(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のミストセパレータにおいて、前記ステータが、前記ガスの流路における前記主回転羽根の上流に位置する導入側固定羽根をさらに有しているミストセパレータ。
請求項2に記載のミストセパレータにおいて、前記導入側固定羽根の前側を覆う環状の導入側固定羽根カバーを有し、この導入側固定羽根カバーに、液体ミストが集合した回収液を導入側固定羽根カバーの外部に排出する排出スリットが設けられているミストセパレータ。
請求項3に記載のミストセパレータにおいて、さらに、前記ロータおよび前記ステータを収納するハウジングと、前記ハウジングにおける前記カバーの径方向外方に、前記ハウジングと前記カバーとの間の導入空間に径方向に対して斜め方向からガスを導入する導入口とを備えており、前記導入側固定羽根カバーの周方向における、前記導入口からガスの旋回方向における上流側180°以内の領域に前記排出スリットが設けられているミストセパレータ。
請求項1から4のいずれか一項に記載のミストセパレータにおいて、前記カバー排出口が、前記カバーの周方向に等間隔に設けられた複数のメイン排出口と、隣接するメイン排出口の間に設けられた、メイン排出口よりも小さい開口面積を有するサブ排出口とを有しており、前記カバーが、周方向に等間隔に設けられた内径側に突出する複数のボスを有しており、前記カバーの前記メイン排出口が、ガスの旋回方向における前記ボスの上流側に近接して設けられているミストセパレータ。
請求項2または請求項2を引用する請求項3から5のいずれか一項に記載のミストセパレータにおいて、前記カバーの外周面における前記カバー排出口と前記導入側固定羽根の間の部分に、外方に突出するカバーフランジが設けられているミストセパレータ。
請求項1から7のいずれか一項に記載のミストセパレータであって、航空機用エンジンのアクセサリギヤボックス内に配置されて、オイルミストを含む空気からオイルを分離するミストセパレータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなミストセパレータでは、オイルミストを分離する際の圧力差が大きくなると、軸受室内の圧力が高くなり、軸受室内をシールしている部分からのオイル漏れが発生する。オイル漏れが発生すれば、オイルの消費量が増大するのみならず、軸受の潤滑不足による損傷につながる可能性もある。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、遠心力を利用した高い分離性能を維持しながら、ミストセパレータ内外間の圧力差を小さく抑えることにより高い信頼性を有し、かつコンパクトなミストセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るミストセパレータは、液体ミストを含むガスから前記液体ミストを分離するミストセパレータであって、中空の回転軸に固定された、主回転羽根を備えるロータと、前記ロータに軸方向に並べて配置されたステータとを備え、前記ステータが、前記ガスの流路における前記主回転羽根の下流に位置する主固定羽根と、この主固定羽根および前記主回転羽根の外周を覆うカバーとを有し、前記主固定羽根は、前記ガスを外周から径方向内方へ流速を低下させながら流動させるように形成されており、前記カバーに、液体ミストが集合した回収液をカバーの外部に排出するカバー排出口が設けられている。
【0007】
この構成によれば、ステータの固定羽根が、ロータから流出してきたガスの流速を低下させながら径方向内方へ流動させるので、ミストセパレータ内外間の圧力差を小さく抑えることができる。したがって、ロータの遠心力を利用して高い分離性能を発揮しつつ、液体漏れが防止されることにより、このミストセパレータが搭載される機器の信頼性が向上する。また、ロータとステータとを軸方向に並べて配置したので、ミストセパレータの径方向寸法が小さくなり、ミストセパレータをコンパクトに構成できる。
【0008】
本発明の一実施形態に係るミストセパレータにおいて、前記ステータが、前記ガスの流路における前記主回転羽根の上流に位置する導入側固定羽根をさらに有していてもよい。この構成によれば、主固定羽根に追加して導入側にも固定羽根を設けたことにより、ミストセパレータ内外間の圧力差を一層小さく抑えられる。
【0009】
本発明の一実施形態に係るミストセパレータにおいて、前記導入側固定羽根の前側を覆う環状の導入側固定羽根カバーを有し、この導入側固定羽根カバーに、液体ミストが集合した回収液を導入側固定羽根カバーの外部に排出する排出スリットが設けられていてもよい。この場合において、さらに、前記ロータおよび前記ステータを収納するハウジングと、前記ハウジングにおける前記カバーの径方向外方に、前記ハウジングと前記カバーとの間の導入空間に径方向に対して斜め方向からガスを導入する導入口とを備えており、前記導入側固定羽根カバーの周方向における、前記導入口からガスの旋回方向における上流側180°以内の領域に前記排出スリットが設けられていることが好ましい。この構成によれば、導入側固定羽根のカバーにも液体ミストを排出する排出スリットを設けることにより、液体ミストの分離能力が高まるのみならず、排出スリットを、ガスの導入口から近く、導入側固定羽根内部の圧力が高い領域にのみ設けることにより、圧力損失の増大を抑制しながらオイルを効果的に分離することが可能となる。
【0010】
本発明の一実施形態に係るミストセパレータにおいて、前記カバー排出口が、前記カバーの周方向に等間隔に設けられた複数のメイン排出口と、隣接するメイン排出口の間に設けられた、メイン排出口よりも小さい開口面積を有するサブ排出口とを有しており、前記カバーが、周方向に等間隔に設けられた内径側に突出する複数のボスを有しており、前記カバーの前記メイン排出口が、ガスの旋回方向における前記ボスの上流側に近接して設けられていてもよい。この構成によれば、ボスによってガスが圧縮されて圧力が高くなるボスの上流部に、開口面積の比較的大きいメイン排出口を設け、これらメイン排出口の間に開口面積の小さいサブ排出口を設けることにより、圧力損失の増大を抑制しながら液体ミストを効果的に分離することが可能となる。
【0011】
また、前記導入側固定羽根を有する実施形態において、前記カバーの外周面における前記カバー排出口と前記導入側固定羽根との間の部分に、外方に突出するカバーフランジが設けられていることが好ましい。この構成によれば、カバー排出口からカバーの外部へ排出されたオイルが導入側固定羽根側へ流れることが防止され、再度ミストセパレータ内に流入することなく確実に外部へ排出される。
【0012】
本発明の一実施形態に係るミストセパレータにおいて、前記カバーの内周面と前記固定羽根の外周端との間に隙間が存在することが好ましい。この構成によれば、カバーの内周面に沿って移動してきた液体ミストが、固定羽根に沿って内径側に移動するのが防止されるので、効率的に液体ミストを回収することができる。
【0013】
本発明の一実施形態に係るミストセパレータは、例えば、航空機用エンジンのアクセサリギヤボックス内に配置されて、オイルミストを含む空気からオイルを分離するものである。上記ミストセパレータは、オイルの分離性能、やミストセパレータ内外の圧力差を維持し、または向上させながら小型化することが可能になるので、搭載機器の小型化・軽量化が特に求められる航空機用エンジンに適している。
【発明の効果】
【0014】
本発明のミストセパレータによれば、遠心力を利用した高い分離性能を維持しながら、ミストセパレータ内外間の圧力差を小さく抑えることにより信頼性が向上し、かつコンパクトに構成することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
本発明のミストセパレータは、液体ミストを含むガスから液体ミストを分離するものであり、
図1に示す本発明の第1実施形態では、ミストセパレータ1が航空機用エンジンEのアクセサリギヤボックス(AGB)50内に配置されて、液体ミストであるオイルミストを含むガス(この例では空気)Aからオイルミストを分離するオイルミストセパレータとして構成されている。エンジンEはファンエンジンであり、AGB50はエンジン本体EBの前部に設けられたファン52を覆うファンケース54の外周部に取り付けられている。ファンケース54とAGB50の外周は、図示しないエンジンナセルにより覆われている。
【0018】
AGB50は発電機GE1,GE2や各種ポンプ56等の補機を駆動するための装置であり、複数の歯車が順次噛合するように並べて配置されている。
図2に示すように、第1実施形態において、ミストセパレータ1は、そのうちの1つの歯車の中空の回転軸3上に設けられている。回転軸3は、第1軸受5を介してAGBハウジングHに回転可能に支持されるとともに、第2軸受7を介して、AGBハウジングHに固定されたミストセパレータ1のハウジング9に回転可能に支持されて、例えば発電機GE1,GE2を駆動する。回転軸3は、エンジンEの回転軸心Cと平行に設定されている。この実施形態では、第1軸受5に支持されている側(
図2の左側)がエンジンEの前方となり、第2軸受7に支持されている側(
図2の右側)が後方となる。
【0019】
ミストセパレータ1は、主回転羽根11を有する半径流型のロータ13と、主固定羽根15を有するステータ17とを備えており、ロータ13とステータ17とが軸方向に並べて配置されることにより、主回転羽根11と主固定羽根15とが軸方向に並置されている。本実施形態では、主回転羽根11が前側に、主固定羽根15が後側に配置されている。
【0020】
より具体的には、ロータ13は、ダクト部材19と、複数の主回転羽根11と、主回転羽根11を支持する断面L字形状のリング部材20と、主
回転羽根11の前端に固定された環状の端板21とを備えている。ダクト部材19は、回転軸3の外周に嵌合する円筒状の嵌合部19aと、嵌合部19aの前端から径方向外方に突設された鍔状のフランジ部19bとを有しており、リング部材20は、円筒部20aとその前端から径方向内方に延びる鍔部20bとを有している。フランジ部19bと端板21との間には、AGB50からのガスAを主回転羽根11へ導入する導入路22が形成され、主回転羽根11の前端内径部の径方向内方に、ガスAの流入口23が形成されている。
【0021】
ロータ13は、フランジ部19bの内周部の前面を、回転軸3の外周面に形成された位置決め凸部3aに当接させた状態で、嵌合部19aの後端にリング部材20の鍔部20bを当て、回転軸3の外周の雄ネジ部に螺合した締付部材であるセルフロックナット25によって前方に締め付けることにより、ダクト部材19とリング部材20が回転軸3上に相対回転不能に固定されている。
【0022】
ロータ13の主回転羽根11は、
図3に示すように、回転軸3の回転方向Rに対して後方に傾斜するように湾曲している。ただし、主回転羽根11は、傾斜を有せず、径方向に沿って直線的に延びるように設けられてもよく、回転方向Rに対して前方に傾斜するように湾曲していてもよい。
【0023】
図2に示すように、ステータ17は、主固定羽根15の外周およびロータ13の外周を覆うカバー26を有している。カバー26は、ステータ17の主固定羽根15の外周を覆うほぼ円筒状の固定羽根外筒部26aと、固定羽根外筒部26aからロータ13側(前方)へ向かってテーパ状に縮径となるように延びる回転羽根外筒部26bとを有している。回転羽根外筒部26bの前端部は端板21の外周面との間に僅かな隙間を介して対向している。カバー26により、主回転羽根11から径方向外方へ流出した空気が主固定羽根15の外周側に導かれる。
【0024】
ステータ17の主固定羽根15は、
図4に模式的に示すように、ロータ回転方向Rに対して後方に傾斜するように湾曲する、周方向に等間隔に配置された複数の旋回羽根として設けられている。
図2のカバー26によって主固定羽根15の外周側に導かれた空気は、さらに主固定羽根15によって、外周から径方向内方へ、旋回により流速を低下させながら流動する。
【0025】
さらに、
図5に示すように、ステータ17の内径部の、各主固定羽根15の内径端部間には、径方向の開口が形成されており、これらの開口が、回転軸3の中空部へ空気を流出させる流出口27を形成する。一方、
図2の回転軸3には、中空部31と外部とを連通させる複数の連通口33が、周方向に等間隔に設けられている。ステータ17と回転軸3との軸方向の相対位置は、ステータ17の流出口27と回転軸3の連通口33の軸方向位置がほぼ重なるように設定されている。
【0026】
カバー26には、
図5に示すように、液体ミストが集合した回収液をカバー26外に排出するカバー排出口35が形成されている。より具体的には、カバー26の固定羽根外筒部26aの後方に、径方向の貫通孔が周方向に複数(この例では4つ)設けられており、これら貫通孔がカバー排出口35を形成している。なお、
図2に示すように、カバー26は、その内周面と主固定羽根15の外周端との間に隙間Gが存するように設けられている。
【0027】
ロータ13の主回転羽根11およびステータ17の主固定羽根15を収納するハウジング9におけるカバー26の径方向外方には、AGB50の内部のガスAをミストセパレータ1内に導入する導入口37が設けられている。導入口37は、ハウジング9とカバー26との間の導入空間39に、径方向に対して斜め方向からガスAを導入するように形成されている。また、ハウジング9には、液体ミストが集合した回収液を排出するハウジング排出口41が設けられている。
【0028】
次に、このように構成されたミストセパレータ1の作用について説明する。
【0029】
図1のAGB50内にはオイルミストを含む空気からなるガスAが存在しており、このガスAが
図2に示すように、ハウジング9の導入口37からハウジング9内に導入される。導入されたガスAは、
図2に示すように、ハウジング9とカバー26との間に形成された導入空間39に、径方向に対して斜めに導入され、さらに、ロータ13のフランジ部19bと端板21との間の導入路22を通って、流入口23へ導かれる。
【0030】
流入口23からカバー26の内部へ流入したガスAは、主回転羽根11の回転により生じる遠心力によって主回転羽根11から径方向外方へ流出する。このとき、ガスAに含まれていたオイルミストは、ガスAから分離されてカバー26の回転羽根外筒部26bの内周面に回収液として付着し、ロータ13の遠心力によって、回転羽根外筒部26bの内周面および固定羽根外筒部26aの内周面に沿って後方へ移動する。オイルミストの回収液は、カバー排出口35と、ハウジング9に設けたハウジング排出口41とを介して、ミストセパレータ1の外部へ排出される。外部へ排出された回収液は、例えば、AGB50内に設けられたスカベンジポンプを介して回収タンクへ回収される。
【0031】
カバー26の内周面と主固定羽根15の外周端との間には隙間Gが形成されているので、カバー26の内周面に沿って移動してきたオイルミストがそのまま主固定羽根15に沿って内径側に移動することなく、オイルミストがカバー排出口35から効率的に回収される。
【0032】
一方、主回転羽根11から径方向外方へ流出したガスAは、カバー26の内周面に沿って移動し、ステータ17の主固定羽根15へ流入する。このガスAは、主固定羽根15の傾斜に沿って旋回しながら、ステータ17の流出口27および回転軸3の連通口33を介して回転軸3の中空部31内へ流入し、発電機GE1のハウジング内を通過した後外部へ排出される。
【0033】
ステータ17の主固定羽根15は、ロータ13から流出してきたガスAの流速を低下させながら径方向内方へ流動させるので、ミストセパレータ1内外間の圧力差を小さく抑えることができる。したがって、ロータ13の遠心力を利用して高い分離性能を発揮しつつ、液体漏れが防止されることにより、
図1のAGB50とエンジンEとの連通路を通ってオイルがエンジンE内に侵入してエンジンEを損傷させるのを防止できる。さらには、ロータ13とステータ17とを軸方向に並べて配置したので、ミストセパレータ1の径方向寸法が小さくなり、ミストセパレータ1をコンパクトに構成できる。
【0034】
次に、
図6に示す本発明の第2実施形態に係るミストセパレータ1について説明する。なお、以下の本実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる点について詳述し、第1実施形態と同様の構成については説明を省く。このミストセパレータ1では、ステータ17が、主固定羽根15のほかに、ガスAの流路における主回転羽根11の上流に位置する導入側固定羽根63をさらに有している。
【0035】
具体的には、本実施形態におけるロータ13は、主回転羽根11を有する主ロータ部13aと、主ロータ部13aの回転軸3への嵌合部分の前後にそれぞれ当接するように配置された前方スペーサ13b、後方スペーサ13cとを有する。ロータ13は、前方スペーサ13bを、回転軸3の外周面に形成された位置決め凸部3aに当接させた状態で、後方スペーサ13cをセルフロックナット25によって前方に締め付けることにより、回転軸3上に相対回転不能に固定されている。主ロータ部13aは、前方から後方へ向かって拡径となる傾斜面部13aaを有しており、主回転羽根11は、傾斜面部13aaの外周面上に、前方から後方へ向かって拡径となる斜流型として形成されている。
【0036】
一方、ステータ17は、主固定羽根15を有する主固定羽根ユニットMUと、導入側固定羽根63を有する導入側固定羽根ユニットIUとで構成されている。導入側固定羽根ユニットIUは、主固定羽根ユニットMUの前方に配置されている。
【0037】
より詳細には、主固定羽根ユニットMUは、環状の支持板71と、支持板71上に支持された主固定羽根15とで形成されている。導入側固定羽根ユニットIUは、主固定羽根15および主回転羽根11の外周を覆うカバー26と、カバー26の回転羽根外筒部26bの前側に形成された導入側固定羽根63と、導入側固定羽根63の前方、すなわち軸方向における主回転羽根11と反対の側を覆う導入側固定羽根カバー73とからなる。導入側固定羽根63は、主固定羽根15の傾斜方向と同じ方向に傾斜する複数の旋回羽根として設けられている。
【0038】
このように主固定羽根ユニットMUと導入側固定羽根ユニットIUとからなるステータ17は、ボルトのようなねじ部材75によってハウジング9に共締めされることにより固定されている。具体的には、カバー26の内周側後端部に、内径側に突出する複数(この例では3個)のボス77が設けられており、各ボス77にはねじ孔79が設けられている。主固定羽根ユニットMUの支持板71およびハウジング9の内径側に突設された取付片80には、それぞれ、前記ねじ孔79に対応する位置にねじ挿通孔が設けられている。これらのねじ挿通孔に挿通したねじ部材75を、カバー26のボス77のねじ孔79に螺合させることにより、ステータ17がハウジング9に固定されている。
【0039】
また、
図7に示すように、本実施形態では、カバー26に設けられるカバー排出口35として、カバー26の周方向に等間隔に設けられた複数(この例ではボス77と同数の3つ)のメイン排出口35Aと、隣接するメイン排出口35A,35A間に等間隔に設けられた、メイン排出口35Aよりも小さい開口面積を有するサブ排出口35Bとを有している。
【0040】
より詳細には、カバー26の周方向において、ガスAの導入口37からのガスAの旋回方向の1番目に位置するメイン排出口35A
1と2番目に位置するメイン排出口35A
2との間、および2番目に位置するメイン排出口35A
2と3番目に位置するメイン排出口35A
3との間に、それぞれ複数(この例では各3つ)のサブ排出口35Bが周方向に等間隔に配設されている。換言すれば、周方向に等間隔に配置された3つのメイン排出口35A
1〜35A
3の間の3つの区画のうち、上部に位置する1番目と3番目のメイン排出口35A
1,35A
3間の区画を除く部分にサブ排出口35Bが配設されている。また、各メイン排出口35Aは、ガスAの旋回方向Sにおけるボス77の上流側に近接して設けられている。
【0041】
カバー26にカバー排出口35を設けることにより、オイルミストの分離を効果的に行うことができるが、一方でカバー排出口35を設けることにより圧力損失が増大するので、効率的にオイルミストを分離できるようにカバー排出口35を配置する必要がある。本実施形態では、ボス77によってガスAが圧縮されて圧力が高くなるボス77の上流部に、開口面積の比較的大きいメイン排出口35Aを設け、これらメイン排出口の間に開口面積の小さいサブ排出口35Bを設けることにより、圧力損失の増大を抑制しながらオイルを効果的に分離することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の導入側固定羽根カバー73には、オイルミストが集合した回収液を導入側固定羽根カバー73の外部に排出する排出スリット81が設けられている。排出スリット81は、環状の導入側固定羽根カバー73の径方向に延びる貫通孔として形成されている。本実施形態の導入側固定羽根カバー73において、複数(この例では7つ)の排出スリット81が周方向の一定の領域内に、周方向に等間隔に設けられている。
【0043】
このように、ガスAの導入側に追加で設けた固定羽根のカバー73にも排出スリット81を形成することにより、オイルをより効果的に分離することが可能となる。もっとも、排出スリット81の数が多いと圧力損失が増大することになるので、装置の効率とオイル分離性能とを考慮し、効率的にオイルを排出するために、本実施形態では特定の領域に排出スリット81を設けている。
【0044】
すなわち、導入側固定羽根
63内部において、ガスAの導入口37からガスAの流れ方向に沿って遠い領域では圧力が低く、導入側固定羽根カバー73に排出スリット81を設けても外部から空気が流入するのでオイルを効果的に排出できない。したがって、本実施形態では、導入側固定羽根カバー73の周方向において、ガスAの導入口37からガスAの流れ方向における上流側半分の領域、つまりガスAの導入口から上流側180°以内の領域に、複数(この例では7つ)の排出スリット81が設けられている。さらに詳細には、導入口37からガスAの流れ方向に45°〜180°の領域内に、7つの排出スリット81が等間隔に設けられている。排出スリット81を、このように導入口37から近く、導入側固定羽根73
カバー内部の圧力が高い領域にのみ設けることにより、圧力損失の増大を抑制しながらオイルを効果的に分離することが可能となる。
【0045】
また、カバー26の外周面におけるカバー排出口35と導入側固定羽根
63との間の部分には、外方に突出するカバーフランジ85が設けられている。具体的には、図示の例では、カバーフランジ85は、ほぼ円筒状の固定羽根外筒部26aとテーパ状の回転羽根外筒部26bとの境界近傍の軸方向位置にカバー26の外周面の全周に渡って突設されている。
【0046】
このカバーフランジ85を設けたことにより、カバー排出口35からカバー26の外部へ排出されたオイルが導入側固定羽根
63側へ流れることが防止され、再度ミストセパレータ内に流入することなく、確実に外部へ排出される。なお、カバーフランジ85を設ける軸方向位置は、図示の例に限らず、カバー排出口35と導入側固定羽根73との間であればよい。また、本実施形態では、カバーフランジ85は全周に渡って同一の突出高さを有する円環状に形成されているが、カバー排出口35が設けられる円周方向位置に応じて突出高さが異なるように形成してもよい。
【0047】
次に、
図8に示す本発明の第3実施形態に係るミストセパレータ1について説明する。なお、以下の本実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる点について詳述し、第1実施形態と同様の構成については説明を省く。このミストセパレータ1では、ロータ13が、ガスAの流路における主回転羽根11の上流に位置する導入側回転羽根91を有しており、ステータ17のカバー26が、導入側回転羽根91の内径側に位置する導入側固定羽根63を有している。また、ロータ13は、さらに、ガスAの流路における主固定羽根15の下流に位置する導出側回転羽根95を有している。
【0048】
詳細には、本実施形態におけるロータ13は、主回転羽根11を有する主ロータ部13aと、導入側回転羽根91を有する導入側ロータ部13dと、導出側回転羽根95を有する導出側ロータ部13eとから構成されている。主ロータ部13aは、前方から後方へ向かって拡径となる円錐面部97と、この円錐面部97から後方内径側に斜めに突設された支持部99とを有しており、円錐面部97の前方内径端部および支持部99の後方内径端部が回転軸3の外周面に嵌合している。主回転羽根11は、円錐面部97の外周面上に、前方から後方へ向かって拡径となる斜流型として形成されている。この主回転羽根11の前方に、前記導入側固定羽根63を有する導入側ロータ部13dが配置され、主回転羽根11の後方に、前記導出側回転羽根95を有する導出側ロータ部13eが配置されている。
【0049】
導入側ロータ部13dは、回転軸3の外周面に嵌合する嵌合部101と、嵌合部101の前端からフランジ状に突設されたフランジ部103と、フランジ部103の外径端から後方に突設された円筒状部
105を有している。導入側回転羽根91は、導入側ロータ部13dのフランジ部103の外径側の部分および円筒状部
105に支持されて、導入側ロータ部13dの外径側に設けられており、カバー26の回転羽根外筒部26bの前方部分の径方向外方に位置している。導入側ロータ部13dの円筒状部95には、導入側回転羽根91で回収されたオイルの回収液を外部へ排出する導入側排出口107が円周方向の複数個所に設けられている。また、カバー26の回転羽根外筒部26bの前方端部には導入側固定羽根63が設けられている。すなわち、導入側固定羽根63は、ガスAの流路における導入側回転羽根91と主回転羽根11との間(導入側回転羽根91の下流であって、主回転羽根11の上流)に位置している。導入側固定羽根63は、主固定羽根15と同様、周方向に等間隔に配置された複数の旋回羽根として設けられている。
【0050】
主ロータ部13aの支持部99は、ガスAを回転軸3の中空部31に導出する導出孔111を円周方向の複数個所に有しており、ガスAの流路の一部を形成している。導出側回転羽根95は、主ロータ部13aの支持部99とステータ17の主固定羽根15との間(主固定羽根15の下流であって、支持部99の導出孔111の上流)に位置している。主ロータ部13aの円錐面部97の後端には、主回転羽根11から流出したガスAを主固定羽根15に導く導入空間と導出側回転羽根95の設置空間とを区画する環状の区隔壁113が設けられており、円錐面部97と区隔壁113との境界部に、導出側回転羽根95で分離されたオイルミストの回収液を上記導入空間へ排出する導出側排出口115が円周方向に複数設けられている。
【0051】
なお、ロータ13の主ロータ部13a,導入側ロータ部13dおよび導出側ロータ部13eは、第1実施形態と同様、セルフロックナット25によって回転軸3に相対回転不能に取り付けられている。一方、ステータ17は、別体に形成された主固定羽根部17aとカバー部17bが、ボルトのようなねじ部材75によってハウジング9に共締めされることにより固定されている。
【0052】
本実施形態に係るミストセパレータ1によれば、主回転羽根11に追加して、導入側回転羽根91および導出側回転羽根95を設けたことにより、分離性能が一層向上するが、導入側にも固定羽根63を設けているので、ミストセパレータ内外間の圧力差を小さく抑えることができる。なお、導入側回転羽根91(および導入側固定羽根63)と導出側回転羽根95の、いずれか一方のみを設けてもよい。
【0053】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。