特許第5667624号(P5667624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667624複数ステージ、複数チューブのシェル−アンド−チューブリアクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667624
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】複数ステージ、複数チューブのシェル−アンド−チューブリアクタ
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   F28D7/16 A
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-514997(P2012-514997)
(86)(22)【出願日】2010年6月3日
(65)【公表番号】特表2012-529626(P2012-529626A)
(43)【公表日】2012年11月22日
(86)【国際出願番号】US2010037170
(87)【国際公開番号】WO2010144297
(87)【国際公開日】20101216
【審査請求日】2013年5月22日
(31)【優先権主張番号】12/481,107
(32)【優先日】2009年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ユオン
(72)【発明者】
【氏名】コットレル,スティーヴン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ホーワス,リチャード・デュリック
(72)【発明者】
【氏名】コプカリ,ハルク
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−063567(JP,U)
【文献】 特開2006−000707(JP,A)
【文献】 特表2001−502411(JP,A)
【文献】 特表2005−520673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル構造および前記シェル構造に配置されるチューブシート(2)を有するシェル−アンド−チューブリアクタであって、
前記チューブシート(2)は、1つ以上の反応領域(4)および1つ以上の温度制御領域(6)を有し、
前記反応領域(4)の各々は、複数の整列された反応チューブ(3)を有し、
前記温度制御領域(6)の各々は、複数の整列された温度制御チューブ(5)を有
反応領域(4)内のチューブ(3)は、温度制御領域(6)内のチューブ(5)よりも直径が大きい、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであって、反応領域(4)の各々は、温度制御領域(6)に隣接する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであってさらに、少なくとも2つの反応領域(4)を有する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項4】
請求項1に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであってさらに、少なくとも2つの温度制御領域(6)を有する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項5】
請求項1に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであってさらに、少なくとも3つの反応領域(4)を有する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項6】
請求項に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであって、各反応領域(4)は、触媒を含む複数のチューブ(3)を有する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項7】
請求項に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであって、各反応領域(4)は少なくとも30のチューブ(3)を有する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項8】
請求項1に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであってさらに、少なくとも3つの温度制御領域(6)を有する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項9】
請求項に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであって、各温度制御領域(6)は触媒の無い複数のチューブ(5)を有する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【請求項10】
請求項に記載のシェル−アンド−チューブリアクタであって、各温度制御領域(6)は少なくとも80のチューブ(5)を有する、シェル−アンド−チューブリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、発熱または吸熱化学反応とともに使用される改良された加熱および冷却能力を備える、シェル−アンド−チューブの触媒リアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]一般に、シェル−アンド−チューブ触媒リアクタは、反応熱を効率的に取り除くのに使用されるタイプのリアクタである。これらのリアクタのいくつかの使用において、触媒は複数の反応チューブ内に充填され;所望の生成物を得るための化学反応を生じさせるために反応流体(ガスおよび/または液体)反応チューブ内に導入され;熱伝達媒体が、リアクタシェルを通じて循環され、化学反応が制御された熱条件下で生じるようにする。シェル−アンド−チューブは、典型的には、1つ以上のチューブシートによりシェル内の所定位置に保持される多数の反応チューブを含み;シェルノズルは、熱伝達媒体を導入および引き出すために使用され;チューブノズルは、反応物の反応チューブへの導入のために使用され、また、生成物をそこから取り出すために使用され;適切な分割機および/またはバッフルは、それぞれのリアクタ部分を特定の機能に分割するために使用される。リアクタ部分は、典型的には、リアクタ内で処理される材料と反応しない材料から形成される。
【0003】
[0003]いくつかの場合、シェル−アンド−チューブ触媒リアクタの使用の間、ホットスポットは1つ以上の反応器チューブの局所的な位置において生じる。これらのホットスポットは、触媒の劣化、触媒寿命の低下の誘導、および/または所望の製品の生産性の低下のような問題を生じさせる。したがって、反応チューブへまたは反応チューブから熱を効率的にシェル−アンド−チューブリアクタへ伝達させる方法が望まれる到達点である。
【0004】
[0004]以下の従来技術文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
[0005] 米国特許明細書3566961号明細書は、「tubular reactor for carrying out endothermic and exothermic reactions with forced circulation」という表題である。要約で説明されているように、この特許文献は、チューブ状リアクタを教示し、このチューブ状リアクタは、軸方向における反応器チャンバの外側をフラッシュする熱伝達媒体の強制循環を備え、リアクタ壁は、円形のパイプラインを均一に通り、逸らしガイドプレート手段の部分的な構造形状が流れ方向を横断するように配置され、入れ子にされたチューブの全てのチューブに向かう均一な流れのための反応器チューブの周りの管状の開口部を備える。
【0005】
[0006]米国特許第3792980号明細書は「reactor for carrying out reactions accompanied by a change in heat」という表題である。要約で説明されているように、この特許は、熱の変化を伴う反応のためのシェルアンドチューブリアクタを教示している。反応材料はチューブを通って流れ、および熱交換媒体はシェルを通って流れ、反応から熱を除去または供給する。また、シェル側の反応器に配置されるポンプは、シェル内で熱交換媒体を循環させる。チューブは、間隔が隔てられたセクターに配置され、循環する熱交換媒体のための通路が提供される。熱交換媒体は、シェルから引き出されまたシェルへ供給され、それ自身で反応器の外側との熱交換にさらされる。シェル内の熱交換媒体の改良された分配は、上述の通路からまた通路へ、それぞれ、熱交換媒体を引き出しおよび供給することにより達成される。
【0006】
[0007]米国特許第4101287号明細書は、「combined heat exchanger reactor」という表題である。要約に説明されているように、この特許は、一部品の、一体的な、高強度の、組み合わされた熱交換器リアクタを教示し、これは、一体的なハチの巣構造を有し、そのチャネルが2つ以上のグループに分割され、グループ1は1つの流体を運搬し、グループ2は、第1の流体とは別の組成、および/または温度、および/または圧力、および/または流れ方向の他の流体を運搬し、組み合わされた熱交換器リアクタ(CHER)の主なデザイン特徴は、グループ1のチャネルはチャネル軸に平行に外側に延び、ハチの巣構造の断面に垂直であり、このグループの各チャネルは、グループ2のチャネルと共通の壁を通して熱接触し、グループ1の各チャネルは、グループ2のチャネルの存在により形成される介在する空隙により、グループ1の他のチャネルから分離される。ハチの巣構造の1つの端部または両方の端部から延びるグループ1のチャネルの拡張された端部は、一方または両方の端部においてマニホルド化され、拡張されたグループ1のチャネルの入り口および/または出口の、凹状のグループ2のチャネルからの分離を形成し、グループ1チャネル内の流体の流入および/または流出を可能にし、一方で、その流体のグループ2への流入を防止して、異なるチャネル1およびチャネル2のシステムを通る異なる流体の独立した流れを可能にする。異なるグループのチャネルの間に存在する共通の壁は、1つのグループのチャネル内の流体から、他のグループのチャネル内の流体への熱伝達を可能にする。この手法において、異なるチャネルグループに存在する流体および/または触媒に対して非常に正確な濃度および/または温度の制御を維持することができ、リアクタ内で自己誘導反応または触媒反応などの複雑な反応を可能にし、この発明により可能になる洗練された温度および/または濃度の制御により、産出量および/または選択性を大きく改善する。
【0007】
[0008]米国特許第4929798号明細書は「pseudoadiabatic reactor for exothermal catalytic conversions」という表題である。要約で説明されているように、この特許は、発熱触媒反応のための複数チューブ触媒リアクタは、平行チューブの束を有し、全て同一の長さでチューブ内に触媒を備える。チューブの束は、入口側および出口側を備える。独立に、反応物をリアクタのチューブに導入し、冷却剤を束の隣接するチューブの間に画定されるチャネルに導入するための装置が提供される。冷却剤は、反応物の流れと同方向にチャネルに導入される。生成物は、チューブから冷却材と独立に引き出される。リアクタは、特に、結晶アルミノシリケート触媒を用いて、メタノールのガソリンの沸点範囲への単一段の転化に適合的である。
【0008】
[0009]米国特許第5027891号明細書は「method for transferring heat between process liquor streams」という表題である。要約に説明されているように、この特許は、ボーキサイトからアルミナを製造するバイヤー法における腐食薬のような溶液ストリームプロセスの間で熱を伝達する方法を教示し、熱交換のために熱パイプの構成を用いる。このプロセスストリームはそれぞれ、第1熱交換壁の1つの表面に接触して通り、また、第2熱交換壁の1つの表面に接触して通り、2つの壁の第2表面から隔離され、これらの第2壁は、より熱いプロセスストリームの温度より低い温度で蒸発し、冷却プロセスストリームよりも高い温度で凝縮する熱伝達流体を含む閉じた容積にさらされる(また、両方のプロセスストリームから隔離される)。熱伝達流体は、より熱いストリームに接触する壁の露出する表面において蒸発し、より冷たいストリームに接触する壁の露出する表面において凝縮し、前者のストリームから後者のストリームへ熱(気化熱として)を伝達する。
【0009】
[0010]米国特許第6180846は「process and apparatus using plate arrangement for combustive reactant heating」という表題である。要約に説明されているように、この特許は、非常に効率化された方法においてプレート熱交換構成を用いて、反応物または吸熱反応からの生成物の燃焼により吸熱反応を間接的に加熱するためのプロセスおよび装置を教示する。この発明は、スチレンまたは合成ガスの生成のようなプロセスに特に適合的である。合成ガスを生成する場合、二次的な改質ステップにおける反応物の酸化は、一次改質ステップのための熱を生成し、このプロセスは、間接熱交換のための狭いチャネルを用いる非常に効率的な熱交換ステップにより、選択性および産出量を改善する。一次反応チャネルは、ストリーム改質またはエチルベンゼンの脱水素のような一次反応の促進のための触媒を含む。二次加熱ステップは、熱交換チャネルを通る熱流出ガスを伴う予め形成された熱交換チャネルの外側とすることができ、一次反応ステップへ熱を供給し、または、二次反応チャネルは、その場で熱の生成するための燃焼促進触媒を含むことができる。
【0010】
[0011]米国特許第6790431号明細書は「reactor for temperature moderation」という表題である。要約に説明されているように、この特許は、複数の反応領域を構成する方法および装置を含む実施形態を教示し、1つの反応領域における少なくとも1つのホットスポットが、隣接する反応領域におけるより冷たいスポットにより緩和される。
【0011】
[0012]米国特許第7521028号明細書は「catalytic reactor for low-Btu fuels」という表題である。要約に説明されているように、この特許は、改良された触媒リアクタを教示し、これは、第1領域および第2領域を画定するように位置決めされたプレートを備えるハウジングを含み、また、熱伝達材料から形成される流体を通す複数の導管を含む。導管はハウジング内に位置決めされ、導管の外側表面および第2領域内のハウジングの内部表面は第1流れ経路を画定し、導管の内部表面は、第1流れ経路と流体連通しない、第2領域を通る第2流れ経路を画定する。導管の出口は、第2流れ経路出口を画定し、導管出口および第1流れ経路の出口は、緊密に配置されてちりばめられる。導管は、少なくとも1つの拡大区域を画定し、これは隣接する導管に接触し、第2領域内の導管に間隔を与え、ハウジング出口平面領域の画定された割合よりも大きな面積の統合出口領域を備える第1流れ経路出口の流れオリフィスを形成する。最後に、第1流れ経路の少なくとも一部は、触媒活性表面を画定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[0013]いくつかのフルオロカーボンおよびフルオロオレフィンの触媒反応の水素化および脱ハロゲン化水素を含む、いくつかの化学反応の高度に発熱のまたは吸熱の特性により、反応の進行と同時に熱を除去または供給することへの需要がある。従来のシェル−アンド−チューブリアクタは、これらの反応システムを最適な動作条件に維持するのに十分な熱伝達能力を備えていない。本発明は、複数ステージおよび複数チューブを提供することによりこの問題を解決し、同一のシェル−アンド−チューブリアクタ容器において、反応を促進する能力および効率的な熱の除去または供給が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0014]本発明は、複数ステージ、複数チューブ、直列に配置される反応領域および中間ステージ温度制御(冷却/加熱)領域を含む、シェル−アンド−チューブリアクタに関する。
【0014】
[0015] 多数の反応チューブを含み、シェルを熱交換領域として用いる従来のシェル−アンド−チューブ触媒反応リアクタとは異なり、本発明は、1つ以上の反応領域を提供し、各領域は、触媒を収容する多数の反応チューブを含み、また、1つ以上の温度制御領域を含み、各領域は、触媒を含まない多数のチューブを含む。しかし、ここを通って、(加熱または冷却のための)熱交換媒体が流れることができる。好ましい実施形態において、反応領域は、リアクタシェル内の1つ以上の温度制御領域により互いに分離される。
【0015】
[0016]リアクタは、少なくとも2つのタイプの領域を備え、両方は、システムの要求に応じて、熱をシステムから除去またはシステムへ供給するのに寄与する。リアクタは、反応領域のグループを備えることができ、これは、反応を促進し、同時に熱を除去または供給するために触媒が収容されたチューブを収容する。多数の中間ステージ温度制御(冷却/加熱)領域があり、これらは、システムへ熱を供給し、またはシステムから熱を除去するように設計される。これらの領域の位置決め、数、および設計は、制御が望まれる温度制御の程度、およびシステムの発熱または吸熱の特性に依存するであろう。
【0016】
[0017]反応領域および温度制御領域に用いられる異なるチューブのタイプは、好ましくは、チューブシートにより互いにグループ化され、十分な熱を提供しまたは熱の除去を提供し、同時に反応が最適な条件下で行われるための手段を提供する。望まれる反応収量を達成するために、これらのグループの多数は直列に用いることができる。
【0017】
[0018]反応領域に使用されるチューブは、好ましくは、触媒パッキングのための空間を提供するためにより大きな直径である。中間ステージ冷却/加熱領域チューブは、好ましくは、最も効率的な熱伝達シナリオを提供するために小さな直径である。
【0018】
[0019]本発明の一実施形態は、シェル構造およびシェル構造内に配置されるチューブシートを有するシェル−アンド−チューブリアクタに関し、
チューブシートは、1つ以上の反応領域および1つ以上の温度制御領域を有し、
各反応領域は、複数の整列された反応チューブを有し、
各温度制御領域は、複数の整列された温度制御チューブを有する。
【0019】
[0020]本発明の他の実施形態は、シェル構造およびシェル構造内に配置されるチューブシートを有するシェル−アンド−チューブリアクタに関し、
チューブシートは、2つ以上の反応領域および2つ以上の温度制御領域を有し、
各反応領域は温度制御領域に隣接し、
各反応領域は複数の整列した反応チューブを有し、
各温度制御領域は複数の整列した温度制御チューブを有する。
【0020】
[0021]本発明の他の実施形態は、シェル構造およびシェル構造内に配置されるチューブシートを有するシェル−アンド−チューブリアクタに関し、
チューブシートは、3つ以上の反応領域および3つ以上の温度制御領域を有し、
各反応領域内のチューブは、温度制御領域内のチューブの直径よりも大きな直径であり、
各反応領域は温度制御領域に隣接し、
各反応領域は複数の整列した反応チューブを有し、
各温度制御領域は複数の整列した温度制御チューブを有する。
【0021】
[0022]いくつかの実施形態において、各反応領域は温度制御領域に隣接する。
[0023]いくつかの実施形態において、反応領域内のチューブは、温度制御領域内のチューブよりも直径が大きい。
【0022】
[0024]いくつかの実施形態において、シェル−アンド−チューブリアクタは、さらに少なくとも2つの反応領域を有する。いくつかの実施形態において、シェル−アンド−チューブリアクタはさらに、少なくとも3つの反応領域を有する。いくつかの実施形態において、反応領域のチューブは触媒を収容する。いくつかの実施形態において、少なくとも30のチューブが反応領域において用いられる。
【0023】
[0025]いくつかの実施形態において、シェル−アンド−チューブリアクタはさらに、少なくとも2つの温度制御領域を有する。いくつかの実施形態において、シェル−アンド−チューブリアクタはさらに、少なくとも3つの温度制御領域を有する。温度制御領域のチューブは、これらのチューブ内で反応が起きないことを想定しているので、おおむね触媒が無い。いくつかの実施形態において、温度制御領域において少なくとも80のチューブが用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】3つの温度制御(加熱/冷却)領域により分離される3つの反応領域を備える本発明のリアクタに用いられる1つのチューブシートの実施形態を示す図である。
図2】本発明の、複数ステージ、複数チューブ、シェル−アンド−チューブリアクタの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0028]本発明は、反応またはシステムの要求に応じて温度制御(加熱/冷却)に用いることができる少なくとも2つの異なるタイプの領域を備えるシェル−アンド−チューブリアクタである。
【0026】
[0029]図面を詳細に参照すると、図1は、3つの温度制御(加熱/冷却)領域により分離される3つの反応領域を備える本発明のリアクタ内で用いられる1つのチューブシートの実施形態を示している。
【0027】
[0030]図2は、垂直のシェル−アンド−チューブリアクタを示し、その装置に通常関連付けられる部品とともに示している。プロセス流体は、図の上部に示されるチューブノズル(10)を通ってリアクタに入る。ヘッドの内側の分割器(12)は、システムの要求に応じて流体を正しく加熱/冷却領域または反応領域に分配する。バッフルプレート(14)は、プロセス流体がヘッド(16)を通りチューブ(18)に入るときに、プロセス流体を減速し、分配する。チューブカバー(20)および触媒支持部(22)は、触媒をチューブ内に閉じ込めた状態を維持する。典型的には、シェル−アンド−チューブリアクタは、2つ以上のチューブシート(24)により所定位置に保持される多数のチューブを備える。システムに必要な数のチューブを通った後、プロセス流体は、ヘッドを通って流れ、図の下部に示されるチューブノズルを通ってリアクタを出る。加熱/冷却媒体は、シェルノズル(28)の1つを通ってシェル(26)に入り、他のシェルノズルを通って出る。加熱/冷却媒体の流れは、シェル内のバッフル(30)により、よりよい熱交換のために中断される。シェル−アンド−チューブリアクタは、通常、構造を支持するために装置に接続される支持突起部(32)により所定位置に保持される。
10 − チューブノズル
12 − 分割器
14 − バッフルプレート
16 − ヘッド
18 − チューブ
20 − チューブカバー
22 − 触媒支持部
24 − チューブシート
26 − シェル
28 − シェルノズル
30 − バッフル
32 − 支持突起部
[0031]複数ステージ、複数チューブ、シェル−アンド−チューブリアクタの構築は、いくつかのまたは全ての以下の調整とともに、従来のシェル−アンド−チューブの製造手段により行うことができる。
1)シェル−アンド−チューブヘッドは、システムの要求に応じて正しい複数通路流れを提供するために設計および製造される。
2)リアクタチューブシートは、システムの要求に応じて異なる領域および異なるチューブの直径のために設計および製造される。
3)リアクタに触媒を充填するときに、触媒を必要としない領域は、システムの要求に依存してスクリーンスクリュー挿入部または他の従来の手段により避けられる。これは、触媒充填装置により達成することができ、触媒充填装置は、触媒を正しいチューブに導くことができ、触媒を必要としないチューブをブロックまたは隠す構成を備えることができる。
4)よりより熱伝達を促進するために、加熱/冷却チューブは、熱伝達向上材を充填することができ、これは、化学プロセスにおいて一般に用いられる金属パッキングのような拡張した表面積を提供する。追加的に、反応領域および/または加熱/冷却領域は、チューブの表面を拡張することにより、または、チューブサイドの流体の攪拌を支援することにより、よりよい熱伝達を促進するように製造することができ、これは、一般に外部フィンまたは内部旋条により行われる。
【0028】
反応例
[0032]脱フッ化水素反応は当業界で知られており、たとえば、米国特許出願公開第20080051610A1を参照されたい。この開示は参照により本明細書に組み込まれる。教示されているように、HFC-245faの脱フッ化水素は蒸気相で行われ、また、より好ましくは、蒸気相内の触媒リアクタで行われる。
【0029】
[0033] HFC-245faの脱フッ化水素は、本発明の複数ステージ、複数チューブ、シェル−アンド−チューブリアクタで実行できる1つタイプの反応である。そのような場合、リアクタは、フッ化水素の腐食効果に耐性のある材料から構成されるべきであり、たとえば、ニッケルおよびニッケル合金、Hastelloy、Incoloy、Monel、またはフルオロポリマ−でライニングされた容器などである。適当な条件下で使用できる他の好適な材料として
は、スチールまたはステンレス鋼を使用できる。
【0030】
[0034] 脱フッ化水素触媒は、反応領域チューブにおいて採用される。この触媒は、1つ以上のフッ素化金属酸化物のバルク形態または支持形態、金属ハロゲン化物のバルク形態または支持形態、およびカーボン支持の遷移金属、金属酸化物、ハロゲン化物とすることができる。好適な触媒は、非限定的に、フッ化クロミア(fluorinated Cr2O3)、フッ化アルミナ(fluorinated Al2O3)、金属フッ化物(たとえばCrF3、AlF3)、およびFe/C、Co/C、Ni/C、Pd/Cのようなカーボン支持遷移金属(無酸化状態)を含む。
【0031】
[0035]HFC-245faは、純粋な形態または純粋ではない形態で、あるいは窒素またはアルゴン等の随意選択の不活性ガス希釈剤とともにリアクタ内に導入される。いくつかの場合、HFC-245faは、リアクタに入る前に予め蒸気化または加熱される。代替的に、HFC-245faはリアクタ内部で蒸気化される。
【0032】
[0036]リアクタ要素は、所望のプロセスを実行するのに適合的でなければならない。たとえば、HFC-245faの脱フッ化水素の場合、有効な反応温度は、約100℃から約600℃の範囲となりうる。好ましい温度は、約150℃から約450℃の範囲となりうる。より好ましい温度は、約200℃から約350℃の範囲となりえる。反応は、大気圧、大気圧以上の圧力、または減圧下で行うことができる。減圧圧力は、約5torrから約760torrの圧力とすることができる。HFC-245faの触媒との接触時間は、約0.5秒から約120秒の範囲とすることができる。しかし、それより長い時間または短い時間を用いることもできる。
【0033】
[0037]プロセス流れは、反応領域の触媒の床を通る下方向または上方向とすることができる。最適な反応のために反応領域の加熱が必要な場合、1つ以上の温度制御領域に加熱媒体が充填され、これは、望まれる反応温度を提供するために反応領域への十分な加熱を提供する。加熱媒体として使用するのに好適な材料は当業者によく知られており、たとえば、加熱水、加熱オイル、圧縮蒸気などを含む。同様に、最適な反応条件を維持するために反応領域が冷却を必要とする場合、1つ以上の温度制御領域は、好適な冷却媒体が充填され、これは、反応領域の熱を取り除き、所望の温度を達成または維持する。冷却媒体としての使用に好適な材料は当業者によく知られており、たとえは、冷却水、沸騰水などを含む。
【0034】
[0038]本発明が好ましい実施形態を参照しながら図示および説明されてきたが、当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更および修正が可能であることが容易に理解できるであろう。特許請求の範囲は、開示された実施形態、上述した代替形態およびそれらに等価なあらゆる形態を含むことを意図している。
図1
図2