(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の長波長を有する第1の光を発する長波長発光素子と、この長波長発光素子から発せられる前記第1の光が煙に照射されて生じた第1の散乱光を受光する長波長受光素子とを、第1散乱角をもって配置した第1散乱光検出部と;
所定の短波長を有する第2の光を発する短波長発光素子と、この短波長発光素子から発せられる前記第2の光が前記煙に照射されて生じた第2の散乱光を受光する短波長受光素子とを、前記第1散乱角とは異なる第2散乱角をもって配置した第2散乱光検出部と;前記長波長発光素子及び前記短波長発光素子を同時に発光させる発光制御部と;
前記長波長受光素子からの第1長波長受光信号及び前記短波長受光素子からの第1短波長受光信号を取得する第1検出処理部と;
前記長波長受光素子からの第2長波長受光信号及び前記短波長受光素子からの第2短波長受光信号を取得する第2検出処理部と;
前記第1長波長受光信号と、前記第2長波長受光信号と、前記第1短波長受光信号と、前記第2短波長受光信号とに基づいて、前記煙の種別を判断する煙種別判断部と;
を備えることを特徴とする煙検出器。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の煙検出器の各実施形態を以下に説明するが、説明に際しては、同一構成要素には同一符号を付してその重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1A及び
図1Bは、本発明の第1実施形態に係る煙検出器の構造を示す図であり、
図1Aが
図1BのA−A断面図を、
図1Bが下側から見た下面図を示している。
【0023】
図1Aに示すように、本実施形態の煙検出器は、その露出面がフラットであり、検煙空間を外部に形成するいわゆるフラット型煙検出器である。本実施形態のフラット型煙検出器は、感知器本体10の内部下側にホルダ12を収納している。ホルダ12の下側には、フラットな露出面12aが形成されている。そして、この露出面12aに形成された開口21a〜21dを有する各収納穴内に、2組の、発光素子及び受光素子からなる散乱光検出部を設けている。
【0024】
ホルダ12の露出面12aは、薄い透光性カバー24で覆われている。これにより、開口21a〜21dを被覆して、それらの内部に粉塵等が入らないようにしている。ホルダ12の裏側(上側)には回路基板26が組み込まれている。この回路基板26には、散乱光式の煙検出方法に基づいて火災発生の有無及び煙の種類を判断するための感知器回路が実装されている。
【0025】
本実施形態のフラット型感知器には、長波長の光による散乱光を検出する第1散乱光検出部と、短波長の光による散乱光を検出する第2散乱光検出部とが設けられている。
第1散乱光検出部は、例えば870nmの長波長の光を発する長波長発光素子である赤外LED14と、この赤外LED14から発せられる光が煙に照射されて生じた散乱光を受光するフォトダイオードを用いた長波長受光素子16とを備えている。赤外LED14及び長波長受光素子16は、第1散乱角θ1(例えばθ1=40°)をもって配置されている。
【0026】
第2散乱光検出部は、例えば470nmの短波長の光を発する短波長発光素子としての青色LED18と、この青色LED18から発せられる光が煙に照射されて生じた散乱光を受光する短波長受光素子20とを備えている。青色LED18及び短波長受光素子20は、上記第1散乱角θ1=40°とは異なる第2散乱角θ2(例えばθ2=50°)をもって配置されている。
【0027】
煙の粒子径が比較的小さい、例えば綿灯芯の発煙燃焼の場合には、青色LED18による例えば470nmといった短波長の光による散乱光成分が相対的に多くなる。これに対し、煙の粒子径が比較的大きな、水蒸気や濾紙による発煙燃焼の場合には、逆に、赤外LED14による例えば870nmといった長波長の光による散乱光成分が相対的に多くなる。
【0028】
煙による散乱光の検出は、例えば前記第1散乱光検出部を例にとると、まず、ホルダ12内に設けられている赤外LED14から発せられる長波長の光は、開口21a及び透明カバー24を介して、露出面12aの下側にある外部検煙空間22に照射される。そして、火災による煙が外部検煙空間22内に入り込むと、赤外LED14から発せられた光が煙粒子に照射されて散乱し、この散乱光が透光性カバー24及び開口21bを介して、ホルダ12内に設けられた長波長受光素子16に入射する。その結果、長波長受光素子16は、長波長の光が煙粒子に照射されたことにより発生する散乱光の受光に応じた受光信号を出力する。
【0029】
上記動作内容は、青色LED18及び短波長受光素子20を備えた前記第2散乱光検出部についても同様であり、
図1Bから明らかなように、第1散乱光検出部と第2散乱光検出部は、平面視した場合の光軸方向が、露出面12aの中心軸線CLにおいて交差するように所定角度ずらして配置されている。
【0030】
上記構成を有する本実施形態のフラット型煙検出器では、感知器本体10に従来のようなラビリンス構造を持つ検煙部を設けておらず、代わりに、赤外LED14と、青色LED18と、長波長受光素子16と、短波長受光素子20とをホルダ12内に埋め込んで収納するとともに、開口21a〜21dを、透光性カバー24を介して外部に露出させている。その結果、ラビリンス構造の検煙部を設けずに済む分、このフラット型煙検出器の高さ寸法を小さくすることができるので、従来に比べ大幅な薄型化を達成している。
【0031】
図2は、本実施形態のフラット型煙検出器の外観を示す斜視図である。
図1A〜
図2に示すように、感知器本体10は、滑らかに湾曲した皿状の円盤形状を持ち、その中央にフラットな露出面12aが設けられている。そして、この露出面12aに、
図1A及び
図1Bに示した赤外LED14と、青色LED18と、長波長受光素子16と、短波長受光素子20とを内部に収納した開口21a〜21dの開口端部が形成されている。
【0032】
図3A〜
図3Bは、本実施形態のフラット型煙検出器における散乱光検出構造を模式的に示した説明図である。
図3Aは、前記第1散乱光検出部及び前記第2散乱光検出部を、露出面12aと平行な平面空間上に重ねて配置した状態を示している。
ここで、第1散乱光検出部は、発光点P1と、検出点Q1と、受光点R1とを持つ破線の三角形で示されている。発光点P1と検出点Q1とを結ぶ直線の延長線と、検出点Q1と受光点R1とを結ぶ直線とがなす角度である第1構成角θ1は、例えばθ1=40°とされている。
また、第2散乱光検出部は、発光点P2と、検出点Q2と、受光点R2とを持つ実線の三角形で示されている。発光点P2と検出点Q2とを結ぶ直線の延長線と、検出点Q2と受光点R2とを結ぶ直線とがなす角度である第2散乱角θ2は、例えばθ2=50°とされている。
【0033】
これら第1散乱光検出部及び第2散乱光検出部を、実際に
図1A〜
図2に示すように配置する場合、発光点P1,P2は同一位置に配置することができず、また受光点R1,R2も同一位置に配置することができないため、
図3Bに示すように、水平回り(前記中心軸線CL回り)に所定角度回動させてずらした位置に配置することになる。
【0034】
更に、第1散乱光検出部及び第2散乱光検出部の検出点Q1,Q2を一致させるために、
図3Cに示すように、例えば露出面12aに対してより高い位置にある検出点Q2を持つ実線の第2散乱光検出部側の底辺部分を、中心位置(前記中心軸線CLの位置)から水平方向に平行移動させてずらし、さらに、この状態で検出点Q2を検出点Q1側に向けて倒すことで、検出点Q1,Q2の位置を一致させることができる。
【0035】
このようにして2つの検出点Q1,Q2を一致させることにより、発光点P1,P2から光を同時に発光させたとき、これら光を同一位置にある煙に当ててそれぞれの散乱光を生じさせ、さらにはこれら散乱光を受光点R1,R2で受光することが可能となる。
【0036】
図4は、本実施形態における前記感知器回路のブロック図を示す。この
図4に示すように、本実施形態の感知器回路は、CPUを用いた信号処理部28と、この信号処理部28に接続された、長波長発光駆動回路30と、短波長発光駆動回路32と、長波長増幅回路34と、短波長増幅回路36と、記憶部38と、発振部40とを備えている。
【0037】
長波長発光駆動回路30は、長波長発光素子である赤外LED14を発光駆動する。長波長増幅回路34は、煙による長波長の散乱光を長波長受光素子16で受光した際にこの長波長受光素子16から送り出される長波長受光信号PD11を、信号処理部28に入力する。
【0038】
短波長発光駆動回路32は、短波長発光素子である青色LED18を発光駆動する。短波長増幅回路36は、煙による短波長の散乱光を短波長受光素子20で受光した際にこの短波長受光素子20から送り出される受光信号を増幅して短波長受光信号PD12を生成し、これを信号処理部28に入力する。
【0039】
信号処理部28には、CPUによるプログラムの実行により実現される機能として、第1検出処理部42と、第2検出処理部44と、煙種別判断部46と、閾値設定部48と、火災判断部50とが設けられている。
【0040】
第1検出処理部42は、長波長発光駆動回路30及び短波長発光駆動回路32に対して、発振部40で発信されたクロックに基づいて生成した発光パルスを同時に出力することで、赤外LED14及び青色LED18を同一電流値の発光電流により同時に発光させる。長波長発光駆動回路30及び短波長発光駆動回路32による発光駆動は、例えば1秒周期で間欠的に行われる。1回の発光駆動は、例えば3kHzの発光パルスを5回連続して出力することで行われる。
【0041】
この第1検出処理部42によって赤外LED14及び青色LED18を同一発光電流により同時発光させることにより、長波長受光素子16及び短波長受光素子20のそれぞれが煙に照射されて生じた散乱光成分を受光する。そして、長波長受光素子16から送信される受光信号は、長波長増幅回路34で増幅されて長波長受光信号PD11として第1検出処理部42に入力される。また、短波長受光素子20から送信される受光信号は、短波長増幅回路36で増幅されて短波長受光信号PD12となり、同じく第1検出処理部42に入力される。
【0042】
第1検出処理部42による長波長及び短波長の光の同時発光駆動で出力された長波長受光信号PD11及び短波長受光信号PD12を用いることで、煙種別判断部46は、煙の種類を推定することが可能である。しかしながら、1回の推定判断では煙の種類を誤る可能性があることから、本実施形態では、再検証のために第2検出処理部44による検出処理を実行する。
【0043】
すなわち、第2検出処理部44は、赤外LED14及び青色LED18のいずれか一方の発光電流を他方に対して異なるように変化させた上で同時発光させ、長波長受光信号PD21及び短波長受光信号PD22を取得する。本実施形態では、第2検出処理部44は、赤外LED14の発光電流をそのままにする一方、青色LED18の発光電流を赤外LED14の発光電流よりも低くして同時発光させることで、検証のための長波長受光信号PD21及び短波長受光信号PD22を取得している。
【0044】
煙種別判断部46は、第1検出処理部42が取得した長波長受光信号PD11及び短波長受光信号PD12と、第2検出処理部44が取得した長波長受光信号PD21及び短波長受光信号PD22とに基づき、長波長受光信号の割合が多ければ「粒子径の大きな煙」と判断し、短波長受光信号の割合が多ければ「粒子径の小さな煙」と判断する。
【0045】
すなわち、煙種別判断部46による煙の種別判断は、第1検出処理部42が取得した長波長受光信号PD11の出力を短波長受光信号PD12の出力で除算した出力比であるRaを、Ra=PD11/PD12として求める。同様に、第2検出処理部44が取得した、例えば青色LED18の発光電流を減少させた場合における、長波長受光信号PD21の出力を短波長受光信号PD22の出力で除算した出力比であるRbを、Rb=PD21/PD22として求める。そして、このようにして求めた2つの出力比Ra,Rbに基づいて煙種別を判断する。
【0046】
火災判断部50は、第1検出処理部44が取得した長波長受光信号PD11又は短波長受光信号PD12の少なくともいずれか一方が所定の火災判断閾値を超えた場合に火災発生と判断し、火災検出信号を図示されない受信機などに送出する。
【0047】
また、本実施形態のフラット型煙検出器では、
図1A及び
図1Bに示した前記外部検煙空間22内の煙に光を照射して生じた散乱光を検出するためにフラット型としたが、このフラット型の採用に伴う外乱光の影響を抑制除去するために、第1検出処理部42及び第2検出処理部44のそれぞれに、外乱光処理部45が設けられている。この外乱光処理部45については後述する。
【0048】
図5A及び
図5Bは、
図4に示した前記煙種別判断部46による判断処理で用いる、煙の種類に対する長波長散乱光成分及び短波長散乱光成分の影響を示した一覧表である。
【0049】
図5Aは、相対的に粒子径が小さい煙である、綿灯芯の燃焼発煙に対する長波長受光量PD1と、短波長受光量PD2と、これらの出力比PD1/PD2を示している。この
図5Aには、青色LED18及び赤外LED14の発光電流が同一の場合と、青色LED18の発光電流を赤外LED14の発光電流よりも減少させた場合と、赤外LED14の発光電流を青色LED18の発光電流よりも減少させた場合と、が示されている。
【0050】
図5Aに示すように、粒子径の小さい、綿灯芯の燃焼発煙による煙の場合には、青色LED18による例えば470nmといった短波長の光による散乱光成分(短波長受光量PD2)が多くなる。よって、発光電流同一の場合、綿灯芯の燃焼発煙による煙に伴う散乱光成分が多くなると、青色LED18の発光に伴う短波長受光量PD12が大きく、赤外LED14の発光に伴う長波長受光量PD11が小さくなる。したがって、この場合の出力比Ra=PD11/PD12は、1未満の値を取ることになる。
【0051】
次に、再検証のために青色LED18の発光電流を減少させた上で同時発光させた場合、赤外LED14による長波長受光量PD1にほとんど変化がなく、発光電流同一の場合と同じになる一方、青色LED14による短波長受光量PD2では、発光電流の減少に伴う光量の低下で散乱光成分が減少し、短波長受光量PD2が小さい値に変化する。この結果、出力比Rb=PD21/PD22は、発光電流同一の場合に1未満であったものが、分母側の値が小さくなることで1以上の値に変化する。
【0052】
したがって、発光電流同一により赤外LED14及び青色LED18を同時発光させたときの出力比Raが1未満となり、なおかつ次に青色LED18の発光電流を減少させたときの出力比Rbが1以上となる検出結果が得られた場合(即ち、Ra<1かつRb≧1の関係が得られた場合)には、綿灯芯の燃焼発煙などによる粒子径の小さい煙であると判断することができる。
【0053】
また、再検証のために、赤外LED14の発光電流を減少させて同時発光させてもよい。この場合、粒子径の小さな綿灯芯の燃焼発煙により生じた煙により長波長光を低下させても、粒子径が小さいために短波長の散乱光成分への影響が少ないことから、長波長受光量及び短波長受光量共に発光電流同一の際とほとんど変化がなく、出力比Rbは同じく1未満の値となる。したがって、発光電流同一での出力比Raが1未満で、なおかつ、再検証のための赤外LED14の減少による同時発光での出力比Rbが同じく1未満であった場合(即ち、Ra<1かつRb<1の場合)には、綿灯芯の燃焼発煙などによる粒子径の小さな煙と判断することができる。
【0054】
図5Bは、逆に、濾紙の燃焼発煙のように粒子径の大きな煙に対する長波長受光量PD1と、短波長受光量PD2と、出力比PD1/PD2と、の関係を示している。粒子径の大きな例えば濾紙の燃焼発煙による煙については、逆に、赤外LED14による例えば870nmといった長波長の光による散乱光成分が大きくなる。
【0055】
したがって、濾紙の燃焼発煙により生じた煙の場合には、発光電流同一による同時発光で得られた長波長受光信号PD1は相対的に大きく、かつ短波長受光信号PD2は相対的に小さい関係にあり、このときの出力比Raは1以上の値となる。
【0056】
次に、再検証のために、例えば青色LED18の発光電流を減少させて同時発光させたとすると、粒子径の大きな濾紙の燃焼発煙による煙では、短波長の光を減少させても散乱光に対する影響がほとんどないため、発光電流同一の場合と同様に、長波長受光量及び短波長受光量のそれぞれ大小関係を維持しており、そのときの出力比Rbは、発光電流同一の場合と同様に1以上となる。
【0057】
したがって、発光電流同一で同時発光させて得られた出力比Raが1以上でかつ、再検証のために青色LED18の発光電流を減少して同時発光させて得られた出力比Rbも同じく1以上であった場合(即ち、Ra≧1かつRb≧1の関係が得られた場合)には、濾紙の燃焼発煙や水蒸気などによる粒子径の大きな煙であると判断することができる。
【0058】
また、再検証に際しては、赤外LED14の発光電流を減少させて行うようにしてもよい。この場合には、長波長光の減少により、長波長受光信号PD1における散乱光の受光成分が減少して受光量が小さい値に変化する。したがって、この場合の出力比Rbは、発光電流同一の際の1以上から、再検証の際には1未満に変化する。
【0059】
このため、発光電流同一で同時発光させた場合の出力比Raが1以上でかつ、再検証のために赤外LED14の発光電流を減少させて同時発光させた場合の出力比Rbが1未満であった場合(即ち、Ra≧1かつRb<1の関係が得られた場合)には、濾紙の燃焼発煙などによる、粒子径が大きな煙と判断することができる。
【0060】
図6は、再検証に際して、青色LED18の発光電流を減少させる前記信号処理部28(
図4参照)による煙種別判断処理を示すフローチャートである。
この
図6に示すように、まずステップS1で処理回数を示すカウンタi,jをそれぞれ0にリセットした後、ステップS2で赤外LED14及び青色LED18を同一発光電流で同時に発光させる。
【0061】
続くステップS3で、ステップS2での同時発光に伴う散乱光を受光することにより得られた長波長受光量PD11及び短波長受光量PD12を読み込む。
続くステップS4では、例えば長波長受光量PD11が、予め定めた、火災発生の恐れを示すプリアラームに相当する閾値を超えたか否かをチェックする。
【0062】
ステップS4の結果、長波長受光量PD11がプリアラームに相当する閾値を超えていた場合には、ステップS5に進み、ステップS3で読み込んだ長波長受光量PD11及び短波長受光量PD12に基づき、出力比RaをRa=PD11/PD12として算出する。
【0063】
続くステップS6では、算出した出力比Raが1未満か否かをチェックする。その結果が1未満であれば、ステップS7に進んで、
図5Aに示した綿灯芯の燃焼発煙による粒子径の小さな煙であると推定する。一方、出力比Raが1以上であった場合には、ステップS15に進み、
図5Bに示したような濾紙の燃焼発煙などの粒子径の大きな煙であると推定する。
【0064】
ステップS7での煙種別の推定が済んだ後、ステップS8に進んで再検証のために青色LED18の発光電流を減少して同時発光を行わせる。
そして、ステップS9で、前記ステップS3と同様に、長波長受光量PD21及び短波長受光量PD22を読み込む。
【0065】
続くステップS10では、出力比RbをRb=PD1/PD2として算出する。
続くステップS11では、出力比Rbが1以上か否かをチェックする。
その結果が1以上であればステップS12に進んでカウンタiを+1とする。
続くステップS13では、i=5か否かをチェックし、i=5に達するまで、ステップS2からの処理を繰り返す。そして、i=5に達したら、ステップS14に進み、綿灯芯の燃焼発煙などによる粒子径の小さな煙であると断定する。即ち、ステップS7の推定結果が、ステップS14で正しいものと断定される。
【0066】
一方、ステップS6で出力比Raが1以上と判断されてかつ、ステップS15で粒子径の大きな煙であると推定された場合にも、前記ステップS7〜S14と同様のステップS16〜S22の処理を行う。すなわち、同じく青色LED18の発光電流を減少させて同時発光させ、検証のための長波長受光量PD21と短波長受光量PD22を読み込み、出力比Rb=PD21/PD22を求める。そして、ステップS19で出力比Rbが1以上であれば、ステップS20に進んでカウンタjを+1とし、ステップS21でj=5に達するまで、ステップS1〜S6,S15〜S20の処理を繰り返す。そして、カウンタj=5に達したら、ステップS22に進み、濾紙などの粒子径の大きな煙と断定する。即ち、ステップS15で推定した粒子径の大きな煙との推定結果を、ステップS22で正しいものとして断定する。
【0067】
[第2実施形態]
本発明の煙検出器の第2実施形態を以下に説明するが、以下の説明では、主に上記第1実施形態との相違点について説明する。
図7は、再検証で赤外LED14の発光電流を減少させた場合の、
図4に示した前記信号処理部28による煙種別判断処理を示すフローチャートである。
この
図7の処理におけるステップS31〜S52は、
図6に示したステップS1〜S22に対応している。ただし、この
図7に示す本実施形態の処理は、ステップS38,S46で青色LED18ではなく赤外LED14の発光電流を減少して同時発光させている点と、ステップS41,S49で再検証の際に求めた出力比Rbが1未満となる条件を判別している点と、が上記第1実施形態とは相違する。
【0068】
具体的には、ステップS31〜S44の処理により、
図5Aに示した発光電流同一の際の出力比の条件と、再検証の際に赤外LED14の発光電流を減少させた際の出力比Rbの条件との成立を判断している。なお、ステップS37での推定を、ステップS44で、綿灯芯などの燃焼発煙による粒子径の小さな煙であると断定している。
【0069】
また、ステップS31〜S36の処理と、ステップS45〜S52の処理とにより、
図5Bで示した発光電流同一の際の出力比Raが1以上となる条件の成立と、再検証の際に赤外LED14の発光電流を減少させた際の出力比Rbが1未満となる条件との成立を判断している。なお、ステップS45での推定を、ステップS52で、濾紙などの燃焼発煙による粒子径の大きな煙であると断定している。
なお、ここに述べた出力比等の数値は説明の簡単のために仮想的な条件を設定して例示したものであり、各デバイスの特性や受光部の増幅率、その他の条件によって変わり得る。この点については以下も同様である。
【0070】
[第3実施形態]
本発明の煙検出器の第3実施形態を以下に説明するが、以下の説明では、主に上記第1実施形態との相違点について説明する。
図8は、出力比変化率を判断して再検証で青色LED18の発光電流を減少させる、
図4に示した前記信号処理部28による煙種別判断処理を示すフローチャートである。
【0071】
この
図8のステップS61〜S68は、
図6に示したステップS6及びステップS7を除く、ステップS1〜S10と同じ処理である。すなわち、赤外LED14及び青色LED18を同一発光電流により同時発光させてから出力比Raを算出し、また再検証のために青色LED18の電流を減少させて同時発光させたときの出力比Rbを算出している。
【0072】
このようにしてステップS65及びS68で出力比Ra,Rbが求められた後、ステップS69に進んで出力比Raから出力比Rbへの変化率を求め、さらにはこの変化率が閾値以上か否かを判定している。
【0073】
ここで、出力比の変化率は
図5A及び
図5Bで説明したように、次のようになる。
(1)綿灯芯の燃焼発煙などによる粒子径の小さな煙では、再検証のために青色LED18の発光電流を減少させた場合、出力比Raから出力比Rbへの変化率は大きい。
(2)濾紙の燃焼発煙による煙などの粒子径の大きな煙では、発光電流が同一の場合の出力比Raから青色LED18の発光電流を減少したときの出力比Rbへの変化率は小さい。
【0074】
したがって、
図8のステップS69で出力比の変化率が閾値以上と大きい場合には、ステップS70に進んでカウンタiを+1とした後、ステップS71に進む。ステップS71では、カウンタi=5に達するまで、ステップS62からS70までの処理を繰り返し、i=5に達したら、ステップS72に進んで前記(1)の判断結果に従い、綿灯芯の燃焼発煙などによる粒子径の小さな煙であると判断する。
【0075】
一方、ステップS69で出力比の変化率が閾値未満であった場合には、ステップS73でカウンタjを+1とした後、ステップS74に進んでj=5に達するまで、ステップS62からS73までの処理を繰り返す。そして、ステップS74でj=5に達したら、ステップS75に進み、前記(2)式に従い、濾紙の燃焼発煙などによる粒子径の大きな煙であると判断する。
【0076】
[第4実施形態]
本発明の煙検出器の第4実施形態を以下に説明するが、以下の説明では、主に上記第3実施形態との相違点について説明する。
図9は、出力変化率を判断し、再検証で赤外LED14の発光電流を減少させる、
図4に示した前記信号処理部28による煙種別判断処理を示すフローチャートである。
【0077】
図9におけるステップS81〜S95の処理は、
図8で示したステップS61〜S75の処理に対応している。ただし、本実施形態は、ステップS86で再検証する際に青色LED18ではなく赤外LED14の発光電流を減少させて同時発光させている点と、ステップS89における出力比Raから出力比Rbへの変化率の閾値との比較処理の点とが、上記第3実施形態と相違している。
【0078】
図9に示す、再検証の際に赤外LED14の発光電流を減少させる場合については、
図5A及び
図5Bに示した再検証時の赤外LED14の発光電流減少のときの出力比Rbの関係から、次のように判断することができる。
(1)綿灯芯の燃焼発煙などによる粒子径の小さな煙については、発光電流同一時の出力比Raから赤外LED14の発光電流減少時の出力比Rbへの変化率が小さい。
(2)濾紙の燃焼発煙による煙や水蒸気などの粒子径の大きな煙については、発光電流同一時の出力比Raから赤外LED14の発光電流減少による出力比Rbへの変化率が大きい。
【0079】
したがって、
図9のステップS89では、発光電流を同一として求めたステップS85の出力比Raから、ステップS86で赤外LED14の発光電流を減少させて同時発光により求めるステップS88で算出した出力比Rbへの出力変化率が閾値以上であるか否かが判定される。その結果、出力変化率が閾値未満であった場合には、前記(1)式の条件が成立したものとして、ステップS90に進んでカウンタiを+1とし、ステップS91でi=5に達するまで、ステップS82からステップS90までの処理を繰り返した後、ステップS92に進んで、綿灯芯の燃焼発煙などによる粒子径の小さな煙であると判断する。
【0080】
一方、ステップS89で、出力比Raから出力比Rbへの出力変化率が閾値以上であった場合には、前記(2)式の条件が成立したものとして、ステップS93に進んでカウンタjを+1とし、ステップS94でj=5に達するまで、ステップS82からステップS93までの処理を繰り返した後、ステップS95に進んで、濾紙の燃焼発煙による煙などの粒子径の大きな煙であると判断する。
【0081】
このように、上記第3実施形態の
図8や上記第4実施形態の
図9に示した、出力比の変化率に基づいた煙種別の判断では、
図6及び
図7に示した出力比Ra,Rbが1以上か1未満かを比較判断して煙種別を判断している場合に比べて、比較判断処理を、より簡単に行うことができる。
【0082】
[第5実施形態]
本発明の煙検出器の第5実施形態を以下に説明するが、以下の説明では、主に上記第1実施形態との相違点について説明する。
図10は、再検証をせずに煙種別を判断する本実施形態のブロック図である。
図10に示すように、本実施形態の感知器回路は、CPUを用いた信号処理部28を備え、この信号処理部28に対して、
図4に示した上記第1実施形態と同様に、長波長発光駆動回路30と、短波長発光駆動回路32と、長波長増幅回路34と、短波長増幅回路36と、記憶部38と、発信部40とが接続されている。
【0083】
長波長発光駆動回路30及び短波長発光駆動回路32は、赤外LED14及び青色LED18のそれぞれを発光駆動する。また、長波長増幅回路34及び短波長増幅回路36は、長波長受光素子16及び短波長受光素子20からの受光信号を増幅して、信号処理部28に対して長波長受光信号PD1及び短波長受光信号PD2を出力する。
【0084】
信号処理部28には、CPUによるプログラムの実行で実現される機能として、検出処理部52と、煙種別判断部54と、閾値設定部56と、火災判断部50とが設けられている。
【0085】
検出処理部52は、赤外LED14及び青色LED18を同一発光電流により同時発光させて、長波長受光素子16及び短波長受光素子20それぞれからの受光信号を長波長増幅回路34及び短波長増幅回路36で増幅して得られた、長波長受光信号PD1及び短波長受光信号PD2を取得する。煙種別判断部54は、長波長受光信号PD1及び短波長受光信号PD2に基づいて煙の種類を判断する。
【0086】
煙種別判断部54は、予め判明している1または複数種類の煙について取得された長波長受光信号と短波長受光信号との出力比を、閾値設定部56に設定している。そして、煙種別判断部54は、前記閾値の設定を受けて、未知の煙について検出処理部52で取得された長波長受光信号PD1と短波長受光信号PD2との出力比Ra=PD1/PD2を算出し、閾値設定部56により設定された前記閾値と比較して煙の種類を判定する。
【0087】
図11A〜
図11Cは、本実施形態で、赤外LED14に対する青色LED18の相対的な配置位置をずらした場合の散乱光検出構造を示している。
図11Aは、赤外LED14及び長波長受光素子16を備えた第1散乱光検出部と、青色LED18及び短波長受光素子20を備えた第2散乱光検出部とを備えた構造において、発光側の赤外LED14及び青色LED18をほぼ同一位置に配置した場合を示す。
【0088】
前記第1散乱光検出部における散乱角θ1は、θ1=40°とすることで、長波長の光が煙粒子に照射されたことにより発生する散乱光成分に基づく受光出力が顕著に大きくなる。また、前記第2散乱光検出部における散乱角θ2は、θ2=90°とθ1よりも大きくすることで、短波長の光が煙粒子に照射されたことにより発生する散乱光成分に基づく受光出力が、長波長の光による影響を受けにくくなる。
【0089】
図11Bは、赤外LED14の配置を固定する一方、この赤外LED14に対して青色LED18を水平面の右回り(前記中心軸線CLを中心とする右回り)に、ずれ角α=30°でずらした散乱光検出構造を示す。
【0090】
図11Cは、赤外LED14に対して青色LED18を水平面の右回り(前記中心軸線CLを中心とする右回り)に、ずれ角α=60°でずらした散乱光検出構造を示す。
【0091】
これら
図11A〜
図11Cに示す、ずれ角α=0°,30°,60°の異なる散乱光検出構造につき、粒子径の大きな濾紙の燃焼発煙による煙と、粒子径の小さな綿灯芯の燃焼発煙による煙とを検出した場合の出力比PD2/PD1の測定結果を、
図12に示す。
【0092】
図12において、発光素子のずれ角α=0°の場合、濾紙出力比PD2/PD1は0.1で、綿灯芯出力比PD2/PD1は0.2であり、両者の出力比の比は1対2となっている。
【0093】
これに対し、発光素子ずれ角αがα=30°になると、濾紙出力比は0.1のままであるが、綿灯芯出力比は0.26と増加し、濾紙対綿灯芯の出力比の比は1対2.6となる。
【0094】
更に、発光素子ずれ角α=60°の場合には、濾紙出力比が0.12とわずかに増加し、これに対し、綿灯芯出力比は0.44と大きく増加しており、濾紙と綿灯芯の出力比の比は1対3.7となる。
【0095】
図10に示した本実施形態では、
図12に示すような既知の煙に対する出力比を閾値として用いることで、未知の煙の種別を判断する。
【0096】
図13は、
図12に示した、発光素子ずれ角α=0°における濾紙出力比PD2/PD1=0.1と綿灯芯出力比PD2/PD1=0.2とを閾値として用いた場合の、
図10に示した前記信号処理部28による煙種別判断処理を示すフローチャートである。
【0097】
この
図13に示すように、まずステップS101でカウンタi,j,kを0にリセットした後、ステップS102に進んで赤外LED14及び青色LED18を同一発光電流で同時に発光させる。そして、ステップS103で長波長受光量PD1及び短波長受光量PD2を読み込んだ後、ステップS104に進んで長波長受光量PD1がプリアラームに相当する閾値以上であることを条件としてステップS105に進み、出力比PD1/PD2を算出する。
【0098】
続くステップS106では、
図12に示したα=0°における綿灯芯出力比0.2を閾値として比較し、0.2以上であれば、ステップS107に進んでカウンタiを+1とする。そして、ステップS108で、i=5に達するまで、ステップS102からステップS107までの処理を繰り返した後、ステップS109で綿灯芯の燃焼発煙による煙と判断する。
【0099】
一方、ステップS106で出力比が閾値0.2未満であった場合には、ステップS110に進み、
図12に示した発光素子ずれ角α=0°における濾紙出力比0.1を閾値として比較し、閾値である0.1以上であれば、ステップS111に進んでカウンタjを+1とする。その後、ステップS112で、j=5に達するまで、ステップS102〜S106,S110〜S112の処理を繰り返す。その後、ステップS113に進んで濾紙の燃焼発煙による煙と判断する。
【0100】
ステップS110での出力比が閾値0.1未満だった場合には、ステップS114に進んでカウンタkを+1とする。その後、ステップS115でk=5に達するまで、ステップS101〜S106,S110,S114の処理を繰り返す。その後、ステップS116に進んで綿灯芯及び濾紙以外の燃焼発煙による煙と判断する。
【0101】
図13のフローチャートは、
図12に示した発光素子ずれ角α=0°の場合を例に取っているが、
図11Bのα=30°、
図11Cのα=60°についても、それぞれ
図12に示す閾値を用いた同様の処理により煙の種類を判断することができる。
【0102】
特に、
図11Cに示すα=60°の場合には、濾紙と綿灯芯の出力比の比が1対3.7と十分に大きく、この場合の濾紙出力比及び綿灯芯出力比を閾値とした比較判断を行えば、煙の種類が綿灯芯の燃焼発煙による煙なのか又は濾紙の燃焼発煙による煙なのかをより正確に判断することができる。
【0103】
次に、
図4に示した前記信号処理部28の第1検出処理部42及び第2検出処理部44、更には
図10に示した前記信号処理部28の検出部52のそれぞれに設けられている外乱光処理部45について説明する。
【0104】
外乱光処理部45は、
図1A〜
図2に示したように、本実施形態の煙検出器が、ラビリンス構造の検煙空間を持たないフラット型であるため、ノイズ光に対する対策を講じない場合には、その設置後に、蛍光灯などの外乱光による光が長波長受光素子16及び短波長受光素子20にノイズ光として入射して、煙による散乱光に基づく火災及び煙種別の判断が誤動作する可能性がある。このようなノイズ光による煙種別及び火災発生の誤判断を防止するために、長波長受光信号及び短波長受光信号に含まれるノイズ光の影響を抑制除去する処理を行う。
【0105】
図14は、
図4及び
図10に示した前記信号処理部28に設けられている外乱光処理部45の機能構成を、赤外LED14及び長波長受光素子16を備えた第1散乱光検出部を例にとって取り出して示したブロック図である。
【0106】
この
図14に示すように、CPUを用いた信号処理部28には、外乱光処理部45が設けられている。この外乱光処理部45には、CPUによるプログラムの実行により実現される機能として、発光制御部66と外乱光周期検出部68とが設けられている。
【0107】
長波長発光駆動回路30は、信号処理部28に設けられている発光制御部66からの発光制御指示を受けて、所定の発光周期T11毎に、所定の発光周波数f1(例えばf1=3kHz)により、所定回数(例えば5回)ずつ、赤外LED14を発光駆動させる処理を繰り返す。
【0108】
赤外LED14の発光駆動により得られた煙の散乱光は、長波長受光素子16で受光されて電気信号に変換される。長波長増幅回路34には、バンドバスフィルタ62と受光アンプ64とが設けられている。
【0109】
バンドパスフィルタ62は、長波長発光駆動回路30による発光駆動周波数f1を中心周波数とする通過周波数帯域を持っており、発光周波数に応じた受光信号を通過させて受光アンプ64に入力する。
【0110】
受光アンプ64は、微弱な長波長受光素子16からの受光信号を増幅して信号処理部28に出力する。信号処理部28は、受光アンプ64からの受光出力をデジタルデータに変換するAD変換部(図示せず)を備えている。
【0111】
信号処理部28に設けた発光制御部66は、発光周期T11ごとに、発光周波数f1で所定発光回数(例えば5回)、赤外LED14を発光駆動する制御を、長波長発光駆動回路30に対して行っている。
【0112】
外乱光周期検出部68は、長波長発光駆動回路30により赤外LED14を発光駆動していない発光周期内の期間、受光アンプ64の受光信号から、外乱光の周期S1を検出する。
【0113】
外乱光周期検出部68で検出された外乱光周期S1は、発光制御部66に読み込まれる。発光制御部66は、発光周期の開始タイミングを、検出した外乱光の周期を外したタイミングに変更する発光制御を行い、これによって蛍光灯などのノイズによる外乱光が赤外LED14の発光に重複して誤報を招くのを防止している。
【0114】
図15は、
図14に示した前記外乱光処理部46による発光動作及び受光動作を示したタイムチャートである。
図15の(A)は、
図14に示した前記信号処理部28に設けられた発光制御部66で生成する発光同期信号を示しており、発光周期T11ごとに、所定の発光期間T12に亘り、長波長発光駆動回路30を駆動する。
【0115】
図15の(B)は、長波長発光駆動回路30から赤外LED14に出力される発光駆動信号を示している。この
図15の(B)に示すように、発光同期信号の発光期間T12と同期して、発光周波数f1=3kHzの発光パルスを5つ、発光パルス列70として出力し、赤外LED14を5回、パルス発光させる。
【0116】
図15の(C)は、ゲート信号を示している。この
図15の(C)に示すように、
図15の(A)に示した発光同期信号の発光期間中はL(Low)レベルとなり、発光停止期間中はH(High)レベルとなっている。よって、このゲート信号は、受光処理における発光期間と発光停止期間とを区別するための信号として使用される。
【0117】
図15の(D)は、受光アンプ64の出力であり、火災による煙の流入がない通常時の受光アンプ信号を示しており、発光周期T11の中の発光停止期間の間に、蛍光灯などの照明による外乱光を受けて外乱光受光信号72が周期的に出力されている。
【0118】
図15の(E)は、
図15の(D)に示した受光アンプ信号に対して所定の閾値を設定して外乱光を検出した外乱光検出信号を示している。
図14に示した上記実施形態では、
図15の(E)の外乱光検出信号について、外乱光の周期S1を検出し、この外乱光の周期S1を外すように発光周期の開始タイミングを設定する。
【0119】
具体的には、
図15の時刻t1〜t2間の発光周期T11で外乱光の周期S1を例えば3回の検出周期の平均値として求める。このようにして、外乱光の周期S1が検出されたならば、次の発光周期の開始位置となる時刻t2で発光駆動を行った後、発光停止期間の最初の時刻t3で外乱光検出信号が得られたときにタイマを起動させる。そして、検出している外乱光の周期S1の半分となるS1/2の時間が経過した時刻t4のタイミングを発光周期の開始タイミングとして、それ以降の発光周期T11による発光制御を行う。
【0120】
このような外乱光の周期S1を外した発光周期の開始タイミングの変更により、発光周期T11における発光期間T12に対応した5回の発光駆動を、周期的に発生している外乱光と重複させないタイミングで行うことができる。よって、
図1A及び
図1Bに示したように外部検煙空間22内に流入した煙により生じた散乱光から火災を検出しても、外乱光を直接受けることによる誤報を確実に防止できる。
【0121】
図16は、外乱光周期が長い場合の発光開始タイミングの設定を示したタイムチャートである。
図16の(A)は、外乱光の状態を示している。この
図16の(A)に示すように、例えば外乱光74が周期S1=5msecで発生したとする。このような外乱光74の周期S1に対し、外乱光周期のほぼ中央のタイミングで、
図16の(B)に示すように発光駆動を行うことで、外乱光74と発光パルス列70との重複を回避することができる。
【0122】
ここで、発光パルス列70は発光周波数f1=3kHzとしており、1パルス当たりの周期は約330μsecであり、これを5回連続して出力することで、発光期間T12はT12=2msecとなっている。
【0123】
図16の(C)は、外乱光と、赤外LED14の発光駆動による光が煙粒子に照射されたことにより発生する散乱光とが得られたときの受光アンプ64の出力を示す。この
図16の(C)に示すように、外乱光74の周期S1を外して発光パルス列70の発光駆動を行っているため、受光アンプ出力には、外乱光受光信号72と煙受光信号70とが重なることなく区別できる状態で入力される。
【0124】
図16の(D)は、
図16の(C)に示した受光アンプ出力の上下の振幅成分を取り出したフィルタ出力結果を示している。このようなフィルタ出力につき、
図16の(B)に示した発光素子の発光期間T12に同期したタイミングで、
図16の(D)のフィルタ出力を読み込むことで、外乱光受光信号が存在しても、煙受光信号に対応した煙出力76を取得して火災や煙種別を判断することができる。
【0125】
ここで、
図16の(D)に示すフィルタ出力は、
図14で示した信号処理部28に設けられているAD変換部(図示せず)により、
図16の(C)の受光アンプ出力信号のAD変換データを処理することで生成できる。例えば、発光期間T12に同期して、受光アンプ出力に含まれる煙受光信号をAD変換して読み込み、AD変換したデータの最小値と最大値との差として、煙出力76を求めれば良い。または、発光期間T12に同期してAD変換したデータについて、上ピーク及び下ピークを求め、それぞれの平均値の差として、煙出力76を求めても良い。
【0126】
図17は、外乱光周期が短い場合における、
図14に示した前記外乱光処理部45による処理を示したタイムチャートである。
図17の(A)に示す外乱光の状態は、外乱光74の周期が
図16の(A)の場合に対して半分のS1=2.5msecとなっている。
【0127】
このように周期S1が短い場合には、
図17の(B)の発光素子の駆動において、発光パルス列70を、外乱光74の周期を外したタイミングに変更しても、次の外乱光と発光パルスの後半部分とが重なり合ってしまう。
【0128】
そこで、本実施形態では、外乱光の周期S1が例えばS1=2.5msecより短い場合には、発光素子の発光タイミングを、外乱光の周期S1を外したタイミングに変更すると同時に、発光回数を、初期設定の5回から例えば10回に増やし、発光期間T13を2倍のT13=2×T12に延ばすようにしている。
【0129】
このように、発光パルス列70を例えばそれまでの5回から10回に増やすことで、次の外乱光74が、発光回数を長くした発光期間T13の発光パルス列70の中に埋め込まれた状態となる。よって、
図17の(C)に示す受光アンプ出力の振幅成分となる、
図17の(D)に示すフィルタ出力における発光期間T13の最大値と最小値の差(または上ピークと下ピークとの平均値の差など)から煙出力76を得ることで、外乱光の影響を希釈化できる。これにより、外乱光による誤報を防止することが可能となる。
【0130】
図18は、
図14に示した装置による外乱光処理を示すフローチャートであり、信号処理部28に設けられている発光制御部66及び外乱光周期検出部68による制御処理を示す。
【0131】
図18に示すように、まずステップS121では、赤外LED14を例えば発光周期T11=1secごとに発光期間T12に亘り発光周波数f1=3kHzとなるように、5回連続して点灯させる。
【0132】
続くステップS122では、赤外LED14を発光させない発光停止期間における、受光アンプ64の受光出力V1を測定する。そして、ステップS123では、受光入力レベルV1が所定の閾値(例えば0.2ボルト)未満であれば、外乱光はないものとして、ステップS121,S122の処理を繰り返す。
【0133】
ステップS123で受光入力レベルV1が閾値0.2ボルト以上となった場合には、外乱光の受光ありと判断し、ステップS124に進んで外乱光によるノイズ周期S1の測定を行う。このノイズ周期S1の測定は、
図15の(E)に示したように、発光停止期間において外乱光受光信号72から得られたノイズ検出信号の例えば3周期分の平均として求める。
【0134】
次に、ステップS125で、ノイズ周期S1が2.5msec以下か否かをチェックし、2.5msecを超える長いノイズ周期S1であった場合にはステップS126に進む。そしてこのステップS126では、ノイズ周期を外したタイミングで発光素子を発光駆動するように、周期T11の発光開始タイミングを変更し、発光回数は5回のまま維持し、ステップS122からの処理を繰り返す。
【0135】
一方、ステップS125でノイズ周期S1が2.5msec以下であった場合にはステップS127に進み、赤外LED14の発光回数をそれまでの5回から10回に変更する。この場合、発光周期の開始タイミングは変更せずに、発光回数のみを5回から10回に変更する。
【0136】
続くステップS128では、タイマT1をT1=0にリセットした後、ステップS129に進んでタイマT1が所定値60を超えるか否かをチェックする。タイマT1が所定値60を超えていない場合には、ステップS130に進んでタイマT1を+1とする。そして、ステップS129でタイマT1が60以上となるまで、ステップS130のタイマT1のカウントアップを繰り返す。
【0137】
ここで、タイマの1回あたりのカウントアップ時間を1secとすると、ステップS128〜S130の処理によりタイマT1が60secに達するまで、ステップS127による発光回数を10回に変更した発光制御を継続することになる。
【0138】
ステップS129でタイマT1が60に達したことが判別されると、
図19のステップS131に進み、煙濃度が火災注意レベル(プリアラームレベル)に相当する煙濃度2.5%/m以上か否かをチェックする。煙濃度が2.5%/m以上(即ち、火災による煙の可能性有り)であれば、ステップS132に進んでタイマT2をT2=0にリセットする。その後、ステップS133に進んでタイマT2が60以上となるまで、ステップS134でタイマT2を+1とする処理を繰り返す。
【0139】
ここで、タイマT2の1回あたりのカウントアップ時間を1秒とすると、ステップS132〜S134の処理により、T2=60secごとにステップS131に戻って、煙濃度が2.5%/mを超えているか否かのチェックを繰り返すことになる。
【0140】
ステップS132で煙濃度が2.5%/m未満であることが判別されると、
図18のステップS121に戻り、それまで発光回数を10回としていた発光制御を5回に戻し、ステップS122以降の処理を再び繰り返す。
【0141】
なお、
図14に示した前記外乱光処理部45は、外乱光の周期が短いために外乱光の周期を外して発光素子を発光駆動させることができない場合には、発光素子の発光回数を増加させ、外乱光との重複期間を超えて発光駆動させることで、外乱光と重複しない発光期間を生成して、外乱光の影響度合いを希釈している。しかしながら、それ以外として次のような手法を採用してよい。
【0142】
(1)外乱光の周期が短すぎるために外乱光の周期を外して発光素子を発光駆動できない場合には、発光周期毎に所定回数発光させるための発光素子の発光周波数を変化させて、外乱光の影響が最も少ない発光周波数に変更する。
【0143】
(2)外乱光の周期が短すぎるために外乱光の周期を外して発光素子を発光駆動できない場合は、発光素子を発光させずに発光周期分の外乱光受光信号を検出して保持し、発光素子を発光させる発光周期毎に得られた煙受光信号から検出保持している外乱光受光信号を差し引くことにより外乱光成分を除去する。
【0144】
(3)煙用受光素子以外に外乱光用受光素子を設ける。そして、外乱光用受光素子で受光して増幅した外乱光受光信号を外乱光受光レベルが一致するように受光アンプのゲインを変更して補正した後に、煙用受光素子で受光して増幅した煙受光信号から外乱光受光信号を差し引いて外乱光成分を除去する。
【0145】
なお、上記各実施形態は、ラビリンス構造の検煙空間を感知器本体に持たないフラット型煙検出器を例に取って説明したが、これのみに限らず、感知器本体にラビリンス構造の検煙空間を内蔵した構造の煙検出器についても、上記各実施形態による煙種別を判断するための構成及び方法をそのまま適用することができる。
また、上記各実施形態は、露出面をフラットに形成したフラット型煙検出器を例にとっているが、必ずしもフラットである必要はない。ここに示した「フラット型煙検出器」は、検煙空間が従来のようなラビリンス構造等で覆われておらず外部に露出しており、ラビリンス構造を設けていないため従来に比べて薄型化できる他の構成のものを含む。従って露出面は例えば緩やかな湾曲形状等であってもよい。
【0146】
また、上記各実施形態は、火災による煙を検出する場合を例に取っているが、火災感知器としての利用のみならず、空気中に浮遊する微小な微粒子を検出する粒子感知器に適用してもよい。
【0147】
本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値のみによる限定は受けない。