃棄配管39により外部に廃棄される。
【0026】
図1に示される加熱装置10によって被加熱物Wに対する通電加熱を開始するときには、加熱装置10の立ち上げ操作が行われる。このときには、まず、流路切換弁18によりダミー液供給配管16と流入配管17とを連通状態として、両方の配管内の流路が連通された状態のもとで、ポンプ19の駆動によりダミー液ホッパ14内に収容されたダミー液Dを加熱ユニット11a〜11cに搬送するとともに電源ユニット27から電極23a,23bに電力を供給する。次いで、これらの加熱ユニット内にダミー液Dが充満されてダミー液Dが所定の加熱温度にまで上昇した状態のもとで、流路切換弁18により製品供給配管15と流入配管17とを連通状態として両方の配管内の流路を連通状態とする。これにより、製品ホッパ13内の被加熱物Wはダミー液Dを押し込むようにして加熱ユニット11a〜11cに搬送され、被加熱物Wは通電加熱される。
【0027】
このように、加熱ユニットに向けて被加熱物Wがダミー液Dを押し込むようにして供給される立ち上げ時には、流路切換弁18を通過して流入配管17内に供給された被加熱物Wの先頭部分がポンプ19に到達してポンプ19により被加熱物が吐出される状態となる。このときには、ポンプ19の回転数をダミー液Dを吐出させるときよりも低下させる。つまり、ダミー液回転数をPdとし、被加熱物回転数をPaとすると、ダミー液Dから被加熱物Wに切り換えられると、Pa<Pdに設定される。
【0028】
このときのポンプ19の回転数を、従来のように、ダミー液Dを吐出させるときと同一に設定した状態のもとで、ダミー液Dよりも粘性が大きい被加熱物Wをポンプ19に到達させるようにすると、ダミー液を押し込む被加熱物の流速がダミー液よりも速くなるので、被加熱物の加熱温度が設定温度よりも低くなる。これに対し、この加熱装置10においては、ポンプ19の回転数をダミー液Dを吐出させるときよりも低下させるので、ダミー液Dを吐出する状態から被加熱物Wを吐出する状態に切り換わっても、ポンプ19の吐出量がダミー液Dと被加熱物Wとで同一の吐出量となる。これにより、加熱装置10の立ち上げ時における被加熱物Wのポンプ19からの吐出量がダミー液Dの吐出量と同一となり、加熱ユニット11a〜11cによる被加熱物Wの加熱温度を設定温度に維持することができる。
【0029】
一方、加熱ユニットに向けてダミー液Dが被加熱物Wの最終部分を押し込むようにして供給される加熱終了時には、流路切換弁18を通過して流入配管17内に供給されたダミー液Dが流路切換弁18からポンプ19に到達してポンプ19によりダミー液Dが吐出される状態となる。このときには、ポンプ19の回転数を被加熱物Wを吐出させるときよりも高くさせる。つまりポンプ回転数は、被加熱物回転数Paからダミー液回転数Pdに高められる。
【0030】
このときのポンプ19の回転数を、従来のように、被加熱物Wを吐出させるときと同一に設定した状態のもとで、被加熱物Wよりも粘性が小さいダミー液Dをポンプ19に到達させるようにすると、被加熱物Wを押し込むダミー液Dの流速が被加熱物Wよりも遅くなってダミー液により押し込まれる被加熱物の加熱温度が高くなる。これに対し、この加熱装置10においては、加熱終了時のポンプ19の回転数を被加熱物Wを吐出させるときよりも高くするので、被加熱物Wを吐出する状態からダミー液Dを吐出する状態に切り換わっても、ポンプ19の吐出量は被加熱物Wとダミー液Dと同一の吐出量となる。これにより、加熱装置10の加熱終了時におけるダミー液Dのポンプ19からの吐出量が被加熱物Wの吐出量と同一となり、加熱ユニット11a〜11cによる被加熱物Wの加熱温度を設定温度に維持することができる。
【0031】
このように、ポンプ19がダミー液Dを吐出するときには被加熱物Wを吐出するときよりもポンプ19の回転数を低下させ、Pa<Pdに設定する。これにより、加熱装置10の立ち上げ時と終了時においてポンプ19から吐出される被搬送物がダミー液と被加熱物との一方から他方に切り換えられても、それぞれの加熱ユニットにおける流速を同一に設定することができる。流速が変化しなければ、被加熱物Wが加熱ユニットを通過する時間が変化しないので、被加熱物の加熱開始から加熱終了までにおける加熱温度を設定値に保持することができる。
【0032】
流路切換弁18はポンプ19から離れて配置されているので、立ち上げ時に流路切換弁18が作動して被加熱物Wが流路切換弁18からポンプ19に到達するまでに時間が掛かることになる。同様に、終了時に流路切換弁18が作動してダミー液Dが流路切換弁18からポンプ19に到達するまでに時間が掛かることになる。ポンプ19から吐出される被搬送物がダミー液と被加熱物との一方から他方に切り換えられたときを高精度で検出するために、図1に示されるように、流入配管17にはポンプ19と加熱ユニット11aの間に位置させて流量センサ49が設けられている。この流量センサ49によりポンプ19から吐出された被搬送物の流速を検出することによって、ポンプ19からダミー液Dが吐出されたか、被加熱物Wが吐出されたかを判定することができる。流速の検出は流量の検出と等価である。この判定を行う方式としては、流路切換弁18が作動してからポンプ19に被搬送物が到達するまでの時間に基づいて行うようにする形態と、加熱ユニット11cから吐出される被加熱物やダミー液の温度を温度センサ48により検出する形態とがある。
【0033】
図3は加熱装置10の制御回路を示すブロック図である。流路切換弁18とポンプ19とに駆動信号を送るコントローラ53には、温度センサ48と流量センサ49から検出信号が送られる。制御手段としてのコントローラ53には操作盤54が接続されており、操作盤54に設けられたキー操作によって加熱装置10の流路切換弁18の作動指令等が入力される。
【0034】
コントローラ53は、流量センサ49からの検出信号に基づいてポンプ19の回転数を制御するための駆動信号を演算するマイクロプロセッサと、制御プログラム、演算式およびマップデータ等が格納されるROMと、一時的にデータを格納するRAM等を有している。加熱装置10により加熱処理される被加熱物Wの種類に応じて、ポンプ19がダミー液を吐出するときと、被加熱物Wを吐出するときとのポンプ回転数のデータがROMに格納されている。例えば、味噌等のペースト状の食品はジュースやスープ等の飲食物よりも粘性が高く、被加熱物Wの粘性に応じた被加熱物回転数Paのデータがメモリに格納される。なお、コントローラ53により他のポンプ36,47等の作動が制御される。
【0035】
コントローラ53には、流路切換弁18が作動してからポンプ19に被搬送物が到達するまでの時間に基づいてポンプ19からダミー液Dが吐出されたか、被加熱物Wが吐出されたかを判定するためのタイマー55が設けられている。このように、図示する加熱装置10は、ダミー液と被加熱物との切換判定を流量センサ49からの信号に基づいて行う形態と、タイマー55からの信号に基づいて行う形態との両方を有しており、いずれか一方または両方の形態により切換判定が行われたときにポンプ回転数を変化させるようにしている。ただし、両方の形態を併用することなく、一方の形態のみによって切換判定を行うようにしても良い。
【0036】
ダミー液Dから被加熱物Wに切り換える方式としては、作業者が操作盤54のキーを手動操作して流路切換弁18の切換操作が行われたことを検出することなく、温度センサ48からの信号により自動的に流路切換弁18を切り換える形態がある。この場合には、ダミー液Dが所定の加熱温度まで加熱されたことが温度センサ48からの信号により検出されたときに、自動的に流路切換弁18を作動することになる。
【0037】
図4は加熱装置10による被加熱物の加熱処理が行われるときのポンプ回転数の制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
【0038】
加熱装置10の立ち上げ処理が行われるときには、作業者による操作盤54のキー操作によって、流路切換弁18がダミー液供給配管16と流入配管17とを連通状態にした状態のもとでポンプ19が駆動されてダミー液ホッパ14内のダミー液Dが供給される。ステップS1においてダミー液Dが供給されたことが判定されると、ステップS2においてポンプ回転数がダミー液回転数Pdに設定され、ステップS3において加熱ユニット11a〜11cに対して電力が供給される。これにより、ダミー液Dが通電加熱される。
【0039】
最終段の加熱ユニット11cから吐出されたダミー液Dが所定の加熱温度まで加熱されたことが温度センサ48により検出されたときには、自動的に流路切換弁18は流路切換操作が行われ、加熱ユニット11aにダミー液Dを供給する状態から被加熱物Wを供給する状態に切り換えられる。流路切換弁18の切換操作が行われたときには、ステップS4において被加熱物Wが供給されたことが判定される。この判定方式として、作業者がダミー液Dの供給状態を観察して手動操作により流路切換弁18を操作する形態においては、流路切換弁18の作動状態を判定することにより行うことになる。
【0040】
流路切換弁18の流路切換が行われて、ダミー液Dを加熱ユニットに供給する状態から被加熱物Wを供給する状態に切り換える操作が行われたことがステップS4において判定されると、ポンプ回転数が被加熱物回転数Paに切り換えられる(ステップS5)。この状態のもとでは、被加熱物回転数Paはダミー液回転数Pdよりも低下した回転数に設定される(Pa<Pd)。
【0041】
ポンプ19の回転数を変化させるタイミングは、流量センサ49からの信号、タイマー55、あるいは温度センサ48からの信号に基づいて自動的に制御され、加熱装置10の立ち上げ処理が完了する。ポンプ19の回転数は、加熱装置の終了処理が行われるまで継続される。
【0042】
加熱装置10の終了処理が行われるときには、作業者が操作盤54を操作することによって、流路切換弁18の流路切換が行われる。被加熱物Wを加熱ユニットに供給する状態からダミー液Dを供給する状態に切り換える操作が行われたことがステップS6において判定されると、ポンプ回転数がダミー液回転数Pdに切り換えられる(ステップS7)。全ての被加熱物Wが加熱ユニットを通過したことが検出されると、ステップS8において加熱終了が判定され、ステップS9において電極23a,23bに対する電力供給が停止されるとともに、ステップS10においてポンプ19の回転が停止される。これにより、加熱装置10の終了処理が完了する。
【0043】
加熱終了の判定は、ダミー液Dが供給されてからダミー液Dが冷却装置33を通過するまでの時間によって判定するようにしても良く、作業者が加熱状況を観察して操作盤54をキー操作したことに基づいて判定するようにしても良い。
【0044】
図5は加熱装置10の変形例であり、図5はダミー液Dと被加熱物Wとを流入配管17に供給する部分を示す。この加熱装置10は、ダミー液Dと被加熱物Wとを収容する共通ホッパ56を有し、この共通ホッパ56には配管57によりダミー液Dが投入される。共通ホッパ56の上方には、被加熱物Wを収容した状態で撹拌するための撹拌機構を有するニーダ58が配置されている。ニーダ58は電動モータ59により回転駆動される撹拌部材60が蓋部材に設けられており、ニーダ58内に収容された被加熱物Wは全体的に均一な温度に調整される。ニーダ58内の被加熱物Wを共通ホッパ56内に投入する供給配管61には流路を開閉する開閉弁62が設けられている。
【0045】
この形態においては、加熱装置10の立ち上げ時には配管57により共通ホッパ56内に投入されたダミー液Dが所定の液位まで低下したときに、開閉弁62を開放することにより被加熱物Wが共通ホッパ56内に供給される。開閉弁62の作動タイミングを自動的に検出する場合には、共通ホッパ56に液位センサ63を設け、液位センサ63により検出された液位に基づいて開閉弁62が駆動される。
【0046】
図6は加熱ユニットの変形例を示す。この加熱ユニットは横断面が図6(B)に示されるように、四角形の絶縁性材料からなる管状部材22を有しており、内部は被加熱物が搬送される流路21となっている。管状部材22の内面には相互に対向して板状の電極23a,23bが配置されており、両方の電極23a,23bは電極対を構成している。
【0047】
図7は加熱ユニットのさらに他の変形例を示す。この加熱ユニットは絶縁性材料からなる横断面が円形の管状部材22を有し、両端部は閉塞されている。管状部材22の両端部には相互に対向して板状の電極23a,23bが配置されており、管状部材22の一端部には流入口64が設けられ、他端部には流出口65が設けられている。なお、管状部材22の横断面形状が図5に示されるように四角形となった管状部材としても良い。
【0048】
このように、加熱ユニット11a〜11cの構造としては、リング状の電極を設けた形態、流路21の搬送方向に沿って板状の電極を設けた形態、および管状部材の両端に電極を設けた形態等がある。さらに、1つの加熱ユニットに配置される電極対の数も一対の形態と複数の形態とがある。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、加熱装置10を構成する加熱ユニットの数は、3つに限られず、1つの加熱ユニットにより加熱装置を構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
10 加熱装置
11a〜11c 加熱ユニット
13 製品ホッパ
14 ダミー液ホッパ
15 製品供給配管
16 ダミー液供給配管
17 流入配管
18 流路切換弁
19 ポンプ
23a 電極
23b 電極
27 電源ユニット
48 温度センサ
49 流量センサ
53 コントローラ
55 タイマー
56 共通ホッパ
58 ニーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7