特許第5667629号(P5667629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667629
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】車両周辺のモニタ方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20150122BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20150122BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20150122BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   H04N7/18 J
   B60R1/00 A
   B60R21/00 626G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-523219(P2012-523219)
(86)(22)【出願日】2010年7月20日
(65)【公表番号】特表2013-501280(P2013-501280A)
(43)【公表日】2013年1月10日
(86)【国際出願番号】EP2010004415
(87)【国際公開番号】WO2011015283
(87)【国際公開日】20110210
【審査請求日】2012年3月29日
(31)【優先権主張番号】102009036200.2
(32)【優先日】2009年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・グローガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ルーラント
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−104373(JP,A)
【文献】 特開2007−180720(JP,A)
【文献】 特開2008−048317(JP,A)
【文献】 特開2008−048345(JP,A)
【文献】 特開2007−089081(JP,A)
【文献】 特開2006−121587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 1/16
B60R 1/00
B60R 21/00
H04N 7/18
H04N 5/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の検知範囲が少なくとも部分的に重なり合って重複部分を形成する少なくとも1つの第1の画像取込み装置(1)と少なくとも1つの第2の画像取込み装置(2)とを用いて、車両(F)の周辺(U)及びその周辺にある物体(O1、O2)が検知され、前記画像取込み装置(1、2)によって検知された個々の画像から、画像処理装置を使って、前記車両(F)及びその周辺(U)を鳥瞰図で示した全体画像(G)を生成する、車両(F)の周辺(U)のモニタ方法であって、
前記物体を実際と同じ形で全体画像に表示するため、検出された前記物体(O1、O2)の位置に応じて、全体画像の中で、第1の個別画像範囲(EB1)と第2の個別画像範囲(EB2)との間において、前記車両(F)上の起点から前記全体画像(G)の画像周縁まで伸びる少なくとも1つの境界線(L1〜L3)が、前記物体(O1、O2)から逸れて通るように設けられること、および
前記境界線(L1〜L3)とそれぞれの前記物体(O1、O2)との間に、許容範囲(T1〜T3)が形成されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
一方の前記画像取込み装置(1、2)の個別画像範囲(EB1、EB2)が、他方の前記画像取込み装置(1、2)の少なくとも1つの個別画像範囲(EB1、EB2)によって分断された形で表示されるように、前記全体画像(G)が前記物体(O1、O2)の位置に応じて分割されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺のモニタ方法に関し、各々の検知範囲が少なくとも部分的に重なり合って重複部分を形成する少なくとも1つの第1の画像取込み装置と1つの第2の画像取込み装置とを用いて、周辺及びその周辺にある物体が検知され、この画像取込み装置によって検知された個々の画像から、画像処理装置を使って、車両及びその周辺を鳥瞰図で示した全画像が生成される。
【0002】
物品運送又は旅客輸送用の車両は、しばしば、車両サイズが大きく、及び/又は見通しが悪いという特徴を持つ。そのため、運転者にとって、特にこれらの車両の運転は非常に難しい。従って、車両及びその周辺、とりわけ車両の後方又は側方周辺が鳥瞰図で画面に表示され、運転者が車両及びその周辺全体を見ることができるのは有利である。
【背景技術】
【0003】
従来技術から、車両周辺のこの種のモニタ及び表示のための様々な方法及び装置が知られており、車両の運転者には、特に車両及びその周辺の画像が鳥瞰図で示される。これにより、例えば車両を運転している場合など、走行中に運転者のアシスタント機能及びサポートとして働く広範囲の視界が運転者に提供される。さらに、特に視界の悪い大型車両において、周辺を見わたすことが困難であるせいでしばしば発生する事故を回避することができる。この場合、車両及び車両周辺が表示される鳥瞰図による全体画像は、互いに隣接しているか、又は重なり合っている複数の画像を収集することによって検出される。
【0004】
特許文献1から、沿道のパノラマビュー又はオールラウンドビューを生成する方法が知られている。この場合、レーザースキャナによってレーザースキャンデータが無作為に検知されるが、この場合、レーザースキャナは車両に配置され、それぞれのサンプリングに位置データと位置特定データとが割り当てられている。さらに、同じく車両に配置されているカメラにより、少なくとも1つの画像シーケンスが検知され、画像シーケンスの各画像には、位置データと位置特定データとが割り当てられている。レーザースキャンデータから表面が検出され、この表面の位置は、レーザースキャンデータに割り当てられた位置データ及び位置特定データに応じて検出される。パノラマビュー又はオールラウンドビューは、前述した表面に対して、少なくとも1つの画像シーケンスから、これらの画像の位置に応じて、及び各画像に割り当てられている位置データ及び位置特定データに応じて決定される。
【0005】
さらに、特許文献2から車両周辺を表示するための装置が公開されている。この装置は、車両の側面に配置され、第1の画像を取り込むために設けられている第1の取込み装置を有している。さらに、第2の画像を取り込むための第2の取込み装置が設けられており、この第2の取込み装置は、第1の取込み装置に対応して配置されている。さらに、取り込まれた画像を表示するため、及び車両周辺を表示するための表示装置が設けられている。画像処理装置を用いて、第1と第2の画像との境界線が、これらの画像から形成される全体画像において、第1のカメラの位置と第2のカメラの位置とを互いに結んでいる直線と境界線とが一致するように決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/150153A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0192660号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術に対して改善された車両周辺のモニタ方法を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明に基づき、請求項1に示されている特徴を有する方法によって解決される。
【0009】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0010】
車両周辺をモニタする本方法では、各々の検知範囲が少なくとも部分的に重なり合って重複部分を形成する少なくとも1つの第1の画像取込み装置と1つの第2の画像取込み装置とを用いて、周辺及びその周辺にある物体が検知され、この画像取込み装置によって検知された個々の画像から、画像処理装置を使って、車両及びその周辺を鳥瞰図で示した全画像が合成される。
【0011】
この重複部分にある物体、例えば、人間、障害物又はその他の対象物など、地表面から隆起している物体を、特に全長の長い車両の場合でも、確実に、完全に、また実際と同じ形で全体画像に表示するため、本発明に基づき、検出された物体の位置に応じて、全体画像の中で、第1の個別画像範囲と第2の個別画像範囲との間における、起点から全体画像の画像周縁まで伸びる境界線が、物体から逸れて通るように可変的に設けられている。
【0012】
この場合、互いに隣接する個々の画像部分を鳥瞰図による全体画像にまとめる場合、画像取込み装置の重複部分に生じる非連続性、特に歪み及び/又は中断箇所により、物体の表示が崩れ、不完全なものになるおそれがあるが、特に有利な方法では、このような非連続性は全体画像内に示される物体について不利に現れない。特に、全体画像における物体の不完全かつ非連続的な表示が回避され、それは、境界線が物体に接触しないように可変的に設定されることにより、最適な、すなわち完全かつ連続的な物体の外観が全体画像に反映されるからである。
【0013】
本発明の実施例を、図に基づいて以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両と、その周辺及び物体が鳥瞰図によって示される、従来技術による全体画像の部分概略図である。
図2】第1と第2の個別画像範囲との間にある可変的に設定可能な境界線を備えた全体画像の部分概略図である。
図3】より多くの個別画像範囲に分けられている全体画像の分割概略図である。
図4】全体画像の第1の個別画像範囲と第2の個別画像範囲との間にある、直角に曲がった境界線の概略図である。
図5】全体画像の第1の個別画像範囲と第2の個別画像範囲との間にある、曲線状の境界線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
互いに対応する部品は、全ての図の中で同一の記号が付されている。
【0016】
図1には、車両F、その周辺U及び物体O1が鳥瞰図によって示される、従来技術による全体画像Gの部分図が示されている。
【0017】
車両Fの前方端部には、第1の画像取込み装置1が配置され、車両Fの右側には第2の画像取込み装置2が配置されており、これらの装置によって車両F及びその周辺Uが検知可能である。この場合、画像取込み装置1及び2の取込み範囲は、少なくとも部分的に重なり合っている。
【0018】
画像取込み装置1及び2は、それぞれ広い取込み範囲を有しているカメラであるのが好ましい。この場合、従来のカメラの他に、全方向性カメラも可能である。これらは、例えばモザイクベースのカメラ、回転式カメラ、特殊な広角レンズ、いわゆる魚眼レンズ付きカメラであり得るか、又は反射屈折光学系に基づくカメラでもよい。
【0019】
画像取込み装置1及び2は、車両F、その周辺U及び物体O1の個々の画像を取り込み、これらの個々の画像は、詳しく図示されていない画像処理装置によって全体画像Gに変換される。この全体画像Gは、車両F、その周辺U、及び人間の他に障害物又はその他の対象物でもあり得る物体O1を、ある観察点から見た鳥瞰図によって表示する。個々の画像は、画像処理装置を用いて、個々の画像を仮想の基準面に投影することによって変換される。
【0020】
この仮想基準面は、特に車両Fの路面の高さ、すなわち地表面となる底面に位置する面である。
【0021】
地表面から隆起している、すなわち地表面から突出している物体O1は、画像取込み装置1及び2によって様々な角度から取り込まれるため、物体O1が境界線Lの付近又は境界線L上に直接ある場合、全体画像Gでは視覚的に崩れた、及び/又は少なくとも部分的に不完全な物体O1が表示される可能性がある。この場合、境界線Lは、第1の画像取込み装置1によって取り込まれて基準面に投影された第1の個別画像範囲EB1と、第2の画像取込み装置2によって取り込まれて基準面に投影された第2の個別画像範囲EB2とを分離している。
【0022】
全体画像Gの物体O1が視覚的に崩れて、及び/又は少なくとも部分的に不完全に表示されるのを防ぐため、検出された物体O1の全体画像Gにおける位置に応じて、境界線L1は、この境界線が物体O1を逸れて通るように設定される。
【0023】
図2では、物体O1を逸れて通っているこの種の境界線L1が示されており、境界線L1は、常に、物体O1がこの境界線によって分断されないか、又はこの境界線と接触しないように通っている。
【0024】
境界線L1をこのように設定するために、まず、車両Fの周辺における物体O1の位置が検出されるが、これは、画像取込み装置1及び2と画像処理装置とによって行われる。車両Fの周辺における物体O1の位置と、すでに分かっている画像取込み装置1及び2の方向とから、次に、物体O1を全体画像Gにおいてどの位置に表示するかが調べられる。
【0025】
全体画像Gにおける物体O1のこの位置に応じて、個別画像範囲EB1及びEB2は、これらが作成される際、境界線が物体O1を逸れて通るように画像処理装置によって計算される。画像取込み装置1、2が、それらの取込み範囲に重複部分が生じるように調整されているため、この重複部分では、周辺Uとこの周辺にある物体O1とが両方の画像取込み装置1、2によって取り込まれることから、この境界線L1の可変的経過が可能となる。
【0026】
図示されている実施例においては、境界線L1が直線として形成されており、この境界線は、物体O1がこの線に触れないように、車両Fの前方コーナー上にある該境界線の起点を中心に旋回している。
【0027】
さらに、境界線L1と物体O1との間には、許容範囲T1が形成されている。従って、車両F及び物体Oが動いている場合にも、車両F、その周辺U及び物体O1を全体画像Gに最適に表示することが常に確実に行われる。
【0028】
図3は、車両F、その周辺U及び2つの物体O1、O2を含む全体画像Gを示し、全体画像Gは複数に分割されている。両方の物体O1、O2を正しく全体画像Gに表示するため、第1の個別画像範囲EB1は、第2の個別画像範囲EB2によって分断された形で全体画像Gに表示されており、この場合、物体O2は第2の個別画像範囲EB2に表示されるが、第1の個別画像範囲EB1によって周縁を取り囲まれているようになっている。
【0029】
さらに、第2の個別画像範囲EB2も、第1の個別画像範囲EB1によって分断された形で表示されており、この場合、第1の物体O1は第1の個別画像範囲EB1に表示されるが、第2の個別画像範囲EB2によって周縁を取り囲まれているようになっている。
【0030】
別の表現を用いると、全体画像Gの面上で、個別画像範囲EB1とEB2とが何度も交互に入れ替えられている。
【0031】
この場合、個別画像範囲EB1、EB2は、それぞれ、境界線L1〜L3によって互いに分離され、このとき、境界線L1〜L3は、物体O1、O2に接触せず、境界線L1〜L3と物体O1、O2との間に許容範囲T1〜T4が形成されるように通っている。境界線L1〜L3から、物体O1、O2の最適な表示が結果として生じ、それは、これらの物体を明確に、正確かつ完全に取り込んでいるそれぞれの画像取込み装置1、2の視点でこれらの物体が表示されるからである。
【0032】
図4は、車両Fの前方コーナー上の起点と全体画像Gの画像周縁との間にあるもう1つの境界線L1の変化を示している。この場合、境界線L1は長方形の一部分を描くように通っており、物体O1は全体画像Gの中で境界線L1の上方にあり、許容範囲T1は物体O1と境界線L1との間に形成されている。
【0033】
詳しく図示されていない発展形態では、代替の方法として、境界線が多角形の形を作って1つ又は複数の物体の周りを通ることができるため、常に、最適かつ完全に物体を全体画像Gに表示することが可能になっている。
【0034】
図5には、車両F、その周辺U及び物体O1、O2を示す全体画像Gが示されており、このとき、境界線L1は、第1の物体O1が第1の個別画像範囲EB1において境界線L1の上方にあり、第2の物体O2が全体画像Gにおいて境界線L1の下方にあるように、曲線を描いて通っている。さらに、境界線L1の起点も車両Fの前方コーナーから第1の画像取込み装置1の方向にずれているため、変更された仮想の観察ポイントが全体画像Gに生じている。これにより、物体O1、O2の表示を、さらに改善することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 画像取込み装置
2 画像取込み装置
EB1、EB2 個別画像範囲
F 車両
G 全体画像
L1〜L3 境界線
O1、O2 物体
T1〜T4 許容範囲
U 周辺
図1
図2
図3
図4
図5