(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
超音波発生源によって加振される押圧ツールを被接合部材に搭載された接合部材に押圧し、前記接合部材に超音波振動を与えるとともに、少なくとも、累積給電エネルギーが所定値以上となったことに基づく接合完了の判定結果に応動して、前記超音波発生源の作動を停止することで、前記接合部材と前記被接合部材とを超音波接合する超音波接合ステップを有する超音波接合方法であって、
前記被接合部材の搭載面において前記被接合部材を静止保持しようとする第一の摩擦抵抗F1とし、前記接合部材と前記被接合部材との接合後における接合剥離又は前記接合部材の切断が発生しないための限界値を損壊耐力F30としたときに、F1>F30の関係が成立するものにおいて、
前記接合部材は、前記押圧ツールの押圧によって陥没部が形成される低硬度素材であって、前記押圧ツールの硬度>前記被接合部材の硬度>前記接合部材の硬度となっており、
前記押圧ツールの先端部における前記接合部材との当接面は、球状曲面となっており、 前記押圧ツールが前記接合部材に押圧加振されることによって前記接合部材に発生する前記陥没部は、接合開始に伴って加振方向に成長拡大し、接合完了時点では前記押圧ツールの前記先端部が前記陥没部の中心部を脱出できるように前記押圧ツールに対する押圧力と最大陥没深さである限界深度が規制されており、
前記押圧ツールと前記接合部材の当接面において、前記陥没部における接触角度による水平分力と摩擦係数による摺動抵抗の合計値を水平駆動力F20とし、前記接合部材と前記被接合部材との間の接合面において、摩擦係数によって作用する摺動抵抗を第三の摩擦抵抗F3としたときに、前記超音波接合ステップは、
前記接合部材と前記被接合部材との間の超音波接合が完了するまでは、
第一条件(F1、F20>F3)
が成立して、前記接合面において摺動摩擦が発生するように、前記押圧力を規制してから前記超音波発生源に対して給電する第1ステップと、
少なくとも前記累積給電エネルギーが前記所定値以上となったことにより前記接合部材と前記被接合部材との間の超音波接合が完了したことを判定する第2ステップと、
前記第2ステップにより前記接合部材と前記被接合部材との間の超音波接合が完了したと判定された後には、前記押圧ツールの前記先端部と前記陥没部との前記接触角度に基づく加振方向の水平分力が減少することよって、
第二条件(F1、F30>F20)
が成立して、前記超音波発生源に対する給電を停止するとともに前記押圧ツールによる前記接合部材の押圧を解除する第3ステップと
を含み、
前記押圧ツールは、前記超音波発生源から駆動される超音波ホーン、又は前記超音波ホーンの支持部材に対して固定されていて、
前記押圧ツールの押圧端面は、曲率半径がR1で球面高さがhである球面形状であり、
前記曲率半径R1は、前記押圧ツールの先端部から前記超音波ホーンまでの距離に相当する押圧ツールのアーム長R2以下の値であり、前記球面高さhは、前記陥没部の最大深度以上の値であり、
前記超音波接合ステップに含まれる前記第2ステップは、加振開始後の累積給電エネルギーが所定の判定閾値に到達したことによって前記超音波接合が完了したことを判定し、
前記所定の判定閾値は、複数サンプルによる実験測定の前半工程において、接合完了に伴って前記押圧ツールの前記先端部が、前記陥没部の中心部を脱出したと判定されるまでなお加振を持続する累積給電エネルギー以上の累積給電エネルギーを付与して実験され、この前半工程で所定値以上の剥離耐力が得られた複数の前半正常サンプルにおいて、前記押圧ツールの前記先端部が前記陥没部の中心部を脱出した時点の累積給電エネルギーの最大値を参照して決定され、
前記所定の押圧力は、複数サンプルによる実験測定の後半工程において、前記前半工程で得られた前記所定の判定閾値となる累積給電エネルギーが付与されて実験され、この後半工程で所定値以上の剥離耐力が得られた複数の後半正常サンプルにおいて、適用された押圧力の最大値を参照して決定され、
前記前半工程及び前記後半工程の一部である剥離試験において、剥離抵抗が規定値以上であった上位グループのサンプルに適用された押圧力と累積給電エネルギーの値に基づいて実際の押圧力と累積給電エネルギーの値が決定されている
ことを特徴とする超音波接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の超音波接合方法および超音波接合装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0021】
実施の形態1.
(1)構成の詳細な説明
本実施の形態1における超音波接合装置100Aについて、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における超音波接合装置100Aの構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1における押圧ツール30によって、接合部材70を押圧する場合における押圧部分の拡大断面図である。
【0022】
この
図1における超音波接合装置100Aは、設置部10、加振機構部20、押圧ツール30、押圧機構部40、および超音波接合制御部50を備える。
【0023】
設置部10は、保護シート12が貼付された基台11を備える。さらに、設置部10は、基台11と一体化された背骨および天板によって構成された静止機構と、静止機構に設けられた可動部および駆動部を備える(図示せず)。
【0024】
この
図1における超音波接合装置100Aによって接合を行う際には、保護シート12が貼付された基台11の上に、図示するように、被接合部材60および接合部材70が設置される。
【0025】
なお、被接合部材60としては、例えば、セラミックス・ガラス・鉄板などが用いられる。また、接合部材70としては、例えば、薄膜テープ状のものが用いられる。そして、薄膜テープ状の接合部材70は、図示していないが、被接合部材60の表面に所定の間隔をおいて順次接合される。
【0026】
加振機構部20は、二股アーム21、二股アーム21の開放端位置に固定された超音波発生源22、および共鳴体である超音波ホーン23を備える。超音波ホーン23は、二股アーム21の一端を矢印25の方向に加振する。さらに、加振機構部20は、押圧機構部40により上下への昇降が可能である。
【0027】
押圧ツール30は、図示するように、二股アーム21の一端にねじ24で固定されている。押圧ツール30の先端部は、押圧機構部40により矢印26の方向に押圧されると、接合部材70の反接合面(接合されない上面)を圧接する。
【0028】
そして、押圧ツール30の先端部が接合部材70の反接合面を圧接することにより、接合部材70の反接合面には、
図2で図示するように、陥没部が形成される。
【0029】
また、押圧ツール30の先端部は、
図1および
図2で図示するように、曲率半径R1による球面形状となっている。この曲率半径R1は、押圧ツール30のアーム長R2以下の値となっている。
【0030】
このアーム長R2は、
図1および
図2で図示するように、押圧ツール30の先端部から超音波ホーン23の直近のノーダルポイント(節点)までの距離と考える。但し、押圧ツール30の長さが十分にある場合には、便宜上、押圧ツール30の取付け位置(ねじ24で固定する位置)までの寸法とみなす。
【0031】
押圧機構部40は、サーボモータ41と連結しており、サーボモータ41は、押圧機構部40の押圧力を制御する。さらに、押圧機構部40は、押圧ツール30と接合部材70間の圧接圧力を測定する圧力センサ42および押圧ツール30の移動量を測定する深度センサ43を備える。
【0032】
超音波接合制御部50は、超音波発生源22への給電を行い、超音波発生源22に対する給電電圧を制御する。さらに、超音波接合制御部50は、サーボアンプ(図示せず)を介して、サーボモータ41の回転速度および出力トルクを制御する。
【0033】
また、超音波接合制御部50は、累積出力制限手段51、押圧力制御手段52、最大深度制限手段53、振幅制限手段54、接合条件記憶手段55、および設定表示手段56を備える。
【0034】
累積出力制限手段51は、超音波発生源22に対する給電電力(単位として、ワットが用いられる)の時間積分値である累積出力(単位として、ジュールが用いられる)が所定の判定閾値(累積出力制限値)に達した場合、出力電圧の発生を停止する。なお、この累積出力のことを以下では、累積給電エネルギーと称す。
【0035】
押圧力制御手段52は、圧力センサ42によって検出される押圧ツール30の圧接圧力が、所定の目標押圧力となるように、サーボモータ41に対するトルク制御指令を行う。
【0036】
最大深度制限手段53は、深度センサ43によって検出される押圧ツール30が接合部材70に対して当接開始した後の押圧移動量を確認する。なお、押圧移動量とは、
図2で図示するような陥没部の陥没深さに相当する。
【0037】
さらに、最大深度制限手段53は、陥没深さが所定の限界深度以上にならないように、サーボモータ41の出力トルクを制限する。そして、陥没深さが所定の限界深度を超えると判断すれば、圧接圧力を目標押圧力以下に抑制する。
【0038】
振幅制限手段54は、超音波ホーン23の腹点における振動振幅が所定の限界値を超過しないように、超音波発生源22に対する印加電圧および給電電流を制御する。
【0039】
接合条件記憶手段55は、複数サンプルによる実験測定によって得られた所定の目標押圧力および累積給電エネルギーの値が格納されるメモリである。そして、格納した目標押圧力は、押圧力制御手段52における目標押圧力として設定される。また、格納した累積給電エネルギーは、累積出力制限手段51における所定の判定閾値として設定される。
【0040】
設定表示手段56は、加振開始後の超音波接合制御部50の出力電力、および出力電力の積分値である累積給電エネルギーの時系列データについて、接合完了後に、画面表示する。
【0041】
なお、累積出力制限手段51のおける所定の判定閾値は、複数サンプルによる実験測定によって得ることができる。すなわち、押圧機構部40から押圧ツール30に対して所定の押圧力を付与すれば、押圧ツール30の先端部が接合部材70に陥没部を生成する。そして、押圧ツール30の先端部がその陥没部の中心部を脱出した時点の累積給電エネルギーの値を参照することにより決定することができる。この詳細については、後述する。
【0042】
次に、押圧ツール30の所定の目標押圧力について説明する。この所定の目標押圧力は、前述した押圧力制御手段52および最大深度制限手段53によって、接合部材70と被接合部材60との接合面の接合が開始した時点では、接合面において摺動摩擦が発生し、さらに、接合が完了した時点では、押圧ツール30の最先端が陥没部32の中心部から脱出するように設定される。
【0043】
そして、設定される所定の目標押圧力は、以下の条件(a)、(b)が成立するように設定される。すなわち、被接合部材60の搭載面において、摩擦係数によって被接合部材60を静止保持しようとする第一の摩擦抵抗をF1とする。
【0044】
そして、押圧ツール30と接合部材70との当接面において、
図1で図示するような陥没部における接触角度による水平分力(水平分力の詳細は、後述する)と摩擦係数による摺動抵抗との合計値を水平駆動力F20とする。
【0045】
また、接合部材70と被接合部材60との間の接合面において、摩擦係数によって作用する摺動抵抗を第三の摩擦抵抗F3とし、接合面における接合剥離又は接合部材70の切断が発生しないための限界値を損壊耐力F30とする。
【0046】
接合部材70と被接合部材60との間の超音波接合が完了するまでは、条件(a)が成立すれば、接合面において摺動摩擦が発生する。
条件(a) F1、F20>F3
【0047】
接合部材70と被接合部材60との間の超音波接合が完了した後には、押圧ツール30の最先端が陥没部32の中心部を脱出することにより、条件(b)が成立すれば、押圧ツール30と接合部材70との間において摺動摩擦が発生する。
条件(b) F1、F30>F20
【0048】
さらに、陥没部における接触角度による水平分力について、
図2を参照して説明する。この
図2では押圧ツールの先端部は、曲率半径R1の球状球面になっており、球面高さhは、最大深度制限手段53における所定の限界深度(最大深度)以上の値となっている。
【0049】
まず、加振前に押圧ツール30を接合部材70に圧接すると、図示するような陥没径W0で示された陥没部31が生成される。このときの陥没深さd0は(1)式で示される。
d0=0.125×W02/R1 (1)
【0050】
従って、押圧ツール30の先端部と接合部材70の陥没部31との間において、曲面接触による接触角が発生し、あたかも楔が差し込まれている状態となるので、押圧ツール30と接合部材70との間は滑りが発生し難い状態となっている。そのため、接触角度による水平分力が発生する。
【0051】
次に、押圧加振の進行に伴って、陥没部31は、成長して(大きくなり)、陥没径W0と陥没深さd0は増加する。接合部材70と被接合部材60との間において、滑動ステージおよび加熱ステージを経て、分子結合ステージが開始されると、接合面間の第三の摩擦抵抗F3が増加する。
【0052】
分子結合の増加に伴って、接合部材70の楔効果部分は、加振方向に圧延進展する。そして、最終的には、押圧ツール30の最先端が図示するような短径W1、長径W2で示された陥没部32の中心部を脱出するようになっている。このときの陥没深さdは(2)式で示される。
d=0.125×W12/R1
=0.125×W22/R2 (2)
【0053】
従って、陥没部32の短径W1と長径W2との比率は、(3)式で示される。
W2/W1=√(R2/R1) (3)
【0054】
なお、このときの陥没深さdは、最大深度制限手段53によって、所定の限界深度を超えないように規制される。
【0055】
次に、押圧ツール30の最先端が陥没部32の中心部を脱出すると、押圧ツール30と接合部材70間の楔効果部分がなくなるため、接触角度による水平分力がなくなる。そのため、水平駆動力F20は、押圧ツール30と接合部材70との間の摩擦抵抗分のみに減少する。
【0056】
なお、押圧ツール30と接合部材70との間の摩擦抵抗について、条件(b)を満たすように所定の目標押圧力が設定されるため、この摩擦抵抗は、損壊耐力F30より小さくなる。
【0057】
さらに、例を挙げて具体的に説明するために、被接合部材60として、例えば、複数の太陽電池が焼成されたガラス板(例えば、寸法幅が1.5m×2.5m、厚さが4mm)、接合部材70として、例えば、薄膜テープ状のアルミ箔(例えば、幅が3.5mm、厚さが100um)を用いる場合について述べる。
【0058】
ガラス板に焼成した太陽電池は、保護金属膜が施された電極を有している。また、このアルミ箔を接合することによって、電極間が接続されるようになっている。ここで、保護金属膜と太陽電池が焼成されたガラス板との接合剥離耐力をF10とする。
【0059】
このような場合における押圧ツール30の所定の目標押圧力は、上述した条件(a)、(b)の条件に加え、さらに、F10について以下の条件が成立するように設定される。
【0060】
接合部材70と被接合部材60との間の超音波接合が完了するまでは、条件(a)´が成立すれば、接合面において摺動摩擦が発生する。
条件(a)´ F1、F10、F20>F3
【0061】
接合部材70と被接合部材60との間の超音波接合が完了した後には、押圧ツール30の最先端が陥没部32の中心部を脱出することにより、条件(b)´が成立すれば、押圧ツール30と接合部材70との間において摺動摩擦が発生する。
条件(b)´ F1、F10、F30>F20
【0062】
なお、この例における押圧ツール30の先端部は、曲率半径R1=100mm、球面高さh=35μmとなっている。また、押圧力を100Nとした場合の陥没部32の形状は、長径W2=3.5mm、短径W1=2.5mmであった。
【0063】
但し、実際の陥没部32は、後述する
図8および
図9で図示するように、菱形の角部を円弧で補正したような形状となっている。
また、押圧ツール30の先端部の振幅は数10ミクロンの微小寸法であるが、接合部材であるアルミ箔は超音波振動によって加熱圧延されて陥没部32が成長拡大し、徐々に押圧ツール30の先端部と陥没部32の中心部における接触角度が減少し、加振方向の水平分力が低下するようになっている。
【0064】
以上のように、押圧ツール30の押圧端面の曲率半径R1は、超音波ホーン23から押圧ツールの押圧先端部までの距離である押圧ツールのアーム長R2以下の値であり、球面高さは、陥没部の最大深度以上の値となっていて、陥没深さdは、所定の限界深度を超えないように最大深度制限手段53によって規制される。
【0065】
従って、押圧端面の押圧力が広く分散して、接合部材の局部に圧力が集中せず、押圧端面の輪郭外周部が接合部材に食い込むことによる圧力集中も発生せず、接合部材および被接合部材への裂傷の発生、接合剥離の発生などを防止することができる特徴がある。
【0066】
(2)作用・動作の詳細な説明
次に、本実施の形態1における超音波接合装置100Aの動作について、
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における超音波接合装置100Aの全体制御のタイムチャートである。
【0067】
図3(A)は、ワークの搬入・搬出移送動作を示す。ここでは、板状の被接合部材60と薄膜テープ状の接合部材70であるワークを順次移動させ、超音波接合部位を順次、押圧ツール30の下部に移動させる。
【0068】
そして、移送機構(実施の形態3にて後述する)によって、第1時刻帯301aにて、前進してワークの搬出・搬入を行い、第1時刻帯301aに続く後続時間帯301aaにて、空荷で後退し、第6時刻帯306aから同様の繰返し動作を行う。
【0069】
図3(B)は、サーボモータ41による押圧ツール30の昇降動作を示す。サーボモータ41は、第1時刻帯301aに続く後続時刻帯301bにて、下降動作を行い、第6時刻帯306aの先行時刻帯306bにて、上昇動作を行う。
【0070】
図3(C)は、被接合部材60が基台11上で微振動によって、クリープしないようにするための補助押圧機構(図示せず)の昇降動作を示している。補助押圧機構は、後続時刻帯301bに続く後続時刻帯301cにて、下降動作を行い、先行時刻帯306bの更なる先行時刻帯306cにて、上昇動作を行う。
【0071】
なお、補助押圧機構としては、例えば、エアシリンダなどが用いられる。補助押圧機構は、押圧ツール30を昇降させる押圧機構部40と連動して昇降し、押圧ツール30の下降完了に伴って、下降押圧動作を行う。また、補助押圧機構は、押圧機構部40の上昇動作の前に上昇動作を行う。
【0072】
図3(D)は、サーボモータ41による押圧ツール30の押圧動作を示す。サーボモータ41は、後続時刻帯301cに続く後続時刻帯301dにて、押圧ツール30に対して押圧力を付加するために押圧動作を行い、先行時刻帯306cの更なる先行時刻帯306dにて、押圧力をなくすために押圧解除動作を行う。
【0073】
なお、押圧力の上昇・下降パターンについては、どのようなパターンを用いてもよく、本実施の形態1では、図示するように、なだらかに漸増・漸減させている。
【0074】
図3(E)は、超音波発生源22に印加される超音波接合制御部50の出力電圧の波高値を示す。超音波接合制御部50は、接合部材70が押圧ツール30によって押圧された後続時刻帯301dに続く第1時刻301eにて、超音波発生源22に電圧を印加する。この電圧の印加により、超音波発生源は、押圧ツール30に対して加振を開始する。
【0075】
そして、超音波接合制御部50は、所定の出力電圧を維持しながら後述する第4時刻304eに至り、第4時刻304e以降は漸減し、後述する第5時刻305eにおいて出力電圧をゼロにする。
【0076】
図3(F)は、超音波発生源22の消費電力の時間経過を示す。加振開始時刻301eと同じ時刻である振動開始時刻301fにて、押圧ツールの振動が始まり、摺動面の汚れ具合によって変化する滑動振動振幅を維持するため、消費電力は、一定となる。
【0077】
そして、滑動終了時刻である第2時刻302fに至り、第2時刻302fから第4時刻304fにかけては摺動面の研磨が行われるため、消費電力は、漸増する。
【0078】
やがて、第4時刻304e、304fにて、超音波発生源22に対して、加振抑制が開始されるため、消費電力は、漸減し、加振完了時刻305fにて、ゼロとなる。
【0079】
図3(G)は、実施の形態2において、振動センサを設けた場合における接合部材70と被接合部材60又は押圧ツール30との間の擦れ振動の振幅を示している。この擦れ振動の振幅は、振動開始時刻301g、滑動終了時刻302g、接合完了時刻304gを経て、加振完了時刻305gに至る。
【0080】
なお、この擦れ振動の経時変化は、
図3(E)の消費電力の経時変化と同等の変化を示す。図示するように、消費電力が小さい滑動期間では、擦れ振動は小さく、接合期間では、擦れ振動が漸増し、接合完了に伴って、接合部材70と被接合部材60間における擦れ振動は、消滅する。
【0081】
しかしながら、接合部材70と押圧ツール30間の擦れ振動が、被接合部材60を経由して振動センサに伝搬するようになっている。この詳細については、後述する。
【0082】
図3(H)は、
図3(F)で示した超音波発生源22の消費電力の時間積分値である累積給電エネルギーの経時変化を示す。累積給電エネルギーは、加振開始の第1時刻301hから漸増し、第4時刻304hの前後で、増加率が大から小に変化する変曲点が発生する。
【0083】
この変曲点が発生する第4時刻304hが、押圧ツール30の先端部が接合部材70の陥没部32の中心部を脱出する時点であり、この時点の累積給電エネルギーの値を累積出力制限値としている。そして、累積出力制限手段51は、累積給電エネルギーがこの累積出力制限値に到達したことによって、接合完了と判定する(接合完了判定が行われる)。最後に、加振完了時刻305hにて、累積給電エネルギーのデータがリセットされる。
【0084】
なお、
図3(E)〜
図3(H)で示される加振開始時からの時系列特性は、超音波接合制御部50内の接合条件記憶手段55に格納される。そして、接合条件記憶手段55に格納された加振完了までの時系列特性は、加振完了時に、設定表示手段56によって画面表示される。
【0085】
なお、加振開始時刻301eと加振完了時刻305eとの間の時間である図示された指令発生時間Tmaxは、予め実験測定された複数回の超音波接合において、正常な接合を行うのに必要とされた統計上の累積給電エネルギー量に応じて決定されるが、この期間内には接合が完了しているように十分長い目の時間、又はエネルギー量として決定されている。
【0086】
そして、加振完了時刻305e以後は、先行時刻帯306d、306c、306bを経て、第6時刻帯306aへ移行し、再び同様の動作制御を繰り返す。
【0087】
次に、前述した所定の目標押圧力および累積出力制限値の最適値を特定するために、多数サンプルによる実験測定を行う手順について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における超音波接合装置100Aを用いて、実験測定を行う手順を示すフローチャートである。
【0088】
まず、工程400を実行することによって、所定の目標押圧力および累積出力制限値の最適値を特定するために、実験データの収集・分析を開始する。次に、工程401にて、超音波接合制御部50に設定記憶させる累積出力制限値として、理論的又は経験的に推定される十分大きい値を仮設定する。
【0089】
次に、工程402にて、多段階(例えば、20段階程度)の目標押圧力を想定し、はじめに想定した目標押圧力の最小値を超音波接合制御部50に設定記憶させ、接合試験を実行する。
【0090】
そして、サンプルの接合試験が完了した後、画面表示された先の
図3における時系列特性から接合完了判定を行い、接合完了時刻を推定する。そして、推定した接合完了時刻時点における累積給電エネルギーの値を記録する。このように、接合完了判定が行えたサンプルについては、正常なサンプルとして扱う。
【0091】
但し、工程402にて、時系列特性から接合完了判定が行えないサンプルについては、接合不良として扱う。この場合、累積給電エネルギーの値は、工程401にて、仮設定した累積出力制限値であると判定する。
【0092】
次に、工程403にて、工程402にて想定した多段階の目標押圧力による接合試験が完了したか否かを判断する。多段階の目標押圧力による接合試験が完了していないと判断した場合には、工程402に戻り、順次大きな目標押圧力に設定変更して、接合試験を行う。
【0093】
一方、多段階の目標押圧力による接合試験が完了していると判断した場合には、工程404にて、接合完了判定が行えた正常サンプルの数が規定値以上あるか否かを判断する。正常なサンプルの数が規定値以上ないと判断した場合には、工程401に戻り、累積出力制限値の仮設定値を再度、変更し、工程402にて、再び、接合試験を行う。
【0094】
一方、正常なサンプルの数が規定値以上あると判断した場合には、工程405にて、正常なサンプルについて剥離試験を行う。なお、この剥離試験により、接合部の剥離抵抗(剥離耐力)を得ることができる。そして、正常な各サンプルの接合試験時の目標押圧力、接合完了時点における累積給電エネルギー、および剥離抵抗の値を集計する。
【0095】
次に、工程411にて、工程405にて各値を集計した正常サンプルのうち、剥離抵抗が規定値以上であるサンプルについて、それぞれの接合完了時点における累積給電エネルギーの中で最も大きい累積給電エネルギーの値を確認する。
【0096】
そして、その最も大きい累積給電エネルギーの値を累積出力制限値として、超音波接合制御部50に設定記憶させる。
【0097】
次に、工程412にて、工程405にて各値を集計した正常サンプルのうち、剥離抵抗が規定値以上である上位グループのサンプルについて、それぞれの接合試験時の目標押圧力の分布を確認し、目標押圧力の適正範囲を決定する。
【0098】
そして、決定した目標押圧力の適正範囲の中から、さらに目標押圧力をしぼりこむことが可能となり、この適正範囲から多段階の目標押圧力を想定する。
【0099】
次に、想定した目標押圧力の最小値を超音波接合制御部50に設定記憶させ、接合試験を実行する。そして、先と同様に、サンプルの接合試験が完了した後、表示画面に表示された先の
図3における時系列特性から接合完了判定を行い、接合完了時刻を推定する。そして、推定した接合完了時刻時点における累積給電エネルギーの値を記録する。
【0100】
次に、工程413にて、工程412にて想定した多段階の目標押圧力による接合試験が完了したか否かを判断する。多段階の目標押圧力による接合試験が完了していないと判断した場合には、工程412に戻り、順次大きな目標押圧力に設定変更して、接合試験を行う。
【0101】
一方、多段階の目標押圧力による接合試験が完了していると判断した場合には、工程414にて、再び、正常なサンプルについて剥離試験を行い、接合部の剥離抵抗を得る。
【0102】
次に、工程415にて、工程414にて得られた接合部の剥離抵抗のうち、最も剥離抵抗の値が大きかったサンプルの接合試験時の目標押圧力の値を目標押圧力の最適値として、設定する。また、工程412にて得られた接合完了時点における累積給電エネルギーの最大値を累積出力制限値の最適値として設定する。最後に、工程419を実行することによって実験データの収集・分析を終了する。
【0103】
以上のように、工程401から工程405における前段工程ブロックでは、十分大きな累積出力制限値を設定し、正常に接合が行われたサンプルにおいて、接合試験時の目標押圧力の適正範囲を決定することができる。さらに、これらの正常サンプルにおいて、接合完了時点を表示画面データから目視判定することにより、この時点における累積給電エネルギーを抽出することができる。
【0104】
なお、押圧ツール30の押圧力をF(N)、接合部材70と被接合部材60間の等価摩擦係数をK、押圧ツール30の振動振幅をA(μm)、振動周波数をf(KHz)としたときに、接合摺動面で消費される機械効率P(W)は、(4)式で示される。
P=F×K×A×f×10−3 (4)
【0105】
累積加振エネルギーは、正しくは、この機械効率Pの時間積分値(J)として算出する必要がある。しかしながら、この累積加振エネルギーを正確に推定するのは困難である。
【0106】
なぜなら、超音波発生源22に対する実効入力電力は、機械効率P、超音波発生源22内部の電気的損失、加振機構部20全体の機械的損失、および超音波接合制御部50内部の電気的損失による工率を加算しなければならないからである。
【0107】
特に、実際に必要とされる工率又はエネルギーに対して、比較的大容量の超音波接合装置を使用した場合には、実使用工率に比べて無負荷損失が大きくなるため、超音波発生源22の消費電力の経時変化を検出して、自動的に接合完了時点を判定することが非常に困難である。
【0108】
従って、画面表示された時系列特性から目視判定によって、接合完了時点を判定する方法が現実的な方法である。
【0109】
また、工程411から工程415における後段の工程ブロックでは、工程401から工程405で決定した目標押圧力の適正範囲および抽出した累積給電エネルギーに基づいて、接合試験・剥離試験を行うことにより、目標押圧力の最適値と累積出力制限値の最適値を特定することできる。
【0110】
なお、工程412においても工程402と同様に目視判定によって接合完了時点を見つける必要がある。
【0111】
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、以下に示す特徴1〜3を有する。
(特徴1)
押圧ツールの押圧端面の曲率半径R1は、超音波ホーンから押圧ツールの押圧先端部までの距離である押圧ツールのアーム長R2以下の値であり、球面高さhは、陥没部の最大深度以上の値となっていて、陥没深さdは、所定の限界深度を超えないように、最大深度制限手段53によって規制される。
従って、押圧端面の押圧力が広く分散して、接合部材の局部に圧力が集中せず、押圧端面の輪郭外周部が接合部材に食い込むことによる圧力集中も発生せず、接合部材および被接合部材への裂傷の発生、接合剥離の発生などを防止することができる特徴を有す。
(特徴2)
複数サンプルによる実験測定によって、押圧ツールの先端部が接合部材の陥没部32の中心部を脱出する時点の累積給電エネルギーの値を接合完了の累積出力制限値として、累積出力制限手段51は、加振開始後の累積給電エネルギーがこの累積出力制限値に到達したことによって、接合完了と判定する。
従って、実験測定において累積給電エネルギーの算出時点が明確であり、遅れて加振停止しても接合剥離が発生しないので、データの収集が容易となる特徴を有す。また、押圧ツールの先端部が陥没部の中心部を脱出する状態であっても接合剥離が発生していないことが剥離試験によって確認されているので、損壊耐力F30よりは水平駆動力F20の方が小さくなっていることが確認される特徴を有す。
(特徴3)
押圧ツールの先端部が接合部材に生成された陥没部の中心部を脱出するタイミングは、設定表示手段に表示された累積給電エネルギーの経時変化を監視することによって決定する。
従って、判定閾値を予定されている累積給電エネルギーよりも大き目に設定しておくことにより、手軽に判定閾値を求めることができる特徴を有す。
【0112】
実施の形態2.
(1)構成の詳細な説明
先の実施の形態1では、超音波接合装置100Aにおいて、接合試験完了後の時系列特性から接合完了時点を目視判定することにより、目標押圧力および累積出力制限値の最適値を特定することについて説明した。これに対して、本発明の実施の形態2では、目視判定ではなく、振動センサを用いて自動的に接合完了時点を判定できる超音波接合装置100Bについて
図5および
図6を参照して説明する。
【0113】
図5は、本発明の実施の形態2における超音波接合装置100Bの構成図である。この
図5における超音波接合装置100Bは、先の実施の形態1における超音波接合装置100Aに対して、さらに、振動検出部80、およびこれに関連する接合判定ユニット50Bが付加されたものであり、その他の構成は同一となっている。
【0114】
まず、新たに付加される振動検出部80について説明する。振動検出部80は、振動センサ81、ゲルパッド82、衝撃吸収シート83、第1の接着材84、第2の接着材85、保持機構86、およびセンサ押圧機構87を備える。
【0115】
振動センサ81は、超音波発生源22が、例えば、20kHzの超音波振動を発生させることにより生じる摺動面の擦れ振動を検出するために用いられる。また、振動センサ81には、100KHz〜2MHzの超音波振動を検出するのに適した広帯域のAEセンサなど(形状は、例えば、直径5mm程度、高さ3mm程度の円柱形)が使用される。
【0116】
ゲルパッド82は、伸縮柔軟性を有する。ゲルパッド82の素材として、例えば、厚さ1mmのシート状のハイドロゲル素材に表面処理が施されたものが用いられる。さらに、ゲルパッド82の一方の面には、第1の接着材84が塗布されていて、第1の保護シート(図示せず)で第1の接着材84が露出しないようになっている。一方、ゲルパッド82の他方の面には、第2の接着材85が塗布されていて、第2の保護シート(図示せず)で接着材85が露出しないようになっている。
【0117】
そして、ゲルパッド82を1辺が5mmの正方形となるように断裁し、第1の保護シートを剥がして、第1の接着材84によって振動センサ81の振動検出面に貼り付けるようになっている。
【0118】
なお、ゲルパッド82は、人肌程度の柔らかい素材であり、これは、JIS−K6253規格におけるA10程度の硬度に相等している。
【0119】
衝撃吸収シート83は、非粘着性の平滑平面を有する。衝撃吸収シート83の素材として、例えば、厚さ1mmのゴムシートが用いられる。そして、衝撃吸収シート83を1辺が5mmの正方形となるように断裁し、ゲルパッド82の第2の保護シートを剥がして、第2の接着材85によって接着するようになっている。
【0120】
なお、衝撃吸収シート83は、タイヤの踏面の硬さ程度の硬度であり、これは、JIS−K6253規格におけるA65程度の硬度に相等している。
【0121】
また、ゲルパッド82、衝撃吸収シート83、第1の接着材84、および第2の接着材85の密度が同じ値となるように選ばれている。これにより、接合境界面において波動の反射が発生するのを抑制するようになっている。
【0122】
振動センサ81、ゲルパッド82、および衝撃吸収シート83を一体化した複合体は、保持機構86に対して固定される。保持機構86は、例えば、エアーシリンダ(図示せず)によるセンサ押圧機構87によって矢印88の方向に押圧され、それにより、衝撃吸収シート83と被接合部材60とが当接するようになっている。
【0123】
次に、振動検出部80に具備されるゲルパッド82および衝撃吸収シート83の役割・機能について説明する。
【0124】
ゲルパッド82については、これを用いると、衝撃吸収シート83と被接合部材60との間で発生する平行度の誤差に対して、ゲルパッド82が伸縮変形して、衝撃吸収シート83と被接合部材60との密着性を維持することができる。
【0125】
また、ゲルパッド82を用いると、例えば、20KHzの加振超音波振動による低周波の機械振動が振動センサ81に伝搬するのを抑制し、さらに、機械振動の高調波成分が擦れ振動の周波数帯域100KHz〜2MHz帯にノイズ信号として混入するのを防止することができる。
【0126】
衝撃吸収シート83については、これを用いずにゲルパッド82を被接合部材60に当接させると、監視対象となる擦れ振動の周波数帯域での検出信号が過大となって周波数分析に適さない値となる問題が発生する。
【0127】
また、被接合部材60の表面に付着した粉塵や汚染物が柔らかいゲルパッド82に付着し、被接合部材60の他の表面に転移して品質を低下させるだけではなく、ゲルパッド82の乾燥劣化が進行し、伸縮柔軟性が失われる問題も発生する。また、ゲルパッド82に付着した粉塵や汚染物は、除去することが困難である。
【0128】
これに対し、衝撃吸収シート83を用いると、監視対象周波数帯域での信号レベルを適正値に抑制することができるとともに、衝撃吸収シート83の当接面に粉塵や汚染物が付着しても、日常の点検清掃時に、手軽に清掃することが可能となる。また、衝撃吸収シート83には、被接合部材60よりは柔らかい硬度のものが使用されるので、被接合部材60に擦り傷が発生するようなことはない。
【0129】
次に、新たに付加される接合判定ユニット50Bについて説明する。接合判定ユニット50Bは、接合完了判定手段57および累積出力照合手段58を備える。
【0130】
接合完了判定手段57は、先の
図3(G)で図示した擦れ振動の振動振幅が、上昇判定閾値Hを超過してから所定の判定待機時間τが経過した時点で、接合完了判定出力を発生する。
【0131】
但し、擦れ振動の振幅がピークに達し、やがて減少開始し、所定の下降判定閾値まで下降した時点で、接合完了判定を行うようにすることもできる。
【0132】
累積出力照合手段58は、先の
図4の工程415において抽出された接合正常サンプルにおける実際の累積給電エネルギーの最小値から最大値の範囲を参照して、接合完了判定手段57による接合完了判定時点における累積給電エネルギーが、上記最小値から最大値の範囲に入っているかどうかを判定する。
【0133】
そして、累積出力照合手段58は、範囲外であれば超音波接合が異常完了したことを意味する異常発生フラグを発生し、このときの押圧力と累積給電エネルギーの経時変化特性を履歴情報として保存するようになっている。
【0134】
次に、本実施の形態2における超音波接合装置100Bで加振機構部20の代わりに使用できる加振機構部20Bについて、
図6を参照して説明する。
図6は、本発明の実施の形態2における加振機構部20Bの構成図である。なお、先の
図1の超音波接合装置100Aにおいても、加振機構部20のかわりに加振機構部20Bを用いてもよい。
【0135】
加振機構部20Bは、図示するように、支持部材となる二股アーム21の開放端位置に固定され、第一ホーン23aと第二ホーン23bによって構成された超音波ホーン23、共鳴体となる超音波ホーン23に超音波振動を付与する超音波発生源22、および第一ホーン23aと第二ホーン23bとの結合位置にねじ24で固定された押圧ツール30によって構成されている。
【0136】
超音波ホーン23は、押圧ツール30を矢印25の方向に加振するとともに、加振機構部20Bの全体は、
図5における押圧機構部40を介して上下に昇降し、矢印26の方向に押圧して、加振機構部20Bを介して押圧ツール30の先端部を接合部材70の反接合面を圧接するようになっている。
【0137】
なお、押圧ツール30がねじ止め固定される第一ホーン23aと第二ホーン23bとの結合位置は、超音波振動の腹点(最大振幅点)となっているのに対し、二股アーム21の開放端位置は、最小振幅点である節点(ノーダルポイント)となっている。
【0138】
押圧ツール30の先端部は、曲率半径R1による球面形状となっているが、この曲率半径R1は、押圧ツール30の見かけ上のアーム長R2以下の値となっている。
【0139】
このアーム長R2は、押圧ツール30の先端部から超音波ホーン23の直近のノーダルポイント(節点)までの距離と考える。但し、押圧ツール30の長さが十分にある場合には、便宜上、押圧ツール30の取付け位置までの寸法とみなす。
【0140】
(2)作用・動作の詳細な説明
次に、本実施の形態2における超音波接合装置100Bの作用動作について、詳細に説明する。超音波接合装置100Bの運転開始に当たっては、二股アーム21と保持機構86は、押圧機構部40とセンサ押圧機構87によって、基台11に固定されている天板材(図示せず)の方向に引き上げられていて、この状態で、被接合部材60が
図5で図示するような位置に搬入されるようになっている。
【0141】
被接合部材60には、接合部材70が所定の接合位置に配置されてから、二股アーム21と保持機構86は矢印の方向に下降して、押圧ツール30は、接合部材70と当接して所定の圧力で押圧される。また、衝撃吸収シート83は、所定の圧力で被接合部材60の表面に当接するようになっている。
【0142】
この時点で、超音波発生源22に給電されると、押圧ツール30は、矢印25の方向に高速加振され、累積給電エネルギーが所定値に達するまでは、接合部材70と被接合部材60との間でスリップが発生し、被接合部材60には、加振周波数より高い周波数帯域における摺動摩擦振動が発生する。そして、振動センサ81は、この摺動摩擦振動を観察する。
【0143】
振動センサ81によって観察される擦れ振動は、加振開始直後において、摺動面の摩擦抵抗が小さな滑動期間では振動振幅が小さく、接合開始に伴って振動振幅が増加する。さらに、接合完了の直前には再び振動振幅が減少し、接合が完了した時点では擦れ振動は発生しなくなる。
【0144】
但し、接合部材70と被接合部材60間の擦れ振動に代わって、押圧ツール30と接合部材70との間の擦れ振動が被接合部材60を介して、振動センサ81に伝搬するようになる。
【0145】
従って、
図3(G)に図示するように、振動センサ81の振動振幅が所定の上昇判定閾値H以上になってから、所定の判定待機時間τが経過した時点、又は振動振幅が所定の下降判定閾値以下に低下した時点で接合完了判定が行われる。
【0146】
そして、超音波発生源22に対する印加電圧を遮断又は漸減停止することによって接合作業が完了するようになっている。
【0147】
但し、加振接合作業中に、被接合部材60に亀裂が発生した場合、あるいは一旦接合完了した接合部材70が引き続く加振動作によって剥離した場合には、予め実験測定された特定周波数における異常振動の有無を探知して異常報知が行われるようになっている。
【0148】
接合動作が完了すると、二股アーム21と保持機構86は、押圧機構部40とセンサ押圧機構87によって再び天板材の方向に引き上げられ、被接合部材60は、搬送機構(実施の形態3にて後述する)によって上昇・前進移動・下降動作が行われる。
【0149】
なお、振動検出部80を、
図4で図示した多数サンプルの実験測定の場合にのみ使用し、実際の接合運転の場合には使用しないようにしてもよい。
【0150】
このように、振動検出部80を実験測定の場合に使用した場合には、超音波接合制御部50における設定表示手段56で表示された累積給電エネルギーおよび擦れ振動の経時変化特性の情報を確認できる。そして、これらの情報は、実際の接合運転の場合における接合完了時点を目視判定するための参考情報として有効利用することができる。
【0151】
また、振動検出部80および接合完了判定手段57を用いて、接合完了時点では加振停止を行い、この時点における累積給電エネルギーを読み出すことも可能である。
【0152】
振動検出部80を実際の接合運転で使用した場合には、振動検出部80および接合完了判定手段57を用いて、接合完了時点では加振停止を行うとともに、加振停止時点における累積給電エネルギーを読み出すことが可能である。そして、この累積給電エネルギーが実験測定で得られた適正な累積給電エネルギーの範囲内となっているかどうかを累積出力照合手段58によって照合確認することができる。
【0153】
以上のように、本発明の実施の形態2によれば、以下に示す特徴1、2を有する。
(特徴1)
接合判定ユニットは、被接合部材に当接された振動検出部80によって擦れ振動を検出し、擦れ振動の振動振幅が一旦増加に転じた後に減少する時点を捉えて、接合完了判定を行う。
従って、超音波発生源による累積給電エネルギーが所定値以上となったことによって、接合部材と被接合部材との接合が完了したことを、接合面間の擦れ振動が発生しなくなったことによって直接検出して、速やかに加振動作を停止して、接合部材と押圧ツール間の滑り動作時間を抑制することができる特徴を有す。
(特徴2)
接合完了判定手段は、被接合部材に当接された振動検出部80によって接合完了判定を行うとともに、累積出力照合手段は、接合完了判定時の累積給電エネルギーが多数サンプルの実験測定による適正範囲外であれば、異常判定を行う。
従って、振動検出部80による直接判定と累積給電エネルギー判定とが併用されて、接合完了判定の精度が向上する特徴を有す。
【0154】
実施の形態3.
(1)構成の詳細な説明
先の実施の形態1、2では、それぞれの超音波接合装置100A、100Bの特徴について説明した。これに対して、本発明の実施の形態3では、超音波接合装置100Cの周辺に設置される各装置を中心に、
図7を参照して説明する。
【0155】
図7は、本発明の実施の形態3における超音波接合装置100Cおよび超音波接合装置100Cの周辺装置を設置した場合の全体構成図である。なお、この
図7における超音波接合装置100Cには、先の実施の形態1、2で説明した超音波接合装置100A又は100Bを用いればよい。
【0156】
この
図7における超音波接合装置100Cの周辺には、搬入移送装置110、接合評価装置120、および全体制御盤130が設置される。
【0157】
搬入移送装置110は、超音波接合装置100Cの上流位置に設置され、移送機構111および巻枠リール112を備える。
【0158】
移送機構111は、全体制御盤130内のプログラマプルコントローラ(図示せず)によって制御される。巻枠リール112には、薄膜テープである接合部材70が巻回されている。
【0159】
そして、移送機構111は、被接合部材60を超音波接合装置100Cの基台11の上面に搬入・移送し、さらに、巻枠リール112に巻回された薄膜テープである接合部材70を巻出す。これにより、連続的に接合部材70を被接合部材60の接合位置に供給することができ、続けて接合作業を行うことができる。
【0160】
さらに、移送機構111は、被接合部材60に当接する複数の吸着盤、昇降機構、および前後移送機構を備える(図示せず)。
【0161】
接合評価装置120は、超音波接合装置100Cの後流位置に配置され、第1の電子カメラ121a、第2の電子カメラ121b、印字ヘッド122、および画像処理部90を備える。
【0162】
第1の電子カメラ121aは、接合部材70の上面に生成された陥没部32(先の
図2参照)を撮像する。また、被接合部材60がガラスなどの透明材である場合には、第2の電子カメラ121bは、被接合部材60の背面から接合部材70の上面に生成された陥没部32を撮像する。
【0163】
画像処理部90は、電子カメラ121a、121bが撮像した撮像画像と標準画像とを比較して、異常判定を行う。印字ヘッド122は、画像処理部90が異常判定を行った時に、被接合部材60の表面に異常発生番号を印字する。
【0164】
なお、第1の電子カメラ121aによる陥没部32の撮像は、移送機構111によって被接合部材60を吸着・上昇・前進した一時停止期間に行われる。また、第2の電子カメラ121bによる陥没部32の撮像は、移送機構111によって被接合部材60が吸着・上昇・前進した後に下降停止した時点で行われる。また、移送機構111は、その後、吸着盤を開放して空荷状態で上昇・後退して初期位置に復帰する。
【0165】
また、画像処理部90は、標準画像記憶手段91、新規撮像記憶手段92、画像比較判定手段93、接合条件記憶手段94、設定表示手段95、印字制御手段96、および信号交信手段97を備える。
【0166】
標準画像記憶手段91は、接合部材70に生成される陥没部32の標準的なサンプル画像を記憶するメモリである。なお、この標準サンプル画像は、先の
図4における工程415で正常判定された接合サンプルの陥没部32を撮像することにより得られる。
【0167】
また、標準サンプル画像には、様々な押圧力と累積給電エネルギーに対応した陥没部32の輪郭画像の縦横寸法比と輪郭内部面積に関する情報が含まれている。
【0168】
新規撮像記憶手段92は、超音波接合装置100Cによって超音波接合が行われ、搬入移送装置110によって接合評価装置120に到来した超音波接合部分を電子カメラ121a、121bで撮像した最新画像を記憶するメモリである。
【0169】
なお、実際に電子カメラ121a、121bによって陥没部32を撮像すると、
図8および
図9のような画像が得られる。
図8は、本発明の実施の形態3における第1の電子カメラ121aによって撮影された接合部材70の表面から見た陥没部32の画像である。
図9は、本発明の実施の形態3における第2の電子カメラ121bによって撮影された被接合部材60の背面から見た陥没部32の画像である。
【0170】
画像比較判定手段93は、標準画像記憶手段91に格納されている標準サンプル画像と、新規撮像記憶手段92に記憶された最新画像とを比較して、画像の不一致があるかどうかを判定する。
【0171】
そして、画像比較判定手段93は、接合位置不良や接合部材70の異常変形の有無を含む外観検査を行い、陥没部32の輪郭画像の縦横寸法比と輪郭内部面積が標準サンプル画像から定まる許容範囲外である場合には、接合異常の可能性があると判定する。
【0172】
接合条件記憶手段94は、画像比較判定手段93が異常判定を行った場合には、比較された標準サンプル画像の番号と、異常判定されたサンプルの接合条件である押圧力および累積給電エネルギーの値とを格納記憶する。
【0173】
設定表示手段95は、画像処理部90に設けられたキーボードと表示画面である。印字制御手段96は、異常検出された接合部分の近傍位置に印字ヘッド122を介して、異常発生の識別番号を印字する。
【0174】
信号交信手段97は、異常判定されたサンプルの接合条件である累積給電エネルギー、超音波接合制御部50の出力電力、振動検出部80によって検出された振動振幅、および押圧ツール30に付与された押圧力に関する経時変化特性データを超音波接合制御部50から読出し、交信する。
【0175】
(2)作用・動作の詳細な説明
次に、本発明の実施の形態3における超音波接合装置100Cおよび超音波接合装置100Cの周辺装置の動作手順について、
図10、
図11のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0176】
はじめに、超音波接合制御動作について、
図10を参照して説明する。
図10は、本発明の実施の形態3、および実施の形態1と実施の形態2における超音波接合制御動作の手順を示すフローチャートである。
【0177】
まず、工程1000を実行することによって、超音波接合装置100Cにおける超音波接合制御部50の主体構成要素であるマイクロプロセッサの制御動作を開始する。
【0178】
次に、超音波接合装置100Cは、工程1001aにて、サーボモータ41に対して、押圧ツール30を上昇させる指令を発生するとともに、超音波接合装置100Cに振動検出部80が具備される場合には、保持機構86が上昇するように上昇指令を発生する。
【0179】
なお、後述の工程1013にて、既に上昇動作が行われているときは工程1001aによる上昇動作は不要である。
【0180】
次に、超音波接合装置100Cは、工程1002にて、ワークの搬入移送指令を発生する。この指令によって、全体制御盤130内のプログラマブルコントローラ(図示せず)は、移送機構111を制御する。そして、制御された移送機構111は、吸着盤(図示せず)を下降して被接合部材60を吸着・上昇し、全体を前進移動させてから吸着盤を下降・解除・上昇し、空荷で初期位置に後退するといった一連の搬送制御が行う。
【0181】
次に、超音波接合装置100Cは、工程1001bにて、サーボモータ41に対して、押圧ツール30を下降させる指令を発生するとともに、超音波接合装置100Cに振動検出部80が具備される場合には、保持機構86が下降するように下降指令を発生する。
【0182】
これらの工程1001a、1002、1001bから構成される工程ブロック1003は、搬入移送指令発生工程となっている。これらの動作は、先の
図3(A)における第1時刻帯301aおよび第1時刻帯301aaと、先の
図3(B)における第1時刻帯301bと、先の
図3(C)における第1時刻帯301cとにおいて実行されるものである。
【0183】
次に、超音波接合装置100Cは、工程1004にて、サーボモータ41に対して、押圧ツール30を接合部材70に押圧させる指令を発生する。この工程1004は、押圧制御指令発生工程である。
【0184】
次に、超音波接合装置100Cは、工程1005にて、押圧ツール30の押圧力が所定値に到達したか否かを判断する。超音波接合装置100Cは、工程1005にて、所定値に未到達であると判断した場合には、工程1004の処理に戻る。
【0185】
一方、超音波接合装置100Cは、工程1005にて、所定値に到達したと判断した場合には、工程1006へ進む。
【0186】
なお、これらの動作は、先の
図3(D)の第1時刻帯301d以降で実行されるものである。さらに、押圧ツール30の昇降制御と押圧制御は、超音波接合制御部50によって実行されており、超音波接合制御部50内のマイクロプロセッサは、圧力センサ42の出力を監視して、負帰還制御を行っている。
【0187】
次に、工程1006にて、超音波接合装置100Cは、超音波発生源22に対して所定周波数の駆動電圧を印加するために、電源制御指令を発生する。この電源制御指令が発生されると、先の
図3(E)で示す所定の出力パターンに基づいて、超音波接合制御部50の出力電圧が制御される。この工程1006は、電源制御指令発生工程である。
【0188】
次に、工程1007にて、超音波接合装置100Cは、タイムアウト判定時間である所定時間Tmaxが経過したかどうか判定する。
【0189】
なお、このタイムアウト判定時間である指令発生時間Tmaxは、予め実験測定された複数回の超音波接合において、正常な接合を行うのに必要とされた統計上の最大時間又は最大エネルギー量に基づいて、正常であればこの期間内に接合が完了しているように長い目の時間として決定されている。
【0190】
超音波接合装置100Cは、工程1007にて、所定の最大エネルギー量に到達したと判断した場合には、工程1008にて、異常報知といった時間経過異常処理を行い、工程1012に進む。
【0191】
一方、超音波接合装置100Cは、工程1007にて、所定の最大エネルギー量に到達しなかったと判断した場合には、工程1009にて、以下の条件の何れかを満たせば、接合完了であると判定し、工程1012に進む。
【0192】
一方、超音波接合装置100Cは、工程1009にて、以下の条件の何れも満たさなければ、接合完了ではないと判定し、工程1004の処理に戻る。
【0193】
ここで、工程1009における条件とは、以下の通りである。
(条件1)先の
図3(G)で示す振動検出部80による擦れ振動の振幅が、所定の上昇判定閾値Hを超過してから、所定の判定待機時間τが経過、又は所定の下降判定閾値未満に減少していれば、接合完了であると判定する。
(条件2)先の
図3(H)における累積給電エネルギーの変化率を示した先の
図3(F)の振動源消費電力が、所定の上昇判定閾値を超過してから、所定の判定待機時間が経過、又は所定の下降判定閾値未満に減少していれば、接合完了であると判定する。
【0194】
次に、超音波接合装置100Cは、工程1012にて、超音波接合制御部50に対して、超音波発生源22の駆動を停止させる指令を発生する。
【0195】
これらの工程1006〜1012における動作は、先の
図3(E)、(F)、(G)における第1時刻301eから第5時刻305eまでに実行されるものである。
【0196】
次に、超音波接合装置100Cは、工程1013にて、超音波接合制御部50に対して、押圧ツール30の押圧停止指令と押圧ツール30及び保持機構86の上昇指令を発生する。この動作は、
図3(D)(C)(B)の第6時刻帯306d、306c、306bにおいて実行されるものである。
【0197】
次に、超音波接合装置100Cは、工程1014にて、運転を継続するか否かを判断する。超音波接合制御部50は、工程1014にて、手動操作スイッチ(図示せず)による運転停止要求が発生していた場合、あるいは工程1008による異常処理が運転停止を行うものであった場合には、運転を継続しないと判断し、工程1015に進む。
【0198】
一方、超音波接合装置100Cは、運転継続許可である場合には、運転を継続すると判断し、工程1001aに戻り、処理を再び実行する。
【0199】
なお、超音波接合装置100Cは、工程1015にて、手動操作スイッチ(図示せず)によって再始動指令が発生する場合には、動作開始工程1000から再び一連の処理を実行する。
【0200】
次に、画像判定制御動作について、
図11を参照して説明する。
図11は、本発明の実施の形態3における画像判定制御動作の手順を示すフローチャートである。
【0201】
まず、工程1100を実行することによって、接合評価装置120における画像処理部90の主体構成要素であるマイクロプロセッサの制御動作を開始する。
【0202】
次に、画像処理部90は、工程1101aにて、上面画像の撮影時期であるか否かを判断する。画像処理部90は、接合部分が第1の電子カメラ121aの直下に停止した場合には、撮影時期であると判断し、工程1102aに進む。撮影時期でないと判断した場合には、工程1101bに進む。
【0203】
次に、画像処理部90は、工程1102aにて、接合部材70の上面に生成された陥没部32を撮影する。
【0204】
次に、画像処理部90は、工程1101bにて、背面画像の撮影時期であるか否かを判断する。画像処理部90は、工程1101bにて、接合部分が第2の電子カメラ121bの直上に停止した場合には、撮影時期と判断し、1102bに進む。一方、撮影時期でないと判断した場合には、工程1103に進む。
【0205】
次に、画像処理部90は、工程1102bにて、接合部材70の上面に生成された陥没部32を、透明材料である被接合部材60の背面から撮影する。
【0206】
次に、画像処理部90は、工程1103にて、画像比較判定手段93によって、画像比較判定を行う。そして、画像処理部90は、工程1104にて、工程1103で行った画像比較判定において異常判定があった場合には、工程1105に進む。一方、画像処理部90は、異常判定がなかった場合には、工程1110に進む。
【0207】
次に、画像処理部90は、工程1105にて、異常発生を超音波接合制御部50に通報するとともに、設定表示手段95によって、異常報知する。
【0208】
次に、画像処理部90は、工程1106にて、印字ヘッド122によって、異常が発生した被接合部材60の表面に異常発生番号を印字する。
【0209】
次に、画像処理部90は、工程1107にて、画像比較で異常判定が行われた前回の接合条件を超音波接合制御部50から読み出して、異常発生時点の接合条件として、履歴保存する。
【0210】
最後に、画像処理部90は、工程1110にて、他の制御プログラムを実行してから、所定時間以内には、再度開始工程1100に戻り、一連の処理を再び実行する。
【0211】
なお、画像処理部90が外観検査を行うタイミングは、接合部材と被接合部材とが移送停止していて接合動作が行われていない時間帯、又は接合開始時点において、前工程である超音波接合により生成された陥没部の撮像を電子カメラにより行い、撮像済みの陥没部に対して、押圧ツールによって超音波接合による接合動作が行われている時間帯において、外観検査を行うようにするのが望ましい。
【0212】
なお、電子カメラとして第1の電子カメラ121aおよび第2の電子カメラ121bを併用したが、どちらか一方の面に1台の電子カメラを使用するようにしてもよい。
【0213】
また、2台の電子カメラを使用するためには被接合部材60が透明材料であることが必要である。例えば、先の実施の形態1において説明した具体例と同様に、被接合部材60として、例えば、複数の太陽電池が焼成されたガラス板、接合部材70として、例えば、薄膜テープ状のアルミ箔を用いる場合には、2台の電子カメラを使用することができる。
【0214】
以上のように、本発明の実施の形態3によれば、以下に示す特徴1〜3を有する。
(特徴1)
画像処理手段は、接合部材の陥没部を撮像する電子カメラを備え、接合完了後の後工程において、接合部材の反接合面に生成された陥没部に関する外観検査が行われるとともに、複数の標準画像サンプルとの比較によって接合異常の有無を推定し、接合異常とされたものの接合条件を読出し、記憶する。
従って、接合異常判定されたものに関する剥離検査を行って、実際に接合異常であったかどうかの確認を行い、その結果が正常接合であれば標準サンプル画像として追加し、その結果が接合異常であれば、読出し記憶された押圧力と累積給電エネルギーとの関連性を吟味して今後の接合条件設定から除外して、接合の信頼性を高めることができる特徴を有す。
(特徴2)
電子カメラは、搬送機構が停止している瞬時に陥没部を撮像し、次回の接合動作が行われている期間に、前回に撮像された画像に対する分析によって外観検査と接合異常判定を行う。
従って、接合所要時間と画像分析所要時間に重複時間があるので、サイクルタイムを短縮することができるとともに、接合工程と撮像工程における対象となる陥没部の位置が移動しているので、押圧ツールに邪魔されずに電子カメラの設置位置を容易に確保することができる特徴を有す。
(特徴3)
被接合部材と接合部材は金属膜電極を有するガラス板とアルミ箔であって、接合部材によって複数の太陽電池の電極間を接続するものとなっている。
従って、基台上で静止保持されている重量体であるガラス板に対して、薄膜テープ状のアルミ箔を接合しようとすると、接合完了後の加振停止が遅れると押圧ツールと接触しているアルミ箔の切断又は接合剥離が発生する危険性があるのに対し、加振停止が早すぎると十分な超音波接合が行えない問題点が発生するが、接合完了後は押圧ツールがアルミ箔に生成された陥没部の中心部を脱出し、接合剥離抵抗に比べて押圧ツールとアルミ箔との摩擦抵抗が小さくなるようにしておくことにより、加振停止タイミングが遅れてもアルミ箔の切断又は接合剥離が発生せず、十分な加振時間を確保して確実に超音波接合を行うことができる特徴を有す。