(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
本発明の1つの目的は、運転者が車両の車輪に印加された抵抗トルクまたは原動トルクのレベルを計量し、同時に、車両のバッテリ充電の関数として、利用可能な抵抗減速トルクを変化させることを可能にするスロットルペダル(または徐々に変わる設定点を伝達するための他の同等な装置)を使用して、車輪におけるトルクを制御するシステムである。システムは、とりわけペダルの直感的な使用によって、かつ車両が一貫性のあるやり方で連続的に挙動することを確実にすることによって、運転のしやすさを維持する必要がある。
【0005】
本発明の一主題は、バッテリに接続されかつ少なくとも1つの被駆動車輪に接続された少なくとも1つの電動モータを装備した車両の車輪におけるトルクを制御する方法であり、モータは、車両を減速する間にバッテリを再充電するための発電機として動作することが可能である。第1の制動調節(braking−regulating)移動範囲および第2の加速調節(acceleration−regulating)移動範囲が、車両のスロットルペダルの移動に課せられ、制動調節移動範囲は、バッテリ充電の連続減少関数である。したがって、制動調節移動範囲は、例えば全ペダル移動範囲の0.2〜0.4倍の値である最大値と、例えば移動範囲ゼロであってよい最小値との間で、バッテリ充電の関数として変わることができる。
【0006】
ペダルへの作用が存在しないとき、車両速度およびバッテリ充電の連続関数である最小トルク関数のトルクが、車輪に印加されてよい。この関数は、原動トルク、または限界速度より低い速度範囲にわたってゼロであるトルクを示し、この関数は、限界速度より高い速度範囲にわたってバッテリ充電に対して減少する絶対値を有し、且つ少なくとも一点においてゼロでない抵抗トルクを示す。
【0007】
有利には、ペダルがその最大移動範囲の位置にあるとき、車輪に課せられるトルクは、車両速度のみの関数として連続的に変化する原動トルクを示す最大トルク関数である。
【0008】
好ましくは、最大トルク関数は、その絶対値が車両速度に対して減少する関数である。
【0009】
限界速度より高い速度範囲にわたって、ペダルの中立点、即ち、原動トルクおよび抵抗トルクのいずれもが車輪に印加されないペダルの移動は、バッテリ充電とともに減少する第1の連続非飽和関数と、速度とともに増加する第2の連続関数との積であってよい。
【0010】
好ましい一実施形態では、最小トルク関数が、車両速度の関数としてマップ化された基準関数から、この基準関数に、その絶対値がバッテリ充電の減少連続関数である閾値再充電トルクに等しい、抵抗トルクまたはゼロトルクの閾値を適用することによって得られる。
【0011】
非飽和関数が、閾値再充電トルクを基準関数の最大の抵抗トルク値で除した商に等しくなるように選択されてよい。
【0012】
有利には、限界速度より高い速度範囲に属する所与の車両速度に対して、車輪に適用されたトルクの値が、中立点のそれぞれの側におけるペダルの移動の2つの範囲のそれぞれにおいて、ペダルがその中立点から離れる距離の線形関数として変化する。
【0013】
有利には、限界速度より低い所与の車両速度に対して、車輪に課せられるトルクの値が、ペダルの全移動範囲にわたって直線的に変化する
【0014】
別の態様では、本発明の主題は、バッテリに接続されかつ少なくとも1つの被駆動車輪に接続された少なくとも1つの電動モータを装備した車両の車輪におけるトルクを制御するシステムである。電動モータは、車両を減速する間に、バッテリを再充電するための発電機として動作することができる。システムは、電子制御装置に接続されたスロットルペダルを備える。電子制御装置は、ペダルの位置にしたがって、電動モータを含む伝動機構を介して原動トルクまたは抵抗トルクを被駆動車輪に適用するように構成される。電子制御装置は、第1の制動調節移動範囲に従ってスロットルペダルを移動させ、かつその振幅がバッテリ充電の連続増加関数である第2の加速調節移動範囲に従ってスロットルペダルを移動させる。
【0015】
実施形態の代替形態によれば、伝動機構は電動モータのみを備える。
【0016】
実施形態の別の代替形態によれば、伝動機構は、少なくとも1つの燃焼機関と少なくとも1つの電動モータとを備える。
【0017】
本発明は、全く非限定的な例によって取り上げられ、添付の図面で図示された、一実施形態の詳細な説明を読めば、より深く理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に例示されるように、ハイブリッド車両1は、2つの被駆動車輪3を支持する前車軸2を装備され、かつ2つの被駆動車輪5を支持する後車軸4を装備される。前輪3の回転は、とりわけクラッチと歯車箱とを備える変速機システム6を介して、燃焼機関7で駆動されてよい。
【0020】
電動モータ8は、減速歯車箱(図示せず)を介して、後輪5と一体になって回転することができるように位置決めされる。電動モータ8は、バッテリ9に接続され、バッテリ9から電動モータ8は、原動トルクを車輪5に印加するための電気エネルギーを引き出すことができ、または、電動モータ8はバッテリ9に、「回生制動トルク」としても知られる抵抗トルクをモータが車輪5に印加しているときに作成される電流を送ることができる。バッテリ9は、バッテリ9の充電レベルを示す値SOC(充電状態)を計算することができる局所コンピュータ10に接続される。
【0021】
電子制御装置11は、接続12を介して燃焼機関7で車両の前輪軸システムに印加されるトルクを制御し、接続13を介して電動モータ8で車両の後輪軸システムに印加されるトルクを制御する。従来の方法における電子制御装置は、マイクロプロセッサもしくは中央処理装置、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、アナログ−ディジタル変換器および種々の入出力インターフェースを備える。
【0022】
また、電子制御装置11は、接続14を介して充電状態コンピュータ10に接続され、接続15によって車両の輪軸システムのうちの1つに置かれた回転計数器16に接続され、電子制御装置11が車両の走行速度Vを評価することを可能にする。また、電子制御装置11は、接続群17によって、とりわけスロットルペダル18を含むマン−マシンインターフェース19に接続される。電子制御装置11は、内部メモリまたは外部メモリの中に、車両速度V、およびバッテリの充電もしくはSOCの関数がマップ化されるマップ20、21、22および23を含む。電子制御装置11は、接続17を介して、スロットルペダル18の位置を示す値αを受ける。値αは、例えば、原点「0」の位置として、ペダルが自由である位置、即ち、運転者が足をペダルの上に載せていない位置を取り、値「1」を、ペダルが完全に踏み込まれた位置に割り当てる、ペダルの相対的な角度位置であってよい。
【0023】
電子制御装置は、接続14を介して、バッテリ9の充電状態を示すSOC値を受ける。バッテリの充電状態SOCの値、ペダル18の角度位置αの値および回転計数器16を使用して測定された車両速度Vの値を使用して、かつ、マップ20、21、22および23を使用して、電子制御装置11は、出願者らが後で説明する方法を使用して、エンジン7およびモータ8によって車輪に印加されるべき、車輪におけるトルクに対する設定点Cを確定する。トルク設定点Cが正の値であるならば、即ち、運転者が車輪における原動トルクを要求しているならば、電子制御装置は、所望のトルクを得るために、電動モータもしくは燃焼機関のいずれかを、または電動モータおよび燃焼機関の両方を同時に、作動させる。
【0024】
エンジンとモータとの間の推進トルクCの配分は、例えば、利用可能な電気エネルギーおよび燃料の蓄積によって決まる(例えば、モータ8が、燃焼機関7によって送り出されるトルクからエネルギーを取り入れることによって電流発生器として作用する)か、またはマン−マシンインターフェース19を使用した運転者からの特定の命令(例えば、市街地で電気モードだけで運転すること)によって決まる。設定点トルクCが負であるとき、即ち、車両の運転者が制動トルクまたは車両の減速を要求しているときは、抵抗トルクは、とりわけエンジン7のシリンダ内のピストンの摩擦に相当する、燃焼機関7によって発生されたエンジン制動トルクと、電流が作成されバッテリ9に送られることを可能にする電動モータ8によって発生される回生制動トルクとの合計となる。
【0025】
次いで、電子制御装置11は、エンジン制動を車両速度に適合させるように燃焼機関7を制御し、かつ電動モータ8に相補的な抵抗トルクを発生させて、抵抗トルクCの総合的設定点を得ることを可能にするように電動モータ8を制御する。
【0026】
図2は、例えば、
図1のマップ22に対応する、
図1のシステムの動作曲線のうちの1つを描く。この
図2は、スロットルペダルが最大移動の位置にあるとき、すなわちα=1のときに、電子制御装置によって送り出されるエンジントルク設定点C(選択された符号規約(sign convention)を使用する正トルク)を表現する曲線Cmaxを描く。このエンジントルク設定点は、車両速度Vだけの関数である。この関数は、真に正であり、速度Vの減少関数である。この曲線でカバーされる範囲は、正の車両速度を含み、同時に、数キロメートル毎時程度の負の速度まで延びる。これらのわずかに負の速度は、例えば、車両が坂を上方に前進しようとしているときに、正の原動トルクが車輪に印加されているにもかかわらず、車両が後方に転動している場合に対応する。この最大トルク関数Cmaxは、全電気的動力供給車両の場合に、特によく当てはまる。ハイブリッド車両の場合は、全車両速度範囲にわたって減少関数でない最大トルク関数を考え出すことができる。
【0027】
図3は、例えば、
図1のマップ20およびマップ23から構築されうる、
図1のシステムの動作曲線を例示する。この
図3は、ペダル18が完全に上がった位置にあるとき、すなわちα=0のときに、電子制御装置によって送り出される設定点トルクCminを表現する曲線を実線で示す。このトルク設定点Cminは、本明細書では、バッテリの所与の充電状態SOCに対して描かれる。各充電状態SOCの値に対して、設定点トルクCminは、車両速度Vの関数である。小さいかまたはわずかに負の車両速度値に対して、トルク設定点Cminは正であり、即ち、原動トルクが車輪に印加される。次いで、トルク設定点Cminは、車両速度の関数として減少し、速度V
0に対してゼロになり、V
0より高い値に対して負(抵抗トルク)のままである。V
0より高い速度範囲内では、トルクCminは、まず第1に、速度とともに減少し、再び増加する前まで、即ち、絶対値に関してCminが高い車両速度に対して減少する前までは、最小を通って進む。このように定義された挙動曲線は、燃焼機関および一連の歯車箱を装着された車両が挙動する通常のやり方に類似する、車両速度の関数としての車両挙動をもたらす。
【0028】
バッテリの充電状態SOCに対応する足を載せない設定点トルクCminの各曲線は、
図1のマップ23に記憶された、点線で描かれた準線曲線(directrix curve)Cmin
0から推定されてよい。バッテリの所与の充電状態SOCに対応する最小トルクCminの各曲線は、曲線Cmin
0を、同じくバッテリの充電状態の関数である抵抗トルク値Csatによって、絶対値で低減することによって得られる。準線曲線Cmin
0を読み取ることができる、絶対値において最高の値を有する抵抗トルクが、値Csat
maxで表示される。低いバッテリの充電値に対して、値Csatは、曲線Cmin
0の最小のCsat
maxに等しい。バッテリの現在の充電レベルに対応する設定点トルクCminの曲線は、したがって、準線曲線Cmin
0と一致する。バッテリの充電は徐々に増加するので、電動モータ8および燃焼機関7から成る伝動機構が車両1の移動に抗して発生させることができる最大の抵抗トルクを表現する値Csatは、絶対値において減少する。バッテリがそれ以上に充電されえないとき、Csatは、エンジン7のみからのエンジン制動トルクに相当する抵抗トルク値に達する。
【0029】
低減された値Csatは、バッテリ充電の値SOCの関数としてマップ化されてよい。また、この低減された値Csatは、例えば
図1のマップ20において、充電状態SOCの連続増加関数である飽和関数τを介して間接的にマップ化されてよい。この関数τは、例えば、現在のバッテリの充電に対応する低減されたトルクCsatと、バッテリがその最小充電レベル、すなわち、
にあるときに利用可能な最高の抵抗トルクCsat
maxとの間の比の1の補数となるように選択される。
【0030】
したがって、電子制御装置11は、マップ20と関係
Csat(SOC)=Csat(τ)=(1−τ)Csat
max
とを使用して、低減されたトルクCsatを推定することができる。
【0031】
関数τは、ゼロ(最小充電レベルのバッテリに対して)と、1以下の最大値τ
maxとの間を増加する連続関数である。値τ
maxは、全電気的動力供給車両の場合に、1に等しくなる。というのは、そのような車両は、燃焼機関からの制動トルクを全く持たないからである。飽和関数τは、バッテリ充電のレベルを示す値として、SOC値の代わりに使用されてよい。コンピュータ10が、バッテリの充電状態を定量化するために、値τを直接送り出す、本発明の代替形態を考え出すことも可能である。
【0032】
バッテリ充電が増加するのにつれて減少する絶対値とともに低減する値Csatをバッテリ充電の連続関数として変化させるように選択することによって、ペダル18が上がっているときに電子制御装置によって送り出される設定点トルクを表現する値Cminの範囲が得られる。
図4に描かれる、このように定義された関数Cminは、車両速度Vおよびバッテリ充電の連続関数であり、このバッテリ充電は、最初の変数SOCまたは飽和関数τのいずれかに関して表現されることが可能である。
【0033】
図5は、車両速度Vの関数として、かつ飽和関数の値τによって特徴付けられたバッテリの所与のSOCに対して、
図1の電子制御装置11によって車輪に適用された設定点トルクの変化の範囲のグラフ表示である。限界速度V
0より高い車両速度V1に対して、ペダルにおける設定点トルクの範囲は、真っ直ぐな線分ABによって範囲を定められる。点Aは、完全に踏み込まれたペダルの位置、すなわち値α=1に対応する。α=1に対して、車輪に印加されるトルクは、速度Vの関数として
図2の曲線Cmaxから読み取ることができる原動トルクの値Cmax
1である。点Bは、完全に開放されたペダルの位置、すなわち値α=0、に対応する。車輪に適用された設定点トルクは、それゆえ、値Cmin
1の抵抗トルクであり、Cmin
1は、Vの関数としての準線曲線Cmin
0から、バッテリ充電のレベルの関数である閾値トルク値Csat(τ)だけ低減された、
図3の作図から推定されてよい。2つの末端の角度位置α=0とα=1との間で、設定点トルクは、文字Xで表示される角度位置に対して相殺される。
【0034】
V
0より低い速度値に対して、設定点トルクは、真に正のトルク値Cmaxと正かゼロのトルク値Cminとの間で変化する。中立点Xにおける値は、それゆえ、慣習により、ゼロに等しいものとみなされる。
【0035】
V
0より高い速度に対して、運転者がスロットルペダルを開放することによって得ることができる最大抵抗トルクCsat(τ)は、バッテリ充電とともに減少する。また、本発明は、バッテリ充電が増加するときに、抵抗トルクに割り当てられるペダルの移動範囲が低減されることを提案する。
【0036】
図6は、
図5に定義される中立点関数Xを変化させる1つの可能な方法を例示する。
図5に描かれる関数X(τ,V)は、連続関数f(V)と、バッテリ充電SOCの連続関数である関数gとの積であり、この充電に対して減少する。それゆえ、同じ方法で、関数X(τ,V)は、飽和関数τの連続減少関数であると言うことができる。例えば、関数gは、飽和関数τの1の補数、すなわちg=1−τに等しくなるように選択されてよい。
【0037】
図6に例示される例では、関数fは、限界速度V
0より低い速度に対してゼロ関数である。関数fは、速度Vα
maxより高い速度に対して、限界位置α
maxに等しい。関数fは、V
0とVα
maxとの間で、例えば直線的に増加する。値α
maxは、制動トルクの調節に割り当てられることが望ましい、最大のペダルの移動範囲である。値α
maxは、例えばペダルの全移動範囲のほぼ1/3を表現してよく、例えば0.2と0.4との間であってよい。関数Xは、車両速度の連続関数である関数fと、バッテリ充電の連続関数である関数gとの積として定義され、それゆえ、速度と充電との連続関数である。
【0038】
速度Vα
maxは、限界速度V
0より数km/h高い。これらの2つの速度は、通常、5km/hと15km/hとの間に存在してよく、例えばV
0が7〜8km/h付近に存在してよく、Vα
maxが9〜11km/h付近に存在してよい。V
0より低い速度は、車両がゆっくり進む速度、即ち、たとえ運転者がスロットルペダルに足を載せずに完全に浮かせても、車両がじわじわと前進する傾向を有する速度に相当する。速度Vα
maxは遷移速度であり、その速度を超えると、運転者にとってより直感的にペダルを利用できるように、中立点は、もはや、速度の関数として変化することはない。
【0039】
速度V
0とVα
maxとの間の直線的な変化は、車両の動き出しと車両が巡航速度に達した時点との間でペダルが挙動するやり方の連続性を確実にする。飽和レベルτ=0に対して、即ち充電がほとんどないかまたは全くないバッテリに対して、中立点は、関数f(V)として変化する。バッテリが徐々に充電されるようになり、飽和レベルτが増加するにつれて、関数X=f(V)×g(τ)は減少する。バッテリが完全に充電されると、飽和レベルτは、車両において利用可能なエンジン制動トルクによって決まる値τ
maxに達する。エンジン制動が低いならば、τ
maxは値1に近くなり、関数X(τ,V)はゼロ関数に近くなる。
【0040】
中立点の位置Xが、車両の現在速度およびバッテリの現在の充電状態に対して定義されると、車輪におけるトルクに対する設定点Cは、ペダルの各位置αに付随する。このことは、中立点位置α=Xとペダルが完全に踏み込まれた位置α=1との間で、車輪におけるトルクの変化が、連続単調増加関数となるようなやり方でなされる。また、このことは、ペダルの最小の踏み込み位置α=0と中立点の位置α=Xとの間で、車輪におけるトルクの変化が、連続的に単調増加する、即ち、(トルクは、選択された符号規約が負である抵抗トルクであるため)絶対値に関して減少するやり方でなされる。
【0041】
例えば、車輪におけるトルクは、V
0より高い速度値Vに対して、かつXと1との間のαに対して、以下の精細な関数
を使用して、中立点(α−X)までの距離に比例して変化させられてよい。
【0042】
V
0より高い速度値Vに対して、かつ0とXとの間のαに対して、トルクCはまた、以下の精細な関数
を使用して、中立点X−αまでの距離に関して直線的に変化させられてよい。
【0043】
限界速度V
0より低い速度に対して、中立点Xは、慣習により、ゼロに等しくなるように取られ、2つの末端のペダル位置の間に、設定点トルクの符号の変更は存在しない。設定点トルクは、それゆえ、以下の精細な関数C(α):
C(α)=Cmin(τ、V)+α(Cmax(V)−Cmin(τ、V))
を使用して変化させられてよい。
【0044】
上の3つの領域に対して定義された3つの精細な関数は、以下の
(式1)
として表される、区分的に精細な連続関数に要約されてよい。
【0045】
それゆえ、このことは、最大トルク設定点Cmaxと、最小トルク設定点Cminの値と、中立点の位置Xとを考慮に入れた、ペダルの位置αに関する設定点トルクCにおける連続的な変化をもたらす。
【0046】
図7は、
図1の電子制御装置11による、車輪におけるトルクに対する設定点C(α)を評価する方法を要約する図である。
図7は、
図1と共通の要素を含み、それゆえ、同じ要素は同じ参照記号を持つ。接続15を介して、電子制御装置11は、車両速度に対応する値Vを受ける。電子制御装置11は、加速ペダルが完全に踏み込まれた位置にある場合に、この車両速度に割り当てられるであろう車輪におけるトルクに対応する最大トルク値Cmax(V)をマップ22の中で探すために、この値Vを使用する。電子制御装置11は、この値Cmax(V)を評価器32の1つの入力に送付する。
【0047】
また、電子制御装置11は、バッテリが最小充電レベルにある場合に、ペダルがこの同じ速度Vに対して有するであろう中立点の位置に対応する値f(V)をマップ21の中で探すために、値Vを使用する。電子制御装置11は、この値f(V)を乗算器30の第1の入力に送付する。
【0048】
電子制御装置11は、最後に、スロットルペダルが完全に解放される場合、およびバッテリが最小レベルの充電にある場合に、この同じ速度Vに対して車輪に適用されたトルクの値となるであろう値Cmin
0(V)をマップ23の中で探すために、車両速度値Vを使用する。電子制御装置11は、この値を比較器34の入力に送付する。
【0049】
接続14を介して、電子制御装置11はまた、バッテリの充電状態を示すSOC値を受ける。電子制御装置11は、利用可能な抵抗トルクの飽和のレベルを示す値τをマップ20の中で探すために、このSOC値を使用する。この値τは、減算器31の負入力に送付され、減算器31は、その正入力に値1を受ける。値(1−τ)を送り出す減算器31からの出力は、乗算器30の一入力に接続される。乗算器30からの出力は、中立点の値X(τ、V)を送り出し、その値は、評価器32の一入力に送付される。
【0050】
また、減算器31からの出力は、乗算器33の一入力に接続され、乗算器33は、その第2の入力に、マップ23の曲線から読み取られうる最高の抵抗トルクに対応する値である、定数の値Csat
maxを受ける。
【0051】
乗算器33からの出力は、値Csat(τ)を送り出し、その値は、比較器34の一入力に送付される。
【0052】
比較器34は、2つの抵抗トルクCsat(τ)とCmin
0(V)とを比較し、2つのトルクのうちで絶対値に関して最小である方の1つに、値Cmin(τ、V)を割り当て、その値を評価器32の一入力に送付する。
【0053】
それゆえ、評価器32は、3つの第1の入力において、最大トルク値Cmax(V)、最小トルク値Cmin(τ、V)および中立点X(τ、V)を受ける。
【0054】
接続17を介して、電子制御装置11は、ペダル18の位置を表現する値αを受ける。電子制御装置11は、この値αを評価器32の第4の入力に送付し、評価器32は、値α、Cmax(V)、Cmin(τ、V)およびX(τ、V)を使用し、式1を使用して車輪における設定点トルクC(α)を計算する。
【0055】
本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、多くの方法で変化させられてよい。当然ながら、スロットルペダルは、徐々に変わる設定点を伝達するための任意の他の同等の装置、例えば回転式手動レバーによって置き換えられてよく、および/または角度的移動範囲ではなく直線的移動範囲を検出してよい。
【0056】
さらに、車両の挙動の連続性を改善するために、大きな電力消費物のスイッチが入るときに、ペダルがその挙動を変えることが避けられるように、飽和関数τをゆっくり時間をかけて平滑することが実施されてよい。
【0057】
本方法で使用される関数CminおよびCmaxは、いずれも、バッテリ充電の関数として変化可能であってよく、かつ準線曲線から再計算されるのではなく、車両速度およびバッテリ充電である2変数の1関数として直接マップ化することが可能である。
【0058】
また、中立点X
τ(V)の曲線は、関数f(V)に、(1−τ)ではなく係数g(τ)を乗じた積であるものとして定義されてよい。関数g(τ)は、それゆえ、τの連続減少関数となる。この場合は、関数gは、バッテリの充電状態SOCの関数として、または利用可能な抵抗トルクの飽和レベルτの関数として特定のマップによってカバーされてよい。
【0059】
本発明は、ハイブリッド動力供給車両に対して適用されうるのと同様に、全電気的動力供給車両に対しても適用されうる。全電気車両の場合は、バッテリが完全に充電されると、利用可能なエンジン制動も回生制動も存在せず、それゆえ、τは値1を割り当てられ、中立点は、速度の全範囲にわたって、足をペダルに載せない位置(X=0)に一致したままである。
【0060】
足を載せないトルク設定点が、常にCmin
0曲線を追従し、運転者は、所与の速度および所与のスロットルペダル位置に対して常に同じトルクを得る、システムの「一貫性のある挙動」の変形を考案することが可能である。したがって、システムは、印加される回生制動トルク(または、ハイブリッド動力源の場合は、回生制動トルクとエンジン制動トルクとの和)を確定するために、前と同じCmin曲線を使用し、かつ車両のバッテリが満充電のときに回生制動に足されるべき流体制動の補数を計算するために、曲線Cmin
0を使用する。この変形では、中立点の位置は、車両速度のみの関数である。
【0061】
車両は、いくつかの電動モータまたはいくつかの燃焼機関を備えてよい。したがって、本発明による電子制御装置によって課せられるトルクは、車輪に印加される合計トルクとなる。ハイブリッド動力源の場合は、このトルクは、ある構成では、燃焼機関で発生された原動トルクと、バッテリを再充電するために同時に印加された回生制動トルクとの合計であってよい。
【0062】
上の説明は、正値を原動トルクに割り当て、負値を抵抗トルクに割り当てる慣習に基づいていることにも留意されたい。本発明による制御システムは、反対の符号規約を使用することができ、曲線の変化の方向は、それに応じて再定義される必要がある。同様に、車両の走行方向における速度が負になるように選択することによって、車両速度の符号に対して、反対の規約が選択されてよい。したがって、曲線の変化の方向および符号に関する記述が、それに応じて適合される必要があろう。
【0063】
本発明は、計算ユニットの形で構築されており、このことは、物理的に独立している電子的構成要素もしくはコンピュータを使用してなされてよく、または、ソフトウェアの形で記述される、すべての論理ユニットおよび計算ユニットをプログラムすることによってなされてよい。対応するプログラムおよびそのサブルーチンは、中央電子制御装置に内蔵されてよく、または内蔵されなくてよい、1つまたは複数のコンピュータに組み込まれてよい。
【0064】
本発明によるシステムは、「足をペダルに載せない」制動が利用可能であるとき、運転者が、車輪に印加する必要のあるトルクを直感的に計量することを可能にする。車両の挙動が進化するやり方は、バッテリの充電状態の関数として、徐々に変化する。したがって、このことが、突然のトルクの変化に運転者が驚くことを避け、運転者が現在の挙動の範囲に慣れることを可能にする。その「一貫性のある挙動」の変形において、システムは、ユーザにとって分かりやすい。この変形において、システムは、減速の力が回生制動と消散的流体制動との間で分配されることを可能にし、それにより、バッテリの再充電を最適化する。
【0065】
システムは、車両のエネルギー収支およびバッテリ寿命、それゆえ総合的二酸化炭素排出量を最適化することを可能にする。システムは、直感的な車両運転を可能にし、そのことが、運転のしやすさと搭乗者の安全に貢献する。