(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)熱可塑性樹脂と(B)金属酸化物とを含む原料成分を、押出機を用いて溶融混練する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスターバッチペレットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0027】
本実施の形態は、(A)熱可塑性樹脂と(B)金属酸化物とを含む原料成分を溶融混練して得られ、前記(B)金属酸化物の含有量が0.5質量%以上であり、前記溶融混練後の(B)金属酸化物の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在するマスターバッチペレットに係る。
【0028】
以下、前記マスターバッチペレットの各構成要素について詳細に説明する。
【0029】
[(A)熱可塑性樹脂]
本実施の形態に用いる熱可塑性樹脂(A)としては、溶融混練できるものであれば、特に制限はない。
【0030】
熱可塑性樹脂(A)の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、液晶ポリエステル等のポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等のポリアリールケトン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0031】
中でも、押出加工性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィドが好ましく、ポリアミドがより好ましい。
【0032】
(ポリアミド)
本実施の形態において、ポリアミドとは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。当該ポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミンおよびジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、ならびにこれらの共重合物が挙げられる。これらのポリアミドは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。以下、本実施の形態に用いるポリアミドの原料について説明する。
【0033】
ポリアミドの構成成分である単量体としてのラクタムは、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタムやドデカラクタムが挙げられる。一方、ω−アミノカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。なお、ラクタムまたはω−アミノカルボン酸として、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
【0034】
続いて、ジアミンおよびジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミドについて説明する。まず、上記のジアミン(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミンやm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。他方、上記のジカルボン酸(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が挙げられる。上記した単量体としてのジアミンおよびジカルボン酸は、それぞれ1種単独または2種以上の併用により縮合させてもよい。
【0035】
本実施の形態に用いるポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、およびポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ならびにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
【0036】
上記で列挙したポリアミドの中でも、ポリマー鎖中の炭素数/窒素数の比(C/Nの比)として、5を超えるものが、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の観点より好ましい。かかる条件を具備する好ましいポリアミドとして、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6Iおよびポリアミド9T、ならびにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選択された1種以上が挙げられる。なお、前記C/Nの比として、より好ましくは5を超えて15以下であり、さらに好ましくは5を超えて12以下である。
【0037】
共重合ポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミドおよびヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミドおよびヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、ならびにヘキサメチレンテレフタルアミドおよび2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物が挙げられる。
【0038】
これらポリアミドの融点は、200〜280℃であることが好ましい。ポリアミドの融点は、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性の観点から200℃以上であり、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の観点から280℃以下である。より好ましくは、210〜270℃であり、さらに好ましくは、240〜270℃である。
【0039】
ポリアミドの融点は、JIS−K7121に準じて行うことができる。測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
【0040】
また、上記のポリアミドの末端基としては、一般にアミノ基、またはカルボキシル基が存在する。本実施の形態における、これらの末端基の比は、アミノ基濃度/カルボキシル基濃度として、好ましくは9/1〜1/9であり、より好ましくは6/4〜1/9、さらに好ましくは5/5〜1/9である。アミノ基濃度/カルボキシル基濃度が上記した範囲内の場合、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度を一層向上させることができる傾向にある。
【0041】
また、末端のアミノ基濃度は、好ましくは10〜100μmol/gであり、より好ましくは15〜80μmol/gであり、さらに好ましくは30〜80μmol/gである。末端のアミノ基濃度が上記した範囲内の場合、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度を有意に向上させることができる傾向にある。
【0042】
ここで、本明細書における末端アミノ基および末端カルボキシル基の濃度の測定方法としては、
1H−NMRにより測定される、各末端基に対応した特性シグナルの積分値によって求めることができる。
【0043】
さらに、ポリアミドの末端基を別途調整してもよい。かかる調整方法としては、公知の方法を用いることができる。以下に制限されないが、例えば末端調整剤を用いる方法が挙げられる。具体例として、ポリアミドの重合時に所定の末端濃度となるように、モノアミン化合物、ジアミン化合物、モノカルボン酸化合物およびジカルボン酸化合物よりなる群から選択される1種以上を添加する方法が挙げられる。これらの成分の溶媒への添加時期については、末端調整剤として本来の機能を果たす限り特に制限されず、例えば、上記したポリアミドの原料を溶媒に添加するときなどがあり得る。
【0044】
上記モノアミン化合物としては、以下に制限されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンおよびジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミンおよびジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミンおよびナフチルアミン等の芳香族モノアミン、ならびにこれらの任意の混合物などが挙げられる。中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性や価格などの観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミンおよびアニリンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
上記のジアミン化合物は、ポリアミドの原料として上述したジアミンの例示をそのまま引用できる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記のモノカルボン酸化合物としては、以下に制限されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸およびイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸が挙げられる。本実施の形態では、これらのカルボン酸化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記のジカルボン酸化合物としては、以下に制限されないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸およびスベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から誘導される単位(ユニット)が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本実施の形態に係るマスターバッチペレットにおいて、熱可塑性樹脂(A)の含有量は、50〜99.5質量%であることが好ましく、60〜99質量%であることがより好ましく、70〜98質量%であることがさらに好ましい。
【0049】
熱可塑性樹脂(A)の含有量が前記範囲内であると、最終的に得られるポリアミド樹脂組成物の機械的強度が優れ、また耐熱エージング性のばらつきが低減する傾向にある。
【0050】
[(B)金属酸化物]
本実施の形態において、金属酸化物(B)とは、金属元素の酸化物を意味する。金属元素に特に制限はないが、最終的に得られるポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング特性の観点から、遷移金属元素であることが好ましい。好ましい金属酸化物(B)の例としては、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化クロム、酸化錫等が挙げられ、中でも、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化マンガンがより好ましく、酸化鉄、酸化亜鉛がさらに好ましく、酸化鉄が特に好ましい。
【0051】
酸化鉄としては、例えば、酸化鉄(II)(酸化第一鉄:以下「FeO」とも記す。)、酸化鉄(III)(酸化第二鉄:以下「Fe
2O
3」とも記す。)、酸化鉄(II、III)(四三酸化鉄:以下「Fe
3O
4」とも記す。)が挙げられる。また、これらとその他の酸化物と組み合わされてなる複合酸化物であっても構わない。その他の金属酸化物としては、以下に制限されないが、例えば、Ti、Mg、Mn、Zn、Co、Cr、Sb、Ni、AlやCuの酸化物が挙げられる。上記した酸化鉄を含む化合物の中でも、Fe
2O
3、Fe
3O
4、酸化鉄と酸化チタン(Ti)との複合酸化物、酸化鉄と酸化マグネシウム(Mg)との複合酸化物、酸化鉄と酸化マンガン(Mn)との複合酸化物、酸化鉄と酸化亜鉛(Zn)との複合酸化物、酸化鉄と酸化コバルト(Co)との複合酸化物、酸化鉄と酸化アルミニウム(Al)との複合酸化物が好ましく、Fe
2O
3、Fe
3O
4がより好ましく、Fe
3O
4がさらに好ましい。金属酸化物(B)としてFe
3O
4を用いると、機械的強度および耐熱エージング性に優れ、特に長時間熱老化後の機械的強度のばらつきが少なく熱安定性に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。上記の化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
以下、本実施の形態に用いる金属酸化物(B)の溶融混練前の特性について説明する。
【0053】
金属酸化物(B)、例えば酸化鉄の比表面積としては、特に制限されないが、最終的に得られるポリアミド樹脂組成物の機械的強度、耐衝撃性および耐熱エージング性向上の観点から、BET法における比表面積が10m
2/g以上であることが好ましい。また、より好ましくは10m
2/g以上、さらに好ましくは20〜100m
2/g、特に好ましくは25〜70m
2/gである。
【0054】
金属酸化物(B)、例えば酸化鉄の平均粒子径としては、以下に制限されないが、最終的に得られるポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性向上の観点から、20μm以下であることが好ましい。より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。当該平均粒子径の下限としては、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましい。ここで、本明細書における平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径である。この際の分散溶媒としては水(イソプロパノールを3質量%含有)が用いられる。
【0055】
金属酸化物(B)、例えば酸化鉄の平均一次粒子径としては、以下に制限されないが、最終的に得られるポリアミド樹脂組成物の機械的強度、耐衝撃性および耐熱エージング性向上の観点から、0.2μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.15μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。当該平均一次粒子径の下限としては、特に制限されないが、0.001μm以上であることが好ましい。ここで、本明細書における平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影された粒子径から任意に選択した100個の直径の測定(画像解析)により算出した平均値である。
【0056】
本実施の形態に係るマスターバッチペレットにおいて、金属酸化物(B)の含有量は、マスターバッチペレット100質量%に対し、0.5質量%以上である。金属酸化物(B)の含有量を0.5質量%以上にすることで、最終的に得られるポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性のばらつきを低減させることができるとともに、ポリアミド樹脂組成物に添加するマスターバッチペレットの添加量を少なくすることができ、生産効率を上げることが可能となる。好ましい金属酸化物(B)の含有量としては、0.5〜50質量%である。50質量%以下にすることで、金属酸化物(B)の分散性を向上することができる傾向にある。金属酸化物(B)の含有量としては、より好ましくは、1〜30質量%であり、2〜20質量%がさらに好ましい。
【0057】
また、最終的に得られるポリアミド樹脂組成物中の金属酸化物(B)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部であり、より好ましくは0.03〜1質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜0.5質量部である。
【0058】
本実施の形態のマスターバッチペレットにおいて、前記溶融混練後の金属酸化物(B)は、その一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在する。上述した特性を有する金属酸化物(B)を用いて、後述する条件で溶融混練を行うことにより、金属酸化物(B)の一部を長径5μm以上の凝集粒子とすることができる。金属酸化物(B)の凝集粒子の長径の上限は、特に限定されないが、100μm以下であることが好ましい。
【0059】
前記凝集粒子の観察方法としては、マスターバッチペレットの断面を、光学顕微鏡を用いて反射像で写真撮影する方法や、マスターバッチペレットから薄膜切片を切り出し、当該薄膜切片を、光学顕微鏡を用いて透過像で写真撮影する方法等が挙げられる。
【0060】
なお、本実施の形態において、凝集粒子の長径とは、光学顕微鏡写真において、観察した凝集粒子の形に関わらず、それぞれの凝集粒子の外周のうちの、任意の2点間を結んだ直線で最も長いものを示す。
【0061】
本実施の形態においては、前記溶融混練後の金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数が、マスターバッチペレットの断面1mm
2当り、1〜30個であることが好ましく、より好ましくは1〜20個/mm
2である。長径5μm以上の凝集粒子の個数が1個/mm
2以上であることでポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性がより向上し、30個/mm
2以下であることで、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性のばらつきを低減できる傾向にある。
【0062】
本実施の形態において、前記溶融混練後の金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数は、以下のように測定することができる。
【0063】
まず、マスターバッチペレットの断面を、200倍の倍率で光学顕微鏡写真を1mm
2以上の異なる観察範囲で3回撮影する。次に、上記3回の写真撮影で得られた各々の写真において、任意に1mm
2となる観察範囲を決め、合計3mm
2分の観察範囲の中に存在する、金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数を数える。当該凝集粒子の個数からペレット断面1mm
2当たりの平均値を算出し、該平均値を金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数とする。
【0064】
また、本実施の形態のマスターバッチペレットにおいて、前記溶融混練後の金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合は、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。長径5μm以上の凝集粒子の割合の下限は、特に限定されないが、1質量%以上であることが好ましい。長径5μm以上の凝集粒子の割合が、30質量%以下であることで、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性のばらつきを低減できる傾向にある。
【0065】
本実施の形態において、前記溶融混練後の金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合は、以下のように算出することができる。
【0066】
まず、上述したとおり光学顕微鏡写真を用いて、長径5μm以上のそれぞれの凝集粒子の長径を求める。当該凝集粒子を球とみなして、前記長径を球の直径として、マスターバッチペレット中の、金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の体積分率を算出する。ここで、凝集粒子を任意の観察範囲1mm
2から算出していることから、基準となるマスターバッチペレットの体積は1mm
3である。続いて、当該体積分率を、金属酸化物(B)の比重から、重量分率に換算する。この長径5μm以上の凝集粒子の重量分率と、マスターバッチペレット中の金属酸化物(B)全体の重量分率との比率から、金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合を算出する。
【0067】
なお、複数の金属酸化物(B)を使用する場合、それぞれの含有する金属酸化物(B)の重量比により平均比重を算出し、当該平均比重をそれぞれの金属酸化物(B)の比重として算出する。
【0068】
また、該金属酸化物(B)の凝集粒子は、ポリアミド樹脂組成物中においても存在することが好ましい。ポリアミド樹脂組成物中においても(B)金属酸化物の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在することにより、機械的強度が向上し、さらに耐熱エージング性のばらつきを低減できる傾向にある。
【0069】
[(C)分散剤]
本実施の形態に用いる原料成分は、さらに分散剤(C)を含有してもよい。当該分散剤(C)は、原料成分の溶融混練前に上述した金属酸化物(B)と予め混合しておくことが好ましい。前記分散剤(C)は、金属酸化物(B)と予め混合しておくことにより、マスターバッチペレット中への金属酸化物(B)の分散性を向上させることができる。
【0070】
分散剤(C)と金属酸化物(B)とを混合する装置に特に制限はないが、タンブラー、ヘンシェルミキサー、アトマイザーミル、プロシェアミキサー、ナウターミキサー、ジェットミル等が挙げられ、中でもヘンシェルミキサー、アトマイザーミルが好ましい。
【0071】
分散剤(C)と金属酸化物(B)との混合方法に特に制限はないが、アトマイザーミルを用いて、分散剤(C)が溶融しないように冷却しながら混合することが好ましい。分散剤(C)が溶融してしまうと、混合装置内が不均一になり、混合不良になったりする場合がある。
【0072】
分散剤(C)と金属酸化物(B)との混合割合については、特に制限はないが、分散剤(C)と金属酸化物(B)との合計100質量部に対して、金属酸化物(B)50〜95質量部、分散剤(C)5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは、金属酸化物(B)60〜90質量部、分散剤(C)10〜40質量部であり、さらに好ましくは、70〜85質量部、分散剤(C)15〜30質量部である。分散剤(C)と金属酸化物(B)との混合割合が前記範囲であると、マスターバッチペレット中に良好に金属酸化物(B)を分散させることができる。
【0073】
本実施の形態において、分散剤(C)としては、金属酸化物(B)の分散性を向上させることができる化合物であれば、特に制限はないが、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0074】
高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、エルカ酸、オレイン酸等の高級脂肪酸のアミド化合物が挙げられる。これら高級脂肪酸アミドの例としては、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0075】
高級脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、エルカ酸、オレイン酸等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これら高級脂肪酸金属塩の例としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸リチウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸亜鉛等が挙げられる。
【0076】
高級脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、エルカ酸、オレイン酸等の高級脂肪酸のエステルが挙げられる。これら高級脂肪酸エステルの例としては、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ブチル、ベヘニン酸ベヘニル、モンタン酸−1,3−ブタンジオールエステル、モンタン酸ポリオールエステル等が挙げられる。
【0077】
これらの中でも、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸リチウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸亜鉛が好ましく、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウムがより好ましい。
【0078】
これらの分散剤(C)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
これら分散剤(C)の融点は、120℃以上であることが好ましい。分散剤(C)の融点が120℃以上であると、該分散剤(C)と金属酸化物(B)との混合物の均一性が向上し、マスターバッチペレット中の金属酸化物(B)の分散性をより向上させることができる傾向にある。
【0080】
分散剤(C)は、融点120℃以上の高級脂肪酸アミドであることが好ましい。このような分散剤(C)であると、該分散剤(C)と金属酸化物(B)との混合物の均一性がより向上し、マスターバッチペレット中の金属酸化物(B)の分散性をさらに向上させることができる傾向にある。
【0081】
[その他の添加剤]
本実施の形態に係るマスターバッチペレットは、上記した成分の他に、本実施の形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の成分を添加してもよい。
【0082】
その他の成分として、以下に制限されないが、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料などを添加してもよいし、他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。ここで、上記した他の成分はそれぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施の形態の効果を損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0083】
[マスターバッチペレットの製造方法]
【0084】
本実施の形態に係るマスターバッチペレットの製造方法は、上述した(A)熱可塑性樹脂と(B)金属酸化物とを含む原料成分を、押出機を用いて溶融混練する工程を含む。
【0085】
また、本実施の形態に係るマスターバッチペレットの製造方法は、前記原料成分が、さらに(C)分散剤を含み、前記溶融混練する工程前に、該(C)分散剤と前記(B)金属酸化物とを予め混合する工程を含む、ことが好ましい。
【0086】
本実施の形態に係るマスターバッチペレットの製造方法は、以下に制限されないが、単軸または多軸の押出機によって上述した熱可塑性樹脂(A)を溶融させた状態で混練する方法を用いることが好ましい。中でも前記押出機として二軸押出機を用いることが、金属酸化物(B)の凝集粒子の制御の観点から好ましい。二軸押出機を用いる製造方法の例としては、(i)上流側供給口から、熱可塑性樹脂(A)および金属酸化物(B)を供給して溶融混練する方法、(ii)上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口から熱可塑性樹脂(A)を供給し、下流側供給口から金属酸化物(B)を供給して溶融混練する方法等が挙げられる。
【0087】
熱可塑性樹脂(A)および金属酸化物(B)の添加量は、上述したマスターバッチペレット中の熱可塑性樹脂(A)および金属酸化物(B)の含有量に対応する。
【0088】
マスターバッチペレットを製造する際の前記溶融混練温度としては、特に制限はないが、融点をもつ熱可塑性樹脂(A)を用いる場合は、熱可塑性樹脂(A)の融点以上であり、熱可塑性樹脂(A)融点+50℃以下であることが好ましく、融点をもたない熱可塑性樹脂(A)を用いる場合は、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度+50℃以上、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度+150℃以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂(A)の融点およびガラス転移温度は、DSC等の装置を用いることで、公知の方法により測定することができる。
【0089】
マスターバッチペレットにおいて、金属酸化物(B)の凝集粒子を制御するためには、熱可塑性樹脂(A)の溶融粘度や選択する金属酸化物(B)の分散性を考慮しつつ、溶融混練する加工機の選択、金属酸化物(B)の分散処理、加工条件等を適宜調整することが好ましい。
【0090】
例えば、マスターバッチペレットにおいて、金属酸化物(B)の分散性が良く、金属酸化物(B)の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在することが困難な場合は、熱可塑性樹脂(A)の性質に併せて溶融粘度を調整することが好ましい。取り分け、熱可塑性樹脂(A)がポリアミドの場合、溶融粘度を低くするように、加工温度を高くしたり、選択するポリアミド樹脂をより低分子量のものにしたりする等により、金属酸化物(B)の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在しやすくなる傾向にある。また、押出機を用いて溶融混練する場合は、スクリュー構成を調整し、混練度合いを弱めることでも、金属酸化物(B)の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在することができる傾向にある。一方、金属酸化物(B)の分散性が悪く、好ましい形態である、金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数を、マスターバッチペレットの断面1mm
2当り1〜30個の範囲にすることが困難であったり、マスターバッチペレット中の金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合を、30質量%以下にすることが困難であったりする場合、金属酸化物(B)を分散剤(C)により予め分散処理したり、溶融混練する際のせん断を強くするように、スクリュー構成を調整したり、スクリューの回転数を調整したりすることにより、金属酸化物(B)の凝集粒子を好ましい形態に制御しやすい傾向にある。
【0091】
[ポリアミド樹脂組成物]
本実施の形態に係るポリアミド樹脂組成物は、上述のマスターバッチペレットと、ポリアミド樹脂とを含む。上述のマスターバッチペレットと、ポリアミド樹脂とを含むポリアミド樹脂組成物は、機械的強度および耐熱エージング性に優れ、特に長時間熱老化後の機械的強度のばらつきが少なく熱安定性に優れる。
【0092】
また、ポリアミド樹脂組成物中において、(B)金属酸化物の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在することが好ましい。このようなポリアミド樹脂組成物は、機械的強度が向上し、さらに耐熱エージング性のばらつきを低減できる傾向にある。
【0093】
また、本実施の形態に係るポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂と(B)金属酸化物とを含む原料成分を溶融混練して得られ、前記溶融混練後の(B)金属酸化物の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在する。
【0094】
本実施の形態に係るポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド樹脂としては、上記熱可塑性樹脂(A)の具体例として挙げたポリアミドを用いることができる。
【0095】
本実施の形態に係るポリアミド樹脂組成物において、上述のマスターバッチペレットの含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.3〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0096】
また、本実施の形態に係るポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド樹脂の含有量は、40〜99.9質量%であることが好ましく、50〜99.5質量%であることがより好ましい。
【0097】
本実施の形態に係るポリアミド樹脂組成物は、さらに、銅化合物と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物とを含んでいることが好ましい。
【0098】
銅化合物としては、以下に制限されないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅およびステアリン酸銅、ならびにエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。これらの銅化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
上記で列挙した銅化合物の中でも、好ましくはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅および酢酸銅よりなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはヨウ化銅および/または酢酸銅である。かかる好ましい銅化合物を用いた場合、耐熱エージング性に優れ、且つ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」ともいう)を抑制可能なポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0100】
銅化合物を用いる場合、ポリアミド樹脂組成物中の銅化合物の含有量は、好ましくは0.01〜0.2質量%であり、より好ましくは0.02〜0.15質量%である。銅化合物の含有量が上記範囲内の場合、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる傾向にある。
【0101】
また、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性を向上させる観点から、ポリアミド樹脂組成物全量に対し、銅元素の含有濃度として、好ましくは20〜1000ppmであり、より好ましくは100〜500ppmであり、さらに好ましくは150〜300ppmである。
【0102】
アルカリおよび/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、以下に制限されないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウムおよび塩化ナトリウム、ならびにこれら2種以上の混合物が挙げられる。中でも、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の向上および金属腐食の抑制という観点から、好ましくはヨウ化カリウムおよび臭化カリウム、ならびにこれらの混合物であり、より好ましくはヨウ化カリウムである。
【0103】
アルカリおよび/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、ポリアミド樹脂組成物中のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量は、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.2〜2質量%である。アルカリおよび/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量が上記の範囲内の場合、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる傾向にある。
【0104】
銅化合物と、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物との含有割合は、ポリアミド樹脂組成物全体において、ハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が2〜50となるように、ポリアミド樹脂組成物に含有させることが好ましく、より好ましくは10〜40であり、さらに好ましくは15〜30である。ハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が上記した範囲内の場合、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性を一層向上させることができる傾向にある。なお、ここでいうハロゲンは、銅化合物としてハロゲン化銅を使用した場合、ハロゲン化銅に由来するハロゲンと、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物に由来するハロゲンの合計を意味する。
【0105】
上記のハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が2以上である場合、銅の析出および金属腐食を抑制することができるため好適である。一方、上記のハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が50以下である場合、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性、靭性などの機械的な物性を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食を防止できるため、好適である。
【0106】
本実施の形態に係るポリアミド樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。かかる無機充填材としては、以下に制限されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトが挙げられる。これらの中でも、強度および剛性を増大させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトが好ましい。また、より好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリンおよび窒化珪素である。上記した無機充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
上記のガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、且つ前記樹脂組成物において、重量平均繊維長が100〜750μmであり、重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10〜100であるものがさらに好ましい。
【0108】
また、上記のウォラストナイトのうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、且つ前記樹脂組成物において、重量平均繊維長が10〜500μmであり、前記アスペクト比が3〜100であるものがさらに好ましい。
【0109】
また、上記のタルク、マイカ、カオリンおよび窒化珪素のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものがさらに好ましい。
【0110】
ここで、本明細書における数平均繊維径および重量平均繊維長は、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の無機充填材を任意に選択し、SEMで観察して、これらの無機充填材の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定するとともに、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求める。
【0111】
上記の無機充填材を、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0112】
また、上記のガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、ならびにこれらの第1級、第2級および第3級アミンとの塩、ならびにカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体を含む共重合体などを含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物およびポリウレタン樹脂、ならびにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、ポリカルボジイミド化合物およびポリウレタン樹脂、ならびにこれらの組み合わせがより好ましい。
【0113】
ガラス繊維や炭素繊維は、上記の集束剤を、公知のガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、ガラス繊維や炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、ガラス繊維または炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。ガラス繊維や炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維または炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、ポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、またはストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0114】
無機充填材を用いる場合、ポリアミド樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜55質量%である。
【0115】
本実施の形態に係るポリアミド樹脂組成物は、上記した成分の他に、本実施の形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の成分を添加してもよい。
【0116】
以下に制限されないが、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料などを添加してもよいし、他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。ここで、上記した他の成分はそれぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施の形態の効果を損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0117】
本実施の形態において、上記ポリアミド樹脂組成物を製造する方法は、以下に制限されないが、単軸または多軸の押出機によって上述したマスターバッチペレットとポリアミド樹脂と、さらに好ましくは銅化合物と、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物と、を溶融させた状態で混練する方法を用いることができる。無機充填材を用いる場合、上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口からポリアミド樹脂、銅化合物、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、上述したマスターバッチペレットを供給して溶融させた後、下流側供給口から無機充填材を供給して溶融混練する方法を用いることが好ましい。また、ガラス繊維や炭素繊維などのロービングを用いる場合も、公知の方法で複合することができる。
【0118】
このようにして得られるポリアミド樹脂組成物は、特に制限されることなく、例えば、射出成形による各種部品の成形体として利用できる。
【0119】
これらのポリアミド樹脂組成物から得られる各種部品は、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用として好適に使用できる。
【実施例】
【0120】
以下、本実施の形態を実施例、参考例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0121】
[原料]
【0122】
1.熱可塑性樹脂(A)
熱可塑性樹脂(A)として、以下のポリアミド66(以下、「PA66」と略記する)を用いた。
【0123】
PA66;商品名:レオナ(登録商標)1300(旭化成ケミカルズ社製、融点:260℃)。
【0124】
2.金属酸化物(B)
金属酸化物(B)として、以下の2−1に記載の酸化鉄(以下、「Fe
3O
4」と略記する)、2−2に記載の酸化鉄(以下、「Fe
2O
3−1」と略記する)または2−3に記載の酸化鉄(以下、「Fe
2O
3−2」と略記する)を用いた。
【0125】
2−1.酸化鉄;商品名:JC−MR01(JFEケミカル社製)。SEM法による平均一次粒子径は0.08μm、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による平均粒子径は7.5μm、BET法による比表面積は34m
2/gであった。
【0126】
2−2.酸化鉄;商品名:JC−FH04(JFEケミカル社製)。SEM法による平均一次粒子径は0.08μm、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による平均粒子径は0.2μm、BET法による比表面積は15m
2/gであった。
【0127】
2−3.酸化鉄;商品名:CM−1000(ケミライト工業社製)。SEM法による平均一次粒子径は0.05μm、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による平均粒子径は0.06μm、BET法による比表面積は40m
2/gであった。
【0128】
3.分散剤(C)
分散剤(C)として、以下の3−1に記載のエチレンビスステアリン酸アミド(以下、「EBS」と略記する)または3−2に記載のモンタン酸カルシウム(以下、「CaV」と略記する)を用いた。
【0129】
3−1.エチレンビスステアリン酸アミド;商品名:アルフロー(登録商標)H−50F(日油社製、融点:140℃)。
【0130】
3−2.モンタン酸カルシウム;商品名:Licomont(登録商標)CaV102(クラリアント社製、融点:145℃)。
【0131】
4.ヨウ化銅(以下、「CuI」と略記する)
和光純薬工業社製の試薬を使用した。
【0132】
5.ヨウ化カリウム(以下、「KI」と略記する)
和光純薬工業社製の試薬を使用した。
【0133】
6.ガラス繊維(以下、「GF」と略記する)
商品名:ECS 03T−275H(日本電気硝子社製)を用いた。
【0134】
[評価方法]
以下では、実施例、参考例および比較例で行った評価の方法について説明する。
【0135】
<金属酸化物(B)の凝集粒子の観察>
実施例、参考例および比較例で得られたマスターバッチペレットから、ミクロトームを用いて、平滑なペレット断面が形成されるように観察用サンプルを切り出した。観察用サンプルのペレット断面について、光学顕微鏡を用いて、反射法により200倍で観察し、写真を撮影した。当該写真撮影を、ペレット断面として1mm
2以上の異なる観察範囲で3回行った。
【0136】
(ア)金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数の測定
上記3回の写真撮影で得られた各々の写真において、任意に1mm
2となる観察範囲を決め、合計3mm
2分の観察範囲の中に存在する、金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数を数えた。当該凝集粒子の個数から、ペレット断面1mm
2当たりの平均値を算出し、該平均値を金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数とした。
【0137】
なお、凝集粒子の長径は、観察した凝集粒子の形に関わらず、それぞれの凝集粒子の外周のうちの、任意の2点間を結んだ直線でもっとも長いものを長径とした。
【0138】
(イ)長径5μm以上の凝集粒子の割合の測定
金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合については、以下のようにして算出した。
【0139】
まず、上記(ア)のように長径5μm以上のそれぞれの凝集粒子の長径を求めた。当該凝集粒子を球とみなして、前記長径を球の直径とし、マスターバッチペレット中の、金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の体積分率を算出した。ここで、凝集粒子を任意の観察範囲1mm
2から算出したことから、基準となるマスターバッチペレットの体積を1mm
3とした。続いて、当該体積分率を、金属酸化物(B)の比重から重量分率に換算した。この長径5μm以上の凝集粒子の重量分率と、マスターバッチペレット中の金属酸化物(B)全体の重量分率との比率から、金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合を算出した。
【0140】
<引張強度>
実施例、参考例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片を成形した。その際、射出および保圧の時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定した。得られた多目的試験片(A型)を用いて、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張強度を測定した。
【0141】
<熱老化後の引張強度>
上記の多目的試験片(A型)を、熱風循環式オーブン内で、230℃で500時間熱老化させた。23℃で24時間以上冷却した後、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行った。当該引張試験を異なる10本の試験片で行い、その平均値を引張強度とした。また、異なる10本の試験片での引張強度の最大値および最小値も求め、(最大値−最小値)/平均値×100を、引張強度のばらつきとした。
【0142】
[製造例1]
Fe
3O
4とEBSとを質量比(Fe
3O
4/EBS)で80/20になるように、ヘンシェルミキサー[FM−20C/I:三井鉱山社製]に投入し、装置を水冷しながら、3,000rpmで10分間攪拌し、Fe
3O
4とEBSとの混合物1を得た。
【0143】
[製造例2]
Fe
3O
4とEBSとを質量比(Fe
3O
4/EBS)で80/20になるように、アトマイザーミル[TAP−1:東京アトマイザー製造社製]に投入し、装置を水冷しながら、10,000rpmで10分間攪拌し、Fe
3O
4とEBSとの混合物2を得た。
【0144】
[製造例3]
Fe
3O
4とEBSとを質量比(Fe
3O
4/EBS)で50/50になるようにした以外は、製造例2と同様にして、Fe
3O
4とEBSとの混合物3を得た。
【0145】
[製造例4]
Fe
2O
3−1とEBSとを質量比(Fe
2O
3−1/EBS)で80/20になるようにした以外は、製造例2と同様にして、Fe
2O
3−1とEBSとの混合物4を得た。
【0146】
[製造例5]
Fe
3O
4とCaVとを質量比(Fe
3O
4/CaV)で80/20になるようにした以外は、製造例2と同様にして、Fe
3O
4とCaVとの混合物5を得た。
【0147】
[製造例6]
Fe
2O
3−2とEBSとを質量比(Fe
2O
3−2/EBS)で80/20になるようにした以外は、製造例2と同様にして、Fe
2O
3−2とEBSとの混合物6を得た。
【0148】
[実施例1]
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。前記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを290℃、スクリュー回転数300rpm、および吐出量20kg/時間に設定した。かかる条件下で、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口よりPA66、Fe
3O
4をそれぞれ供給し、溶融混練することでマスターバッチペレット(以下、「MB1」とも略記する)を製造した。得られたMB1中の金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数と、金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合とを上記のとおり測定した。これらの測定結果を下記表1に記載した。
【0149】
[実施例2]
下記表1の上部に記載された割合で、Fe
3O
4とEBSとを予めドライブレンドして混合物aを得た。その後、実施例1と同様にして、二軸押出機を用いて、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口よりPA66と、前記混合物aとを供給し、溶融混練することでマスターバッチペレット(以下、「MB2」と略記する)を製造した。得られたMB2中の金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数と、金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合とを上記のとおり測定した。これらの測定結果を下記表1に記載した。
【0150】
[実施例3〜8および参考例1]
製造例1〜5で得られた混合物1〜5のいずれかを使用した以外は、実施例1と同様にして、二軸押出機を用いて、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口よりPA66と、混合物1〜5のいずれかとを供給し、溶融混練することでマスターバッチペレット(以下、実施例3〜8および参考例1の順に「MB3〜9」と略記する)を製造した。得られたマスターバッチペレット中の金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子の個数と、金属酸化物(B)全体における長径5μm以上の凝集粒子の割合とを上記のとおり測定した。これらの測定結果を下記表1に記載した。
【0151】
[比較例1]
製造例6で得られた混合物6を使用した以外は、実施例1と同様にして、二軸押出機を用いて、PA66を95質量部、混合物6を5質量部になるように、上流側供給口よりPA66と、混合物6とを供給し、溶融混練することでマスターバッチペレット(以下、「MB10」と略記する)を製造した。得られたマスターバッチペレット中の金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子は確認されなかった。
【0152】
[比較例2]
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。前記二軸押出機において、実施例1よりも強いせん断がかかるようにスクリュー構成を変更し、上流側供給口からダイまでを290℃、スクリュー回転数300rpm、および吐出量20kg/時間に設定した。かかる条件下で、PA66を95質量部、混合物2を5質量部になるように、上流側供給口よりPA66と混合物2とをそれぞれ供給し、溶融混練してペレットを得た。さらに、同様の条件下で、得られたペレットを再度溶融混練することでマスターバッチペレット(以下、「MB11」と略記する)を製造した。得られたマスターバッチペレット中の金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子は確認されなかった。
【表1】
【0153】
[実施例9〜16]
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、且つ9番目のバレルに下流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。前記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを290℃、スクリュー回転数250rpm、および吐出量25kg/時間に設定した。かかる条件下で、下記表2および3の上部に記載された割合となるように、上流側供給口よりPA66、上記のMB1〜8のいずれか、CuIおよびKIをそれぞれ供給し、下流側供給口よりGFを供給した。そして、これらを溶融混練することでポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、水分が800ppm以下になるまで乾燥した。乾燥後、ポリアミド樹脂組成物のペレットを用いて、上記のとおり引張強度および熱老化後の引張強度を評価した。これらの評価(計数)結果などを下記表2および3に記載した。
【0154】
また、得られた樹脂組成物のペレット断面について、光学顕微鏡を用いて、反射法により200倍で観察し、ペレット断面として異なる観察範囲で10回行ったところ、いずれのサンプルからも金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子が観察された。
【0155】
[比較例3〜4]
上記のMB9、Fe
3O
4を使用した以外は、実施例9と同様にして、二軸押出機を用いて、下記表2の上部に記載された割合となるように、上流側供給口よりPA66、上記のMB9、Fe
3O
4、CuIおよびKIをそれぞれ供給し、下流側供給口よりGFを供給した。そして、これらを溶融混練することでポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、水分が800ppm以下になるまで乾燥した。乾燥後、ポリアミド樹脂組成物のペレットを用いて、上記のとおり引張強度および熱老化後の引張強度を評価した。これらの評価(計数)結果などを下記表2に記載した。
【0156】
また、得られた樹脂組成物のペレット断面について、光学顕微鏡を用いて、反射法により200倍で観察し、ペレット断面として異なる観察範囲で10回行ったところ、いずれのサンプルからも金属酸化物(B)の長径5μm未満の凝集粒子は観察されたが、金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子は観察されなかった。
【0157】
[比較例5〜6]
上記のMB10、MB11を使用した以外は、実施例9と同様にして、二軸押出機を用いて、下記表2および3の上部に記載された割合となるように、上流側供給口よりPA66、上記のMB10〜11のいずれか、CuIおよびKIをそれぞれ供給し、下流側供給口よりGFを供給した。そして、これらを溶融混練することでポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、水分が800ppm以下になるまで乾燥した。乾燥後、ポリアミド樹脂組成物のペレットを用いて、上記のとおり引張強度および熱老化後の引張強度を評価した。これらの評価(計数)結果などを下記表2および3に記載した。また、得られた樹脂組成物のペレットサンプルからは金属酸化物(B)の長径5μm以上の凝集粒子が観察されなかった。
【表2】
【表3】
【0158】
表2より、マスターバッチペレット中に金属酸化物(B)を0.5質量%以上含有し、金属酸化物(B)の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在するマスターバッチペレットを使用した実施例9〜16で得られたポリアミド樹脂組成物は、前記マスターバッチペレットを使用していない比較例3〜4で得られたポリアミド樹脂組成物と対比すると、機械的強度および耐熱エージング性に優れ、さらに耐熱エージング性のばらつきが低減したことがわかる。
【0159】
上記の結果より、マスターバッチペレット中に金属酸化物(B)0.5質量%以上含有し、金属酸化物(B)の一部が長径5μm以上の凝集粒子として存在するマスターバッチペレットは、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度および耐熱エージング性の向上に効果的に寄与することを見出した。
【0160】
以上のことから、本実施の形態のマスターバッチペレットを用いることにより、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度ならびに耐熱エージング性を顕著に向上させることができ、自動車部品や各種電子部品などに好適な熱安定性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られることを見出した。
【0161】
本出願は、2010年5月21日出願の日本特許出願(特願2010−117506号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。